JP2001152295A - 加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板 - Google Patents
加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 土木・建築構造用鋼材として好適な、耐食性
に優れ、さらに溶接性と加工性に優れた、マルテンサイ
ト系ステンレス熱延鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.012 %以下、N:0.02
%以下を、C+N:0.005 〜0.03%、C/N<0.6 の条
件下に含み、さらに、Si:1.0 %以下、Mn:1.0%以
下、P:0.08%以下、S:0.01%以下、Cr:10〜15%、
Ni:0.1 〜0.6 %を含有する組成とする。また、前記組
成が、Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-
0.5Cuで規定されるY値で10.7以下を満足することが好
ましい。Cu、Moのうちから選ばれた1種または2種、T
i、Bのうちから選ばれた1種または2種、Nb、Vのう
ちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
に優れ、さらに溶接性と加工性に優れた、マルテンサイ
ト系ステンレス熱延鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.012 %以下、N:0.02
%以下を、C+N:0.005 〜0.03%、C/N<0.6 の条
件下に含み、さらに、Si:1.0 %以下、Mn:1.0%以
下、P:0.08%以下、S:0.01%以下、Cr:10〜15%、
Ni:0.1 〜0.6 %を含有する組成とする。また、前記組
成が、Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-
0.5Cuで規定されるY値で10.7以下を満足することが好
ましい。Cu、Moのうちから選ばれた1種または2種、T
i、Bのうちから選ばれた1種または2種、Nb、Vのう
ちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス熱延鋼
板に係り、とくに土木・建築構造用として好適なステン
レス熱延鋼板に関する。
板に係り、とくに土木・建築構造用として好適なステン
レス熱延鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】土木・建築構造用材料としては、従来か
ら、SS400 などの普通鋼、SM490 などの高張力鋼、およ
びそれら鋼材に塗装やめっきを施した材料が主として使
用されてきた。しかし、近年、設計の多様化に伴い、各
種材料の利用が検討されはじめている。なかでも、意匠
性、耐食性に優れたステンレス鋼は、ライフサイクルコ
スト(LCC)の観点から発銹に対する保守費用がほと
んど不要であることを考慮すると魅力的な材料といえ
る。とくに、海岸地帯に建設される建築物は、短寿命で
あること、腐食抑制のための保守費用が増大することな
どの問題を抱えており、また、ウオーターフロント開発
を推進するうえでも、土木・建築構造用耐食性機能材料
としてのステンレス鋼の開発が大いに期待されている。
ら、SS400 などの普通鋼、SM490 などの高張力鋼、およ
びそれら鋼材に塗装やめっきを施した材料が主として使
用されてきた。しかし、近年、設計の多様化に伴い、各
種材料の利用が検討されはじめている。なかでも、意匠
性、耐食性に優れたステンレス鋼は、ライフサイクルコ
スト(LCC)の観点から発銹に対する保守費用がほと
んど不要であることを考慮すると魅力的な材料といえ
る。とくに、海岸地帯に建設される建築物は、短寿命で
あること、腐食抑制のための保守費用が増大することな
どの問題を抱えており、また、ウオーターフロント開発
を推進するうえでも、土木・建築構造用耐食性機能材料
としてのステンレス鋼の開発が大いに期待されている。
【0003】ステンレス鋼は、その金属組織から、SUS
430 に代表されるフェライト系ステンレス鋼、SUS 410
に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS 304
に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS 329
に代表される2相ステンレス鋼、SUS 630 に代表される
析出硬化型ステンレス鋼、などに大別される。このよう
な各種ステンレス鋼のなかで、従来から、建築構造用と
して検討されてきたのは、材料強度、耐食性、溶接の容
易さ、溶接部靱性、さらに汎用性を含めて最も使用実績
が多い、オーステナイト系ステンレス鋼であり、建築構
造用ステンレス規格SAS 601 には、オーステナイト系ス
テンレス鋼である、SUS 304 、SUS 304N、SUS 316 、SU
S 329J1 の4種が規定されている。
430 に代表されるフェライト系ステンレス鋼、SUS 410
に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS 304
に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS 329
に代表される2相ステンレス鋼、SUS 630 に代表される
析出硬化型ステンレス鋼、などに大別される。このよう
な各種ステンレス鋼のなかで、従来から、建築構造用と
して検討されてきたのは、材料強度、耐食性、溶接の容
易さ、溶接部靱性、さらに汎用性を含めて最も使用実績
が多い、オーステナイト系ステンレス鋼であり、建築構
造用ステンレス規格SAS 601 には、オーステナイト系ス
テンレス鋼である、SUS 304 、SUS 304N、SUS 316 、SU
S 329J1 の4種が規定されている。
【0004】これらオーステナイト系ステンレス鋼は、
強度、耐食性、耐火性、溶接部靱性等の土木・建築用材
料に要求される特性値を十分に満足する特性を有してい
る。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は、 Ni、Cr等の合金元素を多量含有しており普通鋼に比べ
格段に高価であること、 応力腐食割れを生じること、 熱膨張率が普通鋼にくらべ大きく、さらに熱伝導率が
比較的小さいため、溶接時の熱影響に起因した歪が蓄積
しやすく、精度を要求される部材等に適用することが難
しいこと、 などのため、一般構造材への適用は難しく、適用範囲が
限定されるという問題があった。
強度、耐食性、耐火性、溶接部靱性等の土木・建築用材
料に要求される特性値を十分に満足する特性を有してい
る。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は、 Ni、Cr等の合金元素を多量含有しており普通鋼に比べ
格段に高価であること、 応力腐食割れを生じること、 熱膨張率が普通鋼にくらべ大きく、さらに熱伝導率が
比較的小さいため、溶接時の熱影響に起因した歪が蓄積
しやすく、精度を要求される部材等に適用することが難
しいこと、 などのため、一般構造材への適用は難しく、適用範囲が
限定されるという問題があった。
【0005】このようなことから、最近では、めっきや
塗装を施した普通鋼の代替として、マルテンサイト系ス
テンレス鋼の土木・建築用鋼材への適用が検討されつつ
ある。マルテンサイト系ステンレス鋼は、オーステナイ
ト系ステンレス鋼にくらべCr含有量が11〜13%と少な
く、しかもNiを含有しないため格段に安価であり、熱膨
張率が小さくかつ熱伝導率が大きいほか、さらに普通鋼
にくらべ耐食性に優れ、高耐力を有するという特徴があ
る。また、マルテンサイト系ステンレス鋼は、800 ℃ま
では十分な耐酸化性を有し、さらに高Crフェライト系ス
テンレス鋼で問題となるσ脆化、475 ℃脆化の心配がな
く、また、オーステナイト系ステンレス鋼で問題となる
塩化物の存在下における応力腐食割れの心配もない。
塗装を施した普通鋼の代替として、マルテンサイト系ス
テンレス鋼の土木・建築用鋼材への適用が検討されつつ
ある。マルテンサイト系ステンレス鋼は、オーステナイ
ト系ステンレス鋼にくらべCr含有量が11〜13%と少な
く、しかもNiを含有しないため格段に安価であり、熱膨
張率が小さくかつ熱伝導率が大きいほか、さらに普通鋼
にくらべ耐食性に優れ、高耐力を有するという特徴があ
る。また、マルテンサイト系ステンレス鋼は、800 ℃ま
では十分な耐酸化性を有し、さらに高Crフェライト系ス
テンレス鋼で問題となるσ脆化、475 ℃脆化の心配がな
く、また、オーステナイト系ステンレス鋼で問題となる
塩化物の存在下における応力腐食割れの心配もない。
【0006】しかしながら、SUS 410 に代表される汎用
マルテンサイト系ステンレス鋼は、C含有量が0.08質量
%程度と高く、溶接部靱性や溶接部の加工性が劣り、さ
らに溶接に際しては予熱を必要とし溶接作業性が劣るな
どの欠点を有しており、溶接が必要な部材への適用には
問題が残されていた。このような問題に対し、例えば、
特公昭51-13463号公報には、Cr:10〜18wt%(mass
%)、Ni:0.1 〜3.4 wt%(mass%)、Si:1.0 wt%
(mass%)以下、Mn:4.0 wt%(mass%)以下を含有
し、さらに、C:0.03wt%(mass%)以下、N:0.02wt
%(mass%)以下に低減して、溶接熱影響部にマッシブ
マルテンサイト組織を生成させるようにし、溶接部の性
能を向上させた溶接構造用マルテンサイト系ステンレス
鋼が提案されている。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、C含有量が0.08質量
%程度と高く、溶接部靱性や溶接部の加工性が劣り、さ
らに溶接に際しては予熱を必要とし溶接作業性が劣るな
どの欠点を有しており、溶接が必要な部材への適用には
問題が残されていた。このような問題に対し、例えば、
特公昭51-13463号公報には、Cr:10〜18wt%(mass
%)、Ni:0.1 〜3.4 wt%(mass%)、Si:1.0 wt%
(mass%)以下、Mn:4.0 wt%(mass%)以下を含有
し、さらに、C:0.03wt%(mass%)以下、N:0.02wt
%(mass%)以下に低減して、溶接熱影響部にマッシブ
マルテンサイト組織を生成させるようにし、溶接部の性
能を向上させた溶接構造用マルテンサイト系ステンレス
鋼が提案されている。
【0007】また、特公昭57-28738号公報には、Cr:10
〜13.5wt%(mass%)、Si:0.5 wt%(mass%)以下、
Mn:1.0 〜3.5 wt%(mass%)を含有し、さらに、C:
0.02wt%(mass%)以下、N:0.02wt%(mass%)以下
に低減したうえで、さらにNi:0.1wt %(mass%)未満
と厳しく制限することにより、溶接前後の予熱・後熱を
必要としない、溶接部の靱性、加工性に優れた構造用マ
ルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
〜13.5wt%(mass%)、Si:0.5 wt%(mass%)以下、
Mn:1.0 〜3.5 wt%(mass%)を含有し、さらに、C:
0.02wt%(mass%)以下、N:0.02wt%(mass%)以下
に低減したうえで、さらにNi:0.1wt %(mass%)未満
と厳しく制限することにより、溶接前後の予熱・後熱を
必要としない、溶接部の靱性、加工性に優れた構造用マ
ルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0008】特公昭51-13463号公報および特公昭57-287
38号公報に記載された技術により、マルテンサイト系ス
テンレス鋼の溶接部特性が従来にくらべ格段に改善さ
れ、コンテナー材等の溶接が必要な部材へのマルテンサ
イト系ステンレス鋼の適用が大幅に進展するようになっ
た。
38号公報に記載された技術により、マルテンサイト系ス
テンレス鋼の溶接部特性が従来にくらべ格段に改善さ
れ、コンテナー材等の溶接が必要な部材へのマルテンサ
イト系ステンレス鋼の適用が大幅に進展するようになっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
51-13463号公報および特公昭57-28738号公報に記載され
た技術で製造されたマルテンサイト系ステンレス鋼材
は、最近の土木・建築構造用材料としての要求特性と比
較して十分な特性を有しているとは言い難く、溶接部の
靱性、加工性、耐食性にくわえて経済性の点で更なる改
善が望まれていた。
51-13463号公報および特公昭57-28738号公報に記載され
た技術で製造されたマルテンサイト系ステンレス鋼材
は、最近の土木・建築構造用材料としての要求特性と比
較して十分な特性を有しているとは言い難く、溶接部の
靱性、加工性、耐食性にくわえて経済性の点で更なる改
善が望まれていた。
【0010】また、最近、特開平10-53843号公報には、
Cr:10〜13wt%(mass%)、Si:1.0 wt%(mass%)以
下、Mn:1.0wt %(mass%)以下、Ni:0.10〜1.0wt %
(mass%)を含有し、さらに、C:0.03wt%(mass%)
以下、N:0.02〜0.03wt%(mass%)とCを著しく低減
したうえで、A系およびB1 系の介在物を低減すること
により、加工性および耐食性に優れた板厚3.0mm 以下の
土木建築用ステンレス鋼が開示されている。しかし、特
開平10-53843号公報に記載された鋼は、一般住宅用の構
造部材として適用可能な安価な鋼材であるが、主とし
て、溶接を施さない2次部材用として開発されたもので
ある。したがって、特開平10-53843号公報に記載された
技術で製造された鋼材を、溶接が必要な部材へ適用する
に当たっては溶接性の更なる改善が必要であるという問
題があった。
Cr:10〜13wt%(mass%)、Si:1.0 wt%(mass%)以
下、Mn:1.0wt %(mass%)以下、Ni:0.10〜1.0wt %
(mass%)を含有し、さらに、C:0.03wt%(mass%)
以下、N:0.02〜0.03wt%(mass%)とCを著しく低減
したうえで、A系およびB1 系の介在物を低減すること
により、加工性および耐食性に優れた板厚3.0mm 以下の
土木建築用ステンレス鋼が開示されている。しかし、特
開平10-53843号公報に記載された鋼は、一般住宅用の構
造部材として適用可能な安価な鋼材であるが、主とし
て、溶接を施さない2次部材用として開発されたもので
ある。したがって、特開平10-53843号公報に記載された
技術で製造された鋼材を、溶接が必要な部材へ適用する
に当たっては溶接性の更なる改善が必要であるという問
題があった。
【0011】本発明は、上記したような従来技術におけ
る問題を解決し、溶接を必須とする箇所に用いられる土
木・建築構造用鋼材として好適な、安価で、耐食性に優
れ、さらに溶接性と加工性に優れた、マルテンサイト系
ステンレス熱延鋼板を提供することを目的とする。
る問題を解決し、溶接を必須とする箇所に用いられる土
木・建築構造用鋼材として好適な、安価で、耐食性に優
れ、さらに溶接性と加工性に優れた、マルテンサイト系
ステンレス熱延鋼板を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するために、まず、C、Nに注目し、マルテ
ンサイト系ステンレス鋼の溶接部特性におよぼすC、N
の影響を分離・独立して検討した。従来から、C、Nは
溶接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延
性・靱性を劣化させる元素であり、溶接部特性に悪影響
を及ぼすことが知られており、極力低減することが好ま
しいとされてきた。しかし、本発明者らの検討によれ
ば、土木・建築構造用鋼材としては、C、Nをともに限
りなく低減するよりも、マルテンサイト相が安定でしか
も所望の硬さを得るために必要な適正範囲の(C+N)
量としたうえで、Cを極力低減する一方で、Nをある程
度残留させ、C/N比を適正範囲に維持することによ
り、溶接熱影響部の硬さ、靱性、加工性等がバランス良
く改善されることを知見した。
課題を達成するために、まず、C、Nに注目し、マルテ
ンサイト系ステンレス鋼の溶接部特性におよぼすC、N
の影響を分離・独立して検討した。従来から、C、Nは
溶接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延
性・靱性を劣化させる元素であり、溶接部特性に悪影響
を及ぼすことが知られており、極力低減することが好ま
しいとされてきた。しかし、本発明者らの検討によれ
ば、土木・建築構造用鋼材としては、C、Nをともに限
りなく低減するよりも、マルテンサイト相が安定でしか
も所望の硬さを得るために必要な適正範囲の(C+N)
量としたうえで、Cを極力低減する一方で、Nをある程
度残留させ、C/N比を適正範囲に維持することによ
り、溶接熱影響部の硬さ、靱性、加工性等がバランス良
く改善されることを知見した。
【0013】本発明は、上記した知見に基づいて、さら
に検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、質量%で、C:0.012 %以下、N:0.02%以下を、
C+N:0.005 〜0.03%、C/N<0.6 の条件下に含
み、さらに、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下、P:0.
08%以下、S:0.01%以下、Cr:10〜15%、Ni:0.1 〜
0.6 %、あるいはさらにAl:0.10%以下を含有し、残部
Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特
徴とする加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用
ステンレス熱延鋼板であり、また、本発明では、前記組
成が、次(1)式 Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-0.5Cu ……(1) (ここに、Cr、Mo、Si、Nb、Al、Ni、Mn、C、N、Cu:
各元素の含有量(質量%))で規定されるY値で10.7以
下を満足することが好ましく、また、本発明では、前記
組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.1 〜0.6 %、M
o:0.1 〜0.6 %のうちから選ばれた1種または2種を
含有することが好ましく、また、本発明では、前記各組
成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005 〜0.05%、
B:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2
種を含有することが好ましく、また、本発明では、前記
各組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.01〜0.1 %、
V:0.01〜0.1 %のうちから選ばれた1種または2種を
含有することが好ましい。
に検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、質量%で、C:0.012 %以下、N:0.02%以下を、
C+N:0.005 〜0.03%、C/N<0.6 の条件下に含
み、さらに、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下、P:0.
08%以下、S:0.01%以下、Cr:10〜15%、Ni:0.1 〜
0.6 %、あるいはさらにAl:0.10%以下を含有し、残部
Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特
徴とする加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用
ステンレス熱延鋼板であり、また、本発明では、前記組
成が、次(1)式 Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-0.5Cu ……(1) (ここに、Cr、Mo、Si、Nb、Al、Ni、Mn、C、N、Cu:
各元素の含有量(質量%))で規定されるY値で10.7以
下を満足することが好ましく、また、本発明では、前記
組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.1 〜0.6 %、M
o:0.1 〜0.6 %のうちから選ばれた1種または2種を
含有することが好ましく、また、本発明では、前記各組
成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005 〜0.05%、
B:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2
種を含有することが好ましく、また、本発明では、前記
各組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.01〜0.1 %、
V:0.01〜0.1 %のうちから選ばれた1種または2種を
含有することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】まず、本発明のマルテンサイト系
ステンレス熱延鋼板の化学成分の限定理由について説明
する。以下、組成における質量%は単に%と記す。 C:0.012 %以下、N:0.02%以下で、かつC+N:0.
005 〜0.03%、C/N<0.6 C、Nは、マルテンサイト相の硬さを増加させるが、溶
接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延性
・靱性を劣化させる。また、鋼中のCrと結合して炭窒化
物を形成し、Cr欠乏相を生成して耐食性を劣化させる。
このため、本発明では、Cは0.012 %を、Nは0.02%を
上限とし、さらにC含有量とN含有量の合計(C+N)
を0.03%以下に限定した。CおよびNの低減は、溶接部
特性の向上、加工性の改善には有効である。しかし、過
度の低減は精錬の負荷を増加させ、マルテンサイト相の
軟質化を促進し、また、溶接割れ感受性が低い、面積率
で80%以上のマルテンサイト相を有する組織とすること
が困難となり、さらに粗大なフェライト粒の形成により
溶接部靱性が劣化する。このため、(C+N)の下限を
0.005 %とした。なお、好ましくは、Cは0.008 %以
下、Nは0.01〜0.015%である。
ステンレス熱延鋼板の化学成分の限定理由について説明
する。以下、組成における質量%は単に%と記す。 C:0.012 %以下、N:0.02%以下で、かつC+N:0.
005 〜0.03%、C/N<0.6 C、Nは、マルテンサイト相の硬さを増加させるが、溶
接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延性
・靱性を劣化させる。また、鋼中のCrと結合して炭窒化
物を形成し、Cr欠乏相を生成して耐食性を劣化させる。
このため、本発明では、Cは0.012 %を、Nは0.02%を
上限とし、さらにC含有量とN含有量の合計(C+N)
を0.03%以下に限定した。CおよびNの低減は、溶接部
特性の向上、加工性の改善には有効である。しかし、過
度の低減は精錬の負荷を増加させ、マルテンサイト相の
軟質化を促進し、また、溶接割れ感受性が低い、面積率
で80%以上のマルテンサイト相を有する組織とすること
が困難となり、さらに粗大なフェライト粒の形成により
溶接部靱性が劣化する。このため、(C+N)の下限を
0.005 %とした。なお、好ましくは、Cは0.008 %以
下、Nは0.01〜0.015%である。
【0015】また、C含有量とN含有量の合計(C+
N)が0.005 〜0.03%の範囲内であっても、溶接部特
性、とくに溶接部靱性、溶接部曲げ特性が低下する場合
があり、本発明では、さらにC含有量とN含有量の比、
C/Nを0.6 未満に限定する。図1に、(C+N)=0.
02〜0.03%一定とした場合のC/N比と、溶接熱影響部
(HAZ 2.0mm)のシャルピー衝撃試験吸収エネルギー
値(試験温度:-20 ℃)との関係を示す。なお、シャル
ピー衝撃試験片は7mm厚のサブサイズとした。
N)が0.005 〜0.03%の範囲内であっても、溶接部特
性、とくに溶接部靱性、溶接部曲げ特性が低下する場合
があり、本発明では、さらにC含有量とN含有量の比、
C/Nを0.6 未満に限定する。図1に、(C+N)=0.
02〜0.03%一定とした場合のC/N比と、溶接熱影響部
(HAZ 2.0mm)のシャルピー衝撃試験吸収エネルギー
値(試験温度:-20 ℃)との関係を示す。なお、シャル
ピー衝撃試験片は7mm厚のサブサイズとした。
【0016】図1から、C/Nが0.6 以上では、溶接熱
影響部の吸収エネルギーが急激に低下することがわか
る。C/Nが0.6 以上では、溶接部のシャルピー衝撃試
験の延性−脆性遷移温度が高温側となり溶接部靱性が劣
化するのである。このようなことから、本発明では、C
/Nを0.6 未満とした。 Si:1.0 %以下 Siは、脱酸作用を有する有効な元素であるが、過剰の含
有は靱性、加工性の低下を招く。このため、Siは1.0 %
以下に限定した。なお、好ましくは、0.03〜0.5 %であ
る。
影響部の吸収エネルギーが急激に低下することがわか
る。C/Nが0.6 以上では、溶接部のシャルピー衝撃試
験の延性−脆性遷移温度が高温側となり溶接部靱性が劣
化するのである。このようなことから、本発明では、C
/Nを0.6 未満とした。 Si:1.0 %以下 Siは、脱酸作用を有する有効な元素であるが、過剰の含
有は靱性、加工性の低下を招く。このため、Siは1.0 %
以下に限定した。なお、好ましくは、0.03〜0.5 %であ
る。
【0017】Mn:1.0 %以下 Mnは、脱酸作用を有するとともに、オーステナイト相を
安定化させる元素であり、さらに溶接熱影響部の粒成長
を抑制し溶接部靱性を改善する有効な元素である。しか
し、過剰な含有は、加工性の低下、耐食性の低下を招
く。このため、Mnは1.0 %以下に限定した。なお、好ま
しくは、0.06〜0.09%である。
安定化させる元素であり、さらに溶接熱影響部の粒成長
を抑制し溶接部靱性を改善する有効な元素である。しか
し、過剰な含有は、加工性の低下、耐食性の低下を招
く。このため、Mnは1.0 %以下に限定した。なお、好ま
しくは、0.06〜0.09%である。
【0018】P:0.08%以下 Pは、熱間加工性、加工性、靱性を劣化させるととも
に、耐食性に対し有害な元素であり、本発明ではできる
だけ低減するのが望ましい。とくに、含有量が0.08%を
超えると、その影響が顕著となるため、Pは0.08%以下
に限定した。 S:0.01%以下 Sは、Mnと結合しMnS を形成する。MnS は初期発銹の起
点となる。また、Sは結晶粒界に偏析して粒界を脆化さ
せる有害な元素であり、本発明ではできるだけ低減する
のが望ましい。とくに、含有量が0.01%を超えると、そ
の影響が顕著となるため、Sは0.01%以下に限定した。
なお、好ましくは0.006 %以下である。
に、耐食性に対し有害な元素であり、本発明ではできる
だけ低減するのが望ましい。とくに、含有量が0.08%を
超えると、その影響が顕著となるため、Pは0.08%以下
に限定した。 S:0.01%以下 Sは、Mnと結合しMnS を形成する。MnS は初期発銹の起
点となる。また、Sは結晶粒界に偏析して粒界を脆化さ
せる有害な元素であり、本発明ではできるだけ低減する
のが望ましい。とくに、含有量が0.01%を超えると、そ
の影響が顕著となるため、Sは0.01%以下に限定した。
なお、好ましくは0.006 %以下である。
【0019】Cr:10〜15% Crは、耐食性を向上させる有効な元素であるが、10%未
満の含有では十分な耐食性が確保できない。一方、Crは
フェライト相安定化元素であり、15%を超える含有は、
加工性を低下させるとともに、オーステナイト相の安定
性が低下し、焼入れ時に所定量のマルテンサイト相を確
保できなくなり、強度が低下する。このため、本発明で
は、Crは10〜15%の範囲に限定した。なお、耐食性と加
工性の両立という観点からはCrは11〜13.5%の範囲とす
るのが好ましい。
満の含有では十分な耐食性が確保できない。一方、Crは
フェライト相安定化元素であり、15%を超える含有は、
加工性を低下させるとともに、オーステナイト相の安定
性が低下し、焼入れ時に所定量のマルテンサイト相を確
保できなくなり、強度が低下する。このため、本発明で
は、Crは10〜15%の範囲に限定した。なお、耐食性と加
工性の両立という観点からはCrは11〜13.5%の範囲とす
るのが好ましい。
【0020】Ni:0.1 〜0.6 % Niは、延性、靱性を向上させる元素であり、本発明では
とくに溶接熱影響部の靱性向上のために、0.1 %以上含
有させる。一方、0.6 %を超える含有は、曲げ加工性を
劣化させる。このため、Niは0.1 〜0.6 %の範囲に限定
した。 Cu:0.1 〜0.6 %、Mo:0.1 〜0.6 %のうちから選ばれ
た1種または2種 Cu、Moはいずれも、耐食性を向上させるのに有効な元素
であり、必要に応じCu、Moのうち1種または2種含有で
きる。さらに、オーステナイト相形成元素であるCuは耐
食性を向上させるとともに、溶接熱影響部の粒成長を抑
制し、溶接熱影響部靱性の改善に有効に作用する。この
ような効果は0.1 %以上の含有で認められるが、0.6 %
を超える含有は、鋼材の脆化、とくに熱間割れ感受性を
増大する。このようなことから、Cuは0.1 〜0.6 %の範
囲とするのが好ましい。
とくに溶接熱影響部の靱性向上のために、0.1 %以上含
有させる。一方、0.6 %を超える含有は、曲げ加工性を
劣化させる。このため、Niは0.1 〜0.6 %の範囲に限定
した。 Cu:0.1 〜0.6 %、Mo:0.1 〜0.6 %のうちから選ばれ
た1種または2種 Cu、Moはいずれも、耐食性を向上させるのに有効な元素
であり、必要に応じCu、Moのうち1種または2種含有で
きる。さらに、オーステナイト相形成元素であるCuは耐
食性を向上させるとともに、溶接熱影響部の粒成長を抑
制し、溶接熱影響部靱性の改善に有効に作用する。この
ような効果は0.1 %以上の含有で認められるが、0.6 %
を超える含有は、鋼材の脆化、とくに熱間割れ感受性を
増大する。このようなことから、Cuは0.1 〜0.6 %の範
囲とするのが好ましい。
【0021】Moは、耐食性を向上させる作用を有する。
このような効果は0.1 %以上の含有で認められる。一
方、0.6 %を超える含有は、オーステナイト相の安定性
を低下させるとともに、靱性、加工性を著しく低下させ
る。このため、Moは0.1 〜0.6%の範囲に限定するのが
好ましい。なお、耐食性と加工性のバランスから、より
好ましくは0.3 〜0.5 %である。
このような効果は0.1 %以上の含有で認められる。一
方、0.6 %を超える含有は、オーステナイト相の安定性
を低下させるとともに、靱性、加工性を著しく低下させ
る。このため、Moは0.1 〜0.6%の範囲に限定するのが
好ましい。なお、耐食性と加工性のバランスから、より
好ましくは0.3 〜0.5 %である。
【0022】Ti:0.005 〜0.05%、B:0.0005〜0.0050
%のうちから選ばれた1種または2種 Ti、Bはいずれも、焼入れ性向上に有効に作用する元素
であり、必要に応じTi、Bのうち1種または2種を含有
できる。Tiは、焼入れ性向上に有効に作用するととも
に、炭窒化物を形成し、溶接時や熱処理時にCr炭窒化物
の粒界析出を抑制し、耐食性向上に有効に寄与する。こ
のような効果は0.005 %以上の含有で認められる。一
方、0.05%を超えて含有すると、これらの効果が低下す
る傾向となる。このため、Tiは0.005 〜0.05%の範囲と
するのが好ましい。なお、より好ましくは0.010 〜0.03
0 %である。
%のうちから選ばれた1種または2種 Ti、Bはいずれも、焼入れ性向上に有効に作用する元素
であり、必要に応じTi、Bのうち1種または2種を含有
できる。Tiは、焼入れ性向上に有効に作用するととも
に、炭窒化物を形成し、溶接時や熱処理時にCr炭窒化物
の粒界析出を抑制し、耐食性向上に有効に寄与する。こ
のような効果は0.005 %以上の含有で認められる。一
方、0.05%を超えて含有すると、これらの効果が低下す
る傾向となる。このため、Tiは0.005 〜0.05%の範囲と
するのが好ましい。なお、より好ましくは0.010 〜0.03
0 %である。
【0023】Bは、焼入れ性向上に有効に作用するが、
0.0005%未満の含有では十分な効果が得られず、一方、
0.0050%を超える含有は鋼材の硬さを過剰に増加させ、
加工性、靱性を劣化させる。このため、Bは0.0005〜0.
0050%の範囲とするのが好ましい。なお、より好ましく
は0.0010〜0.0030%である。 Nb:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %のうちから選ばれ
た1種または2種 Nb、Vはいずれも、炭窒化物を形成し、オーステナイト
粒を微細化する作用を有し、また鋼材の加工性を向上さ
せる元素であり、必要に応じNb、Vのうち1種または2
種を含有できる。これらの効果は0.01%以上の含有で認
められる。しかし、0.1 %を超えるNb、Vの過剰な含有
は、溶接部の靱性や加工性を低下させる。このため、N
b、Vはいずれも、0.01〜0.1 %の範囲に限定するのが
好ましい。なお、Nb、Vはいずれも、0.03〜0.07%の範
囲とするのがより好ましい。
0.0005%未満の含有では十分な効果が得られず、一方、
0.0050%を超える含有は鋼材の硬さを過剰に増加させ、
加工性、靱性を劣化させる。このため、Bは0.0005〜0.
0050%の範囲とするのが好ましい。なお、より好ましく
は0.0010〜0.0030%である。 Nb:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %のうちから選ばれ
た1種または2種 Nb、Vはいずれも、炭窒化物を形成し、オーステナイト
粒を微細化する作用を有し、また鋼材の加工性を向上さ
せる元素であり、必要に応じNb、Vのうち1種または2
種を含有できる。これらの効果は0.01%以上の含有で認
められる。しかし、0.1 %を超えるNb、Vの過剰な含有
は、溶接部の靱性や加工性を低下させる。このため、N
b、Vはいずれも、0.01〜0.1 %の範囲に限定するのが
好ましい。なお、Nb、Vはいずれも、0.03〜0.07%の範
囲とするのがより好ましい。
【0024】Al:0.10%以下 Alは、脱酸剤として作用し、鋼中酸素の低減のために0.
10%以下含有することができる。0.10%を超える含有
は、酸化物量が増大し加工性を劣化させる。なお、より
好ましくは0.02%以下である。 Y≦10.7 Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-0.5Cu ……(1) (ここに、Cr、Mo、Si、Nb、Al、Ni、Mn、C、N、Cu:
各元素の含有量(質量%)) 本発明では、上記した化学成分の規制に加えて、溶接熱
影響部靱性の向上と、溶接部を含めた加工性向上のため
に、化学成分量の規制として(1)式に規定されるY値
を導入し、Y値が10.7以下となるように化学成分を調整
するのが好ましい。C=0.008 %、N=0.016 〜0.018
%と一定とした場合における、(1)式で規定するY値
と、溶接熱影響部の靱性(シャルピー衝撃試験の-20 ℃
における吸収エネルギー:E-20 )の関係を図2に示
す。図2から、Y値が10.7を超えると、溶接熱影響部の
靱性が顕著に低下するのがわかる。なお、(1)式を用
いてY値を計算するにあたり、含有していない元素につ
いては、含有量0として計算するものとする。
10%以下含有することができる。0.10%を超える含有
は、酸化物量が増大し加工性を劣化させる。なお、より
好ましくは0.02%以下である。 Y≦10.7 Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30C-30N-0.5Cu ……(1) (ここに、Cr、Mo、Si、Nb、Al、Ni、Mn、C、N、Cu:
各元素の含有量(質量%)) 本発明では、上記した化学成分の規制に加えて、溶接熱
影響部靱性の向上と、溶接部を含めた加工性向上のため
に、化学成分量の規制として(1)式に規定されるY値
を導入し、Y値が10.7以下となるように化学成分を調整
するのが好ましい。C=0.008 %、N=0.016 〜0.018
%と一定とした場合における、(1)式で規定するY値
と、溶接熱影響部の靱性(シャルピー衝撃試験の-20 ℃
における吸収エネルギー:E-20 )の関係を図2に示
す。図2から、Y値が10.7を超えると、溶接熱影響部の
靱性が顕著に低下するのがわかる。なお、(1)式を用
いてY値を計算するにあたり、含有していない元素につ
いては、含有量0として計算するものとする。
【0025】残部Feおよび不可避的不純物 上記した化学成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純
物である。不可避的不純物としては、O:0.010 %以下
などが許容できる。つぎに、本発明のマルテンサイト系
ステンレス熱延鋼板の好適な製造方法について説明す
る。
物である。不可避的不純物としては、O:0.010 %以下
などが許容できる。つぎに、本発明のマルテンサイト系
ステンレス熱延鋼板の好適な製造方法について説明す
る。
【0026】まず、上記した組成の溶鋼を、転炉または
電気炉等の通常公知の溶製炉で溶製したのち、さらに真
空脱ガス(RH法)、VOD法、AOD法等の公知の精
錬方法で精錬し、ついで連続鋳造法、あるいは造塊法で
スラブ等に鋳造し、鋼素材とするのが好適である。鋼素
材は、ついで加熱され、熱間圧延工程により熱延鋼板と
される。熱間圧延工程における加熱温度はとくに限定さ
れないが、加熱温度が高すぎると結晶粒の粗大化をもた
らし、靱性、加工性を劣化させる。このため、加熱温度
は、1300℃以下とするのが好ましい。また、熱間圧延工
程では、所望の板厚の熱延鋼板とすることができればよ
く、熱間圧延条件はとくに限定されないが、熱間圧延の
仕上げ温度は700 ℃以上とするのが強度、靱性を確保す
る観点から好ましい。しかし、加工性、延性や、熱延板
の良好な表面性状を要求される場合には、熱間圧延の仕
上げ温度を820 ℃以上1000℃以下とするのが好ましい。
電気炉等の通常公知の溶製炉で溶製したのち、さらに真
空脱ガス(RH法)、VOD法、AOD法等の公知の精
錬方法で精錬し、ついで連続鋳造法、あるいは造塊法で
スラブ等に鋳造し、鋼素材とするのが好適である。鋼素
材は、ついで加熱され、熱間圧延工程により熱延鋼板と
される。熱間圧延工程における加熱温度はとくに限定さ
れないが、加熱温度が高すぎると結晶粒の粗大化をもた
らし、靱性、加工性を劣化させる。このため、加熱温度
は、1300℃以下とするのが好ましい。また、熱間圧延工
程では、所望の板厚の熱延鋼板とすることができればよ
く、熱間圧延条件はとくに限定されないが、熱間圧延の
仕上げ温度は700 ℃以上とするのが強度、靱性を確保す
る観点から好ましい。しかし、加工性、延性や、熱延板
の良好な表面性状を要求される場合には、熱間圧延の仕
上げ温度を820 ℃以上1000℃以下とするのが好ましい。
【0027】熱間圧延終了後、マルテンサイト相の焼戻
しによる軟質化のために、熱延板焼鈍を行うのが好まし
い。熱延板焼鈍は、焼鈍温度:650 〜750 ℃、保持時
間:3〜15hとするのが軟質化、加工性改善、延性確保
の観点から好ましい。なお、熱延板焼鈍終了後、600 〜
700 ℃の温度範囲を50℃/h以下の徐冷とするのが軟質
化の点から好ましい。
しによる軟質化のために、熱延板焼鈍を行うのが好まし
い。熱延板焼鈍は、焼鈍温度:650 〜750 ℃、保持時
間:3〜15hとするのが軟質化、加工性改善、延性確保
の観点から好ましい。なお、熱延板焼鈍終了後、600 〜
700 ℃の温度範囲を50℃/h以下の徐冷とするのが軟質
化の点から好ましい。
【0028】なお、徐冷後、酸洗等によりスケールを除
去し、さらに研摩等により所望の表面性状に調整したの
ち、製品板としてもよい。
去し、さらに研摩等により所望の表面性状に調整したの
ち、製品板としてもよい。
【0029】
【実施例】表1に示す組成の溶鋼を、転炉−2次精錬工
程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブ
を1200℃に再加熱後、最終粗圧延の圧下率を30〜45%と
する3パスの粗圧延を施したのち、最終仕上げ温度が86
0 〜960 ℃となる7パスの仕上げ圧延により、2.0mm 厚
の熱延鋼板(鋼帯)とした。なお、溶接試験用として、
さらに板厚1.2 、3.0 、7.0mm の各種板厚の熱延鋼板
(鋼帯)も作製した。
程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブ
を1200℃に再加熱後、最終粗圧延の圧下率を30〜45%と
する3パスの粗圧延を施したのち、最終仕上げ温度が86
0 〜960 ℃となる7パスの仕上げ圧延により、2.0mm 厚
の熱延鋼板(鋼帯)とした。なお、溶接試験用として、
さらに板厚1.2 、3.0 、7.0mm の各種板厚の熱延鋼板
(鋼帯)も作製した。
【0030】これら熱延鋼板に、熱延板焼鈍を施し、さ
らに酸洗を行って、引張試験、衝撃試験を行った。な
お、熱延板焼鈍は、690 ℃×10h保持後、200 ℃までを
徐冷(冷却速度:10℃/h)する処理とした。また、こ
れら各種熱延鋼板について、1.2mm φの309 タイプの溶
接ワイヤを使用し、半自動式のMIG溶接により、溶接
継手を作製し、溶接部の硬さ試験、衝撃試験、曲げ試験
を実施し、溶接部の靱性、加工性を評価した。なお、溶
接条件は、雰囲気ガスを20%CO2-80%Ar(流量:20l/mi
n )とし、電圧:25V、電流:240 A、溶接速度:8mm
/sとし、1パス溶接とした。
らに酸洗を行って、引張試験、衝撃試験を行った。な
お、熱延板焼鈍は、690 ℃×10h保持後、200 ℃までを
徐冷(冷却速度:10℃/h)する処理とした。また、こ
れら各種熱延鋼板について、1.2mm φの309 タイプの溶
接ワイヤを使用し、半自動式のMIG溶接により、溶接
継手を作製し、溶接部の硬さ試験、衝撃試験、曲げ試験
を実施し、溶接部の靱性、加工性を評価した。なお、溶
接条件は、雰囲気ガスを20%CO2-80%Ar(流量:20l/mi
n )とし、電圧:25V、電流:240 A、溶接速度:8mm
/sとし、1パス溶接とした。
【0031】これら溶接継手部から、硬さ測定試験片、
サブサイズシャルピー衝撃試験片(厚さ 7.0×幅 10.0
×長さ 55mm )(7mm厚熱延鋼板のみ)、JIS Z2204 に
準拠された曲げ試験片(1.2mm 厚、2.0mm 厚、3.0mm
厚、7.0mm 厚熱延鋼板)を採取した。なお、衝撃試験片
は貫通切欠きとし、クロスボンド部から採取した。ま
た、曲げ試験は、曲げ半径r=1.0tとした。
サブサイズシャルピー衝撃試験片(厚さ 7.0×幅 10.0
×長さ 55mm )(7mm厚熱延鋼板のみ)、JIS Z2204 に
準拠された曲げ試験片(1.2mm 厚、2.0mm 厚、3.0mm
厚、7.0mm 厚熱延鋼板)を採取した。なお、衝撃試験片
は貫通切欠きとし、クロスボンド部から採取した。ま
た、曲げ試験は、曲げ半径r=1.0tとした。
【0032】これらの試験結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】本発明例は、母材の強度、靱性および溶接
部の硬さ、靱性、曲げ加工性のいずれにも優れている。
これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、溶接部の
靱性、あるいは溶接部の曲げ加工性のいずれかが劣化し
ている。とくに、(C+N)が本発明の範囲を外れる鋼
板No.4、No.5、No.6、あるいはCが本発明の範囲から外
れた鋼板No.11 は、溶接部の加工性、靱性の劣化が著し
い。また、(C+N)が本発明範囲内であるが、C/N
比が本発明の範囲を外れる鋼板No.9、No.10 、No.11 、
No.23 は、2.0mm 厚の曲げ試験でも割れが発生してお
り、靱性、加工性の劣化が著しい。また、Y値が本発明
の好適範囲を外れる鋼板No.1、No.16 、No.17 、No.20
、No.22 は溶接部靱性および溶接部の最高硬さが若干
劣化している。なお、7.0mm 厚試験片が180 °曲げで割
れが発生したとしても、3.5mm 、2.5mm 厚試験片で割れ
が発生しなければ合格とした。
部の硬さ、靱性、曲げ加工性のいずれにも優れている。
これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、溶接部の
靱性、あるいは溶接部の曲げ加工性のいずれかが劣化し
ている。とくに、(C+N)が本発明の範囲を外れる鋼
板No.4、No.5、No.6、あるいはCが本発明の範囲から外
れた鋼板No.11 は、溶接部の加工性、靱性の劣化が著し
い。また、(C+N)が本発明範囲内であるが、C/N
比が本発明の範囲を外れる鋼板No.9、No.10 、No.11 、
No.23 は、2.0mm 厚の曲げ試験でも割れが発生してお
り、靱性、加工性の劣化が著しい。また、Y値が本発明
の好適範囲を外れる鋼板No.1、No.16 、No.17 、No.20
、No.22 は溶接部靱性および溶接部の最高硬さが若干
劣化している。なお、7.0mm 厚試験片が180 °曲げで割
れが発生したとしても、3.5mm 、2.5mm 厚試験片で割れ
が発生しなければ合格とした。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、溶接性と加工性に優れ
た土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板が、安価に製造
でき、産業上格段の効果を奏する。本発明により、マル
テンサイト系ステンレス熱延鋼板の用途が拡大し、さら
にライフサイクルコストを考慮した場合、マルテンサイ
ト系ステンレス熱延鋼板の工業上の利用価値が高くなる
という効果もある。
た土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板が、安価に製造
でき、産業上格段の効果を奏する。本発明により、マル
テンサイト系ステンレス熱延鋼板の用途が拡大し、さら
にライフサイクルコストを考慮した場合、マルテンサイ
ト系ステンレス熱延鋼板の工業上の利用価値が高くなる
という効果もある。
【図1】溶接部靱性(シャルピー衝撃試験吸収エネルギ
ー)とC/N比の関係を示すグラフである。
ー)とC/N比の関係を示すグラフである。
【図2】溶接部靱性(シャルピー衝撃試験吸収エネルギ
ー)とY値の関係を示すグラフである。
ー)とY値の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内
Claims (5)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.012 %以下、 N:0.02%以下、 を、C+N:0.005 〜0.03%、C/N<0.6 の条件下に
含み、さらに、 Si:1.0 %以下、 Mn:1.0 %以下、 P:0.08%以下、 S:0.01%以下、 Cr:10〜15%、 Ni:0.1 〜0.6 % を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を
有することを特徴とする加工性および溶接性に優れた土
木・建築構造用ステンレス熱延鋼板。 - 【請求項2】 前記組成が、下記(1)式で規定される
Y値で10.7以下を満足することを特徴とする請求項1に
記載の土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板。 記 Y=Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb+8Al-Ni-0.5Mn-30 C-30 N-0.5Cu ……(1) ここに、Cr、Mo、Si、Nb、Al、Ni、Mn、C、N、Cu:各
元素の含有量(質量%) - 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、質量%で、C
u:0.1 〜0.6 %、Mo:0.1 〜0.6 %のうちから選ばれ
た1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
または2に記載の土木・建築構造用ステンレス熱延鋼
板。 - 【請求項4】 前記組成に加えてさらに、質量%で、T
i:0.005 〜0.05%、B:0.0005〜0.0050%のうちから
選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請
求項1ないし3のいずれかに記載の土木・建築構造用ス
テンレス熱延鋼板。 - 【請求項5】 前記組成に加えてさらに、質量%で、N
b:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %のうちから選ばれ
た1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
ないし4のいずれかに記載の土木・建築構造用ステンレ
ス熱延鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33686999A JP2001152295A (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33686999A JP2001152295A (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001152295A true JP2001152295A (ja) | 2001-06-05 |
Family
ID=18303410
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33686999A Pending JP2001152295A (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | 加工性および溶接性に優れた土木・建築構造用ステンレス熱延鋼板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2001152295A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003183784A (ja) * | 2001-09-28 | 2003-07-03 | Jfe Steel Kk | すみ肉溶接継手を形成した際の該すみ肉溶接継手の疲労特性及び靱性に優れたステンレス鋼 |
US8157930B2 (en) * | 2001-10-18 | 2012-04-17 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Martensitic stainless steel |
-
1999
- 1999-11-26 JP JP33686999A patent/JP2001152295A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003183784A (ja) * | 2001-09-28 | 2003-07-03 | Jfe Steel Kk | すみ肉溶接継手を形成した際の該すみ肉溶接継手の疲労特性及び靱性に優れたステンレス鋼 |
US8157930B2 (en) * | 2001-10-18 | 2012-04-17 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Martensitic stainless steel |
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