JP2018059157A - 二相ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】微量硫化水素環境において優れた耐食性を有する二相ステンレス鋼を提供する。【解決手段】二相ステンレス鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.2〜1%、Mn:1.5%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.040%、Ni:4%以上7%未満、Cr:24%を超えて28%以下、Mo:0.5〜4.0%、Cu:2.0%を超えて4.0%以下、Co:0.001〜0.3%、N:0.1%を超えて0.35%以下、O:0.010%以下、等を含油し、オーステナイト相及びフェライト相を含む組織を有し、電子線マイクロアナライザを用いて測定して得られる前記フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が、下記の式(1)を満たす。(0.3×Cr)2+(0.2×Ni)2+(0.4×Mo)2+(2.1×Cu)2≧86.0 (1)【選択図】図1

Description

本発明は、二相ステンレス鋼に関する。
油田・ガス田から産出される石油・天然ガスは、二酸化炭素ガス(CO)、硫化水素ガス(HS)等の腐食性ガスを随伴ガスとして含有する。このような腐食性ガスを含有する石油・天然ガスの輸送に用いられるラインパイプには、二相ステンレス鋼等の高耐食性材料が使用される。石油・天然ガスの採掘に用いられる油井管についても同様である。
特許第5072285号公報には、塩化物環境をはじめとする腐食環境で使用される耐食性に優れた二相ステンレス鋼が開示されている。
特許第5870201号公報には、良好な耐全面腐食性及び高強度が必要な硝酸環境のための化学工業等のフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼が記載されている。
特許第5072285号公報 特許第5870201号公報
特許第5870201号公報では、全面腐食性について検討されているが、耐硫化物応力腐食割れ性は検討されていない。
本発明の目的は、微量硫化水素環境において優れた耐食性を有する二相ステンレス鋼を提供することである。
本発明の一実施形態による二相ステンレス鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.2〜1%、Mn:1.5%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.040%、Ni:4%以上7%未満、Cr:24%を超えて28%以下、Mo:0.5〜4.0%、Cu:2.0%を超えて4.0%以下、Co:0.001〜0.3%、N:0.1%を超えて0.35%以下、O:0.010%以下、V:0〜1.5%、Ca:0〜0.02%、Mg:0〜0.02%、B:0〜0.02%、REM:0〜0.2%、残部:Fe及び不純物であり、オーステナイト相及びフェライト相を含む組織を有し、電子線マイクロアナライザを用いて測定して得られる前記フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が、下記の式(1)を満たす。
(0.3×Cr)+(0.2×Ni)+(0.4×Mo)+(2.1×Cu)≧86.0 (1)
式(1)のCr、Ni、Mo、及びCuには、前記フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が質量%で代入される。
本発明によれば、微量硫化水素環境において優れた耐食性を有する二相ステンレス鋼が得られる。
図1は、二相ステンレス鋼を電子線マイクロアナライザで測定して得られたNi含有量のマップである。 図2は、図1からフェライト相として選択した領域を白抜きで示したものである。
本発明者等は、0.3bar以下の微量硫化水素環境における二相ステンレス鋼の耐硫化物応力腐食割れ性について検討した。その結果、以下の知見を得た。
二相ステンレス鋼は、オーステナイト相とフェライト相を含む金属組織を有する。鋼中の各合金元素は、オーステナイト相とフェライト相とに分配される。具体的には、鋼全体の化学組成と比較して、オーステナイト相中ではNi、Cu、N等の含有量が高くなり、フェライト相中ではCr、Mo等の含有量が高くなる。この成分分配は、鋼の化学組成の他に、熱処理条件によっても変化する。
分配された各元素の含有量は、それぞれの相の耐食性を決める因子となる。微量硫化水素環境での耐食性は、Cr、Ni、Mo、及びCuの含有量の影響を受ける。また、二相ステンレス鋼の微量硫化水素環境での応力腐食割れは、基本的にフェライト相を伝播する。そのため、二相ステンレス鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を向上させるためには、フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量を高くする必要がある。
具体的には、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer、以下「EPMA」という。)を用いて測定して得られるフェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が、下記の式(1)を満たす必要がある。
(0.3×Cr)+(0.2×Ni)+(0.4×Mo)+(2.1×Cu)≧86.0 (1)
式(1)のCr、Ni、Mo、及びCuには、フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が質量%で代入される。
Coは、硫化物の皮膜を作り、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を顕著に向上させる。Coを所定量含有し、かつ、EPMAを用いて測定して得られるフェライト相中のCr、Ni、Mo及びCu含有量が上記の式(1)を満たすようにすれば、優れた耐硫化物応力腐食割れ性が得られる。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明の一実施形態による二相ステンレス鋼を詳述する。
[化学組成]
本実施形態による二相ステンレス鋼は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.03%以下
炭素(C)は、オーステナイトを安定化する。しかし、C含有量が0.03%を超えると炭化物が析出しやすくなり、耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.03%以下である。C含有量の下限は、好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。C含有量の上限は、好ましくは0.025%であり、さらに好ましくは0.02%である。
Si:0.2〜1%
シリコン(Si)は、溶接時の溶融金属の流動性を向上させるため、溶接欠陥を防止するのに有効な元素である。Si含有量が0.2%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Si含有量が1%を超えると、σ相等の析出相が生成しやすくなる。σ相等の析出相は、材料の靱性や耐孔食性を劣化させる。したがって、Si含有量は0.2〜1%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.4%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは0.7%である。
Mn:1.5%以下
マンガン(Mn)は、脱硫及び脱酸効果によって熱間加工性を向上させる。また、Mnは、Nの溶解度を大きくする。しかし、Mn含有量が1.5%を超えると、耐食性が低下する。したがって、Mn含有量は1.5%以下である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mn含有量の上限は、好ましくは1.2%であり、さらに好ましくは1.0%である。
P:0.040%以下
リン(P)は、鋼中に不純物として混入し、鋼の耐食性及び靱性を低下させる。そのため、P含有量は0.040%以下である。P含有量は、好ましくは0.030%以下であり、さらに好ましくは0.025%以下である。
S:0.010%以下
硫黄(S)は、鋼中に不純物として混入し、鋼の熱間加工性を低下させる。また、硫化物は孔食の発生起点となり、鋼の耐孔食性を低下させる。そのため、S含有量は0.010%以下である。S含有量は、好ましくは0.005%以下であり、さらに好ましくは0.002%以下である。
Al:0.001〜0.040%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。一方、鋼中のN含有量が多い場合には、Alは窒化アルミニウム(AlN)として析出し、鋼の靱性及び耐食性を低下させる。そのため、Al含有量は0.001〜0.040%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%である。なお、本実施形態におけるAl含有量とは、酸可溶Al(sol.Al)の含有量を指す。
Ni:4%以上7%未満
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化する。Niはまた、鋼の靱性を向上させる。Ni含有量が4%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が7%以上になると、σ相等の析出相が生成しやすくなる。したがって、Ni含有量は4%以上7%未満である。Ni含有量の下限は、好ましくは4.2%であり、さらに好ましくは4.5%である。Ni含有量の上限は、好ましくは6.5%であり、さらに好ましくは6%である。
Cr:24%を超えて28%以下
クロム(Cr)は、鋼の耐食性を向上させる。Cr含有量が24%以下では、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が28%を超えると、σ相等の析出相が生成しやすくなる。したがって、Cr含有量は24%を超えて28%以下である。Cr含有量の下限は、好ましくは24.5%であり、さらに好ましくは25%である。Cr含有量の上限は、好ましくは27%であり、さらに好ましくは26%である。
Mo:0.5〜4.0%
モリブデン(Mo)は、鋼の耐食性を向上させる。Mo含有量が0.5%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が4.0%を超えると、σ相等の析出相が生成しやすくなる。したがって、Mo含有量は0.5〜4.0%である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.7%であり、さらに好ましくは1.0%である。Mo含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらに好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.5%である。
Cu:2.0%を超えて4.0%以下
銅(Cu)は、腐食性の酸性ガスを含む塩化物環境において、Crを主成分とする不動態皮膜を強化する。Cuはまた、大入熱溶接時にマトリックスに微細に析出し、フェライト相とオーステナイト相との界面でのσ相の生成を抑制する。Cu含有量が2.0%以下では、この効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が4.0%を超えると、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は2.0%を超え4.0%以下である。Cu含有量の下限は、好ましくは2.1%であり、さらに好ましくは2.2%である。Cu含有量の上限は、好ましくは3.8%であり、さらに好ましくは3.5%である。
Co:0.001〜0.3%
コバルト(Co)は、硫化物の皮膜を作り、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。Co含有量が0.001%以上であれば、この効果が顕著に得られる。一方、Coは高価であること及び多量に添加すると鋼材の相バランス(オーステナイト相とフェライト相の割合)が変化して、性能に影響を及ぼしうる。そこでCo含有量を0.3%以下とする。Co含有量の下限は、より好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.01%である。Co含有量の上限は、好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.1%である。
N:0.1%を超えて0.35%以下
窒素(N)は、強力なオーステナイト形成元素であり、二相ステンレス鋼の熱的安定性及び耐食性を向上させる。本実施形態による二相ステンレス鋼は、フェライト形成元素であるCr及びMoを多量に含有するので、フェライト相とオーステナイト相とのバランスを適正なものとするため、N含有量を0.1%よりも多くする。一方、N含有量が0.35%を超えると、溶接時にブローホールが発生する。また、溶接時に生成される窒化物によって、溶接金属の靱性や耐食性が低下する。したがって、N含有量は0.1%を超えて0.35%以下である。N含有量の下限は、好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。N含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.25%である。
O:0.010%以下
酸素(O)は、非金属介在物である酸化物を形成し、二相ステンレス鋼の靱性を低下させる。そのため、O含有量は0.010%以下である。O含有量は、好ましくは0.008%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。
本実施形態による二相ステンレス鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入される元素、あるいは製造過程の環境等から混入される元素をいう。
本実施形態による二相ステンレス鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、以下に説明する元素を含有してもよい。以下に説明する元素は、すべて選択元素である。すなわち、本実施形態による二相ステンレス鋼の化学組成は、以下の元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。
V:0〜1.5%
バナジウム(V)は、選択元素である。Vは、二相ステンレス鋼の耐食性を向上させる。Vはより具体的には、Mo及びCuと複合して含有させることにより、耐隙間腐食性を向上させる。Vが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、V含有量が1.5%を超えると、フェライト相が過剰になり、靱性及び耐食性が低下する。したがって、V含有量は0〜1.5%である。V含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。V含有量の上限は、好ましくは1.2%であり、さらに好ましくは1.0%である。
Ca:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%
B :0〜0.02%
REM:0〜0.2%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硼素(B)、及び希土類元素(REM)は、いずれも選択元素である。これらの元素はいずれも、SやOを固定して、熱間加工性を向上させる。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Ca、Mg、及びBの各々の含有量が0.02%を超えると、非金属介在物が増加して靱性や耐食性が低下する。したがって、Ca、Mg、及びBの各々の含有量は、0〜0.02%である。同様に、REM含有量が0.2%を超えると、非金属介在物が増加して靱性や耐食性が低下する。したがって、REM含有量は0〜0.2%である。
Ca含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.005%である。Mg含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。Mg含有量の上限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.005%である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の上限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.005%である。
なお、REMとは、ランタノイドの15元素にY及びScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種以上を含有させることができる。REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REM含有量の下限は、好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.001%である。REM含有量の上限は、好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.05%である。
[組織]
本実施形態による二相ステンレス鋼は、オーステナイト相及びフェライト相からなり、残部は析出物と介在物である。
本実施形態による二相ステンレス鋼は、EPMAを用いて測定して得られるフェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が、下記の式(1)を満たす。
(0.3×Cr)+(0.2×Ni)+(0.4×Mo)+(2.1×Cu)≧86.0 (1)
式(1)のCr、Ni、Mo、及びCuには、フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が質量%で代入される。
二相ステンレス鋼の硫化水素環境中での応力腐食割れは、相対的に耐食性の低いフェライト相を伝搬する。そのため、硫化水素環境中での耐食性を高めるためには、フェライト相中に硫化水素環境に対して耐食性を示す元素が多く分配されている必要がある。
フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量は、より具体的には、次のようにして求める。まず、二相ステンレス鋼から試験片を採取する。採取した試験片を機械研磨し、続いて電解研磨する。EPMAを用いて、研磨した試験片を分析する。具体的には、加速電圧15kVの電子線を用いて、200μm×200μmの領域を、0.4μm間隔で格子状に測定する。すなわち、500点×500点の250,000点を測定する。
図1は、後述する実施例で製造したNo.5の鋼板から採取した試験片をEPMAで測定して得られたNi含有量のマップである。図1において、紙面左右方向が圧延方向、紙面上下方向は幅方向(圧延方向と厚さ方向とに垂直な方向)である。また、明るい領域がNi含有量の高い領域であり、暗い領域がNi含有量の低い領域である。
Ni含有量の高い領域がオーステナイト相に対応し、Ni含有量の低い領域がフェライト相に対応する。図1に示すように、二相ステンレス鋼の組織は、素地がフェライト相で、島状にオーステナイト相が生成するのが一般的である。
測定した250,000点のデータから、明らかにフェライト相であると判断できる測定点を200点以上選択する。図2は、図1からフェライト相として選択した領域を白抜きで示したものである。
選択した200点以上の測定点でのNi含有量の平均値を、フェライト相中のNi含有量と定義する。同様に、選択した200点以上の測定点でのCr含有量の平均値、Mo含有量の平均値、及びCu含有量の平均値をそれぞれ、フェライト相中のCr含有量、Mo含有量、及びCu含有量と定義する。
なお、式(1)では用いないが、オーステナイト相中の各合金元素の含有量も、同様の方法で求めることができる。
フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量は、二相ステンレス鋼の化学組成の他、熱処理条件によっても変化する。具体的には、二相ステンレス鋼中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が高いほど、フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量も高くなる傾向がある。また、熱処理温度が高いほど、金属組織に占めるフェライト相の体積の割合が高くなり、Cr、Mo(フェライト形成元素)は濃度が低下し、Ni、Cu(オーステナイト形成元素)は濃度が上昇する。
フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量を式(1)の左辺に代入して得られる値を、CI−F値と定義する。CI−F値が86.0以上であれば、優れた耐硫化物応力腐食割れ性が得られる。CI−F値は、好ましくは86.5以上であり、さらに好ましくは87.0以上である。
[製造方法]
以下、本実施形態による二相ステンレス鋼の製造方法の一例を説明する。ただし、本実施形態による二相ステンレス鋼の製造方法は、これに限定されない。
上述した化学組成を有する素材を準備する。例えば、電気炉、Ar−O混合ガス底吹き脱炭炉(AOD炉)、真空脱炭炉(VOD炉)等を用いて鋼を溶製する。溶製された溶湯は例えば、インゴットに鋳造してもよいし、連続鋳造法によって棒状のビレットに鋳造してもよい。
準備した素材を所定の形状に熱間加工する。熱間加工は例えば、熱間圧延や熱間鍛造、穿孔圧延、熱間押出である。インゴットを鍛造して鋼板としてもよいし、ビレットを穿孔圧延して継目無鋼管としてもよい。
熱間加工された素材を固溶化熱処理する。具体的には、素材を所定の温度に加熱して所定の時間保持した後、急冷する。熱間加工後の高温の素材を固溶化熱処理してもよいし、熱間加工された素材を室温付近まで冷却した後、再加熱して固溶化熱処理してもよい。
固溶化熱処理の温度は、好ましくは950℃〜1070℃である。固溶化熱処理の温度が950℃より低くても1070℃を超えても、CI−F値を86.0以上にすることが困難になる。また、固溶化熱処理の温度が低すぎると、σ相等の析出相が生成する場合がある。固溶化熱処理の温度の下限は、好ましくは960℃であり、さらに好ましくは970℃である。固溶化熱処理の温度の上限は、好ましくは1040℃であり、さらに好ましくは1030℃である。
保持時間は特に限定されないが、好ましくは均熱時間で5分以上、より好ましくは均熱時間で10分以上である。さらに長時間均熱しても効果はほとんど飽和する。製造コストの観点から、均熱時間は好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。保持後の急冷は、例えば水冷である。
以上、本発明の一実施形態にかかる二相ステンレス鋼を説明した。本実施形態による二相ステンレス鋼は、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を有する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、熱間鍛造及び熱間圧延して鋼板を製造した。表1において、「−」は該当する元素の含有量が不純物レベルであることを示す。
製造した鋼板を所定の温度で固溶化熱処理した。固溶化熱処理後の各鋼板の板厚中心部から試験片を採取し、実施形態で説明した方法によってフェライト相中及びオーステナイト相中の合金元素(Cr、Ni、Mo、及びCu)の含有量を測定した。
各鋼板に対して、硫化物応力腐食割れ試験を以下のように実施した。固溶化熱処理後の各鋼板の板厚中心部から、厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmの試験片を採取した。採取した試験片に対して、4点曲げによって100%の実降伏応力を付与した。0.03barのHS及び0.97barのCOが封入されたオートクレーブを準備した。オートクレーブ中で、質量%で10%のNaCl水溶液に、上述した100%の実降伏応力が付与された試験片を1ヶ月間浸漬した。1ヶ月浸漬した後、各試験片に硫化物応力割れ(Sufide Stress Cracking、以下「SSC」という。)が発生しているかを調査した。具体的には、各試験片の長手方向に垂直な断面を倍率100倍の光学顕微鏡で観察して、SSCの有無を判断した。
固溶化熱処理の温度、フェライト相中及びオーステナイト相中の合金元素の含有量、並びに硫化物応力腐食割れ試験の結果を表2に示す。
表2の「Cr−A」、「Ni−A」、「Mo−A」、及び「Cu−A」の欄にはそれぞれ、EPMAを用いて測定して得られたオーステナイト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が記載されている。同様に、「Cr−F」、「Ni−F」、「Mo−F」、及び「Cu−F」の欄にはそれぞれ、EPMAを用いて測定して得られたフェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が記載されている。
「CI−F値」の欄には、EPMAを用いて測定して得られたフェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量を式(1)の左辺に代入した値が記載されている。
「SSC試験結果」の欄には、硫化物応力腐食割れ試験の結果が記載されている。
No.4〜8及び16の鋼板は、CI−F値が86.0以上であった。No.4〜8及び16の鋼板は、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生しなかった。
No.1〜3の鋼板は、CI−F値が86.0未満であり、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生した。これは、熱処理温度が低すぎたためと考えられる。
No.9の鋼板は、CI−F値が86.0未満であり、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生した。これは、鋼材CのCr含有量が低すぎたためと考えられる。
No.10の鋼板は、CI−F値が86.0未満であり、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生した。これは、鋼材DのCu含有量が低すぎたためと考えられる。
No.11〜14の鋼板は、CI−F値が86.0未満であり、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生した。これは、熱処理温度が高すぎたためと考えられる。
No.15の鋼板は、CI−F値が適正であったにもかかわらず、硫化物応力腐食割れ試験でSSCが発生した。これは、鋼材EがCoを含有していなかったためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (3)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.03%以下、
    Si:0.2〜1%、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.040%以下、
    S :0.010%以下、
    Al:0.001〜0.040%、
    Ni:4%以上7%未満、
    Cr:24%を超えて28%以下、
    Mo:0.5〜4.0%、
    Cu:2.0%を超えて4.0%以下、
    Co:0.001〜0.3%、
    N :0.1%を超えて0.35%以下、
    O :0.010%以下、
    V :0〜1.5%、
    Ca:0〜0.02%、
    Mg:0〜0.02%、
    B :0〜0.02%、
    REM:0〜0.2%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    オーステナイト相及びフェライト相を含む組織を有し、
    電子線マイクロアナライザを用いて測定して得られる前記フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が、下記の式(1)を満たす、二相ステンレス鋼。
    (0.3×Cr)+(0.2×Ni)+(0.4×Mo)+(2.1×Cu)≧86.0 (1)
    式(1)のCr、Ni、Mo、及びCuには、前記フェライト相中のCr、Ni、Mo、及びCu含有量が質量%で代入される。
  2. 請求項1に記載の二相ステンレス鋼であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    V :0.01〜1.5%、
    を含有する、二相ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は2に記載の二相ステンレス鋼であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0001〜0.02%、
    Mg:0.001〜0.02%、
    B :0.0001〜0.02%、及び
    REM:0.0005〜0.2%、
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、二相ステンレス鋼。
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