JP2001147405A - 眼鏡テンプルの複合蝶番機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 テンプルが側頭部を剛さと柔軟さとが程良く
調和した感触で挟圧し、しかもフロント枠を眼部適正位
置に正確に保持できて狂いも生じず、そのうえ、機構的
には簡素でデザイン的にもスマートな眼鏡テンプルの複
合蝶番機構を提供すること。 【解決手段】 高弾性テンプル４を煽りブラケット３の
自由端側に部分的に接続し、この接続部Ｊから高弾性テ
ンプル４の要枢部41に至るストレッチ部42は煽りブラケ
ット３の自由端側を押し開きする方向へ復元弾力が働く
ように撓曲させた状態で、フロント枠１側の蝶番片２の
ナックル部21に当該要枢部41と煽りブラケット３の差込
ナックル部31とをピボット５でより同軸に枢支した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、眼鏡のテンプルを
枢支する蝶番機構の改良、更に詳しくは、側頭部に対す
るテンプルの挟着圧が理想的で着用感が良く、フロント
枠を眼部適正位置に正確に保持できて狂いを生じず、要
すれば、テンプル自動開きの眼鏡としても構成できる実
用的で装飾性に富んだ眼鏡テンプルの複合蝶番機構に関
する。

【０００２】

【従来の技術】眼鏡におけるテンプルは、着用者の左右
側頭部を左右両側から挟着することによりフロント枠を
左右眼部に対向させレンズの光軸と着用者の視軸とを合
一状態に保持できることを理想とする。従来、テンプル
には金属製のものと、プラスチック製のものとがあり、
金属製のものはプラスチック製のものに比較して一般に
変形が少ないのではあるが、挟着時の圧迫が剛いうえ
に、持続的に応力を受けていると変形してフロント枠を
適正位置に保持できなくなってしまうという難点があ
る。また、プラスチック製のテンプルは、挟着時の圧迫
がソフトで感触は良好であるが、温度変化や外力によっ
て変形が生じ易いという欠点が避けられない。最近、超
弾性合金やβチタンで作製した弾力性の良好なテンプル
を用いた眼鏡が市販されるようなって一応の改善はみら
れるが、挟着力に剛さと柔軟さとの二律背反的調和が求
められる眼鏡のテンプルについては材質だけでは問題解
決に限界があることが指摘されていた。

【０００３】ところで、眼鏡のテンプルについて、前述
の剛さと柔軟さとの両立を機構的に満足させようとする
提案としては、所謂バネ蝶番が知られている。ここにバ
ネ蝶番というのは、例えば特開平9-265058号公報に記載
してあるように、テンプルの基端側に圧縮コイルバネを
内蔵させたケースを取り付けて同コイルバネに蝶番片を
連接することによって弾力的に進退自在となす一方、こ
うして連設されたテンプル側の蝶番片をフロント枠側の
蝶番片にヒンジ連結するという機構が採用されている。
なるほど、このようなバネ蝶番を利用してテンプルを連
結した眼鏡にあっては、ある程度、テンプルの挟着に剛
さと柔軟さとを帯有させることができたので、眼鏡常用
者の間で好評を博し、嘗て多数の特許出願が為された。

【０００４】しかしながら、そのような従来のバネ蝶番
を用いた眼鏡は何れも、蝶番機構が驚くほど精密で多数
の細かな部品を組み立てゝ構成しなければならないため
製作コストが非常に高くなるうえに、テンプルに圧縮コ
イルバネを内蔵させたケースを取り付けるため、軽量化
と細縁化を求める最近のファッション動向にはマッチせ
ず、しかもテンプル基端側に適用できる装飾技術も決ま
り切ったものしか採用できないため、頗る単純なデザイ
ンにならざるを得なかった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来におけ
るバネ蝶番を利用した眼鏡テンプルが剛さと柔軟さとを
両立させていたにも拘わらず、機構的に複雑でデザイン
的に不細工であったのに鑑みて為されたものであって、
側頭部に対するテンプルの挟圧感触が心地良くて着用感
を満足させることができ、かつ、フロント枠を眼部適正
位置に正確に保持できて狂いを生じず、しかも、機構的
には簡素でデザイン的にもスマートな眼鏡テンプルの複
合蝶番機構を提供することを技術的課題とする。

【０００６】また、本発明の他の技術的課題は、二律背
反的要請ともいうべき剛さと柔軟さとが調和した眼鏡テ
ンプルの複合蝶番機構を提供するにある。

【０００７】また、本発明は、テンプル基端側に更に煽
りブラケットを付加して、この煽りブラケットに形状的
あるいは色調・模様的変化を与えることによって多様な
装飾を実現することができる斬新な部品構成の眼鏡テン
プルの複合蝶番機構を提供するにある。

【０００８】さらに、本発明の他の技術的課題は、必要
に応じては眼鏡テンプルに自動開き機能をも帯有させる
ことができる実用的な眼鏡テンプルの複合蝶番機構を提
供するにある。

【０００９】

【課題を解決するために採用した手段】本発明者が上記
技術的課題を解決するために採用した手段を、添附図面
を参照して説明すれば、次のとおりである。

【００１０】即ち、本発明は、眼鏡フロント枠１におけ
る左右両側部の接眼側に配設され、持出部にナックル部
21を有する蝶番片２と；基端側に差込ナックル部31を有
する煽りブラケット３と；基端側に要枢部41を有する高
弾性テンプル４と；前記蝶番片１のナックル部11に、煽
りブラケット３の差込ナックル部31および高弾性テンプ
ル４の要枢部41を同軸に枢支するためのピボット５とい
う部品手段と、前記高弾性テンプル４は、煽りブラケッ
ト３の自由端側に部分的に接続Ｊさせ、かつ、この接続
部Ｊから要枢部41に至るストレッチ部42は前記煽りブラ
ケット３の自由端側を押し開きする方向へ復元弾力が働
くように撓曲させた状態で、前記蝶番片２のナックル部
21において当該要枢部41と煽りブラケット３の差込ナッ
クル部31とをピボット５により同軸に枢支せしめた点に
特徴がある。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成を添附
図面に示す実施形態に基いて、さらに詳しく説明する。

【００１２】図面上、符号１で示すものは、左右のリム
11にレンズ12を並立状態に抱持したフロント枠である。
このフロント枠１には、接眼側方向に持出智13が突設さ
れている。符号２で指示するものは前記持出智13の突端
に接続された蝶番片であり、上下に２枚のナックル部21
を有する。

【００１３】また、図中の符号３で指示するものはステ
ンレスで作製した短寸の煽りブラケットであって、基端
側には差込ナックル部31がロウ付けしてあり、反対側の
端部（自由端）はやゝ径を太く形成してある。本実施形
態における煽りブラケット３の差込ナックル部31は上下
２枚の翼片31ａ・31ａによって形成されており、この両
翼片31ａ・31ａは上記した蝶番片２のナックル部21の間
に差し込むことが可能であり、かつまた、前記翼片31ａ
と31ａとの間の内股間隙部31ｂには後述の高弾性テンプ
ルの要枢部が挿入可能である。この煽りブラケット３
は、後述のテンプルの外面側つまり能く目立つ可視面側
に配設されるものであるので、形状にデザイン的工夫
（例えば、欄間的な透し彫り：図示せず）を施したり、
特殊のメッキや着色加工を施しておくことにより、眼鏡
全体の意匠デザインの増進に寄与することができる。

【００１４】次に、符号４で指示するものは高弾性テン
プルであり、基端部には要枢部41がが形成されている。
本実施形態においては、高弾性テンプルはβチタンの線
材によって構成されており、上記煽りブラケット３の自
由端部に接続させる箇所には巻付コイル部43が形成して
あり、また当該テンプルの自由端側には合成樹脂製のモ
ダンＭが被せてある。

【００１５】符号５で指示するものはピボットであっ
て、このピボット５は上記蝶番片２のナックル部21に煽
りブラケット３の上下両翼片31ａ・31ａ（差込ナックル
部31）を差し込み、差し込まれた両翼片31ａと31ａとの
間に高弾性テンプル４の要枢部41を挿入させた状態で同
軸に枢支する部品である。本実施形態におけるピボット
５は止めネジ形態に構成してある。

【００１６】しかして、本実施形態にあっては、上記高
弾性テンプル４は煽りブラケット３の自由端部に巻付コ
イル部43が巻き付くことによって局部的に接続される一
方、この巻付コイル部43の巻き付きによって形成された
接続部Ｊから要枢部41に至る高弾性テンプル４の部分は
要枢部41を上記蝶番片２のナックル部21に枢支した際に
煽りブラケット３の自由端部を押し開き方向に復元弾力
を発揮するストレッチ部42として機能する。そして、本
実施形態においては、蝶番片２のナックル部21に煽りブ
ラケット３の上下両翼片31ａ・31ａ（差込ナックル部3
1）を差し込み、差し込まれた両翼片31ａと31ａとの間
に高弾性テンプル４の要枢部41を挿入させた状態でピボ
ット５により同軸に枢支することにより、眼鏡テンプル
の複合蝶番機構が構成される。そして、こうして構成し
た本実施形態における高弾性テンプル４は、図６に示す
ように、煽りブラケット３が拡開限界に達しても、接続
部Ｊを支点として更に外方へ靱やかに撓曲することがで
き、着用者の側頭部をソフトに挟着する復元弾力として
快適な着用感を実現する。

【００１７】本実施形態の蝶番機構では、上記高弾性テ
ンプル４におけるストレッチ部42の復元弾力を緩やかに
煽りブラケット３の自由端部に作用させるようにすれば
折り畳んだ姿勢を維持させておくことが可能で不用意に
テンプル４を拡展しないように設定することが可能であ
り、この場合、ストレッチ部42の復元弾力はテンプル４
の拡展操作を助勢する力として作用し軽やかなテンプル
拡展操作を実現する。

【００１８】また、本実施形態の蝶番機構において、上
記高弾性テンプル４におけるストレッチ部42の復元弾力
を強力なものにして煽りブラケット３の自由端部に作用
させれば、テンプル４の自動拡展が可能になる。テンプ
ル４の折畳み姿勢を維持させておくことが必要なとき
は、左右の高弾性テンプル４を相互に結跏状態に腕組み
させておけばよい。

【００１９】本明細書に具体的に開示する実施形態は概
ね上記のとおりであるが、本発明は前述の実施形態に限
定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載
内において種々の設計変更が可能であることは云うまで
もない。

【００２０】例えば、前述の実施形態においては、高弾
性テンプル４の素材としてβチタンを使用する例を挙げ
たけれども、Ni−Ti合金系の超弾性合金を用いてもよい
し、また洋白やベリリウム銅合金など弾力性能の高い金
属材料を種々選択することができる。また、前述の実施
形態においては、高弾性テンプル４としてβチタンの線
材を採用する例を挙げたが、線材に限ることなく、長手
形態であれば帯金状、異形棒状のものも採用可能であ
る。しかして、かゝる材料および形状の変更は、当然に
本発明の技術的範囲に属する。

【００２１】また、前述の実施形態では、高弾性テンプ
ル４には巻付コイル部43を形成し、この巻付コイル部43
を煽りブラケット３の自由端に巻き付けることによって
接続させる形式を採用したけれども、高弾性テンプル４
と煽りブラケット３の自由端とを緊締バンド（図示せ
ず）にて緊結状態に接続させ、接続した高弾性テンプル
４の接続部Ｊから要枢部41の領域は前述の実施形態と同
様にストレッチ部42として機能するのであり、このよう
な設計変更は本発明の技術的範囲に属する。

【００２２】更に、前述の実施形態にあっては、煽りブ
ラケット３の差込ナックル31として上下２枚の翼片31ａ
・31ａを用いて、この両翼片31ａと31ａとの間の内股間
隙部31ｂの間に高弾性テンプル４の要枢部41を狭入させ
た状態でピボット５により、蝶番片２のナックル部21に
枢支するという形式を採用したが、必ずしも、そのよう
な状態で枢支する必要はなく、ナックル部21と差込ナッ
クル部31と要枢部41とが同軸的にピボット５で枢支され
るのであれば重積状態で枢支させることも可能であり、
かゝる設計変更は当然に本発明の技術的範囲に属する。

【００２３】

【発明の効果】以上、実施形態を挙げて説明したとお
り、本発明の複合蝶番機構にあっては、高弾性テンプル
を煽りブラケットの自由端側に部分的に接続すると共
に、この接続部から高弾性テンプルの要枢部に至るスト
レッチ部は煽りブラケットの自由端側を押し開きする方
向へ復元弾力が働くように撓曲させた状態で、フロント
枠側の蝶番片のナックル部に当該要枢部と煽りブラケッ
トの差込ナックル部とをピボットでより同軸に枢支する
という巧みな弾力拡開機構を採用した。このため、本発
明を適用して作製した眼鏡は、極めて簡素で少ない部品
で構成されているにも拘わらず、側頭部に対するテンプ
ルの挟着圧は理想的で頗る着用感が良く、しかもフロン
ト枠は眼部の適正位置に正確に保持することができて狂
いも生ずることもないのに加えて、能く目立つ可視面側
に配設されるところの煽りブラケットに欄間様の透し彫
りのごとき形状的なデザイン的工夫を施したり、特殊の
メッキや着色加工を施す等の手段により、眼鏡全体に対
する意匠デザインの自由度を大幅に増進させることがで
きる。

【００２４】また、本発明を適用して構成する眼鏡は、
テンプルに自動拡開機能が要望される場合、高弾性テン
プルにおけるストレッチ部の復元弾力を強いものにして
おくだけでよく、特別の機構を付加する必要がないた
め、頗る実用的である。

【００２５】このように本発明によれば、極めて少ない
部品数で眼鏡テンプルにダブルアクション機能を付与す
ることもできるのであって、従来のバネ蝶番機構の眼鏡
よりも格段に安価に製作することができ、しかも機構的
には簡素にしてスリムでスマートな眼鏡を提供すること
ができる。

【００２６】よって、本発明が提供するテンプルの複合
蝶番機構は、性能的にも優秀であるうえに、コスト的に
も安価に製作できる等、その産業上の利用価値の頗る高
い。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の実施形態である眼鏡全体を表
わした斜視図である。

【図２】図２は、本実施形態眼鏡の側面図である。

【図３】図３は、本実施形態の要部構成に用いる部品を
分解状態で表わした拡大斜視説明図である。

【図４】図４は、本実施形態における煽りブラケットと
高弾性テンプルとを組合せ接続させた状態でフロント枠
側の蝶番片に組み込もうとしている状態を表わした拡大
斜視説明図である。

【図５】図５は、本実施形態における要部構成を組立て
状態で表わした部分拡大斜視説明図である。

【図６】図６は、高弾性テンプルが煽りブラケットとの
接続部を支点として外方に撓曲する状態を表わした部分
的な拡大平面図である。

【符号の説明】

１ 眼鏡フロント枠 11 リム 12 レンズ 13 持出智 ２ 蝶番片 21 ナックル部 ３ 煽りブラケット 31 差込ナックル部 31ａ 翼片 32ｂ 内股間隙部 ４ 高弾性テンプル 41 要枢部 42 ストレッチ部 43 巻付コイル部 ５ ピボット Ｊ 接続部 Ｍ モダン

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 眼鏡フロント枠１における左右両側部の
   接眼側に配設され、持出部にナックル部21を有する蝶番
   片２と；基端側に差込ナックル部31を有する煽りブラケ
   ット３と；基端側に要枢部41を有する高弾性テンプル４
   と；前記蝶番片１のナックル部11に、煽りブラケット３
   の差込ナックル部31および高弾性テンプル４の要枢部41
   を同軸に枢支するためのピボット５とより成り、前記高
   弾性テンプル４は、煽りブラケット３の自由端側に部分
   的に接続Ｊされ、かつ、この接続部Ｊから要枢部41に至
   るストレッチ部42は前記煽りブラケット３の自由端側を
   押し開きする方向へ復元弾力が働くように撓曲させた状
   態で、前記蝶番片２のナックル部21において当該要枢部
   41と煽りブラケット３の差込ナックル部31とをピボット
   ５によって同軸に枢支せしめたことを特徴とする眼鏡テ
   ンプルの複合蝶番機構。
2. 【請求項２】 βチタンまたは超弾性合金の線材によっ
   て高弾性テンプル４が作製されており、この高弾性テン
   プル４が煽りブラケット３の自由端にコイル状に巻付く
   ことによって接続部Ｊを形成していることを特徴とする
   請求項１記載の眼鏡テンプルの複合蝶番機構。
3. 【請求項３】 煽りブラケット３の差込ナックル部31
   が、2枚の翼片31ａ・31aによって形成されており、この翼
   片31ａと31ａとの内股間隙部31ｂに高弾性テンプル４の
   要枢部41を狭入させた状態でピボット５により蝶番片２
   のナックル部21に同軸に枢支せしめたことを特徴とする
   請求項１又は２記載の眼鏡テンプルの複合蝶番機構。
4. 【請求項４】 高弾性テンプル４におけるストレッチ部
   42の復元弾力が緩やかであり、煽りブラケット３に対す
   る復元弾力がテンプル４の拡展操作を助勢して軽快な拡
   展を可能にすることを特徴とする請求項１〜３の何れか
   一つに記載の眼鏡テンプルの複合蝶番機構。
5. 【請求項５】 高弾性テンプル４におけるストレッチ部
   42が強い復元弾力を帯有して煽りブラケット３の自由端
   部を強く押し開きしてテンプル４の自動拡開を可能にし
   たことを特徴とする請求項１〜３の何れか一つに記載の
   眼鏡テンプルの複合蝶番機構。