JP2001028562A - 遅延波キャンセル方法 - Google Patents

遅延波キャンセル方法

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JP2001028562A JP2000131976A JP2000131976A JP2001028562A JP 2001028562 A JP2001028562 A JP 2001028562A JP 2000131976 A JP2000131976 A JP 2000131976A JP 2000131976 A JP2000131976 A JP 2000131976A JP 2001028562 A JP2001028562 A JP 2001028562A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 応答性のよいキャンセラを実現する。 【解決手段】 受信機のIF出力を取り込み、可変遅延
回路321、可変移相器322及び可変減衰器323で
遅延、移相及び減衰させる。周波数解析部326にて受
信信号を周波数解析し、その結果を演算制御部324に
て高速フーリエ変換し、その結果を以て予め作成してお
いたテーブルを参照することにより、遅延時間、移相量
及び減衰率の制御信号を発生させる。制御量の漸減漸増
手順が不要であること等により、回り込みキャンセラ3
0の応答性が向上する。回り込み成分だけでなくマルチ
パス成分もキャンセルできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、中継放送機等の装
置にて回り込み波、マルチパス波等の遅延波をキャンセ
ルするために実行される遅延波キャンセル方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】日本における地上波ディジタルテレビジ
ョン放送では、周波数軸上で隣接する他のキャリアとの
間に直交関係が成り立つよう多数のキャリアを密に並べ
る多重化方式、即ち直交周波数分割多重(OFDM:Ort
hogonal Frequency Division Multiplex)方式を採用す
る予定である。ガードの付加その他の工夫が施されてい
ることと相俟って、この方式には、マルチパス等の遅延
波に強く従って視聴者装置(受像機)にてゴーストが生
じにくい、という利点がある。そのため、単一周波数ネ
ットワーク(SFN:Single Frequency Network)の実
現による省周波数資源化が期待されている。即ち、現在
実施中の地上波アナログテレビジョン放送では、視聴者
装置におけるゴーストの発生を防ぐために、山地等を境
に相隣接する地域同士では、同一コンテンツの放送であ
っても互いに別々のチャネルを用いていた。これに対
し、OFDM方式による地上波ディジタルテレビジョン
放送では、多少のマルチパスが発生したとしても視聴者
装置でそれを好適に検出及び除去できるため、相隣接す
る地域で同一チャネルを用いた放送を行うことができ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】現在実施中の地上波ア
ナログテレビジョン放送でも、ある地域からこれに隣接
する地域への放送波の無線中継が行われている。そのた
めに用いられる装置乃至設備、即ち中継放送機は、基本
的構成要素として、中継すべき放送波を無線受信する受
信機と、この受信機により受信された放送波を無線送信
する送信機とを、備える。地上波アナログテレビジョン
放送の場合中継放送機における無線受信周波数と無線送
信周波数とが互いに異なる周波数であったが、地上波デ
ィジタルテレビジョン放送の場合SFNの実現のために
これらを互いに等しい周波数とする。
【0004】中継放送機における無線受信周波数と無線
送信周波数とを互いに等しくした場合に問題となるの
は、中継放送機が無線送信した放送波をその中継放送機
自身が無線受信してしまう現象、即ち回り込みである。
回り込み波はマルチパス波と同様放送波に対して遅延し
て到来する波であり、希望波不要波比(D/U比)の劣
化原因の一つである。特に、中継放送機の受信機から送
信機及び回り込み伝送路を介し受信機に戻るループの利
得が0dBを越えてしまうと、このループにて発振が生
じてしまい、正常な中継を行えなくなる。
【0005】本願出願人は、この回り込みによるD/U
比の劣化及び中継放送機の発振やマルチパス波によるD
/U比の劣化を防ぐために、これまでも各種の提案を行
っている。そのうち特願平9−264743号に実施形
態として記載した構成では、遅延波により受信信号中に
現れる特徴的波形に、着目している。即ち、放送波等の
希望波だけでなく回り込み波、マルチパス波等の遅延波
をも受信しているときには、中継放送機等信号を無線中
継する中継装置の受信信号には、希望波のみを受信して
いるときには現れないような特徴が現れる。この特徴
は、希望波に対する遅延波の干渉によって生じるもので
あると見なせる。例えば、希望波がOFDM方式やCD
MA方式に従い生成された信号である場合、希望波の占
有周波数帯域内における受信信号の周波数特性は、希望
波のみを受信している状態ではほぼ平坦となるのに対
し、遅延波をも受信している状態ではリプル波形を呈す
る。
【0006】従って、このリプル波形から得られる情報
を回り込み伝搬の理論式と照合することにより、希望波
に対する遅延波の遅延時間、位相差及び振幅比を求める
ことができる。希望波に対する遅延波の遅延時間、位相
差及び振幅比が正確にわかれば、それに基づき遅延時
間、位相及び振幅を制御しながらキャンセル信号を発生
させ受信信号に結合させることにより、希望波に対する
遅延波の干渉を補償又は抑圧することができる。特に、
キャンセル信号を発生させる装置(キャンセラ)の動
作、即ち遅延時間、位相及び振幅の制御に漸増/漸減制
御を導入することにより、理論に対する誤差を抑えられ
ることや、回り込みにより発振が生じている状態にも対
応できる等、各種の利点が生まれる。
【0007】しかし、このような漸増/漸減制御を行っ
たのでは、キャンセラの動作状態が最適な状態即ち遅延
波の影響を補償又は抑圧するのに過不足ない状態に到る
までに、時間がかかってしまう。本発明の目的は、本願
出願人が先に特願平9−264743号にて提案した遅
延波キャンセル原理を、本願出願人が特願平10−28
1714号で提案したキャンセラに応用し、更に、最適
な動作状態を早期に実現できるようにするための工夫を
施すことにより、希望波に対する遅延波の遅延時間、位
相差及び振幅比の変化に対し高速で応答できこれらの遅
延波を好適にキャンセルできるようにすること、希望波
のレベルや中継装置の動作状態の変化に追従即応できる
ようにすること、キャンセラを小規模回路・小規模ソフ
トウエアにて低コストで実現すること、希望波例えば放
送波を汚す原因となる信号例えばパイロット信号を付加
することなしにキャンセラを実現すること等にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
べく、本発明に係る遅延波キャンセル方法及びキャンセ
ラにおいては、キャンセラの出力信号により遅延波の影
響を補償又は抑圧するキャンセル制御に先立って、当該
キャンセル制御で利用できる情報を収集するための事前
処理や、キャンセル制御の初期制御状態を決定するため
の初期制御を、実行することとしている。
【0009】本発明にて着目している点の一つは、信号
を無線中継する中継装置の受信アンテナに遅延波が到来
していない状態でキャンセラの出力信号を帰還させ受信
信号に干渉させると(例えば、カプラを用いてキャンセ
ラの出力信号を受信信号と結合させると)、遅延波によ
る希望波への干渉が生じている状態と同様に、希望波の
みを受信しているときには現れない特徴が、希望波の占
有周波数帯域において受信信号に現れる点である。即
ち、キャンセラの出力信号はそもそも遅延波をキャンセ
ルするための信号であり、いわば遅延波と相補的な関係
にあるべき信号であるから、その信号単独でも遅延波と
同様の作用を受信信号に及ぼすことができる。
【0010】本発明にてキャンセル制御に先立ち実行す
る事前処理は、中継装置の送信アンテナから同じ中継装
置の受信アンテナへの無線による回り込みを例えば電磁
遮蔽等の手段で遮断した状態で、所定範囲内でキャンセ
ラの動作条件を多様に変化させながら、キャンセラをい
わば擬似回り込み波源として動作させる処理である。こ
の事前処理は、回り込み波を模擬する出力信号をキャン
セラにて発生させる動作と、発生させた出力信号を帰還
して中継装置の受信信号に干渉させる動作と、その干渉
の結果受信信号に現れた特徴を検出する動作と、この動
作により検出した特徴とその際のキャンセラの動作条件
とを対応付けて情報として収集する動作とを、含む処理
である。従って、この処理を実行することにより、キャ
ンセラの動作条件と受信信号の特徴とを対応付ける情報
が収集されることになる。
【0011】ここに、実際の回り込みが受信信号に及ぼ
す作用と、キャンセラの出力信号が受信信号に及ぼす作
用は、同質のものである。従って、実際に回り込みが発
生しているときには、受信信号から検出したその特徴
と、事前処理によって収集される情報とに基づきキャン
セラの動作条件を決定し、決定した動作条件に従いキャ
ンセラの動作を制御することにより、受信信号に現れて
いる回り込み波の影響を、キャンセラの出力信号が受信
信号に及ぼす作用によって、キャンセル(補償又は抑
圧)することができる。また、マルチパスも一次の回り
込みと同じく希望波に対して遅延波として作用すること
から、回り込みを遮断して行った事前処理の結果を利用
して、受信信号に現れているマルチパス波の影響をキャ
ンセルすることができる。即ち、本発明の如く事前処理
を行いその結果をキャンセル制御に利用すれば、回り込
みキャンセル向けに設計したキャンセラ及びキャンセル
手法によってマルチパスをもキャンセルでき、経済的で
ある。
【0012】更に、キャンセル制御に際しては、遅延波
が受信信号に及ぼしている影響のみならず、キャンセラ
の出力信号が受信信号に及ぼすであろう影響をも、反映
させる。即ち、本発明におけるキャンセル制御は、キャ
ンセラの出力信号を帰還して受信信号に干渉させる動作
と、その干渉の結果及び遅延波による干渉の結果受信信
号に現れた特徴からキャンセラの出力信号による干渉の
影響を除外して検出する動作と、この動作により検出し
た特徴と事前処理にて収集済の情報とに基づき、かつ、
干渉の結果受信信号に現れた特徴が補償又は抑圧される
こととなるよう、キャンセラの動作条件を決定する動作
と、その結果に従いキャンセラを制御する動作と、を含
むものである。このキャンセル制御を、事前処理により
キャンセル制御に必要な情報を収集した後回り込みの遮
断を解除した上で、繰返し実行することにより、回り込
み波、マルチパス波等の遅延波による干渉の影響を、受
信信号から除去し又は抑圧することができる。
【0013】このように、本発明によれば、キャンセラ
の動作状態に関する漸増/漸減制御なしで回り込みやマ
ルチパスをキャンセルできるため、キャンセル制御又は
これに先立つ初期制御を開始してから短時間の間に、キ
ャンセラの動作条件を遅延波のキャンセルに最適な条件
にすることができ、キャンセラの応答性が高まる。更
に、キャンセラの出力信号が受信信号に及ぼす影響をも
反映させて、キャンセル制御を行っているため、遅延波
の発生状況に変化が生じた場合でも、キャンセラをそれ
に応じて適切かつ迅速に変化させることができ、その面
でも応答性が高いキャンセラとなる。更に、キャンセラ
の動作条件と事前処理にて収集済の情報とに基づき、キ
ャンセラの出力信号により受信信号に現れるであろう特
徴を推定し、この推定の結果に基づき、受信信号に現れ
た特徴からキャンセラの出力信号による干渉の影響を除
外することができる。即ち、キャンセラの出力信号の影
響を除去する処理は、事前処理にて収集した情報を利用
することで、簡便に即ち格別の手順乃至装置の付加なし
に実現できる。
【0014】また、キャンセル制御を開始するに当たっ
ては、キャンセル制御の初期条件を何らかの形で(例え
ばランダムに、或いは所定値に)設定する必要がある。
キャンセル制御の初期条件を設定する処理は、次のよう
な初期制御に係る手順にて、簡便に実現できる。ここで
いう初期制御は、キャンセラの出力信号による受信信号
への干渉を遮断する動作と、その状態で受信信号に現れ
た特徴を検出する動作と、この動作により検出した特徴
と事前処理にて収集済の情報とに基づき、かつ、検出し
た特徴がキャンセル信号の干渉により補償又は抑圧され
ることとなるよう、キャンセラの動作条件を決定する動
作と、その結果に従いキャンセラを制御しその出力信号
を受信信号に干渉させる動作と、を含む手順であり、事
前処理を実行した後キャンセル制御を開始する前に実行
される。
【0015】また、本発明は様々な無線中継に適用でき
る。一例として、希望波がその占有周波数帯域内で遅延
波との干渉により周波数対振幅特性にリプル波形を発生
させる特性を呈するシステム、例えばOFDM方式の地
上波ディジタルテレビジョン放送やCDMA方式の携帯
電話等のシステム向けの中継装置に本発明を適用した場
合、回り込みやマルチパスの影響は、希望波の占有周波
数帯域内におけるリプル波形となって、現れる。従っ
て、受信信号を周波数解析することにより希望波の占有
周波数帯域からこのリプル波形を取り出し、取り出した
リプル波形を時間波形と見なしてフーリエ変換すること
により、希望波に対して遅延している成分を取り出すこ
とができる。取り出すことができる成分は、送信アンテ
ナから受信アンテナへの回り込み波、この回り込み波に
対しても遅延している高次の回り込み波、希望波より遅
れて受信アンテナに到来するマルチパス波、更にはキャ
ンセラの出力信号等に、対応する成分である。これら、
取り出された成分について、希望波に対して有している
遅延時間、位相差及び振幅比を検出する動作により、そ
の成分に係る信号乃至波が希望波に干渉した結果受信信
号に現れた特徴を、検出することができる。
【0016】キャンセラの配置としては、一般に、
(1)受信アンテナから中継装置内を経て送信アンテナ
に到る有線の信号経路上の所定点から受信信号を一部分
岐させ、この所定点から見て受信アンテナ寄りの他の所
定点にてその出力信号を中継装置の受信信号に結合させ
るIIR(無限インパルス応答)型と、(2)受信アン
テナから中継装置内を経て送信アンテナに到る有線の信
号経路上の所定点から受信信号を一部分岐させ、この所
定点から見て送信アンテナ寄りの他の所定点にてその出
力信号を中継装置の受信信号に結合させるFIR(有限
インパルス応答)型とがある。本発明を実施する際に
は、マルチパスによる干渉の高次成分を好適にキャンセ
ルするため、IIR型の配置を有するキャンセラを用い
るのが望ましい。IIR型のキャンセラでは、上述の所
定点から受信信号を一部分岐させ、分岐させた受信信号
を可変時間遅延、可変移相及び可変減衰若しくは可変増
幅することによりその出力信号を発生させ、上述の他の
所定点にてその出力信号を中継装置の受信信号に結合さ
せる。この場合に、上述の動作条件として扱われるの
は、キャンセラにおける遅延時間、移相量及び減衰率若
しくは増幅率である。また、IIR型のキャンセラとF
IR型のキャンセラとの間の相違点は、キャンセラへの
入力信号を受信信号から分岐する点と、キャンセラの出
力信号を受信信号に再結合させる点の位置関係にある。
IIR型では、再結合点が分岐点より受信アンテナ寄り
にあり、FIR型では送信アンテナ寄りにある。両者の
比較でいえば、IIR型には、回り込み波もマルチパス
波も好適にキャンセルできるという利点があり、FIR
型には、キャンセラを含むループが発振しえないという
利点がある。更に、本発明をFIR型のキャンセラで実
施する際は、受信信号に現れているリプル波形の検出を
上述の再結合後の受信信号から行うようにする。このよ
うな配置とすることで、受信信号へのキャンセラ出力の
干渉によるリプル波形の検出が可能になり、事前処理の
実行による情報の蓄積ひいてはそれを用いたキャンセル
制御が可能になる。
【0017】キャンセラにおける遅延時間、移相量及び
減衰率若しくは増幅率を上述の動作条件として扱う場
合、事前処理における情報の収集は、例えば、遅延時
間、移相量及び減衰率若しくは増幅率の組合せを、これ
らを各軸とする三次元空間内で三次元的に変化させなが
ら、実行する。これにより、キャンセラの動作条件とそ
の動作条件でキャンセルできる遅延波の性状とを対応付
けたマップ或いはテーブルを作成できる。その際に、上
述の三次元空間上の所定領域内に属する各点又は各微小
体積空間にて与えられる動作条件に、受信信号に現れて
いる特徴に関する情報を対応付けるという第1の方法を
採れば、キャンセル制御の際に実行する処理の量が比較
的少なくて済む。
【0018】また、キャンセラの動作条件たる遅延時
間、移相量及び減衰率若しくは増幅率のうちいずれか2
個を固定し残り1個を変化させながら、かつ固定する動
作条件を順繰りに変更しつつ、事前処理を実行するとい
う第2の方法を採れば、第1の方法を採った場合に比べ
て、事前処理における情報収集に要する時間が短くな
り、収集した情報を記憶しておくための記憶領域も小さ
くて済む。また、状況によっては、事前処理における情
報収集は第2の方法に従い行い、収集した情報をキャン
セル制御で直ちに利用できる情報となるよう加工する処
理をキャンセル制御に先立って行い、そしてキャンセル
制御は第1の方法に従い行う、という第3の方法も、採
用可能である。
【0019】更に、リプル波形を時間波形と見なしてフ
ーリエ変換する処理を当該リプル波形の離散フーリエ変
換例えば高速フーリエ変換(FFT)により行う場合に
は、離散フーリエ変換の際リプル波形に施す窓処理に使
用する窓関数の周波数応答を利用して、希望波に対する
遅延波成分及び/又はキャンセラの出力信号の遅延時間
を推定するようにするのが望ましい。周波数解析に先立
ち受信信号をサンプリングする際のサンプル点数が少な
い場合、この推定動作により、遅延時間の検出精度及び
検出分解能が向上する。
【0020】また、中継装置には、無線送信レベルをで
きるだけ一定に保つために、送信利得自動制御回路を設
ける。放送停止等に伴い受信アンテナによる主波の受信
が途絶えたときでも、送信利得自動制御回路は無線送信
レベルを保とうとするため、瞬時的に受信D/U比が劣
化し、受信アンテナから受信機、送信機、送信アンテナ
及び回り込み伝送路を介して受信アンテナに至るループ
が発振する可能性がある。ここに、発振時における受信
信号の周波数スペクトルは、リプル波形と言うよりはイ
ンパルスに近い波形となり、これをフーリエ変換したと
きにはリプル波形をフーリエ変換したときに比べて全帯
域にて高いレベルのフーリエ変換結果が得られる。従っ
て、受信信号の周波数スペクトルをフーリエ変換し、そ
の結果を希望波の占有周波数帯域に亘って積分し、その
結果得られた積分値が所定値を上回ったときに、受信ア
ンテナから中継装置内を経て送信アンテナに至る信号経
路上の任意の点にて当該信号経路を遮断するようにすれ
ば、上述した発振を自動停止させることができる。特
に、この遮断の手段として、受信アンテナから中継装置
内を経て送信アンテナに至る信号経路上にリレー等を設
けることにより、当該信号経路を積分値の上昇に応じ瞬
時的に遮断することができる。
【0021】更に、受信信号経路上の受信信号分岐点か
らキャンセル信号発生手段を経てキャンセル信号結合点
に到る信号経路上に、この送信利得自動制御回路におけ
る利得変化に同期してその利得が変化する送信利得変化
追従回路を設けることによって、希望波レベルが変化し
たときにキャンセラの動作をこれに即応させることがで
き、キャンセラの応答性が高まる。特に、送信利得変化
追従回路を、利得変化に伴う移相量の変化について送信
利得自動制御回路の特性と実質的に同一の特性を有する
自動利得制御回路とすることにより、送信利得自動制御
回路にて利得変化が生じたときにキャンセラ内のキャン
セル信号発生手段における移相量を変更する必要がなく
なる。また、送信利得制御回路から受信アンテナに至る
信号経路上にある点から受信信号(送信信号)の一部を
分岐してキャンセラに入力するようにすれば、送信利得
変化追従回路を用いることなしに同様の効果を得ること
ができ、更に回路規模も小さくなる。
【0022】他方、中継装置は一般に受信機及び送信機
から構成されているため、キャンセラの設け方として
は、受信機から取り出した信号に基づき発生させた信号
を受信機に戻す受信機側設置形態、送信機から取り出し
た信号に基づき発生させた信号を送信機に戻す送信機側
設置形態、受信機及び送信機の一方から取り出した信号
に基づき発生させた信号を受信機及び送信機のうち他方
に供給する送受信機間設置形態等が考えられる。送信利
得自動制御回路は通常は送信機内に設けられているた
め、送信利得制御回路から受信アンテナに至る信号経路
上にある点から受信信号(送信信号)の一部を分岐して
キャンセラに入力するのであれば、キャンセラは送信機
側か送受信機間に設置することになる。この場合におい
て、キャンセラを送信機側に設置することによって、装
置構成がよりコンパクトになり、送受信分離配置にも便
利である。即ち、D/U比を向上させるためには受信ア
ンテナと送信アンテナとの間の距離をできるだけ大きく
する方がよいため、受信アンテナ及びこれを用いて信号
を受信する受信機と、送信アンテナ及びこれを用いて信
号を送信する送信機とを、別々の場所に設けるのが好ま
しい。また、送信機特にその電力増幅器は多くの電力を
消費するため、電源回路は送信機近傍に設ける(受信機
へはIFケーブル等で電力を供給する)のが望ましく、
送信動作を監視するための各種監視回路も送信機側に設
けるのが望ましい。上述のようにキャンセラを送信機側
配置とすることにより、中継機を構成する又はこれに関
連する装置の多くが送信機側に集中配置されることにな
り、これらの装置を同一筐体に収納できる等、装置構成
がコンパクトになる。また、送信機側から離れた位置に
置かれた受信機側にキャンセラの出力信号等を伝送する
必要もなくなる。キャンセラ内での処理を全て中間周波
数で行うようにすれば、キャンセラへの局部発振信号入
力も不要になる。
【0023】更に、受信信号におけるD/U比変動を検
出する手段を設けておき、変化後のD/U比の下でもキ
ャンセル制御の実行により遅延波成分の影響を除去又は
抑圧できるよう、D/U比変動に応じ、事前処理の際に
収集した又はその後更新した情報を更新するようにすれ
ば、キャンセル信号発生手段における可変時間遅延、可
変移相及び可変減衰若しくは可変増幅動作即ちキャンセ
ル用の出力信号の生成動作を、より正確に実行可能にな
る。受信信号レベルの変化ひいては送信利得自動制御回
路の利得の変動に伴うD/U比変動は、受信信号を検波
し受信信号レベルを求める回路によっても、受信信号レ
ベル(≒希望波受信レベル)の形で検出できる。しかし
ながら、送信利得自動制御回路又は送信利得変化追従回
路たる自動利得制御回路からその制御電圧等を取り出
し、それによって表されている利得の変化を、受信信号
におけるD/U比変動と見なして検出するようにした方
が、回路構成が簡素になる。そして、D/U比変動の検
出結果に対するリプル波形の寄与分を求め、この寄与分
をD/U比変動から除去し、その結果に応じ、事前処理
の際に収集した又はその後更新した情報を更新すること
により、キャンセル制御の精度が高まる。
【0024】更に、フーリエ変換によって遅延波成分を
取り出すに際して、遅延時間等の検知分解能は受信信号
(希望波)の占有周波数帯域幅により制限される。例え
ば、占有周波数帯域幅が5.6MHzであるならば、分
解能は1/5.6MHz=179nsが限界であり、こ
れより精細な分解能は得られない。分解能を向上させる
には、フーリエ変換の対象となる信号の占有周波数帯域
幅を広げる必要がある。この占有周波数帯域幅を見かけ
上拡げる方法としては、複数の周波数チャネルをあたか
も一つの周波数チャネルであるかのように扱い、その周
波数解析により得られたリプル波形等をフーリエ変換す
る、という方法がある。即ち、複数の周波数チャネルを
用いて無線伝送を行うシステムで本発明を実施する際に
は、無線中継を行う際に、各周波数チャネル毎に中継装
置及びキャンセラを設けると共に、各周波数チャネルに
係る受信信号から周波数解析により取り出されたリプル
波形を周波数チャネル同士の占有周波数帯域の関係に従
い合成して、その結果得られた合成波形をフーリエ変換
する。これによって、フーリエ変換の対象となる信号の
占有周波数帯域を複数チャネル分に拡張できるため、遅
延時間等の検知分解能も向上する。例えば、同一占有周
波数帯域幅を有するn個の周波数チャネルがある場合、
これらn個の周波数チャネルを対象として上述の処理を
実行することにより、分解能は、1個の周波数チャネル
を対象として周波数解析及びフーリエ変換を実行したと
きに比べ、1/nという精細な分解能になる。また、周
波数チャネルと周波数チャネルとの間には一般にチャネ
ル間の分離のためのセパレーション帯域が設けられてお
り、また、周波数チャネルと周波数チャネルとの間に未
使用の周波数チャネルがあることもある。これら、セパ
レーション帯域や未使用の周波数チャネルの周波数帯域
幅が、合成の対象となるn個の周波数チャネルの周波数
帯域幅に対して十分狭ければ、これらセパレーション帯
域や未使用の周波数チャネルの存在を無視しても、高
々、フーリエ変換結果にノイズが重畳されるのみで、さ
して問題にはならない。また、セパレーション帯域や未
使用の周波数チャネルについてリプル波形の補間を実施
することにより、このノイズも抑えることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
関し図面に基づき説明する。
【0026】(1)中継放送機の構成 図1に、本発明の一実施形態に係る中継放送機の構成を
示す。この図に示す中継放送機は、受信機10、送信機
20及び回り込みキャンセラ30を有しており、放送波
を受信し定格送信レベルまで増幅して再送信する構成を
有している。放送波は、OFDM方式に則り多重化され
た信号であり、1チャネル当たり5.6MHzの帯域を
占有する。また、RFは470〜770MHz、IFは
37.15MHzとする。但し、これらの数値は一例で
あり、占有帯域やRF・IFの異なる他国・他地域の放
送システムにおいても、本発明を実施できる。本発明
は、更に、放送システムにおける中継に限定適用される
べきものではない。例えばCDMA(Code Division Mul
tiple Access)方式携帯電話では、OFDM方式地上波
ディジタルテレビジョンと同様、その占有周波数帯域内
で、遅延波との干渉によりリプルが生じる。即ち、これ
らのシステムでは、回り込み波やマルチパス波の影響
が、占有帯域内における周波数スペクトル分布の“規則
性ある乱れ”となって、現れる。後の説明からも明らか
なように、本発明は、当該“規則性ある乱れ”が生じる
性質を有するシステムにおける無線中継全般に、適用で
きる。
【0027】受信機10は、放送波を受信するためのア
ンテナ11と接続されている。受信機10は、アンテナ
11による受信信号を帯域外雑音の除去等のため濾波す
る入力フィルタ12、濾波された受信信号を局部発振信
号と混合し無線周波数(RF)から中間周波数(IF)
に変換するミキサ13、IFに変換された受信信号を帯
域通過濾波する表面弾性波(SAW)フィルタ14、並
びにRF又はIFの受信信号を増幅するアンプ15、1
6及び17を、有している。送信機20は、IFに変換
された受信信号を送信信号として入力しそのレベルを所
定値に自動調整する送信利得制御用の自動利得制御(A
GC)回路21、AGC回路21から出力される送信信
号を局部発振信号と混合しIFからRFに変換するミキ
サ22、IFに変換された送信信号を帯域通過濾波する
チャネルBPF23、濾波された送信信号を電力増幅す
るアンプ24、並びに雑音・歪等を除去すべく電力増幅
後の送信信号を濾波する出力フィルタ25を、有してい
る。送信機20は、出力フィルタ25を経た送信信号を
無線送信するためのアンテナ26に、接続されている。
受信機10及び送信機20は、各種の端子を備えてい
る。まず、受信機10に設けられているFILIN端子
はアンテナ11との接続のための、IFOUT端子は送
信機20との接続のための、端子である。送信機20に
設けられているIFIN端子は受信機との接続のため
の、RFOUT端子はアンテナ26との接続のための、
端子である。更に、受信機10及び送信機20双方に
(更に回り込みキャンセラ30にも)設けられているL
OC端子は、局部発振器40から出力される局部発振信
号を入力するための端子である。なお、図では局部発振
器40を送受信共用化して1個にしているが、送受信個
々に使用すべく、同一周波数で発振する複数個の局部発
振器を設けることもできる。
【0028】受信機10には、更にRFOUT端子及び
RFIN端子が設けられている。RFOUT端子は入力
フィルタ12の出力を受信機10の外部に取り出すため
の端子であり、RFIN端子は受信機10の外部から信
号を取り込みアンプ15に入力するための端子である。
本実施形態では、RFOUT端子は回り込みキャンセラ
30のRFIN端子に、RFIN端子は回り込みキャン
セラ30のRFOUT端子に接続されている。回り込み
キャンセラ30のRFIN端子とRFOUT端子との間
は回り込みキャンセラ30の内部で接続されているか
ら、入力フィルタ12によって濾波された受信信号は一
旦受信機10の外部に出され回り込みキャンセラ30を
経て受信機10の内部に戻りアンプ15に供給されるこ
ととなる。
【0029】また、受信機10のIFOUT端子は送信
機20のIFIN端子に直接接続されるのではなく、回
り込みキャンセラ30のIFIN端子に接続されてい
る。他方で、送信機20のIFIN端子は回り込みキャ
ンセラ30のIFOUT端子に接続されており、回り込
みキャンセラ30のIFIN端子とIFOUT端子との
間は回り込みキャンセラ30の内部で接続されている。
即ち、受信機10から出力されるIFの受信信号は、回
り込みキャンセラ30の内部を経て、送信機20に入力
されている。
【0030】回り込みキャンセラ30は、そのIFIN
端子とIFOUT端子の間に設けたカプラ31によって
IFの受信信号を一部分岐し、分岐した受信信号に基づ
きキャンセル信号生成回路32によってIFのキャンセ
ル信号を生成し、生成したキャンセル信号をミキサ33
にて局部発振信号と混合してIFからRFに変換し、R
Fに変換されたキャンセル信号をRFIN端子とRFO
UT端子の間に設けたカプラ34によりRFの受信信号
に結合させる構成を有している。キャンセル信号生成回
路32は、アンテナ26からアンテナ11への回り込み
により受信信号中に生じた回り込み成分に対し、同遅延
時間、同振幅、逆位相のキャンセル信号を発生させる回
路であり、図2に示す構成を有している。
【0031】中継すべき受信放送波(主波乃至希望波)
に対するキャンセル信号の遅延時間、位相差及び振幅比
は、それぞれ、図2中の可変遅延回路321、可変移相
器322又は可変減衰器323を用いて、演算制御部3
24により制御される。なお、可変減衰器323に代え
て可変利得増幅器を設けてもよい。また、カプラ31か
らカプラ34に至る信号経路上にはこれらの他にもレベ
ル変化等を発生させる回路があるが、当該レベル変化等
については予め既知であるか或いは制御電圧等から知る
ことができる。従って、当該既知の又は検出可能な情報
に基づき、可変遅延回路321、可変移相器322及び
可変減衰器323における遅延時間τ、位相差θ及び減
衰率Aを制御することによって、主波に対するキャンセ
ル信号の遅延時間、位相差及び振幅比を、制御すること
ができる。演算制御部324は、CPUやこれに付随す
る各種のプロセッサ、メモリ等により実現できる部材で
あり、AGC回路325や周波数解析部326からの信
号に基づき、これら可変遅延回路321、可変移相器3
22及び可変減衰器323に供給すべき制御信号を発生
させる。
【0032】この図の例では、メモリへの書込及び遅延
読出により信号を遅延させる回路等、ディジタル信号で
その遅延時間τを設定・制御できる回路を、可変遅延回
路321として用いている。また、可変移相器322と
しては、例えば、入力信号を2個の双平衡ミキサ(DB
M)に直交分配しこれらDBMにてI,Q制御信号と混
合された信号同士を同相合成する回路、即ち直交変調に
より入力信号を移相させる直交変調器を、用いることが
できる。回路構成及び仕様によっては、可変減衰器32
3の役割の一部又は全部を、この直交変調器により担わ
せることもできる。更に、この図の例では、可変移相器
322及び可変減衰器323としてアナログの電流又は
電圧によりその移相量θ及び減衰率Aを設定・制御でき
るタイプを用いているため、演算制御部324からこれ
らの部材に対し供給する制御信号をアナログ信号に変換
するD/A変換器329を設けている。なお、以上は一
例に過ぎず、これら可変遅延回路321、可変移相器3
22及び可変減衰器323は、他種の構成とすることも
できる。また、これらの回路の順番は変えてもよい。
【0033】図中、可変遅延回路321等の前段には、
AGC回路325及びカプラ327が設けられている。
AGC回路325は、カプラ31にて分岐されたIFの
受信信号のレベルを所定のレベルになるよう自動制御
し、それによって送信機20内のAGC回路21におけ
る送信利得の変化に追従する回路であり、好ましくは、
AGC回路21と同じ特性としておく。即ち、その利得
変化に伴い発生する移相量の変化分が同じ量になるよ
う、これらAGC回路21及び325を設計或いは選択
する。AGC回路325における利得制御状態は、その
内部で発生させている制御電圧から知ることができる。
演算制御部324は、この制御電圧を、AGC回路32
5の利得を示す情報として、A/D変換器328により
ディジタル信号に変換した上で取り込む。
【0034】また、カプラ327は、AGC回路325
を介して可変遅延回路321等に供給される受信信号を
一部分岐し、周波数解析部326に供給する。周波数解
析部326は、1個又は複数個のディジタル信号処理回
路(DSP)、スペクトルアナライザ等によって、構成
されており、回り込みやマルチパス更にはキャンセル信
号それ自体によって生じるリプル波形を取り出し、演算
制御部324に供給する。
【0035】本実施形態の特徴の一つは、周波数解析部
326やAGC回路325から得られる情報に基づき演
算制御部324が行う動作にある。そこで、次に、演算
制御部324が周波数解析部326等の回路と共に実行
する処理、即ちキャンセル信号の遅延時間、位相及び振
幅を制御するための周波数解析・演算制御について、原
理から説明する。
【0036】(2)キャンセル信号の生成及び制御の原
理 まず、回り込み(1波)が発生しそのD/U比が10d
Bとなっている状態で中継放送機の送信出力を計測し、
横軸を周波数、縦軸を振幅として図示すると、図3に示
すように主波占有帯域内にリプル波形が現れた特性にな
る。比較のため、アンテナ26からアンテナ11への回
り込みを電磁遮蔽等の手段で抑えD/U比=無限大にし
た状態で送信出力を計測し同様の形式で図示すると、図
4に示すようにリプル波形がほとんどない特性になる。
従って、このリプル波形は、回り込みによって生じたも
のである。
【0037】このリプル波形の発生は、図5に示すモデ
ルによって、説明できる。このモデルは、回り込み及び
マルチパスが発生しておらず回り込みキャンセラ30も
動作していないときの中継放送機の伝達関数H0(ω)
に、回り込みを表す帰還ループの伝達関数HL(ω)を
付加したモデルである。伝達関数H0(ω)は次の式
【数1】 H0(ω)=H0R(ω)・H0T(ω) =α・exp(−j(ωτα+θα)) …(1) 但し、H0R(ω):受信機10の伝達関数 H0T(ω):送信機20の伝達関数 α:受信機10及び送信機20合計の利得 τα:受信機10及び送信機20で生じる遅延時間[s
ec] θα:受信機10及び送信機20で生じる移相量[ra
d] ω:角周波数[rad/sec] で表すことができ、伝達関数HL(ω)は次の式
【数2】 HL(ω)=β・exp(−j(ωτβ+θβ)) …(2) 但し、β:回り込み利得(損失) τβ:主波に対する回り込み波の遅延時間[sec] θβ:主波に対する回り込み波の位相差[rad] で表すことができるから、このモデル全体の伝達関数H
L0(ω)は次の式
【数3】 HL0(ω)=H0(ω)/(1−H0(ω)HL(ω)) =α・exp(−j(ωτα+θα))/ {1−α・β・exp(−j(ω(τα+τβ) +(θα+θβ)))} …(3) によって表すことができる。この式によって与えられる
伝達関数HL0(ω)は、図3に示した計測結果と同様、
リプルを有する波形になる(図6)。図6は、θβ=
0、30、90[deg]のそれぞれについて、回り込
み=1波、D/U比=6dB、主波に対する回り込み波
の遅延時間=シンボル長/64の条件で、主波占有帯域
内の伝達関数H(ω)を計算することにより得られたも
のである。
【0038】図6に示したリプル波形をフーリエ変換し
絶対値を求めると図7〜図9に示す振幅特性が得られ、
また実部と虚部の比から位相特性を求めると図10〜図
12に示す特性が得られる。これらのうち図7及び図1
0はθβ=0[deg]のときの、図8及び図11はθ
β=30[deg]のときの、図9及び図12はθβ=
90[deg]のときの、特性を示している。ここに、
一旦回り込みが発生すると回り込みは1回では終わら
ず、受信信号中に入り込んだ回り込み成分の一部が再度
回り込んで受信信号中に入り込み、この再度の回り込み
成分の一部が再々度回り込み、…というように、多次回
り込みとなる。そのため、図7〜図12には、回り込み
を示すインパルス状の波形が等インターバル・等位相ピ
ッチで繰り返し(但し回り込みの繰返しに伴い減衰し
て)現れている。再度、再々度、…の回り込みは、初回
の回り込みをキャンセルすれば生じなくなるから、回り
込み波のキャンセルという目的は、図7〜図12に現れ
ている複数のインパルス状波形のうち初回の回り込みに
係る最も大振幅のピーク波形を消去乃至抑圧することに
より、達成できる。
【0039】多次回り込みに関する上掲の考察から明ら
かなとおり、図7〜図9に示した振幅特性におけるイン
パルス波形出現インターバルは、受信・中継すべき主波
に対する回り込み波の遅延時間τβである。同様に、図
10〜図12に示した位相特性におけるインパルス波形
出現ピッチは、受信・中継すべき主波に対する回り込み
波の位相差θβである。図7〜図12中の振幅軸から、
受信・中継すべき回り込み波の振幅を知ることができ
る。そして、これらの情報が与えられれば、図13に示
すように、受信信号中の回り込み成分に対し同遅延時
間、同振幅、逆位相の信号を生成することができ、その
信号即ちキャンセル信号を受信信号に結合させて、受信
信号中の回り込み成分をキャンセルすることができる。
【0040】より詳細に言えば次のようになる。まず、
回り込みキャンセラ30の伝達関数
【数4】 HC(ω)=γ・exp(−j(ωτγ+θγ)) …(4) 但し、γ:回り込みキャンセラ30の利得(損失) τγ:回り込みキャンセラ30内で生じる遅延時間[s
ec] θγ:回り込みキャンセラ30内で生じる移相量[ra
d] を帰還ループとして図5のモデルに付加したモデルを考
える(図14)。このモデル全体の伝達関数HLC(ω)
は、次の式
【数5】 HLC(ω)=H0(ω)/{1−H0R(ω)HC(ω)−HL(ω)H0(ω)} …(5) で表すことができる。回り込み成分をキャンセルするに
は、この伝達関数HLC(ω)が伝達関数H0(ω)の実
定数倍になるように、即ち
【数6】 HC(ω)=−K・H0T(ω)・HL(ω) …(6) 但し、K:実定数となるように、回り込みキャンセラ3
0の伝達関数HC(ω)を適応制御すればよい。ここ
で、送信機20の伝達関数H0T(ω)を次の式
【数7】 H0T(ω)=αT・exp(−j(ωταT+θαT)) …(7) 但し、αT:送信機20の利得ταT:送信機20内で生
じる遅延時間[sec]θαT:送信機20内で生じる
移相量[rad]で表すこととする。式(6)に示した
条件を、式(7)で導入した量を用いて表すと、
【数8】 γ=K・αT・β,τγ=ταT+τβ,θγ=θαT+θβ+π[rad]… (8)となる。
【0041】利得γは、AGC回路325の利得や可変
減衰器323における減衰率Aで定まる。遅延時間τγ
は、AGC回路325等で発生する遅延や可変遅延回路
321で発生させる遅延時間τで定まる。位相差θγ
は、AGC回路325等で発生する移相量や可変移相器
322で発生させる移相量θで定まる。更に、利得
αT、遅延時間ταT及び移相量θαTは、概ね定数であ
る(AGC回路21の利得変化分やこれに伴う移相量の
変化等を除く)。そこで、本実施形態では、カプラ31
によって分岐した受信信号を遅延、移相及び減衰させる
ことによりキャンセル信号を発生させる際、最適なキャ
ンセル信号を生成するために、カプラ31によって分岐
した受信信号を周波数解析部326がFFT(高速フー
リエ変換)等の処理により周波数軸上で解析して主波占
有帯域内におけるリプル波形を検出し(第1段のFF
T)、そのリプル波形を時間波形と見なして演算制御部
324が更にフーリエ変換して(第2段のFFT)回り
込み成分の遅延時間τβ等に関する情報を取り出してい
る。更に、その結果に基づき、演算制御部324は可変
遅延回路321における遅延時間τ、可変移相器322
における移相量θ及び可変減衰器323における減衰率
Aを制御し、それによって、キャンセルすべき回り込み
成分と同遅延時間及び同振幅で当該回り込み波に対して
逆位相のキャンセル信号を発生させる。そして、これを
周波数変換の上カプラ34にて受信信号に結合させるこ
とにより、回り込み波の影響即ちリプル波形を消去乃至
抑圧している(図13)。
【0042】この原理は、図15に示す送信出力計測結
果にて裏付けられている。この図は、1波回り込み、D
/U比=10dBの状態で、上述の原理に基づきかつ後
述の手順に従い回り込みキャンセラ30を動作させ、送
信出力を計測した結果を表している。一見して明らかな
とおり、図4に示したものと同様、リプル波形がほとん
ど存在しない特性であり、回り込みの影響が抑えられて
いることがわかる。
【0043】(3)事前処理:テーブル作成 上述の原理に基づき回り込み波をキャンセルするため、
本実施形態では、事前に、回り込み状態とリプル波形の
FFT結果とを対応付けるテーブルを作成する。このテ
ーブルを作成する際には、アンテナ26からアンテナ1
1への回り込みを電磁遮蔽や回路遮断等の手法で遮って
おき、その状態で、回り込みキャンセラ30をいわば擬
似回り込み波源として使用する。
【0044】具体的には、まず、演算制御部324にて
発生させる制御量の任意の組合せ(τ,θ,A)に基づ
き、可変遅延回路321、可変移相器322及び可変減
衰器323を制御する。その結果キャンセル信号生成回
路32から出力される信号は、ミキサ33により周波数
変換された上で、カプラ34にて受信信号に結合され
る。このとき受信信号に結合される信号は、回り込み波
が無線伝送路上で遅延、移相及び減衰を受けるのと同
様、回り込みキャンセラ30内で遅延、移相及び減衰を
受けているから、主波に対し回り込み波と同質の干渉作
用を及ぼす。従って、受信機10のIFOUT端子から
出力される信号には、回り込みが発生しておりかつ回り
込みキャンセラ30の動作が停止しているときと同様、
リプル波形が現れる。
【0045】このリプル波形を、キャンセル信号生成回
路32内の周波数解析部326にて取り出し、演算処理
部324にてFFTを施すことにより、キャンセル信号
の希望波への干渉状況に関する情報が得られる。これと
同じ干渉状況をもたらすであろう回り込み波が回り込み
に係る無線伝送路上で受けている遅延、移相及び減衰の
量(τβ,θβ,β)は、制御量の組合せ(τ,θ,
A)と対応付けることができる。
【0046】但し、回り込みキャンセラ30への入力信
号が送信機20を経ていないのに対し、回り込み成分は
送信機20から送信された信号である。また、回り込み
キャンセラ30内には、可変遅延回路321、可変移相
器322及び可変減衰器323以外にも、遅延、移相或
いは振幅変化をもたらす回路(AGC回路325等)が
ある。従って、(τβ,θβ,β)と(τ,θ,A)
は、対応関係は成り立っても、一般に一致しないことに
留意されたい。また、この対応関係もAGC回路21及
び325の動作によって崩れる。本実施形態において
は、テーブル作成中に受信レベル変化等が生じその結果
上記対応関係が崩れそうになったときや、後に説明する
ように、実使用中に受信レベル変化等が生じたため上記
対応関係が崩れそうになったときに、それを補償するた
めの処理を実行する。この処理については、後に、テー
ブル更新処理として説明する。
【0047】本実施形態におけるテーブル作成は、上述
した組合せ(τ,θ,A)を必要範囲に亘り網羅的に変
え、組合せ(τ,θ,A)毎にリプル波形の取り出し及
びそのリプル波形のFFTを行い、その結果得られた情
報を組合せ(τ,θ,A)と逐次対応付けることにより
行われる。その結果得られるテーブルは、図16(a)
に示す如き内容であり、図16(b)に示すように、遅
延時間τ,移相量θ,減衰率Aの各軸により定義される
三次元空間の微小領域に、リプル波形のFFT結果を対
応付けるものである。従って、回り込みキャンセラ30
を実使用しているときに得られるリプル波形のFFT結
果を以て、このテーブルを参照することにより、遅延時
間τ、移相量θ及び減衰率Aの制御目標を導出すること
ができる。なお、キャンセル信号は回り込みに係る成分
に対して逆位相でなくてはならないから、テーブル作成
の際に用いた位相差乃至移相量θについては、テーブル
作成・記憶に際して位相反転するか、でなければテーブ
ル参照に際して位相反転する必要がある。
【0048】また、主波に対する回り込み波の遅延時
間、位相差及び振幅比が互いに独立に定まるような伝送
路にて回り込みが発生している場合、移相量θ及び減衰
率Aを固定して遅延時間τを変化させたときのリプル波
形のFFT結果の変化、遅延時間τ及び減衰率Aを固定
して移相量θを変化させたときのリプル波形のFFT結
果の変化、並びに遅延時間τ及び移相量θを固定して減
衰率Aを変化させたときのリプル波形のFFT結果の変
化を、互いに重ね合わせることができる。従って、図1
6(a)に示したテーブル即ち組合せ(τ,θ,A)毎
にリプル波形のFFT結果を対応付けるテーブルは、必
ずしも必要でない。例えば、図17に示すように、遅延
時間τのみを変数として作成した部分テーブル、移相量
θのみを変数として作成した部分テーブル、並びに減衰
率Aのみを変数として作成した部分テーブルという3種
類の部分テーブルから構成されるテーブルを、作成・記
憶・使用するようにしてもよい。実使用に際しては、F
FT結果に最も近いスペクトルが現れる変数値を、各部
分テーブルから1個又は少数個ずつ選び、選んだ変数値
に基づき組合せ(τ,θ,A)を導出する。
【0049】遅延時間τ,移相量θ,減衰率Aを、各n
通りに亘り変化させて回り込みを模擬する場合、図16
(a)に示すテーブルを作成するには合計n3通りの組
合せ(τ,θ,A)それぞれについてリプル波形のFF
T結果の収集等を行わねばならない。これに対し、図1
7に示すテーブルを作成するには3×n回の情報収集で
よい。従って、図17に示すテーブルを用いるメリット
は、テーブル作成のための時間が短くて済むこと、作成
したテーブルを記憶しておくための記憶領域が小さくて
済むこと等である。反面、図17のテーブルを使用した
場合実使用時に各部分テーブルから得た情報を組み合わ
せ又は結合させる処理を実行しなければならないから、
図16(a)に示したテーブルを作成記憶し利用する方
が、実使用時の動作が高速になり、回り込みの状況の変
化に対し回り込みキャンセラ30が迅速に応答できる。
【0050】(4)実使用時の動作:初期制御 図18に、実使用時におけるキャンセル信号生成回路3
2特に周波数解析部326及び演算制御部324の動作
手順を示す。この手順は、上述したテーブル作成が行わ
れかつテーブル作成のための遮蔽状態が解除された上
で、起動される。
【0051】起動直後は、まず、減衰率Aが十分大きく
なるよう(実質的に無限大とみなせるよう)演算制御部
324が可変減衰器323を制御する、カプラ31から
カプラ34に到る受信信号乃至キャンセル信号伝送路上
にスイッチを設けこれを手動又は自動操作で開放する、
等の方法で、回り込みキャンセラ30にてRFの受信信
号にキャンセル信号等が結合されない状態を作り出す
(100)。この状態即ち回り込みキャンセラ30のキ
ャンセル動作がオフしている状態では、回り込みキャン
セラ30の動作の影響なしに、回り込み波の影響を検出
できる。
【0052】この状態で、キャンセル信号生成回路32
は検出サブルーチンを実行する(101)。検出サブル
ーチンは、回り込み等の影響により主波占有帯域内に現
れるリプル波形を検出しFFTを行うルーチンである。
その内容については後に図19を用いて説明する。
【0053】演算制御部324は、検出サブルーチンの
実行により得られた情報を以て、作成済の前述のテーブ
ルを参照することにより、遅延時間τ、移相量θ及び減
衰率Aの制御目標を決定する(102)。このとき、先
に述べたようにテーブルの作成及び記憶の際に位相反転
が施されていないのであれば位相反転処理を行い、既に
施されているのであれば行わない。演算制御部324
は、このようにして得られた制御目標が実現されるよ
う、可変遅延回路321、可変移相器322及び可変減
衰器323を制御する(103)。
【0054】(5)実使用時の動作:初期制御終了後 このようにして回り込みキャンセラ30によるキャンセ
ル信号生成及び受信信号への結合処理がオンした後は、
ステップ104〜106の動作が繰返し実行される。ス
テップ104は検出サブルーチンを実行するステップで
あり、このステップの実行によって、回り込み波の影響
とキャンセル信号の影響の双方を反映したFFT結果が
得られる。
【0055】ここに、前回ステップ103又は106を
実行してから現在までの間に回り込みの状況が何ら変化
していないのであれば、キャンセル信号による回り込み
成分キャンセル作用が働いた結果として、受信信号には
回り込み波の影響もキャンセル信号の影響も現れない。
しかし、実際には、回り込み波の発生状況は無線伝送路
の環境変化等により逐次変化するため、遅延時間τ、移
相量θ及び減衰率Aはいずれ回り込み成分の実態に見合
わない値になる。そこで、ステップ105では、演算制
御部324が、前回ステップ102又は106にて決定
した制御目標から、その制御目標に従い生成されたキャ
ンセル信号による希望波への干渉に関する情報を、作成
する。演算制御部324は、この情報に基づきキャンセ
ル信号による干渉の影響を、ステップ104で検出され
たスペクトル情報から除去することにより、回り込み波
により生じた干渉に関するFFT結果を得る。
【0056】演算制御部324は、ステップ105にて
得た情報を以て、前述のテーブルを参照し、その結果に
基づき遅延時間τ、移相量θ及び減衰率Aを制御する
(106)。キャンセル信号の影響を除去した後のFF
T結果に基づき遅延時間τ、移相量θ及び減衰率Aを制
御しているため、本実施形態に係る回り込みキャンセラ
30は、回り込みの状況の変化に対し自動的にまた迅速
に追随することができる。
【0057】(6)検出サブルーチン ステップ101及び104で実行される検出サブルーチ
ンでは、図19に示されるように、まず、周波数解析部
326によるリプル波形の検出と(200)、AGC回
路325における制御電圧の演算制御部324への入力
が(201)、実行される。演算制御部324にAGC
回路325の制御電圧を入力するのは、送信機20内の
AGC回路21の動作による回り込み状況の変化に追随
できるようにするためである。
【0058】送信機20内のAGC回路21は、アンテ
ナ26から常に定格送信レベルでの無線送信を行えるよ
うにするための回路である。例えば、アンテナ11によ
り受信される信号のレベルが低下したときには、AGC
回路21はこの低下分を検出し、利得調整能力上可能な
限りにおいて自身の利得を増大させ、後段の回路に供給
する送信信号のレベルを一定に保つ。しかし、このよう
な利得制御が行われると、回り込みに係るD/U比が変
化する。例えば、主波が弱まった結果受信レベルが10
dB低下すると、AGC回路21は自身の利得を10d
B増大させ、それによって従前の送信レベルを維持させ
る。送信レベルを維持させることで、アンテナ11にお
ける回り込み波の受信レベルも維持される。従って、主
波が10dB弱まったのに回り込み波が以前のままとな
るから、回り込みに係るD/U比が10dB低下するこ
ととなる。
【0059】AGC回路21の動作に伴うD/U比の変
化に対処するには、この変化を検出する必要がある。こ
こに、回り込みキャンセラ30の入力段にAGC回路3
25を設けておけば、AGC回路325における制御電
圧の値の変化即ちAGC回路325の利得の変化から、
回り込みに係るD/U比の変化を検出できる。演算制御
部324は、ステップ201にて入力したAGC回路3
25の制御電圧値から、回り込みに係るD/U比の変化
分或いは主波受信レベルの変化分を算出し(202)、
その結果に基づき、当該変化分を補償する方向に事前作
成されているテーブルの内容を修正・更新する(20
3)。
【0060】更に、AGC回路325における制御電圧
が当該AGC回路325への入力レベルに応じて生成さ
れていること、即ち制御電圧の生成に受信信号中の回り
込み成分が影響していることを考慮すると、AGC回路
325における制御電圧の値の変化から回り込みに係る
D/U比の変化を検出するに際して、回り込み成分の影
響を制御電圧から除去・補償するための処理を実行する
のが望ましい。即ち、回り込みキャンセラ30の動作に
より回り込み成分が十分キャンセルされている状態であ
れば問題ないが、十分といえるほどにはキャンセルされ
ていない状態では、AGC回路325における制御電圧
は回り込み成分(リプル波形)の影響を受けている。そ
のため、AGC回路325における制御電圧の変化を以
てそのままD/U比変化或いは主波の受信レベル変化と
見なすのでは、キャンセル信号のAGC回路325にお
ける入力レベル抑圧量即ち制御電圧は、真の受波受信レ
ベルに対する入力レベルの差と、回り込み量とで決まっ
ているため、生成動作の制御に誤差が生じる。この誤差
を解消・低減するには、例えば図20に示されるよう
に、まず主波占有帯域内の信号(リプル波形を含む)を
積分・平滑することにより、回り込み量を検出する。そ
の結果をAGC回路325の制御電圧から減じた結果に
基づき、回り込み成分の寄与分が打ち消されるよう、ス
テップ203における更新処理を実行する。但し、主波
への回り込み成分の干渉を受信レベル又はこれに換算可
能な形で算出又は評価できる方法が他にもあるのであれ
ば、それを用いてもよい。
【0061】また、先にも述べたが、AGC回路21及
び325の特性、特に利得変化に伴う移相量の変化を互
いに等しくしておく方がよい。但し、そうしない場合で
あっても、AGC回路21及び325の特性が既知であ
れば、利得変化に伴う移相量の変化の相違分を計算で求
め、その結果に基づき可変移相器322に対する制御信
号の値を調整することで、両AGC回路21及び325
の特性差に対処できる。また、AGC回路325に代え
て、カプラ31から可変遅延回路321等への入力レベ
ルを検出する検波回路等を用いることも可能である。
【0062】演算制御部324は、他方で、ステップ2
00にて周波数解析部326により取り出されたリプル
波形に、ハニング(Hanning)窓処理(204)及びFF
T(205)を施す。このFFTは、先に図7〜図12
を用いて説明したように、リプル波形を時間波形と見な
してフーリエ変換する処理である。それに先立つハニン
グ窓処理はリプル波形に係る信号を有限時間で打切る処
理の一種であり、その窓関数としてハニング関数を用い
るものである。ハニング関数及びこれを窓関数として用
いた打切り処理それ自体は、FFT等の処理を行う技術
分野では、従来から周知のものである。本実施形態で
は、単なるハニング窓処理を行うにとどまってはおら
ず、ハニング関数
【数9】 w(n)=1/2・(1−cos(2πn/(N−1))) (0≦n≦N−1) =0 (それ以外のn) …(9) 但し、n:サンプル番号 N:自然数 の周波数応答
【数10】 W(ω)=1/2・sin(ωN/2)/sin(ω/2) +1/4・{sin(ωN/2−Nπ/(N−1)) /sin(ω/2−π/(N−1)) +sin(ωN/2−Nπ/(N−1)) /sin(ω/2−π/(N−1))} …(10) を、主波に対する回り込み成分の遅延時間の正確かつ精
細な検出に、利用している。
【0063】ここに、ステップ200でリプル波形を検
出する際のサンプル点数が十分に多ければ、FFTによ
って、希望波に対する回り込み成分の遅延時間(図7〜
図9で言えば横軸上の位置)を、比較的正確にかつ高い
分解能で求めることができる。しかし、サンプル点数が
少ないと、FFT結果では、真の遅延時間以外の位置に
も回り込み成分が現れてしまう。そこで、本実施形態で
は、窓関数処理に使用する窓関数(ここではハニング関
数)の周波数応答を、各ピークを包絡するようFFT結
果にハニング関数の周波数応答を当てはめ、その周波数
応答のピークの位置を求めることにより、回り込み成分
の遅延時間を推定している。ステップ205では、この
原理に基づく処理も行う。なお、ハニング窓以外の窓例
えばハミング窓等を用いてもよい。
【0064】(7)対比及び効果 本願出願人が先に提出した特願平9−264743号で
は、送信機出力から受信機入力への帰還回路を備えた中
継放送機を開示している。特に、第4実施形態として開
示されている中継放送機で実行している回り込みキャン
セル方法は、本願出願人が特願平10−281714号
にて開示した中継放送機に、一部変形の上で応用するこ
とが可能である。その方法は、受信信号の周波数スペク
トル分布を検出し、検出した周波数スペクトル分布に現
れる規則性から、主波に対する回り込み波の遅延時間、
位相差及び振幅比を求める、というものである。より詳
細には、遅延時間、移相量及び減衰率という三種類の制
御量のうち、移相量及び減衰率を漸増/漸減させてい
く、という手法である。受信信号の周波数スペクトル分
布には先にリプル波形として説明したように規則性があ
るから、この方法は実施可能である。また、移相量及び
減衰率を漸増/漸減させていくようにしているため、理
論的に予想される主波の周波数スペクトル分布と実際の
主波の周波数スペクトル分布との間に差(誤差)があっ
ても、また中継放送機が回り込みにより発振状態に到っ
ていても、回り込み成分をキャンセルしまた発振状態か
ら脱出させることができる。反面、制御を開始してから
移相量及び減衰率が適正な値即ち回り込み成分を十分キ
ャンセルできる値に落ち着くまでに、漸増/漸減を繰り
返すため、時間がかかる。
【0065】これに対し、本願で説明した実施形態にお
いては、まず回り込みキャンセラ30を回り込みシミュ
レータとして用いて、リプル波形のFFT結果対制御量
の関係を直接又は間接的に与えるテーブルを作成し、し
かる後、主波占有帯域内におけるリプル波形にFFTを
施しその結果によりこのテーブルを参照して、遅延時間
τ、移相量θ及び減衰率Aという制御諸量を決定してい
る。そのため、漸増/漸減制御を行う必要がなく、回り
込み成分を好適にキャンセル可能なキャンセル信号を、
迅速に生成できる。また、理論的に予想される主波の周
波数スペクトル分布と実際の主波の周波数スペクトル分
布との間に差(誤差)があっても、また中継放送機が回
り込みにより発振状態に到っていても、回り込み成分を
キャンセルしまた発振状態から脱出させることができ
る。回り込みキャンセラ30の実現に必要な回路及びソ
フトウエアは、簡素なもので足り、低コストでの実施が
可能である。
【0066】また、上述した実施形態においては、リプ
ル波形のFFT結果からキャンセル信号の影響により生
じたものを除去し、残りを回り込み成分の影響により生
じたものと見なして、制御量たる遅延時間τ、移相量θ
及び減衰率Aの値を決定している。従って、主波に対す
る回り込み成分の遅延時間、位相差及び振幅比に時間変
化が生じた場合でも、これに対処し遅延時間τ、移相量
θ及び減衰率Aをより正確かつ適切な値に更新できる。
これは、回り込みの状況の変化に対する迅速な追従とい
う効果をもたらすものであり、また、テーブルの事前作
成及びその利用による応答性の向上と相俟って、特願平
9−264743号中の第4実施形態に比べて正確なキ
ャンセル、という効果をもたらしている。更に、キャン
セル信号の影響を除去して回り込み成分の影響を検出す
るという方法は、前回決定した遅延時間τ、移相量θ及
び減衰率Aに多少の誤差や不正確さがあった場合でもこ
れを早期に克服できる、というメリットにもつながる。
即ち、本実施形態に係る回り込みキャンセラ30は、特
願平9−264743号中の第4実施形態のそれに比べ
て、動作精度が低い(しかし安価な)部材にて実現でき
る。
【0067】更に、テーブルの事前作成及びその利用と
の関連では、既に説明したとおり、テーブル構成の工夫
による処理の高速化又はテーブル作成時間の短縮及び記
憶容量の節約等の効果が得られる。これらの効果は、特
願平9−264743号では得られない。また、送信機
20中のAGC回路21に対応して回り込みキャンセラ
30内にAGC回路325を設けその制御電圧を利用す
ることによりキャンセル信号の制御をD/U比の変動に
迅速に追従させることができる、という効果や、AGC
回路325の特性をAGC回路21のそれと一致させる
ことにより移相量θの制御を簡素化できる、という効果
や、AGC回路325の制御電圧から回り込み成分の寄
与分を除去してキャンセル信号生成制御に使用すること
により更に正確なキャンセルを実現できる、という効果
や、ハニング窓の周波数応答を利用した遅延時間推定に
よる遅延時間τの制御の正確化についても、特願平9−
264743号では実現されていない。
【0068】更に、上述した実施形態で回り込みキャン
セラ30として設けられている回路は、マルチパスキャ
ンセラとしても使用できる。まず、回り込みキャンセラ
30が動作しておらずかつマルチパスが発生している状
態は、図21に示すモデルにより表すことができる。こ
のモデル全体の伝達関数HM0(ω)は、次の式
【数11】 HM0(ω)=(1+HM(ω))H0(ω) …(11) と表すことができる。この式中、HM(ω)はマルチパ
スの伝達関数であり、次の式
【数12】 HM(ω)=δ・exp(−j(ωτδ+θδ)) …(12) 但し、δ:マルチパス利得(損失) τδ:主波に対するマルチパス波の遅延時間[sec] θδ:主波に対するマルチパス波の位相差[rad] で表すことができる。
【0069】このモデルに更に回り込みキャンセラ30
を付加すると、図22に示されるモデルとなる。このモ
デル全体の伝達関数HMC(ω)は、式(11)中の伝達
関数H0(ω)を受信機10、送信機20及び回り込み
キャンセラ30の系の合成伝達関数に置き換えたもので
あるから、
【数13】 HMC(ω)=(1+HM(ω))H0(ω)/(1−HC(ω)H0R(ω)) =H0(ω)/(1−HC(ω)H0R(ω)) +HM(ω)H0(ω)/(1−HC(ω)H0R(ω)) …(13) となる。
【0070】式(13)の右辺第1項と、式(3)は、
同一の形式を有している。従って、回り込み波ではなく
マルチパス波が到来している状態で回り込みキャンセラ
30を動作させると、受信信号には、あたかも回り込み
波が到来しているかのように、リプル波形が現れる。従
って、図18及び図19に示した手順を実行することに
より、受信信号中のマルチパス成分をキャンセルするこ
とができる。
【0071】また、回り込み及びマルチパスは同時に発
生することがあり、またいずれも複数波になることがあ
る。従って、回り込み及びマルチパスの発生は、より一
般的には、図23に示すような形のモデルで表現でき
る。このモデル全体の伝達関数HLMC(ω)は、式
(5)に示した回り込み時の伝達関数HLC(ω)に1+
M(ω)を乗じ、更に回り込みの伝達関数HL(ω)及
びマルチパスの伝達関数HM(ω)をそれぞれ複数波に
した次の式
【数14】 HLMC(ω)=(1+ΣHMi(ω))H0(ω) /{1−H0R(ω)HC(ω)−ΣHLi(ω)H0(ω)} …(14) 但し、HLi(ω):i番目の回り込み伝送路の伝達関数 HMi(ω):i番目のマルチパス伝送路の伝達関数 Σ:iについての総和 i:0以上の整数 で表すことができる。上述の実施形態は、この状況にお
いても有効である。
【0072】このように、同一の回路構成及び制御手順
の下に回り込み成分もマルチパス成分もキャンセルでき
る点は、上述の実施形態の大きな長所である。仮に、回
り込み成分をキャンセルするための回路或いはソフトウ
エアと、マルチパス成分をキャンセルするための回路或
いはソフトウエアとを、別々に準備・実装しなければな
らないとすると、中継放送機の構成が大きくなるし、従
ってその開発製造コストや部品コストも増大する。本実
施形態では、回り込みキャンセラ30として示した1個
の回路及びそのソフトウエアを以て、回り込み成分もマ
ルチパス成分もキャンセル可能であるため、中継放送機
を小形にしその価格を抑えることができる。
【0073】更に、上述の実施形態では、受信機10の
IFOUT端子からの出力を一部分岐し回り込みキャン
セラ30にて処理した上で受信機10のRFIN端子に
戻している。しかし、本発明は、回り込みキャンセラ3
0をこのような形で使用する例には、限定されない。本
発明は、IIR型の回路配置であれば、好適に実施でき
る。ここでいうIIR型の回路配置とは、受信機10及
び送信機20を構成するいずれかの回路の出力の一部を
取り出し、回り込みキャンセラ30がそれに基づきキャ
ンセル信号を生成し、このキャンセル信号をより前段の
回路への入力に結合させる回路構成を指す。その種の回
路構成下では、その回り込みキャンセラ30を回り込み
シミュレータとして用いてテーブルを作成し、作成した
テーブルを利用して回り込み成分及びマルチパス成分を
キャンセルすることができる。但し、回り込みキャンセ
ラ30への入力をどこから取り込み回り込みキャンセラ
30の出力をどこへ帰還させるかにより、伝達関数の式
の細部は、本願にて実施形態との関連で述べたものと
は、異なるものになる。
【0074】また、FIR型の回路配置、即ちIIR型
とは逆にアンテナ11寄りの点からアンテナ26寄りの
点へ信号を送る回路配置では、マルチパスをキャンセル
する際に高次成分が残存するため、IIR型の方がキャ
ンセル性能上有利である。例えば、特開平7−2358
84号公報においては、遅延波を含む入力信号に2段F
FT処理を施して、擬似的な遅延波成分を生成し、これ
を入力信号と結合させている。しかしながら、FIR型
の回路構成であるため、入力信号中に含まれている遅延
波成分にも遅延やレベル修正が施されてしまい、従って
遅延波を完全にキャンセルすることは原理上不可能であ
る。本発明をIIR型の回路として実現する場合、この
ような問題点は生じない。また、本発明をFIR型の回
路として実現する場合、信号分岐点の位置(図2で言え
ばカプラ31の位置)を信号結合点の位置(同じくカプ
ラ34の位置)より受信アンテナ11寄り(上流)にお
き、更に、キャンセラ出力と結合された後の受信信号か
らリプル波形を検出するよう、図2で言えばカプラ32
7に相当する部材を配置する。即ち、キャンセラ出力が
受信信号に干渉することにより生じるリプル波形を検出
できるような配置、言い換えれば事前処理等を実行でき
る配置とする。特開平7−235884号公報では、検
出点が信号分岐点及び信号結合点よりも受信アンテナ寄
りにあるから、本発明のFIR型実施形態は特開平7−
235884号公報に記載の構成とは異なる構成とな
る。この相違が、本発明の特徴の一つである事前処理
(テーブル作成)と関連する相違である点に、留意され
たい。
【0075】また、本発明に代わる発想としては、パイ
ロット信号を用いて回り込みやマルチパスの状況を検出
する方法もあり得る。例えば、予め、パイロット信号を
主波に挿入しておき、中継放送機では、このパイロット
信号が挿入されている放送波(主波)を受信する。中継
放送機では、受信後送信に先立ち受信信号を復調するこ
とによって、パイロット信号を検出する。回り込みやマ
ルチパスが生じていれば、本来の位置以外でもパイロッ
ト信号を検出でき、その結果から、回り込みやマルチパ
スの発生状況を知ることができるはずである。しかし、
この方法を実行するには復調器を設けねばならないた
め、中継放送機の回路構成が大きくなりまたそれに伴い
価格も上昇する。更に、パイロット信号の検出及びその
結果に基づくキャンセル信号の生成動作が、放送波の信
号構成に依存することとなるため、汎用性が低下する。
本発明例えば前述した実施形態では、こういった問題点
は生じない。
【0076】同じく、本発明に代わる発想としては、中
継放送機内で(例えばIF段の回路で)パイロット信号
を付加し、受信信号中に現れるパイロット信号即ち回り
込んだパイロット信号を検出する、という方法でも、回
り込みの状況を検出することができるはずである。受信
した放送波を復調せずにパイロット信号を付加するよう
にすれば、主波にパイロット信号を挿入しておく方法に
て生ずるような問題点は、発生しない。しかし、この方
法では、パイロット信号が付加された放送波が中継放送
機から送信されてしまうため、これを受信する他の中継
放送機、視聴者装置等で放送波を正常に復調できなくな
る可能性がある。本発明例えば前述した実施形態では、
そのような心配はない。
【0077】本発明の実施に際し、回り込みキャンセラ
30は、受信機10側に設置することも(図1参照)、
送信機20側に設置することも(図24参照)、送信機
20・受信機10間に設置することも、可能である。図
24に示すように送信機20側に設置し、送信機20か
ら入力した信号に基づきキャンセル用の信号を発生させ
るようにした方が、送受信分離配置に際して便利であ
る。ここでいう送受信分離配置とは、D/U比を向上さ
せる等の目的で、受信アンテナ11や受信機10と、送
信アンテナ26や送信機20を別々の場所に設け、受信
アンテナ11と送信アンテナ26の間の距離を拡げるこ
とである。送受信分離配置に当たっては、送信機20内
に設けられている増幅器特に増幅器24は電力増幅のた
め大電力を消費することから、図示しない電源回路は送
信機20に近接して配置し、受信機10への電力供給は
IFケーブル等にて行うようにすることが望ましく、送
信動作を監視する各種の監視装置も送信機20に近接し
て配置するのが望ましいことから、回り込みキャンセラ
30についても送信機20側に配置することとすれば、
送信アンテナ26近傍に配置される装置の収納等の面
で、便利である。
【0078】図24に示した装置構成は、図1及び図2
に示した装置構成に比べて、その他にもいくつかの相違
点を有している。まず、図24においては、AGC回路
21の出力がSAWフィルタ27及び増幅器28を経て
ミキサ22に入力されており、カプラ31A及び34は
それぞれミキサ22への入力端及びAGC回路34から
の出力端に設けられている。従って、カプラ31Aによ
り分岐され周波数解析部326及び可変遅延回路321
に入力される信号も、可変減衰器323から出力されA
GC回路21の出力に挿入される信号も、中間周波数の
信号である。従って、回り込みキャンセラ30内での処
理を全て中間周波数で行うことができ、回り込みキャン
セラ30の回路構成が簡素になると共に、回り込みキャ
ンセラ30に対して局部発振信号を供給する必要もなく
なる。なお、図24中の局部発振器40R及び40Tは
それぞれ受信機10又は送信機20に対応して設けら
れ、同期信号SYNCを基準として同期して、ダウンコ
ンバート用又はアップコンバート用の局部発振信号を発
生させる。また、図中、周波数解析部326及び演算制
御部324を1個のブロックにまとめて描いている。
【0079】更に、図24においては、AGC回路21
を経た信号が回り込みキャンセラ30中の周波数解析部
326及び可変遅延回路321に入力されている。従っ
て、図2に示した回路にて設けられていたAGC回路3
25を設けるまでもなく、送信機20から出力される信
号と、回り込みキャンセラ30から出力される信号の双
方に、AGC回路21における利得の変動やそれに伴う
移相量の変化が反映されることとなる。即ち、AGC回
路325を無くすことができ、回路構成がより簡素にな
る。また、AGC回路325を廃止したことに伴い、A
GC回路21における利得の制御電圧をA/D変換器3
28を介して演算制御部324に入力するようにしてい
る。これによって、図2に示した回路と同様、回り込み
等によるD/U比の変化に追随できる。加えて、図1及
び図2に示した構成ではカプラを31、34及び327
の3個使用しているが、図24に示した構成ではカプラ
は31A及び34の2個でよい。このように、図24に
示した構成は、送受信分離型に適していること、小型化
に適していること等の点で、図1及び図2に示した構成
に対して有利である。
【0080】また、図1及び図2に示した構成において
も、図24に示した構成においても、送信機20内にA
GC回路21を設けている。AGC回路21は、既に述
べたように、受信信号のレベルが変化してもできるだけ
送信信号のレベルが変化しないようにその利得が自動制
御される増幅器である。従って、放送停止等により受信
信号が急に途絶えた場合、AGC回路21の利得が急に
増大し、D/U比の劣化、顕著な場合には回り込みルー
プの発振が生じてしまう。この発振を停止させるには、
回り込みに係るループが発振していることを検知する手
段及びこの検知に応じて当該ループ上のいずれかの箇所
で信号伝送を遮断する手段を、設ければよい。図1及び
図2或いは図24に示した構成には、(τ,θ,A)の
制御を行うために、受信信号の周波数対振幅特性に現れ
る特徴(遅延波の影響によるリプル波形等)を検知する
機能が設けられているため、回り込みに係るループが発
振していることを検知する方法としては、この機能を利
用することが考えられる。具体的には、上述の原因によ
り回り込みループが発振しているときの受信信号の周波
数スペクトルはリプル波形ではなくインパルスというべ
き波形となっており、この波形をFFTし更に希望波の
占有周波数帯域全体に亘り積分することにより得られる
値は、発振していないときのそれに比べて高くなる。そ
こで、図25に示すように、当該積分値を所定値と比較
し前者が後者を上回ったときに“発振”と判定する監視
部330を、演算制御部324内等に設ける。更に、検
知に応じて信号伝送を遮断する手段としては、監視部3
30における“発振”との判定に応じて信号伝送を遮断
するリレー35等を、受信アンテナ11から送信アンテ
ナ26に至る中継装置内のいずれかの箇所に設ける。リ
レー35による信号伝送の遮断は瞬時的に行うことがで
き、またその遮断により回り込みが立たれるため上述の
原因による発振は直ちに停止される。なお、図25は、
図24に示した構成を前提として描いた図であるが、同
様の機能を図1及び図2に示した構成に設けることも可
能である。
【0081】更に、図3等を用いて行った先の説明は、
地上波ディジタルテレビジョン放送の周波数チャネル1
個についてのものである。地上波ディジタルテレビジョ
ン放送波の中継に際しては、例えば、周波数チャネル毎
に、受信機10、送信機20及び回り込みキャンセラ3
0を設ける。この場合に、周波数チャネル1個の帯域幅
が5.6MHzであることから、FFTにより遅延時間
等を検出する際の分解能は、最良で1/5.6MHz=
179nsである。しかし、21ch〜28chという
合計8個の相隣接した周波数チャネルを例として図26
に示されているように、周波数チャネルと周波数チャネ
ルの間のセパレーション帯域を挟んではいるものの、正
規化周波数=0〜1024の帯域即ち8チャネル分の帯
域全体に亘って、ほぼ連続したリプル波形が現れる。従
って、周波数チャネル毎に行った周波数解析の結果を周
波数軸上における各周波数チャネルの配置に従って合成
し、その結果得られた波形をFFTの対象とすることに
より、図26に示した例では8チャネル分の(一般的に
はnチャネル分(n:2以上の自然数)の)周波数帯域
をあたかも1個の周波数チャネルであるかのように扱
い、遅延時間等の検知分解能を高めることができる。地
上波ディジタルテレビジョン放送では各周波数チャネル
が400kHzのセパレーション帯域を含めて5.6M
Hz+400kHz=6MHzの帯域幅を有しているた
め、図26に示した8個のチャネル全体ではほぼ6×8
=48MHzの帯域を占有することになり、従って遅延
時間等の検知分解能は1/48MHz=20.8nsま
で改善される。即ち、複雑な空間伝搬を介する遅延波の
影響を精度よくキャンセルことが可能になる。特に、遅
延波が2波以上到来しておりその時間間隔が短い場合に
も、遅延波の影響を好適にキャンセルできる。
【0082】なお、この種の処理を実現するには、例え
ば、図27及び図28に示されるように、各回り込みキ
ャンセラ30中の演算制御部324の機能及び上述の合
成処理に関する機能を有する演算制御部50を設ける。
図中、各部材に付されている添え字1,2,…nは周波
数チャネルに対応している。また、通常、セパレーショ
ン帯域は周波数帯域に比べて狭い帯域であることから、
合成・FFTに際して無視することもできる。必要であ
れば、セパレーション帯域に属する部分の波形を補う補
間を行うことにより、FFT結果に現れるノイズが減少
する。同様の議論は、一部の周波数チャネルを使用して
いない場合にも適用できる(例えば、21ch〜23c
h及び25ch〜28chを使用しているが、24ch
を使用していない場合)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る中継放送機の構成
を示すブロック図である。
【図2】 この実施形態における回り込みキャンセラの
構成を示すブロック図である。
【図3】 D/U比=10dBで回り込みが発生してい
るときに、受信信号の周波数対振幅特性を測定した結果
を示す図である。
【図4】 D/U比=無限大即ち回り込みが発生してい
ないときに、受信信号の周波数対振幅特性を測定した結
果を示す図である。
【図5】 中継放送機の送信側から受信側への回り込み
モデルを示す図である。
【図6】 D/U比=6dBで1波回り込みが生じたと
仮定し、主波に対する回り込み波の位相差を3通りに変
化させて、算出した主波占有帯域内における周波数対振
幅特性を示す図である。
【図7】 図6に示した特性に現れているリプル波形特
に位相差が0[deg]の場合の波形を高速フーリエ変
換して得られる遅延時間対振幅特性を示す図である。
【図8】 図6に示した特性に現れているリプル波形特
に位相差が30[deg]の場合の波形を高速フーリエ
変換して得られる遅延時間対振幅特性を示す図である。
【図9】 図6に示した特性に現れているリプル波形特
に位相差が90[deg]の場合の波形を高速フーリエ
変換して得られる遅延時間対振幅特性を示す図である。
【図10】 図6に示した特性に現れているリプル波形
特に位相差が0[deg]の場合の波形を高速フーリエ
変換して得られる位相特性を示す図である。
【図11】 図6に示した特性に現れているリプル波形
特に位相差が30[deg]の場合の波形を高速フーリ
エ変換して得られる位相特性を示す図である。
【図12】 図6に示した特性に現れているリプル波形
特に位相差が90[deg]の場合の波形を高速フーリ
エ変換して得られる位相特性を示す図である。
【図13】 本実施形態における回り込み波キャンセル
原理を概念的に示す図である。
【図14】 図5に示したモデルに回り込みキャンセラ
を付加したモデルを示す図である。
【図15】 回り込みが生じている状態で回り込みキャ
ンセラによりキャンセル信号を発生させたときに、受信
信号の周波数対振幅特性を測定した結果を示す図であ
る。
【図16】 事前処理にて作成するテーブルの一例を示
す図であり、特に(b)は(a)に示したテーブルの構
成を概念的に三次元化した図である。
【図17】 事前処理にて作成するテーブルの他の一例
を示す図である。
【図18】 回り込みキャンセラのキャンセル信号生成
回路特に周波数解析部及び演算制御部の動作手順を示す
フローチャートである。
【図19】 図18に示した手順で呼び出す検出サブル
ーチンの内容を示すフローチャートである。
【図20】 主波に対する回り込み波の干渉によるAG
C制御電圧寄与分をキャンセルする方法を示す図であ
る。
【図21】 受信信号にマルチパス成分が含まれている
状態を、主波及びマルチパス伝送路を含めて、モデル化
して示す図である。
【図22】 図21に示したモデルに回り込みキャンセ
ラを追加した図である。
【図23】 多波回り込み及び多波マルチパスが生じて
いる状態をモデル化して示す図である。
【図24】 本発明の他の実施形態に係る中継放送機の
構成を示すブロック図である。
【図25】 本発明の更に他の実施形態における回り込
みキャンセラの構成を示すブロック図である。
【図26】 複数周波数チャネルに亘るリプル波形の現
れ方を示す図である。
【図27】 本発明の更に他の実施形態に係る中継放送
機の構成を示すブロック図である。
【図28】 本発明の更に他の実施形態における回り込
みキャンセラの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 受信機、11 受信アンテナ、20 送信機、2
1,325 AGC回路、26 送信アンテナ、30
回り込みキャンセラ、31,31A,34,327 カ
プラ、32 キャンセル信号生成回路、321 可変遅
延回路、322可変移相器、323 可変減衰器、32
4 演算制御部、326 周波数解析部、A 可変減衰
器の減衰率、H0(ω) 中継放送機の伝達関数(回り
込みキャンセラ非動作時)、H0R(ω) 受信機の伝達
関数、H0T(ω) 送信機の伝達関数、HC(ω) 回
り込みキャンセラの伝達関数、HL(ω) 回り込みの
伝達関数、HM(ω) マルチパスの伝達関数、τ 可
変遅延回路の遅延時間、θ可変移相器の移相量。

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回り込み波を模擬する出力信号をキャン
    セラにて発生させる動作と、発生させた出力信号を帰還
    して中継装置の受信信号に干渉させる動作と、その干渉
    の結果受信信号に現れた特徴を検出する動作と、この動
    作により検出した特徴とその際のキャンセラの動作条件
    とを対応付けて情報として収集する動作と、を含む事前
    処理を、信号を無線中継する中継装置の送信アンテナか
    ら同じ中継装置の受信アンテナへの無線による回り込み
    を遮断した状態で、所定範囲内でキャンセラの動作条件
    を多様に変化させながら実行し、 キャンセラの出力信号を帰還して受信信号に干渉させる
    動作と、その干渉の結果及び遅延波による干渉の結果受
    信信号に現れた特徴からキャンセラの出力信号による干
    渉の影響を除外して検出する動作と、この動作により検
    出した特徴と事前処理にて収集済の情報とに基づき、か
    つ、干渉の結果受信信号に現れた特徴が補償又は抑圧さ
    れることとなるよう、キャンセラの動作条件を決定する
    動作と、その結果に従いキャンセラを制御する動作と、
    を含むキャンセル制御を、事前処理によりキャンセル制
    御に必要な情報を収集した後回り込みの遮断を解除した
    上で、繰返し実行することにより、 回り込み波、マルチパス波等の遅延波による干渉の影響
    を、受信信号から除去し又は抑圧することを特徴とする
    遅延波キャンセル方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の遅延波キャンセル方法に
    おいて、 キャンセル制御に際して、そのときのキャンセラの動作
    条件と事前処理にて収集済の情報とに基づき、キャンセ
    ラの出力信号により受信信号に現れるであろう特徴を推
    定し、この推定の結果に基づき、受信信号に現れた特徴
    からキャンセラの出力信号による干渉の影響を除外する
    ことを特徴とする遅延波キャンセル方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の遅延波キャンセル
    方法において、 キャンセラの出力信号による受信信号への干渉を遮断す
    る動作と、その状態で受信信号に現れた特徴を検出する
    動作と、この動作により検出した特徴と事前処理にて収
    集済の情報とに基づき、かつ、検出した特徴がキャンセ
    ル信号の干渉により補償又は抑圧されることとなるよ
    う、キャンセラの動作条件を決定する動作と、その結果
    に従いキャンセラを制御しその出力信号を受信信号に干
    渉させる動作と、を含む初期制御を、事前処理を実行し
    た後キャンセル制御を開始する前に実行することを特徴
    とする遅延波キャンセル方法。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の遅延
    波キャンセル方法において、 希望波が、その占有周波数帯域内で遅延波との干渉によ
    り周波数対振幅特性にリプル波形を発生させる特性を有
    する信号であり、 受信信号を周波数解析することにより希望波の占有周波
    数帯域からリプル波形を取り出し、取り出したリプル波
    形を時間波形と見なしてフーリエ変換し、その結果から
    希望波に対して遅延している成分を取り出し、取り出し
    た成分が希望波に対して有している遅延時間、位相差及
    び振幅比を検出する動作により、干渉の結果受信信号に
    現れた特徴を検出することを特徴とする遅延波キャンセ
    ル方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の遅延波キャンセル方法に
    おいて、 キャンセラが、受信アンテナから中継装置内を経て送信
    アンテナに到る有線の信号経路上の所定点から受信信号
    を一部分岐させ、分岐させた受信信号を可変時間遅延、
    可変移相及び可変減衰若しくは可変増幅することにより
    その出力信号を発生させ、上記所定点から見て受信アン
    テナ寄り又は送信アンテナ寄りの他の所定点にてその出
    力信号を中継装置の受信信号に結合させる装置であり、 事前処理の際に受信信号に現れた特徴と対応付けられま
    たキャンセル制御の際に決定されるキャンセラの動作条
    件が、キャンセラにおける遅延時間、移相量及び減衰率
    若しくは増幅率であることを特徴とする遅延波キャンセ
    ル方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の遅延波キャンセル方法に
    おいて、 キャンセラの動作条件たる遅延時間、移相量及び減衰率
    若しくは増幅率の組合せをこれらを各軸とする三次元空
    間内で三次元的に変化させながら、事前処理を実行する
    ことを特徴とする遅延波キャンセル方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の遅延波キャンセル方法に
    おいて、 キャンセラの動作条件たる遅延時間、移相量及び減衰率
    若しくは増幅率のうちいずれか2個を固定し残り1個を
    変化させながら、かつ固定する動作条件を順繰りに変更
    しつつ、事前処理を実行することを特徴とする遅延波キ
    ャンセル方法。
  8. 【請求項8】 請求項4乃至7のいずれかに記載の遅延
    波キャンセル方法において、 リプル波形を時間波形と見なしてフーリエ変換する処理
    を、当該リプル波形の離散フーリエ変換により行い、 当該離散フーリエ変換の際リプル波形に施す窓処理に使
    用する窓関数の周波数応答を利用して、希望波に対する
    遅延波成分及び/又はキャンセラの出力信号の遅延時間
    を推定することを特徴とする遅延波キャンセル方法。
  9. 【請求項9】 送信利得自動制御回路を有する中継装置
    と共に使用されるキャンセラであって、受信アンテナか
    ら中継装置内を経て送信アンテナに到る有線の信号経路
    上の所定点から受信信号を一部分岐する分岐手段と、分
    岐した受信信号を可変時間遅延、可変移相及び可変減衰
    若しくは可変増幅することによりキャンセラから中継装
    置への出力信号を発生させるキャンセル信号発生手段
    と、上記所定点から見て受信アンテナ寄りの他の所定点
    にてこの出力信号を受信信号に結合させる結合手段と、
    請求項5乃至7のいずれかに記載の遅延波キャンセル方
    法を実行する周波数解析演算制御手段と、を備えるキャ
    ンセラにおいて、 上記所定点からキャンセル信号発生手段を経て上記他の
    所定点に到る信号経路上に設けられ、上記送信利得自動
    制御回路における利得変化に同期してその利得が変化す
    る送信利得変化追従回路を備えることを特徴とするキャ
    ンセラ。
  10. 【請求項10】 請求項9記載のキャンセラにおいて、 上記送信利得変化追従回路が、利得変化に伴う移相量の
    変化について上記送信利得自動制御回路の特性と実質的
    に同一の特性を有する自動利得制御回路であることを特
    徴とするキャンセラ。
  11. 【請求項11】 送信利得自動制御回路を有する中継装
    置と共に使用されるキャンセラであって、受信アンテナ
    から中継装置内を経て送信アンテナに到る有線の信号経
    路上の所定点から受信信号を一部分岐する分岐手段と、
    分岐した受信信号を可変時間遅延、可変移相及び可変減
    衰若しくは可変増幅することによりキャンセラから中継
    装置への出力信号を発生させるキャンセル信号発生手段
    と、上記所定点から見て受信アンテナ寄りの他の所定点
    にてこの出力信号を受信信号に結合させる結合手段と、
    請求項5乃至7のいずれかに記載の遅延波キャンセル方
    法を実行する周波数解析演算制御手段と、を備えるキャ
    ンセラにおいて、 上記所定点を、上記送信利得制御回路から送信アンテナ
    に至る信号経路上に設けたことを特徴とするキャンセ
    ラ。
  12. 【請求項12】 請求項9乃至11のいずれか記載のキ
    ャンセラにおいて、 受信信号における希望波不要波比変動を検出する手段
    と、 変化後の希望波不要波比の下でもキャンセル制御の実行
    により遅延波成分の影響を除去又は抑圧できるよう、希
    望波不要波比変動に応じ、事前処理の際に収集した又は
    その後更新した情報を更新する手段と、 を備えることを特徴とするキャンセラ。
  13. 【請求項13】 請求項12記載のキャンセラにおい
    て、 送信利得制御回路又は送信利得変化追従回路における利
    得の変化を、受信信号における希望波不要波比変動と見
    なして検出することを特徴とするキャンセラ。
  14. 【請求項14】 請求項12又は13記載のキャンセラ
    において、 希望波不要波比変動の検出結果に対するリプル波形の寄
    与分を求め、この寄与分を希望波不要波比変動から除去
    し、その結果に応じ、事前処理の際に収集した又はその
    後更新した情報を更新することを特徴とするキャンセ
    ラ。
  15. 【請求項15】 請求項9乃至14のいずれか記載のキ
    ャンセラにおいて、 希望波の占有周波数帯域に現れた上記リプル波形のフー
    リエ変換結果を、当該占有周波数帯域に亘って積分し、
    その結果得られた積分値が所定値を上回ったときに、受
    信アンテナから中継装置内を経て送信アンテナに至る信
    号経路上の任意の点にて、当該信号経路を遮断する遮断
    手段を備えることを特徴とするキャンセラ。
  16. 【請求項16】 請求項15記載のキャンセラにおい
    て、 上記遮断手段が、受信アンテナから中継装置内を経て送
    信アンテナに至る信号経路の一部を構成し、上記積分値
    が所定値を上回るのに伴い開放されるリレー等のスイッ
    チであることを特徴とするキャンセラ。
  17. 【請求項17】 受信アンテナにより得られる信号を受
    信する受信機及び受信機による受信信号を送信アンテナ
    から送信する送信機を有する中継装置と、遅延波による
    干渉の影響を受信信号から除去し又は抑圧するためのキ
    ャンセラとを備え、無線伝送システムにて無線信号の中
    継に用いられる中継システムにおいて、 キャンセラが、請求項9乃至16のいずれか記載のキャ
    ンセラであり、 上記所定点及び上記他の所定点をいずれも送信機内に置
    くことを特徴とする中継システム。
  18. 【請求項18】 請求項17記載の中継システムにおい
    て、 上記送信利得自動制御回路が送信機内に設けられてお
    り、キャンセラが請求項11記載のキャンセラであるこ
    とを特徴とする中継システム。
  19. 【請求項19】 受信アンテナにより得られる信号を受
    信する受信機及び受信機による受信信号を送信アンテナ
    から送信する送信機を有しそれぞれ異なる周波数チャネ
    ルに対応して設けられている複数の中継装置と、各中継
    装置に対応して設けられ、遅延波による干渉の影響を受
    信信号から除去し又は抑圧するためのキャンセラとを備
    え、無線伝送システムにて無線信号の中継に用いられる
    中継システムにおいて、 各キャンセラが、請求項9乃至16のいずれか記載のキ
    ャンセラであり、 上記複数のキャンセラが、 各キャンセラにて対応する周波数チャネルの受信信号か
    ら周波数解析により取り出されたリプル波形を、当該周
    波数チャネルの占有周波数帯域の関係に従って合成した
    上で、フーリエ変換する手段と、 その結果に基づき、干渉の結果受信信号に現れた特徴を
    検出する手段とを、共有することを特徴とする中継シス
    テム。
  20. 【請求項20】 請求項19記載の中継システムにおい
    て、 上記合成の対象に係る複数の周波数チャネル相互間に、
    周波数チャネル同士のセパレーションのための帯域又は
    上記合成の対象にしない周波数チャネルが存在している
    場合に、当該周波数チャネル相互間の帯域又は周波数チ
    ャネルにおけるリプル波形について、近似波形による補
    間を行いつつ上記合成を実行することを特徴とする中継
    システム。
  21. 【請求項21】 請求項19記載の中継システムにおい
    て、 上記合成の対象に係る複数の周波数チャネル相互間に、
    周波数チャネル同士のセパレーションのための帯域又は
    上記合成の対象にしない周波数チャネルが存在してお
    り、かつ、その帯域又は周波数チャネルが各周波数チャ
    ネルの占有周波数帯域又は上記合成の対象に係る複数の
    周波数チャネル全体による占有周波数帯域に比べ十分に
    狭い場合に、当該周波数チャネル相互間の帯域又は周波
    数チャネルを無視して上記合成を実行することを特徴と
    する中継システム。
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