JP4168140B2 - 均質な組成・組織を有する固体薄膜の製造方法 - Google Patents

均質な組成・組織を有する固体薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、均質な組成・組織を有する固体薄膜の製造方法に関するものである。
半導体などの熱融解性固体材料の融液を急冷することによりアモルファス材料の製造が行われている。この溶液急冷法には、単一ローラー溶液スピニング法、双ローラー溶液スピニング法、回転シリンダ法、溶液引き出し法、溶液ドラッグ法、Gun法などがある(参考文献:「先端材料辞典」p.591、産業調査会(1996);S.J.Savage and F.H.Froes、J.Metals、36、(4)(1984)、pp.20−33.)。単一ローラー溶液スピニング法やGun法などの方法では、ローラーや急冷板などに溶液原料を加速射出して急冷する。また、溶液引き出し法や溶液ドラッグ法では、回転ドラムに溶液を付着させて冷却するが、この時溶液には回転ドラムによる撹拌などによって強力な対流が発生する。これらの方法では、10〜10℃/秒程度の急速冷却速度を得ることができ、また、連続的にリボン状薄膜が得られるように工夫されている。得られる薄膜はアモルファスがほとんどであるが、これを加熱処理して結晶化させると、組成と組織が冷却ローラーなどに接触している部分と接触していない部分では異なり、均一組成・組織から成る高品質結晶材料は製造できない。
これらの問題点を解決する方法として、自由落下させた液滴を冷却用部材に衝突させて急冷することによって高品質結晶材料を得る方法(参考文献:特許第3087964号公報)や、自由落下させた液滴を表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて急冷することによって均質な組成・組織を有する固体材料を得る方法(特許文献1)などがある。これらの方法で得られる材料は、通常、薄板状あるいはリボン状であるが、記憶材料や発光ダイオード、各種センサー、太陽電池などの様々な機能材料として利用するためには、基板上に形成された薄膜として加工することが必要である。
すでにスパッタリング法などの物理堆積(PVD)法やプラズマや熱を用いた化学堆積(CVD)法などの様々な薄膜作成技術が工業的に利用されているが、固体材料を薄膜化する技術としては、(1)真空蒸着法(電子ビーム蒸着法)、(2)スパッタリング法、(3)レーザーアブレーション法 などのPVD法が適している。その中で、レーザーアブレーション法は、(1)高融点物質の薄膜化が可能、(2)他のPVD法ほど高い真空度を必要とせず、反応系内の雰囲気ガス圧を高くできる、(3)短パルスレーザーを用いターゲットの極表面層のみを瞬時に剥離できるため、ターゲットと堆積膜の組成ずれが起こりにくい、等があげられ、出発原料の状態を反映した薄膜が得られる(参考文献:「薄膜作製応用ハンドブック」、p.364、エヌ・ティー・エス(1995))。レーザーアブレーション法では、ターゲットにレーザーが照射された段階で、原子状、分子状、クラスター状等の多くの化学種が放出され、それらを総合するとターゲットの組成比と合い、これらの化学種が膜形成に寄与する。そのため、レーザーアブレーション法に用いるターゲットには、ターゲット全体で目的とする薄膜と同じ組成になるように調整された焼結体や溶融凝固物が使用される場合がほとんどで、これらのターゲットはミクロ的には均一ではない。このようなターゲットからのアブレーションではミクロな領域では不均一であり、均質な組成・組織を有する良質な薄膜を得るために、化学種の選択や基板の加熱による堆積後の物質拡散を促進させる必要がある。
特開2003−80362号公報
本発明は、均質な組成・組織を有する薄膜を容易かつ確実に製造する方法を提供することをその課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、均質な組成・組織を有するβ−FeSi 薄膜をレーザーアブレーション法により製造する方法において、Fe−Si合金の融液からなる液滴を自由落下させ、該液滴の凝固前に、表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させることにより得られる、均質な組成・組織を有するβ−FeSi をターゲットとして、これをレーザーアブレーション法によって基板に堆積させることを特徴とするβ−FeSi 薄膜の製造方法を提供するものである。
本発明によると、出発原料としてあらかじめ形成した均質な組成・組織を有するβ−FeSi をターゲットを用いるだけで、その組成及び組織を変動させることなく、その出発原料に対応した均質な組成・組織を有するβ−FeSi 薄膜を得ることができる。
本発明により得られるこのような均質な組成・組織を有する薄膜は、化合物半導体や、太陽電池、磁性材料用薄膜材料として有利に用いられる。
本発明で用いる出発原料は、あらかじめ形成した均質な組成及び組織を有するβ−FeSi である。
本発明で出発原料として用いる均質な組成及び組織を有する固体材料は、以下に示す各種の方法で製造することが可能であるが、本発明の場合、(C)の自由落下融液の衝突凝固法により製造する。
(1)熱融解性材料の融液からなる液滴を自由落下させ、該液滴を、冷却部材表面に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させる方法(A法)(特許第3087964号公報)
(2)熱融解性材料の融液からなる液滴を自由落下させ、該液滴を、回転体のその回転表面に衝突させて、凝固させる方法(B法)(特願2002−254663号:特開2004−91857号公報)。
(3)熱融解性材料の融液からなる液滴を自由落下させ、該液滴の凝固前に、表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させる方法(C法)(特開2003−80362号公報:特許第3931223号)
前記3法により均質な組成・組織を有する固体材料を製造するには、先ず、熱融解性固体材料の融液を形成する。この融液は坩堝などの容器に熱融解性固体材料の粉末状や塊状、フィルム状の原料を入れ、電気抵抗炉、赤外線炉などの加熱装置で原料を融点以上に加熱、融解することにより形成することができる。強磁性や常磁性の材料の場合は、電磁浮遊加熱装置で加熱して融液を形成し、この融液を浮遊させることができる。この加熱に際しての条件は、融液が変質しない条件で、融液の種類により、非酸化性や酸化性条件が選ばれる。例えば、熱融解性固体材料が酸化されやすい場合は非酸化性条件が選ばれ、熱融解性固体材料が酸化物の場合は酸化条件でも良い。このような条件には、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素、酸素などの活性ガス雰囲気の他、2660Pa以下、好ましくは133Pa以下の真空の雰囲気が包含され、原料に応じて適宜選択される。蒸気圧の高い熱融解性固体材料を取り扱う場合は、材料の蒸発を抑制するように高圧の不活性ガス雰囲気中、または、活性ガス雰囲気中で融点以上に加熱し、融解するのが良い。
次に、この熱融解性固体材料の融液を容器の底に設けた小孔から融液の一部あるいは全部を液滴として取り出す。液滴の取り出しは、融液が静止状態あるいは自由落下中に行う必要がある。液滴を作成するために融液に圧力を加えて容器下部の小孔を通りやすくしたり、容器に振動を加えても良いが、液滴を取り出す時の速度が、静止状態ではゼロに限りなく近く、自由落下中ではその時の自由落下速度に限りなく近くする必要がある。液滴の大きさは、小孔の大きさ、融液の粘度、容器と融液の濡れ性、融液の比重などにより決定されるが、通常、その直径は0.1〜50mm、好ましくは2〜10mmである。融液の液滴が存在する雰囲気は、前記に示した融解時と同じである。落下した液滴は、液滴が容器の下部の小孔から完全に切り離され、冷却用部材に衝突し、その衝突箇所から液滴の凝固が始まる。液滴の自由落下距離は、液滴が自由落下状態を経由することが必要で、小孔と冷却用部材との距離は液滴の垂直方向の長さの1〜50000倍程度の距離である。
さらに、液滴は、冷却用部材に衝突することにより凝固を開始させる必要があり、自由落下中は液滴の凝固が起こらないように自由落下距離を選定する必要がある。一般に、熱融解性固体材料の融点、液滴の温度、自由落下時に発現する過冷却度、液滴表面からの放射率などにより自由落下距離を決定することが必要である。その具体的自由落下距離は、予備実験により選定することができる。
前記A法で用いる冷却用部材としては、通常、金属(合金を含む)やセラミックスなどの固体部材が用いられる。この場合、金属としては、銅、鉄などが一般的に用いられる。また、セラミックスとしては、ガラスや窒化アルミニウムなどが用いられる。その冷却部材の表面温度は、通常、その液滴を構成する熱融解性固体材料の融点以下の温度、好ましくは融点より100℃程度以上低い温度、特に融点より200〜2500℃程度低い温度である。
冷却用部材表面に衝突してその表面上に形成される凝固生成物の形態は、表面が平らな冷却用部材(冷却板)の場合は、薄板状であり、その面積及び厚さは液滴が冷却板に衝突した時点での温度、粘性、衝突速度、冷却用部材の温度等による。冷却用部材板の形状を選択することにより、円形あるいは四角形などの薄板の形状のものの製造が可能である。冷却用部材に衝突した液滴は融液容器下部の小孔から、もしくは浮遊状態の液滴が落下をはじめる個所から衝突するまでは完全な自由落下であり、液滴は微小重力環境下にある。従って、液滴内に熱対流はなく、組成が均質である。冷却用部材に衝突した個所から液滴の熱は奪われ、その衝突個所から凝固を開始し、衝突個所以外へ放射方向状に凝固して行く。即ち、この凝固は衝突個所を始点とする一方向凝固である。その結果、得られる凝固物は均質組成・組織である。
前記B法で用いる冷却用部材としては、通常、金属(合金を含む)やセラミックスなどの固体部材が用いられる。この場合、金属としては、銅、鉄などが一般的に用いられる。また、セラミックスとしては、ガラスや窒化アルミニウムなどが用いられる。その冷却部材の表面温度は、通常、その液滴を構成する熱融解性固体材料の融点以下の温度、好ましくは融点より100℃程度以上低い温度、特に融点より200〜2500℃程度低い温度である。
冷却部材は、落下管内で回転する回転体からなる。この回転体の回転軸は、落下管の中心軸に対して任意の方向の軸であるが、一般的には同軸あるいは落下管の中心軸に直交する軸である。回転体の形状は、落下する液滴を受止できる回転表面を有するものであればよい。このような回転体としては、円錐形状体(円錐台形状態を含む)、傘形状体、円盤形状体、円筒形状体等が包含される。
冷却用部材の回転速度は、線速度として定義される。線速度が速いほど回転表面に受止された液滴が薄膜状となるため、回転速度が高い程冷却速度が速いと言えるが、液滴が冷却用部材に衝突した時点での温度、粘性、衝突速度などに依存するため、その具体的線速度は、予備実験により選定することができる。その線速度は、通常は、毎秒1m以上、特に毎秒10mであり、その上限値は、特に制約されないが、通常毎秒100m程度である。
冷却用部材表面に衝突して形成される凝固物の形態は、通常、薄板状あるいはリボン状であるが、衝突凝固時の冷却部材の回転によって、これらの粉砕された形状で得られる場合もある。その面積及び厚さは液滴が冷却用部材に衝突した時点での温度、粘性、衝突速度、冷却用部材の線速度などによる。冷却用部材に衝突した液滴は融液容器下部の小孔から、もしくは浮遊状態の液滴が落下を始める箇所から衝突するまでは完全な自由落下であり、液滴は微小重力環境下にある。従って、液滴内に熱対流はなく、組成は均質である。冷却用部材に衝突した箇所から液滴の熱は奪われ、その衝突箇所から凝固を開始し、衝突箇所以外へ放射方向状に凝固していく。その結果、得られる凝固物は均質組成・組織である。
前記C法では、冷却用部材としては、通常、金属(合金を含む)やセラミックスなどからなる基板に融解性コーティング層を施したものを用いる。その表面形状は、平坦状や曲面状などであることができる。このような金属基板としては、銅、鉄などが一般的に用いられる。また、セラミックス基板としては、ガラスや窒化アルミニウムなどが用いられる。その基板の表面温度は、通常、その液滴を構成する熱融解性材料の融点以下の温度で、好ましくは融点より100℃程度以上低い温度、特に融点より200〜2500℃程度低い温度である。融解性コーティング層は、それに衝突する加熱状態にある液滴によって融解が生じるものであればよい。このような融解性コーティング層としては、スズやインジウム、亜鉛、鉛、アルミニウムなどの金属やそれらの合金、熱可塑性高分子が一般的に用いられる。融解性コーティング層の厚みは、液滴が冷却用部材に衝突する際の温度、衝突速度、液滴重量、凝固時の熱膨張率、融解性コーティング層の融点、熱伝導度などにより決定されるが、通常、その厚みは1μm〜10mm、好ましくは10μm〜5mmである。
冷却用部材表面に衝突してその表面上に形成される凝固物の形態は、表面が平らな冷却用部材の場合は、薄板状であり、その面積及び厚さは液滴が冷却用部材に衝突した時点での温度、粘性、衝突速度、融解性コーティング層の厚みなどによる。冷却用部材の形状を選択することにより、円形、あるいは四角形などの薄板形状のものの製造が可能である。冷却用部材に衝突した液滴は溶融液容器下部の小孔から、もしくは浮遊状態の液滴が落下を始める箇所から衝突するまでは完全な自由落下であり、液滴は微小重力環境下にある。従って、液滴内に熱対流はなく、組成は均質である。冷却用部材に衝突した箇所から液滴の熱は奪われ、その衝突箇所から凝固を開始し、衝突箇所以外へ放射方向状に凝固していく。その結果、得られる凝固物は均質組成・組織を有するものである。
本発明により均質な組成及び組織を有する固体薄膜を製造する好ましい方法の1つは、あらかじめ形成した均質な組成及び組織を有する固体材料を出発原料とし、これをレーザーアブレーション法によって基板に堆積させる方法である。
この方法を実施するには、先ず、均質な組成・組織を有する固体材料をレーザーアブレーション装置のターゲットホルダーの形状に合わせて成形、加工する。ターゲットホルダーに納めた均質な組成・組織を有する固体材料は、レーザーアブレーション装置内に配置される。レーザーアブレーション装置内の雰囲気は、均質な組成・組織を有する固体材料の種類により、非酸化性や酸化性条件が選ばれる。例えば、均質な組成・組織を有する固体材料からなる材料が酸化されやすい場合は非酸化性条件が選ばれ、均質な組成・組織を有する固体材料からなる材料が酸化物の場合は酸化性条件でも良い。このような条件には、アルゴンやヘリウムなどの不活性雰囲気、水素、酸素などの活性ガス雰囲気の他に、133Pa以下、好ましくは26Pa以下の真空の雰囲気が包含され、被処理原料により適宜選択される。
次に、この均質な組成・組織を有する固体材料からなる材料にレーザー光を照射して、薄膜生成に必要な均一な組成の化学種を生成する。用いるレーザー光の種類や出力は、均質な組成・組織を有する固体材料からなる材料のレーザー光の吸収係数や融点、各元素間の化学結合の形式などによって決定されるが、通常、レーザー波長が180nm〜1100nm、好ましくは190nm〜600nmであり、レーザー出力が0.1〜10J/cm、好ましくは0.2〜5J/cmである。
薄膜を堆積させる基板は、通常、金属(合金を含む)やセラミックス、半導体、プラスチックが用いられる。このような金属基板としては、アルミニウム、銅、鉄などが一般的に用いられ、セラミックス基板としては、ガラスや酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが一般に用いられる。また、半導体基板としては、シリコンやガリウムヒ素などが一般に用いられ、プラスチック基板としては、ポリカーボネイトやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどが一般に用いられる。その基板の表面温度は、ターゲットとなる均質な組成・組織を有する固体材料からなる材料の融点と基板の溶融あるいは分解温度の内の低い方が上限となり、通常、室温〜1000℃程度の表面温度であり、好ましくは室温〜500℃、より好ましくは室温〜300℃程度の表面温度である。
均質な組成・組織を有する固体材料をターゲットとしてレーザーを照射した場合、ターゲットのどの場所からもターゲットと同じ組成の化学種がアブレーションによって生成し、それが基板に堆積するため、均一な組成及び組織の膜が堆積する。
本発明で得られる均質な組成及び組織を有する固体薄膜において、その厚さは、通常、10〜5000nm、好ましくは50〜2000nmである。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
参考例1
(自由落下液滴の衝突冷却によるCu−In合金高品質結晶材料の製造)
高さ13m、直径30cmのステンレス製の管の上部に、径30mm、高さ1mの石英ガラス管から成る落下管を連結し、その石英ガラス管内に、その頂部から、内径8mm、長さ30cmでその先端を細く絞り、先端に直径が0.3mmの小孔を持つ石英ガラス管を石英ガラス管内に挿入装着した。この内径8mmの石英ガラス管内部に、原子比0.66:0.34のCuとInの混合粉体0.3gを充填し、管内をヘリウムガスで置換し、133PaのHe雰囲気とした。次に、径30mmの石英ガラス管外側に取り付けた電気炉でCu−In混合粉末を750℃に加熱して融解し、この温度に保持した。Cu−In融解後、融液の入っている内径8mmの石英ガラス管上部に5333Paのヘリウムガスで加圧し、石英ガラス管下部に設けた直径0.3mmの小孔から融液を押しだし、液滴を作製した。液滴の径が2mm程度になった時点で、初速度ほぼゼロの状態から落下管下方に落下させた。落下中の液滴はほぼ球状であることから、落下中の液滴は微小重力環境にあり、その結果、表面張力の効果が顕著に現れて球状になったことがわかる。小孔の垂直下6.5mの個所に、10cm角、厚さ1mmの表面温度が室温(20℃)の石英ガラス板を設置し、Cu−In液滴を石英ガラス板に衝突させて凝固させた。凝固物を回収し、断面を研磨し、塩化第2鉄2gを添加した濃塩酸20mlをエッチング液として室温で20秒間エッチングを行った面の合金組織を光学顕微鏡で観察した。また、CuとInの分布を観察した。その結果、凝固物断面には粒界や欠陥が観察されず、均質な組織であることが確認された。また、CuとInの凝固物断面の分布の観察から、均質な組成であることが確認された。凝固生成物を粉砕し、粉末X線回折法で結晶構造を調べると、Cu2Inのみが結晶性生成物であった。これらの結果より本発明の方法によりCuInの均質組成・組織を持つ材料が製造できたことが明らかである。
比較参考例1
次に、比較のために、落下管中に石英ガラス板を設置せず、13m落下管底部にシリコンオイルを入れた容器を設置し、Cu−In液滴を13mの距離を自由落下する間に凝固させ、球状の凝固生成物を得た。この球状凝固生成物の研磨断面を塩化第2鉄2gを添加した濃塩酸20mlをエッチング液として室温で20秒間エッチングした後の断面を光学顕微鏡写真で観察した。また、Cu及びInの分布を観察した。その結果、光学顕微鏡観察では、直径が25μm程度の結晶粒が断面全体に観察された。また、Cu及びInの分布から各元素が不均一に存在していることが確認された。この凝固生成物を粉砕し、粉末X線回折法で結晶構造を調べると、CuInのみが結晶性生成物であった。
前記の実験結果より、自由落下したCuIn合金を表面温度が室温(20℃)の石英ガラス板に衝突させ、衝突した個所から凝固させることにより、均質組成・組織を持つCuInが生成したことは明らかである。すなわち、自由落下中のCuIn液滴は微小重力環境下にあり、その結果、液滴は均質で、これを石英ガラス板に衝突させ、衝突個所から凝固させる一方向凝固により均質組成・組織を持つ材料が製造できたことが明らかである。
参考例2
(落下管を用いた自由落下液滴の高速回転体への衝突冷却によるSi−Ge合金均質組成・組織材料の製造)
直径30mm、長さ110cmのパイレックス(登録商標)(R)製チューブの上部に、径35mm、高さ200mmの石英ガラス管に径18mm、高さ100mmの石英ガラス管が接合された反応管を連結した。反応管上部の径18mmの石英ガラス管内に、その頂部から、内径10mm、長さ200mmで、その先端に直径が6mmの小孔を持つ石英ガラス管を挿入装着した。この内径10mm石英ガラス管内部に、原子比4:1のSi−Ge合金1.0gを充填し、その上に径が10mm未満、長さ150mmの石英ガラス管を挿入した。この石英ガラス管はSi−Ge合金と接触する側の開口部を塞いだ。パイレックス(登録商標)(R)製チューブの下部には直径58mm、高さ16mmの傘状銅ブロックを室温にて設置した雰囲気制御用のチャンバーを配置した。傘状銅ブロックは高速回転モーターに直結しており、傘状銅ブロックの周りは厚さ5mmの銅板で覆っていた。Si−Ge合金試料及び傘状銅ブロックを配置した後、管内を2x10−3Pa以下の真空とした。径35mmの石英ガラス管外側には赤外線加熱炉が取り付けてあった。径35mmの石英ガラス管外側に取り付けた赤外線加熱炉でSi−Ge合金を1450℃以上に加熱して融解した。この時、Si−Ge合金の融解に伴って上部に挿入した石英ガラスが下降し、融液が小孔から溶け出した後の隙間を埋めた。小孔から溶け出した融液は石英ガラス管先端で液滴を形成した後、自重によって石英ガラス管から液滴が切り離され、パイレックス(登録商標)(R)製チューブ中を自由落下した。Si−Ge合金液滴を、毎分25000回転の回転速度で高速回転した冷却用部材の回転中心から25mm離れた位置(線速度:毎秒65.4m)に衝突させて凝固させた。凝固物を回収し、断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で凝固物の組織を観察し、電子線マイクロアナライザーでSiとGeの分布を観察した。その結果、凝固物断面は5μm程度の粒からなる均質な組織であることが確認された。また、SiとGeの凝固物断面の分布観察から、SiとGeの分布が均質であることが確認された。
比較参考例2
次に、比較のために、パイレックス(登録商標)(R)製チューブ下部に直径58mm、高さ16mmの傘上銅ブロックを室温にて設置し、傘上銅ブロックを回転しない状態でSi−Ge合金液滴を衝突させて凝固させた。この凝固物の研磨断面を走査型顕微鏡で組織観察し、電子線マイクロアナライザーでSi−Geの分布を観察した。その結果、凝固物断面には50μmを越える不定形組織が断面全体に観察された。また、SiとGeの凝固物断面の分布観察から、不定形組織中心部では出発原料組成よりSiがリッチで、不定形組織の粒界近傍ではGeがリッチであることが確認された。
前記の実験結果より、自由落下したSi−Ge合金を高速回転させた傘上銅ブロック上に衝突させ、衝突した箇所から凝固させることにより、組織、組成の均質な高品質Si−Ge合金が生成したことは明らかである。すなわち、自由落下中のSi−Ge液滴は微小重力環境下にあり、その結果、液滴は均質で、これを傘上銅ブロックに衝突させ、衝突箇所から凝固する放射方向凝固により、均質組成・組織を持つ材料が製造できたことが明らかである。
参考例3
(自由落下液滴の衝突冷却によるFe−Si合金均質組成組織材料の製造)
直径50mm、長さ200cmのステンレス製チューブの上部に、径35mm、高さ400mmの石英ガラスから成る反応管を連結し、その石英ガラス管内に、その頂部から、内径9mm、長さ240mmで、その先端に直径が6mmの小孔を持つアルミナ管を石英ガラス管内に挿入装着した。この内径9mmのアルミナ管内部に、原子比1:2のFe−Si合金0.7gを充填し、管内を2x10−3Pa以下の真空とした。径35mmの石英ガラス管外側には赤外線加熱炉が取り付けてあった。径35mmの石英ガラス管外側に取り付けた赤外線加熱炉でFe−Si合金を1400℃以上に加熱して融解した。この時、溶融液が小孔から溶け出し、アルミナ管先端で液滴を形成した後、自重によってアルミナ管から液滴が切り離され、ステンレス製チューブ中を自由落下した。ステンレス製チューブの下部には40mm角、厚さ15mmの銅板上に0.5mmの厚さのスズを融着させた冷却用部材を室温にて設置し、Fe−Si合金液滴をこの冷却用部材に衝突させて凝固させた。凝固物を回収し、断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で凝固物の組織を観察し、電子線マイクロアナライザーでFeとSiの分布を観察した。その結果、凝固物断面は均質な組織であることが確認された。また、FeとSiの凝固物断面の分布観察から、FeとSiの組成が原子比で1:2の均質な組成であることが確認された。これらの結果より本発明により均質組成組織Fe−Si合金が得られたことが明らかである。
実施例1
(レーザーアブレーション法を用いたβ−FeSiターゲットからのβ−FeSi薄膜の製造)
直径30mm、長さ110cmのパイレックス(登録商標)ガラス製チューブの上部に、径35mm、高さ200mmの石英ガラスから成る反応管を連結し、その石英ガラス管内に、その頂部から、内径9mm、長さ240mmで、その先端に直径が6mmの小孔を持つアルミナ管を石英ガラス管内に挿入装着した。この内径9mmアルミナ管内部に、原子比1:2のFe−Si合金0.7gを充填し、管内を2x10−3Pa以下の真空とした。径35mmの石英ガラス管外側には赤外線加熱炉が取り付けてあった。径35mmの石英ガラス管外側に取り付けた赤外線加熱炉でFe−Si合金を1400℃以上に加熱して融解した。この時、融液が小孔から溶け出し、アルミナ管先端で液滴を形成した後、自重によってアルミナ管から液滴が切り離され、パイレックス(登録商標)ガラス製チューブ中を自由落下した。パイレックス(登録商標)ガラス製チューブの下部には40mm角、厚さ15mmの銅板上に0.6mmの厚さのスズを融着させた冷却用部材を室温にて設置し、Fe−Si合金液滴をこの冷却用部材に衝突させてFeとSiの組成が原子比で1:2の均質な組成の試料を得た。この試料を1x10−3Pa以下の真空中で850℃、1時間熱処理することによって、電子線マイクロアナライザーの結果から試料全面でFeとSiの組成が原子比で1:2であり、X線回折の結果からβ−FeSi単相である試料を得た。
この試料約1.5gを瑪瑙乳鉢で粉砕し、直径20mmの円筒形に加圧成形し、1x10−3Pa以下の真空中で925℃、1時間熱処理を行った。これをターゲットホルダーに乗せてレーザーアブレーション装置に入れ、1x10−3Pa以下の真空に排気した。ターゲットホルダーはレーザー光の照射軸に対して45°傾いており、ターゲットホルダーから約40mm離れた位置にターゲットホルダーと平行にSi(100)面の基板17mm×20mmを配置した。基板はエタノールとアセトンによる洗浄を行い、基板温度は室温とした。レーザー光は、Nd:YAGレーザーの第3高調波(355nm)を用い、石英レンズで集光して約4J/cmの出力としたものを繰り返し周波数10Hzで5分間、ターゲットに照射した。レーザー光を照射中、ターゲットは毎分約4回転で回転していた。得られた薄膜をX線回折で調べたところ、基板に用いたSi(100)面に対応する回折ピークの他に、β−FeSiの回折ピークのみが確認され、原子比1:2の均質なFe−Si合金薄膜(厚さ:150nm)が得られることがわかった。
次に、比較のために、落下管による急冷凝固前の原子比1:2のFe−Si合金を用いてレーザーアブレーション法による薄膜を合成した。この合金は、FeとSiの組成が原子比で1:1のεFeSiの100μm程度の粒子がFeとSiの組成が原子比で1:2.3のα−FeSiのマトリックスに不均一に分散した組織をしており、これを粉砕して、円筒形に加圧成形した後、1x10−3Pa以下の真空中で925℃、1時間熱処理を行ったところ、X線回折ではβ−FeSiとε−FeSiの混合物であった。これをターゲットとして同様の条件でレーザーアブレーションを行ったところ、薄膜が得られた。X線回折を行ったところ、基板に用いたSi(100)面に対応する回折ピークの他には回折ピークは得られなかった。

Claims (1)

  1. 均質な組成・組織を有するβ−FeSi 薄膜をレーザーアブレーション法により製造する方法において、Fe−Si合金の融液からなる液滴を自由落下させ、該液滴の凝固前に、表面に融解性コーティング層を有する冷却用部材に衝突させて該衝突箇所から放射方向に凝固させることにより得られる、均質な組成・組織を有するβ−FeSi をターゲットとして、これをレーザーアブレーション法によって基板に堆積させることを特徴とするβ−FeSi 薄膜の製造方法。
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