JP2004098090A - マグネシウム急速凝固合金製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)からなるマグネシウム合金を溶解して溶湯とし、金型を金型温度が50℃以下の状態のまま、金型内の製品形成部の回転中心から最も近い部分の回転周速が20m/s以上となる速度で金型を回転せしめ、溶湯を金型に挿入するとともに、金型から受ける遠心力により溶湯を保持しつつ金型中で急速凝固させ、最大の厚さが10mm以下のマグネシウム合金鋳造材を作製する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度及び伸びに優れ、産業上の種々の分野に利用可能なマグネシウム合金製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融状態の合金を急冷することにより種々の組成において、非晶質合金又は非常に微細な結晶を有する合金が得られることが知られている。これらの合金は急速凝固合金と呼ばれ、特にナノメートルサイズの微細な結晶からなる合金は、高い冷却速度が容易に実現できる単ロール法によって製造される場合が多く、Fe系、Al系、又はMg系合金について数多くの急速凝固合金材料が得られている。なかでも、Mg系急速凝固合金は他の急速凝固合金に比べて低比重で軽量であり、種々の分野への応用が期待されている。このようなMg系急速凝固合金としてMg−Al−M(MはGa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種)系急速凝固合金がある(特許文献1)。
【0003】
しかし、単ロール法によって作製できるMg系急速凝固合金の形状は薄帯に限られており、薄帯形状のままでは応用範囲が限定されるため、棒状などの種々の形状が可能である急速凝固合金材料を開発することが求められている。そのため、アトマイズ法を用いて、粉末形状の急速凝固合金を作製し、ホットプレスや押出し成型等により目的形状に固化成型が容易な合金が開発されている(特許文献2、3)。
また、完全に密閉された中でアトマイズからホットプレスまで可能な粉末冶金用のクローズシステムが報告されている(非特許文献1)。
一方、粉末冶金の手法によらず鋳造の手法により大型の急冷凝固鋳造材を作製する手法として、非晶質マグネシウム合金の製造方法が開発されている(特許文献4)。
本発明者らは、Mg基合金の組成と、その結晶構造を限定し、長周期六方構造を出現させることにより高強度と高延性を兼ね備えたMg基合金が得られることを見出し、特願2001−60978号として出願するとともに、論文として報告した(非特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−171331号公報
【特許文献2】
特開平7−3375号公報
【特許文献3】
特開平7−90462号公報
【特許文献4】
特許2963225号公報
【0005】
【非特許文献1】
日本金属学会学会誌,「まてりあ」,27 (1998) p.412
【非特許文献2】
Akihisa Inoue et al.,「Novel hexagonal structure and ultrahigh strength of magnesium solid solution in the Mg−Zn−Y system」,J.Mater.Res.,Materials Research Society,July 2001,Vol.16,No.7,p.1894−1900
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−3375号公報や特開平7−90462号公報に開示されているMg系急速凝固合金は、アトマイズ法などの方法により粉末粒径100μm以下の微細なMg合金粉末を作製し、その後、固化成型する工程により製造される。高活性なマグネシウム合金はそれ自体で発火性を持ち、さらに、粉末粒径が小さくなると粉塵爆発などの危険性が伴う。また、マグネシム系合金は高活性であるがゆえに粉末が酸化しやすく、粉末状態で生じた酸化物は目的形状に成型した後も存在し、強度の低下を招くという問題も生じていた。
【0007】
このような危険性や酸化膜の形成を防止する方法として、完全に密閉された中でアトマイズからホットプレスまで可能な粉末冶金用のクローズシステムが報告されている(非特許文献1)が、このような製造プロセスは、試験研究用の試料などは作製できるが、生産性を考慮した場合、その製造装置自体が高価であること、及び大型の部品が作製できないという問題を有しており、実用化には問題があった。実用化の観点から、粉末冶金の手法によらず鋳造法により高強度で高延性の急冷凝固合金を作製する方法が望まれていた。
【0008】
上記の非晶質マグネシウム合金の製造方法(特許文献4)は、合金組成と鋳造条件を限定することにより強度に優れたマグネシウム合金を提供できる製造方法であるが、限定している合金組成は非晶質形成能が高い、すなわち溶湯から冷却する際の過冷却状態が非常に安定し、常温まで結晶化することなしに鋳造が行なえる合金組成であるがために大型の製品が作製できるものである。
【0009】
しかし、非晶質のマグネシウム合金は、室温で脆化する現象があるとともに、塑性伸びが全くなく信頼性の問題で実用に供することができなかった。また、上記の製造方法を従来の結晶質のマグネシウム基合金に適用しようと試みても、非晶質マグネシウム合金と異なり、過冷却状態が非常に少ないために脆化の原因となる化合物の析出を抑えた状態で鋳造することが困難であるという問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題に鑑みて、粉末冶金の手法によらず実用に耐えうる程度の高強度マグネシウム合金の製造方法を提供することを目的として鋭意検討を行なった。その結果、特定のマグネシウム合金において、高速で回転する鋳型に溶湯を挿入し、溶湯が金型中で遠心力を得ながら急速に凝固する方法でマグネシウム急速凝固合金を作製することにより、高強度で高延性のマグネシウム合金を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)からなるマグネシウム合金を溶解して溶湯とし、鋼、ステンレス鋼、銅、又は銅合金から選択される材料からなる金型を金型温度が50℃以下の状態のまま、金型内の製品形成部の回転中心から最も近い部分の回転周速が20m/s以上となる速度で金型を回転せしめ、溶湯を金型に挿入するとともに、金型から受ける遠心力により溶湯を保持しつつ金型中で急速凝固させ、最大の厚さが10mm以下のマグネシウム合金鋳造材を作製することを特徴とするマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法である。
【0012】
本発明に関わるマグネシウム合金は、原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5
0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である必要があり、好ましくは1.5≦a≦4.5、0.5≦b≦2、及び2≦a+b≦6である。本合金は鋳型内で急速に冷却された場合、溶融温度以下で冷却の間に過冷却液体状態を生じ鋳型内を溶湯で充填することが可能であるという特徴をもつ。
【0013】
Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素の含有量が0.5原子%未満であると強度上昇が顕著でなく、過冷却液体が安定でないために凝固しやすく鋳型内を充填することが困難となる。5原子%を超えると脆化し実用に供せない。Znが0.2原子%未満であると強度上昇が顕著でなく、過冷却液体が安定でないために凝固しやすく鋳型内を充填することが困難となる。Znが4原子%を超えると脆化し実用に供せない。
【0014】
Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素及びZnとの総和は、1.5原子%以上7原子%以下である。1.5原子%未満であると、強度上昇が顕著でなく、過冷却液体が安定でないために凝固しやすく鋳型内を充填することが困難となる。7原子%を超えると脆化し実用に供せない。
【0015】
本発明に用いる鋳型は、鋼、ステンレス、銅及び銅合金から選択される素材の金型である。溶湯を鋳型内で急速に冷却する必要から、砂型などを用いることができない。金型素材は製造する製品により、鋼、ステンレス鋼、銅及び銅合金から選択される素材の金型であれば、どの素材を用いても構わないが、高い冷却速度が必要な場合は、銅又は銅合金を用いることが望ましい。また、大型製品の鋳造時など鋳型温度が上昇する場合があれば、水冷が可能な金型を用いることが望ましい。また、複雑形状の製品を製造する場合は、金型精度を高く保ち、かつ鋳造時の湯流れを正常に保つために、硬度が高く鋳型表面の冷却速度が比較的低い鋼やステンレス鋼を用いることが望ましい。
【0016】
金型の温度は50℃以下である。温度の下限は限定されないが、通常は結露の防止などのため0℃以上である。50℃を超える温度の場合、急速に凝固できず、化合物が析出し、製品が脆化してしまう。
【0017】
金型の回転周速度は、金型内の製品形成部の回転中心から最も近い部分で20m/s以上である必要がある。20m/s未満であると、金型内に溶湯を挿入した際に溶湯へ遠心力が大きく働かず、冷却速度が上昇しないばかりか、ブローホールが発生し、正常な鋳造品を得ることができない。速度の上限は特に規定されないが、通常80m/s以下である。回転周速度が80m/sを超えると金型の破壊も考えられるとともに、金型の製品形成部の最奥部に溶湯が衝突する際に衝撃が強く湯廻り不良が生じ易い傾向がある。
【0018】
金型の形状は、特に規定されないが、本発明の製造方法の範囲内で回転しても振動を生じない様に、鋳造前後において回転バランスが取れるように設計する必要がある。また、溶湯からなるジエットを反射させる部位から製品形成部までの湯口部分や製品形成部の湯流れが良好になるように金型形状は設計する必要がある。
【0019】
本発明の製造方法で製造されるマグネシウム急速凝固合金材の形状は、最大の厚みが10mm以下である必要があり、好ましくは5mm以下である。10mmを超えると製品内部の冷却速度が低くなり製品が脆化する傾向がある。また、製品形成部全体に溶湯を流すために製品形状の最大幅は200mm以下が望ましく、さらに好ましくは100mm以下である。製品形状の最大幅が200mmを超えると金型内に均一に溶湯を挿入することが困難になる傾向がある。
【0020】
なお、鋳型内を溶湯で充填することが困難な場合、通常の鋳造法においては溶湯温度を上昇させ、湯流れを改善するが、本発明の方法においては、溶湯の温度を上げることは金型が溶湯から奪う熱量が増加するために冷却速度を低下させてしまい、化合物の析出を招き伸びが低下するので好ましくない。そのため、金型に装入する際の溶湯の温度は、融解温度+(20〜100℃)が望ましい。
【0021】
本発明では、急速凝固における冷却速度を限定していないが、通常、本発明の製造方法であれば103K/sec以上の冷却速度を実現できる。
【0022】
さらに、本発明の方法によれば、冷却速度が早く、製品の湯境を生じやすいため、金型への溶湯の挿入は挿入速度の早い方法を選択し、製品形成部の凝固速度より早い速度で挿入する必要がある。望ましい挿入方法として、回転する金型の中心に溶湯からなるジェットを反射させる部位を備えた金型を用い、金型の回転軸を延長する場所から、金型中心に向かいマグネシウム合金の溶湯をジェット状に噴出するとともに、該反射部により直角方向に溶湯のジェットを金型の製品形成部に反射させ、溶湯を金型の製品形成部に挿入させる方法がある。
【0023】
本挿入方法によると、溶湯のジェットの速度と金型から受ける加速度により、製品形成部における急速な溶湯の充填が可能になる。さらに、本挿入方法によると、製品形成部近傍まで溶湯を搬送することができるとともに、溶湯を金型内へ供給する容器内の溶湯の押圧によりジェットの速度をコントロールすることにより挿入速度を操作することが容易である。
【0024】
本発明の製造方法では、マグネシウム合金鋳造材において各々の結晶中の一部にMg以外の成分元素が濃縮している部位を有していること、さらにマグネシウム合金鋳造材の結晶中の一部又は全域に長周期六方構造を有していることが望ましい。結晶中の一部にMg以外の元素が濃縮している部位を有した状態や、結晶中の一部又は全域に長周期六方構造を有する状態は、本発明の製造方法を採用し、溶湯の挿入温度を上記の温度範囲に保つことで容易に得ることができる。結晶中の一部にMg以外の元素が濃縮している部位を有した状態や、結晶中の一部又は全域に長周期六方構造を有する状態であることで、マグネシウム急速凝固合金の強度が増加する傾向がある。
【0025】
Mg以外の成分元素が濃縮している領域の結晶内の比率や、長周期六方構造を有する領域の結晶内における比率は、製造条件で異なるが、通常の場合、Mg以外の元素が濃縮している場合は、体積割合で結晶内の10〜50%の領域であり、長周期六方構造を有する場合は、体積割合で結晶内の20%〜100%の領域である。
【0026】
結晶中の一部にMg以外の元素が濃縮している部位を有した状態は、マグネシウム合金鋳造材をエネルギー分散型蛍光X線分析装置により結晶内部の濃度分布を測定することに容易に判断することができる。また、結晶中の一部又は全域に長周期六方構造を有する状態は、マグネシウム合金鋳造材を透過型電子顕微鏡により制限視野回折図形を得ることにより容易に判断することができる。
【0027】
以下に本発明の製造方法に好適な装置の例をもとに製造方法を説明する。
図1には、本発明で用いる鋳造装置の一例を概念的に示している。図1の装置によれば、製品形成部17の回転中心から最も近い部分の回転周速が20m/sから50m/sの周速で回転している銅製回転金型15の上部にて、母合金19を軟鋼製ノズル13に充填し、軟鋼製ノズル13が上方に移動した状態で、高周波誘導加熱装置のコイル14で加熱し、母合金19を溶解させる。母合金19が十分に溶解したら、エアシリンダ12の作動で軟鋼製ノズル13を下降させ、ガス供給チューブ11からアルゴン等の不活性ガスなどを導入し、軟鋼製ノズル13内を加圧して、ノズル先端のオリフィスから溶融マグネシウム合金を押し出す。
【0028】
回転金型の回転軸を延長する場所に位置するオリフィスから回転金型中心に向かい押し出されてジエット状に噴出する溶湯流16は、軟鋼製ノズル13下端のオリフィスから溶湯受け部18に落下した後、溶湯受け部18で溶湯からなるジエットを反射し、回転金型15内の湯道20を通り、製品形成部17に挿入される。製品形成部17内においては、溶湯は回転金型15より遠心力を受けながら、回転金型15との接触により急速に冷却され凝固する。その後、回転金型15の回転を止め、回転金型15上部を下部より取り外した後に、製品形成部17から製品となるマグネシウム急速凝固合金材の取り出しを行う。
【0029】
このように本発明の製造方法は、遠心力により溶湯と回転金型の熱接触が向上するため、高い冷却速度で凝固させた製品を作製できる。そのため、過飽和に溶質原子を含有し不要な析出物が析出することを防ぐことができ、高強度、高延性なマグネシウム合金製品を提供できる。さらに、本発明で用いる合金は過冷却状態が安定であるので、遠心力で溶湯を保持しながら冷却される時点で、過冷却液体状態での製品形成部の密な充填を可能とする。そのため、気孔等の発生も微量にすることができ、高強度、高延性のマグネシウム合金製品を製造することが可能である。
【0030】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により本発明について具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示した装置を用いてMg97Zn1Y2(at%)合金材の鋳造を以下の条件で行った。溶解温度:700℃、オリフィス径:1.5mm、噴出圧:3kg/cm2、回転金型:銅製200mmφ(回転中心から製品部まで半径:100mm)、製品形状:30mm×50mm×3mm、金型回転速度:5000rpm、母合金重量:30g、雰囲気:5×10−2Paまで脱気後、アルゴンガスを0.9Paまで置換。
【0031】
製品を切断し、断面を光学顕微鏡により200倍の視野で10点観察したが、断面には気孔は観察されなかった。インストロン引張試験機により引張試験を行なった。引張破断応力は240MPa、伸びは17%であり、従来のダイカスト合金に比べて非常に伸びのある材料を得ることができた。
【0032】
鋳造材を透過型電子顕微鏡及び付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置により結晶内部の濃度及び構造分析を行なったところ、結晶内部の一部に7at%Y及び7at%ZnにMg以外の元素が濃縮している部位が幅50nm程度観察され、その一部は通常のMgの3倍の周期構造を有する長周期構造をなしていることが分かった。
【0033】
(実施例2)
Mg97Zn1Mm1(Mmはミッシュメタル)組成の母合金を実施例1と同様の条件にて鋳造を行なった。製品の断面を実施例1と同様に観察したが、断面には気孔が観察されなかった。引張強度240MPa伸びは8%であり、従来のダイカスト方法に比べて伸びのある製品を得ることができた。
【0034】
(実施例3)
Mg95Y4Zn1(at%) 組成の母合金を実施例1と同様の条件にて鋳造を行なった。製品の断面を実施例1と同様に観察したが、断面には気孔が観察されなかった。引張強度は300MPa、伸びは6%であり、従来のダイカスト材に比べて強度が高く、伸びも同等の製品を得ることができた。また、鋳造材を透過型電子顕微鏡及び付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置により結晶内部の濃度及び構造分析を行なったところ、結晶内部の一部に7at%Y及び7at%ZnにMg以外の元素が濃縮している部位が幅50nm程度観察され、その一部は通常のMgの3倍の周期構造を有する長周期構造をなしていることが分かった。
【0035】
(比較例1)
実施例2と同じMg95Y4Zn1(at%)の合金を、図1の製造装置の回転鋳型部分を図2に示す静止した金型に取り替えた構成で金型鋳造を行なった。鋳造条件は以下の条件である。
溶解温度:700℃、オリフィス径:1.5mm、噴出圧:3kg/cm2、静止金型:銅製鋳型、製品形状:30mm×50mm×3mm、母合金重量:30g、雰囲気:5×10−2Paまで脱気後、アルゴンガスを0.9Paまで置換。
【0036】
製品の断面を実施例1と同様に観察したところ、断面には1〜3μm径の気孔が各視野に観察された。引張強度は250MPa、伸びは6%であり、本発明の高強度マグネシウム合金材の製造方法を用いて製造した製品に比べ、引張強度も伸びも低い値を示した。
【0037】
(比較例2)
AZ91C(JIS規格MC2)組成の母合金を実施例1と同様の条件にて鋳造を行なった。製品の断面を実施例1と同様に観察したところ、断面には1〜2μm径の気孔が各視野に観察された。引張強度は220MPa、伸びは5%であり、従来のダイカスト法で得られる製品と強度・伸びともに同等の製品しか得られなかった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のマグネシウム急速凝固合金材の製造方法を用いることにより、高い強度及び伸びのマグネシウム合金製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法を実施するための装置の一例を示す概念図である。
【図2】比較例としてマグネシウム急速凝固合金材を従来の方法で作製するための装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
11 ガス供給チューブ
12 エアシリンダ
13 軟鋼製ノズル
14 高周波コイル
15 回転金型(銅製)
16 溶湯流
17 製品形成部
18 溶湯受け部
19 母合金
20 湯道
21 静止金型(銅製)
Claims (4)
- 合金全体の平均組成が原子%による組成式Mg100−a−bLnaZnb(式中、Lnは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、又はミッシュメタルから選ばれる1種以上の希土類元素、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、及び1.5≦a+b≦7である)からなるマグネシウム合金を溶解して溶湯とし、鋼、ステンレス鋼、銅、又は銅合金から選択される材料からなる金型を金型温度が50℃以下の状態のまま、金型内の製品形成部の回転中心から最も近い部分の回転周速が20m/s以上となる速度で金型を回転せしめ、溶湯を金型に挿入するとともに、金型から受ける遠心力により溶湯を保持しつつ金型中で急速凝固させ、最大の厚さが10mm以下のマグネシウム合金鋳造材を作製することを特徴とするマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法。
- 回転する金型の中心に、溶湯からなるジェットを反射させる部位を備えた金型を用い、金型の回転軸を延長する場所から、金型中心に向かいマグネシウム合金の溶湯をジェット状に噴出するとともに、該反射部により溶湯のジェットを金型内の製品形成部に反射させ、溶湯を金型内の製品形成部に挿入させることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法。
- マグネシウム合金鋳造材において各々の結晶中の一部にMg以外の成分元素が濃縮している部位を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法。
- マグネシウム合金鋳造材の結晶中の一部又は全域に長周期六方構造を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマグネシウム急速凝固合金製品の製造方法。
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