JP2001079932A - 多層成形品の製造方法及び製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 多層の樹脂成形品を安価に製造する多層成形
品の製造方法及び製造装置を提供すること。 【解決手段】 本発明の多層成形品の製造方法は、複数
の樹脂流路内に充填された各種の樹脂材料が上下動する
各樹脂流路上のプランジャによって圧送され、略同心円
上に形成された環状の流路をそれぞれ通った後に射出口
で合流して層状のパリソン２を形成する工程と、層状に
重ねられて射出されたパリソン２を左右それぞれに独立
した製品の型を備えた一対の金型３Ａ，３Ｂに挟み込
み、パリソン２内にエアを吹き込んで密閉ワーク４を成
形する工程と、密閉ワーク４を切断してトリミングする
工程とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、多層の樹脂成形品
を安価に提供する多層成形品の製造方法及び製造装置に
関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の樹脂成形部品には、例えば表面
に肌触りや見た目をよくするためにメタリック材や着色
材などによるスキン層と、その下に強度や弾性などの要
求に応じて選択した材料によるコア層とからなる多層成
形品が使用されている。従来、こうした多層成形品は、
先ず押し出し成形によってシートが作製され、そのシー
トが適当なサイズにカットされる。そして、カットされ
たシートは加熱された後に真空成形型にセットされ、バ
キュームポンプによって吸引されて型形状の真空成形品
が成形される。真空成形品は、スキン層とコア層とを構
成する各材質からなるものが各々成形され、それらが重
ね合わされて圧着されることで一体の多層成形品が形成
される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな方法で多層成形品を作るには、シート作製のために
押出し成形機が必要であり、また所定の形状に成形する
ために加熱機、真空成形型及びバキュームポンプが必要
であり、更に多層にするために圧着機が必要であったた
め、工程の多さと大掛かりな装置を必要とするためにコ
ストが高くなってしまう問題があった。

【０００４】そこで、本発明は、かかる問題を解決すべ
く、多層の樹脂成形品を安価に製造する多層成形品の製
造方法及び製造装置を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の多層成形品の製
造方法は、複数の樹脂流路内に充填された各種の樹脂材
料が、上下動する各樹脂流路上のプランジャによって圧
送され、略同心円状に形成された環状の流路をそれぞれ
通った後に射出口で合流して層状のパリソンを形成する
工程と、層状に重ねられて射出されたパリソンを左右そ
れぞれに独立した製品の型を備えた一対の金型に挟み込
み、パリソン内にエアを吹き込んで密閉ワークを成形す
る工程と、前記密閉ワークを切断してトリミングする工
程とを有することを特徴とする。よって、表皮などをも
った多層の樹脂成形品を製造する場合に一体成形を行う
ことができ、そのため、生産性の向上、生産設備を減ら
すことでコストを削減することが可能となった。

【０００６】また、本発明の多層成形品の製造装置は、
パリソンを形成するブロー成形用ダイスと、そのパリソ
ンを挟み込み、エアを吹き込んで密閉ワークを形成する
左右一対の金型と、その密閉ワークを切断して複数の製
品に分割してトリミングする切断手段とを有するもので
あって、前記ブロー成形用ダイスは、複数の押出機から
樹脂流路内に押し流されて充填された各種樹脂材料を上
下動するプランジャによって圧送し、各種樹脂材料が略
同心円状に形成された環状の流路を通って射出口で合流
して、層状のパリソンを形成することを特徴とする。よ
って、表皮などをもった多層の樹脂成形品を製造する場
合に一体成形を行うことができ、そのため、生産性の向
上、生産設備を減らすことでコストを削減することが可
能となった。

【０００７】

【発明の実施の形態】次に、本発明に係る多層成形品の
製造方法及び製造装置の一実施の形態について図面を参
照して説明する。図１は、多層成形品の製造過程を示し
た概念図である。本実施の形態の多層成形品は、ブロー
成形を利用して製造するものである。先ず図１（ａ）に
示すようにブロー成形用ダイス１から多層のパリソン２
が射出される（詳細は後述する）。多層のパリソン２
は、例えばそれが３層のものであれば、内層、外層及び
中間層の樹脂が接着して一体になった１本の筒として射
出される。射出された多層のパリソン２は、図１（ｂ）
に示すように金型３Ａ，３Ｂによって挟み込まれる。図
１（ｂ）は、パリソン２の上下開口部を塞いで挟み込ん
だ金型３Ａ，３Ｂの断面を示したものである。

【０００８】本実施の形態の製造装置は、製品の多数個
取りを可能としたものであって、例えば自動車のドアに
取り付けられるインナパネルのように、左右対称の製品
を成形すべく金型３Ａ，３Ｂは左右対称形状に形成され
ている。なお、金型３Ａ，３Ｂは、左右対称の製品に限
らず、パリソンを挟み込んで重ね合わされたときに密閉
空間を形成するようにしたものであれば、同一形状、或
いは異なる形状やサイズの製品であってもよい。金型３
Ａ，３Ｂに挟み込まれた多層のパリソン２は、上下の開
口部が塞がれて密閉状態になり、その中空部内へエアが
吹き込まれて図１（ｂ）に示すようにエア圧によって内
側から金型３Ａ，３Ｂの型形状に合わせて押し付けられ
た密閉ワーク４が成形される。

【０００９】そして、金型３Ａ，３Ｂが開けられれば、
所定の形状に成形された中空形状の密閉ワーク４が取り
出される。そこで、密閉ワーク４は、図１（ｃ）に示す
ように中心をレーザカットによって左右に切断して製品
毎に分離され、余分な部分を切り落として整形するトリ
ミングが行われる。よって、図１（ｄ）に示す左右対称
の多層成形品５ａ，５ｂが一度に製造される。

【００１０】次に、本実施の形態に使用したブロー成形
用ダイスについて図面を参照して説明する。図２は、ブ
ロー成形用ダイスを示す断面図であり、特に多層のパリ
ソンを射出するものである。具体的には３層のパリソン
を形成するものであり、３方から送られる液体の樹脂材
料を１箇所の射出口から射出するようにしたものであ
る。ブロー成形用ダイス１は、ダイホルダ本体１１の中
央に油圧シリンダ５１によって上下動するマンドレル１
２が挿入され、そのマンドレル１２の下端にはコア１３
が固定されている。コア１３は、ダイホルダ本体１１下
端のダイス１４内にはめ込まれ、マンドレル１２の上下
動によってできるコア１３とダイス１４との隙間が樹脂
材料を射出する射出口１５となる。

【００１１】そこで、ブロー成形用ダイス１は、このダ
イホルダ本体１１の下端部に形成された射出口１５に３
種類の樹脂材料が送られるように構成されている。先
ず、内層の樹脂材料を送るために、ダイホルダ本体１１
とマンドレル１２との間に環状の内層用樹脂流路２１が
形成されている。その内層用樹脂流路２１は、マンドレ
ル１２の外周に形成されたリングプランジャ２３の下死
点付近で拡径し、更にリングプランジャ２３の図面裏側
で１本の供給路２２へ狭められて内層用押出機２４へと
連通されている。リングプランジャ２３は、油圧シリン
ダ５２に連結されて上下動するよう構成されたアキュム
レータである。内層用押出機２４は、後述する他の押出
機と同様にスクリューポンプであり、定量の樹脂材料を
押し出すよう構成されたものである。

【００１２】次に、中間層の樹脂材料を送るために、ダ
イホルダ本体１１の下方部分に嵌合されたアキュームダ
イス１６によって、内層用樹脂流路２１の外側に環状の
中間層用樹脂流路３１が形成されている。中間層用樹脂
流路３１は、マンドレル１２の図面裏側で途中１本の供
給路３２に狭められてアキュムレータ３３へと連通して
いる。アキュムレータ３３は、油圧シリンダ５３に連結
されたプランジャ３４が供給路３２内へ樹脂材料を加圧
するよう構成され、その供給路３２へ樹脂材料を押し出
す中間層用押出機３５が設けられ、樹脂材料が供給路３
２へ供給されるよう構成されている。

【００１３】そして更に、外層の樹脂材料を送るため
に、ダイホルダ本体１１の下方部分に嵌合されたアキュ
ームダイス１７によって、中間層用樹脂流路３１の外側
に環状の外層用樹脂流路４１が形成されている。外層用
樹脂流路４１もマンドレル１２の図面裏側で途中１本の
供給路４２となってアキュムレータ４３へと連通してい
る。アキュムレータ４３は、油圧シリンダ５４に連結さ
れたプランジャ４４が供給路４２内へ樹脂材料を加圧す
るよう構成され、その供給路４２へ樹脂材料を押し出す
外層用押出機４５が設けられ、樹脂材料が供給路４２へ
供給されるように構成されている。

【００１４】そこで、このようなブロー成形用ダイス１
では、それぞれ内層用、中間層用、そして外層用の押出
機２４，３５，４５から樹脂材料が押し出され、流路内
に充填されたものがプランジャ２３，３４，４４によっ
て更に圧力を加えられ、樹脂流路２１，３１，４１へと
圧送される。内層用、中間層用、そして外層用の樹脂流
路２１，３１，４１から押し流されたそれぞれの樹脂材
料は、マンドレル１２が下降してコア１３とダイス１４
との間にできた隙間の射出口１５から層状になって射出
される。ブロー成形用ダイス１内の流路を流れる樹脂材
料は溶融状態で押し流され、射出口１５から出たところ
で冷えてパリソンを形成する。しかるに本実施の形態で
は、３種類の樹脂材料が射出口１５で円筒状に重ねられ
るので、接する面同士が溶着して射出され、射出口１５
から出たところで冷えて一体になった一本のパリソンが
形成される。そして、そのパリソンは、前述したように
金型によって成形され、レーザカットによってトリミン
グが行われる。金型及びレーザを利用した切断装置は汎
用のものを使用するため、ここではその詳細な説明を省
略する。

【００１５】よって、本実施の形態における多層成形品
の製造装置及びそれを利用した製造方法によれば、表皮
などをもった樹脂成形品を製造する場合に一体成形を行
うことができる。そのため、生産性の向上を図ることが
でき、また生産設備を減らすことでコストを削減するこ
とが可能となった。また、このような多層成形品の製造
に際し、左右対称の製品や、同一形状の製品を複数個一
度に多数個取りするようにしたため、生産性向上によ
り、この点からもコストを削減することが可能となっ
た。

【００１６】なお、本発明は、前記実施の形態のものに
限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で
様々な変更が可能である。例えば、前記実施の形態で
は、一対の製品を示しているが、更に二対、三対の製品
を一度に製造することも可能であり、また同一形状の製
品を複数個一度に製造するようにしてもよい。また、例
えば、前記実施の形態では、３層のパリソンを作るブロ
ー成形用ダイス１を示したが、２層或いは３層以上であ
ってもよい。

【００１７】

【発明の効果】本発明は、複数の樹脂流路内に充填され
た各種の樹脂材料が上下動する各樹脂流路内のプランジ
ャによって圧送され、略同心円上に形成された環状の流
路を通って射出口で合流して層状のパリソンの形成され
る工程と、層状に重ねられて射出されたパリソンを左右
それぞれに独立した製品の型を備えた一対の金型に挟み
込み、パリソン内にエアを吹き込んで密閉ワークを成形
する工程と、前記密閉ワークを左右対称に切断してトリ
ミングする工程とを有するので、多層の樹脂成形品を安
価に製造する多層成形品の製造方法を提供することが可
能となった。また、本発明は、パリソンを形成するブロ
ー成形用ダイスと、そのパリソンを挟み込み、エアを吹
き込んで密閉ワークを形成する左右一対の金型と、その
密閉ワークを切断して複数の製品に分割しトリミングす
る切断手段とを有するものであって、前記ブロー成形用
ダイスは、複数の押出機から樹脂流路内に押し流されて
充填された各種樹脂材料を上下動するプランジャによっ
て圧送し、各種樹脂材料が略同心円上に形成された環状
の流路を通って射出口で合流して、層状のパリソンを形
成する構成としたので、多層の樹脂成形品を安価に製造
する多層成形品の製造装置を提供することが可能となっ
た。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る多層成形品の製造方法を示した概
念図である

【図２】本発明に係る多層成形品の製造装置を構成する
ブロー成形用ダイスを示す断面図である。

【符号の説明】

１ ブロー成形用ダイス ２ パリソン ３Ａ，３Ｂ 金型 ４ ワーク ５ａ，５ｂ 多層成形品 １２ マンドレル １３ コア １４ ダイス １５ 射出口 ２１ 内層用樹脂流路 ２３ リングプランジャ ２４ 内層用押出機 ３１ 中間層用樹脂流路 ３４ プランジャ ３５ 中間層用押出機 ４１ 外層用樹脂流路 ４４ プランジャ ４５ 外層用押出機

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊崎 重和 愛知県刈谷市一里山町金山100番地 トヨ タ車体株式会社内 Ｆターム(参考） 4F208 AG03 AH17 LA01 LA05 LB01 LB22 LB28 LG01 LG06 LG24 LG26 LJ09 LJ31 LW02 LW22 LW23

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の樹脂流路内に充填された各種の樹
   脂材料が、上下動する各樹脂流路上のプランジャによっ
   て圧送され、略同心円状に形成された環状の流路をそれ
   ぞれ通った後に射出口で合流して層状のパリソンを形成
   する工程と、 層状に重ねられて射出されたパリソンを左右それぞれに
   独立した製品の型を備えた一対の金型に挟み込み、パリ
   ソン内にエアを吹き込んで密閉ワークを成形する工程
   と、 前記密閉ワークを切断してトリミングする工程とを有す
   ることを特徴とする多層成形品の製造方法。
2. 【請求項２】 パリソンを形成するブロー成形用ダイス
   と、そのパリソンを挟み込み、エアを吹き込んで密閉ワ
   ークを形成する左右一対の金型と、その密閉ワークを切
   断して複数の製品に分割してトリミングする切断手段と
   を有する多層成形品の製造装置において、 前記ブロー成形用ダイスは、複数の押出機から樹脂流路
   内に押し流されて充填された各種樹脂材料を上下動する
   プランジャによって圧送し、各種樹脂材料が略同心円上
   に形成された環状の流路を通って射出口で合流して、層
   状のパリソンを形成することを特徴とする多層成形品の
   製造装置。