JP2001049890A - 修復限定建物 - Google Patents

修復限定建物

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JP2001049890A
JP2001049890A JP11221920A JP22192099A JP2001049890A JP 2001049890 A JP2001049890 A JP 2001049890A JP 11221920 A JP11221920 A JP 11221920A JP 22192099 A JP22192099 A JP 22192099A JP 2001049890 A JP2001049890 A JP 2001049890A
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restoration
zone
building
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rigid
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JP11221920A
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English (en)
Inventor
Kunihiko Ando
邦彦 安藤
Masayuki Tsuruya
雅之 鶴谷
Kazuo Hiramatsu
一夫 平松
Hiroyuki Nakada
浩之 中田
Hiroki Kami
寛樹 上
Akifumi Takeda
彰文 武田
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Okumura Corp
Original Assignee
Okumura Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 建物内部に居室保持ゾーンと修復ゾーンとを
形成し、地震時の損傷を修復ゾーンに集中させること
で、建物の補修中であっても居室保持ゾーンでは通常勤
務を支障無く行うことができる修復限定建物を提供す
る。 【解決手段】 本発明による修復限定建物は、建物内部
に修復ゾーン8と居室保持ゾーン7とを形成し、各ゾー
ンの境界域をラーメン構造の梁部4に設定して、境界域
を設定したラーメン構造の梁端部を居室保持ゾーン7の
柱3にピン接合6しているので、大地震時の損傷を修復
ゾーンに限定して発生させ、居室保持ゾーンには損傷を
生じさせないので、地震後の補修は低コストで実施する
ことができ、補修時にも居室保持ゾーンでは通常通りに
勤務を継続できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物内部に居室保
持ゾーンと修復ゾーンとを形成した修復限定建物に関
し、特に大地震時の損傷を修復ゾーンに集中させること
で、補修部を限定し、建物の補修中であっても居室保持
ゾーンでは通常勤務を支障無く行うことが出来る修復限
定建物に関する。
【0002】
【従来の技術】建物に対する従来の設計法では、中小の
地震に対しては建築物の機能を保持し、建物の耐用年限
中に1度遭遇するかもしれない程度の大地震では人命の
保護を図ることを目的にしていた。このために、建物は
梁降伏先行破壊機構を構成しており、図10に示すよう
に柱50に梁51を剛接合52にするラーメン構造を採
用して、塑性ヒンジを梁端の剛接合52に設定していた
ので、柱、梁の曲げモーメントは、各部でバランスをと
るように分担しているが、大地震の際には剛接合の部分
での曲げモーメントが最大になり、柱梁端部の接合部分
に多くの破壊が集中していた。
【0003】しかるに、従来の建物は、梁降伏先行破壊
型の全体降伏機構を構成していたので、大地震時に崩壊
を防止して人命を保護するという目的は達成されるが、
一方では、倒壊を免れたものの柱梁端部の接合部等に大
きな損傷を受けた建物に対しての対応が新しい問題点と
して浮上してきた。即ち、このような被災建物を復旧す
るには、建築主は修復するか建て替えるかの決定に多く
の労力を費やし、復旧のためには多大な費用が必要にな
る。さらに、建物使用者にとっても、復旧工事中は建物
を使用できない状態が長期にわたって継続するからであ
る。
【0004】これらの問題点を解決するためには、従来
は明確に意識されていなかった建物の修復性に対する対
策を設計手法に取り入れることと、地震の大きさに応じ
た建物の性能を明示することが必要である。このために
は、地震後に修復の必要な状態が生じた場合にも修復す
る範囲を制限し、修復中でも多くの居室では執務を継続
できるようにして、低減されたコストで修復し易い建物
を計画することである。
【0005】そこで、本発明の依ってきたる設計法は、
従来の設計法で採用されていた、「使用限界状態」、
「終局限界状態」に加えて、「修復限界状態」を耐震設
計の新規な目標として設定している。「修復限界状態」
としては、約100年に1度の地震を想定し、この際に
も修復して再使用可能な状態になることを目標性能にし
ている。このためには、応急危険度判定で、要注意以下
の損傷(ひび割れ幅が2mm程度で、コンクリートの剥
落は極わずか)に留め、修復コストとして躯体費の30
%程度以下を想定し、各層の層間変形角を1/100以
下に制御している。さらに、建物の機能を保持して大部
分の執務を継続しながら、地震後の補修を行えるように
するために、地震時の損傷を特定の部分に限定して発生
させ、他の建物架構には損傷を生じさせないように計画
している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記設計法
に鑑みて、その達成のために成されたものであり、大地
震時における損傷を建物の修復状態として予め建物に限
定的に加味しておくもので、建物内部に居室保持ゾーン
と修復ゾーンとを形成し、地震時の損傷を修復ゾーンに
集中させることで補修部分を限定させ、建物の補修中で
あっても居室保持ゾーンでは通常勤務を支障無く行うこ
とができる修復限定建物の提供を課題にしている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明である修
復限定建物は、建物内部に修復ゾーンと居室保持ゾーン
とを形成し、各ゾーンの境界域をラーメン構造の梁部に
設定する修復限定建物であって、境界域を設定したラー
メン構造の梁端部を居室保持ゾーンの柱にピン接合する
ことを特徴としており、地震エネルギーを修復ゾーンに
位置するラーメン構造の剛接部が負担して、居室保持ゾ
ーンに位置する梁端部はピン接合にすることで負担させ
ないようにして、損傷の補修は修復ゾーンに限定する。
【0008】請求項2の発明である修復限定建物は、請
求項1に記載の修復限定建物において、居室保持ゾーン
内の柱梁接合はピン接合にすることを特徴としており、
居室保持ゾーンに位置する柱、梁の接合部に地震による
曲げモーメントをほとんど負担させないで、地震による
損傷を居室保持ゾーンに発生させずに、その補修を修復
ゾーンのラーメン構造に留める。
【0009】請求項3の発明である修復限定建物は、請
求項1又は2に記載の修復限定建物において、修復ゾー
ン内の柱梁接合は、剛接合にすることを特徴としてお
り、修復ゾーン内の剛接合で地震による曲げモーメント
を負担させるので、地震による損傷は修復ゾーンの剛接
合の部分に限定し、その補修を限定された範囲に留め
る。
【0010】請求項4の発明である修復限定建物は、請
求項1〜3のいずれかに記載の修復限定建物において、
修復ゾーンと居室保持ゾーンとの境界域に仕切壁を設置
することを特徴としており、修復ゾーンを開放廊下とし
て形成することで、地震後の補修作業に際して、補修ス
ペースを確保する。
【0011】請求項5又は6の発明である修復限定建物
は、請求項1〜4のいずれかに記載の修復限定建物にお
いて、建物外周部を、修復ゾーンもしくは居室保持ゾー
ンに形成することを特徴としており、建物外周部と建物
内部とを区分することによって、補修作業と通常勤務の
継続をし易くする。
【0012】請求項7〜9のいずれかの発明である修復
限定建物は、請求項1〜6のいずれかに記載の修復限定
建物において、鉄筋コンクリート構造においてラーメン
構造の剛接部にコンファインド補強の実施もしくは鉄骨
構造においてラーメン構造の剛接部から離れた位置での
塑性ヒンジを設定することによって靭性能を付加するこ
とを特徴としており、修復ゾーンに位置するラーメン構
造に対して剛接部の靭性能を向上させて、居室保持ゾー
ンに位置する柱、梁のピン接合が負担しない曲げモーメ
ント分を負担できるように補っている。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明による修復限定建物は、建
物内部に修復ゾーンと居室保持ゾーンとを形成し、各ゾ
ーンの境界域をラーメン構造の梁部に設定する修復限定
建物であって、境界域を設定したラーメン構造の梁端部
を居室保持ゾーンの柱にピン接合することで構成してお
り、地震エネルギーを修復ゾーンに位置するラーメン構
造の剛接部が負担し、居室保持ゾーンに位置するラーメ
ン構造の梁端部はピン接合に依ってこれを負担しないよ
うにしているので、大地震による損傷の発生と補修を修
復ゾーンの剛接合の部分のみに限定している。以下に、
本発明の実施を図面に基づいて説明する。
【0014】図1は、本発明を適用した修復限定建物に
おける基準階の平面図(a)と(b)−(b)矢視図
(b)である。建物は、外周架構を構成している柱1と
梁2及び中央部の架構を構成している柱3と梁4、5で
構築している。外周架構の柱1と梁2及び中央部の架構
を構成している柱1と梁4とは剛接合によってラーメン
構造になっているが、中央部の架構を構成している柱3
と梁4の梁端部はピン接合6で結合されている。又、中
央部の架構を構成している柱3と梁5とはピン接合6で
結合している。
【0015】建物の平面は、居室保持ゾーン7と修復ゾ
ーン8とに区画されており、各ゾーンは仕切壁9によっ
て区分けされている。仕切壁9は、通常は開放廊下とし
て使用される修復ゾーン8を形成するために、柱1から
所定の間隔をおいてラーメン構造を構成している梁4の
上に設置される。その間隔は、後述する曲げモーメント
への対応及び修復作業に必要な空間を考慮して、支持す
る梁4を基準にして、梁成の1〜1.5倍の距離が目安
になる。柱1と梁4とは、その接合部を剛接合10にす
ることでラーメン構造を形成しており、梁4の一方の梁
端部は柱3とピン接合6にしている。このため、地震時
には剛接合10の部分に塑性ヒンジを生じて梁端部には
曲げモーメントを生じないので、地震エネルギーは後述
のように、剛接合のみで吸収することになる。
【0016】図2は、図1の基準階を有する修復限定建
物の曲げモーメント図である。図示のように、外周架構
を構成しているラーメン構造の剛接部には大きな曲げモ
ーメントを生じており、ピン接合で結合している中央部
の架構には曲げモーメントがほとんど発生していない。
従って、大地震時に発生する損傷は、修復ゾーン8を区
画する剛接合の部分のみに発生することになり、中央部
の居室保持ゾーン7には何の損傷も発生しないことにな
る。
【0017】以上のように、本実施の形態では建物を設
計段階から中央部の居室保持ゾーンと外周架構付近に区
画される修復ゾーンに区分しておき、修復ゾーンに配置
される躯体架構は剛接合で構築し、居室保持ゾーンに配
置される柱と梁の接合はピン接合を採用することによっ
て、曲げモーメントの分担を規制して修復を必要とする
損傷を修復ゾーンに限定して発生させるよう構築してい
るので、損傷部分の修復作業を仕切壁の外側で迅速に実
施できることから、建築主は低コストでの修復が可能に
なり、併せて修復時にも居室保持ゾーンでは通常業務を
支障無く遂行できることから、建物の使用者にとっても
有利になる。
【0018】図3には、上記の状態を具体的な構造で示
している。居室保持ゾーン7は、柱3とこれにピン接合
6で支持されている梁4から成る構面で形成されてお
り、地震による曲げモーメントは発生しない。又、居室
保持ゾーン内の柱3と梁5との接合もピン接合6で行わ
れているので、曲げモーメントが発生しないことから、
柱3は軸力のみを分担しており、外周架構の柱1に比較
して小径の柱で十分に対処できる。
【0019】修復ゾーン8はALC板等で構成される仕
切壁9で居室保持ゾーン7と区分されており、柱1とラ
ーメン構造を構成する梁4及び梁2で構面を形成してい
る。従って、地震力による曲げモーメントは、地震エネ
ルギーを吸収するための塑性ヒンジの部分に発生し、剛
接合10にしている梁端部の部分で最大になる。この結
果、剛接合している梁端部に補修を必要とする大きな損
傷を生じることになる。
【0020】地震による損傷は、限定された開放廊下の
部分だけに制限されて発生することになり、損傷を受け
た柱、梁端部の剛接合部分は、その補修を開放廊下とし
て使用している仕切壁9の外で行うことができるので、
他への影響を最小限に押さえることが可能になって居室
保持ゾーン7での業務等に支障を与えることがない。
【0021】本発明で梁端部に使用するピン接合は、通
常に使用されている各種のものが採用可能であるが、図
4に鉄筋コンクリート構造(a)と鉄骨構造(b)の例
を示している。図4(a)に示す鉄筋コンクリート構造
の例では、柱21は、柱主筋22とコンクリートとから
構成されている。梁23の上端梁主筋24と下端梁主筋
25は、柱21側では通常通りに柱主筋22と一体に配
筋されて剛接合の状態を構成しており、柱21と梁23
とはラーメン構造を形成している。しかし、柱26と接
合する下端梁主筋25の梁端部側では、柱26の柱主筋
27まで延長させることなく、梁端部に形成されたスリ
ット28の手前で折り曲げている。そして、スリット2
8にはスリット材29が挿入してあるので、柱26と梁
23とは剛接合をしておらず、ピン接合の状態を構成し
ている。
【0022】図4(b)には、鉄骨構造の例を示してい
る。H形断面の鉄骨から成る柱31には同形状の梁32
が溶接33によって剛接合されてラーメン構造を構成し
ている。一方、反対側の梁端部は、柱34に設けられた
シャープレート35とH形断面のウェブとを高力ボルト
36で結合しており、梁32とH形断面の鉄骨から成る
柱34とはピン接合を形成している。
【0023】本発明による修復限定建物は、基本的に、
柱梁の結合をラーメン構造にする架構と仕切壁を配置す
る梁の梁端部を柱にピン接合する架構とを使い分けるこ
とで、ラーメン構造による架構を構成して地震による損
傷を剛接合部分に限定する修復ゾーンと、梁端部と柱と
をピン接合にする架構を構成して曲げモーメントを生じ
させずに損傷を回避している居室保持ゾーンとを形成し
て、将来の大地震による損傷に備えている。図5〜7で
は、上記基本に則って形成される各種の修復限定建物を
他の実施の形態で示している。
【0024】図5に示す実施の形態は、図1で説明した
基本型を踏襲して建物中央部に居室保持ゾーン7を区画
し、建物外周部に修復ゾーン8を形成している。このた
めに、建物外周部の架構は、柱1と梁2とをラーメン構
造で構築して剛接合10を梁端部に形成している。又、
建物外周部の柱1と建物内部の柱3とに接合している梁
4は、柱1とはラーメン構造を構成し、柱3と接合する
梁端部にピン接合6を構成しており、梁2、4の剛接合
付近に塑性ヒンジを形成して地震エネルギーを吸収して
いる。そして、建物内部の柱3、3間に支持される梁5
は梁の両端部をピン接合で柱と接合しており、曲げモー
メントはほとんど生じないように構成されている。
【0025】従って、大地震による損害はラーメン構造
の剛接合10が存在する修復ゾーン8に限定して発生す
る。これによって、建物中央の広い部分には損傷が生じ
ないので、地震後に建物を再使用する場合にも継続して
使用することが可能であり、修復ゾーンを開放廊下とし
て構成していない場合でも、梁4の上に仕切壁9を設け
ることで、補修工事を行っている間も居室保持ゾーン7
では補修工事に関係なく執務できる。
【0026】図6に示す実施の形態は、図5で説明した
実施の形態と反対に建物外周部に居室保持ゾーン7を区
画し、建物中央部に修復ゾーン8を形成している。この
ために、建物外周部の柱1、1間に支持される梁2は両
梁端部をピン接合6で柱1と接合しており、曲げモーメ
ントはほとんど生じないように構成されている。そし
て、建物外周部の柱1と建物内部の柱3とに接合してい
る梁4は、柱1と接合する梁端部にピン接合6を構成
し、柱3とは剛接合を構成している。又、建物内部の架
構は、柱3と梁5とをラーメン構造で構築して剛接合1
0を梁端部に形成し、梁4、5の剛接合付近に塑性ヒン
ジを形成して地震エネルギーを吸収している。
【0027】従って、大地震による損害はラーメン構造
の剛接合10が存在する建物中央の狭い部分に区画され
る修復ゾーン8に限定して発生する。これによって、地
震後に建物を再使用する場合にも、建物外周部に損傷が
生じないので建物外周部の補修は不要であるから、近接
の建物に迷惑をかけずに継続して使用することが可能で
あり、補修工事は仕切壁9を設けた建物内部の限られた
修復ゾーン8の中で行っているから、居室保持ゾーン7
では補修工事に影響を受けることなく執務することがで
きる。
【0028】図7に示す実施の形態は、図6で説明した
実施形態の修復ゾーン8の内側にさらに居室保持ゾーン
7を区画している。このために、図6の実施形態と同様
に、建物外周部の柱1、1間に支持される梁2は両梁端
部をピン接合6で柱1と接合しており、この間には曲げ
モーメントが生じないように構成されている。そして、
建物外周部の柱1と建物内部の柱3とに接合している梁
4は、柱1と接合する梁端部にピン接合6を構成し、柱
3とは剛接合を構成している。
【0029】ただし、建物中央部の架構においては、中
心の柱3’を除いた柱3と柱3、3間の梁5とはラーメ
ン構造で構築して梁端部に剛接合10を形成している。
そして、中心の柱3’と周辺の柱3とに接合している梁
4’は、柱3’と接合する梁端部にピン接合6を構成
し、柱3とはラーメン構造を構成しているので、柱3’
と梁4’には曲げモーメントを発生せずに、梁4、
4’、5の剛接合付近に形成される塑性ヒンジで地震エ
ネルギーを吸収している。
【0030】従って、大地震による損害は、建物中央の
周辺に区画される修復ゾーン8に限定されて発生し、建
物外周部と建物の中央部分の居室保持ゾーン7には損傷
が生じていないので、地震後に建物を再使用できる場合
にも、補修は不要である。この結果、建物中央部に主要
コンピューター等の特殊施設を配置して置くと、地震に
よる損傷から防御することが可能になり、外周部も継続
して使用することができる。又、損傷の補修は仕切壁9
で囲まれた修復ゾーン8で行われるので、近接の建物に
迷惑を掛けずに実施でき、かつ、補修工事を行っている
間も居室保持ゾーン7では補修工事に影響を受けること
なく執務を継続できる。
【0031】本発明による修復限定建物は、上記各種実
施の形態例において説明してきたように、梁端部と柱と
をピン接合にした架構部分では、曲げモーメントが生じ
ないので部材応力の減少に見合った架構部材の減量を図
ることができる。しかして、地震に対する建物の安全性
を高めるために、建物全体としては地震力に抵抗して地
震エネルギーを吸収する必要があるが、ピン構造にした
架構部分の採用は、建物の架構全体としてはラーメン構
造の架構部分を減少させることになる。このために、建
物の架構をラーメン構造にし剛接合の梁端部に塑性ヒン
ジを形成して、地震エネルギーの吸収能力を確保するこ
とも考慮されなければならない。
【0032】地震エネルギーの吸収能力を確保するため
には、柱、梁の剛接部材に対して主筋量の増量、高強度
材料の使用、部材断面の拡大等を行って部材強度の向上
で対処することも可能であるが、部材強度の向上は剛接
部材に関連して建物全体の架構にまで影響する可能性が
ある。そこで、これを回避して建物全体に影響しない剛
接合部に部分的に対策を施すことを考慮する必要があ
る。
【0033】上述してきた如く、本発明による修復限定
建物は、建物内に居室保持ゾーンと修復ゾーンとを区画
するために、ラーメン構造の剛接合に対して梁端部にピ
ン接合を用いる架構を組み合わせており、同時にピン接
合による部材応力の減少に見合った架構部材の減量を図
っている。このことから、地震エネルギーの吸収能力の
確保は、部材強度の向上による対策を意識しながら、本
発明の特長を生かして剛接合の梁端部に靭性能の向上を
施す部分的対応で行うことを主要にしている。以下に、
剛接合の梁端部に靭性能の向上を施す実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0034】図8には、鉄筋コンクリート構造において
剛接合の靭性能を高める実施例として、剛接合の梁端部
にコンファインド補強を施す各種の態様を示している。
図8(a)は、剛接合している梁端部40に、横補強筋
41を増量することによって、その靭性能を高めている
例である。横補強筋を増量する範囲は、柱に接合した梁
端から梁成の1〜1.5倍の位置までにして修復ゾーン
を区画するために梁の上に仕切壁を設置する前述の位置
とほぼ同じにしている。
【0035】図8(b)には、横補強筋41に加えて剛
接合している梁端部40の梁断面内に、複数の中子筋4
2を配置することによって、靭性能をさらに高める例を
示している。
【0036】図8(c)には、横補強筋41に加えて剛
接合している梁端部40の梁断面内に、水平方向に円形
螺旋形の拘束筋43を複数個配置することによって、靭
性能を高める例を示している。
【0037】図8(d)には、横補強筋41に加えて剛
接合している梁端部40を鋼板もしくはFRPシートを
卷回することで、靭性能を高める例を示している。図示
の例では、梁端部40に鋼板45をアンカー46で締着
し、梁との間にエポキシ樹脂もしくはモルタルを注入す
ることで梁との一体化を図っている。
【0038】図9には、鉄骨構造における剛接合の靭性
能を高める実施例として、剛接合の梁端部から離れた位
置に塑性ヒンジを発生させる態様を示している。本実施
の形態では、梁端部の上下フランジの両側に台形リブ3
7を取り付け、現場でフランジを柱のダイヤフラムに溶
接38し、ウエブを高力ボルトで接合している。この構
成によって、ウエブの曲げモーメントはフランジの水平
ハンチ部を通じて柱のダイヤフラムに伝達され、最大応
力の発生位置は溶接のない台形リブ37より中央寄りの
フランジ部分39にして、その近傍に塑性ヒンジを発生
させている。以上のように、本実施の形態では最大応力
の発生位置を台形リブの長さで設定できることから、柱
との溶接部を避けた位置に塑性ヒンジを設定して、剛接
合部における靭性能の向上を図っている。
【0039】上記実施の形態で明らかなように、本発明
による修復限定建物では、地震エネルギーの吸収を剛接
合の靭性能を高める方式を採用することで、ラーメン構
造の剛接合部に対する部分的な対策に留めている。この
結果、対策はピン接合された梁端部近傍における部材応
力の減少に見合った架構部材の減量と同時に実施される
ことから、建物に対する地震エネルギーの吸収は特別の
コストを費やすことなく建物全体として経済的に対処す
ることができる。
【0040】以上のように、本発明による修復限定建物
は、建物内部に修復ゾーンと居室保持ゾーンとを形成
し、各ゾーンの境界域をラーメン構造の梁部に設定し、
境界域を設定したラーメン構造の梁端部を居室保持ゾー
ンの柱にピン接合し、ラーメン構造の剛接合部で靭性能
の向上を図っているから、地震エネルギーを修復ゾーン
に位置するラーメン構造の剛接部が吸収して、居室保持
ゾーンに位置するラーメン構造の梁端部は負担しないの
で、地震による損傷とその補修は修復ゾーンに限定さ
れ、居室保持ゾーンでは修復中も支障無く勤務を継続で
きる。
【0041】以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細
に説明してきたが、本発明による修復限定建物は、上記
実施の形態に何ら限定されるものでなく、剛接合の補強
方法やピン接合を他の類似工法で施工するような、本発
明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能で
あることは当然のことである。
【0042】
【発明の効果】請求項1の発明である修復限定建物は、
建物内部に修復ゾーンと居室保持ゾーンとを形成し、各
ゾーンの境界域をラーメン構造の梁部に設定して、境界
域を設定したラーメン構造の梁端部を居室保持ゾーンの
柱にピン接合しているので、大地震時の損傷を修復ゾー
ンに限定して発生させ、居室保持ゾーンには損傷を生じ
させないので、地震後の補修は低コストで実施すること
ができ、補修時にも居室保持ゾーンでは通常通りに勤務
を継続できる効果を奏している。
【0043】請求項2の発明である修復限定建物は、請
求項1に記載の修復限定建物において、居室保持ゾーン
内の柱梁接合はピン接合にすることを特徴としているの
で、上記効果に加えて、地震による損傷は居室保持ゾー
ンに発生することなく、継続して使用できる効果を奏し
ている。
【0044】請求項3の発明である修復限定建物は、請
求項1又は2に記載の修復限定建物において、修復ゾー
ン内の柱梁接合は、剛接合にすることを特徴としている
ので、上記効果に加えて、地震による損傷は修復ゾーン
の剛接合の部分に限定され、その補修は限定された範囲
に留められる効果を奏している。
【0045】請求項4の発明である修復限定建物は、請
求項1〜3のいずれかに記載の修復限定建物において、
修復ゾーンと居室保持ゾーンとの境界域に仕切壁を設置
することを特徴としているので、上記効果に加えて、修
復ゾーンを開放廊下として形成することで地震後の補修
スペースを確保し、居室保持ゾーンを支障なく使用でき
る効果を奏している。
【0046】請求項5又は6の発明である修復限定建物
は、請求項1〜4のいずれかに記載の修復限定建物にお
いて、建物外周部を、修復ゾーンもしくは居室保持ゾー
ンに形成することを特徴としているので、上記効果に加
えて、補修作業を近隣建物や居室保持ゾーンに迷惑を掛
けずに施工できる効果を奏している。
【0047】請求項7〜9のいずれかの発明である修復
限定建物は、請求項1〜6のいずれかに記載の修復限定
建物において、鉄筋コンクリート構造においてラーメン
構造の剛接部にコンファインド補強の実施もしくは鉄骨
構造においてラーメン構造の剛接合から離れた位置での
塑性ヒンジの設定によって靭性能を向上させることを特
徴としているので、上記効果に加えて、地震エネルギー
を建物全体で経済的に吸収できる効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による修復限定建物の基準階の平面図
と矢視図
【 図2】本発明による修復限定建物の曲げモーメント
【 図3】本発明による修復限定建物の部分断面図
【 図4】梁端部を柱に結合するピン接合の実施の形態
【 図5】建物外周部に修復ゾーンを区画した実施の形
態図
【 図6】建物外周部に居室保持ゾーンを区画した実施
の形態図
【 図7】建物外周部と中央部に居室保持ゾーンを区画
した実施の形態図
【 図8】剛接合部をコンファインド補強した実施の形
態図
【 図9】剛接合部の塑性ヒンジを移動させた実施の形
態図
【 図10】従来の梁降伏先行破壊型建物の概念図
【符号の説明】
1 外周部の柱、 2 外周部の梁、 3、3’ 建物
内部の柱、4、4’ 梁端部をピン接合した梁、 5
ラーメン構造の梁、6 ピン接合、 7 居室保持ゾー
ン、 8 修復ゾーン、 9 仕切壁、10 剛接合、
21、26 柱、 22、27 柱主筋、 23
梁、24 上端梁主筋、 25 下端梁主筋、 28
スリット、29 スリット材、 31、34 鉄骨柱、
32 鉄骨梁、 33 溶接、35 シャープレー
ト、 36 高力ボルト、 37 台形リブ、38 溶
接、 39 フランジ部、 40 梁、 41 横補強
筋、42 中子筋、 43 拘束筋、 44 プレスト
レス鋼線、 45 鋼板、46 アンカー、 47 注
入材、 50 柱、 51 梁、52 剛接合、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平松 一夫 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2丁目2番2 号株式会社奥村組内 (72)発明者 中田 浩之 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2丁目2番2 号株式会社奥村組内 (72)発明者 上 寛樹 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2丁目2番2 号株式会社奥村組内 (72)発明者 武田 彰文 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2丁目2番2 号株式会社奥村組内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建物内部に修復ゾーンと居室保持ゾーン
    とを形成し、各ゾーンの境界域をラーメン構造の梁部に
    設定する修復限定建物であって、該境界域を設定したラ
    ーメン構造の梁端部を居室保持ゾーンの柱にピン接合す
    ることを特徴とする修復限定建物。
  2. 【請求項2】 居室保持ゾーン内の柱梁接合は、ピン接
    合にすることを特徴とする請求項1に記載の修復限定建
    物。
  3. 【請求項3】 修復ゾーン内の柱梁接合は、剛接合にす
    ることを特徴とする請求項1又は2に記載の修復限定建
    物。
  4. 【請求項4】 修復ゾーンと居室保持ゾーンとの境界域
    に、仕切壁を設置することを特徴とする請求項1〜3の
    いずれかに記載の修復限定建物。
  5. 【請求項5】 建物外周部を、修復ゾーンに形成するこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の修復限
    定建物。
  6. 【請求項6】 建物外周部を、居室保持ゾーンに形成す
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の修
    復限定建物。
  7. 【請求項7】 ラーメン構造の剛接部に、靭性能を付加
    することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の
    修復限定建物。
  8. 【請求項8】 ラーメン構造の剛接部をコンファインド
    補強することを特徴とする請求項7に記載の修復限定建
    物。
  9. 【請求項9】 ラーメン構造の剛接部から離れた位置に
    塑性ヒンジを設定することを特徴とする請求項7に記載
    の修復限定建物。
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