JP2001032178A - 耐熱性無端管状体とその製造方法 - Google Patents

耐熱性無端管状体とその製造方法

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JP2001032178A JP20042599A JP20042599A JP2001032178A JP 2001032178 A JP2001032178 A JP 2001032178A JP 20042599 A JP20042599 A JP 20042599A JP 20042599 A JP20042599 A JP 20042599A JP 2001032178 A JP2001032178 A JP 2001032178A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高負荷下(高温、加圧、伸力)での長時間使用
でも変形のない高性能の耐熱性無端管状体(例えばベル
ト)とその製造方法を提供すること。 【解決手段】ポリベンゾビスオキサゾ−ル(PBBO)
繊維の1部ないし全部を使って無端管状に編成されてな
る耐熱性編物の少なくとも片面にイミド系耐熱樹脂が被
覆されていることを特徴とする耐熱性無端管状体。PB
BO繊維を挿入糸として全芳香族ポリエステル繊維又は
全芳香族ポリアミド繊維でフライス丸編みを行った編物
に芳香族ポリアミドイミドを被覆した耐熱性無端管状体
が好ましい。またこれは遠心注型法との組合せによる製
造が有効である。該管状体は例えば自動車のベルト(圧
縮又は引張による伝動)用として有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に高温下での引
張又は圧縮の繰返し動作に対しても伸度、強度、弾性に
変化のない高度に優れた耐熱性無端管状体とその製造方
法に関するものである。該管状体は例えば自動車エンジ
ンの伝動ベルト用として極めて有効である。
【0002】
【従来の技術】耐熱性ベルトとして知られているもの
に、例えば特開昭60−36211号公報(A号公報)
と特開平11−44346号公報(B号公報)が挙げら
れる。該A号公報は、カ−ボン繊維、ポリイミド繊維ま
たはガラス繊維を使って織組織で縦横に織り込んで得た
筒状織物の表面に、フッ素樹脂を被覆したシ−ムレスベ
ルトに関するものである。一方B号公報は、アラミド繊
維、ガラス繊維又はカ−ボン繊維を挿入糸としてポリエ
ステル繊維、ポリアミド繊維、液晶ポリマ−又はポリイ
ミド繊維で編成して得たインレイ編布に、芳香族ポリア
ミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイ
ミド樹脂、芳香族ポリエステルアミド樹脂、ポリエ−テ
ルエ−テルケトン樹脂、ポリエ−テルサルフアイド樹
脂、ポリフエニレンサルフアイド樹脂、ポリエチレンテ
レフタレ−ト樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリカ
−ボネ−ト樹脂、フエノ−ル樹脂又はエポキシ樹脂を被
覆して得た無端の伝動ベルトを開示している。そしてこ
れら各号報の採る被覆方法は、前記編物又は織物の全体
をコ−テング液中に浸漬(どぶ漬け)し、乾燥すること
も開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし前記各号公報に
開示するベルトは、どの様な組合せ(編・織物の組織と
その素材、被覆材料等)を採ってみても本発明者等が望
むベルトは得られない。その要求するものは、主として
少なくとも180°C(空気中)の雰囲気下で、特に長
期間高速でベルト回転(例えば自動車の通常走行では3
000rpm以下)を行った場合に、その回転方式がベ
ルトに張力をかけてプ−リを回転する引張回転てあって
も、またベルトに押力負荷して回転する加圧回転であっ
ても変形(伸び)とか、摩耗のないこと(高負荷下での
耐熱変形性)。いかなる編組織でもエンドレス管状加工
がし易く、そしてそれに被覆する樹脂がその編物素材と
良く親和し十分な密着力をもって被覆加工できること
(加工性)の2つである。
【0004】本発明は前記2項目の要求を達成し、より
高度な性能・品質の付与された新たなベルトを見出すこ
とを目的として成されたものである。その発明は次のよ
うなものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】つまり本発明は、まず請
求項1に記載するポリベンゾビスオキサゾ−ル繊維の1
部ないし全部を使って無端管状に編成されてなる耐熱性
編物の少なくとも片面にイミド系耐熱樹脂が被覆されて
いることを特徴とする耐熱性無端管状体を特定するもの
である。
【0006】そして請求項1に従属して請求項2では、
前記耐熱性編物が、前記ポリベンゾビスオキサゾ−ル繊
維の1部を挿入糸として液晶ポリマ繊維で編成した挿入
編物である耐熱性無端管状体であること。また請求項3
では該液晶ポリマ繊維が、全芳香族ポリアミド又は全芳
香族ポリエステルのいずれかである耐熱性無端管状体で
あることも提供する。
【0007】更に請求項1に従属して請求項4では、前
記イミド系耐熱樹脂が、芳香族ポリアミドイミド又は熱
可塑性芳香族イミドのいずれかであること。また請求項
5では前記イミド系耐熱樹脂が、フッ素系樹脂を含有し
てなる耐熱性無端管状体あることも提供している。
【0008】又請求項6では前記請求項1〜3のいずれ
かに従属して、前記耐熱性編物が、液晶ポリマ繊維で1
〜復数コ−ス編成され、ポリベンゾビスオキサゾ−ル繊
維を回転方向に1コ−ス挿入するのを1レピ−トとし編
成されてなる耐熱性無端管状体が好ましいことを提供す
る。
【0009】更に、請求項7では前記請求項1〜6の耐
熱性無端管状体の製造手段としてその好ましい方法を提
供している。つまり前記耐熱性編物を金属ドラムに管状
内接して、特に遠心注型法によってイミド系耐熱樹脂液
を被覆して製造する方法である。以下本発明を次の実施
形態で詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】まず耐熱性無端管状体の支持基体
となる無端管状の耐熱性編物について説明する。ここ
で、まず該基体が特に編組織による編形状であるのは、
被覆するイミド系耐熱樹脂が該形状に良く絡合し隅々ま
で迅速に、且つ密に浸透すること(これは後述する遠心
注型による被覆法との組合せでより効果的である)。ま
た円滑なベルト回転(切断とか、蛇行等のない)を永続
するのに極めて重要な条件の1つ、つまり全くの無端状
基体(織組織の場合に見られる後から両端を繋ぎ合わせ
た形式的無端とは異なる)が編みながら一挙に製編でき
るからである。
【0011】そして前記編物の繊維素材としては、特に
ポリベンゾビスオキサゾ−ル(以下PBBOと呼ぶ)又
は該PBBOと他の耐熱性樹脂が選ばれる。このPBB
Oを選択することで、前記ベルト回転における高負荷下
での耐熱変形性が、他のいかなる耐熱性樹脂よりも極め
て大きく改善されることと、被覆するイミド系耐熱樹脂
との親和も良く、極めて高い密着でもって容易に被覆で
きて、目的の耐熱性無端管状体を得ることできる。この
PBBOは、一般に4、4′−ジヒドロキシ−m−ベン
ジジンと芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(−カルボ
ン酸エステル、−塩化カルボニル等)との当モル量を溶
媒(例えばポリリン酸)中で重縮合反応(分子内と分子
間反応)して合成されるものである。ここで一方の芳香
族ジカルボニルクロライドは、芳香族基に2つのカルボ
ニルクロライドが結合された化合物で、該ベンジジンの
−OH基と−NH基との間で重縮合反応する。具体的
には例えばイソフタロイルクロライド、4、4′−塩化
カルボニル−ジフェニルメタン、4、4′−塩化カルボ
ニル−ジフェニルエ−テル等が挙げられる。分子量は十
分な曳糸性をもって液晶紡糸できて、得られた繊維が1
80°C以上の高耐熱性と高弾性(例えば20T/mm
)−高強度(例えば500kg/mm)を発現する
に足る分子量と言うことになるが、これは一般に3〜7
万程度である。
【0012】そしてPBBOと共に製編に使用する場合
の前記耐熱性樹脂による繊維としては、主としてまず少
なくとも180°C以上の耐熱性を有し、前記高負荷下
での耐熱変形性が該PBBO繊維と相乗して有効に発現
し、且つPBBO繊維と良く絡み混編成が容易にでき
て、更に被覆するポリイミド系耐熱樹脂との密着性も良
いことが条件になる。この条件に合う樹脂は、一般に結
晶性ポリマとか、又は通称特殊エンジニアリングポリマ
と呼ばれるものの中に多い。具体的に結晶性ポリマでは
芳香族ポリエステル(例えばテレフタル酸と4、4′−
ヒドロキシジフェニルとp−ヒドロキシ安息香酸(PH
B)との重縮合によるコポリマ、5−ヒドロキシナフト
イック酸の分子内重縮合による単独ポリマ、エチレンテ
レフタレ−トとPHBとの縮重合によるポリマ等)、芳
香族ポリアミド(例えば芳香族ジアミンと芳香族ジカル
ボン酸クロリドとの重縮合によるポリマ)、ポリフェニ
レンビスベンゾチアゾ−ル,芳香族ポリエステルアミド
(例えばp−アセトアミドフェニルアセテ−トとビス
(p−カルボキシフエノキシ)アルカンとの重縮合によ
るポリマ)又はポリアゾメチン(例えば芳香族ジアミン
と芳香族アミドとの重縮合によるポリマ)が例示でき
る。
【0013】一方特殊エンジニアリングポリマとして
は、芳香族ポリアミドイミド、(熱可塑、熱硬化)芳香
族ポリイミド、芳香族ポリエ−テルスルホン、ポリエ−
テルエ−テルケトン等が挙げられる。これらの中でも前
記条件に好ましく作用するものは結晶性ポリマで、更に
この中でも芳香族ポリアミド又は芳香族ポリエステルで
ある。該ポリマ繊維は高温下でも変わらぬ卓越した高強
度・高弾性を維持するが、これが前記高負荷下での耐熱
変形性発現に有効に作用するものと考えられる。
【0014】次に前記各ポリマからの繊維による無端管
状の耐熱性編物の製編手段について説明する。まず該繊
維の断面形状は、特に制限はなく、多くの場合は円形で
ある。繊維径は、一般に50〜5000d/1〜200
0fのモノ又はマルチフィラメント、好ましくは100
から700dのマルチフィラメントとし、これを挿入編
込みの1糸条単位とする。該モノよりもマルチのフィラ
メントの方が好ましい理由は、被覆するイミド系耐熱性
樹脂とがより密着しやすく(密着面積が大きくなるため
と考えられる)、且つ最終的に得られる耐熱性無端管状
体に、適正な柔軟性を付与するのに有効であることによ
る。
【0015】そして製編による組織は、一般に知られて
いる丸編み編組織の中で適宜選べば良いが、中でも次の
ような組織の選択が好ましい。つまり繊維径の太い糸条
を縦又は/及び横、好ましくは横(つまり耐熱性無端管
状体をベルトとして使用した場合にそのベルトの回転方
向)に挿入して編む挿入編組織による丸編みである。こ
の丸編みも片面と両面の変化組織のいずれかによるが、
イミド系耐熱樹脂の被覆がし易く、得られる該管状体の
機械的強度もより良い等の点から片面変化組織による丸
編み(フライス丸編み)がより好ましい。
【0016】前記挿入丸編みに関し、具体的には例えば
PBBO繊維のみ(全部)で該挿入丸編みする場合に
は、20〜150d程度の細いマルチフィラメント(補
強用)を、1〜複数コ−ス編成し、300〜1000d
程度の太いマルチフィラメント(強化用)横挿入糸に使
って、これの1コ−ス挿入編成を1レピ−トとして、該
横挿入糸の密度を5〜30本/cm程度として丸編機に
て丸編みを行う。一方該PBBO繊維を1部として耐熱
性樹脂繊維で挿入混丸編みする場合には、PBBO繊維
を横挿入糸とし、耐熱性樹脂繊維を補強用に使って同じ
仕様の範囲内で適宜選んで丸編みを行うのが好ましい。
【0017】前記の好ましい組織として説明する挿入片
面丸編みを、更に図1を参照して説明する。まず補強用
のマルチフィラメント1は、(A)の第1給糸口(不図
示)における上針3と下針4側に給糸して1〜複数コ−
ス編成される。そして該編成コ−スに、(B)の第2給
糸口(不図示)から横挿入糸(強化用)2を1コ−ス挿
入編成してこれを1レピ−トとし、該横挿入糸の挿入密
度が5〜30本/cm程度になるように編成する。
【0018】一方PBBO繊維を1部として、他を前記
耐熱性樹脂による繊維で編む混編成の場合は、その編組
織としては前記挿入丸編みがより一層好ましい。これは
最終的に得られる耐熱性無端管状体に適正な屈曲性が付
与され、且つ被覆するイミド系耐熱樹脂との密着力がよ
り向上するからである。具体的には前記横挿入糸2(強
化用)に太さ300〜700dのPBBOマルチフラメ
ントを使い、補強用マルチフラメント1に太さ20〜1
50dの耐熱性樹脂マルチフィラメントを使って同様条
件で挿入丸編(フライス−片面)みを行うのがよい。
【0019】次に前記得られた耐熱性編物の少なくとも
片面に被覆されるイミド系耐熱樹脂について説明する。
まずこのイミド系耐熱樹脂は、少なくとも芳香環に結合
されたイミド基が繰返し単位となっている耐熱性(少な
くとも180°C)のポリマである。従ってこの単位に
更に芳香環に結合されたアミド基も繰返し単位となって
いる、いわゆる芳香族ポリアミドイミドも含まれる。又
この芳香環は1〜2個のフエニル基のみの場合もあれ
ば、2個のフエニル基がエ−テル結合、アルキレン結
合、カルボニル結合等で結合されている芳香環でもあ
る。
【0020】前記イミド系耐熱樹脂は、熱硬化性又は熱
可塑性の芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドに
分類されるが、具体的には次の通りである。まず熱硬化
性又は熱可塑性の芳香族ポリイミドは、基本的には芳香
族ジアミンと芳香族ジカルボン酸二無水物との当量をN
−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等の有機極
性溶媒中で縮重合反応して得られるが、この時該ポリイ
ミドが熱硬化性である場合には、常温以下の低温で反応
させる。これはその前駆体のポリアミド酸の段階で反応
を止める必要があるからである。従ってこれをもって被
覆する場合には、該ポリアミド酸溶液をコ−テングして
から、脱溶媒とイミド化して熱硬化性芳香族ポリイミド
を被覆するという2段階工程をとることになる。熱可塑
性では、該重縮合反応がイミド化まで進行しても該溶媒
に溶解するのでコ−テング後は、脱溶媒のみで良い。こ
の熱可塑性は、主鎖中に例えば2つのエ−テル結合、C
以上のアルキレン基結合、カルボニル結合等を有して
いる場合に発現する。
【0021】前記各ポリイミドの出発原料は、例えば次
のモノマである。熱硬化性では、芳香族ジアミンとして
はp−フエニレンジアミン、4、4′−ジアミノジフェ
ニル、4、4′−ジアミノジフェニルメタン、4、4′
−ジアミノフェニルエ−テル等。一方の芳香族ジカルボ
ン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、2、
2′、3、3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水
物、3、3′、4、4′−ベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸二無水物、ビス(2、3−ジカルボキシフェニル)
メタン酸二無水物等。一方熱可塑性では、芳香族ジアミ
ンとしてはビス[4−{3−(アミノフェノキシ)ベン
ゾイル}フェニル]エ−テル、4、4′−ビス(3−ア
ミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノ
フェノキシ)フェニル]スルホン、2、2′−ビス[4
−(3−アミノフェノキシ)プロパン等。一方の芳香族
ジカルボン酸二無水物は、前記する各酸二無水物が組み
合わされる。
【0022】又芳香族ポリアミドイミドは、一般に1つ
のイミド基とアミド基とを有することでそれ自身熱可塑
的である。従って原料を前記有機極性溶媒中で重縮合反
応させて一挙にイミド化まで進めても該溶媒には溶解し
ているので、これを被覆液として被覆し、脱溶媒すれば
よい。但し更に前記の熱可塑性芳香族ポリイミドの場合
に見られる2つのエ−テル結合、C以上のアルキレン
結合、カルボニル結合等も有していると、より熱可塑的
になる。
【0023】前記ポリアミドイミドの原料は、芳香族ト
リカルボン酸一無水物と芳香族ジアミンとであり、前者
としては例えばトリメリット酸一無水物に代表され、後
者は前記の各芳香族ジアミンのいずれかである。重縮合
反応は当量で常温以上で行う。
【0024】以上に記すイミド系耐熱樹脂の中でも熱可
塑性芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミドイミドのい
ずれかが好ましく、更には芳香族ポリアミドイミドが好
ましい。これはまず被覆して最終的に得られた耐熱性無
端管状体に、より適正な屈曲性(特に曲率半径の小さい
プ−リに張架して回転する場合の柔軟なフイット性)が
付与されることと、被覆する前記耐熱性編物との密着も
より緻密(気泡も内包することなく)に、且つより強固
であること及びコ−テング後の処理も主として脱溶媒の
みであり、これは短時間で低い温度で終了すると言った
理由による。
【0025】次に前記耐熱性編物にイミド系耐熱樹脂を
被覆する手段について説明する。該手段には、例えば該
編物の全体を、前記熱可塑性芳香族ポリイミド溶液、芳
香族ポリアミドイミド溶液又は熱硬化性芳香族ポリイミ
ドのポリアミド酸溶液中に浸漬するか、該編物の表裏面
をハケ又はスプレ−にて塗布するか、更にはロ−ルにて
塗布し、熱乾燥(脱溶媒又は脱溶媒と共にイミド化も行
う意味)する方法がある。しかしこれらの方法はいずれ
もより高い被覆精度を得るのに容易でないとか、該溶液
の粘度をより低くして被覆しないと該編物の目の隅々ま
で浸透し難い(これは一度に厚く被覆できないことにな
り、所定の被覆厚さを得るのに容易でないことにもな
る)と言った点で望ましいものではない。
【0026】そこで前記の被覆手段の欠点を解決する好
ましい方法として、特に請求項7に記載する遠心注型法
が挙げられる。この方法の特長は、より高い濃度のイミ
ド系耐熱樹脂溶液を使って1度に極めて緻密に被覆され
た、厚み精度の高い耐熱性無端管状体が確実に、且つ比
較的容易に製造できることである。その方法についてよ
り詳細に説明する。
【0027】まず前記PBBO繊維又はこれと他の耐熱
性樹脂繊維とにより製編された無端管状の耐熱性編物
を、円筒状に開いて遠心注型機の注型ドラム内面に装着
する。この装着は、該内面にしっかりと接して均一に行
なわれることが重要である。そのための方法は種々ある
が、その1つとしてまず別途円筒金型を準備し、これに
該編物を嵌挿する。そしてこれを回転しながら所定の前
記イミド系耐熱樹脂溶液を軽く(該織物の目を塞ぐこと
なく、円筒状を維持するのに足る最小限量)スプレ−
し、乾燥する。これにより該織物は事前に容易に円筒状
に開くことができるので、注型ドラム内面への装着が正
確且つ容易になる。この予め円筒状に成型された該編物
は該注型ドラム内面に装着したら、ゆっくりと回転しな
がら所定量の該イミド系耐熱樹脂溶液を注入し、より高
速に回転する。ここでの回転によって、全体に均一に流
延し展開することと、該編織の目の中に流入し表面(該
ドラム内面に接している該編物面)にまでしっかりと流
延し、そこで所定の厚さのイミド系耐熱樹脂膜が形成さ
れる。従ってそのように遠心作用をする速度で該ドラム
を回転する必要がある。このような回転による作用が終
わったら、又は作用中にその回転速度を維持しつつ、該
ドラム全体を加熱する。この加熱温度は、少なくとも有
機極性溶媒が蒸発するに必要な温度である。
【0028】前記のような状態で加熱を続けて、全ての
該溶媒を蒸発除去し一挙に所望する耐熱性無端管状体を
製造しても良いが、次のような2工程で行うのが望まし
い。つまり例えば該溶媒含有量の60〜90%を該ドラ
ムの加熱回転により蒸発除去し、その時点で一旦該ドラ
ムから取り出し、これを別途準備された円筒金型に嵌着
し、これの全体を熱風乾燥機に投入する。残存する該溶
媒を完全に蒸発除去する。同時にここでは、アニ−リン
グ(そのままより高い温度で所定時間加熱を続ける)し
て歪み等も除去し、より安定した強度、弾性等を有する
耐熱性無端管状体に変える処理をするのも好ましいこと
である。このような2工程を採ることで、該溶媒の完全
除去も容易になり、被覆されるイミド系耐熱樹脂膜内に
気泡の抱き込みもなく、且つ極めて寸法精度の高い、面
平滑性も卓越したものとして製造することができる。
【0029】前記耐熱性無端管状体の製造に際し、被覆
原料となるイミド系耐熱樹脂溶液に、必要あらば各種添
加剤を添加してもかまわない。例えば耐摩耗性のより向
上はより望ましいことである。このためには、該管状体
の面を易滑性にすることも一つの方法である。その具体
的方法は、例えば二流化モリブデン、グラフアイト、フ
ッ素樹脂等の粉状滑剤の微量混合である。これらの混合
も前記遠心注型法によるのがより好ましい。これは混合
された該滑剤が、遠心力により表面層に多く傾斜して分
散する傾向になるので、より少量の添加量でよい。より
少量の添加は、該管状体自身の有する特性に実質的変化
をもたらさずに、単に耐摩耗性が付加されたことになる
ので好ましいことである。これら滑剤の中でもフッ素樹
脂粉体が好ましい。これは更に少量の添加でよく、且つ
表面層で膜状で連続した分散状態をとっているので、耐
摩耗性、易滑性、更には撥水性が他よりもよりよいから
である。フッ素樹脂は、耐熱性が少なくとも180°C
あって、熱可塑的挙動を示すものの中から選ぶのがよ
い。
【0030】尚前記遠心注型法に用いられる機械の構造
は、種々あるが本発明で使用したものは概略次の通りで
ある。内面鏡面仕上げした金属ドラム(内面両サイド全
周には、液漏れ防止のためのバリア−が設けられてい
る)が4個の回転ロ−ラ上に着脱自在状態で載置されて
いる。該ドラムの上部には、加熱用の遠赤外線ヒ−タが
近設され、そして加熱により蒸発する有機極性溶媒を速
やかに排出するために、該ドラム内に吸気ノズルが設け
られる。又前記原料供給を自動的に行うために、該ドラ
ム内を左右動する原料供給ノズルが設けられるて全体を
構成する。
【0031】又本発明の耐熱性無端管状体(単層)は、
前記の通り極めて優れたものであり、ベルト等に加工し
て直ちに使用できるが、これの2〜3つを重層して使用
することもでき、高付加下でのより一層の耐熱変形性が
飛躍的に向上する。この重層は前記成型で順次積層して
一体と成すことでも良く、1つづつ別に成型して使用時
に嵌着して重層しても良い。
【0032】
【実施例】次に比較例と共に、実施例によって更に詳述
する。尚各例で測定する耐熱変形性は、得られた耐熱性
無端管状体を幅10mmにカットしテスト用ベルトとし
て、これを直径60mmの2個のプ−リに75kgの張
力で張架し、90°C雰囲気下で3000rpmの速度
で所定時間(表1に記載)回転した時点でのベルトの張
力低下と表面に発生したクラックをもって表した。
【0033】(実施例1)まず次の仕様でPBBO繊維
のみからなる無端管状の耐熱性編物を製編した。PBB
O繊維として、1、3−ジアミノ4、6ジヒドロキシベ
ンゼンとテレフタル酸との重縮合により得られたポリパ
ラフェニレンベンゾビスオキサゾ−ル(分子量4700
0)を紡糸、延伸熱処理て得た30dマルチフィラメン
ト(3d×10本)を補強化用として編成に使い、一方
同繊維の500dのマルチフィラメント(3d×155
本)を横挿入糸(強化用)に使って、該横挿入糸編成の
1コ−スに対して該横挿入糸を1コ−ス挿入で1レピ−
トとして、挿入密度15本/cmでもって図1の編組立
でフライス丸編みを行ない幅300mm、内径186m
mの該編物を得た。
【0034】次に前記得られた編物を外径187mmの
金属シリンダ−に嵌入して、これを回転しながらポリア
ミドイミド(PAIと呼ぶ)溶液をスプレ−し、乾燥し
て予備的に被覆した。その条件は次の通りであった。ま
ずトリメリット酸一無水物と4、4′−ジアミノジフェ
ニルメタンとの当量を、N−メチルピロリドン(NMP
溶媒)中で重縮合反応して固形濃度28重量%のPAI
溶液200gを得た(PAI原液)。そしてこの10g
をとって、これにNMP溶媒を15g添加して希釈し、
この15gをとってスプレ−し、120°Cで乾燥し、
冷却して該シリンダ−から取り外した。得られた編物
は、編目を塞ぐことなく一応の管状を維持していた。こ
れをPc編物と呼ぶ。
【0035】次に前記Pc編物を内径187mm、幅3
50mmの注型ドラム内に嵌着し回転ロ−ラ上に載置し
た。そして次の条件で遠心注型した。前記PAI原液の
140gをとって、これに100gのNMP溶媒を添加
し希釈した。この溶液の235gをとって、該注型ドラ
ム内に嵌着したPc編物の内面にゆっくりと回転しつつ
自動注入した。注入が終わったら該ドラムを130°C
に昇温しつつ、回転速度を徐々に上げた。130°Cに
達したら350rpmに定速回転し、この状態で2.5
時間維持した。この加熱回転の間は、該ドラム内は吸引
して蒸発したNMP溶媒は速やかに排気するようにし
た。2.5時間経過したら、加熱を停止し常温に冷却し
停止して該ドラムから成型体を取り出した。
【0036】そして前記取り出した成型体を外径18
6.5mmの円筒金属金型に嵌着し、これを240°C
の熱風乾燥機に投入し、30分間加熱した。冷却して該
金型からはずして、目的の耐熱性無端管状体を得た。該
管状体の内径は186.5mmで、厚さは345±10
μmであり、表面(注型ドラム内面と接する面)は完全
にPAIで被覆され、全くの平滑面(中心線平均粗さR
a=0.05μmであった)になっているが、裏面はP
AIで被覆はされているが、(完全に被覆されずに)編
目組織に基づく粗面を呈していた。
【0037】そして前記耐熱性無端管状体をベルト用に
カットし、耐熱変形性を測定し表1にまとめた。尚該管
状体を200°Cの空気中に25kg/cmの加重を
掛けて24時間放置した場合の伸縮を測定した。その結
果は伸縮のいずれも全くなかった。
【0038】(表1)
【0039】(実施例2)まず実施例1において、同じ
PBBO繊維素材でこれの500マルチフィラメント
(3d×166本)糸を横挿入糸(強化用)として使用
し、5d(5d×5本)マルチフィラメントの全芳香族
ポリエステル繊維を補強用として、実施例1と同様条件
でフライス丸編みを行なって幅300mm、内径186
mmの無端管状の耐熱性編物を得た。尚該全芳香族ポリ
エステル繊維は、p−ヒドロキシ安息香酸と7−ヒドロ
キシ3−ナフトイック酸との重縮合よるポリマ繊維(ク
ラレ株式会社製・ベクトランタイプT−155)を使用
した。
【0040】そして前記編物に実施例1と同一条件で、
遠心成型にてPAI樹脂を被覆し、最後に熱風処理して
目的の耐熱性無端管状体を得た。該管状体の内径は18
7mmで、厚さは340±10μmであった。表面は完
全に被覆され、表裏状態は実施例1と差はなかったが、
全体の硬さは若干柔軟に感じられた。これについてもカ
ットしてベルトに加工し、同様条件で耐熱変形性を測定
し表1にまとめた。尚該管状体を200°Cの空気中に
25kg/cmの加重を掛けて24時間放置した場合
の伸縮を測定した。その結果は実施例1同様に伸縮のい
ずれも全くなかった。
【0041】(実施例3)実施例2において、遠心注型
で注入するPAI溶液235gに4フッ化ポリエチレン
粉体(粒径1μm)を3.5重量%(対固形分)混合す
ること以外は同一条件で製編し、被覆して該粉体分散の
耐熱性無端管状体を得た。該管状体の表裏面の状態は実
施例2と変わらないが、表面が裏面よりも滑り易かっ
た。又接触角は実施例2の69°(表面)であるのに対
して、本例では表面が101°、裏面が75°であっ
た。撥水しやすくゴミ等も付着しにくい特性も付与され
てことが判る。このものの耐熱変形性も測定し表1にま
とめた。尚接触角の表裏の差は、4フッ化ポリエチレン
が、表面層に多く傾斜的に分散したためで、遠心注型に
よる被覆の特長もよく判る。
【0042】(実施例4)まず実施例2において、同じ
PBBO繊維素材でこれの500マルチフィラメント
(3d×166本)糸を横挿入糸(強化用)とし、全芳
香族ポリアミド繊維(ヂュポン社製・ケブラ−)の30
dマルチフィラメント(1.5×20本)補強用とし
て、同様条件でフライス丸編みを行ない幅300mm、
内径186mmの無端管状の耐熱性編物を得た。
【0043】そして前記編物に実施例2と同一条件で、
遠心成型にてPAI樹脂を被覆し、最後に熱風処理して
目的の耐熱性無端管状体を得た。該管状体の内径は18
7mmで、厚さは350±10μmであった。表面は完
全に被覆され、表裏状態は実施例2と差はなかったが、
全体の硬さは若干柔軟に感じられた。これについてもカ
ットしてベルトに加工し、同様条件で耐熱変形性を測定
し表1にまとめた。尚該管状体を200°Cの空気中に
25kg/cmの加重を掛けて、24時間放置した場
合の伸縮を測定した。その結果は実施例1同様に伸縮の
いずれも全くなかった。
【0044】(比較例1)実施例2においてPBBO繊
維の代わりに、1、4−ジアミノフエニルとテレフタル
酸クロライドとの重縮合反応による全芳香族ポリアミド
を液晶紡糸して得られた600dのマルチフィラメント
(1.5d×400本)を用い、そして全芳香族ポリエ
ステル繊維の代わりに、30dのテトロンマルチフィラ
メント(1.5d×20本)を使用する以外は、同様条
件にて製編し、PAI樹脂を被覆し管状体を得た。但し
遠心注型での成型時間は7時間、最後に行う円筒金属金
型に嵌着しての加熱は、150°Cで120分間行っ
た。
【0045】前記得られた管状体の被覆状態は、実施例
2と差はなかったが、全体はより柔軟的であった。内
径、厚さも同じであったが、しかし幅が約3mm収縮し
ていた。このものについても同様にベルト状にカット
し、耐熱変形性を測定し表1にまとめた。
【0046】
【発明の効果】本発明は前記の通り構成されるので、次
のような効果を奏する。
【0047】例えばベルトとして、これを少なくとも1
80°C、空気中で強張力下又は高加圧下で長時間回転
使用しても、これまで類例のない格段に優れた高耐久性
ベルトが得られるようになった。
【0048】ベルトとして1重は勿論、これを2〜3重
に積層すれば、例えば今後環境、少燃費の点で有望視さ
れている自動車のCVT化における伝動ベルトへの使用
が、現在の金属ベルトに代わって有望になってきた。
【0049】伝動用ベルトに限らず、過酷な種々の条件
下での物品搬送用としの使用にも耐えることができ、新
たな需要を生み出すのに極めて有望になってきた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる無端管状の耐熱性編物の挿入フ
ライス丸編みの組立方の1例を示す。
【符号の説明】
1 補強用マルチフィラメント 2 横挿入糸(強化用) 3 上針 4 下針

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリベンゾビスオキサゾ−ル繊維の1部な
    いし全部を使って無端管状に編成されてなる耐熱性編物
    の少なくとも片面にイミド系耐熱樹脂が被覆されている
    ことを特徴とする耐熱性無端管状体。
  2. 【請求項2】前記耐熱性編物が、前記ポリベンゾビスオ
    キサゾ−ル繊維の1部を挿入糸として液晶ポリマ繊維で
    編成した挿入編物である請求項1に記載の耐熱性無端管
    状体。
  3. 【請求項3】前記液晶ポリマ繊維が、全芳香族ポリアミ
    ド又は全芳香族ポリエステルのいずれかである請求項2
    に記載の耐熱性無端管状体。
  4. 【請求項4】前記イミド系耐熱樹脂が、芳香族ポリアミ
    ドイミド又は熱可塑性芳香族イミドのいずれかである請
    求項1に記載の耐熱性無端管状体。
  5. 【請求項5】前記イミド系耐熱樹脂がフッ素系樹脂を含
    有してなるな請求項1又は4に記載の耐熱性無端管状
    体。
  6. 【請求項6】前記耐熱性編物が、液晶ポリマ繊維で1〜
    復数コ−ス編成され、ポリベンゾビスオキサゾ−ル繊維
    を回転方向に1コ−ス挿入するのを1レピ−トとし編成
    されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性
    無端管状体。
  7. 【請求項7】前記耐熱性編物を金属ドラムに管状内接し
    て遠心注型法によってイミド系耐熱樹脂液を被覆するこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐
    熱性無端管状体の製造方法。
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