JP2001089292A - 自由落下液滴の衝突凝固による高品質結晶材料の製造方法 - Google Patents

自由落下液滴の衝突凝固による高品質結晶材料の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高品質結品材料を簡単な凝固プロセスのみで
製造する。 【解決手段】 熱融解性含金属材料の融液の液滴を初速
度ゼロの状態から自由落下させ、凝固する前に金属板な
どの冷却材に衝突させ、その衝突個所から放射方向凝固
させることによる高品質結晶材料の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自由落下を利用し
て高品質結晶材料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体などの熱融解性含金属材料の融液
を急冷することによりアモルファス材料の製造が行われ
ている。この溶液急冷法には、単一ローラー溶液スピニ
ング法、双ローラー溶液スピニング法、回転シリンダ
法、溶液引き出し法、溶液ドラッグ法、Gun法などが
ある(参考文献:「先端材料辞典」p.591、産業調
査会(1996);S.J.Savage and
F.H.Froes,J.Meta1s,36,(4)
(1984)、pp.20−33.)。単一ローラー溶
液スピニング法やGun法などの方法では、溶液原料を
ローラーや急冷板などに溶液を加速射出して急冷する。
また、溶液引き出し法や溶液ドラッグ法では、回転ドラ
ムに溶液を付着させて冷却するが、この時溶液には遠心
力が作用する。これらの方法では104〜108℃/秒程
度の急速冷却速度を得ることができ、また、連続的にリ
ボン状薄膜が得られる様に工夫されている。得られる薄
膜はアモルファスがほとんどであるが、これを加熱処理
して結晶化させると、組成と組織が冷却ローラーなどに
接触している部分と接触していない部分では異なり、均
一組成・組織から成る高品質結晶材料は製造できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高品質結晶
材料を融液を衝突凝固させる簡単な凝固プロセスのみで
製造する方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成する
に至った。すなわち、本発明によれば、熱融解性含金属
材料の融液の液滴を、非酸化性条件下で初速度ゼロの状
態から自由落下させ、該液滴の凝固前に冷却用部材に衝
突させて該衝突個所から放射方向に凝固させることを特
徴とする高品質結晶材料の製造方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で用いる被処理原料は、熱
融解性含金属材料である。この含金属材料は、加熱によ
り融解して融液を形成するものであり、その融点は、通
常、100℃以上、特に500℃以上であり、その上限
値は、特に制約されないが、通常、2500℃程度であ
る。含金属材料は、金属や合金であることができる他、
金属化合物(酸化物等)であることができる。このよう
な含金属材料には、チタン、鉄などの金属;チタン−ニ
ッケル、銅−アルミニウム、銅−インジウム等の合金;
ゲルマニウム、シリコン、インジウム−アンチモン、鉄
−シリコン、銅−インジウム−セレンなどの半導体;ア
ルミナ−ガーネット複合材料(MGCマテリアル)等の
セラミックスが包含される。これらの含金属材料は、粉
末状や塊状、フィルム状等の各種の形状であることがで
きる。
【0006】本発明により高品質の結晶材料を製造する
には、先ず、熱融解性含金属材料の融液を形成する。こ
の融液はるつぼ等の容器に熱融解性含金属材料の粉末状
や塊状、フィルム状の原料を入れ、電気抵抗炉、赤外線
炉等の加熱装置で原料を融点以上に加熱、融解すること
により形成することができる。強磁性や常磁性の材料の
場合は、電磁浮遊加熱装置で加熱して融液を形成し、こ
の融液を浮遊させることができる。この加熱に際しての
条件は、融液が変質しない条件で、融液の種類により、
非酸化性や酸化性条件が選ばれる。例えば、熱融解性含
金属材料が酸化されやすい場合は非酸化性条件が選ば
れ、熱融解性含金属材料が酸化物の場合は酸化条件でも
良い。このような条件には、アルゴンやヘリウム等の不
活性ガス雰囲気、水素、酸素などの活性ガス雰囲気の
他、2660Pa以下、好ましくは133Pa以下の真
空の雰囲気が包含され、原料に応じて適宜選択される。
蒸気圧の高い含金属材料を取り扱う場合は、材料の蒸発
を抑制するように高圧の不活性ガス雰囲気中、又は、活
性ガス雰囲気中で融点以上に加熱し、融解するのがよ
い。
【0007】次に、この含金属材料の融液を、容器の底
に設けた小孔から融液の一部を液滴として取り出し、こ
の液滴を初速度ゼロの状態から落下させる。液滴を作成
するために融液に圧力を加えて容器下部の小孔を通りや
すくしたり、容器に振動を加えても良いが、液滴が落下
する時は初速度を限りなくゼロにする必要がある。液滴
の大きさは小孔の大きさ、融液の粘性、容器と融液の濡
れ性、融液の比重などにより決定されるが、通常、その
直径は0.1〜50mm、好ましくは2〜10mmであ
る。融液の液滴が存在する雰囲気は上に示した融解時と
同じである。落下した液滴は、液滴が融液の容器の下部
の小孔から完全に切り離され、自由落下の状態を経由し
て、金属板等の冷却用部材に衝突し、その衝突個所から
液滴の凝固が始まる。液滴の自由落下距離は液滴が自由
落下状態を経由することが必要で、小孔と冷却用部材と
の距離は液滴の垂直方向の長さ以上であることが必要で
ある。通常は、その液滴の垂直方向の長さ(直径)の1
〜50000倍程度の距離である。さらに、本発明で
は、液滴が冷却用部材に衝突することにより凝固を開始
する必要があり、自由落下中は液滴の凝固が起こらない
ように自由落下距離を選定する必要がある。一般に、含
金属材料の融点、液滴の温度、自由落下時に発現する過
冷却度、液滴表面からの放射率等により自由落下距離を
決定することが必要である。その具体的自由落下距離
は、予備実験により選定することができる。
【0008】冷却用部材としては、通常、金属(含金を
含む)やセラミックス等からなるものが用いられ、その
表面形状は、平坦状や曲面状等であることができる。金
属からなる冷却用部材は、それに衝突する加熱状態にあ
る液滴によってその表面が融解を生じないものであれば
よい。このような金属としては、銅、鉄等が一般的に用
いられる。また、セラミックスとしては、ガラスや窒化
アルミニウム等が用いられる。その冷却用部材の表面温
度は、通常、その液滴を構成する含金属材料の融点以下
の温度で、好ましくは融点より100℃程度以上低い温
度、特に融点より500〜2500℃程度低い温度であ
る。
【0009】冷却用部材表面に衝突してその表面上に形
成される凝固生成物の形態は、表面が平らな冷却用部材
(冷却板)の場合は、薄板状であり、その面積及び厚さ
は液滴が冷却板に衝突した時点での温度、粘性、衝突速
度、冷却用部材の温度等による。冷却用部材板の形状を
選択することにより、円形あるいは四角形などの薄板の
形状のものの製造が可能である。冷却用部材に衝突した
液滴は融液容器下部の小孔から、もしくは浮遊状態の液
滴が落下をはじめる個所から衝突するまでは完全な自由
落下であり、液滴は微小重力環境下にある。従って、液
滴内に熱対流はなく、組成が均質である。冷却用部材に
衝突した個所から液滴の熱は奪われ、その衝突個所から
凝固を開始し、衝突個所以外へ放射方向状に凝固して行
く。即ち、この凝固は衝突個所を始点とする一方向凝固
である。その結果、得られる凝固物は高品質結晶であ
る。
【0010】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。 実施例1 (自由落下液滴の衝突冷却によるCu−In合金高品質
結晶材料の製造) 高さ13m、直径30cmのステンレス製の管の上部
に、径30mm、高さ1mの石英ガラス管から成る落下
管を連結し、その石英ガラス管内に、その頂部から、内
径8mm、長さ30cmでその先端を細く絞り、先端に
直径が0.3mmの小孔を持つ石英ガラス管を石英ガラ
ス管内に挿入装着した。この内径8mmの石英ガラス管
内部に、原子比0.66:0.34のCuとInの混合
粉体0.3gを充填し、管内をヘリウムガスで置換し、
133PaのHe雰囲気とした。次に、径30mmの石
英ガラス管外側に取り付けた電気炉でCu−In混合粉
末を750℃に加熱して融解し、この温度に保持した。
Cu−In融解後、融液の入っている内径8mmの石英
ガラス管上部に5333Paのヘリウムガスで加圧し、
石英ガラス管下部に設けた直径0.3mmの小孔から融
液を押しだし、液滴を作製した。液滴の径が2mm程度
になった時点で、初速度ほぼゼロの状態から落下管下方
に落下させた。落下中の液滴はほぼ球状であることか
ら、落下中の液滴は微小重力環境にあり、その結果、表
面張力の効果が顕著に現れて球状になったことがわか
る。小孔の垂直下6.5mの個所に、10cm角、厚さ
1mmの表面温度が室温(20℃)の石英ガラス板を設
置し、Cu−In液滴を石英ガラス板に衝突させて凝固
させた。凝固物を回収し、断面を研磨し、塩化第2鉄2
gを添加した濃塩酸20mlをエッチング液として室温
で20秒間エッチングを行った面の合金組織を光学顕微
鏡で観察した。また、CuとInの分布を観察した。そ
の結果、凝固物断面には粒界や欠陥が観察されず、均質
な組織であることが確認された。また、CuとInの凝
固物断面の分布の観察から、均質な組成であることが確
認された。凝固生成物を粉砕し、粉末X線回折法で結晶
構造を調べると、Cu2Inのみが結晶性生成物であっ
た。これらの結果より本発明の方法によりCu2In高
品質結晶が得られたことは明らかである。
【0011】次に、比較のために、落下管中に石英ガラ
ス板を設置せず、13m落下管底部にシリコンオイルを
入れた容器を設置し、Cu−In液滴を13mの距離を
自由落下する間に凝固させ、球状の凝固生成物を得た。
この球状凝固生成物の研磨断面を塩化第2鉄2gを添加
した濃塩酸20mlをエッチング液として室温で20秒
間エッチングした後の断面を光学顕微鏡写真で観察し
た。また、Cu及びInの分布を観察した。その結果、
光学顕微鏡観察では、直径が25μm程度の結晶粒が断
面全体に観察された。また、Cu及びInの分布から各
元素が不均一に存在していることが確認された。この凝
固生成物を粉砕し、粉末X線回折法で結晶構造を調べる
と、Cu2Inのみが結晶性生成物であった。
【0012】前記の実験結果より、自由落下したCu−
In合金を表面温度が室温(20℃)の石英ガラス板に
衝突させ、衝突した個所から凝固させることにより、高
品質結晶Cu2Inが生成したことは明らかである。す
なわち、自由落下中のCu−In液滴は微小重力環境下
にあり、その結果、液滴は均質で、これを石英ガラス板
に衝突させ、衝突個所から凝固させる一方向凝固により
高品質結晶が製造できたことが明らかである。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、微小重力環境下では対
流がなく液体は均質性を維持できることを利用して、熱
融解性含金属材料の均質な液滴を金属板などの冷却用部
材に衝突させて一方向凝固させて単結晶などの高品質結
晶材料を製造することができる。本発明により得られる
高晶質結晶材料、例えばシリコン等の半導体は、IC基
板等として有利に利用される。
フロントページの続き (71)出願人 597110641 皆川 秀紀 北海道北広島市西の里東2丁目17番12号 (71)出願人 598033055 中田 善徳 北海道札幌市清田区里塚2条3丁目16番43 号 (71)出願人 598033066 鶴江 孝 北海道札幌市豊平区西岡5条1丁目15番11 号 (71)出願人 599136588 折橋 正樹 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (74)上記6名の代理人 100074505 弁理士 池浦 敏明 (72)発明者 奥谷 猛 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 永井 秀明 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 皆川 秀紀 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 中田 善徳 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 鶴江 孝 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 折橋 正樹 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 Fターム(参考) 4G077 AA02 BA01 BA07 CD10

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱融解性含金属材料の融液からなる液滴
    を、初速度ゼロの状態から自由落下させ、該液滴の凝固
    前に冷却用部材に衝突させて該衝突個所から放射方向に
    凝固させることを特徴とする高品質結晶材料の製造方
    法。
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