JP2001131705A - 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管 - Google Patents

極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管

Info

Publication number
JP2001131705A
JP2001131705A JP31835799A JP31835799A JP2001131705A JP 2001131705 A JP2001131705 A JP 2001131705A JP 31835799 A JP31835799 A JP 31835799A JP 31835799 A JP31835799 A JP 31835799A JP 2001131705 A JP2001131705 A JP 2001131705A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel pipe
welded
steel
pipe
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP31835799A
Other languages
English (en)
Inventor
Nobuyuki Morito
延行 森戸
Motoaki Itaya
元晶 板谷
Takaaki Toyooka
高明 豊岡
Yoshihiro Ozaki
芳弘 尾崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP31835799A priority Critical patent/JP2001131705A/ja
Publication of JP2001131705A publication Critical patent/JP2001131705A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

Landscapes

  • Particle Accelerators (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)
  • Welding Or Cutting Using Electron Beams (AREA)
  • Butt Welding And Welding Of Specific Article (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大型粒子加速器ビームパイプ用として好適
な、極低温での透磁率が低く、気密性に優れた高Mn非磁
性溶接鋼管を提案する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.15%、Mn:26.0
〜30.0%、Cr:5.0 〜10.0%、N:0.05〜0.15%、ある
いはさらにNi:0.50〜5.0 %を含有する鋼板を円筒状に
成形し溶接接合して溶接鋼管とし、大型粒子加速器用ビ
ームパイプとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極低温用構造材料
として好適な溶接鋼管に係り、とくに超電導磁石などの
強力な磁場発生装置を、あるいは粒子加速器を建設する
ために必要なビームパイプを、構成するために必要な、
極低温で使用される非磁性鋼溶接鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】核融合発電や粒子加速器、超電導力貯蔵
などの各種の超電導利用技術において、強力な磁界を発
生させるために大容量の電流を流す必要から超電導磁石
が用いられている。このような超電導磁石内には強大な
電磁力が誘起され、しかも通常液体ヘリウムにより2〜
4Kの極低温に冷却されることから、超電導磁石を支持
する構造材料には極低温下で強大な電磁力に耐えること
ができる機械的強度が要求される。しかも、均一で安定
な強磁界分布をできるだけ広範囲に発生させることが基
本的な目的であるから、構造材料による磁界への影響は
限りなく小さくすることが肝要となる。したがって、磁
界との相互作用を起こさない非磁性材料であることが必
須条件である。
【0003】以上の観点から、超電導磁石の内部や周辺
に用いる構造材料には、極低温での高い機械的性質と極
めて低い透磁率を具備することが求められる。とくに、
粒子加速器用ビームパイプは、素粒子を超高真空中で加
速させるために、粒子加速器には必須の部材であるが、
超電導磁石で構成された均一な分布を損なわないことが
重要となる。このため、ビームパイプは、磁界との相互
作用を起こさないように、極めて低い透磁率を具備する
ことが求められる。さらに、ビームパイプは超伝導コイ
ルに直接接触しないため、極低温下で強大な電磁力に耐
える高い機械的強度を要求されないが、ビームパイプ内
を高真空度に維持できるように、気密性が要求される。
【0004】従来、上記した超電導磁石の内部や周辺に
用いる構造材料として検討されていた素材としては、オ
ースナイト系ステンレス鋼、高Mn鋼、アルミニウム合
金、チタン合金、さらに繊維強化プラスチックなどがあ
る。これら構造材料に要求される強度、透磁率および熱
膨張率は、製作する超電導磁石の設計磁界の強さや目的
とする磁場の分布の均一性などによって異なってくる
が、極低温での強度が高く、透磁率および熱膨張率が小
さいことが材料選択のうえで重要となる。
【0005】繊維強化プラスチックは、非磁性であり、
比重が小さくて取り扱いやすく、オーステナイト系ステ
ンレス鋼に比較して低熱膨張係数を有するが、単位断面
積当たりの強度が低く、さらに気密性、耐熱性が低く、
ベーキング等の脱ガス処理により高真空を得る大型の粒
子加速器用材料としては問題を残していた。また、チタ
ン合金は、比重が小さく、強度が高く高比強度を有して
いるが、低温での靱性が低く、コストが高いという問題
がある。
【0006】アルミニウム合金は、軽量で、比強度が高
く透磁性も極めて低いことから、極低温での多くの用途
に用いられているが、大型粒子加速器におけるように設
計磁界を高くした場合には強度が不足し、溶接性にも問
題がある。また、ベーキング等の脱ガス処理を行う場合
には高真空度の到達が困難であり、ベーキング等の脱ガ
ス処理を行い高真空度を得る大型の粒子加速器用材料と
しては問題が多い。
【0007】一般のオーステナイト系ステンレス鋼は、
低温での強度と靱性が不十分であるため、窒素を添加
し、低炭素含有量としたステンレス鋼が開発されてい
る。しかし、このステンレス鋼は、オーステナイト相の
安定性が不十分であるため、低温での変形によってオー
ステナイト相の一部が強磁性体のマルテンサイト相に変
態する。このため、靱性の低下を招くとともに、極低温
での透磁率が十分には低くならないという問題があっ
た。
【0008】その後、さらにNi含有量を高めたオーステ
ナイト系ステンレス鋼が開発されたが、極低温用構造材
料としてはコストの高いことと熱膨張係数の大きいこと
に問題があった。このような問題に対し、特公昭59−11
661 号公報や特公平5-18887 号公報には、比較的安価な
高Mn非磁性鋼やその製造方法が提案されている。
【0009】しかし、特公昭59−11661 号公報に記載さ
れた高Mn非磁性鋼は、極低温での透磁率が高く、大型の
粒子加速器用としては問題があった。また、特公平5-18
887号公報に記載された技術では、長時間の時効処理を
必要とし、生産性が低下するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】さらに、粒子加速器用
ビームパイプに適用される管としては、比較的薄肉で内
面美麗、気密性に優れかつ円周方向に均一で、かつ極低
温での極めて低い透磁率を有する小径管が好ましい。比
較的薄肉の小径管は、薄肉の鋼板を円筒状に成形し継目
部(以下、シーム部ともいう)を溶接して造管する溶接
鋼管とするのが経済性および製造性のうえで好ましい。
しかし、従来の高Mn非磁性鋼は、加工性が必ずしも優れ
ておらず、さらに極低温における透磁率が高くなり、ま
た、溶接部の透磁率が母材のそれにくらべ高くなりすぎ
て円周方向に均一な特性が得られないという問題があっ
た。
【0011】本発明は、上記した従来技術の問題を解決
し、大型の粒子加速器用ビームパイプに好適な、極低温
での透磁率が低く、円周方向に均一な低透磁率を有する
高Mn非磁性鋼溶接鋼管を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するために、まず、大型粒子加速器用ビーム
パイプに必要な特性を調査するとともに、高Mn非磁性鋼
板の極低温における透磁率におよぼす要因について鋭意
研究した。その結果、高Mn非磁性鋼板の極低温における
透磁率は、Mn増量によってオーステナイト相をより一層
安定化させることにより、低くすることが可能となると
いう知見を得た。
【0013】さらに、本発明者らは、上記した知見によ
り製造された鋼板を素材として、円筒状に成形し、継目
部を電気抵抗溶接法により溶接接合して溶接鋼管(電縫
鋼管)とすることにより、継目部での透磁率も母材並み
に低く維持され、かつ気密性も粒子加速器用ビームパイ
プとして十分な特性を有する鋼管となることを見いだし
た。
【0014】まず、本発明者らが行った基礎的実験結果
について、説明する。質量%で、C:0.10%、N:0.11
%、Mn:28.0%、Cr:7.5 %、Ni:1.0 %含有する鋼素
材(スラブ)を、加熱し熱間圧延により5.0mm 厚の熱延
板とした。ついで、この熱延板に熱延板焼鈍を施してか
ら硫酸酸洗処理し、冷間圧延を施し2.15mm厚の冷延板と
した。この冷延板を1100℃で乾燥AXガス雰囲気中で焼
鈍温度1100℃で焼鈍したのち、酸洗処理を行ってから調
質圧延を施し2.0mm 厚の鋼板とした。これら鋼板を外径
60mmφとなるようにスリットしてから、成形ロール群で
オープンパイプに成形し、高周波方式電気抵抗溶接(E
RW)法で溶接し電縫鋼管(溶接鋼管)とした。
【0015】この鋼管のシーム部近傍の各位置からサン
プルを採取し、振動試料型磁気測定装置で室温での透磁
率を測定した。その結果を図1に示す。横軸はシーム部
中心位置を0mmとして表示してある。図1から、シーム
部の透磁率は1.00147 であり、非溶接部(母材部)の1.
00142 と同等に、低い透磁率となっている。また、4K
における溶接部(シーム部)の透磁率は、4Kにおいて
も室温とほとんど同じであり、温度による透磁率の変化
は少ない。これは、本溶接鋼管におけるオーステナイト
相が極めて安定であるとともにネール温度が室温より高
いことによると考えられる。
【0016】また、この溶接鋼管のシーム部硬さはHv2
10〜225 であり、非溶接部の硬さHv185より若干高めで
あるが、旋盤等による外面加工はでき、何ら加工上の問
題はない。本発明は、上記したような知見に基づき、さ
らに検討を加えて完成されたものである。
【0017】すなわち、本発明は、鋼板を、円筒状に成
形し継目部を溶接接合してなる溶接鋼管であって、前記
鋼板が、質量%で、C:0.05〜0.15%、Mn:26.0〜30.0
%、Cr:5.0 〜10.0%、N:0.05〜0.15%、あるいはさ
らにNi:0.50〜5.0 %および/またはCa:0.02%以下を
含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特
徴とする極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管であり、また
本発明は、前記溶接接合が、電気抵抗溶接法を用いた溶
接接合であることが好ましい。
【0018】また、本発明は、質量%で、C:0.05〜0.
15%、Mn:26.0〜30.0%、Cr:5.0〜10.0%、N:0.05
〜0.15%、あるいはさらにNi:0.50〜5.0 %および/ま
たはCa:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不
純物からなる鋼板を、円筒状に成形し継目部を溶接接合
して製造された溶接鋼管からなる粒子加速器用ビームパ
イプであり、また、本発明では、前記溶接接合が電気抵
抗溶接法を用いた溶接接合であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】まず、本発明の溶接鋼管の化学成
分の限定理由について説明する。なお、以下、組成にお
ける質量%は単に%と記す。 C:0.05〜0.15% Cは、侵入型固溶元素であり、固溶強化により鋼の強度
を上昇させるために有効である。極低温での所望の降伏
応力を得るために、0.05%以上のCの含有を必要とす
る。一方、Cが0.15%を超えると、オーステナイト相が
不安定となり、炭化物が析出し、極低温での透磁率を低
く維持することができなくなるとともに、溶接性・加工
性が劣化する。このため、Cは0.05〜0.15%の範囲に限
定した。なお、Cの好ましい範囲は0.07〜0.13%であ
る。
【0020】N:0.05〜0.15% Nは、Cと同様に侵入型固溶元素であり、オーステナイ
ト相の安定化と低温強度の上昇のためには有益な添加元
素であり、0.05%以上の含有を必要とする。一方、Nが
0.15%を超えると、圧延加工性および溶接性を損ない、
さらに打抜き加工時の工具摩耗を加速させるとともに、
窒化物や炭窒化物の析出により透磁率を増加させる。こ
のため、Nは0.05〜0.15%の範囲に限定した。なお、N
の好ましい範囲は0.07〜0.13%である。
【0021】Mn:26.0〜30.0% Mnは、本発明おいて重要な元素で、オーステナイト相を
安定化させ、極低温でも極めて低い透磁率を実現するた
めに有用である。このような効果を得るためには、Mnは
26.0%以上の含有を必要とする。一方、30.0%を超える
と、靱性や溶接性および製造性の低下を招くことから、
Mnは26.0〜30.0%の範囲に限定した。
【0022】Cr:5.0 〜10.0% Crは、固溶強化によって機械的強度の上昇に寄与するほ
か、耐食性の向上に有効に作用する。このような効果は
5.0 %以上の含有で認められるが、10.0%を超えると、
オーステナイト相の安定化を阻害し低温での透磁率の上
昇を招く。このため、Crは5.0 〜10.0%の範囲に限定し
た。なお、本発明で対象とする材料を使用する環境は、
基本的には化学反応の進行が極めて緩慢な極低温・高真
空中であり、腐食性の観点からは劣悪でなく、この程度
のCr含有量で十分な耐食性を確保できる。なお、Crの好
ましい範囲は、6〜8%である。
【0023】Ni:0.50〜5.0 % Niは、オーステナイト相の安定化と極低温での靱性向上
に寄与するとともに、耐食性をも向上させる。本発明で
は必要に応じ含有できる。このような効果は少なくとも
0.50%以上の含有で認められるが、Niが高価であること
から、多量の含有は工業的には好ましいことではない。
このため、Niは0.50〜5.0 %の範囲とするのが好まし
い。これにより、本発明の鋼材は、SUS 316LN などの高
Ni系オーステナイトステンレス鋼に比較し、熱膨張係数
のみでなく、価格的にも大きな利点を有することにな
る。
【0024】Ca:0.02%以下 Caは、不可避的不純物として混入するSの害を抑制し、
熱間加工性を改善する目的で必要に応じ添加できる。な
お、Caの好ましい添加量は、0.004 〜0.01%の範囲内
で、かつCa、S、O各元素の含有量を質量ppm で表示
し、次(1)式 0.8 ×Ca+30>S+O ……(1) を満たすことが熱間加工性の確保のためには有効であ
る。より簡便な判断基準としてCa/S≧2、好ましくは
Ca/S≧3を用いることもできる。
【0025】なお、上記した成分以外の残部は、実質的
にはFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物と
しては、S:0.005 %以下、P:0.05%以下、O:0.00
5 %以下が工業的経済性の観点から許容できる。また、
炭化物、窒化物、炭窒化物などの析出物、殊にFe3C、Fe
4N等の強磁性析出物の生成や、例えばSiのようなオース
テナイト相の安定性を損なうような成分の含有は、目的
とする機械的性質などの満足する範囲で少ないことが望
ましい。
【0026】本発明の高Mn非磁性鋼溶接鋼管の製造方
法では、まず、上記した化学組成の鋼素材を、加熱し熱
間圧延を施し熱延板とする。本発明に好適な鋼素材は、
Mnを多量に含有していることもあり、高温ではMnが酸化
されやすいので、スラブ加熱温度を過度に高めることは
焼き減りを増やすだけでなく、Mnヒュームの過剰な発生
につながるので好ましくない。また、1200℃を超える
と、熱間脆性の兆候が現れ、耳割れ等の発生が懸念され
る。このため、熱間圧延の圧延開始温度の上限を1200℃
とするのが好ましい。また、熱間圧延の圧延開始温度が
1050℃未満となると、炭化物の溶解が不十分であり、ま
た、変形抵抗の増大という不具合が生じる。このため、
熱間圧延の圧延開始温度は1050〜1200℃の範囲とするの
が好ましい。なお、より好ましくは、1100〜1180℃であ
る。
【0027】また、本発明に好適な鋼板の製造に当たっ
ては、熱間圧延の圧延終了温度を700 ℃以上に限定する
のが好ましい。また、熱間圧延の圧延終了温度が1000℃
を超えると、再結晶による結晶粒の粗大化という不具合
が生じる。このため、熱間圧延の圧延終了温度は700 〜
1000℃の範囲に限定するのが好ましい。なお、より好ま
しくは、耳割れ防止の観点から、800 〜950 ℃である。
【0028】熱延板は、そのまま、あるいは熱延板焼鈍
を施されたのち、製品板として使用することもできるの
はいうまでもない。熱延板は、ついで熱延板焼鈍を施さ
れるのが好ましい。熱延板焼鈍は、組織の均一化のため
に実施するのが好ましい。熱延板焼鈍は950 〜1200℃の
温度範囲で行うのが望ましい。焼鈍温度が 950℃未満で
は、断面収縮率が減少し、1200℃を超えると脆化ととも
にスケール生成が過大となる。
【0029】ついで熱延板は、冷間圧延を施され冷延板
とされる。本発明では、冷間圧延は、所定の板厚とする
ことができればよく、圧延条件をとくに限定する必要は
ない。所定の板厚とされた冷延板は、ついで冷延板焼鈍
を施されるのが好ましい。冷延板焼鈍は、冷間圧延によ
る内部歪の解放、再結晶、析出物の固溶を主目的として
行う。とくに、炭化物、窒化物、炭窒化物をオーステナ
イトマトリックス相中に完全に固溶させ、低透磁率の確
保に不利な析出相を消失させるために不可欠のプロセス
である。焼鈍温度は1050〜1200℃とするのが好ましい。
焼鈍温度が、1050℃未満では、析出物の固溶が不十分で
あり、一方、1200℃を超えると、連続焼鈍を工業的に安
定して実施できなくなる。なお、好ましい焼鈍温度は、
1050〜1180℃である。また、この焼鈍の保持時間は、板
温が上記した温度に10〜120sec保持される時間とするの
が望ましい。
【0030】さらに、本発明では、冷延板は、上記した
範囲の焼鈍温度に保持されたのち、冷却する。冷却は、
炭化物や炭窒化物の析出を防止する目的で行うものであ
り、冷却速度が5〜30℃/s、を有する冷却であれば、
その冷却手段はとくに限定されない。本発明に好適な鋼
板の製造に当たっては、冷延板焼鈍後に、さらに調質圧
延を施してもよいのはいうまでもない。冷延板焼鈍とそ
の後の調質圧延とを組み合わすことにより、所望の機械
的強度に容易に調整することができる。調質圧延は、冷
間、好ましくは室温〜150 ℃で行い、所望の強度に応じ
て圧下率を調整するのが好ましい。なお、圧下率は30%
以下とするのが望ましい。調質圧延の圧下率が30%を超
えると、内部歪が過大となり、スリット・打抜き後の平
坦度が劣化する。30%以下程度の圧下率の調質圧延を施
しても、本発明の高Mn非磁性鋼板ではオーステナイト
相が極めて安定なため、透磁率は1.001 前後の低透磁率
を維持し、しかも4Kのような極低温になってもこの低
透磁率がほとんど変化しない。
【0031】さらに、本発明では、上記した方法で製造
された熱延鋼板、あるいは冷延鋼板を素材として、一群
の成形ロールにより連続成形し、円筒状のオープンパイ
プとしたのち、該オープンパイプの両エッジ部を加熱
し、溶融・圧接する溶接接合により、継目部(シーム
部)を有する溶接鋼管とする。シーム部を接合された溶
接鋼管は、その後、シーム部の健全性を非破壊検査等に
より検査され、所定の長さに切断され製品管とされるの
が好ましい。
【0032】本発明では、継目部(シーム部)の溶接接
合方法は、異種金属を用いることなく、継目部(シーム
部)の合金組成が変化しない溶接方法であれば、特に限
定する必要はなく、TIG溶接、電子ビーム溶接、電気
抵抗溶接がいずれも好適に適用できる。なかでも、電気
抵抗溶接法が、生産性、継目部の健全性の観点から好適
である。電気抵抗溶接の条件は、従来公知の条件内でよ
く、鋼管特性上とくに問題を生じない。とくに、粒子加
速器用ビームパイプとして必要な気密性は、継目部(シ
ーム部)をHeリーク試験や水圧試験を行うことにより、
高真空下においても十分に確保できることを確認してい
る。
【0033】本発明の溶接鋼管は、溶接部の組成が変化
しないため、溶接部である継目部(シーム部)の特性、
とくに透磁率の変化は少なく、非溶接部と同様に1.0015
以下の低透磁率を保持することができる。また、4Kに
おける継目部(シーム部)の透磁率は、4Kにおいても
室温とほとんど同じであり、温度による透磁率の変化は
少ない。これは、本発明鋼管におけるオーステナイト相
が極めて安定であることによると考えられる。
【0034】このように、本発明の溶接鋼管は、気密
性、および円周方向に均一な低透磁率を有する鋼管であ
り、粒子加速器用ビームパイプとして好適である。
【0035】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼素材を転炉で溶製
し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブに表2に
示す条件で熱間圧延を施し5.0 mm厚の熱延板とした。つ
いで、これら熱延板に表2に示す条件の熱延板焼鈍を施
し、酸洗処理を施したのち、冷間圧延で冷延板とした。
これら冷延板に、表2に示す条件で冷延板焼鈍を施し、
焼鈍後急冷処理を施した。冷延板焼鈍の焼鈍雰囲気は、
乾燥AXガスとした。また、冷延板焼鈍後冷却速度は約
15℃/sとした。
【0036】ついで、焼鈍済の冷延板に、酸洗処理を施
したのち、さらに表2に示す条件で調質圧延を施した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】得られた冷延鋼板(鋼帯)を素材とし、各
鋼板を成形ロール群で円筒状のオープンパイプに成形
し、高周波方式電気抵抗溶接(ERW)法で、溶接接合
し、外径60mmφの電縫鋼管(溶接鋼管)とした。溶接接
合後、電縫鋼管のシーム部健全性を超音波探傷により検
査した。これら電縫鋼管の非溶接部(母材部)、溶接部
(シーム部)から試験片を採取し、室温および4Kで
の引張試験、振動試料型磁気測定装置を用いた室温お
よび4Kでの透磁率の測定試験を実施した。また、シ
ーム部近傍での硬さ分布(シーム部中心から±15mmの範
囲)をビッカース硬さ計で測定した。また、これら電縫
鋼管について、室温〜液体窒素温度間の平均熱膨張係
数の測定試験を実施した。さらに、鋼管の気密性試験
を実施し鋼管の気密性を評価した。
【0040】なお、鋼管の気密性試験として、Heリーク
試験を行った。気密性は完全の場合○、若干でもリーク
の認められた場合×で評価した。また、鋼板(帯鋼)を
1300℃に加熱したのち、円筒状に成形し鍛接により接合
して鍛接鋼管とし、比較例として同様の試験を実施し
た。それらの結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】本発明例はいずれも、極低温における、0.
2 %耐力、引張強さも高い値を示し極低温における優れ
た機械的性質を有している。また、本発明例はいずれ
も、室温はもちろん、4Kにおいても、低い透磁率を示
し、また室温〜液体窒素温度間の熱膨張率も低く、優れ
た極低温における特性を有している。また、シーム部、
母材部ともに低い透磁率を示し、溶接による透磁率の変
化はほとんどない。また、シーム部の硬さは母材部にく
らべわずかの増加であり、シーム部近傍での硬さ変化も
少ない。
【0043】さらに、本発明例の鋼管は、鋼管の室温〜
液体窒素温度間での平均熱膨張率も低く、さらに鋼管の
気密性に優れ高真空度を維持することが可能であり、本
発明例の鋼管は、粒子加速器用ビームパイプとして十分
に適用できる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較
例は、室温〜液体窒素温度間の平均熱膨張係数が大き
く、また極低温での透磁率が高く、粒子加速器用ビーム
パイプとしては適用できないものである。
【0044】また、本発明例と同じ鋼板を用い、鍛接で
継目部を接合した鍛接鋼管(比較例)では、低い透磁
率、シーム部近傍の硬さ変化は少ないが、気密性が不十
分であり粒子加速器用ビームパイプとしては適用できな
い。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、極低温での透磁率が低
く、平均熱膨張係数も低い、大型粒子加速器用ビームパ
イプへ適用できる性能を有している高Mn非磁性鋼鋼管を
工業的に安価に提供でき、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例の溶接鋼管シーム部(継目部)近傍の
透磁率の分布を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B23K 15/00 501 B23K 15/00 501Z 505 505 506 506 C22C 38/38 C22C 38/38 38/58 38/58 G21B 1/00 G21B 1/00 D H05H 7/20 H05H 7/20 (72)発明者 豊岡 高明 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 尾崎 芳弘 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 2G085 BA16 BC18 EA02 EA04 4E001 AA03 BB07 CA05 CC03 4E066 AB04 CA03 CA14 CB06 4E081 AA08 BA04 BA23 BA36 CA11 YQ00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板を、円筒状に成形し継目部を溶接接
    合してなる溶接鋼管であって、前記鋼板が、質量%で、
    C:0.05〜0.15%、Mn:26.0〜30.0%、Cr:5.0 〜10.0
    %、N:0.05〜0.15%を含有し、残部Feおよび不可避的
    不純物からなる組成を有することを特徴とする極低温用
    高Mn非磁性鋼溶接鋼管。
  2. 【請求項2】 前記組成に加えて、さらに質量%で、N
    i:0.50〜5.0 %を含有することを特徴とする請求項1
    に記載の極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管。
  3. 【請求項3】 前記溶接接合が、電気抵抗溶接法を用い
    た溶接接合であることを特徴とする請求項1または2に
    記載の極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の溶
    接鋼管からなる粒子加速器用ビームパイプ。
JP31835799A 1999-11-09 1999-11-09 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管 Pending JP2001131705A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31835799A JP2001131705A (ja) 1999-11-09 1999-11-09 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31835799A JP2001131705A (ja) 1999-11-09 1999-11-09 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001131705A true JP2001131705A (ja) 2001-05-15

Family

ID=18098259

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31835799A Pending JP2001131705A (ja) 1999-11-09 1999-11-09 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001131705A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2829775A1 (fr) * 2001-09-20 2003-03-21 Usinor Procede de fabrication de tubes roules et soudes comportant une etape finale d'etirage ou d'hydroformage et tube soude ainsi obtenu
CN101805872A (zh) * 2010-04-12 2010-08-18 中国石油天然气集团公司 一种含Mn18~24%的合金管材及其制造方法
CN102642067A (zh) * 2012-04-05 2012-08-22 广东省工业设备安装公司 一种低磁钢的焊接方法
CN105014189A (zh) * 2015-07-09 2015-11-04 武汉钢铁(集团)公司 抗拉强度1000MPa级高锰无磁钢的焊条电弧焊方法
KR20160077241A (ko) * 2014-12-22 2016-07-04 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법
KR20160077240A (ko) * 2014-12-22 2016-07-04 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2829775A1 (fr) * 2001-09-20 2003-03-21 Usinor Procede de fabrication de tubes roules et soudes comportant une etape finale d'etirage ou d'hydroformage et tube soude ainsi obtenu
WO2003025240A1 (fr) * 2001-09-20 2003-03-27 Usinor Procede de fabrication de tubes roules et soudes comportant une etape finale d'etirage ou d'hydroformage et tube soude ainsi obtenu
CN101805872A (zh) * 2010-04-12 2010-08-18 中国石油天然气集团公司 一种含Mn18~24%的合金管材及其制造方法
CN102642067A (zh) * 2012-04-05 2012-08-22 广东省工业设备安装公司 一种低磁钢的焊接方法
KR20160077241A (ko) * 2014-12-22 2016-07-04 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법
KR20160077240A (ko) * 2014-12-22 2016-07-04 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법
KR101647214B1 (ko) * 2014-12-22 2016-08-10 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법
KR101647215B1 (ko) * 2014-12-22 2016-08-10 주식회사 포스코 고온 균열이 저감된 용접 강관의 제조방법
CN105014189A (zh) * 2015-07-09 2015-11-04 武汉钢铁(集团)公司 抗拉强度1000MPa级高锰无磁钢的焊条电弧焊方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2461831C (en) Hot-rolled steel strip for high strength electric resistance welding pipe and manufacturing method thereof
Xie et al. Interface characteristic and properties of stainless steel/HSLA steel clad plate by vacuum rolling cladding
JP2010121190A (ja) 高圧水素輸送用オーステナイト系ステンレス鋼溶接管およびその製造方法
JP6693561B2 (ja) 二相ステンレス鋼及び二相ステンレス鋼の製造方法
TW201326423A (zh) 肥粒鐵系不銹鋼
EP3276026A1 (en) Thick steel sheet for structural pipe, method for manufacturing thick steel sheet for structural pipe, and structural pipe
WO2018181401A1 (ja) 隙間部の耐塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼管、管端増肉構造体、溶接継ぎ手、及び溶接構造体
EP2990498A1 (en) H-shaped steel and method for producing same
JP2015190026A (ja) ラインパイプ用厚肉高強度電縫鋼管およびその製造方法
EP4095280A1 (en) Electroseamed steel pipe, and method for manufacturing same
WO2006132164A1 (ja) ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板
JP2005002385A (ja) 成形性と靱性に優れた鋼管とその製造方法
JP3217088B2 (ja) ステンレス鋼製多重巻きパイプ
JP5971415B2 (ja) ラインパイプ向溶接鋼管用マルテンサイト系ステンレス熱延鋼帯の製造方法
JP2001131705A (ja) 極低温用高Mn非磁性鋼溶接鋼管
JP4022991B2 (ja) フェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管
JP2001240942A (ja) 極低温用高Mn非磁性鋼継目無鋼管
JP2003105500A (ja) ステンレス鋼/銅クラッドおよびその製造方法
TWI758956B (zh) 電焊鋼管用熱軋鋼板及其製造方法、電焊鋼管及其製造方法、輸送管、建築構造物
JP4752571B2 (ja) ベローズ素管用フェライト系ステンレス鋼板およびベローズ素管
JPH11343542A (ja) 耐座屈特性に優れた鋼管及びその製造方法
JP4701687B2 (ja) 電磁特性に優れた鋼管およびその製造方法
JP3864600B2 (ja) 極低温用高Mn非磁性鋼板の製造方法
JP3510787B2 (ja) 曲げ性の優れた高強度高靭性ステンレス鋼板
CN115210399B (zh) 包层钢板及其制造方法以及焊接结构物