JP2001031576A - ヘリコバクター・ピロリの定着阻害剤 - Google Patents

ヘリコバクター・ピロリの定着阻害剤

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JP2001031576A JP2000145066A JP2000145066A JP2001031576A JP 2001031576 A JP2001031576 A JP 2001031576A JP 2000145066 A JP2000145066 A JP 2000145066A JP 2000145066 A JP2000145066 A JP 2000145066A JP 2001031576 A JP2001031576 A JP 2001031576A
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義勝 兒玉
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヘリコバクター・ピロリの胃内での定着を阻
害する物質を得て、ヘリコバクター・ピロリ感染により
生じる胃炎、胃潰瘍に対する有効で安全な予防剤、治療
剤を提供する。 【解決手段】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
脂を有効成分とするヘリコバクター・ピロリの定着阻害
剤。この物質は胃においてヘリコバクター・ピロリを特
異的に除菌することができ、胃炎、胃潰瘍に対する予防
剤および治療剤として有用である。また、胃酸分泌抑制
剤と併用するとより高い除菌効果が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘリコバクター・
ピロリ(Helicobacter pylori)(Hpと略記することが
ある)の定着阻害剤、およびヘリコバクター・ピロリの
感染によって引き起こされる胃炎、胃潰瘍および十二指
腸潰瘍を効果的に予防または治療しうる経口予防剤、治
療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ヘリコバクター・ピロリによる感染症
は、現在消化器臨床分野で精力的な研究が行われてい
る。その理由は、胃炎や胃潰瘍などの胃疾患の病因がこ
の菌の関与を抜きに考えられず、また、世界人口の約半
数がこの菌に感染しているためである。そこで、WHO
の国際癌研究機関(IARC) は、疫学的研究からヘリコバ
クター・ピロリをdefinite carcinogen と認定してい
る。
【0003】ヘリコバクター・ピロリは、一端に数本の
鞭毛 (flagella) を持つ、ら旋型をしたグラム陰性桿菌
で、ヒトの胃粘膜に生息する菌である。この菌は、1983
年オーストラリアのMarshall, B. J. とWarren, J. R.
によって胃炎、胃潰瘍患者の胃生検材料から高率に検出
されることが報告され、その後、疫学的研究から、この
菌は胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の起因菌であり、さら
には胃癌などの疾患と関連があるとの報告が相次いで発
表されている。
【0004】ヘリコバクター・ピロリ感染症の病原因子
(virulence factor) としては、これまで、この菌が産
生するウレアーゼ、粘膜ムチン層を遊走するための鞭
毛、炎症性サイトカインとしてのインターロイキン-8の
産生に関与するとされるCag A外膜蛋白、胃粘膜上皮細
胞の空胞化・ビラン・壊死および潰瘍形成に関与するVa
c A 空胞化細胞毒が挙げられている。このうちのウレア
ーゼについては、ウレアーゼにより産生されるアンモニ
アが、胃内pHを中和し増殖環境を確保すること、および
胃粘膜にダメージを与えることにより、結果的に胃炎や
胃潰瘍、さらには胃癌に移行すると考えられていた。
【0005】消化性潰瘍の根治的治療にはヘリコバクタ
ー・ピロリの除菌が不可欠であると考えられており、そ
の除菌療法としては抗生物質と胃酸分泌抑制剤との併用
療法が一般的である。Hpが一旦胃粘膜に定着すると、
抗生物質のみによる除菌は難しく、Hpの除菌には、胃
酸分泌を強力に抑制するプロトンポンプインヒビターと
複数の抗生物質が併用の形で使用されている。しかし、
抗生物質の長期投与は、その副作用に加え、耐性菌の増
加という非常に重大な問題が危惧される。
【0006】除菌を目的とした抗生物質の投与による副
作用および耐性菌の増加などの問題を解決する方法とし
て、経口ワクチンによる免疫療法のアプローチが見られ
るが、感染モデル動物の作出や実験条件の複雑さが障害
となって、新しい予防、治療法の確立を目指した研究は
ほとんど進展していない。さらに、経口ワクチンにおい
て必須のアジュバントの毒性の問題も未解決である。ま
た、ワクチンはあくまで予防を主体とするものであり、
一旦Hpが感染した患者に対しては効果は望めない。
【0007】さらに、ワクチンに代わる免疫療法とし
て、Hp全菌体を抗原として得られた鶏卵抗体の使用が
提案されているが、全菌体に対する抗体では完全な除菌
は望めず、また実際の胃内での除菌効果については確認
されていない。
【0008】一方、ある種の多糖類が胃潰瘍の予防、治
療に有用であると報告されている(特開平4−5236号公
報、特開平6−247861号公報、特開平7−138166号公
報)が、いずれもHp感染による潰瘍形成の抑制を示す
ものではない。これらの公報における潰瘍治癒作用の証
明には、Hpによる潰瘍形成とは病理発生が基本的に異
なる酢酸誘発潰瘍が用いられている。
【0009】これまで、Hp定着の機構に関しては何ら
解明されておらず、定着の機構に関する知見に基づいた
有効なHpの定着阻害剤や抗潰瘍剤の開発は行われてい
なかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、Hpを
除菌するために、抗生物質を長期にわたり使用すると副
作用と共に耐性菌の増加の恐れがある等の問題があり、
ワクチンや抗体の使用でも十分な効果は望めない。ま
た、各種の多糖類を用いた場合の抗潰瘍作用について
は、それらの作用機構は明らかにされていない。
【0011】本発明の目的は、消化性潰瘍の発生に関与
するHpの胃内定着に関する機構を解明し、それに基づ
いてHpの定着阻害剤を提供することである。また、抗
生物質の使用に伴う副作用や耐性菌増加という欠点を持
たず、Hp感染による胃炎、胃潰瘍等に対して、効果的
で安全性の高い予防剤および治療剤を提供することであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これまで
十分に解明されていなかった、ヘリコバクター・ピロリ
の胃粘膜への定着に関し、新規な重要な知見を得たこと
に基づき本発明に至った。
【0013】Hpは増殖条件の特殊性から、胃内での生
態に関しては十分に解明されていなかった。特に、強酸
性の胃内での増殖の鍵となる胃粘膜への定着に関して種
々の研究がなされているにもかかわらず、胃内での強い
増殖能力の理由ははっきりと説明できなかった。胃粘膜
への接着は、胃内でのHpの増殖に重要な役割を果たす
ものであるので、接着因子の解明は、Hpにより引き起
こされる胃炎、消化性潰瘍の予防、治療法の開発に大き
な意義をもつ。
【0014】これまで考えられていたいくつかの病原因
子のうちの1つである、Hpが産生するウレアーゼにつ
いては、前述のように胃内の尿素をアンモニアに変換す
るという酵素としての役割が胃炎、胃潰瘍、胃癌などを
引き起こすと考えられていた。また、各種実験から、ウ
レアーゼはHpの胃粘膜への定着には関与しない、すな
わちウレアーゼは接着因子(adhesin)としての機能は持
たないと報告されてきた。本発明者らは、Hpの接着に
関する従来の研究結果からは予想外の、ウレアーゼその
ものがHpの胃粘膜への接着に関与するとの知見を得
た。すなわち、Hpの産生するウレアーゼは、尿素をア
ンモニアに変換する酵素としての作用に加え、接着因子
としての機能が大きいこと、すなわちウレアーゼ自体が
胃粘膜ムチンに結合することによりこの菌の増殖が可能
となることを見出した。
【0015】さらに本発明者等は、ウレアーゼに対応し
た胃粘膜ムチンの受容体分子は硫酸基が関与しているこ
とを示唆する知見を得た。このように、接着因子とその
受容体分子との関係を明らかにすることにより、耐性菌
を生じずにHpを除菌する新規な方法を提供することが
可能になった。
【0016】本発明の要旨は、スルホン酸基を含む強酸
性イオン交換樹脂を有効成分とするヘリコバクター・ピ
ロリの定着阻害剤である。スルホン酸基を含む強酸性イ
オン交換樹脂としては、スルホン化ポリスチレンジビニ
ルベンゼン共重合体が好ましい。
【0017】さらに本発明は、スルホン酸基を含む強酸
性イオン交換樹脂を有効成分とするヘリコバクター・ピ
ロリ感染による胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防
剤および治療剤、ならびにスルホン酸基を含む強酸性イ
オン交換樹脂および胃酸分泌抑制剤を有効成分とするヘ
リコバクター・ピロリ感染による胃炎、胃潰瘍または十
二指腸潰瘍の予防剤および治療剤にも関する。
【0018】以下に本発明を詳細に説明する。本発明に
おいてHp定着阻害剤として使用するスルホン酸基を含
む強酸性イオン交換樹脂は、三次元網目骨格を有する高
分子母体にイオン交換基としてスルホン酸基を導入した
ものであり、市販のものを用いることができる。三次元
構造を有する高分子母体としては、例えば、ポリスチレ
ンジビニルベンゼン、デキストラン誘導体等が使用で
き、これらの架橋高分子をクロルスルホン酸等によりス
ルホン化してスルホン酸基を含むイオン交換樹脂とす
る。
【0019】使用できる市販のイオン交換樹脂として
は、アンバーライト(登録商標)IR-118、IR-121、IR-1
22、IR-124(オルガノ(株))、アンバーリスト(登録
商標)15、XN-1004 、XN-1005 (オルガノ(株))、ダ
ウエックス(登録商標)50W 、HGR 、HGR-W2、HCR-W2、
HCR-S (ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー) 、フラクト
ゲル(登録商標) EMD SO3 - -650(S) (メルク) 、レバ
チット(登録商標) S100 、S109 、SP112 、SP120
(バイエル) 、陽イオン交換樹脂 C-111、C-112 、C-132
、C-213 、C-214 、C-316 (栗田工業 (株))などが好
適に使用できる。これらの市販のイオン交換樹脂は、粒
状であり、種々の粒子径のものがある。
【0020】スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
のスルホン酸基含量は、硫黄(sulfur) 含量として通常
5%以上であり、好ましくは9〜20%である。Hpの胃
粘膜定着阻止能はスルホン化の度合いと相関しているの
で、硫黄含量が10〜18%程度のものを使用するのが特に
好ましい。
【0021】スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
を有効成分として含むHp定着阻害剤あるいは抗潰瘍剤
は経口により投与する。スルホン酸基を含む強酸性イオ
ン交換樹脂は既に医薬品としても使用されており、腸管
からの吸収は認められず、安全性は確認されている。例
えば、急性および慢性腎不全による高カリウム血症の改
善薬などの医薬品として使用されている。
【0022】本発明で用いるスルホン酸基を含む強酸性
イオン交換樹脂は、後述の動物実験から明らかなよう
に、Hpの胃粘膜への定着を阻止し、高い除菌効果を発
揮しうる。従って、スルホン酸基を含む強酸性イオン交
換樹脂を有効成分とする薬剤組成物は、Hpの胃粘膜へ
の定着によって発生する胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰
瘍の予防剤、治療剤として有用である。
【0023】従来、Hp感染による胃炎、胃潰瘍の病理
発生には、Hpの定着によって産生されるウレアーゼが
病原因子の1つとして注目されてはいたが、Hpの胃粘
膜への接着に関与する因子であることは全く予想されて
いなかった。そのような状況において、本発明は先に、
Hpの接着因子は菌体表層に局在しているウレアーゼで
あることを見出し、抗ウレアーゼ抗体を胃炎、胃潰瘍の
予防剤または治療剤として用いることを提案した(特開
平10−287585号)。Hpがヒト胃癌由来MKN-45細胞によ
く付着し、炎症性サイトカインであるインタロイキン-8
を分泌することを利用して、抗ウレアーゼ鶏卵抗体のH
p接着阻止能を検討し、さらにHp高感受性ヘアレスマ
ウスを用いてHp定着阻止能を調べた。その結果、この
抗体がMKN 細胞へのHpの接着を効率よく阻止するとと
もに、動物実験においても有意な定着抑制効果を示し
た。従って、ウレアーゼは従来考えられていた酵素とし
ての作用以外に、接着にも関与していることが示唆され
る。
【0024】本発明者等は次いで、ビオチン化ウレアー
ゼがヘパリン、胃ムチン、あるいはNKN-45細胞に特異的
に付着することを明らかにし、また、このウレアーゼの
胃粘膜への接着が各種の硫酸基を含む多糖類により特異
的に抑制されることを見出した(特願平10−160531
号)。
【0025】さらに本発明者等は、スルホン酸基を含有
する強酸性イオン交換樹脂によってもウレアーゼの胃粘
膜への接着が特異的に抑制されること、及び、動物実験
においてもスルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂の
経口投与によって胃内のHp定着が用量依存的にかつ特
異的に抑制されることを実証した。また、このHp定着
抑制効果は胃酸分泌抑制剤の併用によりさらに高まるこ
とも実証した (以下の実施例参照) 。
【0026】本発明では、スルホン酸基を含む強酸性イ
オン交換樹脂がHp定着阻害作用を有することを確認し
たことに基づき、有用なHp定着阻害剤、並びに胃炎、
胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防剤および治療剤を提供
するものである。
【0027】スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
を胃炎、胃潰瘍等の予防剤、治療剤として用いる場合、
通常の製剤化方法により、この強酸性イオン交換樹脂を
そのままあるいは慣用の添加剤と共に、錠剤、顆粒剤、
散剤、カプセル剤、液剤などの経口用製剤とすることが
できる。添加剤には、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、
滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に
応じて使用する。
【0028】賦形剤としては、例えば、カルボキシメチ
ルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラ
チン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキス
トリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトー
ル、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カル
シウム等が使用できる。
【0029】結合剤としては、例えば、アラビアゴム、
アルギン酸ナトリウム、エタノール、エチルセルロー
ス、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロース
ナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラ
ガント、乳糖、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビ
ニルピロリドン等が挙げられる。
【0030】崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチ
ルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウ
ム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セル
ロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙
げられる。
【0031】滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、
ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、
タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙
げられる。
【0032】抗酸化剤としては、トコフェロール、没食
子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン (BHT)、ブ
チルヒドロキシアニソール (BHA)、アスコルビン酸等が
挙げられる。
【0033】さらに、必要に応じて、その他の添加剤ま
たは薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マ
グネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイ
ト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スク
ラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)や消化
酵素(ビオジアスターゼ、リパーゼ等)を加えてもよ
い。
【0034】本発明薬剤の投与量は、特に制限するもの
ではないが、スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
として、予防の場合には成人1日当たり50〜100 mg/k
g、治療の場合で成人1日当たり150 〜500mg /kgの範
囲が好ましい。
【0035】また、スルホン酸基を含む強酸性イオン交
換樹脂からなる消化性潰瘍の予防剤もしくは治療剤に、
さらに胃酸分泌抑制剤を添加することにより一層Hp除
菌効果を高めることができる。使用できる胃酸分泌抑制
剤としては、ファモチジン、ニザチジン、ロキサチジ
ン、ラニチジン、シメチジン等のH2インヒビターや、オ
メプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナト
リウムなどのプロトンポンプインヒビターがある。胃酸
分泌抑制剤の投与量は成人1日当たり20〜30mgが好まし
い。
【0036】次に、本発明を実施例によってさらに詳細
に説明するが、本発明はそれらによって制限されるもの
ではない。
【0037】
【実施例】
【0038】
【実施例1】スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
のHp除菌効果を以下の動物実験により調べた。
【0039】実験動物としてHp感染に対して最も高感
受性を示すヘアレスマウス(NS:Hr/ICR 系、財団法人動
物繁殖研究所、受託番号IAR-NHI-9701) (ATCC#72024)
を用いた。以下の表1に示すスケジュールに基づき動物
実験を行った。検体は攻撃2日前から屠殺時まで飲水に
溶解して自由飲水投与した。マウスの1日当たりの飲水
量は4〜8mlであった。攻撃菌株はヒト臨床材料から分
離されたNSP335株 (Cag A + およびVac A + ) を用い、
攻撃菌量はマウス当たり1×109 CFU とした。検体投与
終了時に各群のマウスを屠殺し、胃を摘出し、内容物を
除去した後、ボルテックスミキサーを用いてPBS (pH7.
2) で8回洗浄し、ホモゲナイザーで乳剤を作製し、H
p検出用材料とした。Hpの検出は乳剤をHp検出用培
地(ポアメデアHp分離培地、栄研化学)に接種し、ガ
スパック法で37℃、5日間培養し、コロニー数を計測す
ることによって行った。供試検体としてフラクトゲル
(登録商標) EMD SO3 --650(S) (メルク社) を用い
た。
【0040】
【表1】 表2にHpの除菌効果を示す。この表から明らかなよう
に、スルホン酸基を含有する強酸性イオン交換樹脂であ
るフラクトゲルはHpの胃内定着を抑制し、高い除菌効
果が得られた。これに対し、スルホン酸基を含有しない
多糖類(デキストラン)は無投与の対照群と同様、Hp
の定着を阻止しなかった。参考例として硫酸基を含む多
糖類(κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、デキスト
ラン硫酸)のHp除菌率も示す。
【0041】
【表2】 以上の動物実験から、スルホン酸基を含む強酸性イオン
交換樹脂はHpの胃内定着を効率よく抑制できることが
明らかとなった。これらの物質は抗生物質と異なり、薬
剤耐性の問題が生じないためHp除菌のための有用な方
法を提供しうる。
【0042】
【実施例2】スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂
と胃酸分泌抑制剤との併用効果を検討するために、供試
検体として、実験例2で用いたのと同様のフラクトゲル
と胃酸分泌抑制剤(H2インヒビター、プロトンポンプイ
ンヒビター) とを用いて動物実験においてHp除菌効果
を調べた。
【0043】実験動物は実施例1と同様のヘアレスマウ
スを用いた。NSP335株(1×109 CFU /マウス)をマウ
スに経口接種して1週間飼育した後、各種濃度で混餌し
たフラクトゲルとH2インヒビター(ファモチジン)また
はプロトンポンプインヒビター(オメプラゾール)を4
週間投与した。供試マウス数は各群とも10匹とした。投
与終了後2週間目に各群のマウスを屠殺し、胃を摘出
し、内容物を除去した後、粘膜部分全体をホモゲナイザ
ーで乳剤とし、Hp検出用材料とした。Hpの検出は乳
剤をHp検出用培地(ポアメディアHp分離培地、栄研
化学)に接種し、ガスパック法で37℃、5日間培養し、
コロニー数を計測することによって行った。
【0044】表3にHpの除菌効果を示す。本実施例に
おいては、Hpを接種して1週間後から検体を投与して
おり、しかも実施例1よりもフラクトゲルの投与量が少
ないが、胃酸分泌抑制剤を併用することより高い除菌率
を示した。
【0045】
【表3】 以上の動物実験から、スルホン酸基を含む強酸性イオン
交換樹脂と胃酸分泌抑制剤とを併用することによりフラ
クトゲル単独よりもさらに高い除菌効果を発揮しうるこ
とが明らかとなった。
【0046】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、ヘリコ
バクター・ピロリの胃粘膜への定着を阻止しうるHp定
着阻害剤が提供される。この定着阻害剤は、ヘリコバク
ター・ピロリ感染によって引き起こされる胃炎、胃潰瘍
等に対して安全で効果的な予防剤および治療剤として用
いることができる。本発明は、ヘリコバクター・ピロリ
の胃粘膜への接着に関与する因子およびそれに対応する
胃内の受容体を見出したことに基づいて、Hpの定着阻
害にスルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹脂を用いる
ものであるので、抗生物質とは異なり耐性菌を生じるこ
となく胃内のヘリコバクター・ピロリを特異的に除菌す
ることができ、従って、胃炎、胃潰瘍等を有効に抑制す
ることができる。また、その効果は胃酸分泌抑制剤を併
用するとさらに高まる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 修武 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡5丁目3番1号 日清製粉株式会社ファインケミカル研究 所内 Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 FA04 FA07 MA01 MA02 MA04 MA52 NA14 ZA68 ZB35

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
    脂を有効成分とするヘリコバクター・ピロリの定着阻害
    剤。
  2. 【請求項2】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
    脂が、スルホン化ポリスチレンジビニルベンゼン共重合
    体である請求項1記載の定着阻害剤。
  3. 【請求項3】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
    脂を有効成分とするヘリコバクター・ピロリ感染による
    胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防剤および治療
    剤。
  4. 【請求項4】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
    脂および胃酸分泌抑制剤を有効成分とするヘリコバクタ
    ー・ピロリ感染による胃炎、胃潰瘍および十二指腸潰瘍
    の予防剤および治療剤。
  5. 【請求項5】 スルホン酸基を含む強酸性イオン交換樹
    脂が、スルホン化ポリスチレンジビニルベンゼン共重合
    体である請求項3または4記載の予防剤および治療剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113274404A (zh) * 2020-06-28 2021-08-20 天翊生物医药科技(天津)有限公司 医用吸附树脂的新用途及幽门螺杆菌消除药物

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CN113274404A (zh) * 2020-06-28 2021-08-20 天翊生物医药科技(天津)有限公司 医用吸附树脂的新用途及幽门螺杆菌消除药物

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