JP2001040141A - ディップ成形用ラテックス及びディップ成形物 - Google Patents

ディップ成形用ラテックス及びディップ成形物

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JP2001040141A
JP2001040141A JP21528499A JP21528499A JP2001040141A JP 2001040141 A JP2001040141 A JP 2001040141A JP 21528499 A JP21528499 A JP 21528499A JP 21528499 A JP21528499 A JP 21528499A JP 2001040141 A JP2001040141 A JP 2001040141A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱変色性及び耐光変色性に優れ、更に塩素
化処理により変色を引き起こす恐れがない(耐ピンキン
グ性に優れる)ディップ成形物及び該ディップ成形物を
得るためのディップ成形用ラテックスを提供すること。 【解決手段】 共役ジエン単量体10〜90重量%、エ
チレン性不飽和酸単量体0.1〜20重量%及びこれら
の単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量
体9.9〜89.9重量%からなる単量体を重合して得
られる共重合体のラテックス及びフェノール系老化防止
剤を含有してなるディップ成形用ラテックスを使用す
る。また、そのディップ成形用ラテックスを使用してデ
ィップ成形物を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はディップ成形物及び
ディップ成形用ラテックスに関し、さらに詳しくは、耐
熱変色性及び耐光変色性に優れ、塩素化処理による変色
を引き起こす恐れがないディップ成形物及び該ディップ
成形物を得るためのディップ成形用ラテックスに関す
る。
【0002】
【従来の技術】手袋、指サック等のディップ成形物の製
造に用いられるラテックスとしては、天然ゴムラテック
ス、合成ゴムラテックス及び塩化ビニルラテックス等の
各種ラテックスが挙げられるが、これまで、価格的な面
から、家庭用、作業用及び医療用のほとんどの手袋用途
で塩化ビニルラテックスが、一部で天然ゴムラテックス
が使用されていた。しかしながら、塩化ビニルラテック
スは、塩素を含んでいるために、焼却時に環境問題を引
き起こす恐れがあり、ディップ成形物の物性において
も、引裂き強度や突刺し強度が弱く、耐油性に劣る。ま
た、天然ゴムラテックスは、蛋白質を含有しているため
に、アレルギー問題があり、ディップ成形物の物性にお
いても、耐油性や耐薬品性に劣る。これらの点を勘案し
て、最近、合成ゴムラテックス、特に、ブタジエン・ア
クリロニトリル共重合体ラテックスが、耐油性に優れて
いることから、有機溶剤を使用する工業用手袋に、引裂
き強度や耐薬品性に優れていることから、人体への汚染
に関わる医療用に使用され始めている。一方、これらの
ディップ成形物は直接皮膚に接触するので、風合いが柔
らかいことが要求特性のひとつとして挙げられる。この
風合いが柔らかい過ぎると、粘着性が高くなり、出来上
がったディップ成形物が密着して、互いに剥がれ難くな
る。通常、これを防ぐ方法として、タルク等の粉体をデ
ィップ成形物に添加する方法やディップ成形物の表面を
塩素化処理する方法が採用されている。しかし、ディッ
プ成形物を塩素化処理すると、成形物がピンク色に変色
するピンキングという問題があった。また、ディップ成
形物は、様々な環境下に曝されているうちに熱、光によ
って物理的・化学的作用を受け変色するという問題があ
った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
事情に鑑み、耐熱変色性、耐光変色性に優れ、更に塩素
化処理により変色を引き起こす恐れがない(耐ピンキン
グ性に優れる)ディップ成形物及び該ディップ成形物を
得るためのディップ成形用ラテックスを提供することに
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の化学構
造を有する老化防止剤を含有する共重合体ラテックスを
使用することにより、本目的を達成できることを見出
し、この知見に基いて本発明を完成するに到った。
【0005】かくして本発明によれば、共役ジエン単量
体10〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体0.1
〜20重量%及びこれらの単量体と共重合可能なその他
のエチレン性不飽和単量体9.9〜89.9重量%から
なる単量体を重合して得られる共重合体及びフェノール
系老化防止剤を含有してなるディップ成形用ラテックス
が提供される。
【0006】また、本発明によれば、上記ディップ成形
用ラテックスをディップ成形してなるディップ成形物が
提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
本発明のディップ成形用ラテックスは、共役ジエン単量
体10〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体0.1
〜20重量%及びこれらの単量体と共重合可能なその他
のエチレン性不飽和単量体9.9〜89.9重量%から
なる単量体を重合して得られる共重合体のラテックスで
ある。
【0008】本発明で用いることのできる共役ジエン単
量体は、特に限定されず、具体例としては、1,3−ブ
タジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブ
タジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−
ペンタジエン及びクロロプレン等を挙げることができ
る。これらの共役ジエン単量体は、1種類を単独で使用
してもよく、2種以上を組合せて用いることもできる。
上記のうち、特に1,3−ブタジエン又はイソプレンが
好ましく用いられる。
【0009】共役ジエン単量体の使用量は、単量体の1
0〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに
好ましくは25〜75重量%である。10重量%より少
なくなるとディップ成形物の風合いが硬くなり、逆に9
0重量%より多くなると引張強度が低下し、さらに手袋
としての保形性も得られなくなる。共役ジエン単量体の
使用量は、これと併用するこれと共重合可能なその他の
エチレン性不飽和単量体の種類に応じて上記範囲内で適
宜決定すればよい。その他のエチレン性不飽和単量体と
してエチレン性不飽和ニトリル単量体を使用する場合
は、単量体の30〜90重量%、好ましくは35〜80
重量%である。共役ジエン単量体の使用量が30重量%
より少なくなるとディップ成形物の風合いが硬くなり、
逆に90重量%より多くなると引張強度が低下するので
好ましくない。また、その他のエチレン性不飽和単量体
として芳香族ビニル単量体を使用する場合は、単量体の
10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%であ
る。10重量%より少なくなるとディップ成形物の風合
いが硬くなり、逆に90重量%より多くなると、引張強
度が低下するので好ましくない。
【0010】本発明で用いることのできるエチレン性不
飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無
水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体で
あれば特に限定されない。その具体例としては、アクリ
ル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン
酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン
トリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単
量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マ
レイン酸モノ2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不
飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;無水マレイ
ン酸、無水シトラコン酸等の多価カルボン酸無水物;ス
チレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メチルビニルス
ルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリ
ル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2
−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のエチレン性不飽和
スルホン酸単量体;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−
2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸
エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン
酸等のエチレン性不飽和リン酸単量体;などを挙げるこ
とができる。
【0011】これらのエチレン性不飽和酸単量体はアル
カリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもでき
る。これらのエチレン性不飽和酸単量体は、1種類を単
独で使用してもよく、2種以上を組合せて用いることも
できる。これらのエチレン性不飽和酸単量体のうち、特
にメタクリル酸が好ましく用いられる。エチレン性不飽
和酸単量体の使用量は、単量体の0.1〜20重量%、
好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10
重量%である。0.1重量%より少なくなるとディップ
成形物の引張強度が低下し、逆に20重量%より多くな
るとディップ成形物の引裂強度が低くなるとともに、風
合いが硬くなる。
【0012】共役ジエン単量体及びエチレン性不飽和酸
単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体
としては、エチレン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビ
ニル単量体、エチレン性不飽和酸誘導体系単量体、架橋
性単量体等を使用することができる。これらの単量体の
種類及び使用量は、目的とするディップ成形物に要求さ
れる風合い、耐油性、機械的強度等の各種特性を勘案し
て適宜決定する。
【0013】本発明に用いることのできるエチレン性不
飽和ニトリル単量体は、特に限定されない。その具体例
としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フ
マロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シア
ノエチルアクリロニトリル等を挙げることができる。こ
れらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種類を単
独で使用してもよく、2種以上を組合せて用いることも
できる。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体のう
ち、アクリロニトリルが好ましい。エチレン性不飽和ニ
トリル単量体の使用量は、目的とするディップ成形物の
要求特性に応じて決定すればよいが、通常、単量体の9
〜50重量%、好ましくは20〜45重量%である。9
重量%より少なくなるとディップ成形物の風合いが柔ら
かくなりすぎ、引張強度も低下する。逆に50重量%よ
り多くなるとディップ成形物の風合いが硬くなる。
【0014】本発明に用いることのできる芳香族ビニル
単量体は、特に限定されない。その具体例としては、ス
チレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチ
レン、ヒドロキシメチルスチレン等を挙げることができ
る。これらの芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で使
用してもよく、2種以上を組合せて用いることもでき
る。これらの芳香族ビニル系単量体のうち、スチレンが
好適である。芳香族ビニル単量体の使用量は、目的とす
る手袋の要求特性に応じて決定すればよいが、通常、単
量体の9.9〜89.9重量%、好ましくは20〜80
重量%である。9.9重量%より少なくなるとディップ
成形物の風合いが柔らかくなりすぎ、さらに引張強度も
低下する。逆に89.9重量%より多くなるとディップ
成形物の風合いが硬くなる。
【0015】本発明に用いることのできるエチレン性不
飽和酸誘導体系単量体は、特に限定されない。その具体
例としては、例えば、エチレン性不飽和酸エステル単量
体、エチレン性不飽和酸アミド単量体等が挙げられる。
【0016】エチレン性不飽和酸エステル単量体は、エ
チレン性モノ不飽和酸又はエチレン性多価不飽和酸の、
ハロゲン等の置換基を有していてもよい各種アルコール
とのエステルである。エチレン性不飽和酸エステル単量
体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、
(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−
エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチ
ル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メ
タ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エ
トキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエ
チル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アク
リル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シア
ノプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シア
ノヘキシル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリ
ル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジ
ル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチ
ル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチ
ル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等の多価カ
ルボン酸エステル;が挙げられる。
【0017】エチレン性不飽和酸アミド単量体の具体例
としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチ
ロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール
(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)
アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリ
ルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体が挙げら
れる。
【0018】架橋性単量体としては、例えば、ジビニル
ベンゼン等の共役ジビニル化合物;ポリエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパント
リ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メ
タ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート化合物
が挙げられる。
【0019】本発明のディップ成形用ラテックスは、通
常、乳化重合法で製造される。乳化重合する際の重合温
度は限定されないが、低温で行うと、機械的強度が高
く、風合いが柔らかなディップ成形物が得られるので好
ましい。重合温度が45℃より低いと、より好ましい。
【0020】本発明のディップ成形用ラテックスの製造
において、単量体混合物の添加方法は特に限定されず、
単量体混合物を重合反応器に一括して仕込む方法、単量
体混合物を重合反応器に連続的に供給する方法、単量体
混合物の一部を重合反応器に仕込み、その残りの単量体
を重合反応器に連続的に供給する方法等のいずれを採用
してもよい。
【0021】本発明のディップ成形用ラテックスの製造
に用いられる重合開始剤は、特に限定されない。
【0022】具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、
過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼン
ハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイ
ド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,
3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,
5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサ
イド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミル
パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリ
ルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機
過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−
2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メ
チル等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらの
重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を
組み合わせて使用することができる。過酸化物開始剤
は、ラテックスを安定して製造することができ、しか
も、機械的強度が高く、風合いが柔らかなディップ成形
物が得られるので好ましく用いられる。開始剤の使用量
は、その種類によって若干異なるが、単量体混合物に対
して、0.01〜0.6重量%であることが好ましい。
【0023】また、過酸化物開始剤と還元剤との組み合
わせでレドックス系重合開始剤として使用される。
【0024】レドックス系重合開始剤の還元剤は特に限
定されず、その具体例としては、硫酸第一鉄、ナフテン
酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合
物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合
物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げら
れる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組合せて
用いることができる。還元剤の使用量は、還元剤によっ
て若干異なるが、過酸化物1重量部に対して0.03〜
10重量部であることが好ましい。
【0025】こららの開始剤のうち、過酸化物開始剤と
還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤が好ま
しい。
【0026】本発明のディップ成形用ラテックスの製造
に用いられる乳化剤も特に限定されず、例えば、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキ
ルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエ
ステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチ
ン酸、オレイン酸、リノレン酸の如き脂肪酸及びその
塩、高級アルコール硫酸エステル、アルキルスルホコハ
ク酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン
酸塩等のアニオン性乳化剤;トリメチルアンモニウムク
ロライド、ジアルキルアンモニウムクロライドの如きア
ンモニウムクロライドや、ベンジルアンモニウム塩等及
び第4級アンモニウム塩等のカチオン性乳化剤;α,β
−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和
カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルア
リールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることが
できる。特に、アニオン性乳化剤又は非イオン性乳化剤
が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種
以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は
特に限定されないが、単量体混合物に対して、0.1〜
9.0重量%であることが好ましい。
【0027】なお、本発明のディップ成形用ラテックス
の重合に際して、必要に応じて分子量調整剤、粒径調整
剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用す
ることができる。
【0028】本発明のディップ成形用ラテックスの製造
において、重合転化率は90%以上、好ましくは95%
以上、更に好ましくは99%以上である。
【0029】本発明のディップ成形用ラテックスの粒径
は、通常、0.07〜0.3μm、好ましくは、0.0
8〜0.2μmである。粒径が0.07μmより小さい
とラテックスの粘度が高くなり取扱いが困難になり、更
に配合安定性も低下する。また、0.3μmより大きい
とディップ成形物の成膜性が悪くなる。
【0030】本発明において使用する老化防止剤は、ラ
ジカル連鎖禁止作用のあるフェノール系化合物である必
要がある。一般に、老化防止剤として使用されるラジカ
ル連鎖禁止作用のある化合物には、その他に芳香族アミ
ン化合物があるが、ディップ成形物に対して汚染性であ
り、更に臭気の問題もあるので好ましくない。また、老
化防止剤として、過酸化物分解作用のある化合物が挙げ
られるが、熱、紫外線によって黄色変色が発生し、それ
単独では老化防止効果が小さいので好ましくない。
【0031】フェノール系化合物には、モノフェノール
化合物、ビス、トリス、ポリフェノール化合物、チオビ
スフェノール化合物等がある。その具体例として、モノ
フェノール化合物としては、2,6−ジ−t−ブチルフ
ェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ
ール、2,4−ジオクチルフェノール、ブチルヒドロキ
シフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル
アミノ−p−クレゾール、ブチル化オクチル化フェノー
ル等があり、ビス、トリス、ポリフェノール化合物とし
て系は、2,2’−メチレン−ビス−(6−α−メチル
−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−ブチリデン
ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,
2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル
フェノール)、p−クレゾールとジシクロペンタジエン
のブチル化反応生成物、1,3,5−トリメチル−2,
4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシベンジル)ベンゼン、変性ポリアルキル亜りん酸塩
化多価フェノール等があり、チオビスフェノール化合物
としては、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3
−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t
−ブチル−o−クレゾール)等を挙げることができる。
【0032】フェノール系化合物の中でも、常温で固体
で、且つその融点がディップ成形物の製造で曝される最
高温度より低いことが好ましい。通常、ディップ成形物
にかかる最高温度は120℃程度である。老化防止剤が
常温で液状であると臭気があり、融点が120℃より高
いとディップ成形時に老化防止剤が溶融せずにディップ
成形物に均一に浸透しないので好ましくない。
【0033】フェノール系化合物の中で好ましく用いら
れる老化防止剤としては、上記の点を勘案して、2,6
−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−クレゾ
ールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等が
挙げられる。
【0034】これらの老化防止剤の使用量は、目的とす
るディップ成形物の要求特性に応じて決定すればよい
が、通常、ラテックス固形分100重量部に対して0.
1〜3.0重量部である。0.1重量部より少ないと、
熱変色、紫外線変色、強度低下が起こり、3.0重量部
より多いと耐熱変色性、耐光変色性、強度維持効果が低
下してくる。
【0035】老化防止剤のラテックスへの添加方法は、
特に限定されないが、ラテックスとの混合の容易さを考
慮して、通常、液状(分散体:エマルジョン又はディス
パージョン)で添加される。その老化防止剤分散体は、
通常、エマルジョン法又は粉砕法によって調製される。
【0036】エマルジョン法は、必要ならば、加熱して
液状にした老化防止剤、乳化剤及び温水とを、十分に高
速攪拌して、エマルジョンとして調製する方法である。
老化防止剤分散体は、水が媒体であるので、エマルジョ
ン法で使用できる老化防止剤の融点は、通常、水の沸点
の100℃以下、好ましくは90℃以下である。
【0037】粉砕法は、エマルジョン法に使用できない
融点が高い固体上のものを機械的に細粒化し、それを分
散体にする方法である。粉砕法には、ターボミル、ジェ
ットミル等を用いる乾式粉砕と、コロイドミル等を用い
る湿式粉砕法がある。粉砕による到達粒径が小さいこと
及び粉砕時の発熱が少ないことから湿式粉砕法が好まし
く、その中でも、メディア式湿式粉砕法が好ましい。メ
ディア式湿式粉砕法では、ボールミル、高速ビーズミル
等を用いることが可能である。これらのうち高速ビーズ
ミルによる粉砕が好ましい。
【0038】高速ビーズミル法を、より具体的に説明す
ると、円筒状の容器に球状のメディアを充填し、アジテ
ーターシャフトを用いて高速回転させ、メディアを運動
させた中に老化防止剤をポンプ等を用いて供給すること
により回分式または連続式に粉砕する方法である。メデ
ィアには、通常、直径0.5mm以上、好ましくは直径
0.5〜10mm、さらに好ましくは0.5〜3mmの
小粒径ビーズが用いられる。ビーズの密度は、通常、2
g/cm以上である。ビーズの材質としては、ジルコ
ニアなどの高硬度のセラミックス;スチールなどの高硬
度金属が好適に用いられる。上記ビーズの好ましい充填
量は、粉砕効率を考慮すると60〜95%であり、さら
に好ましくは70〜85%である。
【0039】本発明のディップ成形物は、本発明のディ
ップ成形用ラテックスをディップ成形して得られる。通
常、ディップ成形は、ディップ成形用配合液に型を浸漬
し、型の表面にラテックスを沈着させ、次にラテックス
を沈着させた型をディップ成形用配合液から引き上げ、
乾燥することにより行う。ディップ成形法の具体例とし
ては、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着
浸漬法などが挙げられる。
【0040】ディップ成形に使用するディップ成形用配
合液は、本発明のディップ成形用ラテックスを主成分と
する配合液である。通常、このディップ成形用配合液に
は、ディップ成形用ラテックスの他、加硫剤(架橋
剤)、ラテックスを金属イオン架橋させる為の加硫助
剤、加硫促進剤、pH調整剤として塩基等を配合する。
必要に応じて、充填剤、増粘剤等などを配合することが
できる。このディップ成形用配合液に用いる本発明のデ
ィップ成形用ラテックスは、単独で又は2種以上を組み
合わせて使用することができる。また、本発明の目的を
損なわない限り、天然ゴムラテックス、イソプレンゴム
ラテックス等の他のラテックスを併用することもでき
る。
【0041】ディップ成形において、型を配合液に浸漬
する前又は型を配合液から引き上げた後、凝固剤を使用
する。使用方法としては、浸漬前の型を凝固剤の溶液に
浸漬して型に付着させる方法、ラテックスを沈着させた
型に凝固剤の溶液を振りかける方法などがある。
【0042】ディップ成形において、ディップ成形用配
合液から引き上げた後、温水処理又は熱処理を行うこと
によって、余剰の単量体及び配合助剤が除去され、また
共重合体の架橋反応が促進される。温水処理又は熱処理
の方法は特に限定されず、例えばラテックスを沈着させ
た型を温水に浸漬する方法、ラテックスを沈着させた型
にオーブン等の中で温風を吹き当てる方法、ラテックス
を沈着させた型に赤外線を照射する方法などを挙げるこ
とができる。
【0043】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に
説明するが、本発明は、これに限定されるものではな
い。なお、実施例及び比較例中の%又は部は、特に断り
のない限り、重量基準である。また、ラテックスの重量
は、特に断りのない限り、固形分換算である。また、実
施例中の各種測定値は以下の方法によって得られたもの
である 。
【0044】〔物性評価方法〕 (耐熱変色性)ディップ成形物の試験片をオーブンを使
用して、大気雰囲気中、160℃で10分間加熱した
後、イエローインデックス(黄色み度:以下「Y.
I.」という)を色差計(スガ試験機株式会社)で測定
した。数値の小さい方が耐熱変色性が大きい。
【0045】(耐光変色性)ディップ成形物の試験片を
耐光試験機(スガ試験機株式会社:ロングライフタイ
プ)を使用して、大気雰囲気中、63℃で16時間紫外
線照射した後、Y.I.を色差計で測定した。数値の小
さい方が耐光変色性が大きい。
【0046】(耐ピンキング性)5%次亜塩素酸ナトリ
ウム水溶液99部と濃塩酸1部とを混合して調整した遊
離塩素溶液に、ディップ成形物を48時間浸漬し、取り
出した後、2%アンモニア水溶液で十分洗浄し、更に水
洗いした後、50℃のタンブラーで乾燥する。そのディ
ップ成形物のa*値(赤み度)を色差計で測定した。数
値が小さい方が耐ピンキング性が大きい。
【0047】(実施例1)窒素置換した重合反応器に、
1,3−ブタジエン65部、アクリロニトリル23部、
メタクリル酸12部、分子量調整剤(TDM:t−ドデ
シルメルカプタン)0.5部、軟水150部、アニオン
性乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:L
AS−Na)2.5部、開始剤(過硫酸カリウム)0.
2部及び還元剤(エチレンジアミン四酢酸)0.1部を
仕込み、重合温度を30℃に保持して20時間反応させ
た後、反応停止剤を添加して重合を終了した。この時の
重合転化率は99%であった。得られたラテックスから
未反応単量体を除去した後、共重合体ラテックスのpH
及び濃度を調整して、固形分濃度45%、pH8.3に
した後、老化防止剤としてポリフェノール化合物の2,
5−ジ−t−アミルハイドロキノン(例えば、大内新興
社製:ノクラックDAH)を固形分換算で0.5重量
部、ラテックス100重量部に添加して、共重合体ラテ
ックスを得た。
【0048】(実施例2〜3、比較例1〜3)単量体組
成及び老化防止剤を表1に示すように変えた他は、実施
例1と同様にして、固形分濃度45%、pH8.3の共
重合体ラテックスを得た。
【0049】
【表1】
【0050】(実施例4)硫黄1.0部、酸化亜鉛1.
5部、酸化チタン0.7部及び水酸化カリウム0.03
部、水3.2部を混合して調製した固形分濃度50%の
加硫剤溶液7部を、実施例1で得られた固形分濃度45
%のラテックス220部に混合してディップ成形用配合
液を得た。一方、硝酸カルシウム20部、非イオン性乳
化剤のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル
0.05部及び水80部を混合して調製した固形分濃度
20%の凝固剤溶液に手袋型を1分間浸漬し、引き上げ
た後、50℃で3分間乾燥して、凝固剤を手袋型に付着
させた。次に、凝固剤の付着した手袋型をディップ成形
用配合液に6分間浸漬し、引き上げた後、その手袋型を
20℃で3分間、乾燥した。次いで、その手袋型を80
℃で20分間乾燥機で乾燥し、引続き120℃迄昇温
し、25分間熱処理して、手袋型の表面に固形皮膜物を
得た。最後にこの固形皮膜物を手袋型から剥し手袋形状
のディップ成形物を得た。これらのディップ成形物の評
価結果を表1に示す。
【0051】(実施例5〜6、比較例4〜6)実施例2
〜3、比較例1〜3で得られた共重合体ラテックスを用
いて実施例4と同様の評価を行った。結果を表1に示
す。
【0052】表1のディップ成形物の評価結果から、比
較例のディップ成形物について以下のことがわかる。本
発明で規定した以外のラジカル連鎖禁止作用のある芳香
族アミン化合物を老化防止剤として使用した比較例1及
び2のラテックスを使用して得られた比較例4及び5の
ディップ成形物は、耐熱変色性及び耐光変色性は良い
が、耐ピンキング性が悪い。本発明で規定した以外の過
酸化物分解作用のあるジチオカルバミン酸塩を老化防止
剤として使用した比較例3のラテックスを使用して得ら
れた比較例6のディップ成形物は、耐熱変色性及び耐光
変色性及び耐ピンキング性が悪い。
【0053】これに対して、本発明の共重合体ラテック
ス1〜3を用いた実施例4〜6のディップ成形物は、耐
熱変色性及び耐光変色性及び耐ピンキング性に優れてい
ることがわかる。
【発明の効果】かくして本発明によれば、耐熱変色性及
び耐光変色性に優れ、更に塩素化処理により変色を引き
起こす恐れがない(耐ピンキング性に優れる)ディップ
成形物及び該ディップ成形物を得るためのディップ成形
用ラテックスが提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3B033 AC03 BA02 4F205 AA20 AA21 AA46 AB06 AC05 AE10 AH70 GA08 GB01 GC01 GE03 GE24 GN13 GN29 4J002 AC031 AC061 AC091 EJ026 EN106 EV046 FD036 HA07

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共役ジエン単量体10〜90重量%、エ
    チレン性不飽和酸単量体0.1〜20重量%及びこれら
    の単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量
    体9.9〜89.9重量%からなる単量体を重合して得
    られる共重合体のラテックス及びフェノール系老化防止
    剤を含有してなるディップ成形用ラテックス。
  2. 【請求項2】 請求項1のディップ成形用ラテックスを
    ディップ成形してなるディップ成形物。
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