JP2001076657A - 回転陽極x線管 - Google Patents

回転陽極x線管

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JP2001076657A
JP2001076657A JP25210499A JP25210499A JP2001076657A JP 2001076657 A JP2001076657 A JP 2001076657A JP 25210499 A JP25210499 A JP 25210499A JP 25210499 A JP25210499 A JP 25210499A JP 2001076657 A JP2001076657 A JP 2001076657A
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Japan
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electron beam
target
ray tube
anode
intensity
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JP25210499A
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English (en)
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Keiji Koyanagi
慶二 小柳
Mototatsu Doi
元達 土肥
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Hitachi Healthcare Manufacturing Ltd
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Hitachi Medical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ターゲットへの入力負荷の限界値を向上させ、
より高画質の画像を得ることができる回転陽極X線管を
提供する。 【解決手段】回転陽極X線管のターゲット上に形成され
る焦点の焦点幅方向の電子ビームの強度分布が、従来の
双峰性分布に対し、幅寸法の中心位置より左側に偏る単
峰性分布であり、左側に電子ビーム強度の最大のピーク
Pmを有し、右側には電子ビーム強度のピークは存在しな
い。このような強度分布を持つ電子ビームの衝突を、最
大の強度ピークPmがある左側から、強度ピークの存在し
ない右側に向かって受けるように、ターゲットが回転さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医療用の回転陽極X
線管に係り、特に回転陽極X線管の許容負荷を向上する
技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の回転陽極X線管は、熱電子を放出
するフィラメントと、フィラメントの周囲に配置され、
フィラメントから放出された熱電子を集束して、陽極の
ターゲット上に焦点(X線源)を形成する集束溝を有す
る集束電極とから構成され、負電位を印加される陰極部
と、この陰極部に対向して配置され、傘状の対向面を有
するターゲットと、ターゲットを支持して回転する回転
機構部と、回転機構部を回転自在に支持する固定部とか
ら構成され、正電位を印加される陽極部と、陰極部と陽
極部を絶縁して支持し、真空気密に封入する外囲器とか
ら成る。
【0003】この回転陽極X線管は、使用中高電圧が印
加され、ターゲット上の焦点からX線を放射するととも
に、陽極部に大量の熱を発生するため、X線管容器(以
下、管容器と略す)に封入して使用される。管容器内に
おいて、回転陽極X線管は絶縁支持され、絶縁油中に浸
漬される。管容器には、回転陽極X線管のターゲットの
近傍にX線放射窓が、陰極部および陽極部の近傍には高
電圧を導入するためのケーブルレセプタクルが取り付け
られている。陰極側のケーブルレセプタクルに陰極側高
電圧ケーブルが接続され、負の高電圧とフィラメントを
加熱するためのフィラメント加熱電圧が、陽極側のケー
ブルレセプタクルには陽極側高電圧ケーブルが接続さ
れ、正の高電圧が導入される。また、陽極部の回転機構
部の周囲には、回転陽極部を回転させるためのステータ
が取り付けられている。
【0004】回転陽極X線管では、使用中陰極部と陽極
部との間に百数十kVの高電圧が印加され、陰極部のフィ
ラメントから放出された熱電子が陽極部のターゲットに
衝突することによって、X線が発生する。フィラメント
はタングステンなどの電子放射材料から成る細線をコイ
ル状に巻いた構造をしており、フィラメント加熱電流を
流すことによって高温に加熱される。加熱されたフィラ
メントからは、その温度に応じた量の熱電子が放出さ
れ、陰極部と陽極部間に印加された高電圧によって形成
される電界によって、電子ビームとして陽極部に向けて
加速される。このとき、電子ビームは集束電極の集束溝
によって形成される電界によって、陽極部のターゲット
上で所望の寸法の焦点となるように集束される。
【0005】この電子ビームの流れがX線管電流であ
り、陰極部と陽極部の間に印加される高電圧がX線管電
圧である。ターゲットで発生するX線の量は、このX線
管電流およびX線管電圧の値が大きい程大きくなる。ま
た、X線量はターゲットの材質にも依存し、ターゲット
材料の原子番号が大きい程大きくなる。しかし、X線診
断に使用されるX線管電圧の領域でのX線の発生効率は
非常に低く、1%以下であるため、ターゲットの焦点に
衝突する電子ビームによって入力されるエネルギーの大
部分は熱エネルギーに変換される。このため、陽極部の
ターゲットは、電子ビームによる焦点の局所的な過熱を
防ぐために、回転機構部により高速に回転される。
【0006】このような従来の回転陽極X線管において
は、陽極部のターゲット上には陰極部のフィラメントか
らの電子ビームによって種々の形状の焦点が形成される
が、この電子ビームのフィラメント軸に垂直な方向の強
度分布は一般に二つのピークを持つもの(以下、双峰性
という)である。従って、回転陽極X線管から放射され
るX線の強度分布も双峰性を示すものである。この双峰
性を示す焦点に関しては、特開平8-264141号公報などに
開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】回転陽極X線管を含
め、殆どのX線管において、X線管への入力負荷は陽極
部のターゲットの電子ビームの衝突面、すなわち焦点に
入力し、この焦点の温度を急激に上昇させる。このた
め、X線管の入力負荷の許容値(以下、許容負荷という)
は、焦点面の温度によって制限される。
【0008】X線管を用いた画像診断装置などで、高解
像力の画像を得るためには、より小さい寸法の焦点で、
より大きなX線量を得る必要があるが、このためにはよ
り大きな入力負荷を与える必要がある。しかし、X線管
の入力負荷は許容負荷によって制限されてしまうため
に、この許容負荷が高画質化の限界を与えてしまってい
た。
【0009】このため、本発明では、回転陽極X線管の
ターゲットへの入力負荷の限界値を向上させ、より高画
質の画像を得ることができる回転陽極X線管を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の回転陽極X線管は、熱電子を放出する熱電
子源と、該熱電子源を支持し、前記熱電子を集束する集
束溝を有する集束電極とを具備する陰極部と、前記集束
電極に対向して配置され、その対向面に前記熱電子の入
射によりX線を放射する焦点が形成される円盤状のター
ゲットと、該ターゲットを回転自在に支持する回転機構
部とを具備する陽極部と、前記陰極部と前記陽極部とを
真空気密に封入する外囲器とから構成される回転陽極X
線管において、前記ターゲット上に形成される焦点にお
ける焦点幅方向の電子ビームの強度分布が幅寸法の中心
位置より片側(以下、第1の側という)に偏り、該第1の側
に電子ビーム強度の最大のピークを有し、幅寸法の中心
位置より他の側(以下、第2の側という)には電子ビーム
強度のピークは存在しないか、または存在しても小さい
ピークであり、前記ターゲットはその電子ビーム入射時
の回転方向が前記第1の側から前記第2の側に向うように
回転される(請求項1)。
【0011】この構成では、ターゲット上に形成される
焦点における焦点幅方向の電子ビームの強度分布が、幅
寸法の中心位置より片側に最大のピークを有し、ターゲ
ットが電子ビームのターゲットへの衝突を最大の強度ピ
ーク側から受けるように回転されるので、ターゲットの
焦点面の温度上昇を、従来の双峰性の電子ビーム強度分
布のものに比べ、低減させることができる。この結果、
回転陽極X線管の入力負荷の限界値を向上することがで
きる。
【0012】本発明の回転陽極X線管では更に、前記陰
極部の集束電極の集束溝は幅の広い第1の集束溝と該第1
の集束溝の奥に設けられた幅の狭い第2の集束溝から成
り、熱電子源であるコイル状フィラメントを前記第1の
集束溝又は前記第2の集束溝の溝幅の中心位置から偏ら
せて取り付けるものである。この構成では、フィラメン
トが集束溝幅の中心位置に対し、偏心して取り付けられ
ているため、フィラメントから放出される電子ビームの
焦点幅方向の強度分布は、焦点幅寸法の中心位置に対し
非対称となり、双峰性の強度分布ではなく、一方の峰が
高く他方の峰が低くなり、一方の峰のみ高く他方の峰が
なくなるという分布となる。この結果、請求項1の場合
と同様な効果が得られる。
【0013】本発明の回転陽極X線管では更に、前記第
1の集束溝及び前記第2の集束溝の溝幅の中心位置から偏
らせて、前記フィラメントを取り付けるものである。こ
の構成では、第1の集束溝と第2の集束溝の溝幅の中心位
置が一致し、フィラメントが第2の集束溝の溝幅の中心
位置から偏らせて取り付けられているので、溝幅の狭い
第2の集束溝によってフィラメントから放出される電子
ビームの強度分布は、焦点幅寸法の中心位置に対し非対
称となり、フィラメントと集束溝壁との間隔が広い側に
大きな強度ピークを有する分布となる。
【0014】本発明の回転陽極X線管では更に、前記第
1の集束溝の溝幅寸法が、前記第2の集束溝の幅寸法の中
心位置から前記第1の集束溝の第1の集束溝壁まで距離が
前記第1の集束溝の第2の集束溝壁まで距離より大きくな
るように構成され、前記フィラメントが前記第2の集束
溝の幅寸法の中心位置に取り付けられるものである。こ
の構成では、フィラメントと第1の集束溝の第1の集束溝
壁までの距離が第2の集束溝壁までの距離より大きいの
で、フィラメントから放出された電子ビームの焦点幅方
向の強度分布は、焦点幅寸法の中心位置に対し非対称と
なり、第1の集束溝壁側に大きな強度ピークを有する分
布となる。
【0015】本発明の回転陽極X線管では更に、前記集
束電極が前記ターゲット上に2個の焦点を形成すること
ができる2組のフィラメントと集束溝を具備し、前記2個
の焦点の長さ方向の電子ビーム強度分布はほぼ同一と
し、幅方向の電子ビーム強度分布はそれぞれ異なるもの
とし、前記2個の焦点の幅方向の電子ビーム強度分布を
重ね合わせて1個の合成焦点の幅方向の電子ビーム強度
分布を前記ターゲット上に形成し、該合成焦点の幅方向
の電子ビーム強度分布が前記第1の側に偏り、該第1の側
に電子ビーム強度の最大のピークを有し、前記第2の側
には電子ビーム強度のピークは存在しないか、又は存在
しても小さいピークである。この構成では集束電極に2
組の集束系が設けられ、2組の集束系が形成する2個の焦
点をターゲット上で重ね合わせて合成焦点を作り、請求
項1で形成される焦点と同じ幅方向の電子ビーム強度分
布を持たせるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を添付図面
に基づいて説明する。図1に本発明の回転陽極X線管の
全体構成の概略を示す図、図2にそのターゲット部分の
拡大図を示す。図1において、本発明の回転陽極X線管
は、陰極部10と陽極部11と外囲器12とから構成され、陰
極部10の構造に特徴があり、陰極部10から放出された電
子ビーム21によって陽極部11のターゲット25上に形成さ
れる焦点28の電子ビーム21の強度分布に特徴がある。
【0017】陰極部10は、熱電子を放出するフィラメン
ト15と熱電子を集束する集束溝17を有する集束電極16
と、集束電極16を支持する電極支持体18と、フィラメン
ト15を加熱する電圧を外部のフィラメント加熱電源22か
ら導入する導線19と、導線19を絶縁し、電極支持体18を
保持するステム20とから成る。本発明の回転陽極X線管
では、集束電極16の構造およびフィラメント15の取付け
構造が従来のものと異なる。この部分の構造について
は、後で例を上げて説明する。
【0018】陽極部11は、陰極部10からの熱電子流(電
子ビーム)21を受けてX線を発生させるターゲット25
と、ターゲット25を回転可能に支持する回転陽極26と、
回転陽極26を軸受などで回転自在に支持する固定部27と
から成る。ターゲット25を含む回転陽極26は、外部に設
けたステータ23により高速で回転される。ターゲット25
は外周部に傾斜面を有する円盤状体で、傾斜面に電子ビ
ーム21を受けてX線を発生するX線源となる焦点28を形
成する。このターゲット25の焦点面29は電子ビーム21を
受けてX線を発生するため、耐熱性が高く、かつ原子番
号の高い金属又は合金、例えばタングステンやタングス
テン合金などで作られている。
【0019】図2は陽極部11のターゲット25の部分を拡
大して示したものである。ターゲット25には陰極部10か
らの電子ビーム21が衝突して、ほぼ長方形状の焦点(X
線源)28を形成する。この焦点28においては、電子ビー
ム21のエネルギーがX線に変換されるが、X線への変換
効率が低いため、電子ビーム21の大部分のエネルギーは
熱に変換される。このため、電子ビーム21のターゲット
25への衝突により焦点28の温度が高温に上昇する。回転
陽極X線管では、焦点28の温度上昇による焦点面29の融
解などを避けるために、ターゲット25を図中の矢印で示
した回転方向に回転させて、焦点28の実効的な面積を拡
げることによって、焦点28の温度上昇を低減させてい
る。ターゲット25の回転は、図1に示したステータ23を
付勢することによって行われる。
【0020】電子ビームの衝突による焦点28の温度上昇
は、電子ビーム21のエネルギー量、焦点28の面積、ター
ゲット25の材質、ターゲット25の回転速度などに依存す
る。電子ビーム21のエネルギー量は、X線管の入力負荷
(X線管電圧とX線管電流との積)と負荷時間によって決
まる。また、電子ビーム21は焦点28の全面積について一
様なビーム強度を持つものではないので、焦点28の温度
上昇は電子ビーム21の強度分布に依存することになる。
【0021】従来の回転陽極X線管における焦点の電子
ビームの強度分布の−例を図3に示す。この焦点の電子
ビームの強度分布は、フィラメント15の位置との関係で
異なり、フィラメント15のコイルの長さ方向、すなわち
ターゲット25の円盤状体の半径方向である焦点長さ方向
では、強度ピークが1つある単峰性の強度分布をしてい
るのに対し、ターゲット25の回転方向である焦点幅方向
では強度ピークが2つある双峰性の強度分布をしてい
る。図3に示したものは、焦点幅方向の電子ビームの強
度分布である。図3において、横軸は焦点幅方向の位置
を示し、縦軸は電子ビームの相対強度を示している。焦
点幅方向の位置に関しては、図2において焦点28の回転
方向に沿って座標をとっている。すなわち、図示の焦点
で左から右に向けて座標をとっている。
【0022】図3に示した焦点28の電子ビーム21の相対
強度分布は、幅寸法の中心位置に対し左右方向にほぼ対
称で2つの強度ピークP1、P2をもつ分布(双峰性分布)
をしている(2つの強度ピークP1、P2の電子ビームの相
対強度値をAとする。)。このような強度分布をもつ電
子ビーム21をターゲット25に衝突させた場合の焦点28に
おける温度変化を計算で求めてみると図4の如くなる。
図4は、図3の相対強度分布をもつ電子ビーム21をターゲ
ット25に衝突させた場合のターゲット25の温度変化の計
算結果の一例である。
【0023】図4において、横軸は時間経過を、縦軸は
電子ビームの衝突を受けた点の温度上昇を示している。
この温度上昇は焦点長さ方向の位置によって違ってお
り、焦点長さ方向の中心部で高く、端部で低くなってい
る。このため、図4には温度上昇の大きい中心部近傍の
ものが示されている。また、図4にはターゲット25を2回
転した分の温度上昇経過が示されている。焦点28に第1
回目の電子ビーム21が衝突している間は温度上昇し、電
子ビーム21の衝突がなくなると熱伝導及び熱輻射により
放熱され、温度が低下する。しかし、温度が常温に戻ら
ないうちに第2回目の電子ビーム21の衝突を受けるため
に、温度は第1回目の電子ビーム21の衝突よりも上昇す
る。
【0024】図4の焦点面の温度上昇カーブを見ると、
電子ビーム28の衝突ごとに2つの温度上昇のピークT1、T
2及びT3、T4がある。前側の温度上昇ピークT1、T3は電
子ビーム21の一方(左側)の強度ピークP1に対応するも
のであり、後側の温度上昇ピークT2、T4は、電子ビーム
21の他方(右側)の強度ピークP2に対応するものであ
る。焦点面の全体の温度上昇としては、前側の温度上昇
ピークT1、T3に後側の温度上昇ピークT2、T4が加算され
るような形になっているが、両温度上昇ピークの間には
電子ビーム21の強度分布の凹み部分Qに対応する温度降
下部分T1′、T3′があるため、その分だけ焦点面の温度
上昇が低下している。
【0025】図5には本発明の回転陽極X線管の焦点28
を形成する電子ビーム21の強度分布の一例を示す。図5
の横軸、縦軸は図3の場合と同じである。図5には比較の
ために図3に示した従来球の焦点の電子ビームの相対強
度分布を細線で示す。本発明の回転陽極X線管の焦点の
電子ビーム21の相対強度分布の特徴は、強度ピークが1
個であり、その強度ピークが図2の焦点28において幅寸
法の中心位置から左側の部分に存在するものである。本
発明の回転陽極X線管の電子ビーム21の相対強度分布を
従来のものと比較すると、本発明の焦点28の強度ピーク
Pmは、従来の焦点28の一方(左側)の強度ピークP1に対
応し、強度的には従来のものより高く(A+B)なってい
る。従来の焦点28の他方(右側)の強度ピークP2に対応
する強度ピークはなく、この部分の強度分布はなだらか
な下降線になっている。
【0026】図6には、図5の相対強度分布をもつ電子ビ
ーム21をターゲット25に衝突させた場合のターゲット25
の温度変化の計算結果を示す。図6において、横軸、縦
軸のスケールのとり方は図4の場合と同様である。図6に
は、比較のために、図4に示した従来球の焦点における
温度変化の計算結果を細線で示す。図6から判るよう
に、本発明の回転陽極X線管の焦点における温度上昇の
特徴は、電子ビーム21の衝突ごとの温度上昇ピークは1
個ずつであり、これらの温度上昇ピークTP1、TP2の高さ
は従来球の焦点における前側の温度上昇ピークT1、T3よ
り若干高くなっているが、後側の温度上昇ピークT2、T4
よりかなり低くなっている。また、温度上昇ピークの部
分およびその後の温度変化もなだらかになっている。
【0027】上記の本発明の回転陽極X線管の焦点にお
ける温度上昇の特徴は、図5に示した如き電子ビームの
相対強度分布を持つ焦点すなわち図5において幅寸法の
中心位置より左側部に単峰性の強度ピークを持つ焦点で
あれば達成できるものである。これに対し、焦点の電子
ビームの相対強度分布が図3の従来球の焦点の如く、双
峰性の強度分布のものや、単峰性の強度分布であって
も、図5において、幅寸法の中央部に強度ピークがある
もの、または、幅寸法の中心より右側部に強度ピークが
あるものでは、焦点の温度上昇は、本発明の回転陽極X
線管の焦点の温度上昇よりも高くなってしまう。
【0028】また、図5には、幅寸法の中心位置より左
側に大きな強度ピークを1つ有し、右側はなだらかな電
子ビームの強度分布例を例示したが、本発明はこれに限
定されず、右側の部分が中央部分と同等な強度レベルで
あったり、又は右側の部分に小さな強度ピークが存在す
る場合でも、この強度ピークが左側の強度ピークPmに比
べて小さい場合(例えば、10%以上の差がある場合)に
は、本発明の効果は得られる。
【0029】次に、本発明の回転陽極X線管の焦点の電
子ビームの強度分布を実現する陰極部の実施例について
説明する。図7に、本発明の回転陽極X線管の陰極部構
造の第1の実施例を示す。図7は、陰極部の集束電極部の
断面図を示したものである。図7において、集束電極16
には幅の広い第1の集束溝35と幅の狭い第2の集束溝36が
設けられており、第2の集束溝36にフィラメント15が取
り付けられている。フィラメント15の取付位置37は第2
の集束溝36の溝幅の中心位置38でなく、この中心位置38
に対し右側の集束溝壁40に寸法aだけ接近させて取り付
けられている。この結果、フィラメント15と第2の集束
溝36の左側及び右側の集束溝壁39、40との間隙はフィラ
メント15の左側で広く(寸法b)、フィラメント15の右側
で狭く(寸法c)なっている(b>c)。
【0030】図7の如く陰極部10を構成した場合の陰極
からの電子ビーム軌道の計算例を図8に、また、ターゲ
ット上の焦点における電子ビームの強度分布の計算例を
図9に示す。いずれも焦点幅方向のものである。図9によ
れば、焦点における電子ビームの強度分布は、幅寸法の
中心位置より左側に強度ピークPmを1個有するものであ
り、所期のものが得られている。左側の強度ピークと右
側のほぼ平坦な部分における電子ビーム強度を比較する
と、後者は前者の60%程度である。本実施例での焦点幅
方向の電子ビームの強度分布は図5に示したものとほぼ
類似のものとなるので、図5と同様の焦点面の温度上昇
の低減効果が得られる。
【0031】図10に本発明の回転陽極X線管の陰極構造
の第2の実施例を示す。図10は、陰極部の集束電極部の
断面図を示したものである。図10において、集束電極16
aには第1の実施例と同様に、幅の広い第1の集束溝35と
幅の狭い第2の集束溝36が設けられているが、本実施例
では、第1の集束溝35の構成及びフィラメントの取り付
け位置が第1の実施例と異なる。フィラメント15は第2の
集束溝36の溝幅の中心位置38に取り付けられている。第
1の集束溝35に関しては、フィラメント15が取り付けら
れている前記中心位置38を基準にして、左側の集束溝壁
41までの距離dと右側の集束溝壁42までの距離eが異なる
値になる(d>e)ようにし、その結果フィラメント15と左
側の集束溝壁41との間隔d′とフィラメント15と右側の
集束溝壁42との間隔e′が異なる値になっている(d´>e
´)。
【0032】集束電極16aの集束溝とフィラメント15と
の関係を上記の如く構成すると、第1の集束溝35内でフ
ィラメント15と左右の集束溝壁41、42と間隔が異なる(d
>e)ため、フィラメント15から放出される電子ビームの
焦点における強度分布に偏りが生じ、従来の双峰性のも
のから単峰性のものに変化する。図11に、本実施例にお
ける陰極からの電子ビーム軌道の計算例を、図12に、タ
ーゲット上の焦点における電子ビームの強度分布の計算
例を示す。いずれも焦点幅方向のものである。図12によ
れば、焦点における電子ビームの強度分布としては、幅
寸法の中心位置より左側、すなわち集束溝壁までの距離
が大きい側に大きな強度ピークPmがあり、幅寸法の中心
位置より右側に小さな強度ピークPsがある。
【0033】上記の大きな強度ピークPmは所期のもので
ある。小さな強度ピークPsの強度値は大きな強度ピーク
Pmの強度値の約55%であり、相対的に小さいので、図4
におけるT2、T4が大幅に抑制されるので、焦点面の温度
上昇の低減効果は確保される。
【0034】次に、本発明の回転陽極X線管の第3の実
施例について図13を用いて説明する。図13(a)は本実施
例の焦点幅方向の電子ビームの強度分布を、図13(b)は
電子ビーム集束系の要部を示したものである。本実施例
では、2つの焦点を重ね合わせることによって、幅寸法
の中心より左側に大きな強度ピークPmを有する焦点を形
成するものである。
【0035】図13(b)において、本実施例の集束電極16
bには、2つの集束溝17aと17bが設けられ、2つのフ
ィラメント15aと15bが取り付けられている。フィラメ
ント15aから放出された電子ビーム21aとフィラメント
15bから放出された電子ビーム21bは、それぞれ集束溝
17aと集束溝17bによって集束され、ターゲット25上に
2つの焦点を形成する。本実施例の場合、2つの焦点は
ターゲット25上で重ね合わされて、1つの焦点28aとな
る。
【0036】焦点28aの電子ビームの強度分布を示した
図が図13(a)である。図13(a)において、破線で示したも
のS1が左側のフィラメント15aからの電子ビーム21a
による焦点の電子ビーム強度分布、一点鎖線で示したも
のS2が右側のフィラメント15bから電子ビーム21bに
よる焦点の電子ビーム強度分布、実線で示したものSが
2つの焦点を重ね合わせた焦点28aの電子ビーム強度分
布である。本実施例では、焦点幅寸法が小さい三峰性の
電子ビーム21aによる焦点S1と焦点幅寸法が大きい双
峰性の電子ビーム21bによる焦点S2を重ね合わせて、
焦点S28aを形成している。
【0037】焦点28aは、幅寸法の中心位置より左側に
大きな強度ピークPmを有するものであり、所期の電子ビ
ーム強度分布を有している。幅寸法の中心位置より右側
に小さな強度ピークPsを有するが、この強度値は大きな
強度ピークPmの強度値に対し、約30%と小さい。この結
果、本実施例での焦点幅方向の電子ビームの強度分布は
図5に示したものとほぼ類似のものとなり、図5と同様の
焦点面の温度上昇の低減効果が得られる。
【0038】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明によれば、回
転陽極X線管のターゲット上に形成される焦点の幅方向
の電子ビーム強度分布に関し、幅寸法の中心位置よりタ
ーゲットの逆回転方向側に大きな強度ピークを有し、幅
寸法の中心位置よりターゲットの回転方向側に強度ピー
クがないか、有っても小さい強度ピークとなるような偏
りのある強度分布とすることにより、回転陽極X線管の
ターゲットへの入力負荷の限界値を向上させることがで
きる。この結果、本発明の回転陽極X線管をX線診断装
置やX線CT装置に使用することにより、より高画質の
X線画像やCT画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転陽極X線管の全体構成の概略を示
す図。
【図2】図1のターゲット部分の拡大図。
【図3】従来の回転陽極X線管の焦点における電子ビー
ムの強度分布の一例。
【図4】図3の焦点における温度変化の計算例。
【図5】本発明の回転陽極X線管の焦点を形成する電子
ビームの強度分布の一例。
【図6】図5の焦点における温度変化の計算例。
【図7】本発明の回転陽極X線管の陰極構造の第1の実施
例。
【図8】図7の陰極からの電子ビーム軌道の計算例。
【図9】図7の焦点における電子ビームの強度分布の計算
例。
【図10】本発明の回転陽極X線管の陰極構造の第2の実
施例。
【図11】図10の陰極からの電子ビーム軌道の計算例。
【図12】図10の焦点における電子ビームの強度分布の計
算例。
【図13】本発明の回転陽極X線管の第3の実施例を説明
するための図。
【符号の説明】
10…陰極部 11…陽極部 12…外囲器 15…フィラメント 16、16a、16b…集束電極 17、17a、17b…集束溝 18…電極支持体 19…導線 20…ステム 21、21a、21b…熱電子流(電子ビーム) 22…フィラメント加熱電源 23…ステータ 25…ターゲット 26…回転陽極 27…固定部 28、28a…焦点 29…焦点面 35…第1の集束溝 36…第2の集束溝 37…フィラメント取付位置 38…第2集束溝中心位置 39、41…左側集束溝壁 40、42…右側集束溝壁

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱電子を放出する熱電子源と、該熱電子
    源を支持し、前記熱電子を集束する集束溝を有する集束
    電極とを具備する陰極部と、前記集束電極に対向して配
    置され、その対向面に前記熱電子の入射によりX線を放
    射する焦点が形成される円盤状のターゲットと、該ター
    ゲットを回転自在に支持する回転機構部とを具備する陽
    極部と、前記陰極部と前記陽極部とを真空気密に封入す
    る外囲器とから構成される回転陽極X線管において、前
    記ターゲット上に形成される焦点における焦点幅方向の
    熱電子流(以下、電子ビームという)の強度分布が幅寸法
    の中心位置より片側(以下、第1の側という)に偏り、該
    第1の側に電子ビーム強度の最大のピークを有し、幅寸
    法の中心位置より他の側(以下、第2の側という)には電
    子ビーム強度のピークは存在しないか、または存在して
    も小さいピークであり、前記ターゲットはその電子ビー
    ム入射時の回転方向が前記第1の側から前記第2の側に向
    うように回転されることを特徴とする回転陽極X線管。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112291912A (zh) * 2020-11-23 2021-01-29 中国工程物理研究院应用电子学研究所 一种高能微焦点x射线生产设备

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