JP2001042272A - 偏波分散補償回路 - Google Patents

偏波分散補償回路

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JP2001042272A
JP2001042272A JP22023699A JP22023699A JP2001042272A JP 2001042272 A JP2001042272 A JP 2001042272A JP 22023699 A JP22023699 A JP 22023699A JP 22023699 A JP22023699 A JP 22023699A JP 2001042272 A JP2001042272 A JP 2001042272A
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隆志 才田
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隆司 郷
Koichi Takiguchi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バルク部品や可動部材を用いず、小型で信頼
性に優れた導波路型の偏波分散補償回路を実現する。 【解決手段】 基板上に、入力光を直交する2つの偏光
成分に分離する導波路型偏光分離手段と、2つの偏光成
分の位相差を調整する位相調整手段と、2つの偏光成分
を同一偏光に変換する第1の偏光入れ替え手段と、位相
差が調整され同一偏光になった2つの偏光成分を所定の
分岐比で合分波する分岐比可変光カプラと、分岐比可変
光カプラから出力される同一偏光成分の遅延差を調整す
る遅延調整手段と、同一偏光成分を直交する2つの偏光
成分に変換する第2の偏光入れ替え手段と、遅延差が調
整され直交する偏光になった2つの偏光成分を偏光合成
して出力する導波路型偏光合成手段とを備え、位相調整
手段に設定する位相差、分岐比可変光カプラに設定する
分岐比、遅延調整手段に設定する遅延差を調整する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光伝送路(光ファ
イバ)の偏波分散によって生じた光信号歪みを整形する
偏波分散補償回路に関する。
【0002】ここで、光ファイバの偏波分散(PMD:
Polarization Mode Dispersion) とは、光ファイバの複
屈折性のために光信号の偏光状態(偏波状態)によって
伝搬速度が変化する現象であり、これが光信号歪みの要
因の一つになっている。
【0003】
【従来の技術】光通信の発展に伴い、既設の光ファイバ
に高速な光信号を伝搬させたいという要求が高まってい
る。しかし、既設の光ファイバは比較的高い偏波分散を
有するので、高速な光信号を伝搬させたときの光信号歪
みが大きな問題になる。
【0004】これを解決するための偏波分散補償回路と
しては、2つの偏光プリズム(偏光ビームスプリッタ)
および機械的可動鏡を用いたものが知られている(参考
文献:F.Heismann et al.,"AUTOMATIC COMPENSATION OF
FIRST-ORSER POLARIZATIONMODE DISPERSION IN A 10 G
b/s TRANSMISSION SYSTEM", WdC11, ECOC'98, 1998)。
【0005】図7は、上記文献に記載されている従来の
偏波分散補償回路の構成例を示す。図において、入力ポ
ート101から入力された光信号は、偏光コントローラ
102を介して第1の偏光プリズム103に入力され
る。ここで、光伝送路で遅れたTM光は直進するポート
に出力され、進んだTE光は直交するポートに出力さ
れ、偏光分離が行われる。TE光は、2枚の反射鏡を含
む機械的可動鏡104を介して第2の偏光プリズム10
5に入力され、直接入力されるTM光と偏光合成されて
出力ポート106に出力される。この機械的可動鏡10
4を移動させることにより、TE光が空間的に伝搬する
光路長が変化し、TE光とTM光の遅延量が調整されて
偏波分散補償が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の偏波分
散補償回路には、次のような問題点がある。第1は、機
械的可動鏡104を有しているので信頼性に欠けること
である。偏波分散は時間的に大きく変動する特性をもつ
が、従来の偏波分散補償回路では偏波分散の変動に追従
するために機械的可動鏡104を動かす必要があり、長
期的な安定性が問題となる。
【0007】第2は、空間的に光学系を構成しているの
で、各部品(103,104,105)の位置に厳しい
精度が要求されることである。特に、従来の偏波分散補
償回路では、機械的可動鏡104を動かしたときにも光
学的な結合量が変化しないように、極めて厳しい位置精
度が要求される。
【0008】第3は、従来の偏波分散補償回路が個別部
品を組み合わせた構成であり、かつバルク部品の偏光コ
ントローラ102や可動部材の機械的可動鏡104を用
いた構成であるので小型化に限界があることである。
【0009】本発明は、バルク部品や可動部材を用い
ず、小型で信頼性に優れた導波路型の偏波分散補償回路
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の偏波分散補償
回路は、基板上に、入力光を直交する2つの偏光成分に
分離して2つの出力ポートに出力する導波路型偏光分離
手段と、2つの偏光成分の位相差を調整する位相調整手
段と、2つの偏光成分を同一偏光に変換する第1の偏光
入れ替え手段と、位相調整手段で位相差が調整され、第
1の偏光入れ替え手段で同一偏光になった2つの偏光成
分を入力し、所定の分岐比で2つの出力ポートに合分波
する分岐比可変光カプラと、分岐比可変光カプラの2つ
の出力ポートに出力される同一偏光成分の遅延差を調整
する遅延調整手段と、同一偏光成分を直交する2つの偏
光成分に変換する第2の偏光入れ替え手段と、遅延調整
手段で遅延差が調整され、第2の偏光入れ替え手段で直
交する偏光になった2つの偏光成分を入力し、偏光合成
して出力する導波路型偏光合成手段とを備え、位相調整
手段に設定する位相差、分岐比可変光カプラに設定する
分岐比、遅延調整手段に設定する遅延差を調整して入力
光の偏波分散を補償する構成である。
【0011】請求項2の偏波分散補償回路は、請求項1
の構成における導波路型偏光分離手段と遅延調整手段と
の間の位相調整手段および分岐比可変光カプラを2段構
成とし、第1および第2の位相調整手段に設定する位相
差、第1および第2の分岐比可変光カプラに設定する分
岐比、遅延調整手段に設定する遅延差を調整して入力光
の偏波分散を補償する構成である。
【0012】遅延調整手段は一対の光遅延線で構成さ
れ、かつ一対の光遅延線の少なくとも一方が遅延量を可
変する手段を含む構成である。この光遅延線の遅延量を
可変する手段は、Nを正の整数としたときに、(N+
1)個の2入力2出力光スイッチと、N組の長さの異な
る光導波路対とを交互に接続し、初段の2入力2出力光
スイッチの一方の入力ポートを光遅延線の入力ポートと
し、最終段の2入力2出力光スイッチの一方の出力ポー
トを光遅延線の出力ポートとし、各2入力2出力光スイ
ッチの入出力ポート間をスルー状態またはクロス状態に
設定することにより各組の光導波路対のいずれか一方の
光導波路を選択して遅延量を可変させる構成である。ま
た、可変遅延線を形成するN組の光導波路対の各光路長
差が、1:2:4:8:…:2N-1 のように2の階乗の
比になるように構成することにより、N段で単位遅延量
の1〜2N−1倍の遅延量を自由に選択することができ
る。
【0013】分岐比可変光カプラは、2入力2出力の2
つの光カプラと、これらを接続する2本の導波路アーム
とを備え、一方の導波路アーム上に位相調整手段を形成
したマッハツェンダ型干渉計により構成する。この位相
調整手段を駆動することにより、任意の分岐比を実現す
ることができる。
【0014】導波路型偏光分離手段および導波路型偏光
合成手段は、2入力2出力の2つの光カプラと、これら
を接続する2本の導波路アームとを備え、一方の導波路
アーム上に複屈折を調整する手段を形成した構成であ
る。偏光入れ替え手段は、半波長板またはファラデー回
転子を用いた構成である。
【0015】また、以上の偏波分散補償回路において、
偏波分散補償回路を構成する光導波路が石英系光導波路
であり、位相調整手段が石英系光導波路上に形成された
薄膜ヒータとしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)図1は、本発
明の偏波分散補償回路の第1の実施形態を示す。なお、
ここでは、シリコン基板上に形成した石英系光導波路を
用いて構成した例について説明する。この石英系光導波
路は、光ファイバとの整合に優れた安定な光回路を構成
できるからであるが、これに限定されるものではなく、
例えばLiNbO3 光導波路や半導体光導波路など、他の
光導波路を用いてもよい。
【0017】図1において、シリコン基板10上には、
入力用チャネル光導波路11、導波路型偏光分離素子1
2、一対の光導波路13a,13b、分岐比可変光カプ
ラ14、一対の光遅延線15a,15b、導波路型偏光
合成素子16、出力用チャネル光導波路17が順次配置
され、さらに一対の光導波路13a,13bおよび一対
の光遅延線15a,15bの各一方に偏光入れ替え手段
18a,18bが配置される。また、一対の光導波路1
3a,13bには、相対的な位相差を調整する位相調整
手段19a,19bが配置される。
【0018】導波路型偏光分離素子12の1つの入力ポ
ートは入力用チャネル光導波路11となり、2つの出力
ポートに一対の光導波路13a,13bを介して分岐比
可変光カプラ14の2つの入力がそれぞれ光学的に接続
される。偏光入れ替え手段18aは、ここでは光導波路
13a側に配置しているが、光導波路13a,13bの
いずれにあってもよい。位相調整手段19a,19b
は、ここでは光導波路13a,13bにそれぞれ配置し
ているが、光導波路13a,13bのいずれか一方にあ
ってもよい。また、偏光入れ替え手段18aと位相調整
手段19aの位置は入れ替えてもよい。
【0019】分岐比可変光カプラ14の2つの出力に
は、一対の光遅延線15a,15bの一端が光学的に接
続され、その他端に導波路型偏光合成素子16の2つの
入力ポートがそれぞれ光学的に接続される。導波路型偏
光合成素子16の1つの出力ポートは出力用チャネル光
導波路17となる。偏光入れ替え手段18bは、ここで
は光遅延線15b側に配置しているが、光遅延線15
a,15bのいずれにあってもよい。また、偏光入れ替
え手段18bと光遅延線15bの位置は入れ替えてもよ
い。
【0020】以下、式を用いて光伝送路の偏波分散とそ
の補償回路について説明する。光伝送路の偏波分散特性
は、偏波分散を1次の項まで近似すれば、「2つの直交
する偏光状態e1 ,e2 の間に群遅延時間差τD を与え
る特性」と見なすことができる。この光伝送路の偏光伝
達特性を式で表すと、
【0021】
【数1】 となる。ここで、Aは光伝送路の偏波分散特性を表す J
ones行列、fは光周波数、jは虚数単位である。また、
Xは、光伝送路Ut の固有偏光状態である Jonesベクト
ル対e1 ,e2 を直線偏光の Jonesベクトル対ex=(1,
O) ,ey=(0,1)に変換するユニタリ行列である。
【0022】ユニタリ行列Xは、一般に共通の位相項を
除いて、3つのパラメータφ,ψ,θを用いて
【0023】
【数2】 と表される。
【0024】次に、図1の偏波分散補償回路の動作につ
いて、式を用いて説明する。入力用チャネル光導波路1
1から入力された光信号は、導波路型偏光分離素子12
によりex=(1,O)成分とey=(0,1)成分に分離される。
ここでは、光導波路13aにey 成分が分離され、光導
波路13bにex 成分が分離される。光導波路13aに
分離されたey 成分は、偏光入れ替え手段18aにより
x 光に変換され、続いて位相調整手段19a,19b
により相対的な位相差αが与えられる。このとき、位相
調整手段19a,19bの動作を表す Jones行列U
1(α) は、
【0025】
【数3】 で与えられる。
【0026】続いて、光信号のex ,ey 成分は、分岐
比可変光カプラ14により合分波される。このときの分
岐比可変光カプラ14の分岐比をκ= sinβとすると、
分岐比可変光カプラ14の動作を表す Jones行列U
2(β) は、
【0027】
【数4】 で与えられる。
【0028】分岐比可変光カプラ14から出力される光
信号は、一対の光遅延線15a,15bに導かれ、ここ
で相対的な遅延差τを受ける。このときの光遅延線15
a,15bの動作を表す Jones行列U3(τ) は、
【0029】
【数5】 で与えられる。
【0030】光遅延線15bを出た光信号は、偏光入れ
替え手段18bによりex 成分からey 光に変換され、
光遅延線15aを出た光信号と導波路型偏波合成素子1
6で合波される。
【0031】以上により、図1の偏波分散補償回路全体
の動作を表す Jones行列Bは、 B=U3(τ) U2(β) U1(α) …(6) で与えられる。ここで、偏波分散補償回路のパラメータ
が α=φ …(7) β=ψ−π/4 …(8) τ=τD …(9) となるように設定すれば、光伝送路と偏波分散補償回路
を合わせた Jones行列Cは、
【0032】
【数6】 で与えられる。式(10)は、もはや偏波分散τD を含んで
いない。
【0033】すなわち、図1に示す第1の実施形態の構
成では、位相調整手段19a,19bと分岐比可変光カ
プラ14がいわゆる偏光コントローラとして作用し、光
遅延線15a,15bが可変遅延線として作用し、全体
として偏波分散補償回路を構成している。これにより、
本発明の偏波分散補償回路は、光伝送路における1次の
偏波分散を補償できることがわかる。
【0034】(第2の実施形態)図2は、本発明の偏波
分散補償回路の第2の実施形態を示す。図2において、
シリコン基板20上には、入力用チャネル光導波路2
1、導波路型偏光分離素子22、一対の光導波路23
a,23b、分岐比可変光カプラ24a、一対の光導波
路23c,23d、分岐比可変光カプラ24b、一対の
光遅延線25a,25b、導波路型偏光合成素子26、
出力用チャネル光導波路27が順次配置され、さらに一
対の光導波路23a,23bおよび一対の光遅延線25
a,25bの各一方に偏光入れ替え手段28a,28b
が配置される。また、一対の光導波路23a,23bお
よび23c,23dには、相対的な位相差を調整する位
相調整手段29a,29bおよび29c,29dが配置
される。
【0035】導波路型偏光分離素子22の1つの入力ポ
ートは入力用チャネル光導波路21となり、2つの出力
ポートに一対の光導波路23a,23bを介して分岐比
可変光カプラ24aの2つの入力がそれぞれ光学的に接
続される。偏光入れ替え手段28aは、ここでは光導波
路23a側に配置しているが、光導波路23a,23b
のいずれにあってもよい。位相調整手段29a,29b
は、ここでは光導波路23a,23bにそれぞれ配置し
ているが、光導波路23a,23bのいずれか一方にあ
ってもよい。また、偏光入れ替え手段28aと位相調整
手段29aの位置は入れ替えてもよい。
【0036】分岐比可変光カプラ24aの2つの出力に
は、一対の光導波路23c,23dを介して分岐比可変
光カプラ24bの2つの入力がそれぞれ光学的に接続さ
れる。位相調整手段29c,29dは、ここでは光導波
路23c,23dにそれぞれ配置しているが、光導波路
23c,23dのいずれか一方にあってもよい。
【0037】分岐比可変光カプラ24bの2つの出力に
は、一対の光遅延線25a,25bの一端が光学的に接
続され、その他端に導波路型偏光合成素子26の2つの
入力ポートがそれぞれ光学的に接続される。導波路型偏
光合成素子26の1つの出力ポートは出力用チャネル光
導波路27となる。偏光入れ替え手段28bは、ここで
は光遅延線25b側に配置しているが、光遅延線25
a,25bのいずれにあってもよい。また、偏光入れ替
え手段28bと光遅延線25bの位置は入れ替えてもよ
い。
【0038】本実施形態の偏波分散補償回路では、位相
調整手段29a,29bと分岐比可変光カプラ24aに
より構成された第1の偏光コントローラと、位相調整手
段29c,29dと分岐比可変光カプラ24bにより構
成された第2の偏光コントローラが縦続に接続された構
成になっている。これにより、1つの偏光コントローラ
のみを有する第1の実施形態の構成に比べて、調整でき
る位相量の制限を緩和することができる。
【0039】従来、傾いた1/2波長板と傾いた1/4
波長板で構成されたバルク部品の偏光コントローラを2
段縦続に接続すると、各波長板を傾ける角度に制限があ
っても、各1/2波長板と各1/4波長板を用いたリセ
ット動作により、無限に変化していく偏光状態に追従さ
せることができる、いわゆるエンドレスな偏光コントロ
ーラを構成できることが知られている(参考文献:N.G.
Walker and G.R.Walker,"Polarization Control for Co
herent Commnication", J. of Lightwave Technol., vo
l.8, no.3, pp.438-458, 1999)。
【0040】本実施形態の構成でも数学的には全く同様
に、位相調整手段29a〜29dおよび分岐比可変光カ
プラ24a,24bを用いてリセット動作が可能であ
り、エンドレスな偏光コントロールが可能となる。した
がって、位相調整手段29a〜29dの位相調整量に制
限があるような場合でも、時々刻々変化する光信号の偏
光状態に常に追従して偏波分散補償を行うことが可能と
なる。
【0041】次に、図1,2に示す本発明の偏波分散補
償回路を導波路型偏光分離素子12(22)および導波
路型偏光合成素子16(26)、偏光入れ替え手段18
(28)、位相調整手段19(29)、分岐比可変光カ
プラ14(24)、光遅延線15(25)に分割し、そ
れぞれの構成および機能について説明する。図3は、導
波路型偏光分離素子12(22)の構成例を示す。図4
は、分岐比可変光カプラ14(24)の構成例を示す。
図5は、光遅延線15(25)の構成例を示す。
【0042】(導波路型偏光分離素子12(22)の構
成)導波路型偏光分離素子12(22)と導波路型偏光
合成素子16(26)は可逆の構成であるので、以下導
波路型偏光分離素子12について説明する。図3に示す
導波路型偏光分離素子12(22)は、2入力2出力の
2つの光カプラ31,32と、それらを接続する2本の
アーム導波路33a,33bと、一方のアーム導波路3
3a上に形成される複屈折調整用のアモルファスシリコ
ン薄膜(応力付与膜)34と、両アーム導波路33a,
33b上に形成される動作点調整用の薄膜ヒータ35
a,35bとにより構成される。
【0043】このアモルファスシリコン薄膜34にレー
ザを照射して、いわゆるレーザトリミングを行うことに
より、x偏光に対する干渉計の位相差φx とy偏光に対
する干渉計の位相差φy の間にπの位相差を与えること
ができる。したがって、薄膜ヒータ35a,35bによ
り動作点を調整することにより、例えばy偏光が一方の
出力ポートから出力され、x偏光が他方の出力ポートか
ら出力されるような偏光分離機能が実現する。導波路型
偏光合成素子16(26)は、導波路型偏光分離素子1
2(22)と逆の経路により偏光合成して出力する構成
となる。
【0044】なお、ここでは導波路型偏光分離素子(導
波路型偏光合成素子)として、石英系光導波路とアモル
ファスシリコン薄膜および薄膜ヒータによるマッハツェ
ンダ型干渉計を用いた構成を示したが、これはこの組み
合わせが光ファイバとの整合性に優れ、制御性がよいた
めである。しかし、本発明の偏波分散補償回路における
導波路型偏光分離素子(導波路型偏光合成素子)はこれ
に限定されるものではなく、半導体光導波路の構造やL
iNbO3 導波路のプロトン交換を用いた導波路型偏光分
離素子など、他の導波路型偏光分離素子を用いてもよ
い。
【0045】(偏光入れ替え手段18(28)の構成)
偏光入れ替え手段18(28)は、光導波路に半波長板
を挿入して実現される。偏光入れ替え手段18a(28
a)は、例えばy偏光をx偏光に入れ替えるものであ
り、導波路型偏光分離素子12(22)で偏光分離され
たx偏光およびy偏光を共にx偏光とし、偏光入れ替え
手段18b(28b)は、x偏光の一方をy偏光に入れ
替えて導波路型偏光合成素子16(26)に入力して偏
光合成する。なお、偏光入れ替え手段は、半波長板に限
定されるものではなく、例えばファラデー回転子など他
の偏光入れ替え手段を用いてもよい。
【0046】(位相調整手段19(29)の構成)位相
調整手段19(29)は、光導波路上に薄膜ヒータを形
成して実現される。光導波路上に形成された薄膜ヒータ
では、熱光学効果によって2つの偏光成分の相対的な位
相差を調整する。
【0047】なお、位相調整手段は、石英系光導波路上
に形成される薄膜ヒータに限定されるものではなく、半
導体光導波路のキャリア変調による屈折率変化やLiNb
3光導波路の電気光学効果など、他の位相調整手段を
用いてもよい。
【0048】(分岐比可変光カプラ14(24)の構
成)図4に示す分岐比可変光カプラ14(24)は、2
入力2出力の2つの光カプラ41,42と、それらを接
続する2本のアーム導波路43a,43bによりマッハ
ツェンダ型干渉計を構成し、一方のアーム導波路43a
上に薄膜ヒータ44が形成された構成である。この薄膜
ヒータ44を駆動して2本のアーム導波路の光路長差を
0〜πの範囲で調整すれば、光カプラ41の2入力から
光カプラ42の2出力への分岐比を変えることができ
る。
【0049】なお、分岐比可変光カプラは、石英系光導
波路で形成したマッハツェンダ型干渉計の熱光学効果を
用いた構成に限定されるものではなく、半導体光導波路
のキャリア変調による光吸収量変化やLiNbO3 光導波
路の電気光学効果など、他の手法を用いてもよい。
【0050】(光遅延線15(25)の構成例)図5に
示す光遅延線15(25)は、N(正の整数:ここでは
N=7)組の光導波路対51a〜51gと、(N+1)
個の2入力2出力光スイッチ52a〜52hから構成さ
れる。2入力2出力光スイッチ52aは、2つの光カプ
ラ53a,54aと、それらを接続する2本の導波路ア
ームからなるマッハツェンダ型干渉計構成をとり、一方
(または両方)の導波路アーム上にTO移相器として動
作する薄膜ヒータ55aが形成されている。他の2入力
2出力光スイッチ52b〜52hについても同様であ
る。
【0051】第1の2入力2出力光スイッチ52aの一
方の入力ポートは光遅延線15(25)の入力ポートと
なり、2つの出力ポートに光導波路対51aが接続され
る。光導波路対51aの他端には、第2の2入力2出力
光スイッチ52bの2つの入力ポートが接続され、その
2つの出力ポートには次の光導波路対51bが接続され
る。同様に、各組の光導波路対51a〜51gの前後に
2入力2出力光スイッチ52a〜52hが接続され、各
2入力2出力光スイッチの設定に応じて各組の光導波路
対の短い光導波路または長い光導波路のいずれかが選択
されるようになっている。第8の2入力2出力光スイッ
チ52hの一方の出力ポートは、光遅延線15(25)
の出力ポートとなる。
【0052】また、各組の光導波路対51a〜51gは
短い光導波路と長い光導波路が対になっており、その間
の光路長差が、 ΔD,2ΔD,4ΔD,8ΔD,…,2N-1ΔD のいずれかになるように設定されている。なお、各組の
光導波路対51a〜51gの光路長差はこの順番に限ら
ず、順番を入れ替えて配置してもよい。
【0053】このような構成の光遅延線15(25)の
動作について説明する。ただし、2入力2出力光スイッ
チ52は、薄膜ヒータ55に電力を加えないときに入出
力ポートが「スルー状態」となり、電力を加えたときに
「クロス状態」になるものとする。なお、2入力2出力
光スイッチには、薄膜ヒータ55に電力を加えないとき
に「クロス状態」となり、電力を加えたときに「スルー
状態」になるものもある。
【0054】すべての2入力2出力光スイッチ52a〜
52hを「スルー状態」にすると、光遅延線15(2
5)の入力ポートに入力された光信号は各組の光導波路
対51a〜51gの短い光導波路を通過して出力ポート
へ至る。このときの光遅延線全体での遅延量をD0 とす
る。次に、2入力2出力光スイッチ52c,52d,5
2f,52hを「クロス状態」とすると、光導波路対5
1c,51f,51gの長い光導波路を通過し、その他
は短い光導波路を通過して出力ポートへ至る。このとき
の光遅延線全体の遅延量は、 D0+4ΔD+32ΔD+64ΔD=D0+100ΔD となる。このように、各2入力2出力光スイッチ52a
〜52hを「スルー状態」または「クロス状態」に切り
替えることにより、光遅延線15(25)の遅延量を一
般にD0 からD0+(2N−1)ΔDまでΔD刻みで実現す
ることができる。
【0055】なお、ここでは光スイッチとして石英系光
導波路の熱光学効果を用いた2入力2出力光スイッチを
示した。これは、この組み合わせが消光比に優れた安定
な光スイッチを実現できるからであるが、本発明はこれ
に限定されるものではなく、半導体光スイッチやマイク
ロメカニカルスイッチ等の他の光スイッチを用いてもよ
い。
【0056】また、図1(図2)に示す本発明の偏波分
散補償回路の実施形態では、一対の光遅延線15a,1
5b(25a,25b)の両方が遅延量を変える構成と
したが、一対の光遅延線のうちの一方の遅延量が固定
で、他方の遅延量が可変となる構成としてもよい。
【0057】(偏波分散補償回路の作製)本発明の偏波
分散補償回路の作製は、石英系光導波路を用いて行っ
た。まず、シリコン基板上に火炎堆積法によりSiO2
部クラッド層を堆積し、次にGeO2をドーパントとして
添加したSiO2ガラスのコア層を堆積した後に、電気炉
で透明ガラス化した。次に、コア層をエッチングしてコ
ア部を作製した。続いて、所定の光導波路上に薄膜ヒー
タ、電気配線、アモルファスシリコン薄膜を蒸着した。
最後に、所定の光導波路にレーザを照射して残留応力を
開放した。
【0058】図6は、作製した偏波分散補償回路に偏波
分散により分離した光パルスを入力したときの補償特性
を示す。半値全幅50psec 、繰り返し周波数10GHzの光
パルスを、偏波分散量 1.8psec/(km)1/2 の光ファイバ
を 600km伝送した後に評価した。図6には、伝送前、
伝送後で偏波分散補償前、伝送後で偏波分散補償後の光
パルス形状を示す。偏波分散により劣化した光パルス形
状が補償されていることがわかる。なお、完全に元の光
パルス波形に戻っていないのは、高次の偏波分散の影響
であるが、多くの場合は高次の偏波分散による信号劣化
は小さい。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、主要部
材を光導波路によって構成することができるので、小型
で信頼性に優れた偏波分散補償回路を実現することがで
きる。このような本発明の偏波分散補償回路と従来の光
ファイバ伝送路と組み合わせることにより、高速な光信
号伝送が可能となり、通信品質の向上と経済性を達成す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏波分散補償回路の第1の実施形態を
示す図。
【図2】本発明の偏波分散補償回路の第2の実施形態を
示す図。
【図3】導波路型偏光分離素子12(22)の構成例を
示す図。
【図4】分岐比可変光カプラ14(24)の構成例を示
す図。
【図5】光遅延線15(25)の構成例を示す図。
【図6】本発明の偏波分散補償回路による補償特性を説
明する図。
【図7】従来の偏波分散補償回路の構成例を示す図。
【符号の説明】
10,20 シリコン基板 11,21 入力用チャネル光導波路 12,22 導波路型偏光分離素子 13,23 光導波路 14,24 分岐比可変光カプラ 15,25 光遅延線 16,26 導波路型偏光合成素子 17,27 出力用チャネル光導波路 18,28 偏光入れ替え手段 19,29 位相調整手段 31,32,41,42 光カプラ 33,43 アーム導波路 34 アモルファスシリコン薄膜 35,44 薄膜ヒータ 51 光導波路対 52 2入力2出力光スイッチ 53,54 光カプラ 55 薄膜ヒータ
フロントページの続き (72)発明者 瀧口 浩一 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 岡本 勝就 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日 本電信電話株式会社内 Fターム(参考) 2H079 AA06 AA12 BA03 CA04 DA03 DA05 DA22 EA05 GA03 HA15 2K002 AA02 AB13 BA13 CA02 CA03 CA22 DA08 FA06 FA26 FA28 GA04 HA11 5K002 BA02 BA04 BA05 BA07 CA01 FA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、 入力光を直交する2つの偏光成分に分離して2つの出力
    ポートに出力する導波路型偏光分離手段と、 前記導波路型偏光分離手段の2つの出力ポートに分離さ
    れた2つの偏光成分の位相差を調整する位相調整手段
    と、 前記導波路型偏光分離手段の2つの出力ポートに分離さ
    れた2つの偏光成分を同一偏光に変換する第1の偏光入
    れ替え手段と、 前記位相調整手段で位相差が調整され、前記第1の偏光
    入れ替え手段で同一偏光になった2つの偏光成分を入力
    し、所定の分岐比で2つの出力ポートに合分波する分岐
    比可変光カプラと、 前記分岐比可変光カプラの2つの出力ポートに出力され
    る同一偏光成分の遅延差を調整する遅延調整手段と、 前記分岐比可変光カプラの2つの出力ポートに出力され
    る同一偏光成分を直交する2つの偏光成分に変換する第
    2の偏光入れ替え手段と、 前記遅延調整手段で遅延差が調整され、前記第2の偏光
    入れ替え手段で直交する偏光になった2つの偏光成分を
    入力し、偏光合成して出力する導波路型偏光合成手段と
    を備え、 前記位相調整手段に設定する位相差、前記分岐比可変光
    カプラに設定する分岐比、前記遅延調整手段に設定する
    遅延差を調整して前記入力光の偏波分散を補償する構成
    であることを特徴とする偏波分散補償回路。
  2. 【請求項2】 基板上に、 入力光を直交する2つの偏光成分に分離して2つの出力
    ポートに出力する導波路型偏光分離手段と、 前記導波路型偏光分離手段の2つの出力ポートに分離さ
    れた2つの偏光成分の位相差を調整する第1の位相調整
    手段と、 前記導波路型偏光分離手段の2つの出力ポートに分離さ
    れた2つの偏光成分を同一偏光に変換する第1の偏光入
    れ替え手段と、 前記第1の位相調整手段で位相差が調整され、前記第1
    の偏光入れ替え手段で同一偏光になった2つの偏光成分
    を入力し、所定の分岐比で2つの出力ポートに合分波す
    る第1の分岐比可変光カプラと、 前記分岐比可変光カプラの2つの出力ポートに出力され
    る同一偏光成分の位相差を調整する第2の位相調整手段
    と、 前記第2の位相調整手段で位相差が調整された2つの偏
    光成分を入力し、所定の分岐比で2つの出力ポートに合
    分波する第2の分岐比可変光カプラと、 前記第2の分岐比可変光カプラの2つの出力ポートに出
    力される同一偏光成分の遅延差を調整する遅延調整手段
    と、 前記分岐比可変光カプラの2つの出力ポートに出力され
    る同一偏光成分を直交する2つの偏光成分に変換する第
    2の偏光入れ替え手段と、 前記遅延調整手段で遅延差が調整され、前記第2の偏光
    入れ替え手段で直交する偏光になった2つの偏光成分を
    入力し、偏光合成して出力する導波路型偏光合成手段と
    を備え、 前記第1および第2の位相調整手段に設定する位相差、
    前記第1および第2の分岐比可変光カプラに設定する分
    岐比、前記遅延調整手段に設定する遅延差を調整して前
    記入力光の偏波分散を補償する構成であることを特徴と
    する偏波分散補償回路。
  3. 【請求項3】 前記遅延調整手段は一対の光遅延線で構
    成され、かつ一対の光遅延線の少なくとも一方が遅延量
    を可変する手段を含む構成であることを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の偏波分散補償回路。
  4. 【請求項4】 前記光遅延線の遅延量を可変する手段
    は、Nを正の整数としたときに、(N+1)個の2入力
    2出力光スイッチと、N組の長さの異なる光導波路対と
    を交互に接続し、初段の2入力2出力光スイッチの一方
    の入力ポートを光遅延線の入力ポートとし、最終段の2
    入力2出力光スイッチの一方の出力ポートを光遅延線の
    出力ポートとし、各2入力2出力光スイッチの入出力ポ
    ート間をスルー状態またはクロス状態に設定することに
    より各組の光導波路対のいずれか一方の光導波路を選択
    して遅延量を可変させる構成であることを特徴とする請
    求項3に記載の偏波分散補償回路。
  5. 【請求項5】 前記N組の光導波路対の各光路長差が、
    1:2:4:8:…:2N-1 のように2の階乗の比にな
    っていることを特徴とする請求項4に記載の偏波分散補
    償回路。
  6. 【請求項6】 前記分岐比可変光カプラは、2入力2出
    力の2つの光カプラと、これらを接続する2本の導波路
    アームとを備え、一方の導波路アーム上に位相調整手段
    を形成したマッハツェンダ型干渉計構成であることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載の偏波分散補償
    回路。
  7. 【請求項7】 前記導波路型偏光分離手段および前記導
    波路型偏光合成手段は、2入力2出力の2つの光カプラ
    と、これらを接続する2本の導波路アームとを備え、一
    方の導波路アーム上に複屈折を調整する手段を形成した
    構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載の偏波分散補償回路。
  8. 【請求項8】 前記第1および第2の偏光入れ替え手段
    は、半波長板またはファラデー回転子を用いた構成であ
    ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏
    波分散補償回路。
  9. 【請求項9】 偏波分散補償回路を構成する光導波路が
    石英系光導波路であり、請求項1、請求項2または請求
    項6に記載の位相調整手段が石英系光導波路上に形成さ
    れた薄膜ヒータであることを特徴とする請求項1〜8の
    いずれかに記載の偏波分散補償回路。
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