JP7323858B1 - 二相ステンレス鋼材 - Google Patents

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Abstract

高強度と優れた低温靱性とを有する二相ステンレス鋼材を提供する。本開示による二相ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:0.50~7.00%、P:0.040%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、Ni:4.20~9.00%、Cr:20.00~30.00%、Mo:0.50~2.00%、Cu:0.50~3.00%、N:0.150~0.350%、V:0.01~1.50%、及び、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が552MPa以上であり、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義したとき、ミクロ組織が、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。

Description

本開示は、二相ステンレス鋼材に関する。
油井やガス井(以下、油井及びガス井を総称して、単に「油井」という)は、腐食性ガスを含有した腐食環境となっている場合がある。ここで、腐食性ガスとは、炭酸ガス、及び/又は、硫化水素ガスを意味する。すなわち、油井で用いられる鋼材には、腐食環境における優れた耐食性が求められる。
これまでに、鋼材の耐食性を高める手法として、クロム(Cr)含有量を高め、Cr酸化物を主体とする不働態被膜を、鋼材の表面に形成する手法が知られている。そのため、優れた耐食性が求められる環境下では、Cr含有量を高めた二相ステンレス鋼材が用いられる場合がある。二相ステンレス鋼材は、特に海水中において、優れた耐食性を示すことが知られている。
近年、海面下の深井戸についても、開発が活発になってきている。一方、海面下の深井戸に用いられる鋼材には、優れた耐食性だけでなく、高強度と、優れた低温靭性とも求められる。そのため、高強度と優れた低温靭性とを有する二相ステンレス鋼材が求められてきている。
特開平10-60597号公報(特許文献1)、国際公開第2012/111536号(特許文献2)、及び、特開2016-3377号公報(特許文献3)では、二相ステンレス鋼材の強度及び低温靭性を高める技術が提案されている。
特許文献1に開示された二相ステンレス鋼材は、フェライト量が面積率で60~90%であり、Niバランス値(=Ni+0.5Mn+30(C+N)-1.1(Cr+1.5Si+Mo+0.5Nb)+8.2)が-15~-10であり、かつ、式(Al含有量×N含有量≦0.0023×Niバランス値+0.357)を満たす。この二相ステンレス鋼材は、高強度と優れた靭性とを備える、と特許文献1には記載されている。
特許文献2に開示された二相ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:8.00%以下、P:0.040%以下、S:0.0100%以下、Cu:2.00超~4.00%以下、Ni:4.00~8.00%、Cr:20.0~30.0%、Mo:0.50~2.00%未満、N:0.100~0.350%、及び、Al:0.040%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成と、フェライト率が30~70%であり、フェライトの硬さが300Hv10gf以上である組織とを有する。この二相ステンレス鋼材は、高強度及び高靱性を有する、と特許文献2には記載されている。
特許文献3に開示された二相ステンレス鋼材は、二相ステンレス鋼管であって、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.2~1%、Mn:0.5~2.0%、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Al:0.040%以下、Ni:4~6%未満、Cr:20~25%未満、Mo:2.0~4.0%、N:0.1~0.35%、O:0.003%以下、V:0.05~1.5%、Ca:0.0005~0.02%、及び、B:0.0005~0.02%を含有し、残部はFe及び不純物である化学組成を有し、金属組織が、フェライト相とオーステナイト相の二相組織にて構成され、シグマ相の析出がなく、かつ、面積率で、金属組織に占めるフェライト相の割合が50%以下であり、300mm2視野中に存在する粒径30μm以上の酸化物個数が15個以下である。この二相ステンレス鋼材は、強度、耐孔食性、及び、低温靭性に優れる、と特許文献3には記載されている。
特開平10-60597号公報 国際公開第2012/111536号 特開2016-3377号公報
上述のとおり、上記特許文献1~3は、高強度と優れた低温靭性とを有する二相ステンレス鋼材を開示する。しかしながら、上記特許文献1~3に開示された技術以外の他の技術によって、高強度と優れた低温靭性とを有する二相ステンレス鋼材が得られてもよい。
本開示の目的は、高強度と優れた低温靱性とを有する二相ステンレス鋼材を提供することである。
本開示による二相ステンレス鋼材は、
質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.50~7.00%、
P:0.040%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.100%以下、
Ni:4.20~9.00%、
Cr:20.00~30.00%、
Mo:0.50~2.00%、
Cu:0.50~3.00%、
N:0.150~0.350%、
V:0.01~1.50%、
Nb:0~0.100%、
Ta:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
Zr:0~0.100%、
Hf:0~0.100%、
W:0~0.200%、
Co:0~0.500%、
Sn:0~0.100%、
Sb:0~0.100%、
Ca:0~0.020%、
Mg:0~0.020%、
B:0~0.020%、
希土類元素:0~0.200%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が552MPa以上であり、
ミクロ組織において、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義したとき、
前記ミクロ組織が、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の前記一次オーステナイトと、5~20%の前記二次オーステナイトとからなる。
本開示による二相ステンレス鋼材は、高強度と優れた低温靱性とを有する。
図1は、本実施形態による二相ステンレス鋼材の一例である二相ステンレス継目無鋼管の肉厚中央部であって、二相ステンレス継目無鋼管の管軸方向に垂直な断面におけるミクロ組織観察の様子を示す模式図である。 図2は、本実施例のうち、上述の化学組成を満たす二相ステンレス鋼材における、二次オーステナイトの体積率(%)と、吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度(℃)との関係を示す図である。
まず、本発明者らは、高強度として80ksi(552MPa)以上の降伏強度を有する二相ステンレス鋼材を得ることを検討した。つまり本発明者らは、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立する二相ステンレス鋼材を得る方法について、調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
本発明者らは、まず、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立する二相ステンレス鋼材を、化学組成の観点から検討した。その結果、本発明者らは、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:0.50~7.00%、P:0.040%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、Ni:4.20~9.00%、Cr:20.00~30.00%、Mo:0.50~2.00%、Cu:0.50~3.00%、N:0.150~0.350%、V:0.01~1.50%、Nb:0~0.100%、Ta:0~0.100%、Ti:0~0.100%、Zr:0~0.100%、Hf:0~0.100%、W:0~0.200%、Co:0~0.500%、Sn:0~0.100%、Sb:0~0.100%、Ca:0~0.020%、Mg:0~0.020%、B:0~0.020%、希土類元素:0~0.200%、及び、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する二相ステンレス鋼材であれば、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを得られる可能性があると考えた。
ここで、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材のミクロ組織は、フェライト及びオーステナイトからなる。具体的に、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材のミクロ組織は、体積率が35~55%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなる。なお、本明細書において「フェライト及びオーステナイトからなる」とは、フェライト及びオーステナイト以外の相が、無視できるほど少ないことを意味する。
次に本発明者らは、上述の化学組成を有し、フェライトの体積率が35~55%の二相ステンレス鋼材について、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを得る方法について、詳細に検討した。ここで、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材では、オーステナイトと比較してフェライトの方が硬い。そのため、特に低温環境下では、二相ステンレス鋼材中に発生した微小な割れは、フェライト中を伝播しやすい傾向がある。
そこで本発明者らは、上述の化学組成を有し、フェライトの体積率が35~55%の二相ステンレス鋼材において、フェライト中に微細なオーステナイトを分散させて、フェライトの低温靭性を高めることについて検討した。フェライト中にオーステナイトを微細分散させることができれば、フェライトの低温靭性を選択的に高められる可能性がある。この場合、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材の低温靭性を高められる可能性がある。
一方、本発明者らの詳細な検討の結果、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材では、微細なオーステナイトをフェライト中に分散させることによって、降伏強度が低下する可能性があることが明らかになった。つまり、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材において、単にオーステナイトを微細化するだけでは、低温靭性を高められたとしても、80ksi以上の降伏強度を得られない可能性がある。
そこで本発明者らは、二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、体積率で35~55%のフェライトと、粗大なオーステナイトと、微細なオーステナイトとを混在させることを検討した。この場合、フェライト中に分散した微細なオーステナイトによって二相ステンレス鋼材の低温靭性を高められるだけでなく、粗大なオーステナイトによって降伏強度を維持できる可能性がある。
具体的に本発明者らは、二相ステンレス鋼材のミクロ組織中のオーステナイトを、短径が20μm以上の粗大なオーステナイトと、それ以外の微細なオーステナイトとに分類した。より具体的に、本発明者らは、二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、オーステナイトのうち、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義した。この点について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、本実施形態による二相ステンレス鋼材の一例である二相ステンレス継目無鋼管の肉厚中央部であって、二相ステンレス継目無鋼管の管軸方向に垂直な断面におけるミクロ組織観察の様子を示す模式図である。図1中の観察視野領域10の上下方向は、二相ステンレス継目無鋼管の管径方向に相当する。図1中の観察視野領域10の左右方向は、二相ステンレス継目無鋼管の管周方向に相当する。すなわち、図1中の観察視野領域10は管軸方向に垂直な面に相当する。なお、図1の観察視野領域10の上下方向の長さは200μmであり、左右方向の長さは200μmである。
図1を参照して、黒色で示される領域がフェライト20であり、白色で示される領域がオーステナイト30である。オーステナイト30のうち、短径が20μm以上のオーステナイトが一次オーステナイト31であり、短径が20μm未満のオーステナイトが二次オーステナイト32である。なお、観察視野領域10中において、フェライト20と、一次オーステナイト31と、二次オーステナイト32とは、後述する方法で特定することができる。
続いて本発明者らは、上述の化学組成を有し、フェライトの体積率が35~55%の二相ステンレス鋼材について、後述する方法で降伏強度と、低温靭性とを評価した。その結果、上述の化学組成を有し、フェライトの体積率が35~55%の二相ステンレス鋼材では、一次オーステナイトの体積率が40~55%であり、さらに、二次オーステナイトの体積率が5~20%であれば、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立できることが明らかになった。この点について、図面を用いて具体的に説明する。
図2は、後述する実施例のうち、上述の化学組成を満たす二相ステンレス鋼材における、二次オーステナイトの体積率(%)と、吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度(℃)との関係を示す図である。図2は、後述する実施例のうち、上述の化学組成を満たし、体積率が35~55%のフェライトと、体積率が40~55%の一次オーステナイトとを含むミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材について、二次オーステナイトの体積率(%)と、低温靭性の指標である吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度(℃)とを用いて作成した。
なお、二次オーステナイトの体積率と、吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度とは、後述の方法を用いて求めた。また、図2中の白丸(○)は、降伏強度が552MPa以上を満たす鋼材を意味する。図2中の黒丸(●)は、降伏強度が552MPa未満となった鋼材を意味する。
図2を参照して、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材では、二次オーステナイトの体積率が5%以上であれば、吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度が-20℃以下になり、優れた低温靭性を示すことが確認できる。図2を参照してさらに、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材では、二次オーステナイトの体積率が20%を超えると、優れた低温靭性を示すものの、552MPa以上の降伏強度が得られないことが確認できる。つまり、図2を参照すると、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材では、二次オーステナイトの体積率が5~20%であれば、552MPa以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立できることが確認できる。
したがって、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、かつ、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、80ksi(552MPa)以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを有する。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による二相ステンレス鋼材の要旨は、次のとおりである。
[1]
質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.50~7.00%、
P:0.040%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.100%以下、
Ni:4.20~9.00%、
Cr:20.00~30.00%、
Mo:0.50~2.00%、
Cu:0.50~3.00%、
N:0.150~0.350%、
V:0.01~1.50%、
Nb:0~0.100%、
Ta:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
Zr:0~0.100%、
Hf:0~0.100%、
W:0~0.200%、
Co:0~0.500%、
Sn:0~0.100%、
Sb:0~0.100%、
Ca:0~0.020%、
Mg:0~0.020%、
B:0~0.020%、
希土類元素:0~0.200%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が552MPa以上であり、
ミクロ組織において、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義したとき、
前記ミクロ組織が、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の前記一次オーステナイトと、5~20%の前記二次オーステナイトとからなる、
二相ステンレス鋼材。
[2]
[1]に記載の二相ステンレス鋼材であって、
Nb:0.001~0.100%、
Ta:0.001~0.100%、
Ti:0.001~0.100%、
Zr:0.001~0.100%、
Hf:0.001~0.100%、
W:0.001~0.200%、
Co:0.001~0.500%、
Sn:0.001~0.100%、
Sb:0.001~0.100%、
Ca:0.001~0.020%、
Mg:0.001~0.020%、
B:0.001~0.020%、及び、
希土類元素:0.001~0.200%からなる群から選択される1元素以上を含有する、
二相ステンレス鋼材。
なお、本実施形態による二相ステンレス鋼材の形状は、特に限定されない。本実施形態による二相ステンレス鋼材は、鋼管であってもよく、丸鋼(中実材)であってもよく、鋼板であってもよい。なお、丸鋼とは、軸方向に垂直な断面が円形状の棒鋼を意味する。また、鋼管とは、継目無鋼管であってもよく、溶接鋼管であってもよい。
以下、本実施形態による二相ステンレス鋼材について詳述する。
[化学組成]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.030%以下
炭素(C)は不可避に含有される。すなわち、C含有量の下限は0%超である。Cは結晶粒界にCr炭化物を形成し、粒界での腐食感受性を高める。そのため、C含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.030%以下である。C含有量の好ましい上限は0.028%であり、さらに好ましくは0.025%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Si:0.20~1.00%
ケイ素(Si)は鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Si含有量は0.20~1.00%である。Si含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.30%である。Si含有量の好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。
Mn:0.50~7.00%
マンガン(Mn)は鋼を脱酸し、鋼を脱硫する。Mnはさらに、鋼材の熱間加工性を高める。Mn含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、MnはP及びS等の不純物とともに、粒界に偏析する。そのため、Mn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐食性が低下する。したがって、Mn含有量は0.50~7.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.75%であり、さらに好ましくは1.00%である。Mn含有量の好ましい上限は6.50%であり、さらに好ましくは6.20%である。
P:0.040%以下
燐(P)は不可避に含有される。すなわち、P含有量の下限は0%超である。Pは粒界に偏析する。そのため、P含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靱性及び耐食性が低下する。したがって、P含有量は0.040%以下である。P含有量の好ましい上限は0.035%であり、さらに好ましくは0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、P含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%である。
S:0.0200%以下
硫黄(S)は不可避に含有される。すなわち、S含有量の下限は0%超である。Sは粒界に偏析する。そのため、S含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靱性及び耐食性が低下する。したがって、S含有量は0.0200%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0180%であり、さらに好ましくは0.0160%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、S含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Al:0.100%以下
アルミニウム(Al)は不可避に含有される。すなわち、Al含有量の下限は0%超である。Alは鋼を脱酸する。一方、Al含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物系介在物が生成して、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Al含有量は0.100%以下である。Al含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.085%である。なお、本明細書にいうAl含有量は、「酸可溶Al」、つまり、sol.Alの含有量を意味する。
Ni:4.20~9.00%
ニッケル(Ni)は鋼材のオーステナイト組織を安定化する。すなわち、Niは安定したフェライト・オーステナイトの二相組織を得るために必要な元素である。Niはさらに、鋼材の耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、オーステナイトの体積率が高くなりすぎ、鋼材の降伏強度が低下する。したがって、Ni含有量は4.20~9.00%である。Ni含有量の好ましい下限は4.25%であり、さらに好ましくは4.30%であり、さらに好ましくは4.35%であり、さらに好ましくは4.40%であり、さらに好ましくは4.50%である。Ni含有量の好ましい上限は8.75%であり、さらに好ましくは8.50%であり、さらに好ましくは8.25%であり、さらに好ましくは8.00%であり、さらに好ましくは7.75%である。
Cr:20.00~30.00%
クロム(Cr)は酸化物として鋼材の表面に不働態被膜を形成し、鋼材の耐食性を高める。Crはさらに、鋼材のフェライト組織の体積率を高める。十分なフェライト組織を得ることで、鋼材の耐食性が安定化する。Cr含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は20.00~30.00%である。Cr含有量の好ましい下限は20.50%であり、さらに好ましくは21.00%であり、さらに好ましくは21.50%であり、さらに好ましくは22.00%である。Cr含有量の好ましい上限は29.50%であり、さらに好ましくは29.00%であり、さらに好ましくは28.00%である。
Mo:0.50~2.00%
モリブデン(Mo)は鋼材の耐食性を高める。Moはさらに、鋼に固溶して、鋼材の降伏強度を高める。Moはさらに、鋼中で微細な炭化物を形成して、鋼材の降伏強度を高める。Mo含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0.50~2.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.55%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.70%である。Mo含有量の好ましい上限は2.00%未満であり、さらに好ましくは1.85%であり、さらに好ましくは1.50%である。
Cu:0.50~3.00%
銅(Cu)は鋼材の降伏強度を高める。Cu含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0.50~3.00%である。Cu含有量の好ましい下限は0.60%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは1.00%であり、さらに好ましくは1.50%である。Cu含有量の好ましい上限は2.90%であり、さらに好ましくは2.75%であり、さらに好ましくは2.50%である。
N:0.150~0.350%
窒素(N)は鋼材のオーステナイト組織を安定化する。すなわち、Nは安定したフェライト・オーステナイトの二相組織を得るために必要な元素である。Nはさらに、鋼材の耐食性を高める。N含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.150~0.350%である。N含有量の好ましい下限は0.170%であり、さらに好ましくは0.180%であり、さらに好ましくは0.190%である。N含有量の好ましい上限は、0.340%であり、さらに好ましくは0.330%である。
V:0.01~1.50%
バナジウム(V)は鋼材の降伏強度を高める。V含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、V含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、V含有量は0.01~1.50%である。V含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。V含有量の好ましい上限は1.20%であり、さらに好ましくは1.00%である。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、化学組成における不純物とは、二相ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態による二相ステンレス鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、及び、Wからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の強度を高める。
Nb:0~0.100%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0~0.100%である。Nb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Ta:0~0.100%
タンタル(Ta)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ta含有量は0%であってもよい。含有される場合、Taは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Taが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ta含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Ta含有量は0~0.100%である。Ta含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ta含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%であり、さらに好ましくは0.050%である。
Ti:0~0.100%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.100%である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ti含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Zr:0~0.100%
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Zrが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.100%である。Zr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Zr含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Hf:0~0.100%
ハフニウム(Hf)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Hf含有量は0%であってもよい。含有される場合、Hfは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Hfが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Hf含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Hf含有量は0~0.100%である。Hf含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Hf含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
W:0~0.200%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は0%であってもよい。含有される場合、Wは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、W含有量は0~0.200%である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。W含有量の好ましい上限は0.180%であり、さらに好ましくは0.150%である。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Co、Sn、及び、Sbからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の耐食性を高める。
Co:0~0.500%
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Co含有量は0%であってもよい。含有される場合、Coは鋼材の表面に被膜を形成して、鋼材の耐食性を高める。Coはさらに、鋼材の焼入性を高め、鋼材の強度を安定化する。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Co含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、製造コストが極端に高まる。したがって、Co含有量は0~0.500%である。Co含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。Co含有量の好ましい上限は0.480%であり、さらに好ましくは0.460%であり、さらに好ましくは0.450%である。
Sn:0~0.100%
スズ(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Sn含有量は0%であってもよい。含有される場合、Snは鋼材の耐食性を高める。Snが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Sn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粒界に液化脆化割れを生じることにより、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Sn含有量は0~0.100%である。Sn含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。Sn含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Sb:0~0.100%
アンチモン(Sb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Sb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Sbは鋼材の耐食性を高める。Sbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Sb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の高温での延性が低下して、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Sb含有量は0~0.100%である。Sb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。Sb含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、B、及び、希土類元素からなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の熱間加工性を高める。
Ca:0~0.020%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.020%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
Mg:0~0.020%
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.020%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Mg含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
B:0~0.020%
ホウ素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは鋼材中のSの粒界への偏析を抑制し、鋼材の熱間加工性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、ボロン窒化物(BN)が生成し、鋼材の低温靱性を低下させる。したがって、B含有量は0~0.020%である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。B含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
希土類元素:0~0.200%
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。REMが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.200%である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。REM含有量の好ましい上限は0.180%であり、さらに好ましくは0.160%である。
なお、本明細書におけるREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、及び、ランタノイドである原子番号57番のランタン(La)~原子番号71番のルテチウム(Lu)からなる群から選択される1元素以上を意味する。また、本明細書におけるREM含有量とは、これらの元素の合計含有量を意味する。
[降伏強度]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度は、552MPa以上である。本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、かつ、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、降伏強度が80ksi(552MPa)以上であっても、優れた低温靭性を有する。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度の好ましい下限は560MPaであり、さらに好ましくは570MPaであり、さらに好ましくは580MPaである。本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度の上限は特に限定されないが、たとえば、724MPaである。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度は、次の方法で求めることができる。具体的に、ASTM E8/E8M(2021)に準拠した方法で引張試験を行う。本実施形態による鋼材から、試験片を作製する。鋼材が鋼板である場合、板厚中央部から丸棒試験片を作製する。鋼材が鋼管である場合、厚さが鋼管の肉厚と同じであって、幅25.4mm、標点距離50.8mmの円弧状試験片を作製する。鋼材が丸鋼である場合、丸鋼の軸方向に垂直な断面におけるR/2位置から丸棒試験片を作製する。なお、本明細書において、R/2位置とは、丸鋼の軸方向に垂直な断面における半径Rの中心位置を意味する。丸棒試験片を作製する場合、丸棒試験片の大きさは、たとえば平行部直径6mm、標点距離24mmである。なお、丸棒試験片及び円弧状試験片の長手方向は、鋼材の圧延方向と平行である。試験片を用いて、常温(25℃)、大気中で引張試験を実施して、得られた0.2%オフセット耐力を、降伏強度(MPa)と定義する。
[ミクロ組織]
本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織は、フェライト及びオーステナイトからなる。本明細書において、「フェライト及びオーステナイトからなる」とは、フェライト及びオーステナイト以外の相が無視できるほど少ないことを意味する。たとえば、本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織における析出物や介在物の体積率は、フェライト及びオーステナイトの体積率と比較して、無視できるほど低い。すなわち、本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織には、フェライト及びオーステナイト以外に、析出物や介在物等を微小量含んでもよい。
本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、フェライトの体積率は35~55%である。フェライトの体積率が低すぎれば、降伏強度が低下する。一方、フェライトの体積率が高すぎれば、鋼材の低温靭性が低下する。しかしながら、上述の化学組成を有し、後述する好ましい製造方法によって製造された二相ステンレス鋼材のミクロ組織では、フェライトの体積率は35~55%となる。したがって、本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、フェライトの体積率は35~55%である。
本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、一次オーステナイトの体積率は40~55%であり、二次オーステナイトの体積率は5~20%である。本明細書では、二相ステンレス鋼材のミクロ組織中のオーステナイトのうち、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義する。
上述のとおり、微細な二次オーステナイトは、フェライト中に分散し、フェライトの低温靭性を高める。その結果、二相ステンレス鋼材の低温靭性が高まる。二次オーステナイトの体積率が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、二次オーステナイトの体積率が高すぎれば、二相ステンレス鋼材の降伏強度が低下する。その結果、80ksi以上の降伏強度を有する二相ステンレス鋼材が得られない。したがって、本実施形態では、二次オーステナイトの体積率を5~20%とする。二次オーステナイトの体積率の好ましい下限は6%であり、さらに好ましくは7%であり、さらに好ましくは10%である。二次オーステナイトの体積率の好ましい上限は19%であり、さらに好ましくは18%であり、さらに好ましくは15%である。
さらに、上述のとおり、粗大な一次オーステナイトが存在することにより、本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度が高まる。一次オーステナイトの体積率が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、一次オーステナイトの体積率が高すぎれば、二次オーステナイト及び/又はフェライトの体積率が低下して、製造された二相ステンレス鋼材の低温靭性が低下する場合がある。したがって、本実施形態では、一次オーステナイトの体積率を40~55%とする。一次オーステナイトの体積率の好ましい下限は41%であり、さらに好ましくは42%であり、さらに好ましくは45%である。一次オーステナイトの体積率の好ましい上限は54%であり、さらに好ましくは53%であり、さらに好ましくは50%である。
以上のとおり、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、かつ、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを有する。なお、本実施形態では、後述のとおり、二相ステンレス鋼材の圧延方向に垂直な断面においてミクロ組織観察を実施する。すなわち、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、二相ステンレス鋼材の圧延方向に垂直な断面において、ミクロ組織が、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。
本実施形態による二相ステンレス鋼材のフェライトと、一次オーステナイトと、二次オーステナイトとの体積率は、次の方法で求めることができる。まず、本実施形態による二相ステンレス鋼材から、ミクロ組織観察用の試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から板幅方向5mm、板厚方向5mmの観察面を有する試験片を作製する。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から管径方向5mm、管周方向5mmの観察面を有する試験片を作製する。鋼材が丸鋼の場合、丸鋼の軸方向に垂直な断面におけるR/2位置から、丸鋼の軸方向に垂直な観察面(5mm×5mm)を有する試験片を作製する。なお、上記観察面が得られれば、試験片の大きさは特に限定されない。
作製した試験片の観察面を鏡面研磨する。鏡面研磨された観察面を7%水酸化カリウム腐食液中で電解腐食して、組織現出を行う。組織が現出された観察面を、光学顕微鏡を用いて10視野観察する。各視野の面積は、たとえば、40000μm2(200μm×200μm)である。各視野において、コントラストからフェライト及びオーステナイトを特定する。特定されたフェライトの面積率を求める。フェライトの面積率を求める方法は限定されず、周知の方法でよい。たとえば、画像解析ソフトウエアによって求めることができる。
コントラストから特定された各視野のオーステナイトから、短径が20μm以上のオーステナイトを特定する。なお、本明細書では、オーステナイトの短径とは次のとおりに定義される。まず、各視野から任意のオーステナイトを特定する。なお、本明細書において、「任意のオーステナイトを特定する」とは、外周がフェライトに囲まれた、1つのオーステナイト粒を特定することを意味する。当該オーステナイトの外周の任意の2点を結ぶ線分のうち、長さが最大の線分を当該オーステナイトの長径と定義する。当該オーステナイトの長径を長辺とし、当該オーステナイトに外接する長方形を作図する。このとき、作図された長方形の短辺を、当該オーステナイトの短径と定義する。
各視野において、特定された短径20μm以上のオーステナイト(一次オーステナイト)の面積率を求める。一次オーステナイトの面積率を求める方法は限定されず、周知の方法でよい。たとえば、画像解析ソフトウエアによって求めることができる。さらに、上述の方法で求めたフェライトの面積率(%)と、一次オーステナイトの面積率(%)と、次の式(A)とを用いて、二次オーステナイトの面積率(%)を求めることができる。
(二次オーステナイトの面積率(%))=100-{(フェライトの面積率(%))+(一次オーステナイトの面積率(%))} (A)
本実施形態では、上述の方法で得られたフェライトの面積率(%)の10視野における算術平均値を、フェライトの体積率(%)と定義する。本実施形態ではさらに、上述の方法で得られた一次オーステナイトの面積率(%)の10視野における算術平均値を、一次オーステナイトの体積率(%)と定義する。本実施形態ではさらに、上述の方法で得られた二次オーステナイトの面積率(%)の10視野における算術平均値を、二次オーステナイトの体積率(%)と定義する。
なお、上述のとおり、本実施形態による二相ステンレス鋼材では、ミクロ組織において、フェライト、一次オーステナイト、及び、二次オーステナイト以外に、析出物や介在物等を含む場合がある。しかしながら、上述のとおり、析出物や介在物等の体積率は、フェライト、一次オーステナイト、及び、二次オーステナイトの体積率と比較して、無視できるほど低い。そのため、本明細書において、上述の方法によりフェライト、一次オーステナイト、及び、オーステナイトの体積率を算出する場合、析出物や介在物等の体積率は無視する。
[低温靭性]
本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、かつ、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の一次オーステナイトと、5~20%の二次オーステナイトとからなる。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、降伏強度が80ksi(552MPa)以上であっても、優れた低温靭性を有する。本実施形態において、優れた低温靭性とは、以下のとおりに定義される。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の低温靭性は、ASTM E23(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験によって評価する。本実施形態による鋼材から、ASTM E23(2018)に準拠してVノッチ試験片を作製する。具体的に、鋼材が鋼板である場合、板厚中央部から、板厚方向及び圧延方向に平行なノッチ面を有するVノッチ試験片を作製する。鋼材が鋼管である場合、肉厚中央部から、肉厚方向及び管軸方向に平行なノッチ面を有するVノッチ試験片を作製する。鋼材が丸鋼の場合、軸方向に垂直な断面におけるR/2位置から、断面半径方向及び圧延方向に平行なノッチ面を有するVノッチ試験片を作製する。なお、Vノッチ試験片の長手方向は、鋼材の圧延方向と平行とする。
作製したVノッチ試験片に対して、ASTM E23(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施する。シャルピー衝撃試験を、0~-70℃を10℃ごとに8条件で実施して、各温度における吸収エネルギー(J)を求める。求めた吸収エネルギー(J)をVノッチ試験片の断面積(cm2)で除し、各温度における単位面積あたりの吸収エネルギー(J/cm2)を求める。なお、Vノッチ試験片の断面積とは、Vノッチ底の位置におけるVノッチ試験片の長手方向に垂直な断面の面積を意味する。具体的に、フルサイズの2mmVノッチ試験片を用いた場合、求めた吸収エネルギー(J)をVノッチ試験片の断面積0.8cm2(幅0.8cm×厚さ1.0cm)で除することで、単位面積あたりの吸収エネルギー(J/cm2)を求めることができる。
求めた各温度における単位面積あたりの吸収エネルギーのうち、30J/cm2以上を示す最低温度(℃)を求める。具体的に、たとえば、0℃、-10℃、-20℃、及び、-30℃における単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上であり、-40℃、-50℃、-60℃、及び、-70℃における単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2未満の場合、最低温度は-30℃である。本実施形態では、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上を示す最低温度が-20℃以下であれば、優れた低温靭性を有すると判断する。なお、本明細書では、単位面積あたりの吸収エネルギーを、単に「吸収エネルギー」ともいう。
[二相ステンレス鋼材の形状]
上述のとおり、本実施形態による二相ステンレス鋼材の形状は、特に限定されない。本実施形態による二相ステンレス鋼材はたとえば、鋼管であってもよく、鋼板であってもよく、丸鋼であってもよく、線材であってもよい。好ましくは、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、継目無鋼管である。本実施形態による二相ステンレス鋼材が継目無鋼管の場合、肉厚が5mm以上であっても、552MPa以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを有する。
[製造方法]
上述の構成を有する本実施形態による二相ステンレス鋼材の製造方法の一例を説明する。なお、本実施形態による二相ステンレス鋼材の製造方法は、以下に説明する製造方法に限定されない。本実施形態の二相ステンレス鋼材の製造方法の一例は、素材準備工程と、熱間加工工程と、二次オーステナイト析出処理工程と、溶体化処理工程とを含む。以下、各製造工程について詳述する。
[素材準備工程]
本実施形態による素材準備工程では、上述の化学組成を有する素材を準備する。素材は製造して準備してもよく、第三者から購入することにより準備してもよい。すなわち、素材を準備する方法は特に限定されない。
素材を製造する場合、たとえば、次の方法で製造する。上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法により鋼塊(インゴット)を製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材を製造する。
[熱間加工工程]
本実施形態による熱間加工工程では、上記準備工程で準備された素材を熱間加工して、中間鋼材を製造する。本明細書において中間鋼材とは、最終製品が鋼板の場合は板状の鋼材であり、最終製品が鋼管の場合は素管であり、最終製品が丸鋼の場合は断面円形状の鋼材であり、最終製品が線材の場合は線状の鋼材である。熱間加工は、熱間鍛造であってもよく、熱間押出であってもよく、熱間圧延であってもよい。熱間加工の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。
中間鋼材が素管(継目無鋼管)の場合、熱間加工工程において、たとえば、ユジーン・セジュルネ法、又は、エルハルトプッシュベンチ法(すなわち、熱間押出)を実施してもよく、マンネスマン法による穿孔圧延(すなわち、熱間圧延)を実施してもよい。なお、熱間加工は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。たとえば、素材に対して上述の穿孔圧延を実施した後、上述の熱間押出を実施してもよい。たとえばさらに、素材に対して、上述の穿孔圧延を実施した後、延伸圧延を実施してもよい。すなわち、熱間加工工程では、周知の方法により熱間加工を実施して、所望の形状の中間鋼材を製造する。
なお、鋼材が丸鋼や鋼板の場合、中間鋼材は次のように製造されてもよい。鋼材が丸鋼の場合、初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対して熱間加工を実施して、軸方向に垂直な断面が円形の中間鋼材を製造する。熱間加工はたとえば、分塊圧延機による分塊圧延、又は、連続圧延機による熱間圧延である。連続圧延機は、上下方向に並んで配置された一対の孔型ロールを有する水平スタンドと、水平方向に並んで配置された一対の孔型ロールを有する垂直スタンドとが交互に配列されている。
鋼材が鋼板の場合、初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対して、分塊圧延機、及び、連続圧延機を用いて熱間圧延を実施して、鋼板形状の中間鋼材を製造する。
[二次オーステナイト析出処理工程]
本実施形態による二次オーステナイト析出処理工程では、上記熱間加工工程で製造された中間鋼材に対して熱処理を実施して、中間鋼材中に二次オーステナイトを析出させる。具体的に、本実施形態では、二次オーステナイト析出処理工程において、中間鋼材を加熱して、900~960℃の範囲内で3分以上保持するのが好ましい。
好ましくは、中間鋼材の加熱時における400~800℃の昇温速度を0.35℃/秒以上とする。上述の化学組成を有する中間鋼材では、400~800℃の昇温速度が遅すぎれば、昇温中に一時的に生じる析出物に起因して、中間鋼材に疵や割れが発生する場合がある。したがって、本実施形態では、中間鋼材の加熱時における400~800℃の昇温速度を0.35℃/秒以上とするのが好ましい。中間鋼材の加熱時における400~800℃の昇温速度の上限は特に限定されないが、たとえば、0.60℃/秒である。なお、中間鋼材を加熱する方法は特に限定されず、周知の方法を用いることができる。たとえば、補熱炉や高周波加熱炉を用いて、中間鋼材を加熱してもよい。
本実施形態では、上述の昇温速度で加熱された中間鋼材を、900~960℃の範囲内で3分以上保持するのが好ましい。二次オーステナイト析出処理工程において、中間鋼材を保持する温度(保持温度)が高すぎれば、二次オーステナイトが十分に析出しない。この場合、製造された二相ステンレス鋼材において、二次オーステナイトの体積率が十分に得られない。その結果、製造された二相ステンレス鋼材の低温靭性が十分に得られない。一方、保持温度が低すぎれば、二次オーステナイトが多量に析出しすぎる。この場合、製造された二相ステンレス鋼材において、一次オーステナイトの体積率が低下する。その結果、鋼材の降伏強度が552MPa未満となる場合がある。
したがって、本実施形態による二次オーステナイト析出処理工程では、保持温度を900~960℃とするのが好ましい。保持温度のさらに好ましい下限は905℃であり、さらに好ましくは910℃である。保持温度のさらに好ましい上限は955℃であり、さらに好ましくは950℃である。
二次オーステナイト析出処理工程において、中間鋼材を900~960℃で保持する時間(保持時間)が短すぎれば、二次オーステナイトが十分に析出しない。この場合、製造された二相ステンレス鋼材において、二次オーステナイトの体積率が十分に得られない。その結果、製造された二相ステンレス鋼材の低温靭性が十分に得られない。したがって、本実施形態による二次オーステナイト析出処理工程では、保持時間を3分以上とするのが好ましい。保持時間のさらに好ましい下限は4分であり、さらに好ましくは5分である。
なお、保持時間の上限は特に限定されない。しかしながら、保持時間が長すぎても、その効果が飽和する。したがって、本実施形態による二次オーステナイト析出処理工程では、保持時間の上限は20分とするのが好ましい。保持時間のさらに好ましい上限は19分であり、さらに好ましくは18分である。
[溶体化処理工程]
溶体化処理工程では、上記二次オーステナイト析出処理工程が実施された中間鋼材に対して、溶体化処理を実施する。溶体化処理の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。たとえば、中間鋼材を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷する。なお、素管を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷して溶体化処理を実施する場合、溶体化温度とは、溶体化処理を実施するための熱処理炉の温度(℃)を意味する。この場合さらに、溶体化時間とは、中間鋼材が溶体化温度で保持される時間を意味する。
好ましくは、本実施形態の溶体化処理工程における溶体化温度を980~1110℃とする。溶体化温度が低すぎれば、溶体化処理後の中間鋼材に析出物(たとえば、金属間化合物であるσ相等)が残存する場合がある。この場合、製造された二相ステンレス鋼材の耐食性が低下する。溶体化温度が低すぎればさらに、二次オーステナイトが多量に析出しすぎる。この場合、製造された二相ステンレス鋼材において、鋼材の降伏強度が552MPa未満となる場合がある。一方、溶体化温度が高すぎれば、析出した二次オーステナイトが溶解し、製造された二相ステンレス鋼材中の二次オーステナイトの体積率が低下する場合がある。この場合、鋼材の低温靭性が低下する。
中間鋼材を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷して溶体化処理を実施する場合、溶体化時間は特に限定されず、周知の条件で実施すればよい。溶体化時間は、たとえば、5~180分である。急冷方法は、たとえば、水冷である。
[その他の工程]
なお、溶体化処理が実施された二相ステンレス鋼材に対して、必要に応じて、酸洗処理を実施してもよい。この場合、酸洗処理は、周知の方法で実施されればよく、特に限定されない。また、溶体化処理が実施された二相ステンレス鋼材に対して、冷間加工を実施してもよい。冷間加工を実施した場合であっても、上述のフェライトの体積率、一次オーステナイトの体積率、及び、二次オーステナイトの体積率を満たせば、80ksi(552MPa)以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立することができる。
以上の工程により、本実施形態による二相ステンレス鋼材が製造できる。なお、上述の二相ステンレス鋼材の製造方法は一例であり、他の方法によって二相ステンレス鋼材が製造されてもよい。以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
表1A及び表1Bに示す化学組成を有する溶鋼を、50kgの真空溶解炉を用いて溶製し、造塊法により鋼塊(インゴット)を製造した。なお、表1B中の「-」は、該当する元素の含有量が不純物レベルであったことを意味する。たとえば、試験番号1のNb含有量、Ta含有量、Ti含有量、Zr含有量、Hf含有量、W含有量、Co含有量、Sn含有量、Sb含有量、Ca含有量、Mg含有量、B含有量、及び、REM含有量は、小数第四位を四捨五入して、0%であったことを意味する。
Figure 0007323858000001
各鋼種のインゴットに対して、表2に記載の熱間加工の加熱温度(℃)で加熱した後、熱間圧延を実施して、外径177.8mm、肉厚12.65mm素管(継目無鋼管)を製造した。熱間加工が実施された各試験番号の素管に対して、表2に記載の400~800℃の昇温速度(℃/秒)で加熱して、表2に記載の保持温度(℃)で、保持時間(分)だけ保持する、二次オーステナイト析出処理を実施した。さらに、表2に記載の溶体化温度(℃)及び溶体化時間(分)にて、溶体化処理を実施した。
Figure 0007323858000003
以上の工程により、各試験番号の継目無鋼管を得た。得られた各試験番号の継目無鋼管に対して、引張試験と、ミクロ組織観察試験と、シャルピー衝撃試験とを実施した。なお、得られた試験番号34及び35の継目無鋼管には、割れが確認された。そのため、これらの継目無鋼管に対しては、評価試験を実施しなかった。
[引張試験]
試験番号34及び35を除く各試験番号の継目無鋼管に対して、ASTM E8/E8M(2021)に準拠して、引張試験を実施した。具体的には、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、引張試験用の円弧状試験片を作製した。円弧状試験片は、厚さを鋼管の肉厚と同じとし、幅25.4mm、標点距離50.8mmとした。各試験番号の円弧状試験片を用いて、常温(25℃)、大気中にて引張試験を実施して、0.2%オフセット耐力(MPa)を求めた。求めた0.2%オフセット耐力を降伏強度(MPa)と定義した。得られた各試験番号の降伏強度(Yield Strength)を、表3の「YS(MPa)」欄に示す。
Figure 0007323858000004
[ミクロ組織観察試験]
試験番号34及び35を除く各試験番号の継目無鋼管に対して、ミクロ組織観察を実施して、フェライト、一次オーステナイト、及び、二次オーステナイトの体積率を求めた。具体的には、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、管径方向5mm×管周方向5mmの観察面を有するミクロ組織観察用の試験片を作製した。各試験番号の試験片の観察面を鏡面に研磨し、7%水酸化カリウム腐食液中で電解腐食した。電解腐食により組織が現出された観察面を、光学顕微鏡を用いて10視野観察した。各視野の面積は、40000μm2(200μm×200μm)であった。
各試験番号の各視野において、ミクロ組織はフェライト及びオーステナイト以外の相は、無視できるほど少なかった。すなわち、各試験番号の継目無鋼管は、フェライト、一次オーステナイト、及び、二次オーステナイトからなるミクロ組織を有していた。各試験番号の各視野において、フェライトとオーステナイトとを、コントラストに基づいて特定した。さらに、上述の方法で短径が20μm以上のオーステナイト(一次オーステナイト)を特定した。特定したフェライト及び一次オーステナイトの面積率(%)を、画像解析によって求めた。さらに、フェライト及び一次オーステナイトの面積率(%)から、上述の式(A)により二次オーステナイトの面積率(%)を求めた。10視野におけるフェライトの面積率の算術平均値を、フェライト体積率(%)とした。10視野における一次オーステナイトの面積率の算術平均値を、一次オーステナイト体積率(%)とした。10視野における二次オーステナイトの面積率の算術平均値を、二次オーステナイト体積率(%)とした。求めた各試験番号のフェライト体積率(%)、一次オーステナイト体積率(%)、及び、二次オーステナイト体積率(%)を表3に示す。
[シャルピー衝撃試験]
試験番号34及び35を除く各試験番号の継目無鋼管に対して、ASTM E23(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して、低温靭性を評価した。まず、各試験番号の継目無鋼管から、ASTM E23(2018)に準拠して、シャルピー衝撃試験用のVノッチ試験片を作製した。具体的に、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、肉厚方向及び管軸方向に平行なノッチ面を有するVノッチ試験片を作製した。なお、Vノッチ試験片の長手方向は、鋼材の圧延方向と平行であった。また、Vノッチ試験片の大きさは、フルサイズ(幅10mm、厚さ10mm、長さ55mm)、Vノッチ深さは2mmとした。ここで、Vノッチ試験片の幅とは、Vノッチ試験片のうち、Vノッチが形成されている面と、その反対面との間隔を意味する。
作製された各試験番号のVノッチ試験片を、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、及び、-70℃の8条件で3本ずつ冷却した。冷却された各試験片に対して、ASTM E23(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して、吸収エネルギー(J)を求めた。なお、吸収エネルギー(J)は、温度ごとに3本の試験片の算術平均値とした。求めた吸収エネルギー(J)をVノッチ試験片の断面積(cm2)で除し、各温度における単位面積あたりの吸収エネルギー(J/cm2)を求めた。なお、Vノッチ試験片の断面積(cm2)は、上述の方法で定義したとおり、0.8cm2(幅0.8cm×厚さ1.0cm)とした。
求めた各温度における単位面積あたりの吸収エネルギーのうち、30J/cm2以上を示す最低温度(℃)を求めた。求めた各試験番号の最低温度を表3に示す。
[評価結果]
表1A~表3を参照して、試験番号1~23の継目無鋼管は、化学組成が適切であった。さらに、製造方法も明細書に記載の好ましい製造方法であった。その結果、降伏強度が552MPa以上であった。さらに、フェライトの体積率が35~55%であり、一次オーステナイトの体積率が40~55%であり、二次オーステナイトの体積率が5~20%であった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃以下であった。すなわち、試験番号1~23の継目無鋼管は、80ksi以上の降伏強度と、優れた低温靭性とを有していた。
一方、試験番号24及び25の継目無鋼管は、二次オーステナイト析出処理工程において、保持時間が短すぎた。その結果、二次オーステナイトの体積率が5%未満となった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃を超えた。すなわち、これらの継目無鋼管は、優れた低温靭性を有していなかった。
試験番号26及び27の継目無鋼管は、二次オーステナイト析出処理工程において、保持温度が低すぎた。その結果、二次オーステナイトの体積率が20%を超えた。その結果、降伏強度が552MPa未満となった。すなわち、これらの継目無鋼管は、80ksi以上の降伏強度を有していなかった。
試験番号28及び29の継目無鋼管は、二次オーステナイト析出処理工程において、保持温度が高すぎた。その結果、二次オーステナイトの体積率が5%未満となった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃を超えた。すなわち、これらの継目無鋼管は、優れた低温靭性を有していなかった。
試験番号30及び31の継目無鋼管は、二次オーステナイト析出処理工程を実施しなかった。その結果、二次オーステナイトの体積率が5%未満となった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃を超えた。すなわち、これらの継目無鋼管は、優れた低温靭性を有していなかった。
試験番号32及び33の継目無鋼管は、溶体化処理工程において、溶体化温度が低すぎた。その結果、一次オーステナイトの体積率が40%未満となり、さらに、二次オーステナイトの体積率が20%を超えた。その結果、降伏強度が552MPa未満となった。すなわち、これらの継目無鋼管は、80ksi以上の降伏強度を有していなかった。
試験番号34及び35の継目無鋼管は、二次オーステナイト析出処理工程において、400~800℃の昇温速度が遅すぎた。その結果、これらの継目無鋼管は割れが確認された。そのため、これらの継目無鋼管は、降伏強度及び低温靭性を評価されなかった。
試験番号36の継目無鋼管は、N含有量が高すぎた。その結果、二次オーステナイトの体積率が5%未満となった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃を超えた。すなわち、この継目無鋼管は、優れた低温靭性を有していなかった。
試験番号37の継目無鋼管は、N含有量が低すぎた。その結果、一次オーステナイトの体積率が40%未満となり、さらに、二次オーステナイトの体積率が20%を超えた。その結果、降伏強度が552MPa未満となった。すなわち、この継目無鋼管は、80ksi以上の降伏強度を有していなかった。
試験番号38の継目無鋼管は、Ni含有量が低すぎた。その結果、フェライトの体積率が55%を超え、一次オーステナイトの体積率が40%未満となり、さらに、二次オーステナイトの体積率が5%未満となった。その結果、単位面積あたりの吸収エネルギーが30J/cm2以上となる最低温度が-20℃を超えた。すなわち、この継目無鋼管は、優れた低温靭性を有していなかった。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
10 観察視野領域
20 フェライト
30 オーステナイト
31 一次オーステナイト
32 二次オーステナイト

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.030%以下、
    Si:0.20~1.00%、
    Mn:0.50~7.00%、
    P:0.040%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:0.100%以下、
    Ni:4.20~9.00%、
    Cr:20.00~30.00%、
    Mo:0.50~2.00%、
    Cu:0.50~3.00%、
    N:0.150~0.350%、
    V:0.01~1.50%、
    Nb:0~0.100%、
    Ta:0~0.100%、
    Ti:0~0.100%、
    Zr:0~0.100%、
    Hf:0~0.100%、
    W:0~0.200%、
    Co:0~0.500%、
    Sn:0~0.100%、
    Sb:0~0.100%、
    Ca:0~0.020%、
    Mg:0~0.020%、
    B:0~0.020%、
    希土類元素:0~0.200%、及び、
    残部がFe及び不純物からなり、
    降伏強度が552MPa以上であり、
    ミクロ組織において、短径が20μm以上のオーステナイトを一次オーステナイトと定義し、オーステナイトの残部を二次オーステナイトと定義したとき、
    前記ミクロ組織が、体積率で、35~55%のフェライトと、40~55%の前記一次オーステナイトと、5~20%の前記二次オーステナイトとからなる、
    二相ステンレス鋼材。
  2. 請求項1に記載の二相ステンレス鋼材であって、
    Nb:0.001~0.100%、
    Ta:0.001~0.100%、
    Ti:0.001~0.100%、
    Zr:0.001~0.100%、
    Hf:0.001~0.100%、
    W:0.001~0.200%、
    Co:0.001~0.500%、
    Sn:0.001~0.100%、
    Sb:0.001~0.100%、
    Ca:0.001~0.020%、
    Mg:0.001~0.020%、
    B:0.001~0.020%、及び、
    希土類元素:0.001~0.200%からなる群から選択される1元素以上を含有する、
    二相ステンレス鋼材。
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