JP2001115212A - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents

熱処理装置および熱処理方法

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JP2001115212A
JP2001115212A JP29788299A JP29788299A JP2001115212A JP 2001115212 A JP2001115212 A JP 2001115212A JP 29788299 A JP29788299 A JP 29788299A JP 29788299 A JP29788299 A JP 29788299A JP 2001115212 A JP2001115212 A JP 2001115212A
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temperature
tempering
quenching
inductor
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Shoji Yamaguchi
祥司 山口
Masao Shinozaki
征男 篠崎
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Hitachi Construction Machinery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一な熱処理を行うことができる熱処理装置
の提供。 【解決手段】 高周波誘導子4を用いて歯車3の歯を高
周波加熱することにより、歯車3の焼き入れ・焼き戻し
を行う熱処理装置において、歯車3を温浴槽20内の沸
騰水に浸した状態で焼き入れ・焼き戻し作業を行う。歯
車3を沸騰水に浸すことによって焼き戻し開始時の歯車
3の温度が安定し、温度のばらつきが小さくなって焼き
戻しを均一に行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波加熱により
鉄鋼材料、特に歯車の歯に熱処理を施す熱処理装置およ
び熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】歯車の製作においては、歯面の強さや歯
元の曲げ強さ等を付与させるための熱処理が施されてお
り、そのような熱処理の一つとして高周波焼き入れがあ
る。例えば、油圧ショベル等の建設機械に用いられる旋
回用歯車の焼き入れを行う高周波焼き入れ装置では、歯
の形状に応じて形成された誘導子、および誘導子により
高周波加熱された歯に冷却水を噴出する冷却ジャケット
を備えている。このような装置では、ステージ上に水平
に載置された歯車に対して、誘導子および冷却ジャケッ
トを歯車の歯筋に沿って歯の下端部から上端部に向かっ
て移動させて高周波焼き入れを行う。誘導子および冷却
ジャケットが歯筋の上方に移動すると、誘導子により高
周波加熱された部分は加熱直後に冷却ジャケットからの
冷却水により急冷される。
【0003】一つの歯に関する焼き入れが終了したら、
いったん誘導子および冷却ジャケットを歯から離した後
に隣の歯の下端部に移動させ、その歯の下端部から上端
部へと同様の焼き入れを行う。誘導子および冷却ジャケ
ットを隣の歯に移動させる際には、歯車が載置されたス
テージを所定角度だけ回転させて隣の歯溝と誘導子との
位置決めを行う。このような歯筋に沿った焼き入れ作業
を各歯に対して順次行うことにより、歯車の全ての歯に
対する焼き入れが終了する。同様の焼き入れ作業を何個
かの歯車に対して行い、それらの歯車をまとめて焼き戻
し用の炉に入れて所定の焼き戻し温度で焼き戻し作業を
行う。このときの焼き戻し温度は、鉄鋼材料の場合には
約160〜400℃の範囲内に設定され、炉内に保持す
る時間は焼き戻し温度に応じて設定される。
【0004】上述した焼き入れ方法では、全ての歯の焼
き入れが済んだ後に、その歯車を焼き戻し用の炉に入れ
て焼き戻しを行うようにしたが、誘導子を用いた高周波
加熱により歯毎に焼き戻しを行う方法もある。この方法
では、誘導子および冷却ジャケットを歯の下端部から上
端部に移動させてその歯の焼き入れが終了したならば、
歯車が載置されたステージを回転させずに、誘導子およ
び冷却ジャケットを同じ歯筋に沿って歯の上端部から下
端部へと移動させる。このとき、冷却ジャケットの冷却
水は停止させる。
【0005】誘導子および冷却ジャケットが歯の下端ま
で移動してその歯の焼き戻しが終了したならば、誘導子
および冷却ジャケットを歯から離し、ステージを回転し
て隣の歯に誘導子および冷却ジャケットをセットする。
同様にして、歯毎に焼き入れおよび焼き戻しを順次に行
うことにより、歯車の全ての歯に対する高周波焼き入れ
・焼き戻しが終了する。なお、焼き戻しの際には焼き入
れの場合に比べて電力を小さくし、さらに、歯筋に沿っ
た誘導子の送り速度を調節することにより所望の焼き戻
し温度となるように調節する。この後者の方法では、誘
導子および冷却ジャケットが上下に一往復する間に焼き
入れ作業と焼き戻し作業とが行われるため、前者の方法
に比べて熱処理時間の大幅な短縮が図れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、高周波焼き
戻しの際の表面温度は、内部残熱による材料内部の温度
に依存している。しかしながら、誘導子および冷却ジャ
ケットを上下に往復移動させる間に焼き入れおよび焼き
戻しを行う後者の方法では、焼き入れ直後に焼き戻し作
業が行われるため、焼き戻し開始時における内部残熱の
ばらつき、特に歯筋上下方向の内部残熱の違いが生じ易
くなる。このような歯の上下方向に内部残熱の違いがあ
る状態で高周波焼き戻しを行うと、焼き戻し温度のばら
つきによる硬度のばらつきが生じやすくなる。
【0007】また、上述したように歯車を水平に保持し
て焼き入れ・焼き戻しを行う場合、すなわち歯幅方向
(上下方向)に沿って焼き入れ治具を上下方向に移動さ
せて焼き入れ・焼き戻しを行う場合には、歯車の熱で温
められた冷却水が歯筋に沿って流れ落ちるため、焼き入
れ終了時における歯幅方向の温度差が顕著となりやす
い。
【0008】本発明の目的は、均一な熱処理を行うこと
ができる熱処理装置および熱処理方法を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明の実施の形態を示す
図1および図6に対応付けて説明する。 (1)図1に対応付けて説明すると、請求項1の発明に
よる熱処理装置は、熱処理対象物3を加熱する高周波誘
導子4と、高周波誘導子4を熱処理対象物3に沿って移
動させる移動機構6と、高周波誘導子4で加熱された熱
処理対象物3を冷却する冷却液を噴出する冷却液噴出装
置5と、高周波誘導子4で熱処理対象物3を焼き入れす
る際の冷却液の温度を、焼き戻し開始時の内部残熱の温
度にほぼ等しい温度に調節する冷却温度調節装置8とを
備えて上述の目的を達成する。 (2)請求項2の発明は、高周波誘導子4を熱処理対象
物3に沿って移動させつつ焼き入れおよび焼き戻しを行
う熱処理方法に適用され、焼き入れする際に、焼き戻し
開始時の内部残熱の温度にほぼ等しい温度を有する冷却
液で熱処理対象物3を急冷することにより上述の目的を
達成する。 (3)図6に対応付けて説明すると、請求項3の発明に
よる熱処理装置は、加熱された液体が蓄えられ、熱処理
対象物3の少なくとも一部が浸される温浴槽20と、温
浴槽20内で熱処理対象物3を加熱する高周波誘導子4
とを備えて上述の目的を達成する。 (4)請求項4の発明では、請求項3に記載の熱処理装
置において、前記液体をその沸騰温度に加熱する液体加
熱装置21を設けた。 (5)請求項5の発明による熱処理方法は、加熱された
液体に熱処理対象物3の少なくとも一部を浸し、熱処理
対象物3の前記液体に浸された部分を高周波誘導子4で
加熱することにより上述の目的を達成する。
【0010】なお、本発明の構成を説明する上記課題を
解決するための手段の項では、本発明を分かり易くする
ために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本
発明が発明の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図10を参照して本
発明の実施の形態を説明する。 −第1の実施の形態− 図1は本発明による熱処理装置の第1の実施の形態を示
す図であり、熱処理装置の全体構成を示す。図1に示す
熱処理装置は、装置本体1と歯車3が載置されるステー
ジ2とで構成されている。装置本体1は高周波誘導子4
および冷却ジャケット5が装着される駆動部6を備えて
おり、7は誘導子4に高周波電力を供給する高周波電
源、8は冷却ジャケット5に冷却液を供給する冷却液供
給部である。本実施の形態では、冷却液として沸騰して
いる水(以下では沸騰水と呼ぶ)が用いられており、冷
却液供給部8で水を沸騰させ、その沸騰水を冷却ジャケ
ット5に供給する。駆動部6,高周波電源7および冷却
液供給部8は制御部9により制御される。12はモータ
10の出力軸に装着されたピニオンであり、歯車3と噛
合している。歯車3はステージ2に設けられたローラ1
1の上に載置されており、モータ10を駆動することに
よりローラ11上で歯車3が回動される。
【0012】図2は、誘導子4および冷却ジャケット5
が装着される駆動部6を詳細に示す斜視図である。駆動
部6は、一軸ステージ601、一軸ステージ601上に
載置されるxyステージ602、xyステージ602に
載置されるzステージ603および誘導子4や冷却ジャ
ケット5が装着される取付部604を備えている。これ
らのステージ601〜603を駆動することにより、誘
導子4を歯車3の歯に対して位置決めする。また、焼き
入れ・焼き戻しの際には、zステージ603を上下に駆
動して誘導子4および冷却ジャケット5を歯筋方向に沿
って移動させる。誘導子4,冷却ジャケット5は取付部
604の下方に延在する取付バー604aに装着されて
いる。
【0013】13は歯車3の歯に対して誘導子4を位置
決めするための位置決め治具であり、位置決めの際に用
いられる一対の接触子13aを備えている。位置決め治
具13は一軸ステージ601に固定されていて、一軸ス
テージ601によってy軸方向に駆動される。図3は位
置決め時の位置決め治具13と歯車3との関係を示す図
であり、一軸ステージ601(図2)を駆動して接触子
13aの先端が歯車3の歯溝部分に接触するように位置
決めする。接触子13aが歯車3と接触すると、位置決
め治具13から図1の制御部9へ信号が送信され、一軸
ステージ601の移動が停止される。
【0014】図4は焼き入れ・焼き戻し動作を説明する
図であり、誘導子4および冷却ジャケット5を側方から
見た図である。図4では(a)〜(c)の順で歯3aの
下端部から上端部へと焼き入れが行われる。なお、歯車
3については縦断面とした。まず、図4(a)のように
誘導子4を歯車3の歯溝の下端部分に挿入して、誘導子
4と歯3aとの間が所定の間隔となるように位置決めす
る。その後、誘導子4に電力を供給して歯3aを高周波
加熱した後に、冷却ジャケット5から沸騰水を歯3aに
噴出して急冷することにより焼き入れが行われる。焼き
入れ開始とともに誘導子4および冷却ジャケット5を所
定の速度で上方に移動させるが、この移動速度および誘
導子4に加える電力の大きさは、焼き入れ温度(オース
テナイト領域温度)などに応じて設定される。焼き入れ
温度は歯車3の材料によって異なるが鉄鋼材料の場合に
は900℃〜1000℃程度である。
【0015】図4(a)に示す状態では、誘導子4の下
方に設けられた冷却ジャケット5は歯3aと対向する位
置に達していないが、図4(b)のように誘導子4およ
び冷却ジャケット5が上方に移動するすると、冷却ジャ
ケット5が高周波加熱された部分に対向するようにな
る。この加熱された部分は、冷却ジャケット5から噴出
される沸騰水により急冷されて硬化層が形成される。こ
のように誘導子4および冷却ジャケット5を上方に移動
させることによって、歯3aの下端部から上端部へと順
に焼き入れが行われる。図4(c)は歯3aの上端部分
の加熱が終了して冷却ジャケット5による冷却が行われ
ている状態を示したものであり、歯3aの上端部分の焼
き入れが終了したならば、冷却ジャケット5の位置を図
4(c)に示す位置に保持して焼き戻し開始まで歯3a
の冷却を引き続き行う。
【0016】上述したように、誘導子4および冷却ジャ
ケット5を図4(c)に示す位置に所定時間保持したな
らば、次いで同じ歯3aに対する焼き戻し作業を行う。
焼き戻しのときには加熱温度を低くするために誘導子4
の電力を下げ、誘導子4および冷却ジャケット5を歯3
aの上端部分から下端部分へと降下させる。この焼き戻
しの際には、冷却ジャケット5からの沸騰水の噴出を停
止しても良いし、継続して噴出させてもどちらでも良
い。図5は焼き入れ・焼き戻しの温度サイクルを示した
ものであり、縦軸が温度、横軸が時間を表している。焼
き入れ開始時に常温であった歯3aは高周波加熱により
温度が上昇し、焼き入れ温度Thに一定時間(図5のt
1〜t2)保持される。その後、冷却ジャケット5から
の沸騰水により冷却される。
【0017】上述したように、誘導子4および冷却ジャ
ケット5を上方に移動させながら焼き入れを行うため、
焼き入れが終わった部分は歯面に沿って流れ落ちる沸騰
水によって引き続き冷却され、最終的には沸騰水とほぼ
同程度の温度(約100℃)に保持されることになる
(図5のt3〜t4)。次いで、時刻t4から焼き戻し
を開始して歯3aの温度を再び上昇させ、焼き戻し温度
Ta(図5のt5〜t6)に保持する。時刻t6に高周
波加熱を停止すると、歯3aは自然冷却されて温度が下
がる。
【0018】このように、本実施の形態では冷却液に沸
騰水を用いているため、常温の冷却水を用いる従来の方
法に比べて次のような利点がある。冷却液に沸騰水を用
いる場合には、常温の冷却水に比べ温度管理が容易であ
るとともに、歯3aに沿って流れている最中でも冷却液
の温度が変化しない。また、冷却水温度と部材内部の温
度との差が常温の冷却水を用いる従来の場合と比べて小
さいため、温度が安定するまでの時間が短くなる。その
結果、内部残熱のばらつきが小さくなって焼き戻し温度
の均一化が図れ、硬度のばらつきを低減することができ
る。また、表面温度が100℃に安定する方向で熱伝達
が行われるため、焼き戻し開始時の残熱が従来よりも高
くなり、焼き戻し時に焼き戻し温度Taまで加熱するた
めの電力を従来より低減することができる。
【0019】−第2の実施の形態− 図6は本発明による熱処理装置の第2の実施の形態を示
す図であり、図1と同様に熱処理装置の全体構成を示
す。20は温浴槽であり、歯車3は温浴20a中に浸さ
れている。21は温浴液供給装置であり、本実施の形態
では沸騰水(温度100℃の水)を温浴槽20に供給す
る。そして、図6に示すように歯車3が温度100℃の
温浴20a中に浸された状態で、高周波誘導子4を用い
た焼き入れ・焼き戻しが行われる。焼き入れ・焼き戻し
方法としては、歯3a毎に焼き入れ・焼き戻しを行う
方法と、温浴内で歯3aの全てについて焼き入れを行
ってから、誘導子4による焼き戻しを行う方法とがあ
る。
【0020】(の方法について)上述した第1の実施
の形態と同様に、誘導子4を歯車3の歯の下端部から上
端部へ移動させつつ焼き入れを行い、同じ歯について上
端部から下端部へ移動させつつ焼き戻しを行う。このと
き、冷却ジャケット5から供給する冷却水としては、温
浴20aと同じ沸騰水を用いても、また、温浴20aよ
り低い温度の冷却水を用いても良いが、所望の焼き入れ
深さを得るためには冷却強さ(冷却水の温度)を調整す
る必要がある。
【0021】焼き入れ・焼き戻しの熱サイクルは図7に
示すようになる。上述した図5の熱サイクルと比較する
と、歯車3が温度100℃の温浴20aに浸されて温め
られているため、焼き入れ開始時の歯車3の温度を10
0℃に安定に保つことができるとともに、焼き入れ開始
から焼き入れ温度Thに昇温するのに要する時間を短縮
することができる。また、焼き入れ終了後は温浴20a
との熱交換により歯車3は温浴20aの温度(100
℃)まで冷却され、その温度で安定する。従来のように
大気中で焼き戻しを行う場合には大気温度の影響を受け
たが、本実施の形態では焼き戻し前の歯車3の温度は安
定的に100℃に保たれる。そのため、焼き戻し前の温
度のばらつきが小さくなり、焼き戻しを均一に行うこと
ができる。また、歯車3の内部温度も100℃に近い温
度となるため、表面から比較的内部にわたって焼き戻し
温度Taに加熱することが可能となり、歯の比較的内部
まで焼き戻しをすることができる。さらに、焼き戻し開
始温度が100℃となるため、焼き戻し温度Taまで昇
温する際の電力を低減することができるとともに、加熱
時間を従来より短縮することができる。
【0022】(の方法について)次に、全ての歯3a
の焼き入れを先に行って、その後に焼き戻しを行う場合
について説明する。この場合には、図8に示すように冷
却ジャケット5を誘導子4の上下にそれぞれ設けるよう
にする。このような構成とすることにより、上述したよ
うに誘導子4を上方に移動させる間だけでなく、下方に
移動させる間にも焼き入れを行わせることが可能とな
る。すなわち、誘導子4を歯3aの下端部から上端部に
移動させつつ焼き入れを行う際には、下側の冷却ジャケ
ット5のみから冷却水を噴出させ、隣の歯3aに対して
誘導子4を上端部から下端部に移動させつつ焼き入れを
行う際には、上側の冷却ジャケット5のみから冷却水を
噴出させる。
【0023】ところで、従来は大気中で焼き入れ作業を
行うため、冷却水が歯3aに沿って下方に流れ落ちる。
そのため、本実施の形態のように誘導子4の上側に冷却
ジャケット5を設けて誘導子4を下方に移動させつつ焼
き入れを行うということはできなかった。しかし、本実
施の形態では温浴20aの中で焼き入れ作業を行うた
め、冷却水が下方に流れ落ちるという不都合が無く、上
述したように誘導子4の往復移動の各々で焼き入れを行
うことができる。そのため、焼き入れ作業の短縮化が可
能となる。このようにして、誘導子4を上下に往復させ
ながら全ての歯に関する焼き入れが終了したならば、冷
却ジャケット5による冷却水の噴出を停止して誘導子4
による焼き戻しを順に行う。このの方法の場合も、
の場合と同様の効果を得ることができる。
【0024】上述した図6の装置では歯車3を水平にし
て温浴20aに浸したが、歯車3を斜めにしたり垂直に
したりして歯車3の一部を温浴20aに浸し、温浴20
aに浸っている歯3aに対して焼き入れ・焼き戻しを行
うようにしても良い。図9はそのような装置の一例を示
したものであり、歯車3を垂直に配設する場合を示す。
なお、図6と同一の部分には同一の符号を付した。図9
において、22は歯車3を温浴槽20内で垂直に支持す
る支持装置であり、歯車3の下部は温浴20aに浸った
状態となる。誘導子4および冷却ジャケット5は図示左
右方向に隣接して配設され、焼き入れ・焼き戻しの際に
は左右方向(歯車3の歯幅方向)に往復移動する。
【0025】図10は図9のA矢視図であり、歯車3は
支持装置22に設けられた3つのローラ11により3点
支持される。このように支持された歯車3はモータ10
(図9参照)の出力軸に装着されたピニオン12により
矢印のように回転駆動される。歯車3の焼き入れ・焼き
戻しをする際には、図6の装置の場合と同様に上述した
またはの方法により焼き入れおよび焼き戻しを行
う。歯車3の符号Bで示す部分の焼き入れ・焼き戻しを
行っているときには、符号Bの部分より後に焼き入れ・
焼き戻し作業が行われる部分Cはすでにその前から温浴
20aに浸っており、温浴20aによって十分に温めら
れることになる。そのため、焼き入れ・焼き戻し時には
歯の温度が均一となっており、上述した実施の形態と同
様に均一な焼き入れ・焼き戻しを行うことができる。さ
らに、図10に示した装置では、歯車3を垂直に支持
し、歯車3の下端部分のみを温浴20aに浸すようにし
ているため、温浴槽20の寸法を小さくすることができ
るという利点を有している。
【0026】上述した実施の形態では沸騰水を冷却液と
して用いたが、その理由は内部残熱の温度を沸騰水の温
度(100℃)に安定させるためと、温度管理がし易い
ためであり、必ずしも沸騰水を用いる必要はなく、例え
ば油類を加熱したものを冷却液に用いても良い。すなわ
ち、焼き戻し時に必要とする内部残熱(焼き戻し温度に
影響する)の温度にほぼ一致するような温度の冷却液を
用いれば良い。
【0027】以上説明した実施の形態と特許請求の範囲
の要素との対応において、歯車3は熱処理対象物を、冷
却ジャケット5は冷却液噴出装置を、駆動部6は移動機
構を、冷却液供給部8は冷却温度調節装置を、温浴液供
給装置21は液体加熱装置をそれぞれ構成する。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1および請
求項2の発明では、焼き入れする際の冷却液の温度を、
焼き戻し開始時の内部残熱の温度にほぼ等しい温度とし
ているため、冷却液温度と熱処理対象物の内部温度との
差が常温の冷却水を用いる従来の場合と比べて小さくな
る。そのため、焼き戻し前の熱処理対象物の温度が安定
しやすくなって内部残熱のばらつきが小さくなり、焼き
戻し温度が均一となって硬度のばらつきが低減される。
請求項3〜5の発明によれば、高周波誘導子で加熱され
る熱処理対象物の加熱箇所は加熱された液体に浸されて
いるため、熱処理(例えば、焼き入れや焼き戻し)前後
の熱処理対象物の温度は温浴槽の液体の温度とほぼ等し
くなり、熱処理に際して従来のように大気温度の影響を
受けることがない。そのため、焼き戻し前の熱処理対象
物の温度が安定的して温度のばらつきが小さくなり、焼
き戻しを均一に行うことができる。また、焼き入れや焼
き戻しなどの熱処理を開始する際の温度が加熱された液
体とほぼ等しくなっているので、昇温に要する電力の低
減および昇温時間の短縮を図ることができる。特に、請
求項4の発明では液体の温度を沸騰温度としているの
で、容易に液体の温度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱処理装置の第1の実施の形態を
示す図であり、熱処理装置の全体構成を示す。
【図2】図1の駆動部6を詳細に示す斜視図である。
【図3】位置決め時の位置決め治具13と歯車3との関
係を示す図である。
【図4】焼き入れ動作を説明する図であり、(a)〜
(c)の順に焼き入れが行われる。
【図5】第1の実施の形態における熱サイクルを示す
図。
【図6】本発明による熱処理装置の第2の実施の形態を
示す図であり、熱処理装置の概略構成を示す。
【図7】第2の実施の形態における熱サイクルを示す
図。
【図8】冷却ジャケット5を2つ有する場合の誘導子4
と冷却ジャケット5との位置関係を示す図。
【図9】第2の実施の形態の変形例を示す図であり、熱
処理装置の概略構成図。
【図10】図9のA矢視図である。
【符号の説明】
1 装置本体 2 ステージ 3 歯車 4 高周波誘導子 5 冷却ジャケット 6 駆動部 7 高周波電源 8 冷却液供給部 9 制御部 20 温浴槽 20a 温浴 21 温浴液供給装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱処理対象物を加熱する高周波誘導子
    と、 前記高周波誘導子を前記熱処理対象物に沿って移動させ
    る移動機構と、 前記高周波誘導子で加熱された前記熱処理対象物を冷却
    する冷却液を噴出する冷却液噴出装置と、 前記高周波誘導子で前記熱処理対象物を焼き入れする際
    の前記冷却液の温度を、焼き戻し開始時の内部残熱の温
    度にほぼ等しい温度に調節する冷却温度調節装置とを備
    えることを特徴とする熱処理装置。
  2. 【請求項2】 高周波誘導子を熱処理対象物に沿って移
    動させつつ焼き入れおよび焼き戻しを行う熱処理方法に
    おいて、 焼き入れする際に、焼き戻し開始時の内部残熱の温度に
    ほぼ等しい温度を有する冷却液で前記熱処理対象物を急
    冷することを特徴とする熱処理方法。
  3. 【請求項3】 加熱された液体が蓄えられ、熱処理対象
    物の少なくとも一部が浸される温浴槽と、 前記温浴槽内で前記熱処理対象物を加熱する高周波誘導
    子とを備えることを特徴とする熱処理装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の熱処理装置において、 前記液体をその沸騰温度に加熱する液体加熱装置を設け
    たことを特徴とする熱処理装置。
  5. 【請求項5】 加熱された液体に熱処理対象物の少なく
    とも一部を浸し、前記熱処理対象物の前記液体に浸され
    た部分を高周波誘導子で加熱することを特徴とする熱処
    理方法。
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