JP2001040449A - 磁束密度および鉄損が優れた一方向性電磁鋼板の製造方法と同鋼板製造用の最終冷間圧延前鋼板 - Google Patents

磁束密度および鉄損が優れた一方向性電磁鋼板の製造方法と同鋼板製造用の最終冷間圧延前鋼板

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JP2001040449A
JP2001040449A JP11215761A JP21576199A JP2001040449A JP 2001040449 A JP2001040449 A JP 2001040449A JP 11215761 A JP11215761 A JP 11215761A JP 21576199 A JP21576199 A JP 21576199A JP 2001040449 A JP2001040449 A JP 2001040449A
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Nobunori Fujii
宣憲 藤井
Norihiro Yamamoto
紀宏 山本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 AlNをインヒビターとして、より高磁束密
度で、かつ低鉄損の一方向性電磁鋼板を安定して製造す
る。 【解決手段】 重量%で、C:0.025 〜0.10%、Si:
2.5 〜4.5 %、Mn:0.05〜0.45%、Sおよび/または
Se:0.04%以下、Al:0.015 〜0.04%、N:0.02%
以下、Cr:0.01〜0.20%、P:0.003 〜0.10%を含有
し、かつ、降伏比YR(=降伏強度YS/引張強度T
S)が0.7 〜0.8 の最終冷間圧延前鋼板。また、一方向
性電磁鋼板を製造する方法において、最終冷延前の焼鈍
加熱に続く冷却過程で、Ar1 +50℃から550 ℃までの
温度域における冷却速度CRを、下記(1)式に従って
制御する。 logCR(℃/sec)≧5.36−2.36Mneq(%)…
…(1) ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+1.15C
r(%)+2.0 P(%)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気特性および
鉄損の優れる一方向性電磁鋼板の製造方法と同鋼板製造
用の鋼板に関し、特に、最終冷間圧延前に施す焼鈍の冷
却過程において、この冷却速度を所定の式に従い制御
し、鋼板における降伏比YR(=降伏強度YS/熱延方
向の引張強度TS)を所定の範囲に調整することによっ
て、磁束密度および鉄損の向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板には、磁気特性とし
て、磁束密度が高いことと、鉄損が低いことが要求され
る。近年、製造技術の進歩により、例えば、0.23m
mの板厚の鋼板では、磁束密度B8(磁化力800A/
mにおける値):1.92Tのものが得られ、また、鉄
損特性W17/50(50Hzで1.7Tの最大磁化の
時の値)が0.85W/kgの如き優れた製品が工業的
規模で生産可能となっている。
【0003】かかる優れた磁気特性を有する一方向性電
磁鋼板は、鉄の磁化容易軸である<001>方位が、鋼
板の圧延方向に高度に揃った結晶組織で構成されるもの
であり、このような結晶集合組織は、一方向性電磁鋼板
の製造工程中、最終仕上焼鈍の際に、いわゆるゴス方位
と称される(110)〔001〕方位を有する結晶粒を
優先的に巨大成長させる2次再結晶と呼ばれる現象を通
じて形成される。この(110)〔001〕方位の2次
再結晶粒を十分に成長させるための基本的な要件とし
て、2次再結晶過程において(110)〔001〕方位
以外の好ましくない方位を有する結晶粒の成長を抑制す
るインヒビターの存在と、(110)〔001〕方位の
2次再結晶粒が十分に発達するのに好適な1次再結晶組
織の形成とが不可欠であることは周知の事実である。
【0004】ここに、インヒビターとしては、一般に、
AlN、MnS、MnSe、Cu2S等の微細析出物が
利用され、さらに、これらに加えて、Sn、Sbなどの
粒界偏析型の成分が、インヒビターの効果を補強する複
合添加成分として利用されている。一般に、MnSやM
nSeを主要インヒビターとするものは、2次再結晶粒
径が小さくなるので、鉄損の低下の点で有利であった
が、近年、レーザー照射法や機械的磁区制御法など、人
工的に擬似粒界を導入し、磁区細分化が図れるようにな
って以後、2次再結晶粒径のサイズが小さいことによる
優位性を失い、磁束密度の高いことが、優位性を有する
ようになってきている。
【0005】磁束密度の高い一方向性電磁鋼板を得る方
法は古くから知られており、例えば、特公昭46−23
820号公報には、 a.高温スラブ加熱により、AlNのインヒビター成分
を固溶させる、 b.鋼中にインヒビター成分としてAlを含有させる、 c.最終冷延前の焼鈍後の冷却を急冷にしてAlNを析
出させる、 d.最終冷延の圧下率を65%から95%と高圧下率と
する、 の4点の結合により、磁束密度の高い一方向性電磁鋼板
を製造できることが開示されている。
【0006】しかしながら、この方法においても、B8
≧1.94T以上の製品を安定的に製造することは困難
であった。一方、特開昭62−40315号公報には、
AlNインヒビターを後工程で作り込み、スラブ加熱を
低温スラブ加熱とする方法が開示されている。この方法
は、前記a点に必然的に伴なう設備的デメリットを回避
するために開発されたものであるが、相反して、熱間圧
延におけるAlNの溶解が不充分なため前記c点のAl
N析出効果が活かされず、これに代わる磁束密度B8を
向上せしめる技術の開発が急務であった。
【0007】なお、本発明者らは、後述するように、最
終の冷間圧延の前に施す焼鈍の後に生成する無拡散変態
相(ベイナイト相、マルテンサイト相)に着目して、問
題解決の糸口を把んだものであるが、前述の特公昭46
−23820号公報は、同公報記載の実施例1で、焼鈍
後、100℃の湯中に鋼板を投入して急冷する技術を開
示しているものの、急冷後の変態相については、何ら言
及していない。そして、上記実施例1によると、100
0℃→750℃までの冷却が約10秒、750℃→10
0℃までの冷却が約25秒であるから、この場合、数十
Åの極めて微細な炭化物が析出するか、もしくは、炭化
物の析出が抑えられて、炭素が鋼中に過飽和のまま固溶
した状態になっているものと推定される。
【0008】一方、無拡散変態相は、オーステナイト相
が存在する変態温度(Ar1 点=約725℃)以上から
急冷した場合に生成する。そして、その際、冷却速度が
早いと、変態相がより硬くなり、変態相周辺には、転位
が高密度に生成するようになる。他に、焼鈍後の冷却に
関する技術が、特公昭56−3892号公報、特開昭5
8−157917号公報及び特開昭61−149432
号公報に開示されている。
【0009】特公昭56−3892号公報は、2回冷延
法における最終冷延前の焼鈍後の冷却で、600℃から
300℃までの間を150℃/min以上の冷却速度で
冷却し、冷却後の固溶Cを増加する技術を開示してい
る。この技術は、鋼中の固溶Cを増加させ、かつ、冷間
圧延時のパス間での時効効果を有効に作用させることに
より、磁気特性を向上せしめるものである。
【0010】特開昭58−157917号公報は、10
0Åから500Åまでの微細炭化物を、多数、中間焼鈍
後の冷却時に析出させる技術、すなわち、中間焼鈍後の
冷却を300℃まで急冷し、300℃から150℃まで
の温度域を8秒から30秒間で徐冷して、100Åから
500Åのサイズの微細炭化物を析出させ、これによ
り、再結晶後の(110)強度を増加し、磁気特性を向
上せしめる技術を開示している。
【0011】特開昭61−149432号公報は、中間
焼鈍に引続く降温の際に、冷却速度を10℃/s以上と
し、冷却段階で1000℃から400℃までの間で1%
から30%までの加工歪を付加した後、次の最終圧延を
100℃から400℃までの温度で行う技術を開示して
いる。この技術は、1000℃から400℃までの極め
てCの拡散速度の早い温度域で、1%から30%までの
加工歪を加えて高密度の転位を導入することにより、転
位へのCの微細な析出を図り、(110)強度を高める
ことを目的とし、転位中にCを微細高密度に析出させる
ため、加工は圧延ロールでなされ、かつ、析出処理時の
冷却速度は10℃/s以上と早いものである。
【0012】しかし、これら技術は、いずれも、炭化物
の形態や固溶Cに着目したものであり、変態相について
は考慮されてなく、さらに、変態温度近傍における冷却
速度についても考慮されていないものである。そして、
このような固溶Cの効果は、一般の冷延鋼板では良く知
られているものであり、冷間圧延前の固溶Cや固溶Nが
増加した場合に、冷間圧延後の再結晶焼鈍における再結
晶組織中の(110)強度が増加することは、通常知ら
れている現象である。
【0013】一方向性電磁鋼では、この(110)粒が
2次再結晶の核となり、結果的に、2次再結晶粒が多数
形成されて2次再結晶粒径が細粒化し、磁気特性が向上
すると考えられているが、これらの方法で達成できる磁
気特性は、板厚0.3mmのものにおいて、磁束密度
が、B10で1.91〜1.94T(B8で1.89〜
1.92T)と低く、必ずしも十分な値とはいえないも
のである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明におい
ては、一方向性電磁鋼板において、高い磁束密度を安定
して得、かつ、鉄損の改善も同時になすことを目的とす
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Al含有
の一方向性電磁鋼板においては、最終の冷間圧延の前に
施す焼鈍における冷却過程で生成する無拡散変態相が、
その周辺の転位を増殖させ、さらに、最終の冷間圧延か
ら脱炭焼鈍を経て得られる再結晶組織において、{11
0}<001>強度を増加させるという作用効果をな
し、その結果、極めて高い磁束密度が安定して得られる
ということを新らたに見い出して、この発明を完成させ
た。
【0016】そして、本発明の要旨は以下のとおりであ
る。 (1)重量%で、C:0.025〜0.10%、Si:
2.5〜4.5%、Mn:0.05〜0.45%、Sお
よび/またはSe:0.04%以下、Al:0.015
〜0.04%、N:0.02%以下、Cr:0.01〜
0.20%、P:0.003〜0.10%を含有し、か
つ、降伏強度YSと熱延方向の引張強度TSの比、すな
わち、降伏比YR(=YS/TS)が、0.7以上、
0.8以下であることを特徴とする磁束密度および鉄損
が優れた一方向性電磁鋼板製造用の最終冷間圧延前鋼
板。 (2)重量%で、C:0.025〜0.10%、Si:
2.5〜4.5%、Mn:0.05〜0.45%、Sお
よび/またはSe:0.04%以下、Al:0.015
〜0.04%、N:0.02%以下、Cr:0.01〜
0.20%、P:0.003〜0.10%を含有する電
磁鋼スラブに熱間圧延を施し、一回の冷間圧延または中
間焼鈍を介挿する二回以上の冷間圧延により最終仕上板
厚とした後、一次再結晶焼鈍、次に、二次再結晶焼鈍を
施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、最終仕上板
厚までの冷間圧延に先立つ焼鈍加熱に続く冷却過程で、
Ar 1 +50℃から550℃までの温度域における冷却
速度CR(℃/sec)を、下記(1)式に従って制御
することを特徴とする磁束密度および鉄損が優れた一方
向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】 logCR(℃/sec)≧5.36―2.36Mneq(%)……(1) 〔ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+
1.15Cr(%)+2.0P(%)〕
【0018】
【発明の実施の形態】まず、本発明の基礎となった実験
結果について説明する。Alと、補助的インヒビターと
してMnS、MnSeを含有する電磁鋼スラブを、13
50℃と1400℃に加熱(高温スラブ加熱)して、
2.3mm厚の熱延板を製造した。また、同じく、上記
電磁鋼スラブを、1100℃と1150℃に加熱(低温
スラブ加熱)して、2.3mm厚の熱延板を製造した。
【0019】冷間圧延は、最終圧下率85〜91%の一
回冷延法または2回冷延法で行ない、最終冷延の1.2
mm、0.8mm、0.6mm、および0.4mmの板
厚で、200℃で5分のエイジング処理を施した。最終
の冷間圧延の前に施す焼鈍は、1100℃+850℃の
二段サイクルの加熱とし、加熱後の冷却は、鋼板を85
0℃から温度を変更した湯中に投入する方法で急冷し
た。そのとき、熱電対を用いて冷却速度を測定した。成
分組成と工程条件を表1に示す。なお、0.23mm厚
の冷延板において、高温スラブ加熱のもの(表1中、材
料aと材料b)については、通常の方法で、脱炭焼鈍と
仕上焼鈍を行い、低温スラブ加熱のもの(表1中、材料
cと材料d)については、脱炭焼鈍と仕上焼鈍の間に窒
化処理を追加して行ない、インヒビターを補強した。
【0020】
【表1】
【0021】表1に示すように、冷却速度が速いものほ
ど高磁束密度が得られている。しかし、各材料成分に応
じて高磁束密度が得られる下限の冷却速度が異なってい
る。この原因を調査するため、最終冷間圧延前鋼板の引
張試験を行い、降伏応力YPと引張応力TSを測定し、
降伏比YR(=YS/TS)と磁束密度B8(T)の関
係を調査した。この結果を図1に示す。
【0022】図1に示すように、いずれの材料について
も磁束密度が良好なものは、降伏比YRが0.7〜0.
8の範囲内にあることが判明した。また、一次再結晶集
合組織を測定した結果、この範囲内では(110)強度
の増加と(111)強度の減少が認められた。さらに、
最終の冷間圧延の前に行なう焼鈍の後の電顕観察の結
果、上記降伏比の範囲内では、5〜50μm程度のベイ
ナイト相もしくはマルテンサイト相が観察され、その周
囲に転位が密集していることが判明した。
【0023】これに対し、上記降伏比の範囲外の鋼板で
は、炭化物とフェライト相からなるパーライト組織が観
察され、この組織においては、転位密度も極めて減少し
ていることを確認した。また、変態相の硬度を測定する
と、ベイナイト相もしくはマルテンサイト相は、パーラ
イト組織の1.3〜1.7倍程度の硬度を有していた。
【0024】従って、急冷側の条件下では、無拡散変態
相が析出し、この析出による硬い相または高転位密度
が、引き続く冷間圧延における結晶粒の回転系列に影響
を及ぼし、その結果、一次再結晶組織の(110)強度
が増加したものと考えられる。また、以上の結果から、
最終の冷間圧延の前の鋼板における変態相の形態変化を
反映する指標として、降伏比YRが有効であることが判
った。変態相の形態が降伏比YRを変化させる原因は、
転位密度の増減であると推定される。すなわち、急冷側
の条件下で生成した無拡散変態相は、マトリックスと格
子定数が不整合であり、その不整合により、その周囲の
転位密度が増加し、この増加の結果、降伏点が下がると
ともに、硬い無拡散変態相と析出効果により引張強度が
増し、結果として、降伏比YRが低下すると考えられ
る。
【0025】上述のように、降伏比YRを適正範囲に調
整することにより、磁束密度が向上する要因もしくは理
由は、今のところ明確でないが、以下のように考えられ
る。一般に、(110)〔001〕粒を増加させること
は、二次再結晶粒核成長を増加させ、(111)〔11
2〕粒を増加させることは、二次再結晶粒の選択成長を
促進させると考えられるが、本発明のように、降伏比Y
Rを適正範囲に調整することは、二次再結晶粒の核数を
確保するとともに、(110)〔001〕から分散した
方位の二次再結晶核の成長を抑えるべく、(111)
〔112〕粒の粒数を抑制する方向に作用し、その結
果、結晶方位がより収束することとなって、良好な磁束
密度の製品が得られたものと考えられる。
【0026】また、表1に示すように、冷却速度が速い
場合に、低鉄損(W17/50≦0.80W/kg)が
得られているが、低鉄損を得るに必要な冷却速度の下限
値は、各材料成分に応じて異なっている。そこで、この
原因について調査した。上述のように、本発明は焼入に
よる変態制御を応用するものであるから、成分によるオ
ーステナイト相安定性と焼入性の変化が関与するものと
考えられる。一般に、オーステナイト相安定化元素とし
てMn、焼入性向上元素としてはSi、Cr、Pが、効
果が大きい元素として知られている。そこで、低鉄損
値:W17/50≦0.80W/kgが得られる範囲と
して、Mn、Si、Cr、Pから計算されるMneqと冷
却速度との関係を統計的手法を用いて整理した。結果を
図2に示す。図2から判るように、 logCR(℃/sec.)≧5.36―2.36Mn
eq(%) ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+
1.15Cr(%)+2.0P(%) を満足することにより、安定して高い磁束密度が得られ
ることを見いだした。
【0027】すなわち、無拡散変態相を得るためには、
冷却速度が遅いほどオーステナイト相安定化元素と焼入
性向上元素を増やす必要があること、言い換えれば、M
nとSiは、インヒビター成分と目標鉄損から選ばれる
ものであるが、これら成分の含有量も含め、製造条件の
選定に応じて冷却速度を制御することが、磁束密度およ
び鉄損が優れた一方向性電磁鋼板を得るうえで重要であ
ることを知見した。
【0028】次に、本発明の一方向性電磁鋼の成分組成
における成分範囲の限定理由について説明する。Cは、
オーステナイト形成のため重要な元素であり、0.02
5%以上は必要である。ただし、多過ぎると、脱炭が困
難となるので、0.10%を上限とする。
【0029】Siは、鋼板の電気抵抗を所定レベルに確
保するために重要な元素である。あまり少ないと電気抵
抗が小さくなって良好な鉄損特性が得られないので、
2.5%以上は必要である。一方、多過ぎると冷間圧延
が困難になるので、4.5%を上限とする。Mnは、オ
ーステナイト相安定化とインヒビター成分として重要な
元素である。両方の観点から下限を0.05%とする。
一方、多過ぎると、高温スラブ加熱を前提とする場合
に、溶体化が困難となるので、0.45%を上限とす
る。
【0030】Sおよび/またはSeは、前記Mnと結合
して、インヒビターとして作用するMnSおよび/また
はMnSeを形成するが、MnSおよび/またはMnS
eを微細に析出させるためには高温スラブ加熱が必要で
あり、この場合、Sおよび/またはSeは0.01%以
上必要である。しかし、多過ぎても、所要の効果は得ら
れないので、0.04%を上限とする。一方、後工程で
窒化処理を行なう低温スラブ加熱法を用いる場合におい
ては、微細なMnS,MnSeは不必要となるため、
0.01%以下が望ましい。
【0031】酸可溶Alは、スラブ加熱温度に関わら
ず、高磁束密度を得るためのインヒビター成分として不
可欠な元素である。そのため、0.015%以上は必要
である。しかし多過ぎると、溶体化のための仕上焼鈍時
間が長くなり、生産性が悪化するので、0.04%を上
限とする。Nは、AlNを形成する元素として、重要な
元素である。高温スラブ加熱を前提とする場合、最終の
冷間圧延の前の焼鈍において、AlNを形成する必要が
あるので、0.003%以上は必要である。しかし、多
過ぎると、AlNの溶体化のための仕上焼鈍時間が長く
なり、生産性が悪化するので、0.02%を上限とす
る。一方、低温スラブ加熱法においては、一次再結晶後
に窒化処理でAlNを形成させるから、それ以前の段階
で、Nは、0.003%以下が望ましい。
【0032】CrおよびPは、最終の冷間圧延の前の鋼
板において焼入性を確保するために重要な元素である。
それ故、Crは、0.01%以上は必要で、Pは、0.
003%以上は必要である。しかし、Crが多過ぎる
と、脱炭焼鈍の際の酸化が過度となり皮膜形成に悪影響
を及ぼすので、0.20%をCrの上限とする。また、
Pが多過ぎると、粒界脆化をもたらして冷間圧延を難し
くするので、Pの上限を0.10%とする。
【0033】以上の他、磁性の向上のため、さらに、C
u、Bi、Sn、Sb、Mo、B、B、V、Ge等のイ
ンヒビター補強成分も適宜添加することができる。その
場合の添加量は、公知の範囲でよい。次に、本発明の製
造工程について説明する。公知の製法で製造した所定の
成分組成のインゴットまたはスラブを、必要に応じて再
生し、サイズを合わせた後、加熱し、熱延する。スラブ
加熱温度は、必要に応じ1100℃〜1450℃の範囲
にする。熱間圧延後の鋼板は、1回冷間圧延法、または
複数回冷間圧延法によって最終仕上板厚とする。
【0034】最終の冷間圧延の前に施す焼鈍は、再結晶
とオーステナイト安定化のため、850℃〜1200℃
の範囲での高温加熱が必要で、かつ焼鈍後、無拡散変態
相の形成ため、550℃以下までの急冷処理が必要であ
る。したがって、上述したように、Ar1 点以上の温度
から550℃までの温度域における冷却速度CRを、下
記に従って制御する。
【0035】 logCR(℃/sec)≧5.36―2.36Mneq(%) ……(1) 〔ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+
1.15Cr(%)+2.0P(%)〕 Ar1 点は、狙うべき冷却速度における変態温度であ
り、成分組成によって変化するので熱分析等を用いて測
定する。また、計算状態図等の情報も有効である。
【0036】Ar1 点における冷却速度が重要であるか
ら、急冷開始温度は、Ar1 点以上であればよいが、A
1 点測定時の誤差やオーステナイト相量の安定確保の
観点から、最高でもAr1 +50℃とする。因みに、表
1における40℃/secにおけるAr1 点は、材料a
で705℃、材料bで715℃、材料cで729℃、材
料dで721℃であった。また、Ar1 点以下の高温領
域で緩冷却すると、Cの拡散により、炭化物の析出や転
位密度の減少が起こり、効果が消失するため、急冷完了
の温度を550℃とする。
【0037】なお、前述した炭化物と固溶Cの制御技術
である、550℃以下を急冷する、500℃から2
00℃までの間において0.05%以上3.0%以下の
範囲の歪を付加する間又は付加した後、上記温度域内の
温度で60秒から180秒までの間保持し冷却する、あ
るいは500℃より60秒から180秒までの間にわ
たり2℃/s以下の速度で徐冷する、等の方法を併用し
ても、本発明の効果を損なうものでない。
【0038】無拡散変態相の形成状況を表す指標とし
て、最終の冷間圧延の前の焼鈍板の機械特性が有効であ
る。前述したとおり、降伏強度YSと熱延方向の引張強
度TSの比、すなわち降伏比YR(=YS/TS)を、
0.7以上0.8以下にすることが本発明における第二
の特徴である。実際の操業において、この指標を、中間
品質判定や品質管理に用いることが好ましい。引張試験
は、通常の方法で室温で行われる。引張方向、基本的に
は、熱延方向と平行、直角のどちらでもかまわないが、
組織の影響のため数値が異なるため、本発明の場合、熱
延方向に限定した。
【0039】その後、鋼板は最終の冷間圧延に供される
が、この時、高磁束密度を得るためには、従来より知ら
れているように、80%から95%の範囲の圧下率とす
ることが必要である。それは、圧下率が80%より少な
いと、高磁束密度が得られず、95%を超えると2次再
結晶が困難になるからである。また、この冷間圧延の途
中において、従来より公知の時効処理や、温間圧延を施
すこと等の方法を併用しても、本発明の効果を損なうも
のでない。特に、高温スラブ加熱の場合、時効処理は、
固溶C、Nの固着効果以外に、線状細粒発生防止の観点
から有効であることが知られている。この時の時効温度
は200℃から400℃の範囲が有利である。
【0040】最終の冷間圧延の後の鋼板は、脱脂処理を
施された後、脱炭と一次再結晶を兼ねた焼鈍が施され
る。スラブ加熱温度が1250℃以下の低温スラブ加熱
法の場合は、従来知見のとおり、一次再結晶から二次再
結晶の間に窒化処理を行い、AlNインヒビターを形成
させることが有効である。窒化処理の条件は公知の条件
でよく、焼鈍温度を650〜850℃とすることが、窒
化にとって有利である。良好な二次再結晶粒を安定して
発達させるには、窒素量は120ppm以上、好ましく
は150ppm以上必要である。
【0041】次いで、鋼板にMgOを主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから、コイル状に巻き、最終仕上焼鈍
に供し、その後、絶縁コーティングを施す。その後、さ
らに、レーザー、プラズマ、機械的方法、エッチング、
その他の手法によって磁区細分化処理を施すことも可能
である。
【0042】
【実施例】Alと、補助的インヒビターとしてMnS、
MnSeを含有する電磁鋼スラブを、1350℃と14
00℃に加熱(高温スラブ加熱)して、2.3mm厚の
熱延板を製造した。また、同じく、上記電磁鋼スラブ
を、1100℃と1150℃に加熱(低温スラブ加熱)
して、2.3mm厚の熱延板を製造した。
【0043】冷間圧延は、最終圧下率85〜91%の一
回冷延法または2回冷延法で行ない、最終冷延の1.2
mm、0.8mm、0.6mm、および、0.4mmの
板厚で、200℃×5分のエイジング処理を施した。最
終の冷間圧延の前に施す焼鈍は、1100℃+850℃
の二段サイクルの加熱とし、加熱後の冷却は、鋼板を8
50℃から温度を変更した湯中に投入する方法で急冷し
た。そのとき、熱電対を用いて冷却速度を測定した。成
分組成と工程条件を表1に示す。なお、0.23mm厚
の冷延板において、高温スラブ加熱のもの(表1中、材
料aと材料b)については、通常の方法で、脱炭焼鈍と
仕上焼鈍を行い、低温スラブ加熱のもの(表1中、材料
cと材料d)については、脱炭焼鈍と仕上焼鈍の間に窒
化処理を追加して行ない、インヒビターを補強した。ま
た、最終冷間圧延前鋼板については、引張試験を行い、
降伏応力YPと引張応力TSを測定し、降伏比YR(=
YS/TS)を求めた。仕上焼鈍板は、歪取焼鈍後に、
磁気特性として磁束密度(B8)を測定し、絶縁コーテ
ィングとレーザー磁区制御を施した後に、鉄損(W17
/50)を測定した。この結果は、表1に示されている
が、表1中、○印が、本発明例で、△印が比較例であ
る。
【0044】表1から、 logCR(℃/sec)≧5.36―2.36Mneq
(%) 〔ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+
1.15Cr(%)+2.0P(%)〕。を満足するこ
とにより安定して高い磁束密度と低鉄損値が得られてい
ることが判る。
【0045】また、磁束密度が良好なものは、降伏比Y
Rが0.7〜0.8の範囲内にあることが判かる。さら
に、冷間圧延中にエイジングを行うことにより、さら
に、高磁束密度が得られることが判る。
【0046】
【発明の効果】本発明は、Alを含有する電磁鋼スラブ
を用いて、最終の冷間圧延の前に施す焼鈍加熱に続く冷
却過程で、制御冷却を行ない、降伏比(降伏応力と引張
応力との比)を適正範囲に制御することにより、磁束密
度が高く、かつ低鉄損の一方向性電磁鋼板を安定して製
造できるものである。したがって、本発明により製造す
る一方向性電磁鋼板は、トランスの鉄心などに使用して
好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁束密度B8(T)に及ぼす降伏比YR(=Y
S/TS)の影響を示す図である。
【図2】磁束密度と鉄損に及ぼす冷却速度logCRと
Mneqの影響を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.025〜0.10
    %、Si:2.5〜4.5%、Mn:0.05〜0.4
    5%、Sおよび/またはSe:0.04%以下、Al:
    0.015〜0.04%、N:0.02%以下、Cr:
    0.01〜0.20%、P:0.003〜0.10%を
    含有し、かつ、降伏強度YSと熱延方向の引張強度TS
    との比、すなわち、降伏比YR(=YS/TS)が、
    0.7以上、0.8以下であることを特徴とする磁束密
    度および鉄損が優れた一方向性電磁鋼板製造用の最終冷
    間圧延前鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.025〜0.10
    %、Si:2.5〜4.5%、Mn:0.05〜0.4
    5%、Sおよび/またはSe:0.04%以下、Al:
    0.015〜0.04%、N:0.02%以下、Cr:
    0.01〜0.20%、P:0.003〜0.10%を
    含有する電磁鋼スラブに熱間圧延を施し、一回の冷間圧
    延または中間焼鈍を介挿する二回以上の冷間圧延により
    最終仕上板厚とした後、一次再結晶焼鈍、次に、二次再
    結晶焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、
    最終仕上板厚までの冷間圧延に先立つ焼鈍加熱に続く冷
    却過程で、Ar1 +50℃から550℃までの温度域に
    おける冷却速度CR(℃/sec)を、下記(1)式に
    従って制御することを特徴とする磁束密度および鉄損が
    優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。 logCR(℃/sec)≧5.36―2.36Mneq(%) ……(1) 〔ただし、Mneq=Mn(%)+0.45Si(%)+
    1.15Cr(%)+2.0P(%)〕
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