JP2001090751A - 一方向クラッチおよびこれを用いたプーリユニット - Google Patents

一方向クラッチおよびこれを用いたプーリユニット

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JP2001090751A JP26931899A JP26931899A JP2001090751A JP 2001090751 A JP2001090751 A JP 2001090751A JP 26931899 A JP26931899 A JP 26931899A JP 26931899 A JP26931899 A JP 26931899A JP 2001090751 A JP2001090751 A JP 2001090751A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】一方向クラッチの内輪または外輪の一方の部材
のカム面における偏摩耗を防止して長寿命化を図る。 【解決手段】内輪10に、外輪11との間の空間を周方
向一方に向けて漸次広くしてくさび状空間を形成するカ
ム面10aが設けられ、このカム面と外輪の内周面との
間にころ13を介在させ、くさび状空間内に対してのこ
ろ13の周方向位置により内輪と外輪を、互いに同期回
転させるロック状態と、相対回転させるフリー状態とに
切り換える一方向クラッチであって、カム面に潤滑油保
持部30が形成されている構造。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一方向クラッチお
よびこれを用いたプーリユニットに関する。このプーリ
ユニットは、例えば自動車などのエンジンのクランクシ
ャフトからベルトを介して駆動される補機に装備するこ
とができる。補機としては、例えば自動車のエアコンデ
ィショナ用コンプレッサ、ウォーターポンプ、オルター
ネータ、冷却ファンなどが挙げられる。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンに装着される各種の補機
は、エンジンのクランクシャフトによりベルトを介して
駆動されるようになっている。ここで、補機のうち、特
にオルタネータの場合、エンジンのクランクシャフトと
同期回転するように連結していると、クランクシャフト
の回転数の低下に伴い、オルタネータの発電能力が低下
する。
【0003】そこで、オルタネータに一方向クラッチを
内蔵し、クランクシャフトの回転数が低下するときに
は、オルタネータのロータの回転をその慣性力により継
続させることで発電効率を高めるように構成したプーリ
ユニットが本願出願人により提案されている。
【0004】この場合のプーリユニットは、オルタネー
タのプーリとロータとの間に介装された一方向クラッチ
を少なくとも含み、ロータとプーリとの回転数差に応じ
て、一方向クラッチをロック状態(動力伝達状態:プー
リからロータへ動力が伝達される状態)とフリー状態
(動力伝達遮断状態:プーリからロータへの動力伝達が
遮断される状態)とに切り替え、プーリとロータとの間
で動力の伝達と遮断とを行うように構成されている。
【0005】このようなオルタネータの動力の伝達と遮
断とに用いられるプーリユニット内の一方向クラッチに
は、内輪をロータに固定し、外輪をプーリに固定し、こ
れら内輪と外輪とをロータとプーリ間に径方向内外に同
心状に対向配設する。そして、内輪の外周面と外輪の内
周面との対向空間を周方向一方に向けて漸次広くしてく
さび状空間を形成するために、その内輪の外周面の周方
向に沿って、複数のカム面を設け、各カム面それぞれと
外輪の内周面との間に複数のころを個別に介在させた内
輪カム方式のものがある。
【0006】このような方式の一方向クラッチでは、ロ
ータとプーリとの回転数差に応じた各ころそれぞれの各
くさび状空間内での特定の周方向位置により、内輪と外
輪とをころを介して同期回転させて一方向クラッチを前
記ロック状態に切り換え、また、内輪と外輪とを相対回
転させて一方向クラッチを前記フリー状態に切り換える
ようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した内輪カム方式
の一方向クラッチでは、外輪が空転しているフリー状態
時では外輪の内周面ところとの接触部位、および、内輪
のカム面ところとの接触部位で滑りが発生している。
【0008】ところで、前者の場合の接触部位は外輪の
内周面全体にわたりほぼ均等に分散されるので、各接触
部位それぞれでの摩耗はあってもそれぞれが偏摩耗しに
くい。 しかし、後者の場合の接触部位は、内輪の外周
面の特定部位に集中するためにその接触部位での摩耗の
進行が特に進んで偏摩耗し、その寿命が著しく短縮され
てしまう結果となる。
【0009】また、外輪の内周面にカム面を有するよう
なプーリユニット構造でも、外輪のカム面が上述と同様
の理由で偏摩耗し、その寿命が著しく短縮されてしまう
結果となる。
【0010】このようなカム面での偏摩耗が進行し易い
一方向クラッチをプーリユニットに用いた場合は、前記
ロック状態とフリー状態との切り換え動作の応答性が早
期に低下する他、甚だしい場合には完全なロック状態に
ならなくなることも起こりうる。また、オルタネータの
プーリやロータの回転動作に伴い振動が継続して発生す
るような状況では、ころがスキューしやすくなるなど、
ロック状態とフリー状態との切り換え動作が不安定にな
りやすくなる。
【0011】なお、このような不具合は、オルタネータ
のプーリとロータとの間に一方向クラッチを介装したプ
ーリユニット構造に限らず、要するに、外側環体と内側
環体とを有し、前記両環体間に一方向クラッチを介装
し、この一方向クラッチで前記両環体を上述のようにロ
ック状態とフリー状態とに切り換えを行うプーリユニッ
ト構造においても同様である。
【0012】したがって、本発明は、一方向クラッチに
おいて、内輪または外輪の一方の部材のカム面における
偏摩耗を防止して長寿命化を図り、それをプーリユニッ
トに用いた場合に、その動作の安定化を図れるようにす
ることを共通の解決課題としている。
【0013】本発明はまた、プーリユニットにおいて、
上記切り換え動作の安定化した一方向クラッチを用い
て、ロック状態とフリー状態との切り換え動作の安定化
を図れるようにすることを解決課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の一方向クラッチ
は、径方向内外に同心状に配設された内輪と外輪とを同
期回転させるロック状態と、相対回転させるフリー状態
とに切り換える一方向クラッチであって、前記内外輪の
径方向で対向する面の一方に、対向空間の円周数箇所に
周方向一方へ向けて漸次広くしてくさび状空間を形成す
るカム面が設けられており、このカム面もしくはこのカ
ム面に対向する対向面に潤滑油保持部が設けられている
ことを特徴としている。
【0015】好ましくは、前記潤滑油保持部が、円形、
楕円形、多角形、線条等から選択された少なくともいず
れか1つの形状を有した複数の溝部で構成されている。
【0016】好ましくは、前記潤滑油保持部が、軸方向
長が前記くさび状空間に介装されるくさび部材の軸方向
長以下でかつ軸方向横断面形状が軸方向両側から軸方向
中央にかけて径方向に深くなり、軸方向中央で2〜10
μmの範囲の深さを有する陥没部で構成されている。
【0017】好ましくは、前記潤滑油保持部が、少なく
とも2つの線状溝で構成され、前記両線状溝は、ロック
方向からフリー方向に向かうに従い軸方向離隔距離が短
くなり、かつ、前記フリー方向基点で合流する少なくと
も2つの線状溝で構成されている。
【0018】好ましくは、前記潤滑油保持部が、軸方向
断面の大きさが、ロック方向からフリー方向に向かうに
従い減少する溝構造を有している。
【0019】本発明のプーリユニットは、同心状に配設
される内外2つの環体と、前記両環体の間の環状空間に
介装される前記いずれかに記載の一方向クラッチと、前
記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられる
転がり軸受とを具備したことを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の詳細を図面に示す実施形
態に基づいて説明する。
【0021】図1ないし図6は本発明の一実施形態にか
かり、図1は、プーリユニットの縦断面図、図2は、図
1の(2)−(2)線断面の矢視図、図3は、図1の
(3)−(3)線断面の矢視図、図4は、一方向クラッ
チの一部を示す平面展開図、図5は、図1の一方向クラ
ッチの内輪の斜視図、図6は、図5で示される内輪のカ
ム面上に形成される潤滑油保持部を示すもので(a)は
その平面図、(b)はその側面断面図である。
【0022】このプーリユニットは、例えば自動車の補
機の1つであるオルタネータに適用して説明するが、こ
の補機に限定されるものではない。
【0023】また、このプーリユニットは、要するに、
外側環体と内側環体とを有し、前記両環体間に一方向ク
ラッチを介装し、この一方向クラッチで前記両環体を上
述のようにロック状態とフリー状態とに切り換えを行う
ものに適用される。
【0024】ここで、オルタネータの場合、前記外側環
体はプーリに、前記内側環体はロータに相当する。
【0025】図例のプーリユニットAは、同心状に配設
される外側環体としてのプーリ1と、スリーブ2と、プ
ーリ1とスリーブ2との間の環状空間に介装される一方
向クラッチ3と、前記環状空間において一方向クラッチ
3の軸方向両側に配設される2つの転がり軸受4,4と
を備えている。
【0026】プーリ1の外周には、波状のベルト巻き掛
け用の溝が形成されている。プーリ1は、例えば自動車
エンジンのクランクシャフトによりいわゆるVリブドベ
ルトと呼ばれるベルトBを介して回転駆動される。
【0027】スリーブ2は、その内部軸方向穴に一方向
から嵌入される図示しないオルタネータのロータに固定
される。
【0028】なお、本明細書のプーリユニットは、プー
リのような外側環体とロータのような内側環体との間に
一方向クラッチが介装されるプーリユニットであるが、
この場合、内側環体と一方向クラッチとの間に前記スリ
ーブ2が介在されるが、この場合も、前記一方向クラッ
チの介装に含まれる。また、内側環体には、ロータのみ
ならず、スリーブも含めて称して構わない。また、構造
としてはこのスリーブ2が省略されても構わない。
【0029】一方向クラッチ3は、内輪10と、外輪1
1と、保持器12と、複数のころ13と、複数のコイル
バネ14とを備える。
【0030】内輪10は、外周面の円周数箇所にキー状
のカム面10aを有し、かつ、スリーブ2を介して不図
示のロータに固定されている。
【0031】外輪11は、両端に転がり軸受4,4が内
嵌されるように軸方向長尺に形成され、プーリ1に固定
されている。
【0032】内輪10と外輪11は、スリーブ2とプー
リ1との間で径方向内外に同心状に対向して配設されて
いる。
【0033】保持器12は、内輪10の各カム面10a
それぞれに対応して径方向内外に貫通形成される複数の
ポケット12aを有する。
【0034】複数のころ13は、くさび部材として機能
し、保持器12の各ポケット12aそれぞれに1つずつ
収納されている。
【0035】複数のコイルバネ14は、断面ほぼ長方形
を有し、保持器12の各ポケット12aそれぞれに1つ
ずつ収納されかつ複数のころ13それぞれを各カム面1
0aそれぞれと外輪11内周面との間のくさび状空間の
狭い側(ロック側)へ押圧する弾性部材として機能す
る。
【0036】内輪10のカム面10aは、内輪10の外
周面と外輪11の内周面11aとの各対向空間を周方向
複数箇所それぞれで周方向一方(フリー方向)に向けて
漸次広くして複数のくさび状空間を形成するために、内
輪10の外周面の周方向に沿って形成されている。
【0037】これによって、実施の形態の一方向クラッ
チ3は、内輪10の複数のカム面10aそれぞれと外輪
11の内周面11aとの間に複数のころ13を個別に介
在させた内輪カム方式のものとなっている。
【0038】このような方式の一方向クラッチ3におい
ては、スリーブ2を介した不図示のロータとプーリ1と
の回転数差に応じて、複数のころ13それぞれの各くさ
び状空間内での特定の周方向位置により、内輪10と外
輪11とを複数のころ13それぞれを介して同期回転さ
せて一方向クラッチ3をロック状態に切り換え、また、
相対回転させて一方向クラッチ3をフリー状態に切り換
えるようにしている。
【0039】さらに、一方向クラッチ3において、保持
器12のポケット12aの内壁面には、根元がくびれた
形状の突起12bが一体形成されており、この突起12
bの根元のくびれ部分にコイルバネ14の軸方向一端が
係止嵌合され、突起12bの外周でコイルバネ14の内
周を受けることにより、コイルバネ14の圧縮時のゆが
みなどが防止される。
【0040】なお、突起12bの先端外径面には、コイ
ルバネ14の装着を容易とするためのテーパ面が設けら
れている。
【0041】2つの転がり軸受4,4は、いずれも、内
輪16、外輪17、複数の玉18、保持器19を有する
一般的な深溝型玉軸受からなり、内・外輪16,17間
の軸方向外端側にのみ密封部材としてのオイルシール2
0が装着されている。つまり、2つの転がり軸受4,4
で一方向クラッチ3を密封するようになっていて、2つ
の転がり軸受4,4と一方向クラッチ3とを共通の潤滑
油で潤滑させるようにしている。
【0042】また、2つの転がり軸受4,4の両端に密
封部材としてのオイルシールを装着して、2つの転がり
軸受4,4と一方向クラッチ3とを別々の潤滑油で潤滑
させてもよい。
【0043】一方向クラッチ3の保持器12は周方向な
らびに軸方向に不動とされている。具体的には、一方向
クラッチ3の内輪10の軸方向一端面には、軸端へ向け
て開放するとともに径方向内外に開放するスリット状の
凹部10bが、また、保持器12の軸方向一端内周側に
は、凹部10bに軸方向から圧入嵌合される凸部12c
が、それぞれ設けられており、これら凹部10bと凸部
12cとの圧入嵌合により保持器12の周方向への動き
を封じている。また、凸部12cは、凹部10bの奥壁
面と、凹部10bの開口側に配設される片方の転がり軸
受4の内輪16の端面とで軸方向から挟まれており、こ
れにより保持器12の軸方向への動きを封じている。
【0044】ここで、本実施の形態の一方向クラッチ3
の特徴構成の説明に先立って、プーリユニットAの動作
を説明する。
【0045】プーリ1の回転速度がスリーブ2を介する
ロータのそれよりも相対的に速くなると、一方向クラッ
チ3のころ13がくさび状空間の狭い側(ロック方向)
へ転動させられてロック状態となるので、プーリ1とロ
ータとが一体化して同期回転する。
【0046】プーリ1の回転速度がロータよりも相対的
に遅くなると、一方向クラッチ3のころ13がくさび状
空間の広い側(フリー方向)へ転動させられてフリー状
態となるので、プーリ1からロータへ回転動力の伝達が
遮断されることになってロータが回転慣性力のみで回転
を継続するようになる。
【0047】次に、本実施の形態の一方向クラッチ3の
特徴構成について説明する。
【0048】すなわち、実施の形態の一方向クラッチ3
においては、内輪10のカム面10aに、そのカム面1
0a上の潤滑油を保持するための潤滑油保持部30が形
成されている。
【0049】この潤滑油保持部30は、実施の形態で
は、平面視形状が円形、楕円形あるいは多角形等の形状
を有する多数の溝部31が1ないし複数の組み合わせで
適宜または任意の配置形態の集合で構成されている。こ
の場合、円形、楕円形が、潤滑油を保持するうえでは好
ましい。
【0050】なお、図5では多数の溝部31のすべてを
図示することは図面の都合で省略され、その一部のみが
図示されている。
【0051】これら溝部31は、バレル処理、ショット
ピーニング処理、機械加工等で形成されている。
【0052】溝部31の周方向幅Wは、円形の場合は直
径0.5mm以下、楕円形の場合は長軸側が直径0.5
mm以下が好ましい。また、溝部31の深さDは、10
0μm以内であることが好ましい。
【0053】内輪10の1つのカム面10aの面積を1
00%とした場合、このカム面10a上に占める多数の
溝部31の総面積は、10〜50%であることが好まし
い。
【0054】また、この溝部31で保持される潤滑油
は、40℃での基油粘度が30〜100mm2/秒の範
囲のものであることが好ましい。また、潤滑油は、オイ
ルのみならずグリースも含む。
【0055】以上のように実施の形態の一方向クラッチ
3においては、複数のころ13それぞれが内輪10の各
カム面10aそれぞれとフリー状態となっているとき
は、各溝部31それぞれに保持されている潤滑油で潤滑
されることになる。
【0056】その結果、フリー状態で、内輪10のカム
面10aの特定部位にころ13の接触が集中しても、溝
部31に保持されている潤滑油でその部位を潤滑できる
結果、その特定の接触部位での摩耗の進行が回避され、
その接触部位の偏摩耗が防止され、一方向クラッチ3の
寿命を著しく延ばすことができるという好ましい結果が
得られる。
【0057】なお、本発明は、上述の実施の形態に限定
されるものではなく種々の変形ないし応用が可能であ
る。
【0058】(1)潤滑油保持部30を構成する溝部3
1は、図7(内輪10の外観斜視図)で示すように、内
輪10のカム面10aの周方向に対して斜め線条(ハッ
チング)の多数の溝部31であっても構わないし、図8
(内輪10の外観斜視図)で示すようにそのハッチング
が交差した多数の溝部31であっても構わない。
【0059】この場合、溝部31は幅1.0mm以下、
深さが100μm以内が好ましい。
【0060】(2)潤滑油保持部30は、図9(内輪1
0の外観斜視図)および図10(図9の内輪10の断面
図)で示すような陥没部32で構成しても構わない。
【0061】この陥没部32は、径方向から見た形状
が、軸方向に長軸、周方向に短軸となる楕円形をなし、
軸方向長がくさび状空間に介装されるころの軸方向長以
下でかつ軸方向の横断面形状が軸方向両側から軸方向中
央にかけて徐々に径方向に深くなる円弧形状をなし、軸
方向中央で2〜10μmの範囲の深さを有し、その内部
に潤滑油が保持されるようになっている。
【0062】ところで、一方向クラッチ3の軸方向両側
には軸受4,4が圧入されて配設されている。そのた
め、ころ13の転動により、一方向クラッチ3の潤滑油
がころ13の軸方向端面に移動して該一方向クラッチ3
と両側の軸受4,4との間の空間に移動して内輪10の
カム面10aが潤滑油不足を来す可能性がある。
【0063】そこで、カム面10aに前記範囲の深さを
備えた陥没部32を形成した場合、ころ13の転動で軸
方向端面に移動しようとする潤滑油は、陥没部32内に
流入保持され、その結果、前記カム面10aでの潤滑油
不足が解消される。
【0064】なお、前記範囲の深さを備えた陥没部32
の場合、断面形状が適度な凹曲面を有しているので、こ
ろ13の姿勢が安定化しスキュー現象の発生が低減さ
れ、ころ13による内輪10と外輪11とのロック状態
への切り換え性が向上する。
【0065】なお、この場合の陥没部32の深さが2μ
m以下では、前記作用効果が期待されなくなるので、陥
没部32の深さは2μm以上であることが好ましい。ま
た10μm以上ではころ13と内輪10との接触部位に
おける面圧が高くなりすぎ、陥没部32内の潤滑油で潤
滑されても内輪10の摩耗が進行して短寿命化になるの
で、陥没部32の深さは10μm以下であることが好ま
しい。
【0066】(3)潤滑油保持部30を構成する溝部3
1については、図11ないし図15を参照して説明する
構造であっても構わない。
【0067】ここで、図11は一方向クラッチ3の要部
の側面断面図、図12は図11の一方向クラッチ3の内
輪10の斜視図、図13は図11の内輪10の潤滑油保
持部30を構成する溝部31の正面図、図14はフリー
状態にある一方向クラッチ3の要部の側面断面図、図1
5はロック状態にある一方向クラッチ3の要部の側面断
面図である。
【0068】これらの図を参照して、潤滑油保持部30
を構成する各溝部31は、平面視形状が例えばV形状で
あり、それぞれ毎に、所定の深さ好ましくは、1〜10
μmの2つ一対の線状溝31a,31aで構成されてい
る。一対の線状溝31a,31aは、ロック方向からフ
リー方向に向かうに従い互いの軸方向離隔距離dが短く
なり、かつ、フリー方向基点31bで合流されるように
なっている。この場合の線状溝31a,31aの前記基
点31bから軸方向への開き角度θは、好ましくは、3
0〜60度である。
【0069】このような構造の場合、ころ13が、図1
4で示すように、プーリ1とロータとの回転数差によ
り、一方向クラッチ3をフリー状態に切り換える周方向
位置に移動するとき、両線状溝31a,31a内に保持
されている潤滑油は、合流基点31bで合流される結
果、そこでの潤滑油の厚みが増す。このため、この合流
基点31bがころ13と内輪10との接触部位とされて
いることで、この接触部位でのころ13の滑りはきわめ
て良好となり、フリー状態での内輪10の接触部位にお
ける摩耗が無くなる。
【0070】また、ころ13が、図15で示すように、
プーリ1とロータとの回転数差により、一方向クラッチ
3をロック状態に切り換える周方向位置に移動すると
き、その位置でのころ13と内輪10のカム面10aと
の接触部位での潤滑油の厚さは薄くなり、境界潤滑とな
る結果、内輪10と外輪11とはころ13を介して良好
なロックつまり同期回転状態となる。
【0071】(4)潤滑油保持部30は、その軸方向断
面の大きさが、ロック方向からフリー方向に向かうに従
い減少する溝構造であっても構わない。具体的には、例
えば図16で示すようなロック方向に底辺、フリー方向
に頂点が来る三角形の溝部31形状であっても構わな
い。この場合も、ころ13が一方向クラッチ3をフリー
状態に切り換える周方向位置つまり三角形の頂点近傍に
移動するときは、その三角形の頂点での潤滑油量が増
し、また、ロック状態に切り換える周方向位置つまり三
角形の底辺近傍に移動するときは、その底辺での潤滑油
量が減るから、前記(3)と同様にフリー状態でもロッ
ク状態でも内輪と外輪はころを介して良好なフリー状態
とロック状態とを得られる。
【0072】(5)上述の実施の形態では、内輪10の
カム面10aは平坦形状であったが、図17で示すよう
に、内輪10のカム面10aを径方向の曲面形状とし、
この曲面形状を有しているカム面10aに潤滑油保持部
30である円形の溝部31を形成しても構わない。この
ような溝部31の場合、径方向から見た場合は周方向に
短軸、軸方向に長軸の楕円形となり、潤滑油がより良好
に保持可能となる。
【0073】(6)上述の実施の形態では、潤滑油保持
部30は、内輪10のカム面10aに設けられたが、図
18で示すように、外輪11の内周面をカム面とし、こ
のカム面に潤滑油保持部30を構成する溝部31を形成
しても構わない。
【0074】
【発明の効果】本発明の一方向クラッチによれば、その
カム面もしくはこのカム面に対向する他方の対向面に潤
滑油保持部が形成されているので、この一方向クラッチ
によれば、例えば、内輪カム方式とした場合、フリー状
態で内輪のカム面と、くさび部材であるころとの接触部
位が特定部位に集中しても、潤滑油保持部で保持されて
いる潤滑油で長期にわたり潤滑される結果、カム面にお
ける偏摩耗の進行が大きく軽減され、その長寿命化を達
成することができる。
【0075】この場合、潤滑油保持部が、軸方向長が前
記くさび状空間に介装されるくさび部材の軸方向長以下
でかつ軸方向横断面形状が軸方向両側から軸方向中央に
かけて径方向に深くなり、軸方向中央で2〜10μmの
範囲の深さを有する陥没部で構成されていると、くさび
部材であるころの転動で軸方向端面に移動しようとする
潤滑油は、その陥没部内に流入保持される結果、カム面
での潤滑油不足が解消され、その偏摩耗の進行を一層軽
減することができて好ましい。
【0076】また、この陥没部内の適度な凹曲面形状に
よりころの姿勢が安定化しスキュー現象の発生が低減さ
れ、ころによる内輪と外輪とのロック状態への切り換え
性が向上する。
【0077】さらに、この場合、陥没部32の深さが2
μm以上に規定されているので、前記作用効果が確保さ
れ、また、10μm以下に規定されているのでころと内
輪との接触部位における面圧が高くなりすぎることがな
くなり、内輪の摩耗進行を抑制し長寿命化を達成でき
る。
【0078】なお、前記潤滑油保持部が、少なくとも2
つの線状溝で構成され、前記両線状溝は、ロック方向か
らフリー方向に向かうに従い軸方向離隔距離が短くな
り、かつ、前記フリー方向基点で合流する少なくとも2
つの線状溝で構成されていると、フリー状態における偏
摩耗の進行の抑制、およびロック状態における確実なロ
ック動作を得られる。
【0079】前記潤滑油保持部が、軸方向断面の大きさ
が、ロック方向からフリー方向に向かうに従い減少する
溝構造を有している場合も、フリー状態における偏摩耗
の進行の抑制、およびロック状態における確実なロック
動作を得られる。
【0080】本発明のプーリユニットによれば、外側環
体と内側環体との間の環状空間にロック状態とフリー状
態との切り換え動作が安定した前記一方向クラッチが介
装されているので、プーリからロータへの動力の伝達と
遮断とを良好に行わせられるユニットを得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のプーリユニットの縦断面
【図2】図1の(2)−(2)線断面の矢視図
【図3】図1の(3)−(3)線断面の矢視図
【図4】一方向クラッチの一部を示す平面展開図
【図5】図1の内輪の斜視図
【図6】図5の内輪のカム面の潤滑油保持部を構成する
溝部を示し、(a)はその平面図、(b)はその断面図
【図7】図1の内輪の変形を示す斜視図
【図8】図1の内輪の他の変形を示す斜視図
【図9】図1の内輪のさらに他の変形を示す斜視図
【図10】図9の内輪の上半分の断面図
【図11】本発明の他の実施形態の一方向クラッチの要
部断面図
【図12】図11の一方向クラッチの内輪の斜視図
【図13】図12の内輪のカム面の潤滑油保持部を構成
する溝部の平面図
【図14】図11の一方向クラッチの動作説明に供する
ものでフリー状態における断面図
【図15】図11の一方向クラッチの動作説明に供する
ものでロック状態における断面図
【図16】潤滑油保持部を構成する溝部の変形例を示す
正面図
【図17】本発明のさらに他の実施の形態の一方向クラ
ッチの要部断面図
【図18】本発明のさらに他の実施の形態の一方向クラ
ッチの要部断面図
【符号の説明】
A プーリユニット B ベルト 1 プーリ 2 ロータ 3 一方向クラッチ 4 転がり軸受 10 一方向クラッチの内輪 10a 内輪のカム面 11 一方向クラッチの外輪 12 一方向クラッチの保持器 13 ころ 14 コイルバネ 30 潤滑油保持部 31 潤滑油保持部を構成する溝部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 敬祐 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 (72)発明者 田積 一 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 Fターム(参考) 3J031 AC01 BA19 CA03

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】径方向内外に同心状に配設された内輪と外
    輪とを同期回転させるロック状態と、相対回転させるフ
    リー状態とに切り換える一方向クラッチであって、 前記内外輪の径方向で対向する面の一方に、対向空間の
    円周数箇所に周方向一方へ向けて漸次広くしてくさび状
    空間を形成するカム面が設けられており、 このカム面もしくはこのカム面に対向する対向面に潤滑
    油保持部が設けられている、ことを特徴とする一方向ク
    ラッチ。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の一方向クラッチにおい
    て、 前記潤滑油保持部が、円形、楕円形、多角形、線条等か
    ら選択された少なくともいずれか1つの形状を有した複
    数の溝部で構成されている、ことを特徴とする一方向ク
    ラッチ。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の一方向クラッチ
    において、 前記潤滑油保持部が、軸方向長が前記くさび状空間に介
    装されるくさび部材の軸方向長以下でかつ軸方向横断面
    形状が軸方向両側から軸方向中央にかけて径方向に深く
    なり、軸方向中央で2〜10μmの範囲の深さを有する
    陥没部で構成されている、ことを特徴とする一方向クラ
    ッチ。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3いずれかに記載の一方向
    クラッチにおいて、 前記潤滑油保持部が、少なくとも2つの線状溝で構成さ
    れ、 前記両線状溝は、ロック方向からフリー方向に向かうに
    従い軸方向離隔距離が短くなり、かつ、前記フリー方向
    基点で合流する少なくとも2つの線状溝で構成されてい
    る、ことを特徴とする一方向クラッチ。
  5. 【請求項5】請求項1ないし3のいずれかに記載の一方
    向クラッチにおいて、 前記潤滑油保持部が、軸方向断面の大きさが、ロック方
    向からフリー方向に向かうに従い減少する溝構造を有し
    ている、ことを特徴とする一方向クラッチ。
  6. 【請求項6】同心状に配設される内外2つの環体と、 前記両環体の間の環状空間に介装される請求項1ないし
    5のいずれかに記載の一方向クラッチと、 前記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられ
    る転がり軸受と、 を具備したことを特徴とするプーリユニット。
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