JP2001098358A - カーボン薄膜の成膜装置、及びカーボン薄膜製造方法 - Google Patents

カーボン薄膜の成膜装置、及びカーボン薄膜製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】高硬度のカーボン薄膜を形成できる技術を提供
する。 【解決手段】水素原子数よりも炭素原子数の方が多い有
機化合物をカーボン薄膜の原料とし、該カーボン薄膜の
原料を溶媒に溶解させて液体原料5とし、原料容器6内
に納め、その蒸気を電極7で電離し、成膜対象物が配置
された真空槽内に放出させる。有機化合物が成膜対処物
の表面に付着すると、水素原子の混入が少ないカーボン
薄膜を形成することができる。溶媒にはアルコールを用
い、有機化合物には下記化学式(1)のコロネンを用いる
とよい。 【化4】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカーボン薄膜の技術
分野にかかり、特に高硬度のカーボン薄膜を形成する技
術に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、カーボン薄膜は四配位であり、
ダイヤモンド構造に類似した構造となり、硬度が高いこ
とから保護膜や潤滑膜等に使用されている。
【0003】図2の符号102は、カーボン薄膜を形成
するための従来技術の成膜装置である。この成膜装置1
02は、真空槽110と、プラズマ生成部114と、導
波管131と、マイクロ波発生器132とを有してい
る。
【0004】プラズマ生成部114は管状であり、その
一端は真空槽110に接続され、他端部分はセラミック
ス窓115を介して導波管131の一端に接続されてい
る。導波管131の他端はマイクロ波発生器132に接
続されており、マイクロ波発生器132が出力するマイ
クロ波は、セラミックス膜115を介して導波管131
からプラズマ生成部114内に伝達され、真空槽110
内に導かれるように構成されている。
【0005】真空槽110内部には、ホルダ117とヒ
ータ118とが配置されており、真空槽110壁面に
は、取り出し窓113が設けられている。
【0006】この成膜装置102を使用する場合、取り
出し窓113を開けて成膜対象の試料を真空槽110内
に搬入し、試料台117上に載置し、取り出し窓113
を閉じる。
【0007】真空槽110には、真空排気系121とガ
ス導入系122とが接続されており、真空排気系121
を動作させ、真空槽110内部を真空排気すると、真空
槽110とプラズマ生成部114内が真空状態になる。
プラズマ生成部114と導波管114とはセラミックス
窓115で仕切られているため、プラズマ生成部114
内が真空雰囲気になっても導波管131内は大気圧であ
る。
【0008】真空排気によって真空槽110内が10-6
Torr以下の圧力に到達した後、マイクロ波発振器132
を起動しマイクロ波をプラズマ生成部114内に導入す
る。
【0009】このとき、ガス導入系122を操作し、プ
ラズマ生成部122内にカーボン薄膜の原料ガスを導入
すると原料ガスが電離し、プラズマが生成される。
【0010】プラズマ生成部114の近傍には、ソレノ
イドコイル105が配置されており、プラズマを生成す
る際にソレノイドコイル105に通電しておき、プラズ
マ生成部114の内部と真空槽110の内部に磁界を形
成しておく。
【0011】原料ガスのプラズマは、その磁界によって
ホルダ117上の試料119表面に導かれ、試料119
上にカーボン薄膜が形成される。
【0012】上記のような成膜装置102では、原料ガ
スとしてメタン等の有機化合物ガスが用いられており、
そのため、カーボン薄膜形成中に膜中に水素原子が混入
してしまう。
【0013】そこで上記成膜装置102では、カーボン
薄膜の形成を、ヒータ118によって試料119を加熱
しながら行っており、カーボン薄膜を加熱することで膜
中に混入した水素原子を真空槽110内に放出させ、真
空排気系121によって排出するようにしている。
【0014】しかしながら上記従来技術の成膜装置10
2では、カーボン薄膜中に取り込まれる水素原子の量が
多いため、加熱によって放出させても、水素原子がカー
ボン薄膜中に残存してしまい、その結果、カーボン薄膜
の硬度が低下してしまうという問題があった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の不都合を解決するために創作されたものであり、そ
の目的は、高硬度のカーボン薄膜を形成できる技術を提
供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の発明は、成膜装置であって、液体を
収容する原料容器と、前記原料容器から供給される前記
液体原料の蒸気の通路となるプラズマ生成部と、前記プ
ラズマ生成部の先端部に設けられ、真空排気可能な真空
槽内に配置されたノズル部と、前記プラズマ生成部内
の、前記ノズル部付近に配置された電極とを有すること
を特徴とする。請求項2記載の発明は、請求項1記載の
成膜装置であって、前記電極は針状に成形されたことを
特徴とする。請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求
項3のいずれか1項記載の成膜装置であって、前記原料
容器内には、溶媒と、該溶媒中に溶解された有機化合物
とから成る液体原料が配置され、前記有機化合物は、炭
素原子数と、前記炭素原子の数よりも少ない数の水素原
子とで構成されたことを特徴とする成膜装置。請求項4
記載の発明は、カーボン薄膜製造方法であって、水素原
子数よりも炭素原子数の方が多い有機化合物をカーボン
薄膜の原料とし、該カーボン薄膜の原料を溶媒に溶解さ
せて液体原料とし、該液体原料の蒸気を生成し、該蒸気
を電離した後、成膜対象物が配置された真空槽内に放出
し、前記カーボン薄膜の原料を前記成膜対処物の表面に
付着させ、カーボン薄膜を形成することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載のカーボン薄膜製
造方法であって、前記溶媒に揮発性のアルコールを用
い、前記有機化合物として下記化学式(1)に示す構造の
2412を用いることを特徴とする。
【0017】
【化2】
【0018】一般に、カーボン薄膜の原料には、炭素原
子と水素原子で構成される気体状の原料ガスが用いられ
ているが、従来の原料では、炭素原子の数よりも水素原
子の数の方が多く、カーボン膜中に水素原子が混入する
原因となっていた。
【0019】有機化合物は、水素原子数に比べて炭素原
子数が多くなると、気体ではなく液体又は固体になる。
そこで本発明では、カーボン薄膜を形成するために、水
素原子と炭素原子で構成された有機化合物を溶媒に溶解
させ、その蒸気を真空雰囲気中で電離して成膜対象物表
面に到達させ、カーボン薄膜を形成している。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を図面を用いて説
明する。図1を参照し、符号2は本発明の一例の成膜装
置であり、真空槽10と、プラズマ生成部14と、原料
容器20とを有している。
【0021】プラズマ生成部14は管状になっており、
その一端は真空槽10内部に気密に導入され、他端はバ
ルブ15を介して原料容器20に接続されている。真空
槽10壁面には取り出し窓13が設けられており、真空
槽10内部には、ホルダ17とヒータ18とが配置され
ている。
【0022】この成膜装置2を用いてカーボン薄膜を形
成する場合、取り出し窓13を開け、成膜対象物を真空
槽10内に搬入し、ホルダ17上に載置する。符号19
は、その成膜対象物を示している。
【0023】真空槽10壁面には、真空排気系21が接
続されており、取り出し窓13を閉じ、真空排気系21
を起動し、真空槽10内部を真空排気する。このとき、
真空槽10内部を真空排気しながらヒータ18に通電
し、成膜対象物19を予め所定温度に昇温させておく。
【0024】原料容器4内には、カーボン薄膜の液体原
料5が充填されている。この液体原料5は、アルコール
等の揮発性の溶媒と、該溶媒中に溶解された有機化合物
(カーボン薄膜の原料)とで構成されている。ここでは有
機化合物として、下記化学式(1)で示されるコロネン(C
oronene:Hexabenzobenzene C2412 , mp 438〜440
℃ , bp 525℃)がカーボン薄膜の原料である有機化合物
として用いられている。溶媒には、メチルアルコールが
用いられている。
【0025】
【化3】
【0026】原料容器4にはヒータ9が配置されてお
り、予めヒータ9に通電し、原料容器4を加熱し、液体
原料5を昇温させておく。真空槽10内が10-6Torr以
下の圧力まで到達した後、バルブ15を開けると、液体
原料5の蒸気をプラズマ生成部14内に導入する。
【0027】プラズマ生成部14内には針状の電極7が
配置されている。この電極7は真空槽10やプラズマ生
成部14とは電気的に絶縁されており、真空槽10外に
配置された直流電圧源8に接続されている。
【0028】真空槽10やプラズマ生成部14は接地電
位に置かれており、直流電圧源8によって、電極7に
は、接地電位に対して正電圧を印加できるように構成さ
れている。
【0029】この電極7に予め高電圧が印加し、電極7
周辺に強電界を形成しておく。プラズマ生成部4内に導
入された原料蒸気が電極7に到達すると、その強電界に
よって原料蒸気中に含まれる溶媒と、該溶媒中に溶解さ
れた有機物質が電離される。コロネンはC2412 +の正
イオンとなる。
【0030】プラズマ生成部14内部では圧力差が生じ
ており、プラズマ生成部4内で電離した溶媒とコロネン
は、プラズマ生成部14の真空槽10側の先端部に向け
て移動する。
【0031】プラズマ生成部14の先端部分には、ノズ
ル部6が設けられ、真空槽10内部に配置されている。
該ノズル部6は、くびれと開口部分とから成っている。
開口部分はラッパ状に広げられており、ホルダ17(成
膜対象物19)に向けられている。
【0032】溶媒及び電離されたコロネンがノズル部6
から真空槽10内に放出されると、溶媒は揮発し、真空
槽10内を拡散するため、真空排気系21によって真空
槽10外に排出される。
【0033】他方、コロネン等の有機化合物は分子量が
大きいため、そのイオンがノズル部6から真空槽内に放
出されると成膜対象物19に向けて直進し、成膜対象物
19表面に付着する。成膜対象物19は加熱されてお
り、付着したコロネンによってカーボン薄膜が形成され
る。
【0034】特にコロネンの場合、1分子中には炭素原
子が24個含まれるのに対し、水素原子は12個しか含
まれておらず、水素原子に比べて炭素原子が非常に多く
なっている。従って、コロネンによってカーボン薄膜を
形成した場合、膜中に混入する水素原子は非常に少なく
なる。
【0035】更に、成膜対象物19はヒータ18によっ
て加熱されているため、コロネンによってカーボン薄膜
が形成される際に水素原子は薄膜中から除去される。
【0036】なお、以上は有機化合物としてコロネンを
用いたが、本発明はそれに限定されるものではない。炭
素原子と水素原子から成る有機化合物であって、炭素原
子数の方が水素原子数よりも多いものを用いることがで
きる。
【0037】また、溶媒はメチルアルコールに限定され
るものではなく、揮発性があり、カーボン薄膜の原料と
なる有機化合物を溶解させることができればよい。ま
た、溶媒は、不純物を発生させないために、炭素原子と
水素原子で構成されるものが望ましい。
【0038】
【発明の効果】水素原子の含有量が少ないカーボン薄膜
を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボン薄膜の成膜装置の一例
【図2】従来技術のカーボン薄膜の成膜装置
【符号の説明】
2……成膜装置 4……原料容器 5……液体原料
7……電極 10……真空槽
フロントページの続き (72)発明者 山本 佳宏 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 日本真空 技術株式会社内 (72)発明者 木内 正人 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内 Fターム(参考) 4K029 BA34 CA01 DB06 DB18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体を収容する原料容器と、 前記原料容器から供給される前記液体原料の蒸気の通路
    となる導入管と、 前記導入管の先端部に設けられ、真空排気可能な真空槽
    内に配置されたノズル部と、 前記導入管内の、前記ノズル部付近に配置された電極と
    を有することを特徴とする成膜装置。
  2. 【請求項2】前記電極は針状に成形されたことを特徴と
    する請求項1記載の成膜装置。
  3. 【請求項3】前記原料容器内には、溶媒と、該溶媒中に
    溶解された有機化合物とから成る液体原料が配置された
    成膜装置であって、 前記有機化合物は、炭素原子数と、前記炭素原子の数よ
    りも少ない数の水素原子とで構成されたことを特徴とす
    る請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の成膜装
    置。
  4. 【請求項4】水素原子数よりも炭素原子数の方が多い有
    機化合物をカーボン薄膜の原料とし、 該カーボン薄膜の原料を溶媒に溶解させて液体原料と
    し、 該液体原料の蒸気を生成し、 該蒸気を電離した後、成膜対象物が配置された真空槽内
    に放出し、 前記カーボン薄膜の原料を前記成膜対処物の表面に付着
    させ、カーボン薄膜を形成することを特徴とするカーボ
    ン薄膜製造方法。
  5. 【請求項5】前記溶媒に揮発性のアルコールを用い、前
    記有機化合物として下記化学式(1)に示す構造のC24
    12を用いることを特徴とする請求項4記載のカーボン薄
    膜製造方法。 【化1】
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