JP2001030042A - 斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法 - Google Patents

斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法

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JP2001030042A JP11208257A JP20825799A JP2001030042A JP 2001030042 A JP2001030042 A JP 2001030042A JP 11208257 A JP11208257 A JP 11208257A JP 20825799 A JP20825799 A JP 20825799A JP 2001030042 A JP2001030042 A JP 2001030042A
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勝人 立木
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真一 佐藤
Atsuko Yoshizumi
温子 吉住
Satoru Kuramoto
覚 藏本
Shigeo Mori
栄夫 森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、
かつ中央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に行
えるという利点を有する、優れた鍛造工程を含む斜板式
コンプレッサ用斜板の製造方法を提供する。 【解決手段】 斜板式コンプレッサ用斜板1の製造方法
を、シャフト穴成形パンチ11と該パンチ11に対向す
る位置に凹部21を有する鍛造金型を用い、該鍛造金型
内に円柱の外形を有する鍛造素材3を納置し、キャビテ
ィ30内に鍛造素材3を塑性流動させて充満させ、必要
とされる製品形状をもつ製品部4と、製品部4の外部に
連続して付帯し鍛造素材3のうちの製品部4を形成しな
い余剰素材が凹部21に塑性流動することによって形成
される付帯部5とを一体に成形する鍛造工程を含むよう
に構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜板式コンプレッ
サを構成する部品の一つである斜板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】車両空調システム等に一般的に使用され
ているコンプレッサには、シャフトに対する斜板の傾斜
角が一定に設定された容量固定式のコンプレッサと、シ
ャフトに対する斜板の傾斜角が可変とされた容量可変式
のコンプレッサがある。いずれの斜板式コンプレッサ
も、回転駆動するシャフトとこれに同期回転する円盤状
の斜板を有し、シャフトを回転させることにより、斜板
に摺動するように取り付けられたピストンが所定の往復
運動を行う。ピストンはシリンダ内に嵌装されており、
ピストンがシリンダ内を往復運動することにより、吸
入、圧縮、排気行ってコンプレッサとして機能する。
【0003】ここに使用される斜板は、一般的に、図1
に示す形状をしている。図1(a)は、容量固定式コン
プレッサに用いる斜板の概略形状を示し、斜板1は、略
円盤形状なし、中央部のボス部1cにシャフトが挿通す
るための穴1aが設けられ、外周近くに摺動面となる周
辺部1bを有している。シャフト穴1aは略円盤状の部
分に対し所定の角度をもって斜めに設けられており、斜
板1はシャフトに対し一定の傾斜角を有するものとなっ
ている。また、図1(b)は、容量可変式コンプレッサ
に用いられる斜板の概略形状を示し、斜板2は、略円盤
状をなしており、外周近くに摺動面となる周辺部2bを
有し、中央部にボス部を有するとともに、その中心にシ
ャフトがその角度を変えつつ挿通することのできる比較
的大きい径のシャフト穴2aが設けられている。
【0004】上記斜板は、コンプレッサ部品としての機
能を果たすため、静的強度、疲労強度が高く、耐摩耗
性、耐衝撃性に優れ、低熱膨張係数を有すること等、種
々の特性が要求される。この要求を満たす材料として、
A390を始めとする過共晶Al−Si系合金が広く用
いられている。この過共晶Al−Si系合金を用いて斜
板を製造する方法としては、鋳造あるいは鍛造が考えら
れるが、鋳造では強度が低くまた各種特性においてもば
らつくことから、信頼性を考慮し、鍛造によって製造さ
れるのが一般的になっている。ところが、過共晶Al−
Si系合金は、初晶Siを含む組織となっており、比較
的脆くまた比較的変形能力が低く、加工程度が大きい鍛
造を施すと、割れ等の欠陥が発生しやすいものである。
【0005】従来、斜板の鍛造は、図6に模式的に示す
ような方法にて行っていた。図6に示すのは、固定容量
式コンプレッサ用の斜板の鍛造であり、必要とする外形
形状を成形するためのキャビティ30を形成する上下の
鍛造金型10、20を用い、この金型10、20内に素
材を納置し、加圧することにより素材をキャビティ30
内に充満させるように鍛造して斜板1を得るようにして
いた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
鍛造方法では、素材の塑性流動が効率的ではなく、キャ
ビティの隅々にまで素材が充満せず製品に欠肉を生じ
る、斜板の外周部に素材の被りが生じる、製品の各所に
割れが発生する等といった鍛造欠陥が発生しやすいもの
となっていた。また、鍛造時の塑性流動の効率がよくな
いことは、金型の摩耗をも引き起こし、金型寿命を短い
ものとしていた。さらに、従来の方法では、素材量のバ
ラツキによって精密な鍛造が困難で、後の機械加工等に
よる加工代の大きい製品しか鍛造できず、特に過大量の
素材が投入された場合、製品自体に不可避的なバリが生
じたり、金型が割れるといったトラブルを生じ易いもの
となっていた。
【0007】さらにまた、上記従来の鍛造方法では、中
央部に加工するシャフト穴を同時に鍛造するべくパンチ
(突起)を取付けた金型を用いた場合、塑性流動がより
複雑なものとなり、上述した鍛造欠陥、金型への負荷は
さらに増加するものとなっていた。したがって、シャフ
ト穴の同時鍛造は断念せざるを得ず、鍛造後に切削加工
等を行ってシャフト穴を穿孔しており、後工程への負
担、材料ロスが大きいものとなっていた。
【0008】本発明は、上記従来の鍛造方法の抱える問
題を解決すべくなされたものであり、余剰素材が流入す
る空間をキャビティ内に設け、また、鍛造時の素材の塑
性流動を適正なものとすることにより、鍛造欠陥が少な
く、金型への負担が小さく、かつ中央部に設けるシャフ
ト穴の加工までもが同時に行えるという利点を有する、
優れた鍛造工程を含む斜板式コンプレッサ用斜板の製造
方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の斜板式コンプレ
ッサ用斜板の製造方法は、中央部にシャフトが挿通する
ためシャフト穴を有し略円盤形状をなす斜板式コンプレ
ッサ用斜板の製造方法であって、衝合することでキャビ
ティを形成する第1の型と第2の型とからなり、該第1
の型または該第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴
を成形するためのシャフト穴成形パンチを有し、該第1
の型または該第2の型の他方は該パンチに対向する位置
に凹部を有する鍛造金型を用い、該鍛造金型内に円柱の
外形を有する鍛造素材を納置し該第1の型と該第2の型
とを衝合して加圧し、前記キャビティ内に該鍛造素材を
塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ
製品部と該製品部の外部に連続して付帯し該鍛造素材の
うちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流
動することによって形成される付帯部とを一体に成形す
る鍛造工程と、前記付帯部を前記製品部から除去する付
帯部除去工程とを含んでなることを特徴とする。
【0010】つまり、本発明の製造方法の最大の特徴
は、金型に凹部を設けることで余剰素材が流入する空間
をキャビティ内に存在させ、もうもう一方の金型のこの
空間に対向する位置に中央部のシャフト穴を成形するた
めのパンチを付設し、パンチをこの空間に向かって押し
進めるように素材を加圧して鍛造を行う鍛造工程にあ
る。この鍛造工程では、キャビティ内において、素材を
効率よく塑性流動させつつ充満させることが可能とな
る。
【0011】キャビティ内における鍛造素材の塑性流動
の適正化と余剰素材が流入する空間の存在により、本発
明の製造方法の鍛造工程では、割れ、被り等の鍛造欠陥
が極めて少なくかつ寸法精度の良好な製品を鍛造するこ
とができる。また、余剰素材が流入する空間は、余剰素
材の内さらに過剰な過剰素材を効率的に吸収できる空間
となり、鍛造金型への負担が少なく、型割れの危険性が
極めて小さくかつ型寿命を長くすることが可能となる。
さらに、本発明の製造方法は、それまで行い得なかった
斜板外形と中央部のシャフト穴との同時鍛造成形をも可
能とし、余剰素材から形成される付帯部を後に続く簡便
な方法によって除去するだけでよく、効率のよいかつ製
造コストの小さな製造方法となる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法が適用される対
象は、斜板式コンプレッサの構成部品の一つである斜板
である。斜板式コンプレッサは、前述のように、容量固
定のものと容量可変のものがあり、そのいずれに用いる
斜板にも適用できる。容量固定式コンプレッサの斜板は
図1(a)に示すような形状をしており、また、容量可
変式コンプレッサの斜板は図1(b)に示すような形状
をしている。いずれの斜板も、摺動面となる略円盤状の
周辺部を有し、かつ中央部にシャフトが挿通するための
シャフト穴を有している。固定式斜板は、周辺部を構成
する円盤と所定の角度をもったシャフト穴が形成され、
シャフト穴の周囲は、周辺部より厚肉となってボス部を
形成している。
【0013】斜板の材質は、特に限定するものではない
が、一般にアルミニウム合金が用いられ、本発明の製造
方法は、このアルミニウム合金製の斜板に対して特にそ
の効果を発揮する。用いることのできるアルミニウム合
金としては、亜共晶Al−Si系、過共晶Al−Si系
等を挙げることができる。コスト、機械的特性等のバラ
ンス等を考慮すれば、例えば、A390、A4032、
AC9種等のAl−Si系アルミニウム合金を用いれば
よい。
【0014】本発明の製造方法の鍛造工程で用いられる
鍛造金型は、衝合することでキャビティを形成する第1
の型と第2の型とからなる。例えば、竪型の鍛造機を用
いる場合は、上型と下型の2つの型になる。2つの型が
衝合することによって形成されるキャビティは、鍛造に
おいて素材が塑性流動して充満する空間となる。キャビ
ティは、上述した斜板の周辺部および中央部からなる製
品形状に合致する製品部と、後に詳しくする付帯部とを
同時に成形することのできる空間形状となっている。
【0015】鍛造金型を構成する第1の型または第2の
型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシ
ャフト穴成形パンチを有する。シャフト穴成形パンチ
は、製品に設けられるシャフト穴の内径と同じ外径をも
つ突起である。鍛造素材が、このパンチによって周辺部
に押し広がるように塑性流動させられる、あるいは、こ
のパンチに向かって塑性流動させられることによって、
製品の中央部に設けられるシャフト穴を成形する。
【0016】鍛造金型を構成する第1の型または該第2
の型の他方は上記シャフト穴成形パンチに対向する位置
に凹部を有している。この凹部は、シャフト穴成形パン
チの先端部と相俟って、所定の空間を形成する。この空
間は、必要とされる上記製品部を成形する空間と連続
し、製品として必要とされる部分外に存在する空間とな
る。この空間は、鍛造時に素材が塑性流動して入り込む
ことで、付帯部を成形する空間となる。
【0017】付帯部を形成する空間の存在により、素材
の塑性流動は活性化することになり、製品の中央部に設
けられるシャフト穴が容易に形成することができる。ま
た、塑性流動が活性化することは、鍛造時における素材
と金型との間の摩擦をも軽減できることとなり、金型の
摩耗の少ない鍛造工程が実現でき、さらに、割れ、被り
といった鍛造欠陥を防止することにもつながる。さらに
また、付帯部を形成する空間は、余剰素材のなかでもさ
らに過剰となる過剰素材を吸収することのできる空間と
なり、鍛造バリ等の発生を防止するばかりでなく、異常
な鍛造金型への負荷がなくなり、型割れ等のトラブルの
ない鍛造工程をも実現できる。
【0018】鍛造は、上記鍛造金型を用い、鍛造金型内
に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し第1の型と第2
の型とを衝合して加圧し、キャビティ内に該鍛造素材を
塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ
製品部と、製品部の外部に連続して付帯し鍛造素材のう
ちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動
することによって形成される付帯部とを一体に成形す
る。鍛造機は、製品に応じた能力を持つ既存の鍛造機を
用いればよく、特に限定するものではない。鍛造条件に
ついても一般に行う条件に従えばよい。なお、アルミニ
ウム合金の素材から鍛造する場合は、熱間鍛造によるの
がよく、360〜450℃の範囲に加熱した素材に鍛造
を施すのが望ましい。
【0019】金型に設ける凹部の形状は、塑性流動の活
性化、過剰素材の吸収といった機能を担保できるもので
あれば、特に限定するものではない。ただし、効率的な
塑性流動等を考慮して、凹部の形状を、錘状に凹む錘部
と、該錘部に通じ小さな断面積を有する導出路部とから
なるような形状とし、付帯部は、錘体と該錘体から延出
する軸体とを有する形状に成形するのが望ましい。
【0020】錐状に凹む錘部とは、いわゆるすり鉢状に
窪むような形状の凹部を意味する。このような凹部は、
製品部から遠ざかるにつれて断面積が小さくなるような
錘体形状の付帯部が成形される。換言すれば、この錘部
によって成形される付帯部は底面を製品部に向けた錘体
となる。このような形状の凹部に向かって素材が塑性流
動することにより、キャビティ内の素材の塑性流動がよ
りスムーズなものとなり、また過度に余剰となる素材を
必要としないというメリットがある。錘部を構成する錘
面は、円錐面、角錘面のいずれであってもよいが、より
スムーズな塑性流動を確保するためには円錐面であるの
が望ましい。
【0021】錘部に通ずる導出路部は、錘部をはみ出す
過剰素材を導くための通路である。キャビティ内に素材
を充満させるために素材全体にある程度の静水圧的な圧
力がかかる必要があることから、導出路部は断面積の小
さな通路であることが望ましい。Al−Si系合金を鍛
造素材として使用する場合、円形断面をもつ導出路部と
するときは、その通路径を1〜10mmφとするのが好
ましく、2〜4mmφとするのがより好ましい。なお、
導出路部に流入する過剰素材は、製品の付帯部の内の軸
体として成形される。
【0022】また、効率よく導出路に素材を導くために
は、導出路部は、その一端を、錘部の最深部、つまり錘
部を構成する錘面の頂にあたる部分に通じていることが
望ましい。さらに、導出路部によって軸体状の付帯部が
成形されるため、この軸体状の部分が金型から容易に離
脱できることが必要となる。そこでこの導出路部は、鍛
造後の製品を金型から離脱する方向に平行な方向に真っ
直ぐに設けることが好ましい。
【0023】導出路部の他端は、金型の外部に通じてい
ることが望ましい。導出路部の他端を金型外部に通じさ
せれば、例えば、2以上の素材が納置される等、極端に
過剰となる素材が金型内に納置された場合であっても、
過剰素材がこの導出路を通過して金型内に排出されるた
め、金型への負担を小さくできことになり、型割れ等の
一層の防止効果がある。
【0024】鍛造工程で金型内に納置する鍛造素材は、
製品となる斜板が略円盤状をしていることから、円柱の
外形を有する形状のものとする。本製造方法の鍛造工程
では、中央部のシャフト穴をも同時成形する。例えば、
可変容量式斜板のように、製品自体が比較的薄くかつ円
盤外周径に対するシャフト穴径が比較的大きい形状をも
つ斜板を鍛造する場合等には、シャフト穴成形パンチを
鍛造素材に据込むことによって、素材を周辺部に押し広
げるように塑性流動させて鍛造成形することができる。
このような態様の鍛造成形によれば、従来のシャフト穴
を成形しない鍛造の場合と比較して、小さい外径を有す
る円柱状の鍛造素材を用いることができる。鍛造素材は
長い棒状の素材から所定の長さに切断して作製される。
この場合外径の小さな棒状素材から鍛造素材を作製でき
ることとなり、切断精度のバラツキによる1つあたりの
鍛造素材の量のバラツキ小さくなるというメリットを有
する。
【0025】繰り返すが、例えば、可変容量式斜板のよ
うに、製品自体が比較的薄くかつ円盤外周径に対するシ
ャフト穴径が比較的大きい形状をもつ斜板を鍛造する場
合等には、シャフト穴成形パンチを鍛造素材に据込むこ
とで、このパンチによって素材が周辺部に押し広げられ
るように塑性流動して鍛造することができる。この場
合、シャフト穴成形パンチは、その先端を凸状にするの
が望ましい。先端を凸状にすることによって、この凸状
部が鍛造素材にまず当接し、素材の周辺部への押し広げ
をよりスムーズなものとすることができる。また、シャ
フト穴成形パンチの先端の凸部形状を対向する他方の型
の凹部形状に適合させることが望ましい。形成される付
帯部の体積を減少させることができ、余剰素材の少ない
効率的な鍛造を行うことができる。
【0026】本発明の製造方法では、鍛造素材を、その
円柱形状の1端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹
みを有するような形状のものとし、その凹みにシャフト
穴成形パンチが挿入されるようにその鍛造素材を鍛造金
型内に納置して鍛造工程を行うことができる。例えば、
固定容量式斜板のように、ボス部を有し、シャフト穴の
穴径が比較的小さく、シャフト穴の長さ(深さ)が長い
(深い)形状の斜板の製造に効果的な実施態様である。
【0027】シャフト穴が小さくかつ長い斜板をそのシ
ャフト穴をも同時に鍛造成形する場合、単純な(中実
な)円柱状素材を用い、鍛造金型に設けたシャフト穴成
形パンチによってその素材を周辺部に押し広げるように
鍛造することは、シャフト穴成形パンチにかかる負荷が
大きいばかりでなく、キャビティ内での素材の塑性流動
が適切なものとならない可能性がある。そこで本態様の
ように、鍛造素材にシャフト穴より大きな断面をもつ凹
みを設ける、いわば底付きパイプのような形状の鍛造素
材を用いることにより、シャフト穴成形パンチへの負担
軽減と素材の塑性流動の適切化を図ることができる。
【0028】凹みを設けた鍛造素材のその凹みは、鍛造
時に挿入されるシャフト成形パンチの周囲に、擬空間を
存在させる。そして、鍛造金型を衝合して素材を加圧す
ることにより、素材は周辺部に向かって押し広げられる
だけでなく、その擬空間を充てんするように中央部に寄
せられる方向にも塑性流動する。このような塑性流動が
可能となることにより、比較的小さな穴径の比較的長い
シャフト穴の同時鍛造成形が可能となる。
【0029】塑性流動をより適正なものとするために
は、鍛造素材に設ける凹みの空間体積と製品に成形され
るシャフト穴の空間体積との間に、ある関係が存在する
ことを、本発明者は見出した。その関係は、鍛造素材に
設ける凹みの空間体積をV0、製品に成形されるシャフ
ト穴の空間体積をVeをした場合に、その空間体積比
(V0/Ve)を1.1〜2.5の範囲とするのが望まし
いというものである。V0/Veの値が1.1未満の場合
は、鍛造時に適正な塑性流動を達成できなくなる可能性
があり、また、2.5を超える場合は、鍛造時に座屈し
たり、被り、欠肉等の鍛造欠陥を生じる可能性があるか
らである。
【0030】上述したような一端面にシャフト穴より大
きな断面をもつ凹みを有する円柱形状の鍛造素材を成形
するために、本発明の製造方法では、端面に前記凹みを
形成させるための凸部を有する予備鍛造金型を用い、前
記鍛造素材より小さな外径の円柱形状をした素材を、該
素材の一端面に該凸部を据込むようにして鍛造すること
により、該鍛造素材を成形する予備鍛造工程を行う実施
形態とすることもできる。
【0031】この予備鍛造工程で用いる予備鍛造金型
は、衝合することによりキャビティを形成する2つの型
の一方に凹みを形成させるための凸部(パンチ)を有す
るものである。予備鍛造されて成形される鍛造素材の外
径より小さな外径を有する円柱形状素材を予備鍛造金型
内に納置し、その円柱一端面に凸部を当接させて加圧
し、素材を押し広げるように塑性流動させてキャビティ
内に充満させて予備鍛造を行う。
【0032】上記凹部を形成しつつその凸部により半径
方向の外側に向かって素材を押し広げるという凸部の作
用により、キャビティに充満しようとする素材は、静水
圧的に、換言すれば素材全体に均一に圧力が加えられる
ような状態で、据込鍛造が行われる。このような方法の
予備鍛造により、より小さな外径の素材を使用すること
ができ、切断精度のバラツキによる素材1つ当たりの量
のバラツキを少なくすることができ、後に続く鍛造工程
の加工精度を高めることもできる。ちなみにAl−Si
系の合金を使用する場合、凹部を形成しないで素材径を
大きくするような予備鍛造を行う場合、予備鍛造後の鍛
造素材の80%以上の径をもつ素材しか使用できないの
に対し、本予備鍛造工程においては、30〜70%とい
う小さい外径を有する素材を使用することができる。な
お素材径が小さいほど、切断にかかる工数も小さくな
り、生産性も向上するものとなる。
【0033】この予備鍛造工程で用いる鍛造機について
も特に限定するものではなく、一般に用いるられている
鍛造機を使用できる。次工程となる鍛造工程を、別ステ
ージとして同じ鍛造機に組み込んで行うこともできる。
なお、アルミニウム合金の素材から予備鍛造する場合
は、熱間鍛造によるのがよく、360〜450℃の範囲
に加熱した素材に予備鍛造を施すのが望ましい。
【0034】次に本発明の製造方法では、シャフト穴と
は別の1以上の貫通穴を有する斜板を製造する場合、第
1の型または第2の型のいずれか一方に1以上の貫通穴
を成形するための1以上の貫通穴成形パンチを有し、第
1の型または第2の型の他方はそのパンチに対向する位
置にさらに1以上の凹部を有するような鍛造金型を用
い、それぞれの凹部に塑性流動することによって複数の
付帯部が形成されるように鍛造工程を行う実施形態とす
ることができる。
【0035】斜板は、シャフト穴以外に、油穴、重量軽
減のための肉抜き穴等、その周辺部等を貫通する貫通穴
を有する形状のものもある。このような斜板を製造する
場合、同時にこれらの貫通穴をも鍛造加工にて成形した
いときもある。この場合、上述した凹部を貫通穴形成パ
ンチに対向する位置に設け、貫通穴の数に応じた数の付
帯部を形成することによって、塑性流動を適切なものに
保ちつつ、鍛造欠陥等の発生の少ない斜板の製造を行う
ことができる。
【0036】さらに本発明の製造方法では、貫通穴をも
同時鍛造成形する場合において、円柱形状の1端面にシ
ャフト穴より大きな断面をもつ凹みおよびその貫通穴よ
り大きな断面をもつ1以上の凹みを有する鍛造素材を用
い、それぞれの凹みにシャフト穴成形パンチおよび貫通
穴成形パンチがそれぞれ挿入されるようにその鍛造素材
を鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う実施形態とする
こともできる。
【0037】一般に、油穴等の貫通穴は、その断面積が
小さな穴となる。小さな断面積をもつ貫通穴をパンチを
素材に押し込むようにして鍛造成形を行うと、そのパン
チに大きな負荷がかかること等が原因して、うまく成形
できない。そこで、貫通穴成形パンチの周囲についても
上述した擬空間を存在させ、小さな断面積の貫通穴であ
っても、素材の塑性流動を適切なものとすることによ
り、容易に同時鍛造成形ができることとなる。
【0038】斜板には、種々の形状があり、例えば、斜
板の周辺部を平板状に成形するのではなく、補強リブ等
の役割を果たすような凹凸部を有する形状に成形したい
場合もある。このような場合は、2つの型によって形成
するキャビティを、必要とする形状に合致した形状とす
ることによって可能となる。このように、従来から行わ
れている種々の鍛造方法を本製造方法に採り入れること
は可能であり、本製造方法の鍛造工程の実施形態は、上
述した実施形態に決して限定されるものではない。
【0039】上述した鍛造工程の後に行う付帯部除去工
程は、その方法を特に限定するものではない。例えば、
金型を用いたプレス切断、プラズマによる溶断、あるい
は旋盤等を用いた機械加工による切削等、いずれの方法
によっても行うことができる。同じ鍛造機を用い、別ス
テージにプレス切断金型を組み込み、鍛造工程に連動さ
せて行うことで工程を簡略化することもでき、また、機
械加工による切削の場合は、精密仕上げ加工と同時に行
うことによって工程数を省略することもできる。
【0040】
【実施例】以下に、図を参照しつつ、本発明の斜板式コ
ンプレッサ用斜板の製造方法、特にその中の鍛造工程に
ついて説明する。ただし、以下に掲げる実施例は、本発
明の製造方法の一例に過ぎず、本発明の製造方法は、決
して以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0041】〈第1実施例〉本実施例は、可変容量式の
斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(b)
に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴2a
が比較的大きな径を有する斜板に適した実施例である。
図2に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0042】製造する斜板2は、周辺部2bの厚さが
9.5mmで、直径97mmφの円盤状をしており、中
央部に直径47mmφのシャフト穴2aを有するもので
ある。この斜板2を鍛造するための鍛造素材3は、A3
90(Al−Si系合金、Al−17Si−4.5Cu
−0.6Mg)であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)
30mmの円柱形状をしたものである。なお、鍛造は、
鍛造素材3を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0043】使用する鍛造金型は、上型10と下型20
とから構成される。この上型10と下型20が衝合する
ことにより、素材が充満して製品を成形するためのキャ
ビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴2a
を成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられ
ている。なお、パンチ11の先端11aは、突出した凸
部を有する形状となっており、その凸部の形状は、後に
説明する下型20の凹部21に適合する(沿う)ような
形状となっている。また、下型20は、シャフト穴成形
パンチ11に対向する位置に、凹部21を有し、その凹
部21は、円錐面で形作られる錘部21aと、錘部21
aの円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延
び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21
bとから構成される。なお、錘部21aの円錐底面直径
は15mmφ、深さは10mmであり、導出路部21b
の直径は3mmφである。
【0044】鍛造素材3を下型20内の中央部に納置
し、上型10と下型20とを衝合するように接近させ
て、両型で鍛造用素材3を加圧する。上型10に設けら
れたシャフト穴成形パンチ11の先端11aが、鍛造素
材3にまず当接し、その後このパンチ11による加圧に
より、素材は、下型20に設けられた凹部21に押し付
けられつつ、周辺方向に押し広げられていくように塑性
流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャビティ30に
充満する。その後過剰素材は、加圧を続けることによ
り、凹部21を構成する導出路部21bに流入し、鍛造
を終了する。
【0045】鍛造された製品は、斜板2に必要とされる
製品部4、すなわち所定の厚さに形成された周辺部2b
を主体とする部分と、製品部4に連続した付帯部5とが
一体成形されたものとなる。なお、付帯部5は、凹部2
1の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ
錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成
形される。
【0046】本実施例の特徴は、シャフト穴成形パンチ
を素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げる
ように塑性流動させることにあり、また、パンチに対向
する位置に設けられた凹部により、その塑性流動を適正
なものにすることにある。本実施例の鍛造工程によれ
ば、素材は、静水圧的な加圧を受けることで、鍛造金型
のキャビティ内の隅々にまでスムーズに充満する。した
がって、欠肉の発生がなく、また、割れ、被り等の欠陥
のない製品が鍛造成形できる。さらに、塑性流動がスム
ーズなことで型の摩耗が軽減され、型寿命の長い鍛造工
程となる。さらにまた、過剰素材を吸収する空間を有す
ることで、金型に過度の負担がかかることなく、型割れ
等を防止することのできる鍛造工程となる。
【0047】また、シャフト穴成形パンチを素材に据込
むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流
動させることは、鍛造素材を細い径のものとすることが
できるというメリットを有する。ちなみに、A390の
円柱素材を用いて、単純に円柱高さ方向に押しつぶすよ
うに鍛造した場合の限界加工率(円柱が鍛造割れを発生
し始める加工率、すなわち健全な加工が可能な最大の加
工率をいい、加工率とは鍛造素材の円柱高さをH0、鍛
造後の製品高さをHとした場合の、(H0−H)÷H0×
100%で表される値をいう)は42%に過ぎない。し
かし、本実施例では、68%の加工率を有する押し広げ
鍛造が可能となっている。
【0048】〈第2実施例〉本実施例は、固定容量式の
斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(a)
に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴1a
が比較的大きな径を有し、シャフト穴の周りにボス部1
cが形成されている斜板に適した実施例である。図3
に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0049】製造する斜板1は、周辺部1bの厚さが1
3mmで、シャフト方向から見た直径が80mmφの略
円盤状をしており、中央部に直径15mmφのシャフト
穴1aを有し、ボス部1c直径は40mmφで、その厚
さが30mmの斜板である。この斜板1を鍛造するため
の鍛造素材3は、第1実施例の場合と同様、A390で
あり、直径60mmφ、長さ(厚さ)33mmの円柱形
状をなし、中央部に直径33mmφ、深さ23mmの凹
み3aを有している。ちなみに、成形されたの製品のシ
ャフト穴の空間体積Veと、凹み3aの空間体積V0との
空間体積比(V 0/Ve)は、2.4となっている。な
お、鍛造は、第1実施例の場合と同様、鍛造素材3を4
20℃に加熱し、熱間で行っている。
【0050】使用する鍛造金型は、上型10と下型20
とから構成される。この上型10と下型20が衝合する
ことにより、素材が充満して製品を成形するためのキャ
ビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1a
を成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられ
ている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11
に対向する位置に、凹部21を有し、その凹部21は、
円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐頂
(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20
の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構
成される。なお、錘部21aの円錐底面直径は17mm
φ、深さは12mmであり、導出路部21bの直径は
2.5mmφである。
【0051】鍛造素材3を、下型20内の中央部で上型
10に設けられているシャフト穴成形パンチ11が凹み
3aに挿入するような位置に納置し、上型10と下型2
0とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3
を加圧する。第1実施例の場合と異なり、加圧された素
材は周辺部に向かって塑性流動するだけでなく、凹み3
aの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流
動する。また素材はボス部1cを形成すべく盛り上がる
ようにも塑性流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャ
ビティ30に充満し、その後過剰素材は、加圧を続ける
ことにより、凹部21を構成する導出路部21bに流入
し、鍛造を終了する。
【0052】第1実施例の場合と同様、鍛造された製品
は、斜板1に必要とされる製品部4、すなわち所定の厚
さに成形された周辺部1bを主体とする部分と、製品部
4に連続した付帯部5とが一体成形されたものとなる。
なお、付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部2
1bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸
体5bとを有する形状に成形される。
【0053】本実施例の鍛造工程の特徴は、第1実施例
の場合における金型の凹部の作用に加え、シャフト穴よ
り大きな径の凹みを予め鍛造素材に設け、この凹みで形
成される擬空間を充てんするように素材を塑性流動させ
ることにある。比較的小さな穴径で深いシャフト穴を有
する斜板においても、素材の塑性流動を適切なものとす
ることができる。これにより、本実施例の鍛造工程は、
割れ、被り等の鍛造欠陥の発生のないスムーズな鍛造工
程となり、シャフト穴成形パンチに過大な負荷がかから
ず、金型の破損等を防止できる鍛造工程となる。
【0054】次に上記鍛造工程に供する鍛造素材3を製
造するための予備鍛造工程について説明する。図4に、
予備鍛造工程の様子を模式的に示す。なお、この予備鍛
造工程も、鍛造工程同様、素材を420℃に加熱して熱
間で行っている。
【0055】使用する予備鍛造金型は、鍛造工程におけ
る鍛造金型同様、上型40と下型50とから構成され
る。この上型40と下型50が衝合することにより、素
材が充満して製品を成形するためのキャビティ60を形
成する。上型40には、上記鍛造素材3の凹み3aを成
形するための凸部(凹み成形パンチ)41が設けられて
いる。
【0056】素材6は、直径55mmφ、長さ35mm
の円柱形状をなしている。この素材6を、その端面を下
にして、下型50内の中央部に納置し、上型40と下型
50とを衝合するように接近させて、両型で素材6を加
圧する。上型40に設けられた凹み成形パンチ41が、
素材6にまず当接し、その後このパンチ41による加圧
により、素材は、周辺方向に押し広げられていくように
塑性流動する。その後加圧を続けることにより、素材
は、キャビティ60に充満し、上記鍛造素材3が成形さ
れる。
【0057】本予備鍛造工程の特徴は、凸部(凹み成形
パンチ)を素材に据込むようにして、素材を周辺部に押
し広げるように塑性流動させることにある。第1実施例
の鍛造工程と同様に、本実施例の予備鍛造工程によれ
ば、素材は、静水圧的な加圧を受けつつ鍛造金型のキャ
ビティ内の隅々にまでスムーズに充満し、その塑性流動
は適切なものとなる。したがって、欠肉、割れ、被り等
の欠陥を生じずに、凹みを有する鍛造用素材が成形でき
る。さらに、塑性流動がスムーズなことで型の摩耗が軽
減され、型寿命の長い予備鍛造工程となる。
【0058】また、第1実施例の鍛造工程と同様、素材
を周辺部に押し広げるように塑性流動させることは、用
いることのできる素材を細い径のものとすることができ
るというメリットを有する。細径の素材を用いることが
できることは、素材の切断精度のバラツキによる鍛造素
材1つ当たりの素材量のバラツキを小さなものとでき、
さらに、素材の切断工数の削減にもつながる。本予備鍛
造工程では、56%の加工率を有する押し広げ鍛造を行
っている。
【0059】〈第3実施例〉本実施例は、第2実施例と
同様、固定容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板
についての実施例であるが、第2実施例と異なり、周辺
部に2つの貫通する油穴を有する斜板についての実施例
である。図5に、鍛造工程の様子を模式的に示す。な
お、鍛造は、他の実施例の場合と同様、鍛造素材を42
0℃に加熱し、熱間で行っている。
【0060】製造する斜板1は、第2実施例のものと同
じ外形形状を有し、周辺部1bのボス部1c近傍に、直
径が5mmφの2つの油穴を有している。この斜板1を
鍛造するための鍛造素材3は、第2実施例の場合と同
様、A390であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)2
6mmの円柱形状をなし、中央部に直径35mmφ、深
さ20mmの凹み3aを有し、さらにその径方向の外側
に、直径10mmφ、深さ15mmの2つの凹み3bを
有している。
【0061】使用する鍛造金型は、上型10と下型20
とから構成される。この上型10と下型20が衝合する
ことにより、素材が充満して製品を成形するためのキャ
ビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1a
を成形するためのシャフト穴成形パンチ11と、油穴
(貫通穴)1dを形成するための2つの油穴形成パンチ
(貫通穴成形パンチ)12が設けられている。また、下
型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に
凹部21を、さらに、それぞれの油穴成形パンチ12に
対向する位置にそれぞれの凹部21を有し、各凹部21
は、円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐
頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型2
0の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから
構成される。なお、シャフト穴成形パンチ11に対向す
る位置に設けられた凹部21の錘部21aの円錐底面直
径は17mmφ、深さは8mmであり、導出路部21b
の直径は2.5mmφである。また、油穴成形パンチ1
2に対向する位置に設けられた凹部21の錘部21aの
円錐底面直径は6mmφ、深さは4mmであり、導出路
部21bの直径は1.5mmφである。
【0062】鍛造素材3を、下型20内の中央部であっ
て、上型10に設けられているシャフト穴成形パンチ1
1が凹み3aに、また、それぞれの油穴成形パンチ12
がそれぞれの凹み3bに挿入する位置に納置し、上型1
0と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛
造用素材3を加圧する。第2実施例の場合と同様に、加
圧された素材は周辺部に向かって塑性流動するだけでな
く、凹み3aの周りに存在する擬空間を充てんするよう
にも塑性流動し、さらに凹み3bの周りに存在する擬空
間を充てんするようにも塑性流動する。
【0063】鍛造された製品は、斜板1に必要とされる
製品部4と、製品部4に連続した3つの付帯部5とが一
体成形されたものとなる。なお、他の実施例の場合と同
様、それぞれの付帯部5は、凹部21の錘部21aと導
出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連
続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0064】本実施例の鍛造工程の特徴は、シャフト穴
以外の貫通穴をも同時に鍛造成形することにある。それ
ぞれのパンチに過大な負荷をかけず、割れ、被り等の鍛
造欠陥の発生のないスムーズな鍛造成形が可能となるこ
とで、本実施例では、斜板の製造工程の一層の簡略化が
可能となる。
【0065】
【発明の効果】本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製
造方法は、鍛造工程を、金型に凹部を設けることで余剰
素材が流入する空間をキャビティ内に存在させ、もう一
方の金型のこの空間に対向する位置に中央部のシャフト
穴を成形するためのパンチを付設し、パンチをこの空間
に向かって押し進めるように素材を加圧して鍛造を行う
ように構成するものである。このように構成された鍛造
工程を採用することで、鍛造工程における素材の塑性流
動が適正化され、また、過剰素材が効率的に吸収される
こととなり、本発明の製造方法は、製品寸法精度が高
く、鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、かつ中
央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に鍛造成形
できるるという、極めて優れた製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法が適用される斜板式コンプ
レッサ用斜板の概略形状を示す。
【図2】 可変容量式コンプレッサ用斜板の製造例であ
る第1実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図3】 固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例であ
る第2実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図4】 固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例であ
る第2実施例の予備鍛造工程を模式的に示す。
【図5】 油穴を有する固定容量式コンプレッサ用斜板
の製造例である第3実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図6】 従来の製造方法の鍛造工程を模式的に示す。
【符号の説明】
1:容量固定式コンプレッサ用斜板 1a:シャフト穴 1b:周辺部 1c:ボス部 1d:油穴(貫通穴) 2:容量可変式コンプレッサ用斜板 2a:シャフト穴 2b:周辺部 3:鍛造素材 3a:凹み 3b:凹み 4:製品部 5:付帯部 5a:錘体 5b:軸体 6:素材(予備鍛造における) 10:上型(鍛造工程) 11:シャフト穴成形パンチ 11a:先端部 12:油穴成形パンチ(貫通穴成形パンチ) 20:下型(鍛造工程) 21:凹部 21a:錘部 21b:導出路部 30:キャビティ 40:上型(予備鍛造工程) 41:凸部(凹み成形パンチ) 50:下型(予備鍛造工程) 60:キャビティ
フロントページの続き (72)発明者 立木 勝人 愛知県丹羽郡大口町余野一丁目60番地 東 久株式会社内 (72)発明者 佐藤 真一 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 吉住 温子 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 藏本 覚 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 森 栄夫 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H076 AA06 BB50 CC31 4E087 AA04 AA05 AA08 AA10 CA11 CA14 CA33 CB01 EC01 EC12 EC22 EC37 EC46 EC54 ED31 HA11 HA82

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中央部にシャフトが挿通するためシャフ
    ト穴を有し略円盤形状をなす斜板式コンプレッサ用斜板
    の製造方法であって、 衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の
    型とからなり、該第1の型または該第2の型のいずれか
    一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形
    パンチを有し、該第1の型または該第2の型の他方は該
    パンチに対向する位置に凹部を有する鍛造金型を用い、
    該鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し該
    第1の型と該第2の型とを衝合して加圧し、前記キャビ
    ティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要と
    される製品形状をもつ製品部と該製品部の外部に連続し
    て付帯し該鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素
    材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付
    帯部とを一体に成形する鍛造工程と、 前記付帯部を前記製品部から除去する付帯部除去工程と
    を含んでなる斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記鍛造金型の凹部は、錘状に凹む錘部
    と、該錘部に通じ小さな断面積を有する導出路部とから
    なり、前記鍛造工程において、前記付帯部は、錘体と該
    錘体から延出する軸体とを有する形状に成形される請求
    項1に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記鍛造素材はその円柱形状の1端面に
    前記シャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有し、該凹
    みに前記シャフト穴成形パンチが挿入されるように該鍛
    造素材を前記鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う請求
    項1または請求項2に記載の斜板式コンプレッサ用斜板
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 端面に前記凹みを形成させるための凸部
    を有する予備鍛造金型を用い、前記鍛造素材より外径の
    小さな円柱形状をした素材を、該素材の一端面に該凸部
    を据込むようにして鍛造することにより、該鍛造素材を
    成形する予備鍛造工程をさらに含む請求項3に記載の斜
    板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記斜板は、前記シャフト穴とは別の1
    以上の貫通穴を有し、前記第1の型または前記第2の型
    のいずれか一方は該1以上の貫通穴を成形するための1
    以上の貫通穴成形パンチを有し、該第1の型または該第
    2の型の他方は該パンチに対向する位置にさらに1以上
    の凹部を有し、前記余剰素材がそれぞれの凹部に塑性流
    動することによって複数の付帯部が形成される請求項1
    または請求項2に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記鍛造素材はその円柱形状の1端面に
    前記シャフト穴より大きな断面をもつ凹みおよび前記貫
    通穴より大きな断面をもつ1以上の凹みを有し、それぞ
    れの凹みに前記シャフト穴成形パンチおよび貫通穴成形
    パンチがそれぞれ挿入されるように該鍛造素材を前記鍛
    造金型内に納置して鍛造工程を行う請求項5に記載の斜
    板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
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