JP3931223B2 - 自由落下液滴の衝突凝固による均質組成組織材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自由落下を利用して均質組成組織材料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体などの熱融解性材料の溶融液(融液)を急冷することによりアモルファス材料の製造が行われている。この溶融液急冷法には、単一ローラー溶融液スピニング法、双ローラー溶融液スピニング法、回転シリンダ法、溶融液引き出し法、溶融液ドラッグ法、Gun法などがある(参考文献:「先端材料辞典」 p.591、産業調査会(1996);S.J.Savage and F.H.Froes、J.Metals、36、(4)(1984)、pp.20−33.)。単一ローラー溶融液スピニング法やGun法などの方法では、ローラーや急冷板などに溶融液原料を加速射出して急冷する。また、溶融液引き出し法や溶融液ドラッグ法では、回転ドラムに溶融液を付着させて冷却するが、この時溶融液には遠心力が作用する。これらの方法では104〜108℃/秒程度の急速冷却速度を得ることができ、また、連続的にリボン状薄膜が得られるように工夫されている。得られる薄膜はアモルファスがほとんどであるが、これを加熱処理して結晶化させると、組成と組織が冷却ローラーなどに接触している部分と接触していない部分では異なり、均一組成組織から成る高品質結晶材料は製造できない。
これらの問題点を解決する方法として、自由落下させた液滴を冷却用部材に衝突させて急冷することによって高品質結晶材料を得る方法が開発された(特許第3087964号)。この方法では、熱融解性含金属材料の溶融液からなる液滴を、初速度ゼロの状態から自由落下させ、該液滴の凝固前に冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させることによって高品質結晶材料を製造することができる。しかし、冷却用部材が融解しない条件下で使用するため、液滴と冷却用部材の濡れ性が悪い場合や、液滴が凝固する際に体積変化を伴う場合には、液滴と冷却用部材との接触面積が小さくなり、期待される急冷速度が得られない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、単結晶などの均質組成の組織材料を、溶融液を衝突凝固させる簡単な凝固プロセスのみで製造する方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、部分によって組成と組織が異ならない均質組成組織材料を製造する方法であって、熱融解性材料の溶融液の液滴を、非酸化性条件下で初速度ゼロの状態から自由落下させ、該液滴の凝固前に、表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させることを特徴とする均質組成組織材料の製造方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる被処理原料は、熱融解(溶融)性材料である。この材料は、加熱により融解して融液を形成するものであり、その融点は、通常、50℃以上、特に100℃以上であり、その上限値は、特に制約されないが、通常、2500℃程度である。熱融解性材料は、金属や合金であることができる他、熱可塑性高分子、ポリマーアロイ、金属化合物(酸化物など)であることができる。このような熱融解性材料には、チタン、鉄などの金属;チタン−ニッケル、銅−アルミニウム、銅−インジウムなどの合金;ゲルマニウム、シリコン、インジウム−アンチモン、鉄−シリコン、銅−インジウム−セレンなどの半導体;ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、ポリスチレンなどの熱可塑性高分子;ポリスチレン−ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル−ABS樹脂、ポリ塩化ビニル−アクリル樹脂などのポリマーアロイ;アルミナーガーネット複合材料(MGCマテリアル)、酸化物超伝導材料などのセラミックスが包含される。これらの熱融解性材料は、粉末状や塊状、フィルム状などの各種の形状であることができる。
【0006】
本発明により均質組成組織材料を製造するには、先ず、熱融解性材料の溶融液(融液)を形成する。この溶融液は坩堝などの容器に熱融解性材料の粉末状や塊状、フィルム状の原料を入れ、電気抵抗炉、赤外線炉などの加熱装置で原料を融点以上に加熱、融解することにより形成することができる。強磁性や常磁性の材料の場合は、電磁浮遊加熱装置で加熱して融液を形成し、この融液を浮遊させることができる。この加熱に際しての条件は、溶融液が変質しない条件で、溶融液の種類により、非酸化性や酸化性条件が選ばれる。例えば、熱融解性材料が酸化されやすい場合は非酸化性条件が選ばれ、熱融解性材料が酸化物の場合は酸化条件でも良い。このような条件には、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素、酸素などの活性ガス雰囲気の他、2660Pa以下、好ましくは133Pa以下の真空の雰囲気が包含され、原料に応じて適宜選択される。蒸気圧の高い熱融解性材料を取り扱う場合は、材料の蒸発を抑制するように高圧の不活性ガス雰囲気中、または、活性ガス雰囲気中で融点以上に加熱し、融解するのが良い。
【0007】
次に、この熱融解性材料の融液を容器の底に設けた小孔から溶融液の一部あるいは全部を液滴として取り出し、この液滴を初速度ゼロの状態から落下させる。液滴を作成するために溶融液に圧力を加えて容器下部の小孔を通りやすくしたり、容器に振動を加えても良いが、液滴が落下する時は初速度を限りなくゼロにする必要がある。液滴の大きさは小孔の大きさ、溶融液の粘度、容器と溶融液の濡れ性、溶融液の比重などにより決定されるが、通常、その直径は0.1〜50mm、好ましくは2〜10mmである。溶融液の液滴が存在する雰囲気は上に示した融解時と同じである。落下した液滴は、液滴が容器の下部の小孔から完全に切り離され、自由落下状態を経由して、金属板などの冷却用部材に衝突し、その衝突箇所から液滴の凝固が始まる。液滴の自由落下距離は液滴が自由落下状態を経由することが必要で、小孔と冷却用部材との距離は液滴の垂直方向の長さの1〜50000倍程度の距離である。
さらに、本発明では、液滴が冷却用部材に衝突することにより凝固を開始する必要があり、自由落下中は液滴の凝固が起こらないように自由落下距離を選定する必要がある。一般に、熱融解性材料の融点、液滴の温度、自由落下時に発現する過冷却度、液滴表面からの放射率などにより自由落下距離を決定することが必要である。その具体的自由落下距離は、予備実験により選定することができる。
【0008】
本発明では、冷却用部材としては、通常、金属(合金を含む)やセラミックスなどからなる基板に融解性コーティング層を施したものを用いる。その表面形状は、平坦状や曲面状などであることができる。このような金属基板としては、銅、鉄などが一般的に用いられる。また、セラミックス基板としては、ガラスや窒化アルミニウムなどが用いられる。その基板の表面温度は、通常、その液滴を構成する熱融解性材料の融点以下の温度で、好ましくは融点より100℃程度以上低い温度、特に融点より200〜2500℃程度低い温度である。融解性コーティング層は、それに衝突する加熱状態にある液滴によって融解が生じるものであればよい。このような融解性コーティング層としては、スズやインジウム、亜鉛、鉛、アルミニウムなどの金属やそれらの合金、熱可塑性高分子が一般的に用いられる。融解性コーティング層の厚みは、液滴が冷却用部材に衝突する際の温度、衝突速度、液滴重量、凝固時の熱膨張率、融解性コーティング層の融点、熱伝導度などにより決定されるが、通常、その厚みは1μm〜10mm、好ましくは10μm〜5mmである。
【0009】
冷却用部材表面に衝突してその表面上に形成される凝固物の形態は、表面が平らな冷却用部材の場合は、薄板状であり、その面積及び厚さは液滴が冷却用部材に衝突した時点での温度、粘性、衝突速度、融解性コーティング層の厚みなどによる。冷却用部材の形状を選択することにより、円形、あるいは四角形などの薄板形状のものの製造が可能である。冷却用部材に衝突した液滴は溶融液容器下部の小孔から、もしくは浮遊状態の液滴が落下を始める箇所から衝突するまでは完全な自由落下であり、液滴は微小重力環境下にある。従って、液滴内に熱対流はなく、組成は均質である。冷却用部材に衝突した箇所から液滴の熱は奪われ、その衝突箇所から凝固を開始し、衝突箇所以外へ放射方向状に凝固していく。その結果、得られる凝固物は均質組成の組織を有するものである。
【0010】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0011】
実施例1
(自由落下液滴の衝突冷却によるFe−Si合金均質組成組織材料の製造)
直径50mm、長さ200cmのステンレス製チューブの上部に、径35mm、高さ400mmの石英ガラスから成る反応管を連結し、その石英ガラス管内に、その頂部から、内径9mm、長さ240mmで、その先端に直径が6mmの小孔を持つアルミナ管を石英ガラス管内に挿入装着した。この内径9mmのアルミナ管内部に、原子比1:2のFe−Si合金0.7gを充填し、管内を2x10-3Pa以下の真空とした。径35mmの石英ガラス管外側には赤外線加熱炉が取り付けてあった。径35mmの石英ガラス管外側に取り付けた赤外線加熱炉でFe−Si合金を1400℃以上に加熱して融解した。この時、溶融液が小孔から溶け出し、アルミナ管先端で液滴を形成した後、自重によってアルミナ管から液滴が切り離され、ステンレス製チューブ中を自由落下した。ステンレス製チューブの下部には40mm角、厚さ15mmの銅板上に0.5mmの厚さのスズを融着させた冷却用部材を室温にて設置し、Fe−Si合金液滴をこの冷却用部材に衝突させて凝固させた。凝固物を回収し、断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で凝固物の組織を観察し、電子線マイクロアナライザーでFeとSiの分布を観察した。その結果、凝固物断面は均質な組織であることが確認された。また、FeとSiの凝固物断面の分布観察から、FeとSiの組成が原子比で1:2の均質な組成であることが確認された。これらの結果より本発明により均質組成組織Fe−Si合金が得られたことが明らかである。
【0012】
比較例1
次に、比較のために、ステンレス製チューブ下部に40mm角、厚さ15mmの銅板を室温にて設置し、Fe−Si合金液滴を衝突させて凝固させた。この凝固物の研磨断面を走査型顕微鏡で組織観察し、電子線マイクロアナライザーでFeとSiの分布を観察した。その結果、凝固物断面には1〜10μm程度の粒状組織が断面全体に観察された。また、FeとSiの凝固物断面の分布観察から、粒状組織は、FeとSiの組成が原子比で1:1であり、その他は、FeとSiの組成が原子比で1:2.3と各元素が不均一に存在していることが確認された。
【0013】
前記の実験結果より、自由落下したFe−Si合金を融解性コーティング層を有した銅板上に衝突させ、衝突した箇所から凝固させることにより、組織、組成の均質な高品質Fe−Si合金が生成したことは明らかである。すなわち、自由落下中のFe−Si液滴は微小重力環境下にあり、その結果、液滴は均質で、これをスズを融着させた銅板に衝突させ、衝突箇所から凝固させる一方向凝固により均質組成組織を持つ材料が製造できたことが明らかである。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、微小重力下では対流がなく、比重差による沈降がなく、液体は均質性を維持できることを利用した自由落下法により、熱融解性材料の均質な液滴を融解性コーティング層を有する金属板などの冷却用部材に衝突させて一方向凝固させて単結晶などの均質組成組織材料を製造することができる。本発明により得られる均質組成組織材料、例えばシリコンなどの半導体は、IC基板などとして有利に利用される。
Claims (1)
- 部分によって組成と組織が異ならない均質組成組織材料を製造する方法であって、熱融解性材料の溶融液からなる液滴を、初速度ゼロの状態から自由落下させ、該液滴の凝固前に、表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させることを特徴とする均質組成組織材料の製造方法。
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JP2001269413A JP3931223B2 (ja) | 2001-09-05 | 2001-09-05 | 自由落下液滴の衝突凝固による均質組成組織材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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JP2003080362A JP2003080362A (ja) | 2003-03-18 |
JP3931223B2 true JP3931223B2 (ja) | 2007-06-13 |
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JP2001269413A Expired - Lifetime JP3931223B2 (ja) | 2001-09-05 | 2001-09-05 | 自由落下液滴の衝突凝固による均質組成組織材料の製造方法 |
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JP (1) | JP3931223B2 (ja) |
-
2001
- 2001-09-05 JP JP2001269413A patent/JP3931223B2/ja not_active Expired - Lifetime
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