JP2001031619A - 3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−オン(β−イソフォロン)の連続製造方法 - Google Patents

3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−オン(β−イソフォロン)の連続製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ媒体中でアセトンを三量化して得ら
れるα−イソフォロンの均質触媒による異性化でβ−イ
ソフォロンを連続的に製造する方法。 【解決手段】 (a)α−イソフォロンと水酸化アルカ
リ溶液とを反応領域に連続的に導入し、(b)反応混合
物を150℃以下の温度と大気圧以下の圧力P1で還流
させ、(c)反応混合物から連続的且つ同時に(1)P
1以下の圧力P2および150℃以下の温度で蒸留によ
って蒸気相のβ−イソフォロンを除去し、(2)反応混
合物中の重質生成物の含有率が7重量%以下となるよう
に重質生成物を抜き出し下記(1)および(2)を除去
し、(d)蒸留の縮合物を反応領域へ連続的に送る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、均質触媒の存在下
で液相の3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−2−エ
ン−1−オン(以下、α−イソフォロン)の異性化によ
って3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−
1−オン(以下、β−イソフォロン)を連続的に製造す
る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】β−イソフォロンはカロチノイド、ビタ
ミン(例えばビタミンE)および医薬品製造の合成中間
体である。β−イソフォロンはさらに、香水やアスタキ
サンチン、アブシジン酸および各種誘導体のような天然
物質の合成で直接用いられる。β−イソフォロンはアル
カリ媒体中でのアセトンの三量化で得られるα−イソフ
ォロンの異性体であり、2重結合の位置によってα−イ
ソフォロンとは区別される。すなわち、下記に表すよう
にβ−イソフォロンでは2重結合はカルボニルとは共役
ではない:
【0003】
【化1】 α−イソフォロンのβ−イソフォロンへの異性化は2重
結合とカルボニルの脱共役結合の平衡反応であり、熱力
学的平衡はα−イソフォロン側にある。
【0004】α−イソフォロンのβ−イソフォロンへの
異性化方法は多数記載されているが、それらには多くの
欠点がある。例えば、化学物質(特に触媒)の消費量が
多く、収率が悪く、α−イソフォロンの縮合生成物(重
質生成物)が形成され、その結果、反応媒体の温度が上
昇し、重質生成物の形成が加速されて系が不安定にな
る。
【0005】欧州特許第832,871号にはα−イソ
フォロンの触媒異性化によるβ−イソフォロンの製造方
法が開示されている。その実施例7では、第一段階で蒸
留によって反応混合物から20〜22%のβ−イソフォ
ロン初期混合物を連続的に抜き出し、次に反応混合物か
ら蒸留によって純度約98%のβ−イソフォロンが単離
される。この方法では循環蒸発器で約90%のα−イソ
フォロンと10%の重質生成物とからなる混合物が回収
されることが分かっている。運転時間(約15時間)と
蒸発器に回収された生成物の量(615g)とから考え
ると、単位時間当たりの重質生成物の生成量は約4gに
なる。さらに、使用するα−イソフォロンの0.6重量
%に相当する多量の触媒が用いられる。
【0006】反応の熱力学を考えると、異性化を行う温
度によって平衡状態でのβ−イソフォロン濃度が決ま
り、温度を上げるほどβ−イソフォロンの平衡濃度が高
くなる。β−イソフォロンはα−イソフォロンより揮発
性が高いので最も揮発性の高い生成物を蒸留することで
平衡を移動させることができる。しかし、β−イソフォ
ロンは150℃以上の温度に加熱すると触媒無しでもα−
イソフォロンへ逆異性化する。この熱による逆異性化の
反応速度は温度レベルで制御される。
【0007】さらに、異性化を行うためには中間エノー
ルまたはエノレートを通らなければならない。しかし、
中間エノールまたはエノレートはアルドール化(aldoli
zation)/クロトン化(crotonization)反応の中間体
でもあるため望ましくないイソフォロンの重縮合物が形
成される。この重縮合物の形成はβ−イソフォロン製造
工程でのイソフォロンの損失を表す。この形成は触媒濃
度と温度によって促進される。従って、不均質触媒の使
用は触媒を非活性化させる重質生成物の固体触媒表面濃
度を増加させるためあまり好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記の
欠点のないα−イソフォロンの異性化によるβ−イソフ
ォロンの連続的製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルカリ媒体
中でアセトンを三量化して得られる3,5,5−トリメ
チルシクロヘキサ−2−エン−1−オン(α−イソフォ
ロン)の均質触媒による異性化で3,5,5−トリメチ
ルシクロヘキサ−3−エン−1−オン(β−イソフォロ
ン)を連続的に製造する方法において、下記(a)〜
(e)を特徴とする方法を提供する: (a) α−イソフォロンと水酸化アルカリ溶液とを反
応領域に連続的に導入し、(b) 反応混合物を150
℃以下、好ましくは190〜216℃の温度と大気圧以
下の圧力P1下で還流させ、(c) 反応混合物から下
記(1)および(2)を連続的且つ同時に除去し、(1)
P1以下の圧力P2および150℃以下の温度の蒸留に
よって蒸気相のβ−イソフォロンを除去し、(2)反応
混合物中の重質生成物の含有率が7重量%以下となるよ
うに重質生成物を抜き出し、(d) 蒸留の縮合物を反
応領域に連続的に送る。
【0010】
【発明の実施の形態】上記圧力P1は150mbar〜
大気圧であり、圧力P1以下の圧力P2は150mba
r以下、好ましくは50mbar〜100mbarであ
る。水酸化アルカリはNaOHまたはKOHにするのが
好ましく、KOHを用いるのが好ましい。水酸化アルカ
リは水か、メタノール、エタノール、プロパノール、イ
ソプロパノール等の低分子量の脂肪族アルコールに溶解
することができる。一般にはメタノールまたはエタノー
ルを使用する。用いる水酸化アルカリの量は反応領域に
導入されるα−イソフォロンの0.03重量%以下であ
る。0.010〜0.020重量%の水酸化アルカリを
用いるのが好ましい。
【0011】β−イソフォロンを含む留分の蒸留の還流
比はこの留分中のβ−イソフォロン濃度を調整するパラ
メターであり、上記の熱的退行を最小にして、β−イソ
フォロンの純度が最大になるように選択する。本発明で
は、重質生成物を7重量%以下含み、残部がα−および
β−イソフォロンの混合物である混合物を連続的に抜き
出す。重質生成物は主としてイソフォロンの二量体、三
量体および触媒残留物から成る。この重質生成物はアセ
トンの三量化反応後かつ塩基触媒の中和前に塩基触媒に
よってα−イソフォロンを製造するラインへ戻すことが
できる。
【0012】本発明の連続方法の特徴は重質生成物を連
続的に抜き出すことにある。それによって重質生成物の
ボイラ内での濃度を減らすことができ、異性化温度を安
定化させることができるという利点がある。本発明方法
の他の利点は、重質生成物をα−イソフォロンの製造設
備内で再循環できるため、その処理に高価な操作をする
必要がない点にある。本発明方法のさらに他の利点は触
媒量の消費量が少ないという点にある。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明方法は図1の概念図で示し
た装置で実施することができる。この装置は、α−イソ
フォロンのβ−イソフォロンへの異性化反応が行なわれ
るボイラー(1)と、その上に取り付けた断熱カラム
(2)とを有し、断熱カラム(2)の内部には充填材、
例えばSulzer EX 20がパックれれ、その頭部には還流比
を調節するタイマーを備えた断熱カラム頭部が取付られ
ている。還流比Rは抜き出した生成物の量に対する蒸留
カラム頭部で得られた縮合物全体の量の比で定義付され
る。
【0014】ボイラー(1)は図1に表していい加熱手
段を備えている。ボイラー(1)にはライン(3)を介
して原料が供給され、β−イソフォロンはライン(4)
を介して回収され、ボイラーから抜き出された重質生成
物はライン(5)を介して抜き出される。蒸溜の縮合物
はカラム(2)の底部で抜き出され、ポンプ(7)を備
えたライン(6)を介してボイラー(1)に回収され
る。ボイラー(1)とカラム(2)との間には減圧装置
(8)が挿入される。カラムおよびボイラーの寸法は異
性化するα−イソフォロンの量と、所望の生産性に従っ
て計算され、これらは当業者には一般的な知識である。
【0015】
【実施例】本発明を説明するために、実験装置で下記試
験を実施した。KOHが約20重量%になるように予め
メタノールに溶解したKOH(純粋なKOH)を含むK
OH0.02重量%の300gのα−イソフォロン(エ
ルフ・アトケム社製)を1リットルのガラス反応装置か
ら成るボイラーに導入した。この混合物を600mba
rの圧力下で196℃に加熱する。その蒸気は100m
barの圧力で断熱カラムに連続的に導入される。この
カラムには316Lステンレス鋼のSulzer EX20パッキ
ングが収容されている。カラム頭部の温度は110〜1
11℃で安定する。
【0016】純度(β−イソフォロン/α−イソフォロ
ンの比が99%以上で定義)なβ−イソフォロンは還流
比R60で抜き出す。抜き出し量は4g/時間で安定す
る。蒸留の縮合物はポンプを用いてボイラーへ送る。試
験は10時間行なった。重質生成物は連続的に抜き出し
た。重質生成物の抜き出し量およびβ−イソフォロンの
生成量を補償するために、触媒と一緒にα−イソフォロ
ンを導入した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法を実施する装置の概念図。
【符号の説明】
1 ボイラー 2 断熱カラム 7 ポンプ 8 減圧装置

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルカリ媒体中でアセトンを三量化して
    得られる3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−2−エ
    ン−1−オン(α−イソフォロン)の均質触媒による異
    性化で3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−3−エン
    −1−オン(β−イソフォロン)を連続的に製造する方
    法において、 下記(a)〜(e)を特徴とする方法: (a) α−イソフォロンと水酸化アルカリ溶液とを反
    応領域に連続的に導入し、(b) 反応混合物を150
    ℃以下の温度と大気圧以下の圧力P1で還流させ、
    (c) 反応混合物から下記(1)および(2)を連続的
    且つ同時に除去し、 (1)P1以下の圧力P2および150℃以下の温度で
    蒸留によって蒸気相のβ−イソフォロンを除去し、 (2)反応混合物中の重質生成物の含有率が7重量%以
    下となるように重質生成物を抜き出し、(d) 蒸留の
    縮合物を反応領域へ連続的に送る。
  2. 【請求項2】 圧力P1が150mbar〜大気圧であ
    り、圧力P1以下の圧力P2が150mbar以下であ
    る請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 圧力P2が50mbar〜100mba
    rである請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 段階(b)で反応混合物を約190〜2
    16℃の温度にする請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 水酸化アルカリがKOHである請求項1
    〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 水酸化アルカリを低分子量の脂肪族アル
    コールに溶かす請求項1〜5のいずれか一項に記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 低分子量の脂肪族アルコールがメタノー
    ルまたはエタノールである請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 使用するα−イソフォロンに対して0.
    03重量%以下の水酸化アルカリを用いる請求項1〜7
    のいずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 使用するα−イソフォロンに対して0.
    010〜0.020重量%の水酸化アルカリを用いる請
    求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 段階(c)の(2)で異性化反応装置
    から抜き出される重質生成物がα−イソフォロンの製造
    ラインに再循環する請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 重質生成物をアセトンの三量化反応後
    および塩基触媒の中和前にα−イソフォロンの製造ライ
    ンに導入する請求項9に記載の方法。
JP2000188261A 1999-06-22 2000-06-22 3,5,5−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−オン(β−イソフォロン)の連続製造方法 Expired - Fee Related JP3568457B2 (ja)

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