JP2001062623A - 耐摩耗性および耐チッピング性のすぐれた超硬合金製エンドミル - Google Patents
耐摩耗性および耐チッピング性のすぐれた超硬合金製エンドミルInfo
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Abstract
硬エンドミルを提供する。 【解決手段】 超硬エンドミルが、切刃部とシャンク部
からなり、かつ結合相形成成分としてCo:5〜16重
量%を含有する超硬合金の焼結体で構成されたエンドミ
ル本体の少なくとも切刃部の表面に、結合相形成成分と
してCo:1〜4重量%を含有する超硬合金のスパッタ
蒸着皮膜を1〜10μmの平均膜厚で形成してなる。
Description
で、すぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する超硬
合金製エンドミル(以下、超硬エンドミルと云う)に関
するものである。
(a)に概略正面図で、同(b)に切刃部のエンドミル
中心線に対する概略横断面図で示されるように、シャン
ク部と外周刃が形成された切刃部からなり、前記外周刃
は逃げ面とすくい面、これら両面の交わる切刃稜で構成
され、これが結合相形成成分としてCo:5〜16重量
%を含有する炭化タングステン基超硬合金(以下、単に
超硬合金と云う)の焼結体からなることは良く知られる
ところである。また、上記の超硬エンドミルが、原料粉
末として、いずれも0.5〜6μmの範囲内の所定の平
均粒径を有するWC粉末、(Ti,W)C粉末、(T
i,W)CN粉末、(Ta,Nb)C粉末、TaC粉
末、NbC粉末、ZrC粉末、VC粉末、Cr3C2粉
末、Co粉末、およびCr粉末などを用い、これら原料
粉末を所定の配合組成に配合し、湿式混合し、乾燥した
後、所定径を有する丸棒圧粉体にプレス成形し、この丸
棒圧粉体を、10-2〜10-1Torrの真空雰囲気中、
5〜10℃/分の昇温速度で1370〜1470℃に昇
温し、この昇温温度に1〜2時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、結合相形成成分としてのCoを焼結性および
靭性(強度)付与の目的で5〜16重量%含有する超硬
合金で構成された丸棒焼結体素材を形成し、この丸棒焼
結体素材から図1に示される形状に研削加工することに
より製造されることも知られている。さらに、上記の全
体が焼結体からなる超硬エンドミルをエンドミル本体と
し、このエンドミル本体の少なくとも切刃部の表面に、
Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以
下、TiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示
す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、窒酸化
物(以下、TiNOで示す)層、および炭窒酸化物(以
下、TiCNOで示す)層のうちの1種の単層または2
種以上の複層からなるTi化合物層と、酸化アルミニウ
ム(以下、Al2O3で示す)層で構成されたセラミック
硬質皮膜を1〜10μmの平均膜厚で化学蒸着および/
または物理蒸着してなる被覆超硬エンドミルも知られて
いる。
の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要
求は強く、これに伴い、切削加工は高速切削を強いられ
る傾向にあるが、上記の従来超硬エンドミルおよび従来
被覆超硬エンドミルにおいては、これを高速切削に用い
ると、前者ではエンドミル全体が靭性のすぐれた超硬合
金で構成されているので、切刃にチッピング(微小欠
け)の発生なく、すぐれた耐チッピング性を示すもの
の、硬さ不足のために摩耗進行がきわめて速く、また一
般にエンドミルの場合、その切削形態から、切削速度が
速くなればなるほど「ねじれ」や「たわみ」が大きくな
るが、後者ではセラミック硬質皮膜のエンドミル本体へ
の密着性が十分でないために、上記のエンドミル自体に
発生する大きな「ねじれ」や「たわみ」によってセラミ
ック硬質皮膜にチッピング発生の原因となる剥離が発生
し易い状態となり、この結果前者では摩耗、後者ではチ
ッピングが原因でそれぞれ比較的短時間で使用寿命に至
るのが現状である。
上述のような観点から、耐摩耗性および耐チッピング性
のすぐれた超硬エンドミルを開発すべく研究を行った結
果、通常のスパッタリング装置、例えば図2に概略説明
図で示されるスパッタリング装置にて、上記の従来超硬
エンドミルをエンドミル本体として基板上に装着し、タ
ーゲットとして、結合相形成成分であるCoの含有量を
前記エンドミル本体に比して相対的に少ない1〜4重量
%とした超硬合金を用い、装置内をヒーターで300〜
600℃に加熱した状態で、圧力:2〜5×10-3To
rrのAr反応雰囲気中、前記基板には例えば−100
V、前記ターゲットには例えば−800Vのバイアス電
圧を印加して、前記基板とターゲット間にプラズマを発
生させ、もって上記エンドミル本体の少なくとも切刃部
の表面に、前記ターゲットを構成する超硬合金と実質的
に同じ組成を有するスパッタ蒸着皮膜を1〜10μmの
平均膜厚で形成すると、この結果の超硬エンドミルにお
いては、 (a)上記スパッタ蒸着皮膜がエンドミル本体と同種の
超硬合金からなるので、高い密着性をもち、高速切削で
発生する大きな「ねじれ」や「たわみ」によって剥離す
ることがなく、したがって切刃部でのチッピング発生が
著しく抑制されること。 (b)上記スパッタ蒸着皮膜における結合相形成成分と
してのCoの含有量が1〜4重量%と相対的に低いの
で、高い表面部硬さをもつようになることから、これの
摩耗が抑制され、一方エンドミル本体における結合相形
成成分としてのCoの含有量は5〜16重量%と相対的
に高いので、エンドミル自体がすぐれた靭性をもつよう
になること。 (c)一般に超硬合金の焼結体では、原料粉末として平
均粒径で1μm以下の微細なWC粉末を用い、かつWC
粒成長抑制あるいはWC粒微細化の目的でCr 3C2粉末
やCr粉末を配合しても、走査型電子顕微鏡による断面
組織観察で、WC粒の平均粒径を0.5μm以下にする
ことはきわめて困難であるが、上記のスパッタ蒸着皮膜
におけるWC粒は平均粒径で0.05μm以下のきわめ
て微細な粒径をもち、これによって耐摩耗性の著しい向
上がもたらされること。以上(a)〜(c)に示される
特性を具備するようになるという研究結果が得られたの
である。
されたものであって、切刃部とシャンク部からなり、か
つ結合相形成成分としてCo:5〜16重量%を含有す
る超硬合金の焼結体で構成されたエンドミル本体の少な
くとも切刃部の表面に、結合相形成成分としてCo:1
〜4重量%を含有する超硬合金のスパッタ蒸着皮膜を1
〜10μmの平均膜厚で形成してなる、耐摩耗性および
耐チッピング性のすぐれた超硬エンドミルに特徴を有す
るものである。
て、これを構成するエンドミル本体およびスパッタ蒸着
皮膜のCo含有量、並びにスパッタ蒸着皮膜の平均膜厚
を上記の通りに限定した理由を説明する。 (1) ()エンドミル本体のCo含有量 その含有量が5重量%未満では、所望の強度と靭性を確
保することができず、この結果切刃部に欠けが生じ易く
なるばかりでなく、特に高速切削では折損の発生も避け
られず、一方その含有量が16重量%を越えると、特に
切刃部に熱塑性変形が起り易くなり、これが偏摩耗の原
因となることから、その含有量を5〜16重量%と定め
た。
量 その含有量が1重量%未満では、エンドミル本体表面へ
の密着性が不充分となるばかりでなく、十分な皮膜強度
が得られず、一方その含有量が4重量%を越えると、特
に高速切削での耐摩耗性が急激に低下するようになるこ
とから、その含有量を1〜4重量%と定めた。
することができず、一方その平均膜厚が10μmを越え
ると、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、
その平均膜厚を1〜10μmと定めた。
ルを実施例により具体的に説明する。原料粉末として、
平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.
8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同
1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、
同2.3μmのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉
末、同1.0μmの(Ti,W)C粉末、同1.8μm
のCo粉末、および同1.2μmの炭素(C)粉末を用
意し、これら原料粉末をそれぞれ表1、2に示される配
合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で
24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、1ton
/cm2の圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、0.05Torrの真空雰囲気
中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲
内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉
冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および
26mmの3種のエンドミル本体形成用丸棒焼結体、並
びにいずれも直径:100mm×厚さ:16mmの寸法
をもったスパッタ蒸着皮膜形成用ターゲットa〜hをそ
れぞれ形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研
削加工にて、表1に示される組合せで、切刃部の直径×
長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22m
m、および20mm×45mmの寸法をもち、かついず
れも図1に示される形状をもったエンドミル本体A〜H
を製造した。
A〜Hおよびターゲットa〜hを、それぞれ表3に示さ
れる組合せで、図2に示される構造のスパッタリング装
置に装着し(この場合前記エンドミル本体は装置内の基
板に装着される)、まず、装置内を排気して1×10−
5Torrの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を
450℃に加熱した後、Arガス、(Ar+5容量%X
e)ガス、および(Ar+1容量%CH4)ガスのうち
のいずれかを装置内に導入して圧力:1×10- 3Tor
rの雰囲気とし、この状態で前記基板(エンドミル本
体)に−1000Vのバイアス電圧を印加して、前記エ
ンドミル本体の表面をボンバード洗浄し、引き続いて装
置内を圧力:3×10-3TorrのAr雰囲気とすると
共に、前記基板(エンドミル本体)には−100V、前
記ターゲットには−800Vのバイアス電圧を印加し
て、前記ターゲットa〜hを構成する超硬合金のスパッ
タ蒸着皮膜を、同じく表3に示される目標膜厚で前記エ
ンドミル本体A〜Hの表面全体に形成することにより本
発明超硬エンドミル1〜8をそれぞれ製造した。
り、上記のエンドミル本体A〜Hをそれぞれ従来超硬エ
ンドミル1〜8とした。さらに、比較の目的で、上記の
エンドミル本体A〜Hの表面全体に、通常の化学蒸着装
置を用い、表5に示される条件(表中、l−TiCN
は、例えば特開平6−8010号公報に記載される縦長
成長結晶組織をもったTiCN層に相当するものであ
り、これ以外の条件で形成された層はいずれも粒状結晶
組織をもつものである。また、α−Al2O3層はα型結
晶構造をもつもの、β−Al2O3層はβ型結晶構造をも
つものを示す)にて、表6に示される組成および目標層
厚のセラミック硬質皮膜を形成することにより従来被覆
超硬エンドミル1〜8をそれぞれ製造した。なお、上記
の本発明超硬エンドミル1〜8を構成するエンドミル本
体およびスパッタ蒸着皮膜のCo含有量およびWC粒の
平均粒径、さらにスパッタ蒸着皮膜のC含有量をオージ
ェ分析装置および走査型電子顕微鏡を用いての断面組織
観察により測定したところ、表3に示される結果を示
し、また従来超硬エンドミル1〜8については、表4に
示される通り、前記本発明超硬エンドミル1〜8のエン
ドミル本体と実質的に同じCo含有量およびWC粒平均
粒径を示し、さらに本発明超硬エンドミル1〜8のスパ
ッタ蒸着皮膜および従来被覆超硬エンドミル1〜8のセ
ラミック硬質皮膜の膜厚を測定したところ、それぞれ表
3おとび表6に示される目標層厚と実質的に同じ平均層
厚を示した。
ついて、表7に示される切削条件にて切削試験を行い、
先端面切刃部の直径が使用寿命の目安とされる0.2m
m減少するまでの切削長を測定した。これらの測定結果
を表3、表4、および表6にそれぞれ示した。
硬エンドミル1〜8は、いずれもエンドミル本体へのす
ぐれた密着性が超硬合金の1〜4重量%含有のCo含有
量によって確保され、かつこの低いCo含有量と平均粒
径で0.05μm以下の超微粒WC粒で相対的に高い硬
さ(強度)を具備するようになるスパッタ蒸着皮膜によ
って、高速切削にもかかわらず、切刃部にチッピングの
発生なく、すぐれた耐摩耗性(長い超切削長)を発揮す
るのに対して、従来超硬エンドミル1〜8は速い摩耗進
行、従来被覆超硬エンドミル1〜8はセラミック硬質皮
膜の剥離によるチッピング発生がそれぞれ原因で相対的
に短い切削長しか示さないことが明らかである。上述の
ように、この発明の超硬エンドミルは、自体の「たわ
み」や「ねじれ」が大きくなる高速切削ですぐれた耐摩
耗性と耐チッピング性を発揮するものであるから、切削
加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分
満足に対応することができるものである。
図、(b)は同切刃部の概略横断面図である。
る。
Claims (1)
- 【請求項1】 切刃部とシャンク部からなり、かつ結合
相形成成分としてCo:5〜16重量%を含有する炭化
タングステン基超硬合金の焼結体で構成されたエンドミ
ル本体の少なくとも切刃部の表面に、結合相形成成分と
してCo:1〜4重量%を含有する炭化タングステン基
超硬合金のスパッタ蒸着皮膜を1〜10μmの平均膜厚
で形成してなる、耐摩耗性および耐チッピング性のすぐ
れた超硬合金製エンドミル。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP24297799A JP3858256B2 (ja) | 1999-08-30 | 1999-08-30 | 耐摩耗性および耐チッピング性のすぐれた超硬合金製エンドミル |
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Publications (2)
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JP3858256B2 JP3858256B2 (ja) | 2006-12-13 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3858256B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015133256A1 (ja) * | 2014-03-03 | 2015-09-11 | 株式会社神戸製鋼所 | 硬質皮膜およびその形成方法、ならびに鋼板熱間成型用金型 |
KR20160084434A (ko) | 2014-03-26 | 2016-07-13 | 제이엑스금속주식회사 | 탄화 텅스텐 또는 탄화 티탄으로 이루어지는 스퍼터링 타깃 |
-
1999
- 1999-08-30 JP JP24297799A patent/JP3858256B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2015133256A1 (ja) * | 2014-03-03 | 2015-09-11 | 株式会社神戸製鋼所 | 硬質皮膜およびその形成方法、ならびに鋼板熱間成型用金型 |
US10233530B2 (en) | 2014-03-03 | 2019-03-19 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho | Hard film and method for forming same, and die for use in hot forming of steel sheet |
KR20160084434A (ko) | 2014-03-26 | 2016-07-13 | 제이엑스금속주식회사 | 탄화 텅스텐 또는 탄화 티탄으로 이루어지는 스퍼터링 타깃 |
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