JP2001020153A - 氷雪面の抗スリップ材 - Google Patents

氷雪面の抗スリップ材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】アイスバーンなどの氷雪面での滑りを防止する
繊維からなる布の抗スリップ材を得る。これを用品の構
成部材として利用する。 【解決手段】表出した繊維が、主として0.00001
〜1.0デニ−ルの極細繊維であり、その両端は拘束さ
れている織編布又は不織布である。平面接触曲率が0.
5ミクロン以下の繊維でもよい。繊維1を細くすると、
水膜2bの下の氷層2に接することができ、かつ荷重の
加圧力で陥没溝2aができ、これに繊維1が噛み合う作
用を利用する。表出した繊維1を滑り方向に対し交差さ
せると、噛み合いによる剪断摩擦力による制止力が発生
する。薄く柔軟な布帛構造のため、粘着接着を利用して
履物などの底面に容易に装着できる滑り止めの用品部材
となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、氷雪面の滑りを防
止する用品の構成部材として利用できる、繊維からなる
抗スリップ材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】氷路(アイスバーン)や氷状と化した雪
路などの氷雪面は、冬期の路面状況で最も滑りやすく危
険である。周知の通り、古くからこの滑りを防止する手
段として、植物繊維をより合わせた縄や繊維からなる織
布が、経験的に滑り止めに利用されていた。この具体的
な実用形態は、寒冷地の民具の要所に見られる。実際
は、氷路での性能は劣るが、繊維が抗スリップ材として
知られていた。
【0003】次に、砂などのセラミックや硬質金属、ク
ルミなどの硬質天然外皮を粒子状にして抗スリップ物質
として利用する手段がある。これを樹脂やゴムに練り込
み複合材とし、抗スリップ物質を表出させて抗スリップ
材とする。表出部が氷面を押し刺す役目をして剪断摩擦
力を得る。この剪断摩擦力で滑りを防止する。この手段
は氷雪面用のタイヤや靴底などに実用されている。
【0004】次に、上記の抗スリップ物質でピンなどの
ような突起様形態にして抗スリップ部材として使用する
手段がある。これをスパイクピンとして打ち込んだり、
タイヤや履物に係止できる構造として滑り止めを実現さ
せる。これも同様に氷面に押し刺す役目をさせて剪断摩
擦力を得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した抗スリップ材
による滑り止めでは次のような問題がある。従来使用さ
れていた繊維や繊維からなる織編布は静止時には制止効
果があるが、一旦滑り出すと制止効果がなくなる。この
動的な滑りには効果が得られなかった。このため、実使
用では新雪路や積雪路には効果を発揮するが、氷状化し
た面には適していなかった。
【0006】抗スリップ物質を表出させた抗スリップ材
は、硬質物質との複合材であるため、その物性は硬質化
する。このため、構造体は柔軟性に劣り使用感や携帯性
が悪くなる。また、履物では屋内で被接触物を傷つけた
りする。この硬質化と対摩耗性は用品の構成部材として
利用範囲を制限する。硬質化を少なくすると抗スリップ
物質の消失が発生し、抗スリップ効果が安定しなくる。
【0007】突起様の滑り止めは、これを支持する支持
体が必要となり、用品の構造が大きくなったり厚くな
る。この支持体で形状の自由度が悪くなり、使用感や携
帯性などが低下する。そして、用品のコストを高くす
る。さらに、硬質突起は、屋内ではタイルや石材面で滑
ったり、床面などの被接触物を傷つけたりする。また、
不快な騒音を発生させる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来使用され
ていた繊維よりさらに繊維を細くしたことが、最も主要
な特徴である。従来使用されていた繊維は繊維径が太い
ため、一旦滑り出すと氷層面の水膜でハイドロプレーニ
ング現象が生じる。また、氷は加圧エネルギーにより液
化するため、水を排除しても氷面から水膜が発生して滑
走は制止できない。
【0009】このハイドロプレーニング状態を回避する
手段として、繊維を細くするか接触曲率を小さくするこ
とで解決できる。これにより、水膜に入り込み固相の氷
層面に接触する。さらに、氷の固化と液化の変態を利用
して、氷層面に繊維の転写溝を発生させる。この溝と噛
み合う作用で剪断摩擦力を得る。繊維径は1.0デニ−
ル以下でこの手段が実現できる。1.0デニ−ル以上の
繊維でも実使用での平面の接触曲率が0.5ミクロン以
下の繊維で実現できる。形状は図2に示すように、星形
(図2のイ)や花弁形などの特殊異型断面にする、繊維
にループ(図2のロ)やスケールを付与することで接触
曲率を小さくする。
【0010】この繊維を布帛構造とし、表出した繊維
(氷層面と接触する繊維)は噛み合い抵抗に抗するよう
に編成する。これにより布帛が抗スリップ材として使用
できる。しかし、起毛や立毛化した配列体繊維は、滑る
方向に繊維が配向するため剪断摩擦力を得ることができ
ない。
【0011】本発明は、氷層面と接触する表出した繊維
が、主として0.00001〜1.0デニ−ルの極細繊
維であり、表出した繊維は滑り方向に対し交差し、その
両端は拘束されている織編布とした氷雪面の抗スリップ
材である。織編布は3次元的に交絡している不織布でも
よい。できる限り強固に交絡していることが好ましい。
【0012】繊維材料はポリエステル系繊維、ポリアミ
ド系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維など
の衣料等に用いられている合成繊維が使用できる。ま
た、特殊繊維としてアラミド繊維や炭素系繊維、金属系
繊維などの無機繊維が使用できる。また、これらを複成
分系繊維、混合紡糸繊維として使用する。天然繊維は繊
維径が太く適しない。
【0013】本抗スリップ材を目的の部位に定着させる
手段として、慣用されている耐水性接着方法で履物の底
などに貼着して使用する。この氷雪面の滑り止めは抗ス
リップ材の片面に耐水粘着接着剤層が有する構造で容易
に実現できる。
【0014】
【作用】本発明の抗スリップの作用を図1で説明する。
繊維1が細くなったり、繊維断面形状の曲率が小さくな
ると氷層2上の薄い水膜2bの下に抵抗なく入り込むこ
とができる。これにより、繊維1は氷層2の面に接する
ことができる。氷層2に接した状態で体重などの荷重が
作用すると、固体である氷との摩擦係数に相当する摩擦
力が発生する。これが、滑りの制止力となる。しかし、
この摩擦力は小さく、水膜上を滑るよりは増しである
が、滑りの制止力としては期待できない。
【0015】次に、この荷重が更に強く作用すると、加
圧による延長作用として図1のように繊維1の加圧力で
氷層2の面が溶けて、接した繊維1の断面形状に陥没す
る。このミクロの面での陥没溝2aは、従来の突起様の
滑り止めと同様の摩擦係数以上の剪断摩擦力による制止
力を発生させる。この作用は瞬時に発生するため、動的
な滑りにも効果がある。
【0016】この制止力は、滑り方向が繊維1と直交す
る状態が最大となり、滑り方向と繊維1が平行となると
陥没溝2a内を移動可能となるために最小となる。この
作用特性を利用して布の織編を構成することで、滑り止
めの方向性又は均向性を与える抗スリップ材とすること
ができる。不織布は繊維1の方向が不規則であるため、
この方向性を考慮しなくてもよい。
【0017】例えば、鉄板上で本抗スリップ材を使用し
た場合、鉄と繊維との摩擦係数以上の摩擦力を発生させ
ることはできない。しかし、氷のように固化と液化の変
態点が使用領域にある場合、繊維により接触表面を変態
変形させることができる。このように本発明は繊維を細
くすると、氷層2に接することができることと、荷重に
よる加圧力でできた陥没溝2aと繊維1が歯車のように
噛み合う作用を利用したものである。
【0018】また、氷層の温度によっては繊維に氷層が
氷着し、強い制止力が発生する。しかし、これは繊維を
切断して抗スリップ材を傷める。この氷着は親水性繊維
や水を含水する断面形状の繊維で強く発生する。できる
限り氷着は防止することが望ましい。
【0019】
【実施例】本発明の第1の実施例である。原糸として
0.1デニールのポリエステル超極細繊維を500本束
ねて撚りをかけずに糸とする。この糸を縦糸と横糸とし
て平織りして織布とする。超極細繊維は織目ごとに90
°の角度で交互に表出する。この織布は全方向に抗スリ
ップ性を有する抗スリップ材である。形態や取り扱いは
一般の布帛と同じである。この織布を裁断して目的の滑
り止め部材を得る。この切断は超高温切断にて切断部を
熱シールして、ほつれの発性を防止する。
【0020】本抗スリップ材の氷着防止等の機能付与
は、原糸に撥水剤や氷着防止剤で加工処理するか、後処
理して機能を付与する。また、厚みを得る場合は、安価
な汎用の織編布と重ねて実施することもできる。抗スリ
ップに使用する片面以外は、目的の機能を有する織編布
や他の部材を採用することは可能である。上記実施例の
繊維を1.0デニ−ル以上の平面接触曲率が0.5ミク
ロン以下の繊維で実施しても同様の効果が得られる。
【0021】次に、本発明の第2の実施例である。0.
1デニールのポリエステル超極細繊維原糸を800本束
ねて撚りをかけて糸とする。次に、線径0.5mmの高
強度ポリエチレン糸を芯糸とする。この芯糸の周囲に、
超極細繊維からなる前記の糸を芯糸表面で接着しながら
巻きつける。この超極細繊維が表出した複合材糸を抗ス
リップ糸とする。この抗スリップ糸でピッチ2mmの結
束網を作り、抗スリップ材とする。この抗スリップ材は
強度と排水性を考慮して実施した。滑り止め部材として
タイヤチェーンの簡易代用とする。
【0022】次に、現在容易に入手できるものを抗スリ
ップ材として利用し、氷雪面での履物の滑り止めを製作
する第3の実施例を説明する。本発明の構成と類似する
布帛は、超極細繊維からなるワイピングクロスとして各
社から上市されている。抗スリップ材を目的として構成
されていないため、高抗スリップ性、排水性、氷着性に
一部問題があるが実用に耐えるものである。例えば織編
布として、鐘紡(株)製のザヴィーナ(登録商標)、東
レ(株)製のトレシーミラクルクロス(商標)などがあ
る。3次元交絡している不織布として、長繊維からなる
旭化成(株)製のシャレリア(商標)、日本バイリーン
(株)製のデンキトール(商標)などがある。
【0023】上記ワイピングクロスを図3のように履物
の底面形状に裁断する。この布である抗スリップ材3の
片面に粘着接着剤層4として両面粘着テープを貼着して
シートとする。粘着テープはアクリル系で、粘着力は1
200g/25mm(対ステンレス)である。繊維面に
は中粘度の植物油を塗り、僅かに含浸させておく。これ
により、氷着防止効果を得る。この滑り止めを履物の底
面に水分をよく拭き取り貼着する。このように簡単に製
作でき装着違和感のない携帯性に優れた滑り止めを得る
ことができる。また、抗スリップ材3と粘着接着剤層4
の間に柔軟な発砲材層を設けると、さらに使用感が良く
なる。
【0024】次の第4の実施例は、製氷所での氷塊の移
動及び移送に、抗スリップ材を敷布として利用した例で
ある。抗スリップ材として鐘紡(株)製のグッドール
(登録商標)を搬送台の上に敷き、この上で氷塊を滑走
移動させる。グッドールは超極細繊維からなる編布で、
表出した繊維は一方向に配列した状態に編まれている。
この繊維配列方向と滑走方向を一致させて敷設すること
で、一定方向のみに滑走させることができ、不用意な衝
突・落下を防止する。このように、一方向には抗スリッ
プ効果がなくても、滑りを制御する抗スリップ材として
利用できる。この氷の取り扱いでは、この他に手袋や運
搬用の吊りベルトに本発明の抗スリップ材が利用でき
る。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の繊維から
なる抗スリップ材は、従来の繊維では不可能であった動
的な滑りに対し制止効果がある。そして、形態は従来と
同様の布帛構造である。この布帛という形態は薄さと柔
軟性を得ることができる。これにより、形状自由度、加
工性、装着性、携帯性を向上させることができる。本発
明の抗スリップ材は、使用感及び取り扱いの優れた滑り
止め用品を提供する。また、従来から実用されている氷
雪面の滑り止め用品を大きく改善させる構成部材となり
得る。氷雪に関わる、家庭用品、防災用品、カー用品、
スポーツ用品、作業用具の抗スリップ材として応用範囲
が広い。
【0026】具体的な用途として次の事例がある。履き
物においては、底を包む、底に貼る、本滑り止め材で履
き物を作るなどして転倒による傷害を防止する。降雪地
域では衣服の表面に使用して、転倒による滑走を防ぎ交
通事故等を防止する。簡易的ではあるが自動車のスリッ
プに関する防止用品に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗スリップの作用を拡大して示した説明図。
【図2】繊維形状の曲率の例を示した断面説明図。
【図3】抗スリップ材を履物の滑り止めに利用した斜視
図。(第3の実施例)
【符号の説明】
1 極細繊維 2 氷層 2a 陥没溝 2b 水膜 3 抗スリップ材 4 粘着接着剤層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表出した繊維が、主として0.0000
    1〜1.0デニ−ルの極細繊維であり、表出した繊維は
    滑り方向に対し交差し、その両端は拘束されている織編
    布としたことを特徴とする氷雪面の抗スリップ材。
  2. 【請求項2】 表出した繊維は滑り方向に対し交差し、
    その両端は拘束されている織編布が3次元交絡している
    不織布である請求項1の氷雪面の抗スリップ材。
  3. 【請求項3】 0.00001〜1.0デニ−ルの極細
    繊維が平面接触曲率が0.5ミクロン以下の繊維である
    請求項1及び請求項2の氷雪面の抗スリップ材。
  4. 【請求項4】 請求項1及び請求項2、請求項3の抗ス
    リップ材の片面に耐水粘着接着剤層が有することを特徴
    とする氷雪面の滑り止め。
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