JP2001081188A - 修飾ポリアスパラギン酸およびその用途 - Google Patents

修飾ポリアスパラギン酸およびその用途

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JP2001081188A
JP2001081188A JP26248499A JP26248499A JP2001081188A JP 2001081188 A JP2001081188 A JP 2001081188A JP 26248499 A JP26248499 A JP 26248499A JP 26248499 A JP26248499 A JP 26248499A JP 2001081188 A JP2001081188 A JP 2001081188A
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acid
aspartic acid
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salt
mercaptoamine
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JP26248499A
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English (en)
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Yoshihisa Oda
喜久 織田
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 主鎖に規定された分岐構造をもつ修飾ポリア
スパラギン酸を提供する。 【解決手段】 メルカプトアミン前駆体、メルカプトア
ミンまたはメルカプトアミンの塩とアスパラギン酸また
はアスパラギン酸の塩を修飾剤とし、反応溶媒を使用し
ない新規な修飾方法を用いてアンヒドロポリアスパラギ
ン酸を修飾することにより達成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、修飾ポリアスパラ
ギン酸およびその修飾ポリアスパラギン酸を用いる金属
腐食防止剤、スケール生成防止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】水の存在する環境中で金属を使用する場
合、通常、スケール生成と金属の腐食という問題が起き
ることが多い。
【0003】天然水にはカルシウムイオンやマグネシウ
ムイオンが炭酸水素塩などとして溶存していることが多
いが、加熱によりスケールを生成し、ボイラを損傷する
原因となっている。また、近年、原油生産を高めるため
に油田に海水を注入することが行われている。この場
合、油田塩水と海水の混合物からカルシウム、ストロン
チウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、硫
酸塩を主体とするスケールが生成し、油井管の閉塞とい
う問題が生ずる場合がある。これらの問題に対処するた
めに、スケール防止剤が状況に対応して用いられてい
て、スケール生成防止を行うことは工鉱業などにおいて
重要である。
【0004】もうひとつの問題である金属の腐食も水性
媒体を扱う諸設備や装置の維持管理においては非常に重
要な問題である。この問題に対しては通常金属腐食防止
剤が適用される。
【0005】スケール防止剤、金属腐食防止剤の使用形
態については閉鎖系と開放系があるが、開放系での使用
は環境保全と直接関係するので重要である。スケール防
止剤、金属腐食防止剤が開放系で使用される一例として
は原油の採取における油井管の保護がある。スケール防
止剤、金属腐食防止剤は水攻法で注入する水(海水)に
溶解しているが、原油分離後に油田塩水と注入した水
(海水)の混合物は廃棄される。近年、環境保護意識の
高まりにより、スケール防止剤、金属腐食防止剤の安全
性や環境に対する低負荷性が強く意識されるようになっ
ている。
【0006】スケール防止剤、金属腐食防止剤として期
待され、あるいは使用されているものにポリアスパラギ
ン酸がある。ポリアスパラギン酸は生分解性材料の一つ
とされているが、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸
の重合物であり、スケール防止、金属腐食防止の作用が
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ポリアスパラギン酸は
生分解性材料として期待され、スケール防止剤として有
用である。ただし、金属腐食防止の作用あまり高くない
ので金属腐食防止の作用が増強ができれば、さらに有用
さが増すことになる。それだけでなく、効力が高ければ
使用量が低減でき、環境に対する負荷を小さくできるこ
とから環境保全の点でも好都合である。
【0008】本発明者はシステアミン修飾ポリアスパラ
ギン酸は高い金属腐食防止の作用を示すことを先に見出
しているが、システアミン修飾ポリアスパラギン酸のス
ケール防止効果は低下するという問題が起きることも見
出した。
【0009】従って、高い金属腐食防止の作用ととも
に、高いスケール防止効果もつ修飾ポリアスパラギン酸
の合成は重要な課題であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は修飾ポリアス
パラギン酸の合成法について検討した。その結果、先に
述べた課題を解決する工業的に利用可能な修飾ポリアス
パラギン酸合成法を見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0011】本発明の課題は、合成中間体として形成さ
れるアンヒドロポリアスパラギン酸をアスパラギン酸ま
たはアスパラギン酸の塩とメルカプトアミン前駆体、メ
ルカプトアミンまたはメルカプトアミンの塩で修飾し、
加水分解処理して得られる修飾ポリアスパラギン酸によ
って達成される。アンヒドロポリアスパラギン酸をアス
パラギン酸またはアスパラギン酸の塩とメルカプトアミ
ン前駆体、メルカプトアミンまたはメルカプトアミンの
塩で修飾するという合成操作は従来の合成法にはなかっ
たものである。
【0012】本発明は、次のように特定される。
【0013】[1] 下記の式Iで表される部分構造:
【0014】
【化4】
【0015】を1以上99以下の範囲のモル比(I)
で、および下記の式II表される分岐構造を1以上49
以下のモル比(I)で含む:
【0016】
【化5】
【0017】(ここで、モル比(I)とはポリアスパラ
ギン酸の全アスパラギン酸残基のモル数を基準(10
0)とした比率であり、式中、Aspはアスパラギン酸
残基を、nは1以上25以下の整数、mは2以上2n以
下の整数、M、M’はそれぞれ独立に水素原子、アンモ
ニウムまたは金属を示す)ことを特徴とする修飾ポリア
スパラギン酸。
【0018】[2] 前記部分構造が
【0019】
【化6】
【0020】であることを特徴とする請求項1に記載の
修飾ポリアスパラギン酸。
【0021】[3] 25℃においてカルボキシル基のモ
ル濃度を基準とするカルシウムイオン結合力が21M-1
以上220M-1以下であることを特徴とする前記1又は
前記2に記載の修飾ポリアスパラギン酸。
【0022】[4] アンヒドロポリアスパラギン酸に、
メルカプトアミン前駆体、メルカプトアミンまたはメル
カプトアミンの塩(ここで、メルカプトアミンとはHS
CnHmNH2を意味し、nは1以上25以下の整数、
mは2以上2n以下の整数である。)およびアスパラギ
ン酸の塩またはアスパラギン酸を加えて反応させる段階
とを含むことを特徴とする修飾ポリアスパラギン酸の製
造方法。
【0023】[5] 前記アンヒドロポリアスパラギン酸
は、マレイン酸水素アンモニウム塩を加熱して溶融させ
る段階により得られることを特徴とする前記4に記載の
方法。
【0024】[6] アンヒドロポリアスパラギン酸に、
モル比(II)で合計1以上99以下の範囲のメルカプ
トアミン前駆体、メルカプトアミンまたはメルカプトア
ミンの塩、およびモル比(II)で合計1以上99以下
の範囲のアスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸(こ
こに示したモル比(II)とは、アンヒドロポリアスパ
ラギン酸の全アスパラギン酸残基のモル数を基準(10
0)とした場合の比率のことで、両者のモル比(II)
の合計は100であり、メルカプトアミンとはHSCn
HmNH2を意味し、nは1以上25以下の整数、mは
2以上2n以下の整数である。)を反応させることを特
徴とする前記4または前記5に記載の方法。
【0025】[7] 前記1〜3に記載の修飾ポリアスパ
ラギン酸を含有してなる金属腐食防止剤。
【0026】[8] 前記1〜3に記載の修飾ポリアスパ
ラギン酸を含有してなるスケール生成防止剤。
【0027】本発明の修飾ポリアスパラギン酸の特徴
は、合成中間体であるアンヒドロポリアスパラギン酸を
アスパラギン酸またはアスパラギン酸の塩とメルカプト
アミン前駆体、メルカプトアミンまたはメルカプトアミ
ンの塩で修飾したことにある。この方法により、1個の
アスパラギン酸残基からなる側鎖とメルカプトアミン残
基を所定のモル比で有するポリアスパラギン酸が合成さ
れる。アンヒドロポリアスパラギン酸とアスパラギン酸
またはアスパラギン酸の塩とメルカプトアミン前駆体、
メルカプトアミンまたはメルカプトアミンの塩を反応さ
せた段階では、アンヒドロポリアスパラギン酸の修飾物
となっているが、これは公知の方法で処理して修飾ポリ
アスパラギン酸またはその塩またはその塩にできる。
【0028】本発明の修飾ポリアスパラギン酸は分子構
造上の特徴により金属イオン結合力が高く、その結果、
スケール防止剤、金属腐食防止剤として、従来のポリア
スパラギン酸よりも性能が高く、利用が期待されるもの
である。
【0029】
【発明の実施の形態】本明細書で使用されるポリアスパ
ラギン酸にはポリアスパラギン酸の塩も含まれる。ポリ
アスパラギン酸の対イオンには、以下のものに限定され
ないが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、具体的
にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウ
ム、ストロンチウム、およびアンモニウムイオンが含ま
れる。
【0030】本発明は、下記の式Iで表される部分構
造:
【0031】
【化7】
【0032】を1以上99以下の範囲のモル比(I)
で、および下記の式IIで表される分岐構造を1以上4
9以下のモル比(I)で含む:
【0033】
【化8】
【0034】(ここで、モル比(I)とはポリアスパラ
ギン酸の全アスパラギン酸残基のモル数を基準(10
0)とした比率であり、式中、Aspはアスパラギン酸
残基を、nは1以上25以下の整数、mは2以上2n以
下の整数、M、M’はそれぞれ独立に水素原子、アンモ
ニウムまたは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、
カルシウムまたはストロンチウムなどの金属を示す)こ
とを特徴とする修飾ポリアスパラギン酸に関する。
【0035】部分構造Iと分岐構造IIと組み合わせた
場合、{式Iのモル比(I)}と2×{式(II)のモ
ル比(I)}の和は100を越すことはない。
【0036】前記修飾ポリアスパラギン酸の重量平均分
子量が1500〜2×106であることが好ましい。
【0037】前記部分構造が
【0038】
【化9】
【0039】であることが好ましい。
【0040】前記修飾ポリアスパラギン酸は、25℃に
おいてカルボキシル基のモル濃度を基準とするカルシウ
ムイオン結合力が21M-1以上220M-1以下であるこ
とが期待される。
【0041】前記修飾ポリアスパラギン酸は、部分構造
と分岐構造との比率が98〜2:1〜49であることが
好ましい。
【0042】メルカプトアミンの代表例としてシステア
ミンを好んで用いるが、システアミンの分子構造をその
作用の関連性という視点で見ると、アミノ基はポリアス
パラギン酸とアミド結合を形成する役割を持つと考えら
れ、メルカプト基は金属の保護作用を発現するために重
要である。システアミンの分子構造に存在するエチレン
鎖(−CH2 CH2 −)はメルカプト基とアミノ基を結
びつけるいわば紐の役割を担うものであり、金属腐食防
止において直接的な作用を示すものではないと考えられ
る。すなわち、メルカプト基とアミノ基を結びつけるエ
チレン鎖は他の炭化水素鎖で置換してもシステアミンの
場合と同様の効果が期待できる。ここで述べた理由によ
り、式HS−CnHm−NH2 で示されるメルカプト基
を有するアミンは本発明の範疇にはいるものと考えるこ
とが自然である。
【0043】式中−CnHm−については、直鎖、分岐
鎖、芳香族環を例示できる。炭素数nについては、HS
−CnHm−NH2 を発生させながら反応させることが
できる可能性があることを考えると、n=1かつm=2
が最小と考えられる。炭素数nの上限には緩やかである
が25以下程度が目安と考えられる。式HS−CnHm
−NH2 で表される化合物について、本発明の操作法が
容易に適用できることや材料としての使用量が少ないこ
とを前提とすると、好ましいnの範囲は2以上12以
下、好ましいmの範囲は4以上2n以下と考えられる。
【0044】さらに、式HS−CnHm−NH2 で表さ
れる化合物の塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩など;
およびチアゾリジン、メチルチアゾリジン、ジメチルチ
アゾリジンなど反応条件下でメルカプトアミンに転化で
きるメルカプトアミン前駆体なども式HS−CnHm−
NH2 で表される化合物の範疇に入るものである。
【0045】ここで、式HS−CnHm−NH2 (メル
カプトアミン)としては、システアミン、o−またはp
−アミノベンゼンチオール、2−ジメチルアミノエタン
チオール,1−アミノ−2−メチル−2−プロパンチオ
ールなどを好例として例示できるが、製造上は分子量が
小さいと使用量(重量)が少なくできることや工業的な
使用という点でシステアミンが特に好ましい。
【0046】以下、メルカプトアミンの代表例としてシ
ステアミンを用いるが、これに限定されるものではなく
例示であると解釈すべきである。
【0047】修飾ポリアスパラギン酸 本発明の修飾ポリアスパラギン酸は、モノマーの組成の
点からいえばシステアミン修飾ポリアスパラギン酸の1
種である。ただし、従来のシステアミン修飾ポリアスパ
ラギン酸と比較していえばシステアミンアスパラギン酸
修飾ポリアスパラギン酸というべきものである。この理
由で、以降の記述においては、本発明のシステアミン修
飾ポリアスパラギン酸を従来品と区別してシステアミン
アスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸という。
【0048】通常、システアミンアスパラギン酸修飾ポ
リアスパラギン酸およびその塩は使用条件においては厳
密に区別する必要がないことが多い。従って、以後の記
述においてはシステアミンアスパラギン酸修飾ポリアス
パラギン酸という名詞は遊離の酸とその塩の両者を意味
するものとする。特に、遊離の酸を示す必要がある場合
は遊離のシステアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラ
ギン酸と称し、塩を区別して示す場合はシステアミンア
スパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸塩などと「塩」を
つけることとする。
【0049】分子構造の形成という視点からいえば、本
発明のシステアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギ
ン酸は新規なアスパラギン酸分岐鎖形成過程、すなわ
ち、構造制御因子の導入により合成されるものである。
システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸
は、多量のコハク酸型構造{−CH(COOM)−CH2−COO
M’}(ただし、式中、M、M’はそれぞれ独立に水素ま
たはアンモニウムまたは金属を示す)が存在すると推定
される。システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラ
ギン酸のコハク酸型構造の数は理論的には、全アスパラ
ギン酸残基数の1/2近くに達し得るものであり、従来の
工業的な合成法では対応不可能なものである。
【0050】従来のシステアミン修飾ポリアスパラギン
酸は分岐鎖がないものが公知である(US 4363797、特開
平 6-248072)。本発明者は、システアミン修飾ポリア
スパラギン酸類にさらなる高機能性を付与するために詳
細な検討を行った。その結果、アスパラギン酸残基1単
位からなる分岐鎖が多数存在するという新規なシステア
ミン修飾ポリアスパラギン酸の合成法を開発したが、金
属腐食防止能とともにスケール防止能が高いことを見出
し本発明に至った。本発明のシステアミン修飾ポリアス
パラギン酸は金属イオン結合力という分子構造に相関し
た物性値の点でも従来型の分岐鎖がないシステアミン修
飾ポリアスパラギン酸とは明らかに区別されるものであ
る。
【0051】反応操作上の特徴 マレイン酸水素アンモニウムなどの原料を加熱して反応
させると、次第に溶融して液化し一度は粘度が低下する
が、重合反応が進行するにつれて再び粘度が上昇し最終
的に固化する。反応物の粘度が上昇し始めて粘稠な液体
ないしペースト状になったときに、アンヒドロポリアス
パラギン酸が形成されている。本発明の重要な点は、こ
の時点でアスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸とシ
ステアミンまたはシステアミンの塩を加えてアンヒドロ
ポリアスパラギン酸と反応させることである。この際、
反応溶媒として水や有機溶媒などは添加しないことが特
徴である。
【0052】アスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸
とシステアミンまたはシステアミンの塩を反応させる時
期としては、反応物がペースト状になった時期が好まし
い。すなわち、160℃の加熱条件では原料が完全に溶
融した後20〜40分程度である。
【0053】ポリアスパラギン酸の修飾に用いるアスパ
ラギン酸の塩またはアスパラギン酸とシステアミンまた
はシステアミンの塩のモル比の範囲は分子の構造と物性
から規定できる。実際の修飾はアンヒドロポリアスパラ
ギン酸に対して行う。従って、アンヒドロポリアスパラ
ギン酸の全アスパラギン酸残基のモル数を基準(100)
として、修飾に用いるアスパラギン酸の塩またはアスパ
ラギン酸のモル比を示すことは合理性がある。本発明に
おいては、アンヒドロポリアスパラギン酸の全アスパラ
ギン酸残基のモル数を基準(100)として表示するモル
比を特にモル比(II)として示す。
【0054】ポリアスパラギン酸の修飾に用いるアスパ
ラギン酸の塩またはアスパラギン酸の使用量の範囲であ
るが、少なければ修飾しない場合と大差がなくなる。ま
た、反応上、理論的には{100−(システアミンによる
修飾率)}を超えることはできない。従って、アスパラ
ギン酸の塩またはアスパラギン酸の使用量のモル比(I
I)の実用範囲は2以上98と考えられる。ポリアスパ
ラギン酸の修飾に用いるシステアミンまたはシステアミ
ンの塩のモル比は(II)1以上98程度が実用上可能
である。
【0055】ポリアスパラギン酸の修飾に用いるアスパ
ラギン酸の塩またはアスパラギン酸とシステアミンまた
はシステアミンの塩のモル比{モル比(II)}の範囲
は、反応操作上は先の説明の範囲を超えて用いることが
できる。この場合は、修飾に用いたアスパラギン酸の塩
またはアスパラギン酸とシステアミンまたはシステアミ
ンの塩の一部は反応せずに残存することになる。
【0056】さらに修飾ポリアスパラギン酸の調製法を
詳細に説明する。
【0057】システアミンアスパラギン酸修飾ポリアス
パラギン酸は、マレイン酸水素アンモニウムを加熱して
溶融させ、溶融した段階においてアスパラギン酸の塩ま
たはアスパラギン酸とシステアミンまたはシステアミン
の塩を修飾剤として反応させる段階を含む方法によって
得られる。ここで用いる修飾剤としては、アスパラギン
酸とシステアミンから形成される塩を含むことは当然で
ある。
【0058】原料として使用されるマレイン酸水素アン
モニウムは、特に限定はされないがマレイン酸およびア
ンモニア(水)から調製するのが実用的である。
【0059】マレイン酸水素アンモニウムは窒素、ヘリ
ウム、アルゴンなどの不活性雰囲気中で加熱して溶融さ
せることが好ましいが、メルカプト基が酸化してもよけ
れば空気中で加熱してもよい。加熱温度は、通常、100
〜180℃、好ましくは130〜170℃の範囲である。マレイ
ン酸水素アンモニウムを加熱すると、次第に溶融して液
化し、一度は粘度が低下するが、その後、反応の進行に
ともなって再び粘度が上昇し、最終的に固化する。本明
細書においては、溶融とは、固化する前にマレイン酸水
素アンモニウムや生成物を含む反応混合物が粘稠な液体
ないしペースト状となった状態をいう。この状態におい
ては、粘度上昇が観察されていることから、すでにアン
ヒドロポリアスパラギン酸が形成されていることは明ら
かである。
【0060】アスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸
とシステアミンまたはシステアミンの塩を添加する時期
は、原料であるマレイン酸水素アンモニウムが溶融し、
粘稠な液体ないしペースト状となったときである。かか
る状態は、加熱温度によって変化する。加熱温度が160
℃の場合には、原料が完全に溶融した後20〜40分の間が
好ましい。固化の後にアスパラギン酸の塩またはアスパ
ラギン酸とシステアミンまたはシステアミンの塩を加え
た場合は、十分に混合し反応させることができないため
に好ましくない。アスパラギン酸の塩またはアスパラギ
ン酸とシステアミンまたはシステアミンの塩を添加した
後の反応時間は、撹拌混合して反応させるための時間も
考慮すると、5分以上300分以内が好ましい。但し、反
応時間を長くすると金属イオン結合力を低下させるよう
な副反応が起きると考えられる例が観察されることか
ら、添加後の反応時間は、5分以上30分程度が特に好ま
しいと考えられる。
【0061】修飾剤として用いるアスパラギン酸の塩は
多様なものが使用可能である。アスパラギン酸水素塩と
しては、アスパラギン酸水素リチウム、アスパラギン酸
水素ナトリウム、アスパラギン酸水素カリウム、などの
アルカリ金属塩;アスパラギン酸水素マグネシウム、ア
スパラギン酸水素カルシウム、アスパラギン酸水素スト
ロンチウム、アスパラギン酸水素バリウムなどのアルカ
リ土類金属塩;アスパラギン酸水素アンモニウム;アス
パラギン酸水素亜鉛、アスパラギン酸水素鉄、アスパラ
ギン酸水素銅など種々の重金属、軽金属のアスパラギン
酸水素塩が例示できる。アスパラギン酸塩(正塩)とし
ては、アスパラギン酸2リチウム、アスパラギン酸2ナ
トリウム、アスパラギン酸2カリウム、などのアルカリ
金属塩;アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸
カルシウム、アスパラギン酸ストロンチウム、アスパラ
ギン酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩;アスパラギ
ン酸2アンモニウム;アスパラギン酸亜鉛、アスパラギ
ン酸鉄、アスパラギン酸銅など種々の重金属、軽金属の
アスパラギン酸塩が例示できる。
【0062】修飾剤として望ましいのはアスパラギン酸
のアルカリ金属塩(正塩、水素塩)、アルカリ土類金属
塩(正塩、水素塩)、アンモニウム塩(正塩、水素塩)
であり、さらに望ましいのはアスパラギン酸のアルカリ
金属塩(水素塩)、アルカリ土類金属塩(水素塩)、ア
ンモニウム塩(水素塩)であり、最も好ましいのはアス
パラギン酸水素ナトリウム、アスパラギン酸水素マグネ
シウム、アスパラギン酸水素カルシウム、アスパラギン
酸水素アンモニウムである。これらのアスパラギン酸水
素塩やアスパラギン酸塩やアスパラギン酸は、無水物だ
けでなく結晶水、吸着水をもっていてもよく、修飾を行
う時の反応操作は共通である。
【0063】修飾剤として用いるシステアミンの塩もま
た多様なものが使用可能である。たとえば、塩酸システ
アミン、硫酸システアミン、硫酸水素システアミン塩、
燐酸システアミン、燐酸水素システアミン、燐酸2水素
システアミン、炭酸システアミン、酢酸システアミン、
などである。これらのなかで工業的には塩酸システアミ
ンは入手の点で有利である。
【0064】修飾剤としては、アスパラギン酸システア
ミンやアスパラギン酸水素システアミン、アスパラギン
酸システアミンリチウム、アスパラギン酸システアミン
ナトリウム、アスパラギン酸システアミンカリウム、ア
スパラギン酸システアミンアンモニウム、アスパラギン
酸システアミンマグネシウム、アスパラギン酸システア
ミンカルシウム、アスパラギン酸システアミンストロン
チウム、アスパラギン酸システアミン亜鉛などのアスパ
ラギン酸システアミンの種々の誘導体塩類も使用可能で
ある。
【0065】ここに例示した種々の修飾剤をアンヒドロ
ポリアスパラギン酸と反応させる場合はそれぞれを別途
に順次添加して反応させることや混合して反応させるこ
とが可能である。反応操作上は修飾剤をあらかじめ混合
したものを添加して反応させることが好ましい。
【0066】得られたシステアミンアスパラギン酸修飾
アンヒドロポリアスパラギン酸は、公知の方法で加水処
理をする。加水処理に使用するアルカリは、修飾剤と
してアスパラギン酸とシステアミンを用いた場合は
{(全アスパラギン酸残基のモル数 −(システアミン
のモル数)}1モルに対して1当量程度、修飾剤とし
てアスパラギン酸水素塩とシステアミンを用いた場合は
{(全アスパラギン酸残基のモル数)−(反応させたア
スパラギン酸水素塩の当量数)−(システアミンのモル
数)}1モルに対して1当量程度、修飾剤としてアス
パラギン酸の正塩とシステアミンを用いた場合は{(全
アスパラギン酸残基のモル数)−2×(反応させたアス
パラギン酸の正塩の当量数)−(システアミンのモル
数)}1モルに対して1当量程度、修飾剤としてアス
パラギン酸とシステアミンの塩を用いた場合は(全アス
パラギン酸残基のモル数)1モルに対して1当量程度、
修飾剤としてアスパラギン酸水素塩とシステアミンの
塩を用いた場合は{(全アスパラギン酸残基のモル数)
−(反応させたアスパラギン酸水素塩の当量数)}1モ
ルに対して1当量程度、修飾剤としてアスパラギン酸
の正塩とシステアミンの塩を用いた場合は{(全アスパ
ラギン酸残基のモル数)−2×(反応させたアスパラギ
ン酸の正塩の当量数)}1モルに対して1当量程度、
修飾剤としてアスパラギン酸システアミンを用いた場合
は{(全アスパラギン酸残基のモル数−2×(アスパラ
ギン酸システアミンのモル数)}1モルに対して1当量
程度、修飾剤としてアスパラギン酸水素システアミン
を用いた場合は{(全アスパラギン酸残基のモル数)−
(アスパラギン酸システアミンのモル数)}1モルに対
して1当量程度、修飾剤としてアスパラギン酸システ
アミンナトリウムなどの正塩を用いた場合は{(全アス
パラギン酸残基のモル数)−2×(反応させたアスパラ
ギン酸の正塩の当量数)}1モルに対して1当量程度使
用することが好ましい。ここで用いる(反応させたアス
パラギン酸の塩の当量数)とはアスパラギン酸根のモル
数に等しい。これら−の使用量は、システアミンア
スパラギン酸修飾アンヒドロポリアスパラギン酸を加水
分解することで生成するシステアミンアスパラギン酸修
飾ポリアスパラギン酸のカルボキシル基を過不足なく中
和するために必要な塩基の理論値に等しい。
【0067】加水処理には水酸化リチウム、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、
水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸
塩、アンモニア(水)またはエタノールアミンなどの有
機アミン、水あるいは硫酸及び塩酸などの酸性の水溶液
を用いることもできる。
【0068】修飾ポリアスパラギン酸の分子構造 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸の
分子構造を、(1)反応操作時の観察および(2)物性
の比較から推定する。
【0069】(1)反応操作時の観察にもとづく分子構
造の推定 アスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸とシステアミ
ンまたはシステアミンの塩を反応させる時点で、すでに
原料の溶融と引き続く反応物の粘度上昇が観察されてい
る。この現象はポリアスパラギン酸の脱水物であるアン
ヒドロポリアスパラギン酸が形成されていることを示す
ものである。本発明の反応法の特徴は、有機溶媒や水な
どの反応溶媒は用いず、アンヒドロポリアスパラギン酸
を形成させて直ちにアスパラギン酸の塩またはアスパラ
ギン酸とシステアミンまたはシステアミンの塩またはシ
ステアミン前駆体で修飾することにある。修飾されたア
ンヒドロポリアスパラギン酸は、公知の方法で加水分解
処理すれば修飾ポリアスパラギン酸となる。
【0070】本発明の反応条件においては、アスパラ
ギン酸の塩またはアスパラギン酸は重合しにくく、ア
スパラギン酸の塩またはアスパラギン酸とシステアミン
またはシステアミンの塩を添加すると反応混合物の急速
な粘度上昇およびひき続く固形化が観察され急速な反応
が起きると推定できる。これら、のことから、反応
に用いたアスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸は、
1個のアスパラギン酸からなる側鎖を形成し、システア
ミンまたはシステアミンの塩またはシステアミン前駆体
はアンヒドロポリアスパラギン酸とアミド結合すると考
えられる。
【0071】導入したアスパラギン酸残基の結合につい
ては、官能基の反応性と加水分解処理時の挙動から、ア
スパラギン酸の塩またはアスパラギン酸は求核的に反応
し、アミド結合が形成されると考えられる(部分構造
1、M、M’はそれぞれ独立に水素や金属やアンモニウム
を意味する。pahAspはアンヒドロポリアスパラギン酸
部分を意味する。) pahAspCO−NHCH(COOM)CH2COOM’(部分構造 1)、 アンヒドロポリアスパラギン酸の合成中あるいはアンヒ
ドロポリアスパラギン酸とアスパラギン酸の塩またはア
スパラギン酸が反応する場合、反応中にアンヒドロポリ
アスパラギン酸の主鎖に−NHCO−が形成される可能性も
考察される。従って、ポリアスパラギン酸の主鎖に結合
して −N(−COCH(NH2)CH2COOM)CO−(部分構造 2)、 が形成される可能性がある。ここで()内のアスパラギ
ン酸残基はアンヒドロポリアスパラギン酸主鎖の窒素原
子に直接結合したアスパラギン酸残基を意味する。これ
らは、加水分解処理においてアンヒドロポリアスパラギ
ン酸のイミド環と同様に切断されると考えられる。ま
た、実施例などにおいては、加水分解処理において生成
するポリアスパラギン酸のカルボキシル基を中和するた
めに必要な理論量のアルカリ金属水酸化物(塩基)を用
いている。もし、部分構造 2が修飾ポリアスパラギン酸
において重要であれば、用いた塩基の量は過剰になるの
で加水分解後にかなりのアルカリ性になるはずである。
実際は、加水分解後に中性ないし弱アルカリ性になる程
度である。この理由により、部分構造 2は修飾ポリアス
パラギン酸においては重要ではないと考えられる。
【0072】以上の考察により、修飾剤として反応させ
たアスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸はアンヒド
ロポリアスパラギン酸とアミド結合し、1個のアスパラ
ギン酸からなる側鎖(部分構造 1)を形成すると考えら
れる。
【0073】システアミン残基の結合状態は、システア
ミンの官能基の反応性から pahAspCO−NHCH2CH2SH(部分構造 3) と考えられる。
【0074】(2)物性にもとづく分子構造の推定 金属イオン結合力は金属イオン結合容量とは異なるもの
であり、分子構造を直接反映するものである。修飾ポリ
アスパラギン酸やポリアスパラギン酸はアスパラギン酸
残基が結合したものである。金属結合性基のほとんどは
カルボキシル基と考えられ、N末端のアミノ基は重要で
はないと考えられる。すなわち、N末端として存在す
る可能性があるアスパラギン酸残基自体の存在量は少な
く、アミノ基は求核性があるのでアンヒドロポリアス
パラギン酸が形成された段階で消費される可能性が高
く、しかも、グリシンやアラニンなどとカルシウムの
錯体の安定度定数(生化学データブック)から見る限り
N末端アスパラギン酸残基の金属イオン結合力はあまり
高くないと考えられるからである。この理由により、金
属イオン結合力はアスパラギン酸残基の結合状態を直接
反映することになる。この考察のもとに金属イオン結合
力を測定した。本説明で示す金属イオン結合力はCaイオ
ンをプローブとして使用し、測定データをオダプロット
解析して求めたものである。
【0075】US 4363797号の記載に従って合成したシス
テアミン修飾ポリアスパラギン酸の金属イオン結合力は
15 M-1であった。また、アスパラギン酸を重合させたポ
リアスパラギン酸の金属イオン結合力は9M-1であっ
た。この変動はアスパラギン酸残基の結合状態にαとβ
の2種類があり、合成条件により結合状態αと結合状態
βの比率が異なることに由来すると思われる。従って分
岐鎖をもたないポリアスパラギン酸や修飾ポリアスパラ
ギン酸の金属イオン結合力の範囲は9〜15 M-1と考えら
れる。これに対してマレイン酸を原料として合成された
ポリアスパラギン酸 CF-110 やCF-110に対応するシステ
アミン修飾ポリアスパラギン酸は 17〜21M-1という金属
イオン結合力を示した。この数値は若干の分岐鎖の存在
によりもたらされたものと考えられる。本発明のシステ
アミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸は、アス
パラギン酸の修飾率が低ければシステアミン修飾ポリア
スパラギン酸と事実上同等になる。従って、本発明のシ
ステアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸を特
徴づける金属イオン結合力は21 M-1が下限となる。上限
についてはモル比(I)で25のコハク酸構造をもつサン
プルが 59 〜 64 M- 1を示したことから推定すると100〜
111 M-1である。
【0076】アスパラギン酸を重合させたポリアスパラ
ギン酸やシステアミン修飾ポリアスパラギン酸の場合、
主鎖のアスパラギン酸残基の結合状態αと結合状態βの
比率の違いと思われる理由により金属イオン結合力が2
倍近い変動を示した。このようなことを考慮すると、本
発明のシステアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギ
ン酸を特徴づける金属イオン結合力の上限は220 M-1
でに達する可能性がある。従って、システアミンアスパ
ラギン酸修飾ポリアスパラギン酸の金属イオン結合力の
範囲は 21 〜 220 M-1が目安と考えられる。
【0077】金属イオン結合力は、システアミンアスパ
ラギン酸修飾ポリアスパラギン酸の特徴や有用性を示す
指標の一つである。この点、実用的なシステアミンアス
パラギン酸修飾ポリアスパラギン酸の金属イオン結合力
は、25〜220M-1、好ましくは30〜220M-1
より好ましくは40〜220M-1、特に好ましくは50
〜220M-1である。
【0078】従って、本発明のシステアミンアスパラギ
ン酸修飾ポリアスパラギン酸は、公知のシステアミン修
飾ポリアスパラギン酸(US 4363797)などとは異なるこ
とが明らかである。
【0079】修飾剤として用いたアスパラギン酸の塩ま
たはアスパラギン酸が結合する形式としては、側鎖を
形成し、従来品と同等の部分構造は減少し、修飾部位の
カルボキシル基は消費され、新たにカルボキシル末端が
生成する(結合様式)、高分子鎖の内部または末端
に取り込まれる(結合様式)という2種類の形式が可
能である。修飾ポリアスパラギン酸において、アスパラ
ギン酸残基の可能な存在様式を大別すると、カルボキ
シル末端に存在しカルボキシル基2個をもつ(コハク酸
型構造)(存在様式)、分子鎖の途中に存在しカル
ボキシル基1個をもつ(存在様式)、分子鎖の分岐
部位に存在しカルボキシル基をもたない(存在様式
)、アミノ末端に存在しカルボキシル基は1か0個
(存在様式)という4種類になる。これらのうちで存
在様式の存在量は最大でも分子当たり1個で、しか
も、合成条件でアミノ基は反応して消費され存在様式
または存在様式に転換されると考えられる。このた
め、アスパラギン酸残基の可能な存在様式は存在様式
〜であるとしてよく、金属イオン結合力を示すものは
存在様式、存在様式である。これらのうちで高い金
属イオン結合力を発揮できるものは存在様式(コハク
酸型構造)である。
【0080】修飾剤として用いたアスパラギン酸の塩ま
たはアスパラギン酸の結合様式が結合様式であれば高
分子鎖の鎖長が長くなっただけである。この場合は、金
属イオン結合力は従来のポリアスパラギン酸と同等であ
ると推定される。修飾剤として用いたアスパラギン酸の
塩またはアスパラギン酸の結合様式が結合様式であれ
ば、存在様式が出現するので、金属イオン結合力が高
くなると推定される。従って、本発明法によればコハク
酸型構造が容易に導入できると考えてよい。
【0081】本項の記述をまとめると、修飾ポリアスパ
ラギン酸にはアスパラギン酸残基1個からなる側鎖が多
数存在し、金属イオン結合力で規定すると範囲は21〜 2
20 M -1が目安となると考えられる。
【0082】システアミンアスパラギン酸修飾ポリアス
パラギン酸の金属腐食防止作用について 本発明の金属腐食防止剤は、ファラデー抵抗(分極抵
抗)を増加させて腐食防止を行うものである。従って、
鉄、炭素鋼、ステンレス鋼などの鉄や鉄合金などの鉄系
金属以外にもファラデー抵抗の増加作用が期待できる金
属一般に対して適用できる。適用対象としては、上記の
鉄系金属以外にも、例えば、銅や黄銅、白銅などの銅合
金、亜鉛や亜鉛合金、マグネシウムやマグネシウム合
金、アルミニウムやアルミニウム合金、ニッケルやニッ
ケル合金、クロムやクロム合金、その他鉛、錫、マンガ
ン、コバルト、モリブデン、タングステン、バナジウ
ム、カドミウムなどやそれらの合金などが挙げられる。
【0083】システアミンアスパラギン酸修飾ポリアス
パラギン酸のスケール防止作用について 通常よく見られるスケールは、アルカリ土類金属、特に
Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩、硫酸塩などを主成分とする固
形物である。スケールの防止の機構は、スケールを形
成する金属イオンを隠蔽すること、スケールの結晶核
の形成防止とスケールの成長防止という二つの側面をも
つと考えられる。すなわち、金属イオンのマスキング剤
とスケール防止剤とは異なる側面をもつと考えられる。
先に述べた金属イオン結合力のみでは、スケールの防止
という作用は評価しにくい。この理由により、本発明の
システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸の
スケール防止能についても測定したが高い性能を示し
た。
【0084】以上、反応と物性および分子構造について
説明や考察を述べたが、本発明の特徴は、1個のアスパ
ラギン酸残基からなる側鎖を意図した量だけ導入した修
飾ポリアスパラギン酸が容易に合成できることにある。
本発明のシステアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラ
ギン酸は金属イオン結合力が強いことが特徴であり、金
属イオンのマスキング剤、スケール防止剤、金属腐食防
止剤として工業的な利用ができる。
【0085】
【実施例】以下、実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0086】実施例に先立ち、金属イオン結合力および
スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成の防止能)の
試験方法について説明する。
【0087】金属イオン結合力 金属イオン結合力とは金属イオンと結合する高分子を識
別するために本発明者が先に考案した指標である。
【0088】測定系中の金属イオン(M)、重合体(高
分子)の有する金属結合性基(paij)、に関しては式1
の平衡反応が成立する。 M + paij = M paij k paij = [M pa ij] /( [M][pa ij] )(式1) ただし、1≦ i≦m、1≦j≦m、k paijは金属イオン
と試料の金属結合性基との結合定数、[ ]は、濃度を示
す。
【0089】ここで pa ijの添え字 iは高分子に全部で
m種類存在する金属結合性基のうちで i種類目の金属結
合性基であることを意味し、添え字jは存在状態が全部
でn種類あるうちのj種類目の存在状態を意味する。理
論的には、金属イオン結合力は、金属結合性基の種類と
存在状態ごとに(金属結合性基と金属イオンの結合定
数)×(金属結合性基の存在量比)を求め、さらに、そ
れらの総和を求めることで得られる(式2)ものであ
る。
【0090】
【数1】
【0091】ポリアスパラギン酸の場合は、先に説明し
たように、金属結合性基は実用上はカルボキシル基のみ
と考えられるのでm=1となる。
【0092】金属イオン結合力は、プローブとして用い
られる金属イオン種に対応して得られる物性値である。
本発明においてはプローブとしてCaイオンを用いた
が、Caイオン濃度と金属指示薬NN(2-ヒドロキシ−1
−(2−ヒドロキシ−4−スルホ−1−ナフチルアゾ)
−3−ナフトイン酸)の発色率の関係を測定し、得ら
れたデータを解析するという手順で求められる。
【0093】測定法:蒸留水、試料、KOH、金属指示
薬NNの混合溶液に塩化カルシウム水溶液を小量ずつ添加
して吸光度を測定するという操作を、金属指示薬NNの発
色率がほぼ 1になるまで行う(試料添加系)。測定中の
液量増加による吸光度の減少は、ランベルト−ベールの
法則に従って補正し、Caイオン濃度と金属指示薬NNの発
色率との関係を求める。測定試料を添加しない場合につ
いても、Caイオン濃度と金属指示薬NNの発色率の関係を
求める(対照系)。試料添加系、対照系とも液量変化は
小さいことが必要であり、本測定においては最終液量の
増加分は初期液量に対して5%未満であり、後に述べる
発色率R=0.5における液量増加は初期液量に対して1%
程度になるようにした。測定操作は25℃において行っ
た。
【0094】補正した吸光度Acは、初期の液量をV
o、金属イオン溶液の添加量をVm、吸光度の測定値を
AmとするとAc=Am・ (Vo+Vm)/Voとして
求められる。発色率 R=0は、金属イオン溶液を添加す
る前の吸光度(A0)である。発色率 R=1 は、金属イオ
ン溶液を追加しても発色の変化が見られなくなる状態の
発色(液量増加分の補正後の吸光度、As)とする。発
色率 Rは(Ac−Ao)/(As−Ao)として計算で
きる。
【0095】試料が 2価金属イオンを含む場合、透析、
電気透析、イオン交換、沈殿形成などの処理を行って金
属イオンを除去するか、当量のEDTAなどの強いキレート
剤と反応させて2価金属イオンをマスクして測定に供す
る。データ解析において用いる金属イオン濃度や金属イ
オン全濃度のなかには、キレート剤と反応した2価金属
イオンやキレート剤と反応したCaイオンの濃度は含めな
い。キレート剤を加えた場合は、吸光度とCaイオンの濃
度の関係を示すグラフにおいては、吸光度増加開始点付
近はS字型になり吸光度の鋭い増加(立ち上がり)は見
られない。この場合は、対照系のCaイオン添加濃度と吸
光度の曲線を参考にして、塩化カルシウム水溶液添加に
よる本来の吸光度増加開始点を求めた。本来の吸光度増
加開始点とは、キレート剤の影響がない場合に見られる
はずの吸光度増加開始点ということである。
【0096】金属イオン結合力は、対照系と試料添加系
の発色率の差から求めるので、吸光度の測定精度や塩化
カルシウム水溶液の添加量の精度には注意を要する。吸
光度は変化を調べることが重要であるので、通常小数第
5位まで読み取りデータ解析に供した。塩化カルシウム
水溶液の添加量の精度はおおよそ0.1〜0.2%である。
【0097】測定条件において、金属指示薬NNは少しづ
つ分解して吸光度の減少をもたらすことや、試料による
吸光度変化が観察されることがある。一連の測定操作の
手順について、時間的なスケジュールをたてて行うこと
により、吸光度の時間変化分を補正する。
【0098】データ解析:金属イオン結合力は試料添
加系と対照系の差を解析して求める。試料添加系につい
て、金属(Ca)イオン溶液を添加するたびに金属イオ
ン濃度と金属指示薬の発色に関してTm sample(1/R
sample)と1/(1−R sample)をそれぞれ計算する。
さらに、試料の効果を計算するための基準として、Tm
sample(1/Rsample)に対応する[1/(1−R stan
dard)]を式 3により計算する。 [1/(1−R standard)] = k ind ・ Tm sample(1/Rsample)− k ind・ T ind sample (式 3) Rstandardは対称系の理論的発色率を意味する。式3とR
standard=1/[1/(1−Rstandard)]に基づいて数
値を求めることは可能であるが、このデータ解析におい
ては[1/(1−Rstandard)]が重要であることに注意
すべきである。従って、この解析法においては[1/
(1−Rstandard)]を1個の数値として取り扱う。
【0099】(式 3)に用いる金属イオンと金属指示薬
の結合定数 k indは、対照系における金属イオン濃度と
金属指示薬の発色率の関係からスキャッチャード(型)
プロットを用いて求めることが好ましい。
【0100】T ind値は金属指示薬濃度である。ここ
で、 Tm、R、T ind に添付した添え字sampleは、試料
を添加した測定系のデータであることを示す。具体的に
はTmsampleは金属指示薬発色率Rにおける試料添加系
の金属イオン全濃度を、R sampleは試料添加系の金属指
示薬発色率を、T ind sampleは試料添加系の金属指示薬
の濃度を示す。
【0101】式 3の左辺はスキャッチャード(型)プロ
ットとの対応を考えて記したものであり、[1/(1−R
standard)] は式 3の右辺で計算される値を示す1個の
変数である。[Δ/(1−R sample)]は式 4で計算す
る。 [Δ/(1−R sample)]=1/(1−R sample)−[1/(1−Rstandard) ] (式 4) 1/(1−R sample)と[Δ/(1−R sample)]をプ
ロット(オダプロット、Oda plot)して(回帰)直線を
求める。(回帰)直線の傾はΔとなるが(金属イオン結
合力)×(金属結合性基の濃度)であるので、(回帰)
直線の傾きを(金属結合性基の濃度)で除算することに
より金属イオン結合力が求められる。金属結合性基の濃
度は初期濃度とした。測定誤差を考慮すると、(回帰)
直線を求める場合は、通常1/(1−R sample)が2付
近のデータを重視すべきである。また、(回帰)直線は
本来原点(0,0)を通ることにも留意する必要があ
る。金属イオン結合力は、対照系と試料添加系の発色率
の差から求めるので、測定操作を高精度におこなっても
誤差が出やすい。オダプロットは測定誤差の状況を視覚
的に確認できる点で好ましいので、実施例に示した金属
イオン結合力は実測データをオダプロットにより解析し
て求めた。
【0102】スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成
の防止能)の試験方法 塩化カルシウム(7mM)と試料と炭酸水素ナトリウム
(17.85 mM、0.15%)を含む水溶液を70℃で3 時間加熱
し、室温に冷却後溶存しているCaイオンをEDTA(10m
M)で滴定する。防止能(%)は 防止能(%)= 100×(VSI−Vo)/(VNR−Vo) (式5) として求める。ここで、VSIは(加熱反応後の)試料添
加時の滴定値、Voは(加熱反応後の)試料なしの滴定
値、VNR は加熱反応なしの滴定値を意味する。なお、本
測定法は反応容器内の液相と気相の間のガス交換の影響
を受けるので、反応容器の密閉と容器の正味の容積を一
定に保つことは重要である。ここで述べる防止能の数値
は試料の効力の相互比較に用いるべきであって、他の文
献記載の数値との直接的な比較に用いるべきものではな
い。他の試料と比較する場合は同一タイプの反応容器を
用いて試験を行う必要がある。
【0103】参考例1(測定操作例 1) 試料添加系の測定―――直径25 mm(内径23mm)の試
験管を用いて25℃で行った。試験管に 6.50 mlの蒸留
水と1.00 mlの試料水溶液(濃度2%)を注入し、1.00
ml のKOH(濃度 50w/v)、金属指示薬NNを添加した。こ
の条件でNNによる吸光度(波長 470 nm)は、通常、0.2
00±0.03としたが、100倍希釈NNの添加量は7.0 mgであ
ったのでNNの濃度は 18.9 μMと見積もられた。30秒ご
とに塩化カルシウム水溶液を添加して吸光度を測定した
が、最初は5 mMの塩化カルシウム水溶液を0.020 mlず
つ0.16 mlになるまで添加し、さらに25mMの塩化カルシ
ウム水溶液を0.15 ml、次に0.05 ml添加した。通常はこ
の状態で発色率はほぼ100%であるが、念のために25mM
の塩化カルシウム水溶液を0.05 ml追加して吸光度上昇
がないことを確認した。得られた測定データは金属イオ
ン結合力の項で述べた方法により解析した。
【0104】対照系の測定―――試料添加系の測定と同
様にして操作したが試料水溶液の替りに蒸留水を用い
た。
【0105】腐食防止能の評価法 腐食防止能の評価は電気化学的な方法で行った。腐食測
定は、直径9.4 mm長さ12.1mmの円柱状のほぼ鏡面に研
磨した鉄電極を用いて行った。測定セルの構成は鉄電極
と、かかる鉄電極の周囲に対極としてのグラファイト電
極2本と、参照電極としての飽和カロメル電極(SCE)
をセットしたものであった。900 mlの電解液を用いた
が、組成を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】腐食測定に用いた電解液Aは、測定セル内
の電解液Bに窒素通気した後、炭酸水素ナトリウムと塩
酸を添加して調製した。電解液AはpH 5.9であるが、炭
酸−炭酸水素塩の緩衝系になっているのでpHの安定度
が高い。なお、二酸化炭素の揮散を防ぐため電解液Aに
は通気しなかった。電解液Aで試料濃度0の対照測定を
行った後に測定用試料を添加し、その効果を測定した。
測定用試料は2%水溶液とし、0.900 ml(最終濃度 20
ppm)を用いた。試料などを測定系に添加するときに
は、撹拌して電解液を均質になるようにした。通常は撹
拌を停止した。温度は25℃とした。
【0108】腐食防止能の計算 腐食速度は、ファラデー抵抗(分極抵抗)に反比例す
る。本発明においては、ファラデー抵抗を測定すること
により腐食防止能の評価を行った。測定は、鉄電極−SC
Eの開放電圧で±10〜±12mV程度の範囲で直流的に印加
電圧を掃引して抵抗値を求める方法で行った。腐食防止
能は、腐食防止剤を添加する前の腐食速度(Vcont)と
腐食防止剤を添加した後の腐食速度(Vsample)から式
(6)により求める。
【0109】 腐食防止能=(Vcont − Vsample)/ Vcont (式6) 腐食電流は腐食速度と正比例し、抵抗値(Rp)と腐食電
流(Icr)は反比例する( Icr= K / Rp )ので、Rpの
測定により腐食防止能が求められる。
【0110】 腐食防止能 =(Rp sample − Rp cont)/ Rp sample (式7) ここで、Rp contは腐食防止剤を添加する前のRp
(Ω)、Rp sampleは腐食防止剤を添加した後のRp
(Ω)である。鉄の場合、比例係数Kについては経験的
に25 mVあるいは26 mVとすることが多いようであるが、
腐食防止能の算出においてK値はキャンセルされるので
問題にならない。なお、発明の実施例及び比較例などで
は、式(7)の数値を100倍してパーセント表示で腐食
防止能を示す。
【0111】実施例1 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸 マレイン酸水素アンモニウム10.65 g(80 mmole)を500
mlセパラブルフラスコに投入し、アルゴン気流下で撹
拌しながら160℃の油浴を用いて加熱した。65分後に内
容物が融解したが、その後 25分反応させた。撹拌しな
がらアスパラギン酸システアミンナトリウム2.57 g(0.
46水塩相当物、10.67 mmole)とアスパラギン酸水素ナ
トリウム塩2.55 g(0.26水塩相当物、16.0 mmole)の混
合物を修飾剤として加え、激しく混合して反応させた。
反応が進むにつれて固形化し、撹拌困難となった。修飾
剤添加後の反応時間 25分で反応を停止し、冷却した。1
3.63 gの固形物が得られた。
【0112】得られた固形物に水と10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えて修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)とした。金属イオン結合力は、金属指示薬NNとCaイ
オンをプローブとし、オダプロットを用いて測定、解析
した。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成の防止
能)、金属腐食防止能は先に説明した試験方法により測
定した。それらの結果は表2に示す。この合成条件で
は、ポリアスパラギン自体の分子量は5300程度と見
積もられたので、修飾ポリアスパラギン酸の分子量は7
200程度と推定された。
【0113】実施例2 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸 マレイン酸水素アンモニウム10.65 g(80 mmole)を500
mlセパラブルフラスコに投入し、アルゴン気流下で撹
拌しながら160℃の油浴を用いて加熱した。65分後に内
容物が融解したが、その後 25分反応させた。撹拌しな
がらアスパラギン酸システアミンナトリウム2.57 g(0.
46水塩相当物、10.67 mmole)とアスパラギン酸水素ア
ンモニウム塩2.40 g(無水塩、16.0 mmole)の混合物を
修飾剤として加え、激しく混合して反応させた。反応が
進むにつれて固形化し、撹拌困難となった。修飾剤添加
後の反応時間 25分で反応を停止し、冷却した。13.55 g
の固形物が得られた。
【0114】得られた固形物に水と10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えて修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)とした。金属イオン結合力は、金属指示薬NNとCaイ
オンをプローブとし、オダプロットを用いて測定、解析
した。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成の防止
能)、金属腐食防止能は先に説明した試験方法により測
定した。それらの結果は表2に示す。
【0115】実施例3 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸 マレイン酸水素アンモニウム10.65 g(80 mmole)を500
mlセパラブルフラスコに投入し、アルゴン気流下で撹
拌しながら160℃の油浴を用いて加熱した。65分後に内
容物が融解したが、その後 25分反応させた。撹拌しな
がらシステアミンのアスパラギン酸水素ナトリウム塩2.
57 g(0.46水塩相当物、10.67 mmole)とアスパラギン
酸水素マグネシウム 3.11 g(2.79水塩相当物、8.0 mmo
le)の混合物を修飾剤として加え、激しく混合して反応
させた。反応が進むにつれて固形化し、撹拌困難となっ
た。修飾剤添加後の反応時間 25分で反応を停止し、冷
却した。13.68 gの固形物が得られた。
【0116】得られた固形物に水と10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えて修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)とした。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成
の防止能)、金属腐食防止能は先に説明した試験方法に
より測定した。それらの結果は表2に示す。
【0117】実施例4 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸 マレイン酸水素アンモニウム10.65 g(80 mmole)を500
mlセパラブルフラスコに投入し、アルゴン気流下で撹
拌しながら160℃の油浴を用いて加熱した。内容物が融
解した後、30分反応させた。撹拌しながらアスパラギン
酸システアミンナトリウム2.67 g(5.6水塩相当物、8.0
mmole)を加え、激しく混合して反応させた。反応が進
むにつれて固形化し、撹拌不可能となった。加熱開始後
約300 分(アスパラギン酸水素ナトリウム添加後の反応
時間 240分)で反応を停止し、冷却した。10.72 gの固
形物が得られた。
【0118】得られた固形物に水と10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えて修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)とした。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成
の防止能)、金属腐食防止能は先に説明した試験方法に
より測定した。それらの結果は表2に示す。
【0119】実施例5 システアミンアスパラギン酸修飾ポリアスパラギン酸 マレイン酸水素アンモニウム10.65 g(80 mmole)を500
mlセパラブルフラスコに投入し、アルゴン気流下で撹
拌しながら160℃の油浴を用いて加熱した。内容物が融
解した後、30分反応させた。撹拌しながらアスパラギン
酸システアミンナトリウム5.33 g(5.6水塩相当物、16.
0 mmole)を加え、激しく混合して反応させた。反応が
進むにつれて固形化し、撹拌不可能となった。加熱開始
後約300分(アスパラギン酸水素ナトリウム添加後の反
応時間 240分)で反応を停止し、冷却した。13.2 gの固
形物が得られた。
【0120】得られた固形物に水と10%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えて修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)とした。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成
の防止能)、金属腐食防止能は先に説明した試験方法に
より測定した。それらの結果は表2に示す。
【0121】比較例 ポリアスパラギン酸(ナトリウム塩) CF-110 と10モル
%システアミン修飾ポリアスパラギン酸(ナトリウム
塩)10CMについて、金属イオン結合力を金属指示薬NNと
Caイオンをプローブとし、オダプロットを用いて測定、
解析した。スケール防止能(炭酸カルシウム沈殿形成の
防止能)は先に説明した試験方法により測定した。それ
らの結果は表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
【発明の効果】本発明によれば、主鎖に規定された分岐
構造をもつシステアミン修飾ポリアスパラギン酸を提供
できる。このシステアミン修飾ポリアスパラギン酸は金
属イオン結合力、スケール防止能、金属腐食防止能が高
い。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式Iで表される部分構造: 【化1】 を1以上99以下の範囲のモル比(I)で、および下記
    の式II表される分岐構造を1以上49以下のモル比
    (I)で含む: 【化2】 (ここで、モル比(I)とはポリアスパラギン酸の全ア
    スパラギン酸残基のモル数を基準(100)とした比率
    であり、式中、Aspはアスパラギン酸残基を、nは1
    以上25以下の整数、mは2以上2n以下の整数、M、
    M’はそれぞれ独立に水素原子、アンモニウムまたは金
    属を示す)ことを特徴とする修飾ポリアスパラギン酸。
  2. 【請求項2】 前記部分構造が 【化3】 であることを特徴とする請求項1に記載の修飾ポリアス
    パラギン酸。
  3. 【請求項3】 25℃においてカルボキシル基のモル濃
    度を基準とするカルシウムイオン結合力が21M-1以上
    220M-1以下であることを特徴とする請求項1又は請
    求項2に記載の修飾ポリアスパラギン酸。
  4. 【請求項4】 アンヒドロポリアスパラギン酸に、メル
    カプトアミン前駆体、メルカプトアミンまたはメルカプ
    トアミンの塩(ここで、メルカプトアミンとはHSCn
    HmNH2を意味し、nは1以上25以下の整数、mは
    2以上2n以下の整数である。)およびアスパラギン酸
    の塩またはアスパラギン酸を加えて反応させる段階とを
    含むことを特徴とする修飾ポリアスパラギン酸の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記アンヒドロポリアスパラギン酸は、
    マレイン酸水素アンモニウム塩を加熱して溶融させる段
    階により得られることを特徴とする請求項4に記載の方
    法。
  6. 【請求項6】 アンヒドロポリアスパラギン酸に、モル
    比(II)で合計1以上99以下の範囲のメルカプトア
    ミン前駆体、メルカプトアミンまたはメルカプトアミン
    の塩、およびモル比(II)で合計1以上99以下の範
    囲のアスパラギン酸の塩またはアスパラギン酸(ここに
    示したモル比(II)とは、アンヒドロポリアスパラギ
    ン酸の全アスパラギン酸残基のモル数を基準(100)
    とした場合の比率のことであり、メルカプトアミンとは
    HSCnHmNH2を意味し、nは1以上25以下の整
    数、mは2以上2n以下の整数である。)を反応させる
    ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3に記載の修飾ポリアスパラ
    ギン酸を含有してなる金属腐食防止剤。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3に記載の修飾ポリアスパラ
    ギン酸を含有してなるスケール生成防止剤。
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