JP4701687B2 - 電磁特性に優れた鋼管およびその製造方法 - Google Patents

電磁特性に優れた鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気シールドや、モータ用ステータ、ロータ等の使途に好適な、電磁特性に優れた鋼管およびその製造方法に関する。
磁気シールドや、モータ用ステータ、ロータ等には、従来から電磁特性に優れた鋼板、厚板が使用されてきた。電磁特性に優れた材料としては、磁化容易方向<100>が面内に無方向に配向された無方向性電磁鋼板や、磁化容易方向<100>が圧延方向に平行に強く配向された方向性珪素鋼板などがある。
しかし、これら電磁特性に優れた鋼板を、例えば磁気シールド用として使用する場合には、これら鋼板を加工し、溶接等で接合、組み立して所望形状に仕上げる工程が必要となる。またモータのステータ、ロータ用として使用する場合には、これら鋼板を打抜き、複数枚を積層して使用しており、打抜き加工、積層加工などの工程を必要とする。このように、鋼板を素材とする場合には、複雑な工程を必要とするうえ、溶接部等の非定常部が形成され、電磁特性が劣化するという問題があった。このような問題を回避するため、鋼管を素材として使用することも考えられている。
電磁鋼板を電縫溶接して電磁特性に優れた鋼管とすることが考えられるが、電磁鋼板はSi含有量が高く電縫溶接が難しいうえ、電縫溶接部の電磁特性が劣化するという問題がある。また、電磁鋼のビレットを使用して継目無鋼管とすることも考えられるが、電磁鋼は延性が低く、製管作業が困難である。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、Si、Alを高くした組成の鋼を用い、熱間押出し条件、熱間圧延条件を適正範囲に調整して継目無管とし、ついで、再結晶温度以下で圧延を行い、さらに最終焼鈍を施す、電磁材料管の製造方法が提案されている。しかし、特許文献1に記載された技術では、熱間押出し工程を必須工程としており製造コストが高いという問題があった。
また、特許文献2には、99.5%以上のFeを含み残部が不純物からなる鋼組成の鋼片または鋳片を1100〜1350℃に加熱し、熱間圧延を行なって素材としたのち、製管し、500〜1000℃で熱処理する電磁鋼管の製造方法が提案されている。特許文献2に記載された技術によれば、磁気シールド用として十分な特性の鋼管が得られるとしているが、しかしこの技術は、熱処理による単なる粒成長を図っているだけで、結晶方位の配向性にまで配慮されておらず、更なる高い電磁特性を要求される使途には特性が不足するという問題を残していた。
特開平2−236226号公報 特公平7−68579号公報
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、磁気シールド用、あるいはモータ用として好適な、電磁特性に優れた鋼管およびその製造方法を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、鋼管の電磁特性に及ぼす各種要因について鋭意考究した。その結果、鋼管の電磁特性、とくに軟磁性特性をさらに向上させるためには、
(イ)鋼管の円周方向に<100>方向、圧延方向に<110>方向が強く配向した結晶組織に調整すること、
(ロ)結晶粒径を、比較的粗大な粒とすること、好ましくは20μm以上の粒とすること、さらには、
(ハ)電縫溶接部等の非定常部をなくすこと、
が重要であることを見出した。そして、更なる電磁特性向上のためには、
(ニ)C含有量を0.01質量%未満とすること、
が望ましいことを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである
(1)質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上含む組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.01〜0.06%、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であり、円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上である組織を有することを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管。
(2)質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上含む組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%超3.5%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.06%超0.5%以下、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であり、円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上である組織を有することを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管。
)(または(2)において、圧延方向のr値が2.0以上を有することを特徴とする鋼管。
)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組織が、20μm以上の平均結晶粒径を有する組織であることを特徴とする鋼管
(5)(ないしのいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、次D〜F群
D群:Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、B:0.005%以下のうちの1種または2種以上、
E群:Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下のうちの1種または2種以上、
F群:Ca:0.005%以下、REM:0.05%以下のうちの1種または2種、
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする鋼管。
)質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上とする組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.01〜0.06%、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成である鋼管を、加熱したのち、縮径圧延を施すに当たり、前記縮径圧延を、縮径率が15%以上、圧延終了温度が730℃以上900℃以下である圧延とすることを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管の製造方法。
(7)質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上とする組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%超3.5%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.06%超0.5%以下、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成である鋼管を、加熱したのち、縮径圧延を施すに当たり、前記縮径圧延を、縮径率が15%以上、圧延終了温度が730℃以上900℃以下である圧延とすることを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管の製造方法。
)()または()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、次D〜F群
D群:Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、B:0.005%以下のうちの1種または2種以上、
E群:Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下のうちの1種または2種以上、
F群:Ca:0.005%以下、REM:0.05%以下のうちの1種または2種
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
)()ないし()のいずれかにおいて、前記縮径圧延後、あるいはさらに所望形状に加工したのち、750℃以上Ac 1 変態点以下の温度で焼鈍処理を施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
10)()において、前記縮径圧延後で前記焼鈍処理前に、冷間引抜加工を施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
11)()ないし(10)のいずれかにおいて、前記縮径圧延が、増肉率:40%以下の縮径圧延であることを特徴とする鋼管の製造方法。
12)()ないし(10)のいずれかにおいて、前記縮径圧延が、減肉率:40%以下の縮径圧延であることを特徴とする鋼管の製造方法。
本発明によれば、磁気シールド用材料、あるいはモータ用材料として十分な軟磁特性を有する、電磁特性に優れた鋼管を容易にかつ安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
本発明鋼管は、質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上含む組成を有する鋼管である。まず、本発明鋼管の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は、単に%と記す。
C:0.01%未満
Cは、強度を増加させる元素であり、所望の鋼管強度に応じ所定量含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は結晶粒の成長性を低下させる。Cは電磁特性を低下させるため、電磁特性の観点からはできるだけ低減することが望ましく、磁気時効による経時劣化を考慮して0.01%以下、更なる電磁特性の向上の観点からは、0.01%未満とすることが好ましい。C含有量が0.01%以上の場合には、Cを析出物として固定するために添加する金属元素(炭化物形成元素)量が多くなり電磁特性が向上しにくくなる場合がある。なお、より好ましくは0.004%以下である。なお、0.001%以下のCの低減は精錬時間を異常に長引かせて精錬コストの高騰を招くため、下限とすることが経済的な観点から望ましい。
Fe:95%以上
不純物が増加するにしたがい、結晶粒成長の阻害要因が増し、磁気特性が低下するため、不純物が少ない高純度とすることが望ましい。本発明では、不純物量を規制し、純度を上げる意味で、Fe分を95%以上とする。なお、好ましくは98%以上である。
磁特性の更なる向上を要求される使途には、Cを0.01%未満としその他含有成分を極力低減し、Fe:95%以上とする高純度系の組成とすることが好ましい。さらに電磁特性を向上させるために必要に応じてSi、Alを、あるいはさらに高周波域での電磁特性を向上させるためにCr、Ni等を含有させてもよい。このような優れた電磁特性が要求される使途向けには、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.01〜0.06%、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる高純度系の組成、あるいは質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%超3.5%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.06%超0.5%以下、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる高純度系組成とすることが好ましい。
Si:0.45%以下、または0.45%超3.5%以下
Siは、脱酸剤として作用し、少なくとも0.01%以上含有する。また、Siは、電磁特性、とくに鉄損特性を向上させ、また固溶して鋼管の強度を増加させる元素であるが、0.45%を超える含有は、電縫溶接性を低下させる傾向がある。このため、Siは0.45%以下に限定することが好ましい。なお、とくに優れた電磁特性が要求される場合にはSiは0.45%超3.5%以下とすることができる。3.5%を超えるSiの含有は、低H(磁界)域の磁束密度(B)は優れるが、高H域の飽和磁束密度Bが低下し、さらに電縫溶接性が顕著に劣化する。
Mn:0.1〜1.4%
Mnは、Sと結合してMnSを形成し、Sの悪影響を除去して熱間加工性を向上させる元素であり、S含有量に応じて含有することが望ましく、本発明では0.1%以上含有させることが好ましい。また、Mnは、固溶して鋼管の強度を増加させる元素であり、所望の鋼管強度に応じて含有することが望ましいが、1.4%を超える含有は靭性を劣化させる。このため、Mnは0.1〜1.4%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3〜0.6%である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中では介在物として存在し、加工性を低下させるとともに、MnSとして電磁特性を阻害するため、できるだけ低減することが望ましい。このようなことから、Sは0.01%以下に限定することが好ましい。しかし、過度のSの低減は精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが望ましい。なお、電磁特性向上のために、SiやAlを多量に含有する場合には、打抜き性向上のため、Sは0.001%以下まで低減することが好ましい。
P:0.025%以下
Pは、固溶して鋼管強度の増加に寄与するとともに、電磁特性を向上させる元素であるが、Pは粒界に偏析する傾向が強く、磁壁の移動を妨げるという悪影響を及ぼす可能性が強く、本発明では0.025%以下に限定することが好ましい。なお、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、0.005%程度を下限とすることが望ましい。
Al:0.01〜0.06%、または0.06%超0.5%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、AlNを形成し固溶N量を低減する元素である。このような効果は0.01%以上の含有で認められるが、N含有量によっては0.06%を超える含有は介在物量を増加させ、電磁特性を低下させる場合が多い。このため、Alは0.01〜0.06%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくはN含有量との関係で27/14N以上3×27/14N以下である。Ti、b等の強力な窒化物形成元素を含有する場合にはAl量は少なくてもよい。なお、Alは、Siとともに、電磁特性を向上させる元素であり、とくに低H(磁界)域での優れた電磁特性が要求される場合には、Alは0.06%超0.5%以下含有することができる。しかし、0.5%を超えるAlの含有は、かえって電磁特性の劣化を引き起こすことがある。
N:0.005%以下
Nは、鋼では侵入型固溶元素として強度を増加させるが、内部応力を高め電磁特性を低下させるとともに、AlNを形成し電磁特性に悪影響を及ぼす。このため、Nは、できるだけ低減することが望ましいが0.005%までは許容できる。このため、Nは0.005%以下に限定することが好ましい。なお、製錬コストとの関係で0.001%程度が下限である。なお、電磁特性向上のためにAlを多量含有させる場合には、AlNによる電磁特性の劣化を招かないように、Nは0.0025%以下に低減することが望ましい。
なお、上記した成分に加えてさらに、次D〜F群
D群:Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、B:0.005%以下のうちの1種または2種以上、
E群:Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下のうちの1種または2種以上、
F群:Ca:0.005%以下、REM:0.05%以下のうちの1種または2種
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することが好ましい。
群のTi、Nb、Bは、炭化物、窒化物等を形成して、鋼管の強度を増加させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。Ti:0.05%、Nb:0.005%、B:0.005%を超える含有は、磁気特性を劣化させる場合が多いため、Ti:0.05%、Nb:0.05%、B:0.005%をそれぞれ上限とすることが好ましい
群:Cr、Mo、Niは、焼入れ性、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。Cr:15%、Mo:0.3%、Ni:0.5%を超える含有は、電磁特性を劣化させる。なお、Crは焼入れ性の向上が目的である場合には0.05%以下とすることが好ましい。また、電磁特性の更なる向上を要求される使途の場合には、Cr:0.05%以下、Mo:0.05%以下、Ni:0.05%以下とすることが好ましい。なお、高周波域での電磁特性をさらに向上させる必要のある場合には、Fe:95%以上とする高純度系組成の条件のもとに、Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下含有させることができる。
群:Ca、REMは、介在物の形態を制御し、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。わずかでも水に触れる環境で使用される場合には、Ca、REMを含有することが好ましく、耐食性が向上する。なお、 Ca:0.005%、REM:0.05%を超える含有は、磁気特性を劣化させる。このため、Ca:0.005%、REM:0.05%を上限とすることが好ましい。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
上記した組成に加えてさらに、本発明鋼管は、円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上である組織を有する。
結晶方位を、鋼管の、円周方向に磁化容易軸である<100>方向を、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位とすることにより、鋼管の電磁特性が顕著に向上する。本発明では、円周方向に<100>方向、圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比を3.0以上とする。三次元ランダム方位強度が3.0未満では、優れた電磁特性が得られない。なお、好ましくは8.0以上、より好ましくは10以上である。
ここでいう三次元ランダム強度比とは、ある特定結晶方位の配向の有無を示す指標であり、全く配向していない場合(ランダム)の結晶方位を1とし、配向性のある特定結晶方位の強度を、ランダムの場合で規格化したものである。数値が大きいほど強い配向性を示すことを意味する。
具体的には、反射法による不完全極点図を測定し、特定結晶方位(本発明では円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位)の積分強度をランダム強度で規格化して求める。なお、反射法および透過法をともに用いた完全極点図の測定からも同じ値が得られる。
本発明でいう「優れた電磁特性」とは、最大比透磁率が、その後の処理を施さない電縫鋼管ままと比べて大きく、また、磁化力200A/mの低磁場条件において、磁束密度が電縫鋼管ままと比べて、大きいことを意味する
なお、高純度系組成の鋼管において「優れた電磁特性」とは、好ましくは最大比透磁率が2500以上、より好ましくは7500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上、より好ましくは1.0T以上であるとともに、鋼管が縮径圧延のままの場合には、電縫鋼管ままのものの特性を基準とし、縮径圧延後熱処理を施した場合には、電縫鋼管のままに熱処理を施したものの特性を基準とし、最大比透磁率、磁束密度を比較して優れていることを「優れた電磁特性」の判断基準とする。
さらに、本発明鋼管は、好ましくは平均結晶粒径が5μm以上である組織を有する。平均結晶粒径が5μm未満では、円周方向に<100>、かつ圧延方向に<110>が配向していても、優れた電磁特性を確保することは望めない。本発明では、結晶粒は比較的粗粒であることが優れた電磁特性を得ることができるという観点から好ましい。より好ましくは平均結晶粒径が10μm以上、さらに好ましくは平均結晶粒径が20μm以上、望ましくは40μm以上である。とくに、平均結晶粒径を20μm以上、さらには40μm以上とすることにより、より優れた電磁特性を有する鋼管となる。
また、高純度系組成を有する本発明鋼管では、圧延方向のr値が2.0以上を有することが好ましい。圧延方向のr値が2.0以上を有することにより、優れた電磁特性が確保できる。r値が上記した値未満では、優れた電磁特性の確保が難しくなる。なお、圧延方向のr値は、好ましくは4.0以上、より好ましくは8.0以上である。
r値は、従来から成形性の指標として用いられているが、本発明鋼管では円周方向に<100>、かつ圧延方向に<110>が配向された結晶方位を有することから、電磁特性が向上することに連動して、圧延方向のr値と電磁特性の対応がよく、r値が電磁特性の指標として用いることができる。
なお、本発明では、r値の測定は、試験片の引張方向およびその垂直方向に歪ゲージを貼付して、引張試験を行い、それぞれの方向の変位を逐一取り込んで、伸び6〜7%付近における変位を用いてr値を計算するものとする。なお、伸び6〜7%でr値を計算するのは、降伏点伸びの領域を越えた塑性変形域で算出するためである。r値は次式
r値=−1/{1+ln(L0/L)/ln(W0/W)}
ここで、L:試験片の引張方向の長さ
0:試験片の引張方向の初期長さ
W:試験片の幅方向の長さ
0:試験片の幅方向の初期長さ
を用いて計算した。なお、降伏点伸びが7%を超える場合には、塑性変形をした部分でr値を測定するものとする。なお、JIS 12号片(弧状試験片)で評価しても、鋼管を平板展開した平板試験片を使って評価してもよく、歪ゲージが貼れる面積が試験片の平行部に確保されれば試験片自体はJIS 5号、13号B等、とくに制限されない。ただし、円周方向のr値を測定する場合は平板展開しなければならない。
つぎに、本発明鋼管の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、上記した組成を有する鋼管を加熱し、縮径圧延を施す。
本発明で使用する鋼管は、上記した組成を有する以外、その製造方法はとくに限定されない。通常公知の方法で製造された継目無鋼管、あるいは通常公知の方法で製造された電縫鋼管等の溶接鋼管がいずれも好適に用いることができる。
縮径圧延に際し、鋼管を加熱する方法は特に限定する必要はない。加熱炉による加熱、誘導加熱による加熱等いずれも利用することが可能である。なお、継目無鋼管のような熱間で造管・製管されるものは、製管後、直に縮径圧延装置に送り、縮径圧延することもできる。また、再加熱したのち、縮径圧延することも可能である。
再加熱する場合、縮径圧延の加熱温度は、1100℃以下とすることが好ましい。加熱温度が1100℃を超えると、鋼管の表面性状が劣化する。圧延後、研磨あるいはエッチング処理等を施して使用する場合には、加熱温度の上限を限定する必要はない。なお、加熱温度は高純度系組成の鋼管を用いる場合は750℃以上とすることが好ましい。750℃未満では、変形抵抗が高くなり所定以上の縮径率を確保することがむずかしくなるとともに、冷却後の鋼管に縮径圧延の歪が残留し電磁特性が低下する。なお、電縫鋼管等の溶接部を有する鋼管では、加熱温度はAc変態点以上とすることが、非定常部を除去し、鋼管全体の電磁特性を向上させる観点から好ましい。上記した加熱温度の下限値は所定温度以上の縮径圧延の圧延終了温度を確保するために必要となる。
縮径圧延は、高純度系組成の鋼管の場合には縮径率:15%以上、圧延終了温度が730℃以上900℃以下である圧延とすることが好ましい。これにより、鋼管組織を、円周方向に<100>方向、圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位を有し、粒成長し比較的粗大な結晶を有する組織とすることができる。
縮径率が、15%未満では、縮径量が不足し、結晶が上記した所望の結晶方位に配向しにくくなる。一方、縮径率の上限は、製品寸法や、圧延機の能力により決定され、とくに限定されないが、85〜90%程度とすることが好ましい。なお、より好ましくは縮径率は45〜80%である。
縮径圧延の圧延終了温度は、高純度系組成の鋼管の場合には900℃以下とすることが好ましい。縮径圧延の圧延終了温度が、900℃を超えて高くなると、オーステナイト域で縮径圧延を完了していることになり、上記した所望の結晶方位に配向せず、ランダム方位となり、磁気特性が向上しない。なお、ここでいう圧延終了温度は、鋼管表面で測定した温度を用いるものとする。なお、圧延終了温度は730℃以上とすることが好ましい。730℃未満では縮径圧延の歪が残留するとともに、円周方向に<100>方位、圧延方向に<110>方位が配向した結晶方位を得にくくなり、磁気特性が低下する。より好ましくは750℃以上である。
また、本発明では、縮径圧延を、減肉率:40%以下、あるいは増肉率:40%以下の縮径圧延とすることがより好ましい。減肉率あるいは増肉率が40%を超えて大きくなると、結晶方位の回転が大きくなりすぎて、結晶方位の配向に影響し、上記した所望の結晶方位の配向が得られなくなる。このため、縮径圧延の減肉率は40%以下、あるいは増肉率は40%以下に限定することがより好ましい。なお、縮径圧延ままの状態で使用する場合には、増肉率を10〜25%にすることがより好ましい。一方、縮径圧延後、焼鈍処理を施す場合には、減肉率を10〜25%にすることがより好ましい。このように範囲を限定することによって、円周方向の<100>方位の配向が強まり、それに伴い、電磁特性がより向上する。
なお、減肉率、増肉率、すなわち肉厚変化率は、次式
肉厚変化率=[{(縮径圧延の肉厚)−(素管の肉厚)}/(素管の肉厚)]×100(%)
で算出された値を使用するものとする。
また、本発明では、上記した縮径圧延後に、あるいはさらに所望形状に加工したのちに、750℃以上Ac 1 変態点以下の温度で焼鈍処理を施すことが好ましい
純度系組成の鋼管の場合には750℃以上Ac 1 変態点以下の温度で、焼鈍処理を施すことにより、結晶粒がさらに成長し、電磁特性がより向上する。焼鈍温度が750℃未満では、結晶粒の成長が遅く、望ましい粒径の結晶粒まで成長させるために長時間を要する。一方、焼鈍温度がAc 1 変態点を超えて高くなると、結晶方位が崩れはじめる。このため、焼鈍処理は750℃以上Ac 1 変態点以下の温度で行なうとした。なお、焼鈍後の冷却は、電磁特性の観点から徐冷とすることが好ましい。焼鈍処理は、縮径圧延後でも、所望の製品形状に加工したのちでもいずれでも効果は同じである。焼鈍処理の条件を適正化することにより、容易に平均結晶粒径を20μm以上、好ましくは40μm以上にすることができる。
なお、縮径圧延後で上記した焼鈍処理前に、冷間引抜加工を施すことが好ましい。これにより、さらに優れた電磁特性を有する鋼管となる。これは、冷間引抜加工により結晶粒の回転をある程度拘束した状態で冷間歪が印加されるため、焼鈍時に結晶粒の配向、粒の成長が促進されるためと考えられる。なお、冷間引抜加工は、減面率で15%以上60%以下の加工とすることが好ましい。なお、減面率は、次式
減面率(%)={(引抜前の鋼管断面積)−(引抜後の鋼管断面積)}/
(引抜前の鋼管断面積)×100
で計算するものとする。
表1に示す組成の薄鋼帯板をロール成形しオープン管とし、端部を電縫溶接して得られた電縫鋼管、および表1に示す組成を有する鋳片をマンネスマン方式で製管して得られた継目無鋼管を、素材鋼管とした。
これら素材鋼管を900〜1000℃に加熱したのち、表2に示す条件(縮径率、減肉(−)率/増肉(+)率、圧延終了温度)の縮径圧延を施した。得られた鋼管の一部には、さらに冷間引抜加工、および/または、焼鈍処理を施した。なお、冷間引抜加工は減面率:30%とした。焼鈍処理は、500〜900℃の範囲の温度で保持する処理とした。
得られた鋼管について、電磁特性の測定、組織調査、r値測定を実施した。測定方法はつぎの通りとした。
(1)電磁特性
得られた鋼管を、長さ5〜10mmに輪切りにし、切断面を研磨したのち、一次巻数:250巻、二次巻数:100巻として、直流磁化特性を測定した。10000A/mまでの磁化力を作用させて透磁率を測定し最大値(最大透磁率)を求め、最大比透磁率を算出した。また、さらに磁化力:200A/mにおける磁束密度を求めた。なお、測定は、酸洗によりスケールを除去したのち、行なった。なお、最大比透磁率は、その後の処理を施さない電縫鋼管のまま(鋼管No.1)を基準(1.0)とし、基準に対する比(最大比透磁率比)で評価した。
(2)組織調査
得られた鋼管について、結晶粒径の測定、結晶方位の測定を実施した。
結晶粒径は、鋼管のL方向断面について、腐食液:ナイタールでエッチングし顕微鏡で観察して、直線交差線分法を用いて算出した。なお、測定位置は、最表層100μmを除いた板厚中央部とした。L方向に沿って結晶粒500個の線分長さを測定し、かつ、板厚方向に沿って同様に結晶粒500個の線分の長さを測定して、それぞれの方向における線分の長さをフェライト粒数で除し、粒径サイズを算出したあと、平均をとって、平均結晶粒径とした。
また、結晶方位は、X線回折法を用いて三次元ランダム強度比を測定して求めた。鋼管を平板展開して得られた試片について、表層500μm以上を研磨により除去し、鋼管の肉厚中央部付近から鏡面仕上した試験片を採取した。これら試験片にさらに研磨時の加工歪を除去するために化学研磨(腐食液:2〜3%フッ酸+過酸化水素水)を施した。
得られた測定用試験片について、X線回析装置を用いて、反射法による不完全極点図を測定した。得られた結果から鋼管の円周方向に<100>方向かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の積分強度を、ランダム強度で規格化し三次元ランダム強度比を求めた。なお、X線源はCuKαを用いた。
(3)r値測定
得られた鋼管を平板展開した試験片または鋼管から切出した試験片(JIS 12号試験片)を用いて、r値を評価した。r値の測定方法は前記した方法と同様とした。
得られた結果を表2に併記する。
表3に示す高純度系組成の薄鋼帯板をロール成形しオープン管とし、端部を電縫溶接して得られた電縫鋼管を、素材鋼管とした。
これら素材鋼管を900〜1000℃に加熱したのち、表4に示す条件(縮径率、減肉(−)率/増肉(+)率、圧延終了温度)の縮径圧延を施した。得られた鋼管の一部には、さらに冷間引抜加工、および/または、焼鈍処理を施した。なお、冷間引抜加工は減面率:30%とした。焼鈍処理は、500〜950℃の範囲の温度で保持する処理とした。
得られた鋼管について、電磁特性の測定、組織調査、r値測定を実施した。測定方法は、実施例1とほぼ同様に、次のとおりとした。
(1)電磁特性
得られた鋼管を、長さ5〜10mmに輪切りにし、切断面を研磨したのち、一次巻数:250巻、二次巻数:100巻として、直流磁化特性を測定した。10000A/mまでの磁化力を作用させて透磁率を測定し最大値(最大透磁率)を求め、最大比透磁率を算出した。また、さらに磁化力:200A/mにおける磁束密度を評価した。なお、測定は、酸洗によりスケールを除去したのち、行なった。
(2)組織調査
得られた鋼管について、結晶粒径の測定、結晶方位の測定を実施した。
結晶粒径は、鋼管のC断面について、腐食液でエッチングし顕微鏡で観察して、直線交差線分法を用いて算出した。腐食液は、ナイタールと、ピクラール若しくはピクリン酸飽和水溶液とし、試験片を両腐食液に交互に浸漬しながら、組織を現出させて粒径を測定した。なお、粒径の測定に際しては、明瞭に識別できる粒界(大傾角粒界)のみとし、「くもの糸」のように非常に薄く腐食された粒界は存在しないものとして無視した。
測定位置は、最表層100μmを除いた板厚中央部とした。鋼管表層に沿った方向で結晶粒200個の線分長さを測定し、線分の長さをフェライト粒数で除し、粒径サイズを算出し、平均結晶粒径とした。なお、平均結晶粒径が明らかに100μmを超えるものは正確な粒径は測定せず、100μm超(>100μm)として表示した。焼鈍処理を施した鋼管では、結晶粒は整粒であるが、高純度系組成の鋼管では縮径圧延ままの組織は、結晶粒が肉厚方向(鋼管の外側から内側方向)に伸びた組織となっている。
また、結晶方位は、X線回折法を用いて三次元ランダム強度比を測定して求めた。鋼管を平板展開して得られた試片について、表層500μm以上を研磨により除去し、鋼管の肉厚中央部付近から鏡面仕上した試験片を採取した。これら試験片にさらに研磨時の加工歪を除去するために化学研磨(腐食液:2〜3%フッ酸+過酸化水素水)を施した。
得られた測定用試験片について、X線回析装置を用いて、反射法による不完全極点図を測定した。得られた結果から鋼管の円周方向に<100>方向かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の積分強度を、ランダム強度で規格化し三次元ランダム強度比を求めた。なお、X線源はCuKαを用いた。
(3)r値測定
得られた鋼管から切出した弧状試験片(JIS 12号試験片)を用いて、前記した測定方法と同様の方法で試験片に歪ゲージを貼付し、円周方向と圧延方向の歪を測定し、r値を評価した。なお、伸び7〜8%時の歪を用いて算出した。
得られた結果を表4に併記する。
本発明例はいずれも、C:0.01%未満、Fe:95%以上の高純度系組成を有し、円周方向に<100>方向、圧延方向に<110>方向が強く配向し、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上を有し、最大比透磁率が2500以上、低磁場(200A/m)における磁束密度が0.8T以上の優れた電磁特性を示している。また、本発明例はいずれも、平均結晶粒径が20μm以上、圧延方向のr値が2.0以上を示している。平均結晶粒径が20μm以上、圧延方向のr値が2.0以上であれば、概ね良好な電磁特性を示している。
特に、縮径圧延後に焼鈍処理を施した本発明例(鋼管No.2−2〜No.2−4、No.2−7〜No.2−10、No.2−18〜No.2−20、No.2−22、No.2−26、No.2−27、No.2−28、No.2−29)は、最大比透磁率が7500以上、低磁場(200A/m)における磁束密度が1.0T以上の非常に優れた磁気特性を示している。
また、Si及びAl含有量が高い本発明例(鋼管No.2−28)は、最大比透磁率が61280、低磁場(200A/m)における磁束密度が1.9Tと電磁特性が顕著に向上している。また、Crを1.5%含有する本発明例(鋼管No.2−29)は、最大比透磁率や、低磁場(200A/m)における磁束密度では、Crを含有しない本発明例(鋼管No.2−2〜No.2−4、No.2−7〜No.2−10)とほぼ同程度であるが、400Hzで磁束密度0.1Tでの鉄損が、Crを含有する鋼管No.2−29では2.01W/kgであるのに対し、Crを含有しない鋼管No.2−10では2.48W/kgと、Crを含有することにより高周波域における電磁特性が顕著に向上することがわかる。また、引抜加工を施された本発明例(鋼管No. 2−27)は引抜加工なしの比較例(鋼管No.2−26)に比べて最大比透磁率、磁束密度がともに向上している。
また、縮径圧延の圧延終了温度が、高純度組成鋼管における好適範囲を外れる本発明例(鋼管No.2−12、No.2−13、2−17)では、電磁特性が若干低下している。また、縮径圧延の縮径率が、本発明の好適範囲を外れる本発明例(鋼管No.2−21)では、電磁特性が若干低下している。また、縮径圧延後の焼鈍処理温度が、高純度組成鋼管における好適範囲を外れる本発明例(鋼管No.2−6、2−11)では、電磁特性が若干低下している。
また、縮径圧延ままの本発明例(鋼管No.2−1)は、同一組成の電縫管ままの比較例(鋼管No.2−14)にくらべ、最大比透磁率が20%以上、低磁場(200A/m)における磁束密度が200%以上と向上している。また、縮径圧延後焼鈍処理を施された本発明例(例えば鋼管No.2−7〜No.2−10、鋼管No.2−17〜No.2−22)は、同一組成の電縫管造管後焼鈍処理を施された比較例(例えば鋼管No.2−15、鋼管No.2−24)にくらべ、最大比透磁率が20%以上、低磁場(200A/m)における磁束密度が200%以上と向上している。
なお、縮径圧延の焼鈍温度が好適範囲から低く外れる鋼管No.2−6は、同一組成の電縫管ままの比較例(鋼管No.2−14)にくらべ、電磁特性は向上しているが、結晶粒径が細かく、同一組成の電縫管造管後焼鈍処理を施された比較例(例えば鋼管No.2−15、鋼管No.2−16)にくらべ、電磁特性の向上量は少ない。また、縮径圧延の圧延終了温度が本発明の好適範囲から外れる本発明例(縮径圧延後焼鈍処理を施された鋼管)(鋼管No.2−17)では、同一組成の電縫管造管後焼準処理を施された比較例(鋼管No.2−25)に比べて、最大比透磁率が若干低下しているものの、磁束密度は向上している。これは、鋼管No.2−25では、電縫管造管後の熱処理(焼鈍処理)により結晶粒が成長しているが、縮径圧延を施されていないため、結晶粒の配向性が不足しているためであると考えられる。
一方、X線の三次元ランダム強度比が3.0未満と本発明の範囲を外れる比較例では、本発明例に比べて、最大比透磁率または低磁場(200A/m)における磁束密度が低下し、電磁特性が劣化している。
比較例である鋼管No.2−5、鋼管No.2−11では、縮径圧延後の焼鈍処理加熱温度が本発明の好適範囲を高く外れ、オーステナイト単相域まで加熱されたため、縮径圧延時に作り込んだ結晶方位がランダム化してX線の三次元ランダム強度比が3.0未満となり、電磁特性が低下している。また、比較例である鋼管No.2−23では、縮径圧延の圧延終了温度が高く、X線の三次元ランダム強度比が3.0未満となり、電磁特性が低下している。

Claims (12)

  1. 質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上含む組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.01〜0.06%、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であり、円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上である組織を有することを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管。
  2. 質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上含む組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%超3.5%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.06%超0.5%以下、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であり、円周方向に<100>方向、かつ圧延方向に<110>方向が配向した結晶方位の、X線の三次元ランダム強度比が3.0以上である組織を有することを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管。
  3. 圧延方向のr値が2.0以上を有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
  4. 前記組織が、20μm以上の平均結晶粒径を有する組織であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼管。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記D〜F群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼管。

    D群:Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、B:0.005%以下のうちの1種または2種以上、
    E群:Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下のうちの1種または2種以上、
    F群:Ca:0.005%以下、REM:0.05%以下のうちの1種または2種
  6. 質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上とする組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.01〜0.06%、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成である鋼管を、加熱したのち、縮径圧延を施すに当たり、前記縮径圧延を、縮径率が15%以上、圧延終了温度が730℃以上900℃以下である圧延とすることを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管の製造方法。
  7. 質量%で、C:0.01%未満を含み、Feを95%以上とする組成を有する鋼管であって、前記組成が、質量%で、C:0.01%未満を含みさらに、Si:0.45%超3.5%以下、Mn:0.1〜1.4%、S:0.01%以下、P:0.025%以下、Al:0.06%超0.5%以下、N:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成である鋼管を、加熱したのち、縮径圧延を施すに当たり、前記縮径圧延を、縮径率が15%以上、圧延終了温度が730℃以上900℃以下である圧延とすることを特徴とする、最大比透磁率が2500以上で、磁化力200A/mの低磁場条件における磁束密度が0.8T以上である電磁特性に優れた鋼管の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記D〜F群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項またはに記載の鋼管の製造方法。

    D群:Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、B:0.005%以下のうちの1種または2種以上、
    E群:Cr:5%以下、Ni:5%以下、Mo:0.05%以下のうちの1種または2種以上、
    F群:Ca:0.005%以下、REM:0.05%以下のうちの1種または2種
  9. 前記縮径圧延後、あるいはさらに所望形状に加工したのち、750℃以上Ac 1 変態点以下の温度で焼鈍処理を施すことを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の鋼管の製造方法。
  10. 前記縮径圧延後で前記焼鈍処理前に、冷間引抜加工を施すことを特徴とする請求項に記載の鋼管の製造方法。
  11. 前記縮径圧延が、増肉率:40%以下の縮径圧延であることを特徴とする請求項ないし10のいずれかに記載の鋼管の製造方法。
  12. 前記縮径圧延が、減肉率:40%以下の縮径圧延であることを特徴とする請求項ないし10のいずれかに記載の鋼管の製造方法。
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