JP2001158688A - シリコン種結晶とその製造方法並びにシリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

シリコン種結晶とその製造方法並びにシリコン単結晶の製造方法

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JP2001158688A
JP2001158688A JP33861899A JP33861899A JP2001158688A JP 2001158688 A JP2001158688 A JP 2001158688A JP 33861899 A JP33861899 A JP 33861899A JP 33861899 A JP33861899 A JP 33861899A JP 2001158688 A JP2001158688 A JP 2001158688A
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Masami Hasebe
政美 長谷部
Toshio Iwasaki
俊夫 岩崎
Koji Sumino
浩二 角野
Wataru Ohashi
渡 大橋
Hirobumi Harada
博文 原田
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Nippon Steel Corp
Siltronic Japan Corp
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Nippon Steel Corp
Wacker NSCE Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の
製造工程において、無転位化率を向上させることを可能
とするシリコン単結晶の製造方法、およびその製造方法
で使用されるシリコン種結晶、さらにその種結晶の製造
方法を提供する。特に、ダッシュネッキング(種絞り)
を行うことなく単結晶を引上育成する方法において、無
転位化率を顕著に向上させる。 【解決手段】 チョクラルスキー法でシリコン単結晶を
製造する際に用いるシリコン種結晶であって、該種結晶
表面に5nm以上の酸化膜を形成してなることを特徴と
するシリコン種結晶及びその製造方法であり、さらに該
種結晶を用いたシリコン単結晶の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チョクラルスキー
法によりシリコン単結晶を製造する工程において、単結
晶の無転位化率を大幅に向上させる結晶引上製造方法に
関する。また、この製造方法において用いるシリコン種
結晶及びその製造方法に関する。特に、ダッシュネッキ
ング(種絞り)を行うことなく単結晶を引上育成する方
法における無転位化率を顕著に向上させる製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】チョクラルスキー法(以下、CZ法)に
よるシリコン単結晶の製造においては、単結晶シリコン
を種結晶として用い、該種結晶をシードチャックで固定
した後に単結晶引上炉内に垂下し、これをシリコン融液
に接触させた後、所望の大きさの単結晶インゴットを引
上成長させる。
【0003】近年の高集積デバイス用の基板として用い
られるシリコン単結晶は、結晶成長時に発生する結晶欠
陥の一つである転位がないことが必須となっている。無
転位の単結晶を引上成長するために、従来、シリコン融
液に種結晶を接触した時に発生した転位をなくすため
に、種結晶をシリコン融液に浸漬後、直径が3〜4mm
の細い結晶を育成して、転位を結晶表面から追い出し、
その後、結晶径を広げ、所望の直径に達したら直径制御
をし、製品部分となる直胴部を引上成長する。この種結
晶を一度細径化する工程は種絞り(ダッシュネッキン
グ)工程と呼ばれる。
【0004】従来用いられている種結晶は、単結晶イン
ゴットから切り出し加工される。通常、その形状は、加
工の容易さから、角材や円形であり、その大きさは角材
の対角長さや円の直径で10mm以上のものが用いられ
ている。
【0005】このような種結晶をシリコン融液に接触の
際に転位が発生する機構として、種結晶が融液に接触し
た瞬間に結晶内に急激な温度差を生じ、高温下(シリコ
ン融点直上)で急激な熱応力を受けることにより転位が
発生すると考えられている。
【0006】これに対する対策として、種結晶先端部の
形状を細径化する方法(特開平5-139880号公
報、特開平9-235186号公報、特開平9-2554
85号公報)やさらに急激な熱応力を避けるために、浸
漬前に融液上で種結晶を保持保温する方法(特開平9-
249486号公報)が提案されている。これらの技術
は、従来の種絞りによる単結晶引上では、本発明者らの
実験調査結果によると、その種絞り径を4mmを越える
と無転位化率が100%ではなくなり、絞り径が大きく
なればなるほど絞り工程において無転位化しにくく、有
転位化率が増大する(図1参照)。
【0007】したがって、無転位化率を100%にする
には絞り径を4mm以下にしなければならず、結晶の重
量増加に対して絞り径の破壊強度の問題が生じる。即
ち、従来の絞り径の3〜4mmでは250kg程度以上
の大重量結晶を引き上げ育成すると、破断落下の可能性
が生じ大重量結晶を引き上げ育成することは困難であっ
た。
【0008】前述の文献においては、これらの破断強度
問題を解決する方法として、種絞りを行うことなく所望
のネック径を有する単結晶引上を引き上げる技術が提案
された。しかしながら、特開平10-324594号公
報や特開平10-324596号公報に記載されている
ように、種結晶や結晶製造方法によっては、種結晶の先
端部の接触、溶融時に種結晶に転位が導入される場合が
あり、単結晶の引上育成の成功率が低くなることがあっ
た。また、本発明者らの実験調査では、ネック部の形成
後、所望の直径に広げる過程や、その後の所望の径に達
し、製品シリコンウエハとして切断して利用される単結
晶直胴部の引上育成中においても、製造方法によっては
有転位化する場合があり、これらの有転位化の問題を解
決する手段が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の問題
点、即ち、種結晶浸漬時、結晶引上育成時の有転位化の
問題を解決するためになされたもので、CZ法によるシ
リコン単結晶の製造工程において、無転位化率を向上さ
せることを可能とするシリコン単結晶の製造方法、及び
その製造方法で使用されるシリコン種結晶、さらにその
種結晶の製造方法を提供することを目的とする。また、
本発明は、種絞り(ダッシュネッキング)を行うことな
く単結晶を引上育成する方法における無転位化率も顕著
に向上させることも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、シリコン単結
晶引上育成時の有転位化について実験調査並びに理論考
察を鋭意検討した結果、新たな知見を得、完成させたも
のである。
【0011】即ち、本発明は、(1) CZ法でシリコ
ン単結晶を製造する際に用いるシリコン種結晶であっ
て、該種結晶表面に5nm以上の酸化膜を形成してなる
ことを特徴とするシリコン種結晶、(2) 前記酸化膜
の厚みが10〜100nmである(1)記載のシリコン
種結晶、(3) 前記シリコン種結晶の径が5mm以上
である(1)、(2)に記載のシリコン種結晶、(4)
シリコン単結晶インゴットから機械加工により種結晶
を切り出し、必要に応じて該種結晶にエッチングを行
い、その後、酸化処理により該種結晶表面に5nm以上
の酸化膜を形成することを特徴とするシリコン種結晶の
製造方法、(5) CZ法により引上成長させたシリコ
ン単結晶を種結晶とし、必要に応じて該種結晶にエッチ
ングを行い、その後、酸化処理により該種結晶表面に5
nm以上の酸化膜を形成することを特徴とするシリコン
種結晶の製造方法、(6) 磁場印加CZ法(以下、M
CZ法)で育成する(5)記載のシリコン種結晶の製造
方法、(7) 種結晶の径が5mm以上である(4)又
は(5)に記載のシリコン種結晶の製造方法、(8)
前記酸化処理が熱酸化である(4)又は(5)に記載の
シリコン種結晶の製造方法、(9) 前記熱酸化が、酸
化性雰囲気中の加熱された炉内で種結晶を保持する方法
である(8)記載のシリコン種結晶の製造方法、(1
0) 酸化性雰囲気が、酸化性ガスを100〜500p
pm含有する不活性ガス雰囲気である(9)記載のシリ
コン種結晶の製造方法、(11) 前記酸化処理が、酸
化剤を含む溶液に種結晶を浸漬する方法である(4)又
は(5)に記載のシリコン種結晶の製造方法、(12)
前記酸化剤を含む溶液が、アンモニア−過酸化水素
液、塩酸−過酸化水素液、H22溶液、オゾン溶液、H
F−オゾン溶液及びHNO3溶液のいずれか一種である
(11)記載のシリコン種結晶の製造方法、(13)
CZ法によるシリコン単結晶の製造方法において、
(1)〜(3)に記載の種結晶を使用してシリコン単結
晶を引上成長させることを特徴とするシリコン単結晶の
製造方法、(14) CZ法によるシリコン単結晶の製
造方法において、酸化性ガスを混合した不活性ガス雰囲
気中でシリコン単結晶の引上成長を行うことを特徴とす
るシリコン単結晶の製造方法、(15) CZ法による
シリコン単結晶の製造方法において、種結晶の融液への
浸漬から単結晶の所望径への拡大までを、酸化性ガスを
混合した不活性ガス雰囲気中で行い、その後、酸化性ガ
スを含まない不活性ガス雰囲気中でシリコン単結晶を引
上成長することを特徴とするシリコン単結晶の製造方
法、(16) 酸化性ガスを混合した不活性ガス雰囲気
が、酸化性ガスを100〜500ppm含有する不活性
ガス雰囲気である(14)又は(15)に記載のシリコ
ン単結晶の製造方法、(17) 種結晶の径が5mm以
上である(14)又は(15)に記載のシリコン単結晶
の製造方法、(18) ダッシュネッキング(種絞り)
を行わずにシリコン単結晶を引上成長させる(13)〜
(17)に記載のシリコン単結晶の製造方法、である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明を以下に詳細に説明する。
【0013】本発明者らは、シリコン単結晶引上時の有
転位化について、実験調査を行ったところ、引上時のシ
リコン結晶表面状態が重要であり、引上中の結晶表面に
転位の発生原因となる歪み場を生じないようにすること
が重要であることを見出した。即ち、歪み場が発生する
とその歪み場を起点として、引上中の結晶内の温度勾配
による熱応力が加わり転位が発生する。このような歪み
場として、引上炉内の雰囲気ガス(一般的にはArが使
用されるが、Arに限定せず、Heや窒素、水素などが
用いられる場合もある)中の不純物成分(例えば、炭化
水素系ガスやCOやCO2等の炭素系ガス、あるいは窒
素系ガス)とシリコン結晶表面の反応による表面析出異
物(例えば、炭素系ガスとの反応による炭化物や窒素系
ガスとの反応による窒化物)がある。例えば、観察例を
図2に示すように、サイズは10μm〜100μm程度
のデンドライト表面析出物が付着異物として存在する場
合がある。図2に示す付着物は、EDX分析の結果、シ
リコンとカーボンが検出されたことから、SiC析出物
と推測される。このような表面異物が付着存在すると、
シリコン結晶表面に歪み場を形成し、転位の発生位置と
なる。また、種結晶にこのような付着異物が形成する
と、種結晶をシリコン融液に浸漬し溶解したときに、炭
化物や窒化物等の付着異物は溶け残り、パーティクルと
なってシリコン融液表面に浮遊し、結晶成長の際にシリ
コン結晶表面に再付着して、シリコン融液の凝固過程に
おいて単結晶化の阻害原因となり、有転位化させるもの
となる。このような、シリコン結晶表面への異物析出付
着のみならず、ガス条件によってはシリコン結晶表面に
ピットなどの凹凸が生じる場合がある。この原因は、酸
化作用を有する微量不純物ガス(例えば、酸素、水蒸
気、CO、CO2等)が制御されず混入し、ガス分圧の
変動によって表面に不均一に酸化膜を形成したり、酸化
膜が昇華蒸発することによって生ずる。このような表面
凸凹やラフネスも熱応力が集中することによって転位を
発生させる原因となると考えられる。
【0014】本発明は、上述の実験調査解析に基づいて
なされたもので、基本的には、シリコン結晶成長時に用
いる種結晶と成長していく単結晶インゴット表面に付着
異物が形成したり、表面凹凸が発生しないようにするこ
とを狙いとし、無転位化率を飛躍的に向上させる技術で
ある。
【0015】本発明の種結晶は、CZ法でシリコン単結
晶を製造する際に用いるシリコン種結晶において、表面
に5nm以上の酸化膜を形成してなることを特徴とする
シリコン種結晶である。これは、種結晶表面に保護膜と
して故意に制御した酸化膜を形成してなるもので、種結
晶表面への付着異物の析出を防止し、表面平滑面を形成
するため、種結晶の表面歪み発生やシリコン融液浸漬時
の融液上へのパーティクル発生を防止する作用がある。
大気中に曝すことによって自然酸化膜としてシリコン表
面に生成する酸化膜厚さ(1nm〜4nm)では、シリ
コン融液近傍の高温域(1300℃以上)で昇華して消
失してしまい、保護膜としての機能を失うため、無転位
化率は向上しない。この引上げ炉内での酸化膜の昇華
は、引上げ炉内の圧力条件や温度条件、あるいは保持時
間によって変化する。通常、結晶育成に用いる引上げ炉
内圧力である10mbar〜大気圧条件下では、130
0℃以上で30分程度の保持では、酸化膜の厚さを5n
m以上にすると、引上炉内のシリコン融液表面に接近し
て高温に曝され酸化膜の昇華現象が生じても、昇華しき
らず残留する。したがって、酸化膜の厚さ5nm以上と
することで、保護膜としての作用を発揮することができ
る。
【0016】また、前記酸化膜の厚みは10〜100n
mであることが好ましい。保護膜としての酸化膜の厚さ
が10nm以上であれば、無転位化率が飛躍的に向上
し、安定してシリコン単結晶を製造することができる。
一方、酸化膜が100nmより厚すぎると、シリコン融
液表面から発生するSiOガスが付着し易くなる場合が
あり、その結果、引上炉内で不均一な厚さの酸化膜にな
り、SiOやSiO2のパーティクルがその表面に付着
し易くなる恐れがある。このような状態でシリコン融液
に浸漬した時、種結晶表面に付着したパーティクルが融
液上に浮遊するパーティクルとなり、引上育成している
シリコン単結晶の無転位化率を低下させる可能性があ
る。
【0017】さらに、前記シリコン種結晶の径が5mm
以上であることが好ましい。ここで、種結晶の径とは、
その形状が角材の場合は対角長さを指し、円形の場合に
はその直径を意味する。種結晶で全ての重量を支えなけ
ればならないので、種結晶の径が5mm未満であると、
大重量結晶(例えば、250kgを超える単結晶)を引
上成長する場合に、種結晶の破壊強度が不足して、種結
晶の破損により引上成長中の単結晶が落下すると言う重
大事故が起こる可能性が高くなる。また、種結晶径の上
限について制限は特になく、単結晶引上炉内に収容でき
てシリコン融液を収容している坩堝に入る大きさであれ
ば問題は無いが、取扱いの容易さから引き上げる単結晶
の直胴部の直径以下であることが望ましい。結晶破壊に
対する耐荷重の観点からは、種結晶径4mmφで結晶重
量250kgが破壊限界であるのに対し、種結晶径に対
する破壊限界の結晶重量はそれぞれ5mmφで400k
g、10mmφで1600kg、15mmφで3500
kg、20mmφで6000kg、25mmφで100
00kgとなる。例えば、直径400mm(16)φの
シリコン単結晶を3000mm引上げ育成すると結晶重
量は約900kg程度である。安全係数を0.5とする
と、実際の耐荷重は1800kg程度となる。したがっ
て、実用的には5mmφ以上、15mmφ程度までの結
晶径が好ましい。
【0018】また、前記種結晶の長さは、特に規定はな
いが、取り扱いのし易さからは50〜500mm程度が
好ましい。この種結晶長さとは、シードチャック下部か
ら種結晶の融液に接触する先端までの長さを意味する。
この長さが、50mm未満ではシードチャックの過熱・
冷却時の温度の影響を受けやすく、種結晶表面の熱酸化
や酸化膜の昇華による消失条件が変化し制御しにくくな
り、500mm超では必要以上に長くなりすぎ、取扱い
が面倒になると共に、引上げ育成可能な単結晶直胴部の
長さが短くなり不経済である。
【0019】このような種結晶は、その表面に5nm以
上の酸化膜が形成されていれば良く、特にその製造方法
を限定するものではない。効率的に上記種結晶を製造す
る方法を例示すれば、以下に示す方法がある。
【0020】第1の方法は、シリコン単結晶インゴット
から機械加工により種結晶を切り出し、必要に応じて該
種結晶にエッチングを行い、その後、酸化処理により該
種結晶表面に5nm以上の酸化膜を形成する方法であ
る。機械加工により切り出した種結晶への酸化膜の形成
は、表面保護膜としての機能だけでなく、転位発生源と
なる加工により表面に導入される歪み層を酸化膜に取り
込み、表面歪みを除去する機能もある。
【0021】第2の方法は、CZ法により引上成長させ
たシリコン単結晶を種結晶とし、必要に応じて該種結晶
にエッチングを行い、その後、酸化処理により該種結晶
表面に5nm以上の酸化膜を形成する方法である。この
種結晶の作製方法は、図3に示すように種結晶をカーボ
ン製のシードチャックに装着し、通常のCZ法によりダ
ッシュネック部を形成し、所望の直径より大きいコーン
形状を作製した後、ピン止め部を形成するため所望の直
径まで絞り、そのままの直径を維持して所望長さのミニ
結晶を作製して(図4参照)、ミニ結晶を種結晶とする
ものである。なお、使用に当たっては、ダッシュネック
部で元の種結晶から切り離しても、切り離さなくてもよ
い。また、製品として引上げ育成したシリコン単結晶の
育成終了時点で、結晶を融液から切り離すために細径化
するテール部を利用して、所望のミニ結晶を作製するこ
とにより種結晶としても良い。
【0022】機械加工による切出し種結晶は表面の加工
歪み層が大きかったり、引上成長させた種結晶は表面酸
化膜層が不均一である場合があり、エッチングを行うこ
とが望ましい。このようなエッチングには、通常、フッ
酸と硝酸を主成分とする混酸溶液がよく用いられる。シ
リコン種結晶の不均一な酸化膜を除去するためには、シ
リコン種結晶表面を1μm程度エッチングすればよい。
加工歪みの除去は、加工条件によって変化するが、通常
20〜50μmのエッチングによりほぼ鏡面状態となり
加工歪みが除去される。前記溶液で表面をエッチングす
ると、自然酸化膜を除去するため、種結晶の表面にベア
なシリコンが出現し、このままでは単結晶引上炉内で雰
囲気ガス中の炭化系、窒化系の不純物ガスとの反応性が
増大し、種結晶表面への異物析出が増加する結果とな
る。そこで、エッチング後に膜厚制御した酸化膜を種結
晶表面に形成することで、該酸化膜はシリコン結晶のベ
ア表面と不純物ガスとの反応を防止する保護膜として作
用する。また、エッチングにより生じる表面荒れも酸化
膜形成により平滑にする作用も有する。更に好ましい酸
化膜の厚みは、前述したように10〜100nmであ
る。
【0023】上述した第2の方法において、MCZ(Ma
gnetic field Applied Czochralski、磁場印加チョクラ
ルスキー)法により種結晶を引上成長させる場合、より
スムーズな表面を得るので、表面凸凹をなくし無転位化
率のさらなる向上を行うものである。磁場印加下で結晶
成長するとシリコン融液の温度変動が抑制されるために
結晶表面がスムーズになる。磁場印加方法としては横磁
場印加、あるいはカスプ磁場印加のいずれでもよいが、
種結晶として用いる引上げミニ結晶の表面が融液温度変
動による凸凹が生じないような磁場印加条件(例えば、
横磁場では1000ガウス以上、カスプ磁場では500
ガウス以上が好ましい)下で種結晶用ミニ結晶を引上げ
育成する。本発明は、この表面がスムーズとなった結晶
を種結晶とすることでシリコン融液浸漬前や浸漬時の有
転位化を抑制するものである。表面をスムーズにするこ
とにより、微小な凹凸がなく熱的な応力集中を受け難
く、転位の発生や伝播がし難い表面状態をつくる。ま
た、表面をスムーズにすることにより種結晶ホルダーと
の面接触比率が増加し、ホルダー破壊の原因も低減す
る。なお、横磁場印加法とカスプ磁場印加法の比較にお
いて、よりスムーズな面を有するミニ結晶育成はカスプ
磁場印加法による引上げの方がよい。これは、横磁場法
の場合、軸対象温度分布でなく磁場にほぼ平行に低温領
域を有する部分があるのに対し、カスプ磁場法の場合は
融液表面の温度分布が軸対象であることによる。
【0024】本発明の種結晶の製造方法において、前述
したように大重量単結晶を引上成長させる場合には、該
種結晶の径は5mm以上とすることが好ましい。
【0025】また、本発明の種結晶の製造方法における
酸化処理は、種結晶表面に5nm以上の酸化膜が形成で
きれば良く、特にその方法を限定するものではない。制
御性良く均一性に優れた効率的な酸化処理を例示する
と、以下の方法がある。
【0026】一つには熱酸化により種結晶表面に酸化膜
を形成する方法であり、一つには酸化剤を含む溶液に種
結晶を浸漬し種結晶表面に酸化膜を形成する方法であ
る。
【0027】熱酸化は、酸化性雰囲気中で種結晶を加熱
すれば良く、加熱のための炉は、シリコン単結晶引上炉
でもこれとは別の熱処理炉でも良い。酸化性雰囲気とす
るためのガスは、シリコンに対し酸化力を有するガスで
あれば特に限定するものでなく、例示すれば、酸素、水
蒸気、CO、CO2等が好適に用いられる。特に酸化膜
厚制御性に優れ扱い易く、結晶品質に影響を及ぼさない
ガスは、酸素である。水蒸気や炭酸ガスは結晶表面酸化
を行う目的には好適であるが、水蒸気の場合は酸化速度
が速く酸化膜厚の制御性が悪く、COやCO2の場合は
既述のごとく逆に結晶表面に炭化物を析出させてしまう
場合があり、濃度制御に精度が要求される。雰囲気中の
酸化性ガス濃度は、得たい酸化膜厚に合せて適宜設定す
れば良いが、5nm以上の極薄酸化膜を制御性良く形成
させるために、酸化性ガスを100〜500ppm含有
する不活性ガス雰囲気であることが望ましい。100p
pm未満の酸化性ガスでは、酸化膜形成能が低く、熱酸
化に時間が掛かり過ぎて非効率となる場合がある。一
方、500ppm超では酸化膜形成能が高くなり過ぎて
酸化膜厚や均一性の制御が難しくなる場合がある。ま
た、熱酸化における加熱温度は、800〜1000℃の
範囲が好適である。800℃未満の場合、酸化膜形成能
が低く、熱酸化に時間が掛かり過ぎて非効率となる場合
がある。1000℃超の場合、熱処理炉の場合は、炉内
への種結晶の挿入・引き出し時に温度差が大きくなり、
種結晶を塑性変形させ転位を導入する可能性が高くなる
こと、一方、単結晶引上げ炉内出の酸化の場合は、熱酸
化のための種結晶保持位置がシリコン融液表面に接近
し、シリコン融液表面から蒸発してくるSiOガスによ
り、種結晶表面の酸化膜の不均一さを生じさせたり、表
面酸化膜とは異なるSiO2異物パーティクルを付着さ
せやすくなる。このSiO2パーティクルは、種結晶の
シリコン融液時に異物パーティクルとして融液上に浮遊
することになり、引上げ中の単結晶に再付着して、有転
位化させる原因となる。
【0028】酸化剤を含む溶液としては、シリコン種結
晶表面に酸化膜が形成できればその種類を問わないが、
好適に用いられる溶液を例示すれば、アンモニア−過酸
化水素液(例えば、組成は29.0wt%NH4OH:
31.0wt%H22:H2O=0.5〜1:1:5
(容量比)で、温度は室温から80℃、溶液浸漬処理時
間は5〜10分)、塩酸−過酸化水素液(例えば、組成
は36.5wt%HCl:31.0wt%H22:H2
O=0.5〜1:1:5(容量比)で、温度は室温から
80℃、溶液浸漬処理時間は5〜10分)、H22溶液
(例えば、組成は31.0wt%H22:H2O=0.
1〜1:10(容量比)で、温度は室温から80℃、溶
液浸漬処理時間は5〜10分)、オゾン溶液(例えば、
組成は2〜20ppmで、温度は室温、溶液浸漬処理時
間は10秒〜5分)、HF−オゾン溶液(例えば、組成
はHF濃度が0.001〜0.08wt%、オゾン濃度
が2〜30ppmで、温度は15〜25℃、溶液浸漬処
理時間は1〜5分)及びHNO 3溶液(例えば、組成は
70wt%HNO3で、温度は室温、溶液浸漬時間は5
〜10分)であり、前記溶液のいずれか一種を用いて種
結晶を浸漬することにより種結晶表面に酸化膜を形成す
る方法である。この方法は、厚い酸化膜を形成するには
制約があるものの、熱処理による酸化に比べて安価であ
り、加工歪み等の除去のためのエッチング工程に引き続
き、本処理を行うことで処理時間の短縮化が図れ、簡便
性がある。
【0029】上記のように作製した種結晶を使用して、
CZ法によるシリコン単結晶の引上成長を行えば、種結
晶表面の酸化膜が保護膜として働き、シリコン単結晶の
無転位化率が向上する。実際には、1300℃〜融液接
触までは種結晶の急激な温度変化を避けるため降下速度
を1mm/分程度とし融液に浸漬するのが好ましい。そ
の後、種結晶を融液に馴染ませてから、通常ダッシュ引
上げあるいはダッシュネッキングを行わないダッシュレ
ス引上げを実施する。
【0030】また、通常の種結晶(予め酸化処理を施さ
ず、自然酸化膜のみの種結晶)を用いても、酸化性ガス
を混合した不活性ガス雰囲気中でシリコン単結晶の引上
成長を行うことにより、単結晶引上炉内で種結晶が融液
に接触するまでに、上述した種結晶の製造方法と同様
に、種結晶表面に酸化膜が生成し、これが保護膜として
作用するので、シリコン単結晶の無転位化率を向上でき
る。
【0031】さらに、種結晶のみならず、コーン形状形
成工程から肩部作成、および直胴部の形成工程において
も、酸化性ガスを混合することで引き上げ中の単結晶表
面へのSiCなどの異物析出が抑制され、有転位化抑制
効果がある。
【0032】有転位化の確率が高いのは、種結晶の融液
への浸漬からコーン形状広げ、さらに肩部形成時の工程
である。その理由は、これら一連の工程はシリコン融液
の温度が比較的高く、また、シリコン結晶長さも短く、
結果的にシリコン結晶温度が比較的高温状態で転位が伝
播しやすい状態にある。したがって、特にこれらの結晶
育成工程を、酸化性ガスを混合した不活性ガス中で行う
ことで無転位化率の向上に対して重要である。その後の
直胴部に関しては酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲
気中で引上成長させても良いが、前述の効果と同様な効
果が期待できることから直胴部以降の工程についても酸
化ガスを混合した不活性ガス中で引上げを継続すること
でさらに無転位化率の向上が期待できる。
【0033】実際の単結晶育成においては、種結晶はカ
ーボン製の種結晶ホルダーに装着後、さらにシードチャ
ックに収め、ピン止めをしてから、引上げ炉内に装填さ
れる。その後、加熱された引上げ炉内で種結晶を融液表
面に向って下降させるが、通常のCZ法とは異なり、炉
内を所定濃度の乾燥酸素ガスを混合した酸化性雰囲気と
し、種結晶が融液に接触するまでに、種結晶表面に保護
酸化膜が形成するように、種結晶の降下速度を調節す
る。すなわち、熱酸化膜が形成する温度領域である90
0〜1300℃の温度範囲を種結晶が60分以上滞在す
るように、降下速度は3〜6mm/分程度が好ましい。
また、1300℃〜融液接触までは種結晶の急激な温度
変化を避けるため降下速度を1mm/分程度が好まし
い。その後、種結晶を融液に馴染ませてから、通常ダッ
シュ引上げあるいはダッシュネッキングを行わないダッ
シュレス引上げを実施する。ここで詳述した、種結晶降
下速度は引上げ炉内に設置する黒鉛断熱材の特性や構
造、あるいは引上げ炉体の構成によって変化する場合が
あり、必ずしも前記のごとく限定するものではない。
【0034】酸化性ガスは、前述のようにシリコンに対
し酸化力を有するものであれば構わないが、酸素、水蒸
気、CO、CO2等が例示でき、特に酸素が好適に用い
られる。そして、シリコン表面に制御性良く酸化膜を形
成させるには、酸化性ガスを100〜500ppm含有
する不活性ガス雰囲気を用いるのが好ましい。すなわ
ち、酸化性ガスを混合した不活性ガス雰囲気中で種結晶
の浸漬から径拡大、肩部形成、直胴部形成、テール形成
の一連のシリコン単結晶の引上成長を行う場合において
も、100ppm未満の酸化性ガスでは、酸化膜形成能
が低く、熱酸化に時間が掛かり過ぎて非効率となる場合
がある。一方、500ppm超では酸化膜形成能が高く
なり過ぎて酸化膜厚や均一性の制御が難しくなる場合が
ある。また、250kg以上の大重量結晶を引上成長さ
せるためには、種結晶の径は5mm以上であることが望
ましい。
【0035】このように本発明によるシリコン単結晶の
製造方法においては、種結晶の表面歪み発生やシリコン
融液浸漬時のパーティクル発生を防止できるため、種結
晶に転位が発生しないので、種絞り(ダッシュネッキン
グ)を行わずに太径ネックでシリコン単結晶を引上成長
することが可能である。
【0036】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、
本発明はこれらの実施例の記載によって制限されるもの
ではない。
【0037】実施例1〜5 シリコン単結晶インゴットから切出し成型加工した直径
10mmでシードチャック下端からの長さが200mm
である円筒状結晶を種結晶とした。加工歪みを完全に除
去する為にフッ酸/硝酸の混酸中で表面から50μmを
エッチングしたものを種結晶とした。
【0038】実施例1〜5では、該種結晶表面への保護
酸化膜形成を、シリコンウエハ等を熱処理する炉を用い
て、表1に示す各種条件の熱酸化で行った。
【0039】なお、上記種結晶は、熱処理炉に入れる直
前に、アンモニア水+過酸化水素水の混合液(29wt
%NH4OH:31wt%H22:H2O=1:1:5
(容量比))を用い、温度85℃で10分洗浄後、フッ
酸(5wt%)で5分洗浄し、乾燥してから、熱酸化を
施した。
【0040】熱酸化後の種結晶表面に形成された酸化膜
の厚みは、同時に装填しておいた酸化膜厚さモニター用
のシリコンウエハーの酸化膜厚さを光学的酸化膜厚計測
器により測定した。表1に酸化膜厚の結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】実施例6〜10 実施例1〜5と同じ機械加工により切り出した種結晶を
エッチング、洗浄したものを用いた。本実施例では、シ
リコン単結晶引上げ炉内酸化を行った。引上げ炉内での
種結晶の表面酸化は、雰囲気ガスのArガスに酸素ガス
を混合して炉内に導入する方法により行った。また、酸
化温度は、予め引上げ炉内の温度分布を計測することに
より求め、融液表面より上方100mmで1200℃、
130mmで1150℃、150mmで1100℃、1
80mmで1050℃、220mmで1000℃、30
0mmで900℃、400mmで800℃であった。熱
酸化条件と得られた酸化膜厚を表2に示す。表2の炉内
保持位置は融液表面から種結晶までの距離を示す。酸化
膜厚さは、予めモニター用のシリコンウエハーを引上げ
炉内に設置し、下記、実施例と同条件で融液上に保持
し、炉外へ取り出し後、酸化膜厚さを測定することによ
り求めた。
【0043】
【表2】
【0044】実施例11〜12 実施例1〜5と同じ機械加工により切り出した種結晶を
エッチング、洗浄したものを用いた。本実施例では、熱
酸化ではなく、酸化剤を含む溶液に浸漬する方法で、種
結晶表面に保護酸化膜を形成した。
【0045】酸化剤を含む溶液としては、29wt%N
4OH:31wt%H22:H2O=1:1:5(容量
比)の組成のアンモニア−過酸化水素水を用いた。酸化
処理条件と得られた酸化膜厚を表3に示す。酸化膜の厚
みは、酸化膜厚さモニター用のシリコンウエハーを同一
条件で酸化処理した後、酸化膜厚さを光学的酸化膜厚計
測器により測定した。
【0046】
【表3】
【0047】実施例13〜24 CZ法により直径10mmの単結晶をシードチャックの
下端から200mmの長さになるように引上げ育成し、
このミニ結晶を種結晶とした。引上げ育成による種結晶
の作製方法は、通常の種結晶をカーボン製のシードチャ
ックに装着し、常法によりダッシュネック部を形成した
後、直径13mm程度までコーン形状を作製し、その
後、ピン止め部を形成するため直径を10mmまで絞
り、そのままの直径を維持してミニ結晶を作製した(図
4参照)。
【0048】実施例13〜17では、得られたミニ結晶
を引上げ炉外に取り出し、実施例1〜5と同様にして熱
処理炉で熱酸化を行った。熱酸化条件と得られた酸化膜
厚を表4に示す。熱酸化後の種結晶表面に形成された酸
化膜の厚みは、同時に装填しておいた酸化膜厚さモニタ
ー用のシリコンウエハーの酸化膜厚さを光学的酸化膜厚
計測器により測定した。
【0049】
【表4】
【0050】実施例18〜22では、得られたミニ結晶
を融液表面から切り離した後、引上げ炉から取り出すこ
となく、実施例6〜10と同様の条件で引上げ炉内で熱
酸化を行った。熱酸化条件と得られた酸化膜厚を表5に
示す。酸化膜厚さは、予めモニター用のシリコンウエハ
ーを引上げ炉内に設置し、下記、実施例と同条件で融液
上に保持し、炉外へ取り出し後、酸化膜厚さを測定する
ことにより求めた。
【0051】
【表5】
【0052】実施例23〜24では、得られたミニ結晶
を引上げ炉外に取り出し、実施例11〜12と同様にし
て酸化剤を含む溶液に浸漬して種結晶表面に保護酸化膜
を形成した。酸化処理条件と得られた酸化膜厚を表6に
示す。酸化膜の厚みは、酸化膜厚さモニター用のシリコ
ンウエハーを同一条件で酸化処理した後、酸化膜厚さを
光学的酸化膜厚計測器により測定した。
【0053】
【表6】
【0054】実施例25〜28 実施例13〜24のCZ法に磁場を印加したMCZ法を
用いて、ミニ結晶を育成した。得られたミニ結晶は実施
例3と同じ条件で前処理及び熱酸化を行った。MCZ法
による磁場条件とミニ結晶表面に生成した酸化膜厚を表
7に示す。
【0055】
【表7】
【0056】実施例29〜56 実施例1〜28で作製した種結晶を用いて、図3に示す
ように、種結晶をカーボン製の種結晶ホルダーに装着
後、さらにシードチャックに収め、ピン止めをしてか
ら、CZ法によるAr雰囲気中でのシリコン単結晶の引
上げ育成を、通常の種絞り(ダッシュネッキング)を行
う単結晶育成と、種絞りを行わずにコーン形成する単結
晶育成でそれぞれ行った。通常の種絞りを行う方法(以
下、ダッシュ引上げ)では、種結晶をシリコン融液に浸
漬し馴染ませた後、引き上げながら3〜4mmφに細径
化し、その後直径を広げながら引上げ育成しコーン形状
を形成し、所定の結晶径に到達した時点で肩入れし、直
胴部の引上げを行った。また、種絞りを行わずにコーン
形成する方法(以下、ダッシュレス引上げ)では、種結
晶をシリコン融液に浸漬し馴染ませた後、種絞りによる
細径化することなく引上げ、ネック直径は種結晶径の1
0mmφまま(従来に比べて太径ネック)で、コーンを
形成し、所定の結晶径に到達した時点で肩入れし、直胴
部の引上げを行った。本実施例では、直胴部の直径は1
50mm、200mm及び300mmの3種類とし、そ
れぞれ長さ800mm、1000mm及び500mmの
直胴部を育成した。
【0057】各々の種結晶について、各種直胴径の単結
晶をそれぞれ20回の引上げ育成を行い、無転位で結晶
育成できた直胴部の長さ割合(無転位化率)を調べた。
結果を表8に示す。
【0058】比較例1〜3 比較例1は、シリコン単結晶インゴットから切出し成型
加工した直径10mmでシードチャック下端からの長さ
が200mmである円筒状結晶を、加工歪みを完全に除
去する為にフッ酸/硝酸の混酸中で表面から50μmを
エッチングしたものを種結晶とした。
【0059】比較例2は、CZ法により直径10mmの
単結晶をシードチャックの下端から200mmの長さに
なるように引上げ育成し、このミニ結晶を種結晶とし
た。
【0060】引上げ育成による種結晶の作製方法は、通
常の種結晶をカーボン製のシードチャックに装着し、常
法によりダッシュネック部を形成した後、直径13mm
程度までコーン形状を作製し、その後、ピン止め部を形
成するため直径を10mmまで絞り、そのままの直径を
維持してミニ結晶を作製した。
【0061】比較例3は、比較例2のCZ法に磁場強度
1000ガウスのカスプ磁場を印加したMCZ法を用い
てミニ結晶を育成し、種結晶とした。
【0062】比較例1〜3の種結晶は、何れも故意に表
面酸化膜を形成する処理は行わず、取扱い中に生成する
自然酸化膜のみを有する種結晶(酸化膜厚:3〜4n
m)とした。これらを実施例29〜56と同様にして、
各種直胴径の単結晶をそれぞれ20回の引上げ育成を行
い、無転位化率を調べた。結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
【0064】表8から明らかなように、本願発明の表面
に酸化膜を5nm以上形成させた種結晶を用いてCZ法
によるシリコン単結晶を引上げ育成すると、比較例の自
然酸化膜のみの種結晶に比べ、何れも無転位化率が向上
している。特に、ダッシュネックを形成しないダッシュ
レス引上げにおいて、比較例では殆ど無転位では結晶育
成ができないのに対し、本発明の種結晶を用いれば50
%以上の確率で無転位のシリコン単結晶が育成でき、そ
の作用効果は顕著である。
【0065】酸化膜の形成方法による差は認められず、
熱酸化でも化学酸化でも酸化膜の膜質を問わず、5nm
以上の酸化膜を形成すれば無転位化率が向上できる。さ
らに、酸化膜厚が10〜100nmの種結晶を用いれ
ば、ダッシュレス引上げにおいても無転位化率が80%
以上となり、ダッシュネックを形成する通常のCZ法と
大差の無い、極めて安定したシリコン単結晶の製造がで
きる。
【0066】熱処理炉で酸化した実施例29〜33、4
1〜45と引上げ炉内で酸化した実施例34〜38、4
6〜50では、引上げ炉内で酸化した種結晶の方が無転
位化率が若干向上しているが、これは熱酸化膜形成後の
種結晶のハンドリングの差によるものと考えられる。即
ち、熱処理炉で酸化した種結晶は、シードチャックに設
置する必要があり、設置時の取扱いにより種結晶表面に
微小表面疵が入る可能性を有しているのに対し、引上げ
炉内で酸化した種結晶は既にシードチャックに装着され
ているため、酸化後に微小表面疵が入ることが無いため
である。
【0067】種結晶を切出し成形加工した実施例29〜
40では、ダッシュ引上げに比べ、ダッシュレス引上げ
の方が無転位化率が若干低くなっている。これは、切出
し加工時に入る加工歪みを除去するためにエッチングを
施しているものの、表面に加工歪みが残留したり、エッ
チングによる表面の微小凹凸(ラフネス)が生じる可能
性があり、その部分にCZ法によるシリコン単結晶育成
時の熱応力や応力集中で転位が発生すると、ダッシュレ
ス引上げでは転位を除去する工程が無いため、シリコン
単結晶が有転位化してしまうことに起因する。一方、引
上げ育成によるミニ結晶を用いた実施例41〜52で
は、表面が滑らかであり、加工歪み除去のためのエッチ
ングも行わないことから、種結晶表面に転位発生の起点
が無いため、ダッシュ引上げでもダッシュレス引上げで
も無転位化率に差が無かったものと考えられる。また、
MCZ法を用いてミニ結晶を作製した実施例53〜56
では、CZ法の実施例41〜52と無転位化率の点から
はほぼ同等な結果となったものの、大重量結晶となる直
胴部300mmの結晶引上げにおいて、CZ法による種
結晶ではカーボンホルダーにひび割れが認められたのに
対し、MCZ法による種結晶では全く破損が認められな
かった。これは、MCZ法によりミニ結晶表面がより一
層滑らかになり、カーボンホルダーに対して良好な面接
触が得られ、応力集中が起こらなかったためと思われ
る。
【0068】実施例57〜62 実施例57〜62では、比較例1〜3の種結晶を用い
て、引上げ炉内のAr雰囲気に乾燥酸素ガスを50〜1
000ppmの濃度で混合した酸化性雰囲気中で、種結
晶を保持した後、シリコン融液に浸漬し、シリコン単結
晶を引上げ育成した。
【0069】実施例57、58は比較例1の種結晶を、
実施例59、60は比較例2の種結晶を、実施例61、
62は比較例3の種結晶をそれぞれ用いた。
【0070】図3に示すように、種結晶をカーボン製の
種結晶ホルダーに装着後、さらにシードチャックに収
め、ピン止めをしてから、引上げ炉内に装填した。その
後、加熱された引上げ炉内で種結晶を融液表面に向って
下降させたが、通常のCZ法とは異なり、炉内を所定濃
度の乾燥酸素ガスを混合した酸化性雰囲気とした。そし
て、種結晶が融液に接触するまでに、種結晶表面に保護
酸化膜が形成するように、種結晶の降下速度を調節し、
熱酸化膜が形成する温度領域である900〜1300℃
の温度範囲を種結晶が60分以上滞在するように降下速
度は3〜6mm/分とし、1300℃〜融液接触までは
種結晶の急激な温度変化を避けるため降下速度を1mm
/分とした。その後、種結晶を融液に馴染ませてから、
ダッシュ引上げ及びダッシュレス引上げを行った。
【0071】実施例57、59、61では、種結晶降下
開始から融液接触、コーン形成、直胴部育成、及び融液
からの切り離しのためのテール形成までの全ての工程に
おいて、引上げ炉内の雰囲気は所定の酸化性雰囲気を保
った。一方、実施例58、60、62では、コーン形成
後の肩入れ部の工程までを、引上げ炉内の雰囲気を所定
の酸化性雰囲気とし、それ以降の工程では炉内を純Ar
雰囲気に切り替えてシリコン単結晶の育成を行った。
【0072】各種条件下での無転位化率を表9に示す。
【0073】表9から明らかなように、種結晶を融液に
接触するまでに酸化性雰囲気に曝すことで表面酸化膜を
形成することで、シリコン単結晶の無転位化率を向上さ
せることができる。特に、酸素濃度を100〜500p
pmとしてダッシュ引上げを行った場合、直胴径150
mmおよび200mmの結晶においてはほぼ完全に無転
位で全てのシリコン単結晶が育成でき、直胴径300m
mの結晶においても90%以上の無転位化率でシリコン
単結晶を育成できると言う極めて優れた作用効果を有し
ている。
【0074】
【表9】
【0075】
【発明の効果】本発明の種結晶及び種結晶の製造方法、
さらに本発明のシリコン単結晶の製造方法を用いれば、
CZ法によるシリコン単結晶の製造工程での無転位化率
を向上できるため、シリコン単結晶の製造コストを大幅
に低減できる。特に、種絞り(ダッシュネッキング)を
行うことなく単結晶を引上成長できるので、直径12イ
ンチ以上の大口径結晶引上げや8インチ結晶も含めて長
尺で大重量のシリコン単結晶の無転位引上げ成功率を著
しく高くし、極めて容易に引上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のCZ法によるダッシュネック形成時の
絞り直径と有転位化の関係を説明する図。
【図2】 従来のCZ法による引上げ育成で観察される
シリコン単結晶表面のデンドライト(樹状)付着析出
物。
【図3】 引上げ炉に装着するシードチャックへの種結
晶の設置状態図。
【図4】 実施例で種結晶として用いた引上げ育成によ
るミニ結晶の模式図。
【符号の説明】
1 … 種結晶 1a … 種結晶(単結晶インゴットからの切出し成型
による加工した種結晶) 1b … 種結晶(引上げ育成によるミニ結晶) 2 … カーボン製ホルダー 3 … ピン(カーボン製ホルダーと種結晶とシード
チャックを固定する) 4 … シードチャック 5 … ワイヤー 6 … 種絞り(ダッシュネック)部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 俊夫 山口県光市大字島田3434番地 ニッテツ電 子株式会社内 (72)発明者 角野 浩二 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 大橋 渡 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 原田 博文 山口県光市大字島田3434番地 ニッテツ電 子株式会社内 Fターム(参考) 4G077 AA02 BA04 CF10 EA06 ED01 EJ02 PA03 PJ01 PJ04

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チョクラルスキー法でシリコン単結晶を
    製造する際に用いるシリコン種結晶であって、該種結晶
    表面に5nm以上の酸化膜を形成してなることを特徴と
    するシリコン種結晶。
  2. 【請求項2】 前記酸化膜の厚みが10〜100nmで
    ある請求項1記載のシリコン種結晶。
  3. 【請求項3】 前記シリコン種結晶の径が5mm以上で
    ある請求項1、2に記載のシリコン種結晶。
  4. 【請求項4】 シリコン単結晶インゴットから機械加工
    により種結晶を切り出し、必要に応じて該種結晶にエッ
    チングを行い、その後、酸化処理により該種結晶表面に
    5nm以上の酸化膜を形成することを特徴とするシリコ
    ン種結晶の製造方法。
  5. 【請求項5】 チョクラルスキー法により引上成長させ
    たシリコン単結晶を種結晶とし、必要に応じて該種結晶
    にエッチングを行い、その後、酸化処理により該種結晶
    表面に5nm以上の酸化膜を形成することを特徴とする
    シリコン種結晶の製造方法。
  6. 【請求項6】 磁場印加チョクラルスキー法で育成する
    請求項5記載のシリコン種結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】 種結晶の径が5mm以上である請求項4
    又は5に記載のシリコン種結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記酸化処理が熱酸化である請求項4又
    は5に記載のシリコン種結晶の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記熱酸化が、酸化性雰囲気中の加熱さ
    れた炉内で種結晶を保持する方法である請求項8記載の
    シリコン種結晶の製造方法。
  10. 【請求項10】 酸化性雰囲気が、酸化性ガスを100
    〜500ppm含有する不活性ガス雰囲気である請求項
    9記載のシリコン種結晶の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記酸化処理が、酸化剤を含む溶液に
    種結晶を浸漬する方法である請求項4又は5に記載のシ
    リコン種結晶の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記酸化剤を含む溶液が、アンモニア
    -過酸化水素液、塩酸-過酸化水素液、H22溶液、オゾ
    ン溶液、HF-オゾン溶液及びHNO3溶液のいずれか一
    種である請求項11記載のシリコン種結晶の製造方法。
  13. 【請求項13】 チョクラルスキー法によるシリコン単
    結晶の製造方法において、請求項1〜3に記載の種結晶
    を使用してシリコン単結晶を引上成長させることを特徴
    とするシリコン単結晶の製造方法。
  14. 【請求項14】 チョクラルスキー法によるシリコン単
    結晶の製造方法において、酸化性ガスを混合した不活性
    ガス雰囲気中でシリコン単結晶の引上成長を行うことを
    特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  15. 【請求項15】 チョクラルスキー法によるシリコン単
    結晶の製造方法において、種結晶の融液への浸漬から単
    結晶の所望径への拡大までを、酸化性ガスを混合した不
    活性ガス雰囲気中で行い、その後、酸化性ガスを含まな
    い不活性ガス雰囲気中でシリコン単結晶を引上成長する
    ことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  16. 【請求項16】 酸化性ガスを混合した不活性ガス雰囲
    気が、酸化性ガスを100〜500ppm含有する不活
    性ガス雰囲気である請求項14又は15に記載のシリコ
    ン単結晶の製造方法。
  17. 【請求項17】 種結晶の径が5mm以上である請求項
    14又は15に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  18. 【請求項18】 ダッシュネッキング(種絞り)を行わ
    ずにシリコン単結晶を引上成長させる請求項13〜17
    に記載のシリコン単結晶の製造方法。
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