JP2001084669A - 磁気テープの搬送安定化方法およびそのための装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気テープを高速で搬送してもスリップが発生
せず、これに起因する磁気テープの損傷や巻き姿の乱れ
を防止可能な、磁気テープの搬送安定化方法およびその
ための装置を提供すること。 【解決手段】磁気テープに同伴されて移動する空気層
（同伴空気層）をテープから剥離ないしは除去する手段
を設けて、搬送に際し、テープとテープ支持体との間に
生ずる空気層を薄層化するようにした磁気テープの搬送
安定化装置、および、この機能を用いる磁気テープの搬
送安定化方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、情報記録／再生に
供する磁気テープの技術分野に属し、詳しくは、磁気テ
ープの製造工程等において、高速で磁気テープを搬送さ
せても、スリップが発生せず、これに起因する磁気テー
プの損傷や巻き姿の乱れを防止できる磁気テープの搬送
安定化方法、およびそのための装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】情報記録／再生に供する磁気テープは、
基本的に、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）等の
フィルムであるベースと、このベースの一方の面に形成
される磁性体層と、搬送安定性や強度の向上等を目的と
して、上記ベースの磁性体層とは逆の面に形成されるバ
ック層等から構成される。

【０００３】このような磁気テープの製造工程において
は、磁気テープ（以下、単にテープともいう）は、長手
方向に搬送されつつ、スリッタによる裁断やブレード刃
による表面の清掃等の各種の処理を施されて、ハブ等に
巻き取られてパンケーキやカセットとされ、次工程や納
入先に送られる。また、近年では、生産性を向上させる
ために、各種の工程（ブレード機やワインダ等の製造装
置）におけるテープの搬送速度が高速化する傾向にあ
る。

【０００４】テープの搬送は、一般的に、テープをキャ
プスタンローラに巻き掛け、キャプスタンローラを回転
することによって行われる。ところが、テープの搬送速
度を速くすると、ブレード機等の製造装置において、テ
ープが空気を巻き込んで、キャプスタンローラ等でテー
プが浮上し、これによりテープがスリップして、正常な
搬送ができなくなってしまう場合がある。

【０００５】その結果、テープがキャプスタンローラ，
ガイドローラ，ブレード刃等に衝突あるいは不適正に接
触し、テープやテープエッジの折れ，磁性体層等の磨耗
や剥離等のテープの損傷が発生し、得られたテープが、
製品として不適正なものとなってしまう。また、テープ
を製造する装置には、テープの長さを測定するローラ
（検尺ローラ）が必要に応じて装着されるが、この検尺
ローラでテープがスリップすると、テープの長さ測定に
誤差が生じ、生産管理も適正に行えなくなるという問題
点もある。そのため、要求される生産効率に良好に対応
するように、テープの製造におけるテープ搬送速度を高
速化することが困難になっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述のような、テープ
の高速搬送適性を向上させるためには、バック層の処方
を調整する等の方法によって改善することもできるが、
処方上の各種の問題によって、改善には限界がある。具
体的には、バック層の処方を変更すると、磁気テープと
しての特性が変動し、目的とする性能が得られなくなっ
てしまう可能性が有る。すなわち、性能の低下を防止し
つつ、バック層の処方を調整してテープの高速搬送適性
を向上させることは、非常に手間のかかる作業であり、
開発の効率や磁気テープのコスト等の点で不利である。

【０００７】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、磁気テープを高速で
搬送してもスリップが発生せず、これに起因する磁気テ
ープの損傷や巻き姿の乱れを防止可能な磁気テープの搬
送安定化方法、およびそのための装置を提供することに
ある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明に係る第１の磁気テープの搬送安定化方法
は、磁気テープを長手方向に搬送する際に、少なくと
も、前記磁気テープの支持体の搬送方向上流部分を負圧
にすることを特徴とする。

【０００９】また、本発明に係る第２の磁気テープの搬
送安定化方法は、磁気テープを長手方向に搬送する際
に、前記磁気テープの支持体を磁性体で構成し、磁力に
より磁気テープを前記支持体に密着させることを特徴と
する。

【００１０】また、本発明に係る第３の磁気テープの搬
送安定化方法は、磁気テープの支持体の表面に磁気テー
プに同伴される空気層の逃げ溝を設け、磁気テープに同
伴される空気層を前記溝により薄層化することを特徴と
する。

【００１１】また、本発明に係る第４の磁気テープの搬
送安定化方法は、磁気テープの支持体を、その上流側が
エッジを有する形状とし、前記磁気テープに同伴される
空気層を前記エッジにより除去することを特徴とする。

【００１２】また、本発明に係る磁気テープの搬送安定
化方法は、以下に示すように、この方法を実現するため
の装置として具体化することができる。

【００１３】すなわち、本発明に係る第１の磁気テープ
の搬送安定化装置は、磁気テープを長手方向に搬送する
ための搬送安定化装置であって、少なくとも、前記磁気
テープの支持体の搬送方向上流部分を負圧にする手段を
備えたことを特徴とする。

【００１４】本発明に係る第２の磁気テープの搬送安定
化装置は、磁気テープを長手方向に搬送するための搬送
安定化装置であって、前記磁気テープの支持体を磁性体
で構成したことを特徴とする。

【００１５】本発明に係る第３の磁気テープの搬送安定
化装置は、磁気テープを長手方向に搬送するための搬送
安定化装置であって、前記磁気テープの支持体の表面に
磁気テープに同伴される空気層の逃げ溝を設けたことを
特徴とする。

【００１６】また、本発明に係る第４の磁気テープの搬
送安定化装置は、磁気テープを長手方向に搬送するため
の搬送安定化装置であって、前記磁気テープの支持体
を、その上流側がエッジを有する形状としたことを特徴
とする。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気テープの
搬送安定化方法およびそのための装置について、添付の
図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。

【００１８】まず、本発明に係る搬送安定化方法を適用
可能な磁気テープは、ＰＥＴやアラミド樹脂等からなる
ベースの一面に磁性体層を有し、他方の面にバック層を
有し、あるいは、さらにオーバーコート層（保護層）や
下塗り層を有してなる、通常の層構成を有する磁気テー
プであればよい。

【００１９】上述のような、本発明に係る搬送安定化方
法を適用した場合には、ブレード機やワインダその他の
テープの製造装置においてテープを高速で搬送した場合
でも、テープによる空気の巻き込みを低減することがで
きる。

【００２０】また、テープを高速搬送した場合にも、キ
ャプスタンローラ等でテープが浮き上がってスリップす
ることがなく、これに起因するテープの損傷や搬送長の
誤差がないので、高速で正確なテープ搬送を行って、適
正な生産管理の下、適正品質の磁気テープを、安定して
高効率に製造できる。

【００２１】図１に、本発明の第１の実施例に係るテー
プの搬送安定化方法を適用したテープの処理装置の概念
図を示す。図示例のテープの処理装置１０は、テープの
長手方向に適宜の処理を施すもので、処理部１２と、こ
の処理部１２にテープＴを供給するリワインダ１４と、
処理の終了したテープＴを巻き取るワインダ１６と、テ
ープＴを処理部１２に対して所定の位置に位置決めする
ためのテープ支持体１８ａ，１８ｂ、および、このテー
プ支持体１８ａ，１８ｂの近傍に配置された吸引手段２
０ａ，２０ｂとを有する。なお、２２はガイドローラ、
２４はキャプスタンローラである。

【００２２】このような処理装置１０においては、テー
プ支持体１８ａ，１８ｂによってテープＴを所定の処理
位置に位置付けしつつ長手方向（図中矢印ｘ方向）に搬
送しながら、処理部１２により、テープＴに所定の処理
が施される。なお、テープＴは、ここではその磁性体層
を図中で上方に向けて搬送されている。

【００２３】テープ支持体１８ａ，１８ｂは、搬送され
るテープＴの裏面（バック層側）に当接して、テープＴ
を所定の位置（特に、図中での高さ方向）に位置付ける
ものである。また、このテープ支持体１８ａ，１８ｂの
近傍に配置されている吸引手段２０ａ，２０ｂは、周囲
の圧力より低い圧力で、図に示されているように、テー
プ支持体１８ａ，１８ｂに対して、それぞれそのテープ
搬送方向上流側直前に配置されている。

【００２４】このように配置された吸引手段２０ａ，２
０ｂは、図示されていない吸引ポンプに接続されてお
り、周囲の圧力より低い圧力を発生するため、テープＴ
をテープ支持体１８ａ，１８ｂに押圧する作用を示す。
これにより、テープＴが、テープ支持体１８ａ，１８ｂ
から浮上して、正常な搬送ができなくなるというような
異常事態は発生しなくなる。

【００２５】図２に、第２の実施例を示す。本実施例に
係る処理装置においては、テープ支持体１８ｃ，１８ｄ
を、磁性体により構成したことがその特徴である。この
ように構成することにより、第１の実施例に示したよう
な吸引手段は不要になる。その他の構成要素について
は、第１の実施例に示した構成要素と同様である。

【００２６】本実施例に係るテープ支持体１８ｃ，１８
ｄは、具体的には、各種の磁性体により形成することが
できる。具体的には、鉄，コバルト，ニッケルおよびこ
れらの合金や酸化物を原料とする永久磁石が好適に用い
得る。本実施例によれば、このように構成したことによ
り、テープＴが、テープ支持体１８ｃ，１８ｄから浮上
して、正常な搬送ができなくなるというような異常事態
は発生しなくなる。

【００２７】図３（Ａ），（Ｂ）に、第３の実施例を示
す。なお、図３（Ａ）は側面図、図３（Ｂ）は上面図で
ある。本実施例に係る処理装置においては、テープ支持
体１８ｅを、１つの大きなブロックとして、その表面
（図中では上面で、テープＴが接触する面）に、テープ
Ｔの進行方向と同じ方向の溝２６ａを複数設けたもので
ある。

【００２８】本構成においても、第１の実施例に示した
ような吸引手段は不要である。その他の構成要素につい
ては、第１の実施例に示した構成要素と同様である。図
３（Ｂ）においては、テープ支持体１８ｅの表面に設け
る溝２６ａとして、一様な直線状のもののみを示してい
るが、これに限定されるものではなく、波形形状の溝
や、幅，深さの変化する溝を設けてもよい。

【００２９】また、溝の断面形状についても、Ｖ字型，
Ｕ字型，４角形あるいは半円形など、各種の形状のもの
が有効である。さらに、溝のサイズや数も、テープＴの
幅や搬送速度などに応じて、適宜決定してよい。本実施
例によれば、このように構成したことにより、テープＴ
が、テープ支持体１８ｅから浮き上って、正常な搬送が
できなくなるというような異常事態は発生しなくなる。

【００３０】図４に、第４の実施例を示す。本実施例に
係る処理装置においては、テープ支持体１８ｆ，１８ｇ
を、テープＴの搬送方向上流側が鋭角に形成されたエッ
ジとしたものである。このエッジの角度としては、例え
ば、４５度以内が好ましい。また、テープ支持体１８
ｆ，１８ｇの先端部は、テープＴを損傷しないように研
磨してあることが好ましい。その他の構成要素について
は、第１の実施例に示した構成要素と同様である。

【００３１】上述のテープ支持体１８ｆ，１８ｇは、そ
の鋭角のエッジにより、テープＴに同伴されて移動する
空気層をテープＴから剥離する作用を行う。これによ
り、本実施例によれば、テープＴとテープ支持体１８
ｆ，１８ｇとの間の空気層を薄層化でき、テープＴがテ
ープ支持体１８ｆ，１８ｇから浮き上って、正常な搬送
ができなくなるというような事態は発生しなくなる。

【００３２】上記テープ支持体１８ｆ，１８ｇを構成す
る材料は、特に限定されるものではなく、十分な耐磨耗
性を有する材料であれば用いることができる。また、こ
のテープ支持体１８ｆ，１８ｇのテープＴとの接触面
に、前述のような溝を形成することにより、両者の効果
を合わせて得ることも可能である。さらに、図１に示し
たような吸引手段を併用してもよい。

【００３３】このように、上述の各実施例に示した、テ
ープＴに同伴されて移動する空気層をテープＴから剥離
ないしは除去する手段を、複数種類組み合わせて用いる
ことにより、より確実なテープ搬送を実現することが可
能になる。また、上記実施例に示した手段以外にも、以
下に説明するような各種の手段が利用できる。

【００３４】図５に、さらに他の実施例を示す。図５に
示すのは、第３の実施例（図３参照）に示した、テープ
支持体の表面に設ける溝を用いる例の、改良案である。
ここでは、テープ支持体１８ｈに設ける溝を、テープ搬
送方向下流側に向かって広がる傾斜溝２６ｂとして、さ
らに、この溝２６ｂの各終端部、つまり、テープ支持体
１８ｈの両側面に、吸引手段２０ｃ，２０ｄを配置した
ものである。

【００３５】このように構成することにより、本実施例
に係る処理装置においては、テープ支持体１８ｈとテー
プＴとの間の空気が、テープ支持体１８ｈの両側面に配
置した吸引手段２０ｃ，２０ｄから排除されるので、テ
ープＴがテープ支持体１８ｈに十分接触して搬送される
ようになり、スリップなどの搬送上のトラブルを未然に
防止することができるという効果が得られる。

【００３６】ここで、上記傾斜溝２６ｂの形状（傾斜角
度など），寸法（幅，深さなど）は本実施例の趣旨に基
づく範囲内で、適宜決定してよい。また、ここでは、吸
引手段２０ｃ，２０ｄは必ずしも設ける必要はなく、上
記傾斜溝２６ｂの形状（傾斜角度など），寸法（幅，深
さなど）を、適切に設定すれば、十分な効果が得られる
場合も多い。

【００３７】図６に、さらに別の実施例を示す。本実施
例は、先に図１に示した実施例の構成を一部変更したも
のであり、テープＴに同伴されてくる空気層を、サクシ
ョンドラム２８によって、吸引・除去するものである。
本実施例によっても、テープＴのスリップなどの搬送上
のトラブルを未然に防止することができるという効果が
得られる。

【００３８】以上、本発明に係る磁気テープの搬送安定
化方法および装置について詳細に説明したが、本発明は
上述の各実施例に限定されるべきものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を
行ってもよいことはいうまでもない。

【００３９】また、前述の通り、上記各実施例に示した
各種の手段を、競合しない範囲内で、適宜、自由に組み
合わせることにより、より効果的なテープの搬送安定化
を実現することも可能である。

【００４０】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
係るテープの搬送安定化方法および装置によれば、ブレ
ード機やワインダ等の磁気テープの製造装置において、
搬送速度を高速化してもキャプスタンローラ等でスリッ
プすることがなく、従って、高速で正確な搬送を行うこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の第１の実施例に係るテープの処理装
置の要部構成を示す側面図である。

【図２】 本発明の第２の実施例に係るテープの処理装
置の要部構成を示す側面図である。

【図３】 （Ａ）は本発明の第３の実施例に係るテープ
の処理装置の要部構成を示す側面図、（Ｂ）は同上面図
である。

【図４】 本発明の第４の実施例に係るテープの処理装
置の要部構成を示す側面図である。

【図５】 本発明の第５の実施例に係るテープの処理装
置の要部構成を示す上面図である。

【図６】 本発明の第６の実施例に係るテープの処理装
置の要部構成を示す側面図である。

【符号の説明】

１０ テープの処理装置 １２ 処理部 １４ リワインダ １６ ワインダ １８ａ〜１８ｈ テープ支持体 ２０ａ〜２０ｄ 吸引手段 ２２ ガイドローラ ２４ キャプスタンローラ ２６ａ 溝 ２６ｂ 傾斜溝 ２８ サクションドラム

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】磁気テープを長手方向に搬送する際の搬送
   安定化方法であって、少なくとも、前記磁気テープの支
   持体の搬送方向上流部分を負圧にすることを特徴とする
   磁気テープの搬送安定化方法。
2. 【請求項２】磁気テープを長手方向に搬送する際の搬送
   安定化方法であって、前記磁気テープの支持体を磁性体
   で構成し、磁力により磁気テープを前記支持体に密着さ
   せることを特徴とする磁気テープの搬送安定化方法。
3. 【請求項３】磁気テープを長手方向に搬送する際の搬送
   安定化方法であって、前記磁気テープの支持体の表面に
   磁気テープに同伴される空気層の逃げ溝を設け、磁気テ
   ープに同伴される空気層を前記溝により薄層化すること
   を特徴とする磁気テープの搬送安定化方法。
4. 【請求項４】磁気テープを長手方向に搬送する際の搬送
   安定化方法であって、前記磁気テープの支持体を、その
   上流側がエッジを有する形状とし、前記磁気テープに同
   伴される空気層を前記エッジにより除去することを特徴
   とする磁気テープの搬送安定化方法。
5. 【請求項５】磁気テープを長手方向に搬送するための搬
   送安定化装置であって、少なくとも、前記磁気テープの
   支持体の搬送方向上流部分を負圧にする手段を備えたこ
   とを特徴とする磁気テープの搬送安定化装置。
6. 【請求項６】磁気テープを長手方向に搬送するための搬
   送安定化装置であって、前記磁気テープの支持体を磁性
   体で構成したことを特徴とする磁気テープの搬送安定化
   装置。
7. 【請求項７】磁気テープを長手方向に搬送するための搬
   送安定化装置であって、前記磁気テープの支持体の表面
   に磁気テープに同伴される空気層の逃げ溝を設けたこと
   を特徴とする磁気テープの搬送安定化装置。
8. 【請求項８】磁気テープを長手方向に搬送するための搬
   送安定化装置であって、前記磁気テープの支持体を、そ
   の上流側がエッジを有する形状としたことを特徴とする
   磁気テープの搬送安定化装置。