JP2001073078A - ヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

ヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

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JP2001073078A
JP2001073078A JP25257599A JP25257599A JP2001073078A JP 2001073078 A JP2001073078 A JP 2001073078A JP 25257599 A JP25257599 A JP 25257599A JP 25257599 A JP25257599 A JP 25257599A JP 2001073078 A JP2001073078 A JP 2001073078A
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galvanized steel
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Tatsuya Miyoshi
達也 三好
Takahiro Kubota
隆広 窪田
Masaru Sagiyama
勝 鷺山
Masaaki Yamashita
正明 山下
Hideki Matsuoka
秀樹 松岡
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒートシュリンクバンド用として好適な亜鉛
系めっき鋼板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C :0.005 %以下、Si:1 %
以下、Mn:0.1 %以上2.0 %以下、P :0.15%以下、S
:0.02%以下、sol .Al:0.08%以下、N :0.005 %
以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B :0.0003%以上0.
005 %以下を含む鋼板表面に亜鉛系めっきを施した、焼
きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率μと板厚
との積が350 以上の亜鉛系めっき鋼板の表面に、SiO 2
換算で0.1 〜3g/m2 の無機系皮膜を形成してなるヒート
シュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。前記鋼板は、熱
間圧延後冷間圧延し、次いで、800 ℃以上900 ℃以下の
温度域にて焼鈍する、あるいはこの焼鈍の後さらに圧延
率0.5 %以下の調質圧延を施した鋼板表面に、亜鉛系め
っきを施し、更にその表面にSiO 2 換算で0.1 〜3g/m2
の無機系皮膜を形成し得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレビ等のカラー
陰極線管において、パネル部周囲を緊締するヒートシュ
リンクバンドに適用される亜鉛系めっき鋼板およびその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】カラー陰極線管では、管体内が1.0 ×10
-7Torr の高真空状態であることから、パネル面の変形
防止および管体の内爆防止といった観点から、バンド状
に成形した鋼板からなるヒートシュリンクバンドをパネ
ル部の周囲に設け、これにより張力を付与することによ
ってパネル面の変形を補正している。
【0003】さらに、このようなヒートシュリンクバン
ドは、内部磁気シールドと同様、地磁気のシールドを行
う機能をも有しており、地磁気による電子ビームの蛍光
面上に対する着弾位置のずれを防止し、結果的に色ずれ
が生じるのを防止する機能を有している。
【0004】従来から、このヒートシュリンクバンド用
鋼板には、地磁気レベル(約0.3Oe)での透磁率がおよ
そ200 程度の軟鋼板にめっきを付着させた鋼板が用いら
れているが、その磁気シールド性は不充分あり、色ずれ
防止効果は充分とはいえない。また、地磁気による色ず
れに対しては、蛍光面の位置を調整するなどの煩雑な工
程が必要となっていた。
【0005】特開平10−208670号公報には、大気圧によ
るパネル面の変形を補正する張力が確保されるととも
に、十分な磁気シールド性を有するヒートシュリンクバ
ンドの製造方法が提案されている。
【0006】この技術では、重量%でC ≦0.005 %、2.
0 %≦Si≦4.0 %、0.1 %≦Mn≦1.0 %、P ≦0.2 %、
S ≦0.020 %、Sol.Al≦0.004 %又は0.1 %≦Sol.Al≦
1.0%、N ≦0.005 %を含有する鋼を、熱間圧延及び/
又は冷間圧延する工程と、700 〜900 ℃で焼鈍する工程
と、冷圧率3 〜15%で軽冷圧する工程とを備える。その
結果、上記軽冷圧する工程後に、加熱冷却された後の0.
3Oe における透磁率μがμ≧250 となり、降伏応力YSが
YS≧40kgf/mm2 となる。
【0007】さらにテレビのブラウン管のヒートシュリ
ンクバンドのような高温環境にさらされる場合、亜鉛系
めっき鋼板表面に有機樹脂皮膜を施すが、このような樹
脂を被覆した亜鉛系めっき鋼板では、加熱による変色や
発煙、臭気、耐食性の劣化といった問題があった。
【0008】これらを解決するために、特開平6-57442
号公報には、特に耐かじり性、耐熱性、耐摺動摩耗性に
着目し、めっき鋼板の表面に第1 層として化成処理皮
膜、第2 層として固形潤滑剤で構成される潤滑皮膜を有
するめっき鋼板が提案されている。
【0009】また、特開平7-278837号公報には、加熱後
の色調変化安定性を目的とし、シリカゾルの粒径および
割合を規定し、Zn−Ni系電気めっき鋼板上に、そのシリ
カゾルを配合したクロメ−ト皮膜を有する表面処理鋼板
が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
10−208670号公報記載の技術では、Siの増加により透磁
率が向上するという効果はあるが、3 %前後添加してい
るため、強度が高すぎ、40kgf/mm2 未満の降伏応力が要
求される場合には対応が困難である、および、表面欠陥
が発生しやすく、歩留まり低下に伴うコストアップにつ
ながりかねない、という問題があった。
【0011】特開平6-57442 号公報記載の技術では、加
熱後の耐食性などが十分でないという問題があった。
【0012】特開平7-278837号公報記載の技術では、有
機成分がないために加熱時の変色は幾分抑制されるがブ
ルーイングによる変色は免れない。また、皮膜が極めて
薄いために加工する際に傷がつき、外観を劣化させた
り、傷部の耐食性が劣化するという問題があった。
【0013】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、充分な磁気シールド性を維持し、色ずれが少
なく、耐加熱変色性、加熱時発煙性、加熱後耐食性、お
よび耐疵付き性のいずれにもに優れたヒートシュリンク
バンド用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
【0015】(1) Siが1 %以下であり、めっき付着後の
ヒートシュリンクバンド用鋼板において、地磁気レベル
の外部磁界強度である0.3Oe での透磁率μ(比透磁率)
と板厚t (mm)との積:μ×t が350 以上となると、色
ずれの改良がみられること。
【0016】(2)鋼中のSiが1 %を超えると、高温での
バンドの強度が高くなりすぎるため、バンドとパネルと
の密着性が低下し、地磁気ドリフト性が劣化すること。
【0017】(3) 焼きばめ処理後の透磁率を高く保つた
めには、TiおよびB を添加して炭化物・窒化物を形成
し、固溶C ・固溶N を低減することが有効であること。
【0018】(4) 無機系皮膜を亜鉛系めっき鋼板表面に
処理することにより、耐加熱変色性、加熱時発煙性、加
熱後耐食性および耐疵付き性のいずれにもに優れた亜鉛
系めっき鋼板が得られること。
【0019】(5) 無機系皮膜のベースとしてストレート
シリコーン樹脂を使用することにより、より優れた耐加
熱変色性、加熱時発煙性、加熱後耐食性および耐疵付き
性が得られること。
【0020】本発明は、このような知見に基づいて完成
されたものであり、次の発明により解決される。
【0021】第1 発明は重量%で、C :0.005 %以下、
Si:1 %以下、Mn:0.1 %以上2.0%以下、P :0.15%
以下、S :0.02%以下、sol .Al:0.08%以下、N :0.
005%以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B :0.0003%
以上0.005 %以下を含む鋼板表面に亜鉛系めっきを施し
た、焼きばめ後の状態で0.3Oe の磁界における透磁率μ
と板厚との積が350 以上の亜鉛系めっき鋼板の表面に、
SiO 2 換算で0.1 〜3g/m2 の無機系皮膜を形成してなる
ことを特徴とするヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっ
き鋼板である。
【0022】第2 発明は、無機系皮膜がストレートシリ
コーン樹脂であることを特徴とする第1 発明記載のヒー
トシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板である。
【0023】第3 発明は、重量%で、C :0.005 %以
下、Si:1 %以下、Mn:0.1 %以上2.0 %以下、P :0.
15%以下、S :0.02%以下、sol .Al:0.08%以下、N
:0.005 %以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B :0.0
003%以上0.005 %以下を含む鋼板表面に亜鉛系めっき
を施した、焼きばめ後の状態で0.3Oe の磁界における透
磁率μと板厚との積が350 以上の亜鉛系めっき鋼板の表
面に、第1 層として金属Cr換算で100mg/m 2 以下のクロ
メート皮膜を形成し、その上に第2 層としてSiO 2換算
で0.1 〜3g/m2 のストレートシリコーン樹脂皮膜を形成
してなることを特徴とするヒートシュリンクバンド用亜
鉛系めっき鋼板である。
【0024】第4 発明は、前記クロメート皮膜は、3 価
クロムイオン/ 全クロムイオン(3価クロムイオン+6
価クロムイオン)が重量比で2/10〜6/10の割合であり、
さらにリン酸イオンを重量比でリン酸イオン/ 全クロム
イオン=1.0 〜4.0 の範囲で含む処理液を塗布し、60〜
200 ℃で乾燥してなることを特徴とする第3 発明記載の
ヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板である。
【0025】第5 発明は、前記クロメート皮膜は、3 価
クロムイオン/ 全クロムイオン(3価クロムイオン+6
価クロムイオン)が重量比で2/10〜6/10の割合であり、
さらにリン酸イオンを重量比でリン酸イオン/ 全クロム
イオン=1.0 〜4.0 の範囲で含み、かつ、粒径5 〜20nm
のコロイダルシリカを重量比でコロイダルシリカ/ 全ク
ロムイオン=2.0 〜6.0 の範囲で含む処理液を塗布し、
60〜200 ℃で乾燥してなることを特徴とする第3 発明記
載のヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。
【0026】第6 発明は、前記ストレートシリコーン樹
脂皮膜中に含まれる有機基が メチル基であることを特
徴とする第2 発明ないし第5 発明のいずれかに記載のヒ
ートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板である。
【0027】第7 発明は、前記ストレートシリコーン樹
脂皮膜中のSiO 2 成分が全皮膜重量の60%以上であるこ
とを特徴とする第2 発明ないし第6 発明のいずれかに記
載のヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板であ
る。
【0028】第8 発明は、前記無機系皮膜は、バインダ
ーとなる皮膜主成分100 重量部に対して結晶性潤滑剤を
20重量部以下含有することを特徴とする第1 発明ないし
第7発明のいずれかに記載のヒートシュリンクバンド用
亜鉛系めっき鋼板である。
【0029】第9 発明は、前記無機系皮膜は、バインダ
ーとなる皮膜主成分100 重量部に対して軟化点70℃以上
の有機系潤滑剤を20重量部以下含有することを特徴とす
る第1 発明1 ないし第8 発明のいずれかに記載のヒート
シュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板である。
【0030】第10発明は、第1 発明記載の化学成分を有
する鋼を熱間圧延し、引き続いて冷間圧延し、次いで、
得られた鋼板を800 ℃以上900 ℃以下の温度域にて焼鈍
する、あるいは、この焼鈍の後さらに圧下率0.5 %以下
の調質圧延を施した鋼板表面に、亜鉛系めっきを施し、
更にその表面にSiO 2 換算で0.1 〜3g/m2 の無機系皮膜
を形成したことを特徴とするヒートシュリンクバンド用
亜鉛系めっき鋼板の製造方法である。
【0031】第11発明は、焼鈍後、あるいは焼鈍と調質
圧延との間で、250 ℃以上500 ℃以下の温度域にて過時
効処理を行うことを特徴とする第10発明記載のヒートシ
ュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板の製造方法である。
【0032】なお、バインダーとなる皮膜主成分とは、
主としては、シリコーン樹脂であり、水ガラス、リチウ
ムシリケート、アルカリ金属珪酸塩、シリカゾルも含まれ
る。
【0033】また、本明細書において、鋼の成分を示す
%はすべて重量%である。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。
【0035】まず、色ずれと透磁率との関係について説
明する。C :0.002 %、Si:0.02%、Mn:0.8 %、P :
0.07%、S :0.006 %、sol .Al:0.04%、N :0.002
%以下、Ti:0.04%、B :0.0008%の組成を有する鋼を
実験室溶解後、板厚3.2mm まで熱間圧延した。その後、
板厚0.8 〜1.6mm まで冷間圧延し、850 ℃または870 ℃
で90秒の焼鈍後、450 ℃で2 分間の過時効処理を施し
た。次いで、調質圧延を施さずに、所定の形状のバンド
に加工した。
【0036】加工したバンドを、500 ℃で60秒間加熱
後、29インチTV陰極線管パネルにはめ込み、地磁気ドリ
フト性の評価を行なった。結果を図1 に示す。ここで、
従来鋼として、C :0.04%、Si:0.01%、Mn:0.21%、
P :0.015 %、S :0.013 %、sol .Al:0.02%、N :
0.002 %の組成の鋼板に、熱間圧延から過時効処理まで
前記同様の処理を行った後、1 %の調質圧延を施した材
料についてもリングに加工し、同様の評価を行なった。
【0037】図中の横軸は、地磁気相当の外部磁界0.3O
e での透磁率μと板厚t (mm)との積μ×t の値であ
る。なお、透磁率μは、焼きばめ前の焼鈍板から採取し
たリング試験片について、焼きばめ相当の500 ℃で60秒
の熱処理を施した後に測定を行なった。
【0038】また、地磁気ドリフト性は地磁気による電
子ビ−ムのランディングポイントのドリフト量をもって
評価した。図1 の縦軸はこのようなドリフト量Bh、Bvを
示す。具体的には、CRT に対して0.35Oeの垂直磁界と0.
3Oe の水平磁界を印加した状態で、CRT を360 °回転さ
せ、電子ビームのランディングポイントの基準点に対す
る位置ずれ(ランディングエラー)を測定し、これのピ
ークtoピークの値を水平ドリフト量Bhとした。また、水
平磁界を0Oe とし、垂直磁界を0Oe から0.35Oeに変化さ
せたときのランディングエラーを垂直ドリフト量Bvとし
て測定した。なお、縦軸のランディングエラーのドリフ
ト量については、従来鋼の値を1 としたときの相対値を
もって示している。
【0039】図1 から明らかなように、μ×t が300 程
度まではBh、Bv共に従来材との比が1.0 前後で、従来材
と同程度の値であるが、350 以上では、Bh、Bv共に顕著
に減少する傾向が見られる。これより、地磁気による色
ずれは、μ×t が増加することによって改善され、その
値が350 以上で従来鋼よりも優れた値になることがわか
る。
【0040】次いで、鋼成分限定理由について説明す
る。 C :鋼板の強化に寄与する元素であるが、透磁率にとっ
ては好ましくなく、その透磁率に対する悪影響を防ぐた
めに、0.005 %以下、好ましくは、0.003 %以下、さら
に好ましくは0.002 %以下とする。
【0041】Si:鋼板の強化に寄与し、また磁気特性を
向上させる元素である。ただし、Siは高温強度を高める
ことから、1%を超えて添加すると、やきばめ収縮時にパ
ネルとバンドとの密着性が低下し、隙間が生じ、磁気シ
ールド性を劣化させるおそれが有るため、Si量を1%以
下、好ましくは0.5%以下に規定する。なお、Nbを添加し
ない成分系にあっては、Nb添加時のような細粒化による
鋼板の高強度化が期待できないため、Si量の下限を0.15
% 超とする。
【0042】Mn:熱間延性の改善に効果があり、また、
固溶強化による鋼板の強度上昇にも寄与する元素である
ため、0.1 %以上添加する。ただし、2.0 %を超えて添
加した場合には透磁率の劣化をもたらすため、2.0 %以
下とする。なお、これらの規定範囲内では、所望の強度
レベルに応じてMnを選択すればよい。
【0043】P :鋼板の強化に寄与する元素であり、必
要に応じて添加してもよい。しかしながら、0.15%を超
えて添加した場合には、鋼板の脆化を招き、冷間圧延時
のコイル破断などの問題を生じるため、0.15%以下とす
る。
【0044】S :熱間延性および透磁率の両者にとって
好ましくなく、これらに悪影響をおよぼさない観点か
ら、0.02%以下とする。
【0045】sol.Al:加工性を劣化させるので好ましく
なく、この影響を防ぐために、0.08%以下とする。
【0046】N :C と同様、鋼板の強化に寄与する元素
であるが、透磁率にとって好ましくなく、その透磁率に
対する悪影響を防ぐために、0.005 %以下、好ましくは
0.003 %以下とする。
【0047】Ti:B と共に、本発明でもっとも重要な成
分である。Tiを添加することにより、固溶N を窒化物と
して、あるいは固溶C を炭化物などとして固定すること
ができ、固溶C ・固溶N に起因する材質の経時変化を抑
えることができる。しかし、過度の添加は却って透磁率
に悪影響をおよぼすため、0.02%以上0.06%以下、好ま
しくは、0.03%以上0.05%以下とする。
【0048】B : Ti と共に、本発明でもっとも重要な
成分である。B は鋼板の脆性改善に効果を有し、また、
固溶N を固定する性質も有するので、0.0003%以上添加
する。しかしながら、過度の添加は、鋼板の延性劣化を
招くため、0.005 %以下、好ましくは、0.002 %以下、
さらに好ましくは、0.0010%以下に規定する。
【0049】次に、焼鈍温度と透磁率との関係について
説明する。 C :0.002 %、Si:0.03%、Mn:1.2 %、P :0.08%、
S :0.005 %、sol .Al:0.03%、N :0.002 %以下、
Ti:0.03%、B :0.0005%の組成を有する鋼を実験室溶
解後、板厚2.8mm まで熱間圧延し、その後、板厚1.0mm
まで冷間圧延し、720 〜930 ℃で90秒の焼鈍後、450 ℃
で2 分間の過時効処理を施し、調質圧延を施さずに、焼
きばめ相当の熱処理である500 ℃、60秒の焼鈍を施した
鋼板を用いた。
【0050】図2 は、焼鈍温度と、0.3Oe の磁界におけ
る透磁率μと板厚t (mm)との積μ×t との関係を示し
た図である。
【0051】焼鈍温度が800 ℃未満までは、焼鈍温度の
上昇にともない材料の透磁率が若干向上するものの、著
しい透磁率の変化は認められない。一方、800 ℃〜900
℃の温度域で焼鈍を施すと、透磁率が著しく向上する。
さらに、900 ℃を超えて焼鈍温度を高めると、逆に透磁
率は減少する。
【0052】この透磁率の変化は鋼板のミクロ組織と対
応しており、焼鈍温度が800 ℃未満の場合は再結晶お
よびその後の粒成長が不十分なために透磁率の大幅な向
上が認められず、焼鈍温度が800 ℃以上900 ℃以下の
場合には再結晶・粒成長にともなって、透磁率が向上
し、焼鈍温度が900 ℃を超えると変態が生じるため結
晶粒が微細化して再び透磁率が低下するものと考えられ
る。
【0053】したがって、焼鈍温度は、800 ℃以上900
℃以下であることが必要であり、840 ℃以上900 ℃以下
であることが好ましい。高温域での材質安定性を考慮す
ると、焼鈍温度は840 ℃以上875 ℃以下であることがさ
らに好ましい。
【0054】次に、調質圧延圧下率と透磁率との関係に
ついて説明する。C :0.003 %、Si:0.01%以下、Mn:
1.0 %、P :0.08%、S :0.005 %、sol .Al:0.04
%、N :0.002 %以下、Ti:0.05%、B :0.0007%の組
成を有する鋼を実験室溶解後、板厚2.8mm まで熱間圧延
し、板厚1.0mm まで冷間圧延した後、850 ℃で90秒の焼
鈍に引き続き450 ℃で2 分間の過時効処理を施し、圧下
率0〜2.0 %の調質圧延を施した鋼板を用いた。
【0055】図3 は、調質圧延圧下率と透磁率の関係を
示す図である。なお、ここでは透磁率の代りに、0.3Oe
の磁界における透磁率μと板厚t (mm)との積μ×t
と、調質圧延圧下率との関係を示してある。調質圧延圧
下率が0.5 %までは、圧下率の増加に従い材料の透磁率
が若干低下するものの、著しい透磁率の変化は認められ
ない。一方、調質圧延圧下率が0.5 %を超えると、透磁
率の著しい低下が認められる。
【0056】この原因は必ずしも明らかではないが、本
発明者らの考察結果によれば、調質圧延圧下率が0.5 %
までの極めて小さい場合は、調質圧延により鋼板に導入
される歪みが鋼板の極表面に比較的均一に導入されるも
のの、鋼板内部では極めて粗にしか導入されず、その結
果、透磁率の低下が著しくなかったものと推察される。
【0057】この種の鋼板において、調質圧延は、一般
的に加工成形後のストレッチャ・ストレインマークと呼
ばれる表面不良を防止する目的で行われるものである
が、ヒートシュリンクバンドの場合、バンドとするため
の成形・加工はもともと厳しいものではないため、調質
圧延を施さずとも著しい表面不良は発生しない。むし
ろ、高い透磁率を得るという観点からは、外観上問題な
い場合には、調質圧延を省略することが望ましい。以上
より、調質圧延圧下率は0.5 %以下であるのが好まし
い。
【0058】次に過時効処理と磁気特性およびその経時
変化との関係について説明する。C :0.002 %、Si:0.
01%以下、Mn:1.0 %、P :0.07%、S :0.006 %、so
l .Al:0.04%、N :0.002 %以下、Ti:0.03%、B :
0.0008%の組成を有する鋼を、実験室溶解後、板厚3.2m
m まで熱間圧延した。その後、板厚1.2mm まで冷間圧延
し、850 ℃で90秒の焼鈍後、170 〜550 ℃で2 分間の過
時効処理を施し、調質圧延を施さずに、焼きばめ相当の
500 ℃、60秒の熱処理を施した。また、経時変化を調査
するために、焼きばめ相当の熱処理の後にさらに150 ℃
で100 時間の熱処理(加速試験)を施した試料も用い
た。結果を図4 に示す。
【0059】図4 から明らかなように、150 ℃、100 時
間の加速試験後の0.3Oe の磁界における透磁率μと板厚
t (mm)との積μ×t におよぼす過時効処理温度の影響
は、比較的軽微である。これは、既に述べた添加成分元
素およびその含有量の限定にしたがった効果である。た
だし、この中でも、250 ℃以上500 ℃以下の温度では過
時効処理を施した場合は、優れた透磁率を有することが
わかる。
【0060】このように、250 ℃以上500 ℃以下の温度
で過時効処理を施すことにより、その他の温度域にて過
時効処理を施した場合に比べて、加速試験後も優れたμ
×tを得ることができる。この原因は明確ではないが、
鋼中の炭化物の溶解および析出挙動と関連したものと考
えられる。
【0061】すなわち、焼鈍時に炭化物などが部分的に
溶解して固溶C が発生した場合、過時効温度が250 ℃未
満では鋼中の固溶C が焼きばめ処理後も充分に析出せ
ず、焼きばめ直後の透磁率は高いものの、焼きばめ後に
微細に炭化物が析出し透磁率の低下を招く。
【0062】一方、過時効温度が500 ℃を超えると、固
溶C 残存量が増加し、引き続く焼きばめ処理によっても
充分に炭化物を析出することができず、結果的に微細に
炭化物が析出するため加速試験後に透磁率の低下が観察
されるものと推察される。以上より過時効温度は250 ℃
以上500 ℃以下であるのが好ましい。
【0063】続いて、亜鉛系めっき皮膜およびその表面
に形成する無機系皮膜について説明する。
【0064】本発明の下地の亜鉛めっき鋼板は、電気め
っき、溶融めっき、蒸着めっきで製造される亜鉛めっき
鋼板、亜鉛のほかにニッケル、鉄、アルミニウム、コバ
ルト、モリブデンなどの内の少なくとも1 つ成分を含有
する亜鉛合金めっき鋼板、めっき皮膜中にシリカ、アル
ミナなどを含有する分散めっき鋼板などが挙げられる。
より好ましくは耐熱性の観点から、めっきされた金属の
融点が高い亜鉛 −ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛−55
%アルミニウム合金めっき鋼板である。なお、本発明は
亜鉛系めっきを対象とするが、亜鉛系めっきではない溶
融アルミニウムめっき鋼板なども適用することができ
る。
【0065】本発明のめっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板
の表面に無機系皮膜を有する。本発明で用いる無機系皮
膜の付着量は、SiO 2 換算で0.1 〜3g/m2 とするのがよ
い。無機系皮膜を使用する理由としては、焼きばめ時に
加熱されることによる皮膜劣化を抑制するためである。
有機系皮膜を用いた場合には焼きばめ時の加熱により皮
膜が熱分解して、茶褐色に変色することに加え、熱分解
に伴う発煙も生じるため好ましくない。このような無機
系皮膜を形成するために使用されるものとしては、水ガ
ラス、リチウムシリケートなどのアルカリ金属珪酸塩、
シリカゾル、ストレートシリコーン樹脂などがあり、中
でもストレートシリコーン樹脂が最も良好である。以下
にストレートシリコーン樹脂について説明する。
【0066】シリコーンとは、一般的にシロキサン(−
Si−O −Si−)部分を有する素材の総称であり、樹脂、
オイル、ゴムなどが使用されている。
【0067】本発明で用いるストレートシリコーン樹脂
は、シロキサン(−Si−O −Si−)を骨格とし、珪素原
子に水酸基(−OH)、アルコキシル基(−OR:R は有機
基)や有機基が結合していて有機、無機双方の性質を有
する素材であり、他の有機樹脂との変性がなされていな
いことが特徴である。さらに橋かけ構造でないため皮膜
に柔軟性があり、耐疵付き性に優れることが特徴であ
る。珪素原子と結合している有機基としては、メチル基
(−CH3 )、エチル基(−C 2 H 5 )、フェニル基(−
C 6 H 5 )、ビニル基(−CH=CH2 )、ブチル基(−C
3 H 7 )等が挙げられる。なお、使用されるストレート
シリコーン樹脂はこれらの有機基を単独で含んでいても
よく、また2 種以上の異なる有機基を含んでいるもので
もよい。ストレートシリコーン樹脂でない変性シリコー
ン樹脂を用いた場合は、変性した有機樹脂成分が加熱時
に熱分解し、変色、発煙の原因となるため好ましくな
い。さらに有機基の中では炭素数の少ないメチル基のも
のが、加熱による有機成分の分解に起因する発煙を防止
する観点からより好ましい。
【0068】ストレートシリコーン樹脂の付着量はSiO
2 換算で0.1 〜3g/m2 とするのがよい。付着量が0.1 g/
m 2 未満ではロールフォーミングやプレス成形時の耐疵
付き性に劣り、3g/m2 超では加熱時の発煙性、曲げ加工
時の密着性に劣るため好ましくない。
【0069】ストレートシリコーン樹脂中に含まれるSi
O 2 成分は全皮膜重量中の60%以上であることが好まし
い。これはストレートシリコーン樹脂中のSiO 2 成分以
外は、水酸基もしくは有機基であるため、有機基が増加
すると発煙性が劣化するためである。
【0070】前記シリコーン樹脂皮膜中には、軟化点70
℃以上の有機系潤滑剤を添加することが好ましい。有機
系潤滑剤を添加する理由は、有機系潤滑剤がロールフォ
ーミングや、プレス成形等によって生ずる樹脂皮膜やめ
っき表面の傷およびかじりをより効果的に防止する作用
を有するからである。軟化点70℃以上としたのは、70℃
未満では、有機成分が分解しやすく発煙性が劣るため好
ましくないためである。軟化点70℃以上の有機系潤滑剤
としては、マイクロスタリンワックス(軟化点70〜90
℃)、ポリエチレン(軟化点90〜140 ℃)、ポリプロピ
レン(軟化点140〜170 ℃)、4 フッ化エチレン(軟化
点320 ℃)等が挙げられる。なお、上述した潤滑剤は単
独で添加してもよく、また異なる2 種以上の潤滑剤を併
用してもよい。また、マイクロスタリンワックス、ポリ
エチレン、ポリプロピレンは酸価が0 もしくは0 超のい
ずれであってもよく、それらの組み合わせであってもよ
い。添加する状態としては、シリコーン樹脂が溶剤系で
あるため、粉体もしくは予め溶剤に分散した状態のもの
が好ましく、その粒径は耐疵付き性の点から20μm 以下
であることが好ましい。
【0071】上記目的の潤滑剤として、上記の有機系潤
滑剤以外に無機系の結晶性潤滑剤を用いることもでき
る。このような結晶性潤滑剤として、例えばグラファイ
ト、窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどが挙げられる。
このような潤滑剤は発煙性を重視する場合は、好ましく
使用することができるが、有機系のものに比べてやや耐
疵付き性に劣ることもあり、使用の目的により適時選択
し、使用することが好ましい。
【0072】潤滑剤の添加量としては、有機系潤滑剤お
よび結晶性潤滑剤いずれも、ストレートシリコーン樹脂
100 重量部に対して20重量部以下含有することが好まし
い。有機系潤滑剤の場合には、添加量が20重量部超で
は、有機成分が増加することから、加熱時の発煙性が劣
るため好ましくない。発煙性の観点からより好ましい添
加量は10重量部以下である。また、無機系の結晶性潤滑
剤の場合、添加量が20重量部超では耐疵付き性が劣化す
るため好ましくない。
【0073】以上のような樹脂皮膜を形成する際には、
単独でもよいが、耐食性の向上を目的に、亜鉛系めっき
鋼板の亜鉛系めっき層の上に第一層としてクロメ−ト皮
膜を形成し、その上に第2 層として上述の樹脂皮膜を形
成することが有効である。クロメート皮膜の形成方法
は、塗布処理、電解処理、反応処理などの既知のどのよ
うな手段で行ってもよい。
【0074】クロメート皮膜は加熱前の耐食性を向上さ
せるためには必要であり、その付着量は、金属Cr換算で
鋼板片面あたり100mg/m 2 以下であることが好ましい。
クロメート皮膜の付着量が100mg/m 2 超では、その付着
量に見合った加熱後耐食性の向上効果が得られないのみ
ならず、加工時にクロメート皮膜自身の凝集破壊が生
じ、密着性が得られないため好ましくない。クロメート
皮膜を形成するための処理液は、3 価クロムイオン/ 全
クロムイオン(3 価クロムイオン+6 価クロムイオン)
が重量比で2/10〜6/10の割合であり、さらにリン酸イオ
ンを重量比でリン酸イオン/ 全クロムイオン=1.0 〜4.
0 の範囲で含むことが好ましい。そして、さらに粒径5
〜20nmのコロイダルシリカを重量比でコロイダルシリカ
/ 全クロムイオン=2.0 〜6.0 の範囲で含むことが好ま
しい。これらのうちいずれかが満たされていない場合、
加熱後変色性、加熱後耐食性、加熱前耐食性のうちいず
れかの性能が低下するおそれがある。
【0075】すなわち、クロメート処理液中の3 価クロ
ムイオン/ 全クロムイオンが2/10未満では黄色味が増加
し、加熱後変色が大きくなるため好ましくなく、6/10超
では処理液の安定性に劣るため好ましくない。また、リ
ン酸イオンはクロメート皮膜の黄色味の低減に効果的で
あり、したがって加熱後の変色を非常に効果的に抑制す
ることができる。リン酸イオンが1.0 未満では加熱後の
変色抑制効果が十分でなく、4.0 以上では処理液の安定
性に劣るため好ましくない。さらにコロイダルシリカを
添加することによって、加熱前の耐食性を向上させるこ
とができるが、コロイダルシリカ/全クロムイオンが2.
0 未満では、耐食性の向上効果が十分ではなく、6.0 超
では耐食性の向上効果が飽和するばかりか、処理液の安
定性が劣るため好ましくない。コロイダルシリカの粒径
が5 〜20nmの範囲内としたのは、粒径が5nm 未満では耐
食性の向上効果が飽和するばかりか、経済的に不利にな
るため好ましくなく、20nm超では、耐食性向上効果に劣
るために好ましくない。
【0076】亜鉛系めっき鋼板表面上への上述した樹脂
皮膜の形成は、亜鉛系めっき鋼板の表面上に塗布し、加
熱して乾燥することにより得られる。具体的には、亜鉛
系めっき鋼板表面あるいは亜鉛系めっき鋼板表面に形成
したクロメート皮膜表面に、ロールコーター、カーテン
フローコーターまたはスプレー塗装などの既知の方法に
よって上述したストレートシリコーン樹脂を主体とする
塗料を塗布することによって、所定量の塗膜を形成す
る。次いで、塗料が塗布された亜鉛系めっき鋼板を熱風
炉や誘導加熱装置により、80〜300 ℃以下の温度に加熱
し、焼き付けることによって、塗料中の溶剤を揮発さ
せ、樹脂皮膜を形成させる。
【0077】樹脂皮膜の焼付温度の好ましい範囲として
は、80〜300 ℃以下である。焼付温度が80℃未満では、
樹脂皮膜の硬化が不十分なため、加工時の耐疵付き性に
劣り、一方、300 ℃超では樹脂皮膜の硬化が進みすぎ、
ストレートシリコーン樹脂中の有機基が分解、揮発し、
耐疵付き性に劣るためである。
【0078】
【実施例】表1 の供試鋼を溶製後、1200〜1280℃に加熱
し、仕上温度900 ℃、巻取温度680 ℃にて板厚3.2mm に
熱間圧延した。得られた熱延板を酸洗し、板厚0.8 〜1.
6mm まで冷間圧延した後、750 〜950 ℃にて90秒間焼鈍
し、次いで、210 〜550 ℃、2 分間の過時効処理を施
し、鋼板の両面に下記(1 )〜(6 )の亜鉛系めっきを
施した。この亜鉛系めっき鋼板の両面をアルカリ脱脂し
た後、めっき表面にストレートシリコーン樹脂を主体と
する塗料をロールコーティング法により塗布(付着量は
ウェット塗布量により調整)した後、これを誘導加熱炉
により、最高到達板温60〜320 ℃の範囲で焼付け、供試
材を作成した。この供試材の構造を図5の(a )に示
す。また、一部の供試材は樹脂皮膜を形成する前に、塗
布型クロメート処理を金属Cr換算で30〜150 mg/m2 形成
させた。この供試材の構造を図5 の(b )に示す。
【0079】(1 )電気亜鉛めっき鋼板(めっき付着量
20 g/m2 ) (2 )亜鉛- ニッケル合金めっき鋼板(めっき付着量20
g/m2 ) (3 )溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量90 g/m2 ) (4 )合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量45 g/m
2 ) (5 )溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板(めっ
き付着量90 g/m2 ) (6 )溶融亜鉛-55 %アルミニウム合金めっき鋼板(め
っき付着量70 g/m2
【0080】
【表1】
【0081】各供試材に使用した塗料の組成、クロム付
着量、樹脂皮膜付着量について表2ないし表5 に示す。
なお、これら表中、「めっき」の欄の記号は以下の通り
である。
【0082】 UZ :電気亜鉛めっき鋼板(めっき付着量20 g/m2 ) EZN:亜鉛- ニッケル合金めっき鋼板(めっき付着量20
g/m2 ) GI :溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量90 g/m2 ) GA :合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量45 g/m
2 ) GF:溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板(めっき
付着量90 g/m2 ) GL:溶融亜鉛-55 %アルミニウム合金めっき鋼板(めっ
き付着量70 g/m2
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】また、以上の要領で作成した供試材につい
て、地磁気ドリフト性、直流磁気特性、耐熱変色性、発
煙性、加熱後耐食性、および耐疵付き性を評価した。
【0088】これらの性能評価は以下のようにして行っ
た。 (1) 直流磁気特性 供試材を焼きばめ相当の500 ℃、5 秒間の加熱を施し、
室温まで空冷した後、0.3Oe における透磁率μおよび外
部磁界10 Oe まで励磁したときの保持力をリング試験片
(外径45mm、内径33mm)によって測定、評価した。
【0089】(2 )磁気安定性 供試材を焼きばめ相当の熱処理後に150 ℃×100 時間の
熱処理を施し、直流磁気特性の測定をし、評価した。
【0090】(3 )地磁気ドリフト性 供試材(調質圧延を施したものを含む)を所定の形状の
バンドに加工し、500 ℃に加熱後29インチTV陰極線パネ
ルにはめ込み、評価を行った。なお、その値について
は、表1 に示す従来材である供試鋼F の1 %調質圧延材
の地磁気ドリフト量を1 としたときの相対値で表示し
た。
【0091】(4 )耐熱変色性 各供試材を到達板温が600 ℃になった後、1 時間均熱処
理し、供試材表面の変色状況を目視にて判定した。その
評価基準は下記の通りである。 * :変色なし * :薄い灰色に変色 * :青く変色 ×:茶色に変色
【0092】(5 )発煙性 各供試材を到達板温が600 ℃になるまでの間に生じる発
煙状況を目視で判定した。その評価基準は下記の通りで
ある。 * :発煙なし * :わずかに発煙が見られる * :はっきりと発煙が確認できる ×:著しく発煙
【0093】(6 )加熱前耐食性 供試材から70mm×150mm の試験片を複数枚切り出し、こ
れらの試験片にJIS Z2371に規定された塩水噴霧試験を
実施し、500 時間後の白錆発生面積を目視で判定した。
その評価基準は下記の通りである。 * :白錆発生なし * :白錆発生面積5 %以下 * :白錆発生面積5 %超30%以下 ×:白錆発生面積30%超
【0094】(7 )加熱後耐食性 供試材を到達板温が600 ℃になった後、10分間均熱処理
したものから70mm×150mm の試験片を複数枚切り出し、
これらの試験片にJIS Z 2371に規定された塩水噴霧試験
を実施し、500 時間後の赤錆発生面積を目視で判定し
た。その評価基準は下記の通りである。 * :赤錆発生なし * :赤錆発生面積5 %以下 * :赤錆発生面積5 %超30%以下 ×:赤錆発生面積30%超
【0095】(8 )耐疵付き性 図6 に概略正面図で示す試験機を使用した。試験機は図
6 に示すように箱状の枠2 の一側2aに固定されたフラッ
ト面を有する雌ダイス1 と、雌ダイス1 と向き合った、
所定の高さの実質的に水平な突条3 を有する雄ダイス4
と、雄ダイス4を支持し、そして雄ダイス4 を雌ダイス1
に向けて水平移動させるための、枠2の他側2bに固定さ
れた油圧シリンダ5 とからなっている。雄ダイス4 は油
圧シリンダ5 のロッド5aに、ロードセル6 を介して固定
されている。なお、雄ダイス4の突条3 の幅は10mmであ
り、その先端の長さは1mm である。
【0096】供試材7 を、雌ダイス1 と雄ダイス4 との
間の間隙に垂直に挿入し、油圧シリンダ5 を作動させ
て、雌ダイス1 と雄ダイス4 とにより供試材7 を40kgf
(400kgf/cm 2 )の圧力で押し付けた。次いで、供試材
7 を矢印に示すように、500mm/分の速度で上方に引き抜
き、その時に摺動された部分の皮膜およびめっきの損傷
を目視で評価した。その評価基準は下記の通りである。 * :傷発生なし * :皮膜にわずかに損傷が見られるが、めっき損傷はな
し * :皮膜が損傷し、めっき損傷小 ×:皮膜が損傷し、めっき損傷大 これらの評価結果を表6 ないし表7 に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】これらの表に示すように、供試鋼成分、焼
鈍温度、調質圧延圧下率が本発明範囲にある本発明例に
あっては、0.3Oe の磁界における透磁率μと板厚t (m
m)との積μ×t が350 以上であり、地磁気ドリフト性
に優れた特性を示すことが確認された。また、過時効処
理温度が、250 ℃以上500 ℃以下の範囲内の場合には、
更に安定した磁気特性を示すことが確認された。一方、
本発明範囲を外れた比較例にあっては、μ×t が適正値
を外れており、色ずれ対策として煩雑な工程が必要とな
る。
【0100】また、本発明による皮膜を形成した亜鉛系
めっき鋼板は、耐加熱変色性、発煙性、加熱後耐食性お
よび耐疵付き性のいずれにも優れている。これに対し
て、本発明範囲を外れためっき鋼板は耐加熱変色性、発
煙性、加熱後耐食性および耐疵付き性のいずれかに劣っ
ている。
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、 透磁率が高く地磁気
ドリフト性が小さい鋼板が得られる。本発明による鋼板
を陰極線管のヒートシュリンクバンドに用いることによ
って、十分な磁気シールド性が確保され、色ずれの問題
が解決される。
【0102】また、部品として加工する際には、皮膜お
よびめっき表面の疵付き性、加熱前耐食性に優れた特性
を、さらに、ヒートシュリンク時には、熱変色性、発煙
性、加熱後耐食性に優れた特性を有しており、ヒートシ
ュリンクバンド用として好適な亜鉛系めっき鋼板が提供
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】μ×t とBh、Bvとの関係を示す図である。
【図2】焼鈍温度とμ×t との関係を示す図である。
【図3】調質圧延圧下率とμ×t との関係を示す図であ
る。
【図4】過時効処理とμ×t との関係を示す図である。
【図5】本発明の皮膜構造を示す模式図である。
【図6】実施例において耐疵付き性の評価に用いた耐疵
付き性試験機の概略正面図である。
【符号の説明】
1 4;ダイス 2 ;枠 3 ;突条 5 ;油圧シリンダ 6 ;ロードセル 7 ;供試材
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01J 29/87 H01J 29/87 (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 松岡 秀樹 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE03 BB05X BB74X BB93X DA06 DB05 DC19 EA37 EB42 EC03 EC53 4K033 AA02 CA05 CA06 CA08 CA09 TA03 TA09 5C032 AA02 CC03 CD01

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C :0.005 %以下、Si:1 %
    以下、Mn:0.1 %以上2.0 %以下、P :0.15%以下、S
    :0.02%以下、sol .Al:0.08%以下、N :0.005 %
    以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B :0.0003%以上0.
    005 %以下を含む鋼板表面に亜鉛系めっきを施した、焼
    きばめ後の状態で0.3Oe の磁界における透磁率μと板厚
    との積が350 以上の亜鉛系めっき鋼板の表面に、SiO 2
    換算で0.1 〜3g/m2 の無機系皮膜を形成してなることを
    特徴とするヒートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼
    板。
  2. 【請求項2】 無機系皮膜がストレートシリコーン樹脂
    であることを特徴とする請求項1 記載のヒートシュリン
    クバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 重量%で、C :0.005 %以下、Si:1 %
    以下、Mn:0.1 %以上2.0 %以下、P :0.15%以下、S
    :0.02%以下、sol .Al:0.08%以下、N :0.005 %
    以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B :0.0003%以上0.
    005 %以下を含む鋼板表面に亜鉛系めっきを施した、焼
    きばめ後の状態で0.3Oe の磁界における透磁率μと板厚
    との積が350 以上の亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1 層
    として金属Cr換算で100mg/m 2 以下のクロメート皮膜を
    形成し、その上に第2 層としてSiO 2 換算で0.1 〜3g/m
    2 のストレートシリコーン樹脂皮膜からなる無機系皮膜
    を形成してなることを特徴とするヒートシュリンクバン
    ド用亜鉛系めっき鋼板。
  4. 【請求項4】 前記クロメート皮膜は、3 価クロムイオ
    ン/ 全クロムイオン(3 価クロムイオン+6 価クロムイ
    オン)が重量比で2/10〜6/10の割合であり、さらにリン
    酸イオンを重量比でリン酸イオン/ 全クロムイオン=1.
    0 〜4.0 の範囲で含む処理液を塗布し、60〜200 ℃で乾
    燥してなることを特徴とする請求項3記載のヒートシュ
    リンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 前記クロメート皮膜は、3 価クロムイオ
    ン/ 全クロムイオン(3 価クロムイオン+6 価クロムイ
    オン)が重量比で2/10〜6/10の割合であり、さらにリン
    酸イオンを重量比でリン酸イオン/ 全クロムイオン=1.
    0 〜4.0 の範囲で含み、かつ、粒径5 〜20nmのコロイダ
    ルシリカを重量比でコロイダルシリカ/ 全クロムイオン
    =2.0 〜6.0 の範囲で含む処理液を塗布し、60〜200 ℃
    で乾燥してなることを特徴とする請求項3 記載のヒート
    シュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  6. 【請求項6】 前記ストレートシリコーン樹脂皮膜中に
    含まれる有機基がメチル基であることを特徴とする請求
    項2 ないし請求項5 のいずれか1 項に記載のヒートシュ
    リンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  7. 【請求項7】 前記ストレートシリコーン樹脂皮膜中の
    SiO 2 成分が全皮膜重量の60%以上であることを特徴と
    する請求項2 ないし請求項6 のいずれか1 項に記載のヒ
    ートシュリンクバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  8. 【請求項8】 前記無機系皮膜は、バインダーとなる皮
    膜主成分100 重量部に対して結晶性潤滑剤を20重量部以
    下含有することを特徴とする請求項1 ないし請求項7 の
    いずれか1 項に記載のヒートシュリンクバンド用亜鉛系
    めっき鋼板。
  9. 【請求項9】 前記無機系皮膜は、バインダーとなる皮
    膜主成分100 重量部に対して軟化点70℃以上の有機系潤
    滑剤を20重量部以下含有することを特徴とする請求項1
    ないし請求項8 のいずれか1 項に記載のヒートシュリン
    クバンド用亜鉛系めっき鋼板。
  10. 【請求項10】 請求項1 記載の化学成分を有する鋼を
    熱間圧延し、引き続いて冷間圧延し、次いで、得られた
    鋼板を800 ℃以上900 ℃以下の温度域にて焼鈍する、あ
    るいは、この焼鈍の後さらに圧下率0.5 %以下の調質圧
    延を施した鋼板表面に、亜鉛系めっきを施し、更にその
    表面にSiO 2 換算で0.1 〜3g/m2 の無機系皮膜を形成し
    たことを特徴とするヒートシュリンクバンド用亜鉛系め
    っき鋼板の製造方法。
  11. 【請求項11】 焼鈍後、あるいは焼鈍と調質圧延との
    間で、250 ℃以上500 ℃以下の温度域にて過時効処理を
    行うことを特徴とする請求項10記載のヒートシュリンク
    バンド用亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018535311A (ja) * 2015-09-28 2018-11-29 バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド 低保磁力冷間圧延電磁純鉄板・帯材の連続焼鈍方法

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