JP2001141061A - 2部材間の封止構造 - Google Patents

2部材間の封止構造

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JP2001141061A
JP2001141061A JP32553099A JP32553099A JP2001141061A JP 2001141061 A JP2001141061 A JP 2001141061A JP 32553099 A JP32553099 A JP 32553099A JP 32553099 A JP32553099 A JP 32553099A JP 2001141061 A JP2001141061 A JP 2001141061A
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聡 常世田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 取り扱いが容易で、取り付け相手の構造を簡
略化することができ、しかも、シール圧を特別大きくし
なくても、高いシール性能を確保する。 【解決手段】 互いに結合される2つの部材104、2
00のフランジ面104a、200aにシールリング3
5を配置し、少なくとも一方の部材104に形成された
開口(偏心体軸軸受孔)110aをシールリング35に
よってシールする2部材間の封止構造において、開口1
10aの内周縁にスナップリング160によって段差部
34を形成し、該段差部34にシールリング35のシー
ルリング本体35aを押し込み、その状態で他方の部材
200を一方の部材104に結合することで、他方の部
材200のフランジ面200aによりシールリング35
の環状膨出部35bを押圧変形させ、他方の部材のフラ
ンジ面200aとシールリング35の環状膨出部35b
の押圧接触により開口110aをシールした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに結合される
2つの部材間をシールリングを用いて封止する2部材間
の封止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に産業用の機械では、内部の機構に
潤滑油を供給することで、円滑な動きを保証し、性能の
安定を確保するようにしている。特に、歯車を用いた減
速機では、外部からグリースを供給して、歯車の噛み合
い部分の潤滑を行うことが必須である。この場合、グリ
ースの供給空間を外部と遮断する必要があるために、一
般的にはシールリング等を用いた封止構造が採られてい
る。ここでは、従来の封止構造を説明するに当たり、ま
ず、対象となる減速機から説明する。
【0003】図6は減速機の一例として、内接噛合遊星
歯車構造を採用した減速機の断面図を示し、図7は図6
のVII−VII矢視図である。図6において、符号101で
示すものは円筒状のケーシングである。このケーシング
101は、筒壁を軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔
102を有している。ケーシング101内の中心部に
は、図示しないモータによって回転駆動される入力軸1
03の先端が図中右側から挿入されている。
【0004】ケーシング101内には、軸方向に間隔を
おいて厚肉円板状の第1の支持ブロック(図中左側)1
04と第2の支持ブロック(図中右側)105とが互い
に対向して配置されている。第1の支持ブロック104
の外端面(図中左端面)は相手部材を取付けるフランジ
面(合わせ面)104aとされ、ケーシング101の外
側に若干突き出ている。これら第1、第2の支持ブロッ
ク104、105は、それぞれ軸受106a、106b
を介してケーシング101の内周に回転自在に支持され
ている。なお、軸受106aの外側において、第1の支
持ブロック104とケーシング101の隙間はオイルシ
ール130により塞がれている。
【0005】両支持ブロック104、105は、入力軸
103と平行に配した3本のキャリアピン150により
一体に連結・固定され、全体でキャリアを構成してい
る。図7に示すように、第1の支持ブロック104のフ
ランジ面104aには、相手部材を取付けるためのボル
トを締結する多数のねじ穴151が設けられている。ね
じ穴151は、フランジ面104aに露出しているキャ
リアピン150の端面にも形成されている。そして、図
8に示すように、これら多数のねじ穴151に固定用ボ
ルト155をねじ込むことにより、相手部材200のフ
ランジ面(合わせ面)200aを強固に連結・固定する
ことができるようになっている。
【0006】又、ケーシング101内には、3本の偏心
体軸108が入力軸103と平行に配設されている。こ
れら偏心体軸108は、入力軸103と同心の円周上に
周方向に等間隔で配設されており、前記各キャリアピン
150の中間に位置している。そして、各々の偏心体軸
108の両端部が、偏心体軸軸受109a、109bを
介して第1の支持ブロック104及び第2の支持ブロッ
ク105の各偏心体軸軸受孔(開口)110a、110
bにそれぞれ回転自在に支持されている。
【0007】各偏心体軸108の第1の支持ブロック1
04側には、前記偏心体軸軸受109aで支持されてい
る部分より軸方向中間部寄りに伝動歯車113が取付け
られている。
【0008】第1の支持ブロック104、第2の支持ブ
ロック105の径方向の中心には、それぞれ中心孔11
4、115が形成されており、それら中心孔114、1
15に前記入力軸103が第2支持ブロック105側か
ら挿入されている。
【0009】入力軸103の先端は、第1支持ブロック
104の中心孔114内にわずかに入った位置にあり、
その入力軸103の先端に、前記各偏心体軸108に固
定した伝動歯車113と噛合するピニオン116が形成
され、これにより、入力軸103の回転がピニオン11
6及び伝動歯車113を介して3本の偏心体軸108に
等しく分配されるようになっている。
【0010】各偏心体軸108の軸方向の中央部には、
軸方向に並んで2つの偏心体117a、117bが設け
られている。これら偏心体117a、117bは、互い
に180°位相がずれている。
【0011】一方、第1、第2の支持ブロック104、
105の間には、ケーシング101の内径よりやや小さ
い外径の円板状の2枚の外歯歯車118a、118bが
軸方向に並べて配置されている。各外歯歯車118a、
118bには、前記偏心体軸108が貫通する3つの偏
心体軸受孔119a、119b(図6)が設けられてお
り、各偏心体軸受孔119a、119bに、前記各偏心
体117a、117bが偏心体軸受120a、120b
を介して嵌合されている。これにより、外歯歯車118
a、118bは、その中心が入力軸103の回転中心に
対して所定距離だけ偏心した状態に支持され、偏心体軸
108の1回転毎に、入力軸103の中心に対して1回
転だけ揺動回転するようになっている。
【0012】このように、外歯歯車118a、118b
が配置されることにより、両支持ブロック104、10
5間には、第1支持ブロック104側から第2の支持ブ
ロック105側に向かって順に、伝動歯車113、外歯
歯車118a、外歯歯車118bが互いに隣接して並ん
でいる。
【0013】偏心体軸108を支持する図6中左側の偏
心体軸軸受109aと伝動歯車113は、左側の偏心体
117aの端面と、第1の支持ブロック104の偏心体
軸軸受孔110a内周に係合したスナップリング160
とで挟まれており、それにより偏心体軸108上で位置
決めされている。
【0014】又、前記偏心体軸受120a、120bと
しては、ここではニードル軸受が用いられている。そし
て、この偏心体軸受120a、120bの軸方向の位置
決めが次のように行われている。
【0015】即ち、第1の支持ブロック104寄りの左
側の偏心体軸受120aは、図6において左端側が前記
伝動歯車113の側面で直接位置決めされ、右端側が両
偏心体117a、117b間に設けたフランジ122に
より位置決めされている。又、第2の支持ブロック10
5寄りの偏心体軸受120bは、左端側が両偏心体11
7a、117b間に設けた前記フランジ122により位
置決めされ、右端側が止め板123により位置決めされ
ている。
【0016】止め板123は、偏心体軸108を支持す
る図6中右側の偏心体軸軸受109bにより押さえら
れ、偏心体軸軸受109bは、第2の支持ブロック10
5の偏心体軸軸受孔110b内周に係合したスナップリ
ング161により押さえられている。
【0017】外歯歯車118a、118bは外歯124
を有しており、この外歯歯車118a、118bの外周
側には、外歯歯車118a、118bが噛合する内歯歯
車125が配設されている。内歯歯車125はケーシン
グ101の内周に、ケーシング101と一体に形成され
ており、外ピン126からなる内歯を有している。な
お、外ピン126は、ピン押さえリング127により抜
け落ちないように内側から止められている。
【0018】外歯歯車118a、118bには、その中
心に、入力軸103の貫通する中心孔123a、123
bが形成され、又、キャリアピン150に対応する位置
に、嵌挿孔128a、128bが形成されている。そし
て、この嵌挿孔128a、128bをキャリアピン15
0が貫通している。
【0019】キャリアピン150は、第2の支持ブロッ
ク105が受けた回転力を、第1の支持ブロック104
に伝達するものであり、外歯歯車118a、118bの
嵌挿孔128a、128bは、外歯歯車118a、11
8bが揺動してもキャリアピン150と干渉しないだけ
の大きさの円孔として形成されている。
【0020】次に、このように構成された減速機の動き
について説明する。
【0021】この減速機は、図8に示すように、ケーシ
ング101をフレーム220にボルト170で締結する
ことによりフレーム220に装備される。そして、フレ
ーム220に支持したモータ230の軸231を入力軸
103に結合し、第1の支持ブロック104の相手部材
取付フランジ面104aに相手部材200をボルト15
5で締結することにより、相手部材200に対し回転出
力を伝達できるようになる。
【0022】モータ230を駆動することにより入力軸
103が回転すると、その回転は、第1減速段であるピ
ニオン116、伝動歯車113を介して減速され、3本
の偏心体軸108に伝達される。3本の偏心体軸8に
は、それぞれ2つの偏心体117a、117bが設けら
れており、当該偏心体117a、117bが同方向に同
一速度で偏心回転することにより、2枚の外歯歯車11
8a、118bが入力軸103に対して揺動回転を行
う。
【0023】ここで、ケーシング101即ち内歯歯車1
25が固定されているので、外歯歯車118a、118
bは、内歯歯車125によって自由な自転が拘束された
状態で、内歯歯車125に内接しながら揺動することに
なる。今、例えば外歯歯車118a、118bの歯数を
N、内歯歯車25の歯数をN+1とした場合、その歯数
差は1であるから、偏心体軸108が1回転する毎に、
外歯歯車118a、118bは内歯歯車125に対して
1歯分だけずれる(自転する)ことになる。
【0024】この「ずれ」、即ち外歯歯車118a、1
18bの自転は、3本の偏心体軸108を介して第1、
第2の支持ブロック104、105に伝達される。第
1、第2の支持ブロック104、105に伝わった回転
力は、両支持ブロック104、105がキャリアピン1
50を介して一体化されていることで、合力となって第
1の支持ブロック104から、同支持ブロック104に
連結された相手部材200に取り出される。なお、両支
持ブロック104、105は、偏心体軸108が1回転
すると、−1/N回転に減速される。
【0025】ところで、このような歯車や軸受を多数使
用し、各摩擦接触部分に大きな力の働く減速機では、グ
リースの供給が不可欠である。特に、この内接噛合遊星
歯車構造を採用した減速機では、偏心体軸108の周辺
が特に高度の潤滑を必要とするので、図8に示すよう
に、偏心体軸108を取り付けている偏心体軸軸受孔1
10aの1つからグリースを供給し、内部に行き渡らせ
るようにしている。
【0026】この場合、偏心体軸軸受孔110aのフラ
ンジ面104a上の開口部は、相手部材200のフラン
ジ面200aによって塞がれている。そこで、相手部材
200に、偏心体軸軸受孔110aに連通し且つそれよ
りも小径の給油孔202を明けて、そこからグリースを
ケーシング101の内部に供給するようにしている。な
お、ケーシング101の内部に行き渡ったグリースは、
フレーム220に設けた排出孔221より外部に排出さ
れる。図8の矢印A、Bはグリースの入出を示し、網目
で示す部分はグリースの行き渡る空間を示す。
【0027】ところで、減速機の出力を取り出す第1の
支持ブロック104のフランジ面104aには、ボルト
155で締め付けることにより、相手部材200のフラ
ンジ面200aを密着させるだけであるから、両フラン
ジ面104a、200a間には、グリースの漏れを防ぐ
ための封止手段を介在させる必要がある。
【0028】この点、従来では、相手部材200を取り
付ける際に、漏れ防止のための液状パッキンを減速機側
のフランジ面104aに塗布してフランジ面104a、
200a同士を合わせることにより、両フランジ面10
4a、200aの隙間からのグリース漏れを防止してい
る。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】ところが、液状パッキ
ンは、シール性確保のために限られた時間内に塗布作業
を完了させる必要があり、塗るのが難しいという問題が
ある。しかも、相手部材200や第1の支持ブラケット
104のフランジ面(合わせ面)200a、104aに
は、図9に示すように、固定ボルト155を通すための
多数のボルト挿通孔201やねじ孔151等があり、こ
れらがシールする必要のある偏心体軸軸受孔110aと
近接しているので、液状パッキンが塗りにくかった。特
に、図10に示すように、孔の大きさによっては、面取
りを施したようなときにボルト挿通孔201と偏心体軸
軸受孔110aとが重なることもあり(重なり部分を符
号208のハッチングで示す)、シール面が切れて、有
効なシールを確保できない場合もあった。
【0030】又、液状パッキンなどを塗布しない一般的
な封止構造の例として、図11、図12に示すように、
互いに結合される2つの部材301、302の合わせ面
301a、302aにOリング305、315を配置し
て、少なくとも一方の部材301に形成された開口30
3をこれらのOリング305、305によってシールす
る例が知られている。
【0031】図11の例の場合は、太めのOリング30
5を、開口303の周縁に形成した段差部304に嵌め
込み、大きい潰し代S1の分だけ押圧力(シール圧)を
かけることで、Oリング305を潰して、必要なシール
性能を確保するようにしている。この場合は、太めのO
リング305を使用するので取り扱いがやりやすい。
又、Oリング305の変形量が大であるから、シール効
果の持続性が長い上に、シール面の非平面度を吸収する
効果も期待できる。しかし、Oリング305の剛性が大
であるため両部材301、302の結合による押圧力を
大にしないと、十分にOリング305を変形させること
ができない。又、Oリング305を全周にわたって確実
に変形させて密封状態とするためには、両部材301、
302の結合力を高める必要あり、結合力付与手段であ
るボルト等の大型化や、部材301、302それ自体の
剛性のアップも図らなければならない。
【0032】又、図12の例の場合は、細めのOリング
315を、開口303の周囲の合わせ面301a上に形
成した環状溝314に嵌め込み、小さい潰し代S2の分
だけ押圧力(シール圧)をかけることで、Oリング31
5を潰して、必要なシール性能を確保するようにしてい
る。この場合は、弱い押圧力で高いシール性を発揮でき
る。しかし、細いOリング315は柔らかいので取り扱
いにくく、脱落しないように環状溝314に嵌め込む必
要があり、精度の良い溝の形成に手間と時間がかかると
いう問題がある。又、シール圧が小さくてもシール可能
であるが、合わせ面301a、302aの平坦度が低い
と、均一な変形量をOリング315に与えることができ
ないため、シール性が低下するという問題もある。
【0033】本発明は、上記事情を考慮し、取り扱いが
容易で、取り付ける相手側の構造も簡略化することがで
き、しかも、シール圧を特別大きくしないでも、高いシ
ール性能を確保することのできるシールリングを合理的
に使用した2部材間の封止構造を提供することを目的と
する。
【0034】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、互い
に合わせ結合される2つの部材の合わせ面の少なくとも
一方に開口が臨まされた構造における前記開口付近を、
可撓性材料よりなるシールリングを用いて封止する、2
部材間の封止構造において、前記一方の部材の開口の内
周面に半径方向内側に突出する段差部を形成し、前記シ
ールリングを、該段差部に押し込まれるドーナツ状のシ
ールリング本体と、該シールリング本体より前記他方の
部材側に突出した環状の膨出部とを備えたものとし、両
部材を合わせ結合したときに、他方の部材の合わせ面に
該環状の膨出部が押圧接触されるように、前記段差部の
合わせ面からの深さ、シールリングの前記本体及び膨出
部の高さを設定したことにより、上記課題を解決したも
のである。
【0035】この発明では、両部材を合わせ結合したと
きに、他方の部材の合わせ面に前記環状の膨出部が押圧
接触されるように、前記段差部の合わせ面からの深さ、
シールリングの前記本体及び膨出部の高さが設定され
る。そして他方の部材の合わせ面で環状の膨出部を押圧
変形させることにより、2部材間のシールを行う。
【0036】従って、シールリングの本体部分(シール
リング本体)を潰さずに、局部的に突出した環状の膨出
部のみを変形させればよいので、小さなシール圧で所定
のシール性能を確保することができる。又、シールリン
グ本体には押圧力をかける必要がないので、シールリン
グ本体を大きめ(厚め)で剛性大に形成することがで
き、扱いやすく設計することができる。従って、開口の
内周面に形成した段差部に安定的に簡単に装着すること
ができ、液状パッキンを合わせ面に塗布したり、合わせ
面にシール材を収容するための溝を形成するなどの面倒
がなく、加工及び組み付け作業の容易化を図ることがで
きる。
【0037】又、シール圧が小さくてすむので、2つの
部材を結合する力を特に大きくする必要がなく、シール
性確保のために結合力をアップしたり、2つの部材の剛
性を高めたりする必要がなくなる。又、シール圧を小さ
くできることから、シールリングに隣接する部材にかか
る予圧を小さくすることができる。
【0038】更に、段差部にシールリング本体を押し込
んでいるので、シール圧を段差部で確実に受け止めるこ
とができ、段差部の背後に軸受等が存在する場合でも、
シール圧の影響が軸受に及ばないようにすることができ
る。
【0039】なお、環状膨出部は、他方の部材の合わせ
面に対向するシールリング本体の表面の最内周部、中央
部、最外周部のどこに配置してもよいが、最内周部に配
置するの好ましい(請求項2)。そうした場合、近接し
て他の開口が隣りにある場合にも、確実に当該開口のみ
をシールすることができるようになる。
【0040】なお、シールリング本体を押し込む段差部
は、開口の内周縁に切欠を設けることで形成してもよい
が、スナップリングという簡易な手段で、段差部を形成
することもできる(請求項3)。そうする場合には、開
口の内周面に溝を形成し、その溝にスナップリングを係
合すればよく、簡単にシールリングを受けるための段差
部を確保することができる。
【0041】通常、例えば図6〜図8を用いて詳述した
ように、スナップリングは軸受の位置規制のために使用
されるので、軸受を係止するためのスナップリングで前
記段差部を形成してもよい(請求項4)。そうした場合
は、スナップリングによってシールリングに作用するシ
ール圧(押圧力)を受け止めることができるので、軸受
にシール圧が予圧として作用することを防止できる。従
って、軸受に予圧がかかって、劣化が早まったり、回転
効率が低下したりすることがない。この効果は特に図6
〜図8で示したような精巧な内部構造を有する減速機に
本発明を適用する場合に有効である。
【0042】又、他方の部材の合わせ面は平坦であって
もよいが、合わせ面上に一方の部材の開口内に進入する
凸部を設け、該凸部の端面でシールリングの環状膨出部
を押圧変形させて、凸部の端面とシールリングの環状膨
出部の押圧接触により開口をシールするようにしてもよ
い(請求項5)。
【0043】又、シールリング本体の内径を段差部の内
径よりも小さくすることで、シールリング本体の内周部
を段差部よりも内周側に突出させ、その段差部よりも内
周側に突出したシールリング本体の内周部に環状膨出部
を配置してもよい(請求項6)。そうした場合は、シー
ルリングの内周側部分を撓みやすくすることができ、そ
の撓みやすい部分に配置した環状膨出部によって、一層
小さいシール圧で確実なシールを行うことができる。
【0044】又、他方の部材には開口はあってもなくて
もよいが、他方の部材に、一方の部材に形成した開口と
連通し且つ該開口よりも小さい開口を形成し、両部材の
開口を潤滑油の流通路として利用するようにしてもよい
(請求項7)。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。
【0046】図1は本発明の実施形態のシールリング5
を用いて、2つの部材1、2間をシールした封止構造を
示す概略断面図である。第1の部材1と第2の部材2
は、互いに合わせ面1a、2aを合わせて結合されるも
ので、第1の部材1に開口3が形成されている。開口3
の内周縁(内周面)には、矩形断面の切欠を形成するこ
とによって、結果として半径方向内側に向けて突出形成
された段差部4が設けられている。
【0047】シールリング5は、ゴムや樹脂等の可撓性
材料により一体成形されたもので、シールリング本体5
aと環状膨出部5bとを備えている。
【0048】シールリング本体5aは全体がドーナツ状
とされ、段差部4よりも若干大きめに作られており、あ
る程度の力で段差部4に押し込めるようになっている。
【0049】環状膨出部5bは、シールリング本体5a
より第2の部材2側に突出し、両部材1、2を結合した
ときに第2の部材2の合わせ面2aに押圧接触されるも
のであり、第2の部材2の合わせ面2aに対向するシー
ルリング本体5aの表面の最内周部に形成されている。
この場合、シールリング本体5aの内径D2は、段差部
4の最内周縁の内径D1よりも小さく設定されている。
【0050】段差部4の深さh1及びシールリング本体
5a及び環状膨出部5bの高さh2、h3に関しては、
相手側の第2の部材2を第1の部材1に合わせ結合した
ときに、環状膨出部5bが押圧接触されて変形し、且つ
合わせ面2aがシールリング本体5aの上面にも押圧接
触されるが、あまり強くは圧接しない程度に設定されて
いる。
【0051】図示の封止構造を得るには、開口3の内周
縁の段差部4にシールリング5のシールリング本体5a
を押し込む。そして、その状態で第2の部材2を第1の
部材1に結合することで、第2の部材2の合わせ面2a
により、シールリング5の環状膨出部5bを押圧変形さ
せ(潰し)、第2の部材2の合わせ面2aとシールリン
グ5の環状膨出部5bの押圧接触により、合わせ面1
a、2aに臨む開口3をシールする。
【0052】その場合、シールリング本体5aの内径D
2と段差部4の内径D1との関係から、シールリング本
体5aの内周部が段差部4よりも内周側に突出するの
で、シールリング5の内周側部分が撓みやすくなり、そ
の部分にある環状膨出部5bを小さい力で変形させるこ
とができる。
【0053】この実施形態のシールリング5、及び該シ
ールリング5を用いた2部材1、2間の封止構造では、
剛性の高いシールリング本体5aをほとんど潰さずに、
局部的に突出した環状膨出部5bのみを変形させてシー
ルするので、小さなシール圧で所定のシール性能を発揮
することができる。又、シールリング本体5aに対して
は特に押圧力をかける必要がないので、シールリング本
体5aを大きめ(厚め)で剛性大に形成することがで
き、扱いやすく設計することができる。
【0054】従って、開口3の内周縁に形成した段差部
4に安定した姿勢で簡単に装着することができ、従来の
ように液状パッキンを合わせ面に塗布したり、合わせ面
にシール材を収容するための環状溝を形成したりする必
要がなく、加工及び組み付けの容易化を図ることができ
る。
【0055】又、シール圧が小さくてすむことから、2
つの部材1、2を結合する力を特別に大きく設定する必
要がなく、シール性確保のために結合力をアップした
り、2つの部材1、2の剛性を高めたりする必要がな
い。又、シールリング5に隣接する部材がある場合に
は、それにかかる予圧を小さくすることもできる。
【0056】なお、環状膨出部を設ける位置は、図2の
(A)〜(C)に示すように任意に設定することができ
る。
【0057】(A)のシールリング5では、シールリン
グ本体5aの表面の最内周部に環状膨出部5bを設けて
いる。
【0058】(B)のシールリング15では、シールリ
ング本体5aの表面の中央部に環状膨出部15bを設け
ている。
【0059】(C)のシールリング25では、シールリ
ング本体25aの表面の最外周部に環状膨出部25bを
設けている。
【0060】このうち、最も望ましいのは(A)のもの
である。この(A)のシールリング5によれば、近接し
て他の開口が隣りにある場合にも、確実に当該開口のみ
をシールすることができるようになる。又、図1の例の
ように、シールリング本体5aの内径D2が、段差部4
の最内周縁の内径D1よりも小さく設定されている場合
には、シールリング本体自体の撓みも有効に利用でき
る。
【0061】次に本発明の封止構造を減速機に適用した
例を説明する。
【0062】図3は本発明の封止構造を適用した減速機
の断面図である。本図において、図8と同一の構成要素
には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】この減速機では、第1の支持ブロック10
4のフランジ面104aと、相手部材200のフランジ
面200aとの隙間からの漏れ防止に本発明の封止構造
が適用されている。フランジ面104aには、シールす
べき3つの偏心体軸軸受孔110aが開口しており、そ
の3つの開口について、それぞれ本発明の封止構造が適
用されている。図3では、そのうちの給油孔202につ
ながる開口についての封止構造のみが図示されている。
図示されていない2つの封止構造は、給油孔がない部分
に適用されており、給油孔の有る無しだけが異なる。
【0064】図4はその封止構造に使用されているシー
ルリング35を拡大して示し、図5は図3の封止構造部
分を拡大して示す。
【0065】シールリング35は、図4に示すように、
矩形のシールリング本体35aと、そのシールリング本
体35aの上面の内周部に突設された環状膨出部35b
とからなる。環状膨出部35bは断面が左右対称の山形
をなしている。
【0066】一方、この減速機では、図7、図8を用い
て先に説明したように、偏心体軸軸受孔110aの内周
に、偏心体軸108を支持する軸受109aが嵌合され
ており、軸受109aが、偏心体軸軸受孔110aの内
周に係止されたスナップリング160により軸方向に位
置決めされている。この場合、偏心体軸軸受孔110a
の内周面より内方に突出するスナップリング160が、
シールリング35を保持するための段差部34を形成し
ている。
【0067】そして、図5に示すように、スナップリン
グ160によって形成された段差部34に、シールリン
グ35のシールリング本体35aが押し込まれている。
シールリング35の寸法は、外径が、段差部34に対し
てある程度の力を込めて押し込めるよう偏心体軸軸受孔
110aの内径よりも若干大きめに設定され、内径D2
が、段差部34を構成するスナップリング160の内径
D1よりも小さく設定されている。又、シールリング本
体35aの高さH2が、段差部34の深さH1よりも小
さく設定され、シールリング本体35aと環状膨出部3
5bの高さH2、H3の合計H4が、段差部34の深さ
H1よりも大きく設定されている。
【0068】このような寸法関係により、相手部材20
0を第1の支持ブラケット104のフランジ面104a
に結合することで、相手部材200のフランジ面200
aにより、シールリング35の環状膨出部35bを押圧
変形させ(潰し)、相手部材200のフランジ面200
aとシールリング35の環状膨出部35bの押圧接触に
より、フランジ面104a、200aに臨む偏心体軸軸
受孔110aの開口をシールしている。
【0069】この場合も、シールリング本体35aの内
径D2とスナップリング160の内径D1との関係か
ら、シールリング35の内周側部分が撓みやすくなり、
その部分に存在する環状膨出部35bを小さい力で変形
させることができる利点が得られる。
【0070】このような封止構造を採用したことによ
り、小さなシール圧で所定のシール性能を発揮すること
ができる。又、シールリング本体35aには押圧力がか
からないので、シールリング本体35aを大きめ(厚
め)で剛性大に形成することができ、扱いやすくなる。
従って、段差部34に対してシールリング35を安定的
に簡単に装着することができ、従来のように、液状パッ
キンを(孔が多くて塗りにくい)合わせ面に塗布した
り、シール材を収容するための環状溝を合わせ面に形成
してそこに(扱いにくい細めの)Oリングを装着したり
する必要がなくなる。その結果、加工及び組み付け作業
の容易化が図れる。又、シール圧が小さくて済み、それ
でいてシール材を大きく変形させることができるため相
手部材200を結合する力を特に大きくする必要がな
く、シール性確保のために結合力をアップしたり、相手
部材200や第1の支持ブロック104の剛性を高めた
りする必要がなく、且つ良好なシール性能を長期にわた
って維持することができる。
【0071】又、軸受109aを係止するスナップリン
グ160によって、シールリング35を保持するための
段差部34を形成しているので、シールリング35の力
を受けるためのスナップリングや段差部を別に設ける必
要がなく、構造の簡略化が図れる。更に、スナップリン
グ160でシールリング35のシール圧を受けることに
なるので、軸受109aにシール圧が予圧として作用す
ることもなく、軸受109aに予圧がかかって劣化が早
まったり、回転効率が低下したりすることがない。
【0072】なお、上記実施形態では、相手側の部材
(図1における他方の部材2、図5における相手部材2
00)の合わせ面2aやフランジ面200aが平坦な面
とされている場合を説明したが、他方の部材2の合わせ
面2aや相手部材200のフランジ面200a上に、一
方の部材1の開口3内や第1の支持ブロック104の偏
心体軸軸受孔110a内に進入する凸部を設け、該凸部
の端面でシールリングの環状膨出部を押圧変形させ、凸
部の端面とシールリングの環状膨出部の押圧接触により
開口をシールするようにしてもよい。その場合は、環状
膨出部の高さは凸部の突出高さに応じて変更する。
【0073】又、上記実施形態で示した封止構造は、減
速機ばかりでなく、他の一般機械の合わせ面のシールを
行う必要のある箇所に広く適用することができる。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
取り扱いが容易で、取り付ける相手側の構造を簡略化す
ることができ、しかも、小さなシール圧で所定のシール
性能を発揮することができる。
【0075】従って、従来のように、液状パッキンを合
わせ面に塗布したり、合わせ面にシール材を収容するた
めの環状溝を形成したりする必要がなく、加工及び組み
付け作業の容易化が図れる。
【0076】又、シール圧が小さくてすむので、部材同
士を結合する力を特に大きくする必要がなく、シール性
確保のために結合力をアップしたり、部材そのものの剛
性を高めたりする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のシールリング及びそれを用
いた封止構造の概略断面図
【図2】本発明の実施形態のシールリングの断面図
【図3】本発明の封止構造を適用した減速機の断面図
【図4】図3の減速機の封止構造に使用されているシー
ルリングの平面図、断面図、要部拡大断面図
【図5】図3の減速機の封止構造の拡大図
【図6】従来の内接噛合遊星歯車構造を採用した減速機
の断面図
【図7】図6のVII−VII矢視図
【図8】図6の減速機の使用状態の断面図
【図9】図8のIX−IX矢視図
【図10】従来の問題点の説明図
【図11】従来の一般的な封止構造の断面図
【図12】従来の一般的な封止構造の他の例を示す断面
【符号の説明】
1…第1の部材(一方の部材) 1a…合わせ面 2…第2の部材(他方の部材) 2a…合わせ面 3…開口 4…段差部 5、15,25,35…シールリング 5a,15a,25a,35a…シールリング本体 5b、15b、25b、35b…環状膨出部 34…段差部 104…第1の支持ブラケット(一方の部材) 104a…フランジ面(合わせ面) 110a…偏心体軸軸受孔(開口) 160…スナップリング 200…相手部材(他方の部材) 200a…フランジ面(合わせ面)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】互いに合わせ結合される2つの部材の合わ
    せ面の少なくとも一方に開口が臨まされた構造における
    前記開口付近を、可撓性材料よりなるシールリングを用
    いて封止する、2部材間の封止構造において、 前記一方の部材の開口の内周面に半径方向内側に突出す
    る段差部を形成し、 前記シールリングを、該段差部に押し込まれるドーナツ
    状のシールリング本体と、該シールリング本体より前記
    他方の部材側に突出した環状の膨出部とを備えたものと
    し、 両部材を合わせ結合したときに、他方の部材の合わせ面
    に該環状の膨出部が押圧接触されるように、前記段差部
    の合わせ面からの深さ、シールリングの前記本体及び膨
    出部の高さを設定したことを特徴とする2部材間の封止
    構造。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記環状の膨出部が、他方の部材の合わせ面に対向する
    シールリング本体の表面の最内周部に形成されているこ
    とを特徴とする2部材間の封止構造。
  3. 【請求項3】請求項1又は2において、 前記段差部が、開口の内周面に嵌着したスナップリング
    により形成されていることを特徴とする2部材間の封止
    構造。
  4. 【請求項4】請求項3において、 前記スナップリングが、前記開口の内周に嵌合された軸
    受を係止するものであることを特徴とする2部材間の封
    止構造。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかにおいて、 前記他方の部材の合わせ面上に前記一方の部材の開口内
    に進入する凸部が設けられ、該凸部の端面で前記シール
    リングの環状の膨出部を押圧変形させ、凸部の端面とシ
    ールリングの環状の膨出部との押圧接触により前記開口
    をシールしたことを特徴とする2部材間の封止構造。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかにおいて、 前記シールリング本体の内径を前記段差部の最内周縁の
    内径よりも小さくすることで、シールリング本体の内周
    部を段差部よりも更に内周側に突出させ、その段差部よ
    りも内周側に突出したシールリング本体の内周部に前記
    環状膨出部を配置したことを特徴とする2部材間の封止
    構造。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれかにおいて、 前記他方の部材に、前記一方の部材に形成した開口と連
    通し且つ該開口よりも小さい開口が形成され、両部材の
    開口が潤滑油の流通路として利用されていることを特徴
    とする2部材間の封止構造。
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