JP2001086992A - トランスジェニック魚類を用いた多量体糖タンパク質の生産方法 - Google Patents

トランスジェニック魚類を用いた多量体糖タンパク質の生産方法

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JP2001086992A
JP2001086992A JP27079099A JP27079099A JP2001086992A JP 2001086992 A JP2001086992 A JP 2001086992A JP 27079099 A JP27079099 A JP 27079099A JP 27079099 A JP27079099 A JP 27079099A JP 2001086992 A JP2001086992 A JP 2001086992A
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fish
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multimeric
glycoprotein
protein
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JP27079099A
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Makihito Kobayashi
牧人 小林
Goro Yoshizaki
悟朗 吉崎
Shiyuugo Watabe
終五 渡部
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Ajinomoto Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 多量体糖タンパク質、特に魚類の養殖分
野で有用な多量体糖タンパク質を多量かつ安価に生産す
る方法を提供する。 【解決手段】 トランスジェニック魚類を多量体糖タン
パク質、特にヘテロ多量体糖タンパク質を多量に生産す
るためのバイオリアクターとして使用する。タンパク質
をコードする遺伝子は適切な発現制御配列と共に魚類細
胞中で発現可能な形態に構築され、魚類卵に導入され、
この卵が発生を続け、魚類細胞中で導入遺伝子が発現
し、胚、仔魚、稚魚、成魚またはその組織若しくは血液
から望みのタンパク質が抽出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は魚類をバイオリアク
ターとして用いた有用タンパク質、特にヘテロ多量体糖
タンパク質の多量生産方法に関するものである。また本
発明は、魚類の養殖における有用タンパク質、特に多量
体糖タンパク質、より具体的にはヘテロ多量体糖タンパ
ク質をin vivoにおいて多量生産する方法に関する。ま
た本発明は、魚類の養殖分野における有用なタンパク質
を多量に発現する、初期胚を含むトランスジェニック魚
類に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から種々の特性・活性を有するタン
パク質が様々な分野で利用されてきた。魚類の養殖分野
においても有用なタンパク質がいくつか知られており、
それらには例えば、成長ホルモン(GH)、ヒト胎盤性生
殖腺刺激ホルモン(HCG)、脳下垂体生殖腺刺激ホルモン
(GTH)が含まれる。また、ある種のサケ科魚類では2種
類のGTH(GTH I、GTH II)が存在することが明らかにさ
れており(Kawauchiら(1989)、Fish Physiol Biochem.
7, 29-38)、キンギョにおいても本発明者らによってGT
H IおよびGTH IIの存在が明らかにされ、そのcDNA配列
が明らかにされている(M. Kobayashiら(1997)、Gen. Co
mp. Endocrinol. 105, 372-378; Y.Yoshiuraら(1997)、
Gen. Comp. Endocrinol. 105, 379-389)。しかしなが
ら、これらのタンパク質を使用する場合、特に哺乳類由
来のものを魚類に使用する場合などは、種特異性あるい
は反復投与による抗体産生などによる催熟効果の低下と
いう問題が生じることが知られている。またこれらのタ
ンパク質の供給源を天然に求めれば、脳下垂体が容易に
得られる動物種が限られているため多量かつ安価に同一
種起源のものを常時供給することは困難である。
【0003】一般にDNA組換え技術を用いたこのような
有用なタンパク質の多量調製には、大腸菌などの原核生
物を利用する系、酵母などの真核生物を利用する系が知
られており、ある種の単純な構造をもつタンパク質につ
いては成功を収めている。さらに、哺乳動物または昆虫
の培養細胞を利用する系、マウス・ブタ等の1個体の動
物を利用する系なども一部のタンパク質について用いら
れている。特にマウスやブタを利用する系では乳に分泌
されるタンパク質について有望と見られている。しかし
ながら、これらには以下に述べるような問題点があるこ
とも知られている。まず、大腸菌等の原核生物を用いた
系では多量体形成および/または糖鎖付加といった翻訳
後修飾が正確に行われないという問題点が知られてい
る。また酵母を利用した系についても翻訳後修飾が不完
全であり、生じたタンパク質が必ずしも本来の機能を有
しない場合があることが指摘されている。真核生物の培
養細胞を用いた系としては昆虫細胞を用いる系、哺乳動
物の培養細胞を用いる系があるが、昆虫細胞においては
付加される糖鎖の構造が他の生物種、特に魚類と大きく
異なるという問題点があり、哺乳動物の培養細胞は更に
その維持管理に労力と多大な費用を必要とするにもかか
わらず外来タンパク質の産生量に限界がある。
【0004】更に、マウス、ブタ等の1個体の動物を用
いる系は、タンパク質産生量は十分であったとしてもい
くつかの問題が指摘されている。例えば、これらの動物
は体内受精のため、遺伝子の導入、その後の管理が容易
ではない。更に、これらの動物を用いたタンパク質の多
量生産で実用レベルにあるのは、現在のところ乳に分泌
されるタンパク質に限定されるため、利用できる動物は
事実上メス個体に限られる。また、個体の飼育について
時間・空間的制約が大きいという問題がある。更に一般
に生理活性のある糖タンパク質は、生物種によってその
糖鎖構造が異なりその作用に種特異性があることが知ら
れている。従って、それぞれの種に最適な有用タンパク
質を安価かつ大量に調製する方法の開発がなお望まれて
いる。特に、魚類の養殖分野では、異種生物由来の成長
ホルモンや生殖腺刺激ホルモンが従来使用されており前
述のような種々の問題点を抱えているため、魚類由来の
有用なタンパク質を多量に生産する方法が望まれてい
る。一方、魚類における遺伝子導入法に関しては、いく
つかの魚類で受精卵へのマイクロインジェクションによ
る遺伝子導入法が確立されており、特にニジマス卵への
遺伝子導入法は本発明者らによって確立されている(Yo
shizakiら(1991)、Nippon Suisan Gakkaishi, 57, 819-
824)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、多量体糖タ
ンパク質、特にヘテロ多量体糖タンパク質を多量かつ安
価に生産する方法を提供することを目的とする。特に本
発明は魚類の養殖分野で有用な多量体糖タンパク質、特
にヘテロ多量体糖タンパク質を多量かつ安価に生産する
方法を提供することを目的とする。また本発明は、多量
体糖タンパク質、特にヘテロ多量体糖タンパク質を多量
に発現する魚を提供することを目的とする。さらに本発
明は、魚類の養殖分野で有用なタンパク質、特に、魚類
の多量体糖タンパク質をその組織および/または血液中
に多量に発現している魚類胚、仔魚、稚魚、成魚を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、魚類が体
外受精であるため遺伝子導入およびその後の胚の管理が
容易であること、1回の排卵数が多いこと、多数の個体
の飼育が空間的、時間的に比較的容易であること、タン
パク質の回収を個体全体、組織または血液から行うた
め、タンパク質の供給源として個体の性、成熟度を問わ
ないという利点を有していることに着目し、魚類をバイ
オリアクターとして複雑な構造を持つ有用タンパク質を
安価に多量生産する方法を発明するに至った。すなわ
ち、本発明の方法は、トランスジェニック魚類を多量体
糖タンパク質、特にヘテロ多量体糖タンパク質を生産す
るためのバイオリアクターとして使用する。本発明によ
り、タンパク質をコードする遺伝子は適切な発現制御配
列と共に魚類細胞中で発現可能な形態に構築され、これ
が魚類卵に導入され、この卵が発生を続け、魚類細胞中
で導入遺伝子が発現し、胚、仔魚、稚魚、成魚またはそ
の組織若しくは血液から望みのタンパク質が抽出され
る。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の目的は、望みの遺伝子を
適切な制御配列に接続して作製した遺伝子構築物を魚類
の卵に導入し、これを発現させ、発生過程の種々の段階
にある胚、孵化後の仔魚、稚魚、成魚の全個体または組
織または血液から導入遺伝子由来のタンパク質を抽出す
ることによって達成される。本発明の方法は、多量体糖
タンパク質、特にヘテロ多量体糖タンパク質、より具体
的には魚類のヘテロ多量体糖タンパク質を多量生産する
ために適している。簡単に言えば本発明の方法は以下の
ステップを含むのが好ましい。 i)望みのタンパク質をコードする遺伝子を単離するス
テップ; ii)単離した遺伝子を適切な発現ベクターにクローニン
グして遺伝子発現構築物を作製するステップ; iii)魚類卵に前記遺伝子発現構築物を導入するステッ
プ; iv)得られた遺伝子導入卵を発生させるステップ; v)前記遺伝子導入卵から発生する胚、仔魚、稚魚また
は成魚の全個体または組織または血液から導入遺伝子由
来のタンパク質を抽出するステップ。
【0008】本明細書において、「多量体糖タンパク
質」とは、糖残基を有する「多量体タンパク質」をい
う。ここで、「多量体タンパク質」とは1以上のポリペ
プチド鎖から構成されるタンパク質をいい、ジスルフィ
ド結合などの共有結合によって結合している場合、非共
有結合的に会合している場合のいずれも含む。しかしな
がら、天然で多量体構造をとるタンパク質であって、人
為的にスペーサー(本来のタンパク質に存在しない部
分)を挟むことによって1本のポリペプチド鎖として発
現された融合疑似多量体タンパク質も、本明細書におい
ては「多量体タンパク質」に含まれる。従って、「多量
体糖タンパク質」は多量体タンパク質を構成するポリペ
プチドの1以上のポリペプチド鎖に1以上の糖残基が結
合しているものを意味する。本明細書において「ヘテロ
多量体糖タンパク質」とは、多量体糖タンパク質を構成
する1以上のポリペプチド鎖のうち、少なくとも2つが
互いに完全同一でないタンパク質をいう。人為的に改変
された1本の融合ポリペプチド鎖として発現される場合
は、スペーサー以外の少なくとも2つの部分が互いに完
全同一でないタンパク質をいう。
【0009】本発明により多量生産し得るタンパク質は
理論上特に限定されないが、多量体構造を有する多量体
糖タンパク質が好ましく、ヘテロ多量体構造を有するヘ
テロ多量体糖タンパク質が更に好ましい。血液中に分泌
される多量体糖タンパク質は回収が容易である点で特に
好ましい。また、本発明により多量生産される多量体糖
タンパク質は、一般には天然に微量しか存在しない、ホ
ルモンのような生理活性タンパク質であろう。好ましい
タンパク質性ホルモンには、例えば甲状腺刺激ホルモン
(TSH)、生殖腺刺激ホルモン(濾胞刺激ホルモン(FS
H)、黄体形成ホルモン(LH)およびこれらに対応する異種
生物由来のホルモン)、胎盤性生殖腺刺激ホルモン(CG)
が含まれ(これらのタンパク質はいずれもヘテロ多量体
糖タンパク質である)、より好ましいのは魚類の多量体
糖タンパク質性ホルモン、特に好ましいのは魚類のヘテ
ロ多量体糖タンパク質ホルモン、例えば魚類の生殖腺刺
激ホルモンGTH 、または甲状腺刺激ホルモンTSHであ
る。これらのタンパク質は天然では微量しか存在せず、
大量調製が困難である一方、血液中に分泌され得るとい
う点でも本発明によるタンパク質多量生産に適したもの
である。特にサケ科をはじめてとして幾つかの魚類にお
いて2種類の生殖腺刺激ホルモンGTH-IおよびGTH-IIが
知られており、それぞれ哺乳動物のFSHおよびLHに対応
することが知られており、これらの何れも本発明によっ
て多量に生産するために適している。本発明の好ましい
実施態様の一つにおいては、キンギョのGTH I、GTH II
(それぞれ、α1/Iβ、α1/IIβサブユニット構造をと
るヘテロ多量体糖タンパク質)が使用される。
【0010】本発明に使用できる遺伝子構築物は、多量
体糖タンパク質、より好ましくはヘテロ多量体糖タンパ
ク質をコードする遺伝子断片および魚類細胞中における
発現に必要な、プロモーター/エンハンサーのような制
御配列を含むものである。本発明に用いる遺伝子は、こ
の技術分野で知られたどの方法によっても単離すること
ができる。使用し得る制御配列は特に限定されないが、
魚類由来のものが好ましく、必要に応じて望ましい転写
活性を得るために更に改変することもできる。ある場合
には構成的かつ普遍的に発現するプロモーター/エンハ
ンサーが好ましく、別の場合には組織特異的あるいは生
育ステージ特異的に発現するプロモーター/エンハンサ
ーが好ましいであろう。これらは発現されるタンパク質
の特性、タンパク質の供給源とする組織等などに応じて
選択することができる。また、本発明に魚類より発現さ
れるタンパク質は望みの安定性、活性等を得るために、
必要に応じて遺伝子レベルで改変することもできる。必
要に応じて分泌のためのシグナルペプチドを付加または
削除してもよく、コドン使用頻度を魚類に最適のものに
改変することもできる。本発明の方法に使用する遺伝子
の単離、発現構築物の作製、改変等の技術は当業者によ
く知られたものであり、どのような既知の方法を用いて
行ってもよい(例えば、Sambrookら, 1989、Molecular C
loning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989)
Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring
Harbor, New York;D.N. Glover 編集. 1985、DNA clon
ing: APractical Approach、I巻、 II巻に記載があ
る。)。
【0011】ヘテロ多量体タンパク質の各サブユニット
発現のための「発現カセット」は異なる分子上にあって
も、同一分子上にあってもよいが、操作の簡便さ、遺伝
子導入効率、タンパク質サブユニットの多量体形成効率
等の点から同一分子上にあることが好ましい。ここで、
「発現カセット」とは、適切な発現制御配列および構造
遺伝子を含み、タンパク質がその機能を有する形態で発
現するため必要な一切の配列を適切な位置に有する核酸
断片をいう。この発現カセットを有する発現構築物は細
胞内で自律的に増殖するものであってもよいが、本発明
の目的にはゲノム中に組み込まれ安定に維持されること
が好ましい。本発明に利用できる遺伝子導入法には卵の
個体発生を阻害しない限りこの技術分野で知られたどん
な方法も含まれるが、マイクロインジェクション法が一
般に利用できる。この場合、卵は必要に応じてタンパク
質分解酵素で卵膜を消化、あるいは卵膜硬化抑制処理等
の適切な追加的処理をしてもよい。簡単に言うと、親魚
から卵及び精子を搾出し、受精後適切な条件下で発生を
進ませ、受精後一定時間後にマイクロピペットにより微
量の(数nl以下)DNA溶液を受精卵に注入する。次に、D
NA溶液を注入した卵を再び適切な環境下に置き発生を続
けさせる。このとき、DNAはマイクロピペット操作によ
り直接細胞核内に注入される必要はないが、発生過程に
おいて通常一定の確率で後にゲノム中に組み込まれる。
【0012】本発明の方法に使用できる魚類は特に限定
されないが、養殖可能な大型魚が好ましく、サケ科の魚
がより好ましく、ニジマスが最も好ましい。養殖可能な
大型魚、例えば、マダイ、ハマチ、ヒラメといった海産
魚はその卵が1mm以下と小さく、孵化後ワムシを与える
必要があり、配合飼料を食べ始める約1ヶ月程度の間、
小型甲殻類等のプランクトンを必要とし、またコイ科の
魚類もその卵が1.5mm程度と小さく、仔魚、稚魚期に生
物飼料と必要とする点でサケ科の魚に比較すれば不利で
はあるものの、これらも大型魚であるため得られるタン
パク質の量は充分に多く、必要に応じて本発明の方法に
使用することができる。一般にタンパク質の多量生産の
ためのバイオリアクターとして魚類を使用することには
前述したような利点があるが、中でもサケ科の魚類は比
較的大型であるため(ニジマスで体重約5kg程度、キン
グサーモンで約20kg程度)組織や血液の回収が容易であ
ることに加えて、その卵も大型(一般に約5mm程度)で
あるため遺伝子導入操作が容易であること、排卵数も多
いため一度に処理し得る卵の数が多いという利点があ
る。さらに、冷水性であるため胚の発生が遅く、処理に
適した期間が比較的長いため、遺伝子導入が容易で一度
に多数の卵に遺伝子導入が可能である(200〜300個/日
の処理が可能)。例えば、マイクロインジェクション法
が利用される場合に、受精から2〜5時間後にDNA溶液
の注入を行うが、これはメダカやゼブラフィッシュにお
いてマイクロインジェクションに適した期間が受精後30
分程度であることに比較して非常に長い。
【0013】また、タンパク質の分解は一般に酵素反応
によるものであり、分解速度が温度に強く依存するた
め、冷水性魚類であることはそこで産生されたタンパク
質の分解速度が十分に遅く、組織内あるいは血液中に多
量に蓄積し易いことも意味する。さらに、配合飼料によ
って飼育が可能である点、すなわち、飼育に生き餌が不
要であることも優れた点である。特にニジマスはサケ科
魚類の中でも最も飼育技術が進んでおり、ライフサイク
ルを通じて海水環境を必要とすることがなく、また生育
温度が4℃〜25℃、最適温度が10℃と特に低く本発明の
方法に最も適している。さらには、産卵後も死滅せず継
続して卵を得ることができ、卵・精子の採取にホルモン
処理を必要とせず、人工授精後の生存率が極めて高いの
も有利である。
【0014】本発明により、目的とするタンパク質を多
量に発現する魚類胚、仔魚、稚魚、成魚の個体全体、組
織および/または血液から目的とするタンパク質を抽出
することができる。初期胚から抽出する場合は、比較的
短期間に目的タンパク質を多量に得ることができる。例
えば、ニジマスの場合、遺伝子導入後40〜60℃x日で十
分な量が回収でき、最も好ましくは10℃にて4〜6日後
の初期胚が使用される。成魚の場合は一般には血液を採
取し、その血液から目的タンパク質が抽出される。この
場合は比較的長期間にわたって数回、あるいはそれ以上
同一個体から季節を問わず目的タンパク質を回収するこ
とができる。タンパク質の抽出および精製は必要により
当業者によく知られた方法、例えば硫酸アンモニウムに
よる分画、ゲル濾過、抗体を用いたアフィイティークロ
マトグラフィー等、種々の方法によって行うことができ
る。以下の実施例の記載および添付の図面により本発明
を更に具体的に説明するが、これらは本発明のよりよい
理解のために与えられるものであり、本発明の範囲がこ
れらに限定されないのは言うまでもない。
【0015】
【実施例】1.発現構築物の作製 1−1.プラスミドpAG-α1、pAG-Iβ、pAG-IIβの構
築 それぞれGtHα1、Iβ、IIβをコードする配列を有する
3種類のプラスミドpAG-α1、pAG-Iβ、pAG-IIβを以
下のようにして構築した。各サブユニットをコードする
領域をそれぞれ配列番号1、2および3に示した。キン
ギョGtHの各サブユニット(α1、Iβ、IIβ)をコード
するDNA断片はpBluescriptIISK+にクローン化された各c
DNA(α1についてはKobayashiら(1997)、Gen. Comp. E
ndocrinol., 105, 372-378; βについてはYoshiuraら(1
997)、Gen.Comp. Endocrinol. 105, 378-389)をPCR法
を用いて増幅することによって得た。各遺伝子を増幅す
るために使用したプライマーは以下の通りである:
【0016】 α1増幅プライマー: 5'-TGGTCGACATCTCACAGGAAGTCAAGAACAAAGCCAACAT-3' (配列番号4) 5'-TCTGATCTAGAGGTACCGGATCCTT-3' (配列番号5); Iβ増幅プライマー: 5'-TGGTCGACGCCTCTATTAGATTAGCTGC-3' (配列番号6) 5'-CGGTCGACTTGCAGTATGTTATATTTAT-3' (配列番号7); IIβ増幅プライマー: 5'-TGGTCGACGGCTGAGCAATGGGGACACC-3' (配列番号8) 5'-CGGTCGACTAGTGTAGAAAATTTATTTA-3' (配列番号9) 後の操作を容易とするため、各プライマーは増幅断片の
両端にSalI認識部位が生成されるように設計した。
【0017】PCR反応は、GTHα、Iβ、IIβのそれぞれ
が組み込まれた前述のpBluescriptIISK+を鋳型DNAとし
て、全量50μlとして以下の条件で行った。 鋳型DNA 0.5ng 10xKOD PCRバッファー 5μl プライマ− 各1μM dNTP 各200μM KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO) 2.5ユニット 反応サイクル:98℃15秒間、アニーリング温度にて2秒
間、72℃30秒間を25サイクル(アニーリング温度は、α
1については63℃、Iβについては60℃、IIβについて
は60℃)得られたPCR増幅産物を制限酵素SalIで消化
し、アガロースゲル電気泳動により目的のDNA断片を精
製単離した。
【0018】次に、プラスミドpOBA(Takagiら(1994)、M
ol. Mar. Biol. Biotechnol. 3, 192-199)から、プロモ
ーター/エンハンサーを含む3800bpの断片をPCR法によ
って増幅することによってメダカβアクチン遺伝子の発
現制御配列断片を得た。使用したプライマーおよびPCR
反応条件は以下の通りである;プライマー: 5'-CCAGGCATGCTATCGATAAGCTTGATATCG-3' (配列番号10) 5'-GGAATTCGGCTAAACTGGAAAAGAACA-3' (配列番号11) これらのプライマーは増幅された断片が両端に制限酵素
EcoRIの認識配列を有するように設計されている。ま
た、PCR反応は全量50μlとして以下の条件で行った。 pOAB DNA 0.5ng 10xEx PCRバッファー 5 μl プライマー 各1μM dNTP 各200μM Ex Taqポリメラーゼ(TAKARA) 1.25ユニット 反応サイクル:93℃45秒間、60℃60秒間、72℃300秒
間、30サイクル
【0019】このようにして増幅された断片をゲル電気
泳動により単離精製し、EcoRIで消化し、更にゲル電気
泳動により精製し不要な切断断片を除いて単離精製し
た。ウシ成長ホルモン遺伝子のポリアデニレーションシ
グナル(BGHpolyA;280bp)はRc/RSVベクター(Invitrogen)
から制限酵素XhoIによって切り出し、ゲル電気泳動によ
って単離精製した。次に、メダカβアクチンのプロモー
ター/エンハンサー領域断片、GtH各サブユニットをコ
ードするcDNA、BGHpolyAシグナル断片をpBluescriptIIS
K+のEcoRI制限部位、SalI制限部位、XhoI制限部位へそ
れぞれライゲーションし、3種類のプラスミドpAG-α
1、pAG-Iβ、pAG-IIβを得た。
【0020】<配列表フリーテキスト> 配列番号4および5:GTHα1遺伝子増幅用プライマー 配列番号6および7:GTHIβ遺伝子増幅用プライマー 配列番号8および9:GTHIIβ遺伝子増幅用プライマー 配列番号10および11:βアクチンプロモーター/エンハ
ンサー領域増幅用プライマー
【0021】1−2.GtH発現プラスミドpAGα1/Iβお
よびpAGα1/IIβの構築pAG-α1を鋳型として以下のプラ
イマーを用いてメダカβアクチンプロモーター/エンハ
ンサー領域断片−GTHα1cDNA−BGHpolyA配列を含む約4,
500bpの断片をPCR法によって増幅した。プライマー: pAGfd:5'-ATAGCGGCCGCGGCTGCAGGAATTCAATTACAGTGGT-3' (配列番号12) pAGrv:5'-ATAGCGGCCGCGACTCACTATAGGGCCAATTGGGTA-3' (配列番号13 ) これらのプライマーによって、増幅された断片は両端に
制限酵素NotIの認識配列を有することとなる。PCR反応
は全量25μlとして以下の条件で行った: pAG-α1 1 ng 10xLA PCRバッファー 2.5μl プライマー 各1μM dNTP 各 200μM LA Taqポリメラーゼ(TAKARA) 0.5ユニット 反応サイクル:94℃20秒間、65℃30秒間、72℃30秒間、
30サイクル
【0022】反応後、ゲル電気泳動によって目的とする
DNA断片を単離精製し、NotIで消化して末端を接着末端
化した。これを予めNotI消化しておいたpAG-Iβおよびp
AG-IIβとライゲーションし、それぞれプeラスミドpAG
α1/IβおよびpAGα1/IIβを得た(図1)。これらのプ
ラスミドDNAを大量調製し、10mM Tris-HCl(pH8.0)、0.1
mM EDTAに溶解し、66μg/mlの濃度に調製して、以後の
マイクロインジェクションに使用した。 <配列表フリーテキスト>配列番号12および13:GTHα
1発現カセット増幅用プライマー
【0023】2.ニジマスへ卵への外来遺伝子の導入 実験環境下で飼育した成熟した3才または4才のニジマ
ス(Oncorhynchus mykiss)から卵を採取し、1才のオ
スのニジマスから搾出した精子を用いてこの卵を媒精し
た後、吉崎ら(1989)の方法(Nippon Suisan Gakkaishi,
55、369 (1989))により卵膜硬化抑制のため1mM還元型
グルタチオン溶液(pH8.0)中で10℃にて培養した。マ
イクロインジェクションは、受精後2時間から5時間の
卵を使用し、先端外径5μmのガラス製マイクロピペット
を備えたマイクロマニピュレーター(成茂科学)を用い
て、受精卵の胚盤中央部にDNA溶液を注入することによ
り行った。ニジマス受精卵を等張液(NaCl 9.04g/l、KC
l 0.24g/l、CaCl2・1H2O 0.24g/l)中に微針で固定し、
DNA溶液2nlをマイクロピペットによって受精卵の胚盤
中央部へ注入した(Yoshizakiら(1991)、Nippon Suisan
Gakkaishi, 57, 819-824)。DNA溶液を注入した卵は10℃
の水中に戻し、発生を進ませた。これらの作業、およ
び、遺伝子を導入した受精卵に関する以後の操作は特に
断らない限り、ニジマス飼育用水温である10℃に室温お
よび水温を維持して行った。
【0024】3.ニジマス初期胚における導入遺伝子発
現の検出 マイクロインジェクションした発現構築物のニジマス初
期胚における発現はRT-PCRを行うことによって解析し
た。pAG-α1/IβまたはpAG-α1/IIβを導入後4日経過
したニジマス胚(嚢胚期)または遺伝子導入後20日を経
過したニジマス胚(発眼期胚)から全RNAを抽出しRT-PC
Rを行った。胚盤を剥がした4日胚または20日胚それぞ
れ10個ずつをプールし、pAG-α1/Iβ導入区については
3サンプル、pAG-α1/IIβ導入区については2サンプル
からTotal RNA Extraction Kit(Pharmacia)を用いて全R
NAを抽出した。得られたRNAの2μgから、T-Primed Fir
st-strand cDNA synthesis Kit(Pharmacia)を用い、製
造業者の推奨するプロトコルに従って1本鎖cDNAを合成
した。
【0025】次に、キンギョGTHの各サブユニットに特
異的なプライマーを使用して、上記で得られた1本鎖cD
NAをPCRによって増幅した。PCR反応による増幅産物を定
量するため、反応サイクルは増幅DNA量がプラトーに達
することのないように25サイクル、28サイクル、31サイ
クルまたは40サイクルを必要に応じて採用した。使用し
たプライマーは以下の通りである: α1増幅プライマー: 5'-GACAAGATATGCTGGAGCAAGTAT-3' (配列番号14) 3' RACEアダプタープライマー(dT領域を除く) 5'-GTCTGTGTGGTTCACTAGTC-3' (配列番号15) Iβ増幅プライマー: 5'-ATGTCAGGATCGGAATGCAGGTCCA-3' (配列番号16) 5'-TAATGTGCATTGCAGCCGAGTGTCT-3' (配列番号17) IIβ増幅プライマー: 5'-TGCTCATATGTCTTATCTTCCACCCTGTGAGCCAG-3' (配列番号18) 5'-TAGTGGATCCCTAGTATACAAGGAAATCCTCTCTC-3' (配列番号19) PCR反応は最終総量10μlとして以下の条件で行った: cDNA 1ng GTHサブユニット特異的プライマー 各1μM dNTPs 各200μM Tris-HCl 10mM KCl 50mM MgCl2 1.5mM ゼラチン 0.001% AmpliTaq Gold(Perkin Elmer) 0.25ユニット 反応サイクル:94℃20秒間、アニーリング温度にて30秒
間、72℃にて30秒間。アニーリング温度はα1について
は56℃、Iβについては62℃、IIβについては56℃とし
た。また、サイクル数は4日胚については、25サイクル
または28サイクルまたは31サイクルとし、20日胚につい
ては40サイクルとした。この反応により、α1由来の310
bp、Iβ由来の340bp、IIβ由来の350bpのDNA断片が増幅
される。
【0026】遺伝子発現量の内部標準とするため、β-
アクチン特異的プライマー(Katagiriら(1997)、Fisheri
es Science,63, 73-76)を用いて上で調製したcDNAサン
プルをPCRによって増幅した。反応条件は前述のGTHサブ
ユニットcDNAに準じた条件で行ったが、温度サイクルを
94℃20秒間−57℃30秒間―72℃30秒間とし、サイクル数
を増幅DNA量がプラトーに達しないよう25サイクルまた
は28サイクルとした。対照として、キンギョ(Carassius
auratus)下垂体からも全RNAを抽出し上記と同様にRT-P
CRを行った。キンギョの下垂体の全RNAは、メス2尾
(体重(BW)27.5±3.6g(平均±SEM)、生殖腺体指数(GSI)
4.5〜4.6)およびオス1尾(BW 30.4g、GSI 2.3)から各
々下垂体を摘出し、ニジマス初期胚の場合と同様な方法
で全RNAを抽出し、1本鎖cDNA合成を行った。この実験に
使用したキンギョはそのGSIより成熟途上であると判断
されたものである。
【0027】これらの解析により、調べた全ての4日胚
サンプルにおいて導入した遺伝子由来のmRNAが合成され
ていることが明らかになった(表1および2、図2およ
び3)。また、βアクチン発現量を内部標準として用い
たRT-PCRにより、遺伝子導入区の多くのサンプルで外来
遺伝子の高い発現が認められた(表1および2)。特に
Iβ鎖のmRNA合成量は、キンギョ下垂体よりもα1/Iβ導
入ニジマスの方が最大で数十倍多いことが分かった(表
1)。表1の結果は、βアクチンmRNA合成量を内部標準
として用い、pAG-α1/Iβ導入区のサンプル番号4につ
いてのmRNA合成量を1.00としたときの、GTH各サブユニ
ットのmRNA合成量の比率を表したものである。なお、サ
ンプルの番号は図2のゲル電気泳動のレーン番号と対応
している。また表2の結果は、βアクチンmRNA合成量を
内部標準として用い、pAG-α1/IIβ導入区のサンプル番
号4についてのmRNA合成量を1.00としたときの、GTH各
サブユニットのmRNA合成量の比率を表したものである。
なお、サンプルの番号は図3のゲル電気泳動のレーン番
号と対応している。20日胚においても導入した各遺伝子
の発現が見られた(図4、5)。 <配列表フリーテキスト> 配列番号14:GTHα1発現検出用RT-PCRプライマー 配列番号15: GTHα1発現検出用RT-PCRプライマー;3'
-RACEアダプタープライマー配列(dT領域以外) 配列番号16および17:GTH Iβ発現検出用RT-PCRプライ
マー 配列番号18および19:GTH IIβ発現検出用RT-PCRプライ
マー
【0028】
【表1】表1.RT-PCR法によるキンギョGTHサブユニッ
トmRNA合成量の比較(1)
【0029】
【表2】表2.RT-PCR法によるキンギョGTHサブユニッ
トmRNA合成量の比較(2)
【0030】4.マイクロインジェクションしたニジマ
ス卵の生残率 外来遺伝子由来のタンパク質が過剰発現している個体に
おいて胚体の生長や発生過程を調べるために、マイクロ
インジェクションによってキンギョGTH遺伝子を導入し
た卵の生残率および稚魚の形態を観察した。発眼率、孵
化率、浮上率はα1/Iβ導入区についてはそれぞれ、81.
5%、67.2%、46.2%、α1/βII導入区についてはそれ
ぞれ、66.8%、59.7%、36.1%であった(表3)。孵化
はするが正常な形態でないため浮上しないという個体も
存したが、浮上した稚魚のほぼ全ては外観や挙動から判
断して正常に生長した。
【0031】
【表3】表3.マイクロインジェクションしたニジマス
卵の初期生存率(%)
【0032】5.ニジマス稚魚ゲノム中の導入遺伝子の
解析 受精後70日〜90日経過した(孵化後50日〜70日)、pAG-
α1/Iβ導入ニジマスおよびpAG-α1/IIβ導入ニジマス
各11尾ずつから右側筋肉(約30mg)を採取し、これから
ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出はGenomic Prep
Cells and Tissue DNA Isolation Kit(Pharmacia)を用
い製造業者の推奨するプロトコルに従って行った。抽出
したニジマスゲノムDNA 200ngを鋳型としてPCRによって
導入遺伝子の増幅を行うことにより、ゲノム中の導入遺
伝子の存在を確認した。PCR反応に使用したプライマ
ー、PCR反応混合液の組成、反応プロトコルは20日胚に
ついて行ったものと同一とした。また、必要に応じ、ゲ
ノムDNAにpAG-α1/IβまたはpAG-α1/IIβ DNAを混合
した陽性対照区(図6、7中P1〜P3:それぞれ、10細胞
に1コピー、100細胞に1コピー、1000細胞に1コピーの
割合で外来遺伝子が組み込まれた状態に対応する。)を
同じ条件でPCR増幅した。その結果、α1/Iβ導入区、α
1/IIβ導入区それぞれ11個体のゲノムDNAから導入した
外来遺伝子由来の断片が増幅され(α1に関して310bp;
Iβに関して340bp;IIβに関して350bp)、キンギョGTH
遺伝子がニジマスゲノム中に組み込まれて存在すること
が確認された(図6、7)。
【0033】6.トランスジェニックニジマス初期胚に
おけるキンギョGTHサブユニット組換え体の解析 pAG-α1/IIを導入した後4日が経過したニジマス胚(嚢
胚期)の胚盤15個をプールしてサンプルバッファー(2
%SDS、5%β-メルカプトエタノール、10%グリセロー
ル、50mM Tris-HCl、pH6.8)中でホモジナイズした。
対照区としてキンギョ下垂体も同様にもホモジナイズ
し、サンプルバッファーに溶解した。ホモジナイズした
トランスジェニックニジマス初期胚約1.5個分、および
同様にホモジナイズしたキンギョ下垂体約1/400個分の
サンプルを99℃にて5分間処理した後15%ポリアクリル
アミドによるSDS-PAGEによって解析した。泳動後、ポリ
アクリルアミドゲル中のタンパク質をミニバッファート
ランスファー装置(BIOCRAFT)を用いてHybond ECLニトロ
セルロースメンブレンフィルター(Amersham Pharmacia)
へ転写した。メンブレンフィルターを5%スキムミルク
でブロッキングした後、抗キンギョGTHα1ペプチド抗体
または抗ハクレンGTH抗体とともに室温にて1時間〜一晩
インキュベーションした。次に、このメンブレンフィル
ターをPBST(80mM Na2HPO4、20mM NaH2PO4、100mM NaC
l、0.1%Tween20)で洗浄した後、ホースラディッシュ
ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗-ウサギIgG抗体(Amersham
Pharmacia)とともに室温にインキュベーションした。
【0034】次に、メンブレン上のタンパク質に結合し
た抗体をECLウェスタンブロッティング検出試薬(Amersh
am Pharmacia)を用いて製造業者の推奨する方法に従っ
て検出することにより、メンブレンフィルター上のGTH
各サブユニットタンパク質の存在を確認した。そのウエ
スタンブロッティングの結果を図8に示した。図8中、
レーンPはキンギョ下垂体1/400個分のタンパク質、レ
ーン1〜3はそれぞれ異なるpAG-α1/II導入ニジマス初
期胚1.5個分のタンパク質に対応する。またNは陰性対
照を表す。黒の矢印は、それぞれキンギョGTHIIβ、GTH
α1サブユニットタンパク質の位置を示す。
【0035】
【発明の効果】本発明の方法により、魚類をバイオリア
クターとして用いることにより多量体構造を有する有用
なタンパク質、特に魚類養殖分野において有用なタンパ
ク質、例えば魚類生殖腺刺激ホルモンなどを安価に、多
量かつ簡便に調製することができる。更に、ニジマスを
用いた場合は、より簡便かつ安価に有用な多量体糖タン
パク質を多量に調製することができる。また、本発明に
よりトランスジェニック種苗の多量生産が可能となり、
有用タンパク質、中でも魚類生殖腺刺激ホルモンの多量
生産が容易となる。
【0036】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Ajinomoto Co. Inc. <120> Production of multi subunit glycoproteins using a transgenic fish as a bio-reactor <130> Y1G0526 <140> <141> <160> 19 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 356 <212> DNA <213> Carassius auratus <400> 1 atgttttgga caagatatgc tggagcaagt atattattgc tactgatgct tattcatctt 60 ggacaactgt atccaagaaa tgatatgaac tttggatgtg aggagtgcaa actcaaggag 120 aacaacattt tctcaaaacc tggagctcct gtctatcagt gtatgggatg ctgtttttct 180 agggcttacc ccacacccct gaggtccaag aaaaccatgc ttgttccaaa aaatatcaca 240 tcagaagcta catgctgtgt agccaaagaa gttaaacggg tgcttgtcaa tgatgtaaga 300 ctagtgaacc acacagactg ccactgcagc acctgctact atcataagtc ttaaaa 356 <210> 2 <211> 586 <212> DNA <213> Carassius auratus <400> 2 gcctctatta gattagctgc acactttcgc attgattccc agatgaggat gcgcttcgtt 60 gttatggtga ttctgttgcc ggcgctaatg atgtcaggat cggaatgcag gtccagctgt 120 cggctcacca atatctccat caccgtggaa agtgaggaat gtggcagctg catcacaatt 180 gacaccactg cctgtgccgg gctttgcaaa acacaggaaa gtgtttaccg tagcccactg 240 atgctgtctt accagaacac ctgtaacttc agagaatgga cgtacgagac ctatgagttc 300 aaaggctgcc ctgccagggc tgactccatt ttcacttacc cagtggccct cagctgtgaa 360 tgcagcaagt gtaactctga catcacagac tgtggagtcc tcagccagca gacactcggc 420 tgcaatgcac attagacaag gaaactaaac accccatctg caactttgaa agccttttgt 480 acagttctga atatttcata atactatgta aattgcataa tggaatgaaa caaaatatat 540 aacattttaa tattatttgc aagcatcaat aaatataaca tactgc 586 <210> 3 <211> 535 <212> DNA <213> Carassius auratus <400> 3 acttttaaca gcctgctgag caatggggac acctgtcaag attttagttg tcctattctc 60 tgtaattgtc ctactagctg ttgctcaaag ctcttatctt ccaccctgtg agccagttaa 120 tgagactgtc gctgtggaaa aggagggctg tccaaaatgt ctggtgttac agaccaccat 180 ctgcagcggt cactgcctga caaaggagcc tgtatacaag agcccatttt ccactgtcta 240 ccaacatgtg tgcacttacc gggacgtgcg ctacgagact gtccgcttgc cagactgtcc 300 tccaggggtg gacccccaca tcacctaccc tgtggctctc agctgcgact gcagcctgtg 360 cactatggac acatctgact gtacgattga aagtctgcag cctgactttt gcatgtctca 420 gagagaggat ttccttgtat actagcccca gactactatt ctgtttagca catcaaacca 480 aagtgtacac aactaataaa ctctaactct aaatcaataa atgttgtgta aatgt 535 <210> 4 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for apmplification of GTH alpha-1 gene <400> 4 tggtcgacat ctcacaggaa gtcaagaaca aagccaacat 40 <210> 5 <211> 33 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GHT alpha-1 gene <400> 5 tctgatctag aggtaccgga tcctt 25 <210> 6 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GTH I-beta gene <400> 6 tggtcgacgc ctctattaga ttagctgc 28 <210> 7 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GTH I-beta gene <400> 7 cggtcgactt gcagtatgtt atatttat 28 <210> 8 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GHT II-beta gene <400> 8 tggtcgacgg ctgagcaatg gggacacc 28 <210> 9 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GHT II-beta gene <400> 9 cggtcgacta gtgtagaaaa tttattta 28 <210> 10 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for apmplification of beta-actin promoter/enhancer reagion <400> 10 ccaggcatgc tatcgataag cttgatatcg 30 <210> 11 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for apmplification of beta-actin promoter/enhancer reagion <400> 11 ggaattcggc taaactggaa aagaaca 27 <210> 12 <211> 37 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for apmlification of GTH alpha1 expression cassette <400> 12 atagcggccg cggctgcagg aattcaatta cagtggt 37 <210> 13 <211> 36 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer for amplification of GTH alpha-1 expression cassette <400> 13 atagcggccg cgactcacta tagggccaat tgggta 36 <210> 14 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:RT-PCR primer for detection of GTH alpha-1 expression <400> 14 gacaagatat gctggagcaa gtat 24 <210> 15 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: RT-PCR primer for detection of GTH alpha-1 expression;3' RACE adapter primer seq uence <400> 15 gtctgtgtgg ttcactagtc 20 <210> 16 <211> 25 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:RT-PCR primer for detection of GTH I beta expression <400> 16 atgtcaggat cggaatgcag gtcca 25 <210> 17 <211> 25 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:RT-PCR primer for detection of GTH I-beta expression <400> 17 taatgtgcat tgcagccgag tgtct 25 <210> 18 <211> 35 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:RT-PCR primer for detection of GTH-II beta expression <400> 18 tgctcatatg tcttatcttc caccctgtga gccag 35 <210> 19 <211> 35 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:RT-PCR primer for detection of GTH-II beta expression <400> 19 tagtggatcc ctagtataca aggaaatcct ctctc 35
【図面の簡単な説明】
【図1】 キンギョGTH遺伝子発現構築物の構造を示し
たものである。α1、Iβ、IIβはそれぞれキンギョGTH
のα1、Iβ、IIβサブユニットを表し、Aはウシ成長ホ
ルモンポリアデニル化シグナル配列を示す。円形の線は
大腸菌プラスミドベクターに由来する部分である。acti
nはメダカβアクチン遺伝子のプロモーター/エンハン
サー配列を示す。
【図2】 定量的RT-PCR法による外来遺伝子発現解析お
よびmRNA合成量の比較を示したものである。レーン1〜
3:キンギョ下垂体サンプル、レーン4〜6:pAGα1/I
β導入サンプル、N:未処理対照
【図3】 定量的RT-PCR法による外来遺伝子発現解析お
よびmRNA合成量の比較を示したものである。レーン1〜
3:キンギョ下垂体サンプル、レーン4〜6:pAGα1/I
Iβ導入サンプル、N:遺伝子未導入対照
【図4】 発眼期胚を用いたRT-PCR法による外来遺伝子
発現解析の結果を示したものである。レーン1〜4:pA
Gα1/Iβ導入サンプル、N:遺伝子未導入対照、P:陽
性対照(対照区にpAG-α1/Iβを3pg混入)
【図5】 発眼期胚を用いたRT-PCR法による外来遺伝子
発現解析の結果を示したものである。レーン1〜4:pA
Gα1/IIβ導入サンプル、N:遺伝子未導入対照、P:
陽性対照(対照区にpAG-α1/IIβを3pg混入)
【図6】 ゲノムDNAを用いたPCR法による導入外来遺伝
子の検出結果を示したものである。レーン1〜11:pAG-
α1/Iβを導入した個体、N:遺伝子未導入対照、P1
3:ゲノムDNAにpAG-α1/Iβ DNAを混合した陽性対照
【図7】 ゲノムDNAを用いたPCR法による導入外来遺伝
子の検出結果を示したものである。レーン1〜11:pAG-
α1/IIβを導入した個体、N:遺伝子未導入対照、P1
〜P3:ゲノムDNAにpAG-α1/IIβ DNAを混合した陽性対
【図8】 ウェスタンブロティングによる組換えGTHタ
ンパク質の検出結果を示したものである。レーンP:キ
ンギョ下垂体1/400個分のタンパク質,レーン1〜3:p
AG-α1/IIβ導入ニジマス初期胚1.5個分のタンパク質、
N:遺伝子未導入対照
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA10 BA01 CA04 DA02 EA04 FA02 FA06 GA11 GA18 HA12 4B064 AG15 CA10 CA19 CC24 DA11 4H045 AA20 CA52 DA30 EA05 FA74

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多量体糖タンパク質をコードする遺伝子
    を魚類に導入し、前記遺伝子を発現させ、前記遺伝子を
    導入した魚類の胚、仔魚、稚魚または成魚の全個体また
    は組織および/または血液中から前記多量体糖タンパク
    質を回収することを特徴とする、多量体糖タンパク質を
    生産する方法。
  2. 【請求項2】 多量体糖タンパク質が、タンパク質ホル
    モンである、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 多量体糖タンパク質がヘテロ多量体糖タ
    ンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 多量体糖タンパク質が魚類由来のもので
    ある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 多量体糖タンパク質が下垂体生殖腺刺激
    ホルモン(GTH)、下垂体甲状腺刺激ホルモン(TSH)、胎盤
    性生殖腺刺激ホルモン(CG)から選ばれる、請求項3に記
    載の方法。
  6. 【請求項6】多量体糖タンパク質が魚類のGTHまたはTSH
    である、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】魚類がサケ科の魚類である、請求項1〜6
    のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】サケ科魚類がニジマスである、請求項7に
    記載の方法。
  9. 【請求項9】多量体糖タンパク質を多量に発現するサケ
    科魚類の胚、仔魚、稚魚または成魚。
  10. 【請求項10】多量体糖タンパク質が魚類のタンパク質
    ホルモンであり、魚類がニジマスである、請求項9に記
    載の胚、仔魚、稚魚または成魚。
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