JP2001020136A - 仮撚加工に適したポリエステル繊維及び製造方法 - Google Patents
仮撚加工に適したポリエステル繊維及び製造方法Info
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Abstract
により工業的に製造が可能であり、かつ長期間にわたっ
て同一条件で、毛羽や糸切れ無く安定して延伸仮撚加工
が可能な部分配向PTT繊維を提供する。 【解決手段】 90モル%以上がトリメチレンテレ
フタレート繰返単位からなり、且つ特定の物性要件を満
たすポリトリメチレンテレフタレート繊維。 そのチ
ーズ状パッケージ。 該繊維からの溶融マルチフィラ
メントを、紡口直下に設けた特定の雰囲気温度下で保温
領域を通過させ、急冷して固体マルチフィラメントに変
え、仕上げ剤を付与後、特定温度で熱処理後、特定巻取
張力にて高速で巻取る方法。
Description
加工に適したポリトリメチレンテレフタレート繊維及び
そのチーズ状パッケージに関する。更に詳しくは、本発
明は、工業的に製造可能で、長期間にわたって安定した
延伸仮撚加工ができる部分配向ポリトリメチレンテレフ
タレート繊維およびその繊維を製造する方法に関する。
ルに代表されるテレフタル酸の低級アルコールエステル
と、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオー
ル)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタ
レート(以下「PTT」と略す)を用いた繊維は、低弾
性率(ソフトな風合い)、優れた弾性回復性、易染性と
いったポリアミドに類似した性質と、耐光性、熱セット
性、寸法安定性、低吸水率といったポリエチレンテレフ
タレート(以下「PET」と略す)繊維に類似した性能
を併せ持つ画期的なポリマーであり、その特徴を生かし
てBCFカーペット、ブラシ、テニスガット等の繊維と
してに応用されている(米国特許第3584108号明
細書、米国特許第3681188号明細書、「J.Po
lymerScience」Polymer Phys
ics 編、14巻、263〜274頁、1976年発
行;「Chemical Fibers Intern
ational」45巻、1995年4月発行、110
〜111頁;特開平9−3724号公報、特開平8−1
73244号公報、特開平5−262862号公報)。
来のPETやポリブチレンテレフタレート(以下「PB
T」と略す)を用いた仮撚加工糸に比べ、非常にソフト
で良好な弾性回復性、およびその持続性を有しているこ
とが知られている(特開平9−78373号公報、特開
平11−093026号公報)。しかしながら、これら
に開示されているのは延伸糸を用いたPTT繊維の仮撚
加工に関してであり、生産性の高い高速での延伸仮撚加
工を行うことはできない。また、延伸糸を得るために
は、紡糸、延伸といった2段階の工程が必要となるた
め、生産性を上げることが困難であり、繊維製造コスト
は高くなってしまう。
に、PTTの部分配向繊維を用いて延伸仮撚加工を行う
ことも考えられる。現在、PETでは、生産性の高さな
どの理由から、この延伸仮撚加工が主流となっている。
延伸仮撚加工を行うPTTの部分配向繊維に関する先行
技術はわずかに、「Chemical Fibers
International」47巻、1997年2月
発行、72〜74頁があるのみである。ここではゴデッ
トロールを用いず、或いは冷たいゴデットロールを介し
た後、3〜6000m/分で巻き取る方法が記載されて
いる。PTTにて部分配向繊維に相当する繊維を製造す
る方法については上記の他に、延伸糸用の未延伸糸とし
て特表平9−509225号公報に2000〜5000
m/分で巻き取られた糸が、また特開昭58−1042
16号公報に2000m/分以上で溶融紡糸した、複屈
折率が0.035以上の糸が示されている。
と、上記文献や公開公報に示されているPTTの部分配
向繊維は、糸管上で糸が大きく収縮して糸管を締め付け
るために、通常工業生産している糸量を巻取ると糸管が
変形し、チーズ状パッケージを巻取機のスピンドルより
取り外すことができなくなる。このような状況では、た
とえ強度の大きい糸管を使って糸管の変形を抑えたとし
ても、バルジと呼ばれるパッケージ側面が膨れる現象が
見られたり、チーズの内層で糸が堅く締まったりする。
このため糸を解舒する時の張力が高くなると共に、張力
変動も大きくなり、延伸仮撚加工時に毛羽、糸切れが多
発したり、倦縮むらや染色むらが発生したりする。
次の2つが考えられる。 PETと異なり、PTTはジグザグ状の分子構造を
してるのでガラス転移点(以下「Tg」と略す)が30
〜50℃と低く、延伸糸のように結晶化していないと、
構造が固定されずに室温でも分子が運動して収縮してし
まうからである。 弾性回復率が高いために巻取った際の応力が緩和さ
れずに残るためである。 また本発明者らの検討によると、室温付近で保管した場
合、PET部分配向繊維の物性がほとんど変化しないの
と異なり、上記文献や公報に開示されているPTT部分
配向繊維では沸水収縮率や熱応力のピーク値などの物性
が経時変化してしまう。このため工業的に延伸仮撚加工
を行うこと、即ち長期間にわたって同一条件で同じ品質
の仮撚加工糸を毛羽、糸切れの発生なく安定して生産す
ることができない。
63−42007号公報に、PETとPTT又は/およ
びPBTをブレンドしたポリマーを溶融吐出し、冷却固
化した後、加熱ローラにより熱処理し、次いで3500
m/分以上の速度で巻取り、切断伸度(破断伸度)60
%以下、沸水収縮率7%以下の繊維を製造する方法が示
されている。この公報の中には、比較例としてPTTホ
モポリマー及びPETが10重量%ブレンドされたPT
T共重合ポリマーを上記と同様の方法にて180℃に加
熱し、4000m/分で巻取った破断伸度33%、沸水
収縮率4%程度の繊維も示されている。このように、こ
こではローラで加熱する方式の高速紡糸と、それによっ
て得られるPTT繊維が記載されている。しかしなが
ら、該公報の目的は、得られる繊維をそのまま衣料用の
繊維として使用し、この際にシボ立て性を改善するため
に結晶化を進めて収縮を抑制する技術である。
といった高温で熱処理するとバルジの発生や巻崩れが激
しくなってしまう。また高温で熱処理し、破断伸度が6
0%以下といった延伸糸と同様な物性の繊維であるため
延伸仮撚加工を行うことはできない。ポリアミド系の部
分配向繊維に関しては、特開昭50−71921号公報
に加熱ローラで熱処理を行い巻崩れのないパッケージを
得る技術が示されている。しかし、ポリアミドの部分配
向繊維は結晶化していないと糸が吸湿などにより伸びて
巻き崩れが発生してしまう。該公報で示されているの
は、この巻崩れを解消する技術である。
高速紡糸した糸を緊張状態にて加熱ローラで熱処理して
結晶化させて、繊維の破断伸度を下げ、仮撚加工性を向
上させる技術も示されている。該公報で示されているの
は、繊維の破断伸度を下げて倦縮性能を高める技術であ
る。従って両公報とも、巻締まりやバルジの抑制や物性
の経時変化の抑制とは全く違った目的のための技術であ
る。従来、ポリエステル系の繊維はポリアミド系の繊維
と異なり、加熱結晶化させ構造を固定すると、結晶が分
子の運動を阻害してしまい、延伸仮撚加工はできないと
考えられている。このため上記の公開公報に示されてい
る、部分配向繊維を熱処理するといった技術は、ポリエ
ステル系の繊維では行われていない。このように巻締ま
りやバルジが発生せず、長期間安定して延伸仮撚加工の
できるPTT繊維について記載している先行技術は全く
ない。
果、従来技術による部分配向PTT繊維及びその製造に
おいては以下の問題があることが分かった。 (A) 巻糸が収縮して、糸管を締め付け、チーズ状パッ
ケージを巻取り機のスピンドルより取り外すことができ
なくなったり、バルジが発生したりする。このため、工
業的に製造されているPET並みの糸量のチーズ状パッ
ケージを巻き取ることができない。 (B) PTTは室温付近で保管していても沸水収縮率や
熱応力のピーク値などの物性が変化してしまうため、工
業的に延伸仮撚加工を行うこと、すなわち長期間にわた
って同一条件で同じ品質の仮撚加工糸を毛羽、糸切れの
発生なく安定して生産することができない。
長期間にわたって安定した延伸仮撚加工ができる部分配
向PTT繊維およびその製造方法を提供するものであ
る。本発明の目的を達成するために解決すべき課題は、
上記(A)問題に対応して工業的な製造を可能とするため
に、巻締まりおよびバルジの発生を抑制し、上記(B) 問
題に対応して工業的な延伸仮撚加工を可能とするため
に、室温で物性が経時変化しない部分配向PTT繊維と
することである。
た結果、驚くべきことに、特定の条件にて繊維を熱処理
して結晶化させ、極低張力にて巻取る特殊な紡糸法を用
いて製造した、特定の範囲内の配向性、結晶性の繊維で
は、PTT部分配向繊維を製造する際に大きな問題とな
る巻締まりやバルジの発生を回避することができること
を見出した。また、この繊維は、更に驚くことに、PE
Tとは異なり、本発明の範囲内の配向性、結晶性であれ
ば、熱処理して結晶化させても、延伸仮撚加工が可能で
あり、且つ優れた品位の仮撚加工糸を得ることができる
ことを見出した。しかも、本発明の繊維は、結晶化によ
り繊維の構造が固定されているために、物性が経時変化
しにくく、長期間にわたって同一条件で同じ品位の仮撚
加工糸を毛羽、糸切れの発生なく安定して得ることがで
きることを見出し、本発明を完成した。
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートか
らなり、下記(I)〜(5) の要件を満足するポリエステル
繊維を提供する。また、 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% において、下記式(A) で示される、糸−糸間の静
摩擦係数Fと繊維の総繊度d(デニール)より計算した
繊度補正静摩擦係数Gが0.06〜0.20である点に
特徴を有する。また、 G=F−0.00383×d ・・・ (A) において、更に該繊維がチーズ状パッケージに巻
かれているポリエステル繊維を提供する。また、 において、下記式(A) で示される、糸−糸間の静
摩擦係数Fと繊維の総繊度d(デニール)より計算した
繊度補正静摩擦係数Gが0.06〜0.20である点に
特徴を有する。また、 G=F−0.00383×d ・・・ (A)
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートか
らなり、下記(I)〜(5) の要件を満足し且つポリエステ
ル繊維が巻き付けられ、バルジ率が20%以下である、
チーズ状パッケージを提供する。また、 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% において、巻き付けられている繊維の、下記式
(A) で示される、糸−糸間の静摩擦係数Fと繊維の総繊
度d(デニール)より計算した繊度補正静摩擦係数Gが
0.06〜0.20である点に特徴を有する。また、 G=F−0.00383×d ・・・ (A)
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを
溶融紡糸する方法において、紡口より押出した溶融マル
チフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変
え、50〜170℃で熱処理を行った後、0.02〜
0.20g/dの巻取張力にて2000〜4000m/
分の速度で巻き取る、ポリエステル繊維の製造方法を提
供する。また、 90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを
溶融紡糸する方法において、紡口より押出した溶融マル
チフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変
えた後、該繊維に対して0.2〜3重量%となるように
油剤を付与し、その後50〜170℃で熱処理を行った
後、0.02〜0.20g/dの巻取張力にて2000
〜4000m/分の速度で巻き取る、ポリエステル繊維
の製造方法を提供する。
メチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリト
リメチレンテレフタレートである。ここでPTTとは、
テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール
(1,3−プロパンジオールともいう)をジオール成分
としたポリエステルである。該PTTには10モル%以
下で他の共重合成分を含有してもよい。そのような共重
合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、
5−カリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスル
ホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、3,5−ジカル
ボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム
塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブ
チルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンス
ルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、2,6−ジ
カルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホ
スホニウム塩、2,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−
スルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカ
ルボン酸ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、
ジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリ
コール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−
ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコー
ル、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコー
ル、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサ
ンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2
−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジ
メタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、
1,2−シクロヘキサンジメタノール、
酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、セバシ
ン酸、ドデカン二酸、2−メチルグルタル酸、2−メチ
ルアジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロ
ヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカル
ボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。 (ii)また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消
し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白
剤などを共重合、または混合してもよい。
[η]は0.5〜1.4が好ましく、更に好ましくは
0.7〜1.2である。この範囲で強度、紡糸性に優れ
た繊維を得ることができる。極限粘度が0.5未満の場
合は、ポリマーの分子量が低すぎるため紡糸時や加工時
の糸切れや毛羽が発生しやすくなるとともに、仮撚加工
糸に要求される強度の発現が困難となる。逆に、極限粘
度が1.4を越える場合は、溶融粘度が高すぎるために
紡糸時にメルトフラクチャーや紡糸不良が生じるので好
ましくない。
ては、公知の方法をそのまま用いることができる。即
ち、テレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルとトリメチ
レングリコールを原料とし、チタンテトラブトキシド、
チタンテトライソプロポキシド、酢酸カルシウム、酢酸
マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マンガ
ン、二酸化チタンと二酸化ケイ素の混合物といった金属
塩の1種あるいは2種以上をポリマーに対して0.03
〜0.1wt%となるように加え、常圧下あるいは加圧
下でエステル交換率90〜98%でビスヒドロキシプロ
ピルテレフタレートを得、次に、チタンテトライソプロ
ポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモ
ン、酢酸アンチモンといった触媒の1種あるいは2種以
上をポリマーに対して0.02〜0.15wt%、好ま
しくは0.03〜0.1wt%となるように添加し、2
50〜270℃で減圧下反応させる。
合反応の前に安定剤を入れることが白度の向上、溶融安
定性の向上、PTTオリゴマーやアクロレイン、アリル
アルコールといった分子量が300以下の有機物の生成
を制御できる観点で好ましい。この場合の安定剤として
は、5価または/および3価のリン化合物やヒンダード
フェノール系化合物が好ましい。5価または/および3
価のリン化合物としては、トリメチルホスフェート、ト
リエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ
フェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリ
エチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフ
ェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、
特に、トリメチルホスファイトが好ましい。
ノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を
持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエ
ステル結合を有する化合物である。具体的には、ペンタ
エリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert
ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5
−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメ
チル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス
{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5
−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジ
メチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピ
ロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−te
rt−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼ
ン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−
(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−
ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチ
レン−ビス[3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3
−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート]を例示しうる。中でもペンタエリ
スリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tertブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ま
しい。
(5) の要件を満足する必要がある。 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% ・本発明の課題の1つである繊維の巻締まりを解消する
ためには、糸管上で糸が大きく収縮しないように、繊維
が結晶化して分子が固定され、かつ分子が過度に配向し
て緊張した状態になっていないことが重要である。 ・また、本発明の他の課題である、長期間にわたって同
一条件で同じ品質の仮撚加工糸を毛羽、糸切れの発生な
く安定して生産することを可能とするには、破断伸度が
一定の範囲内であるとともに、破断伸度、熱応力のピー
ク値、沸水収縮率などが経時変化しにくいことが重要で
ある。このためには繊維が適度に結晶化することにより
分子が固定されていることと、分子が過度に配向して緊
張した状態になっていないことが必要である。従ってこ
れらの課題を全て達成するためには、ある特定の範囲内
の結晶性、配向性をもつ特殊な構造とする必要がある。
ているように、繊維の密度測定が適している。非晶部に
比べ結晶部の密度が大きいので、密度が大きいほど結晶
化していると言える。配向性の指標としては、繊維の複
屈折率が適している。 ・また、巻締まりや延伸仮撚加工性、経時変化に大きく
関与する、分子の配向状態、緊張状態、固定状態を表す
ことのできる値としては、熱応力のピーク値、沸水収縮
率及び破断伸度が適している。従って、繊維の密度、複
屈折率、熱応力のピーク値、沸水収縮率および破断伸度
が前記の範囲を満足することで、はじめて巻締まりやバ
ルジの発生がなく工業的に製造可能で、物性の経時変化
がないので長期間にわたって安定した延伸仮撚加工がで
きる部分配向PTT繊維となる。
ある。密度が1.340g/cm3を越えると巻崩れが
発生してしまう。理由ははっきり分からないが、繊維の
結晶性が上がることによって繊維自体や繊維の表面が硬
くなるために、糸と糸を接触させたときの面積が小さく
なり、糸−糸間の静摩擦係数が下がるからではないかと
考えられる。また、延伸仮撚加工の際に毛羽や糸切れが
発生しやすくなり、工業的に安定して延伸仮撚加工を行
うことができなくなってしまう。一方、密度が1.32
0g/cm3未満では結晶化が十分進んでいないために
繊維が固定されておらず、繊維が収縮して巻締まりが発
生してしまったり、繊維の物性が経時変化してしまい長
期間にわたって同一条件にて同じ品位の仮撚加工糸を得
ることができなかったりする。密度は好ましくは1.3
22〜1.336g/cm3、更に好ましくは1.32
6〜1.334g/cm3である。
との関係 本発明においては、繊維の広角X線回折像に結晶由来の
回折像が観察されることが好ましい。以下、広角X線回
折像について図面を用いて詳述する。 ・イメージングプレートX線回折装置を用いて、X線を
繊維に対して垂直方向より照射した時の代表的な例とし
て、図1−(イ) に結晶に由来する回折像が観察される場
合の繊維の回折像を、図− (ロ)に結晶に由来する回折像
が観察されない場合の繊維の回折像を示す。図面の中で
矢印方向が繊維軸方向を、矢印と直行する方向が繊維の
赤道方向を示す。ここでX線はCuKα線を用いてい
る。PTTが三斜晶形に属した結晶形をとることが知ら
れており(Polym.Prepr.Jpn.,Vo
l.26,p427(1997))、このため図1−
(イ) に示されるように数多くの結晶に由来する回折像が
観察される。
ように、赤道方向の2θ=15.5°付近に観察される
(010)面に由来する回折像が観察されたかどうかで
判定を行った。一方、図1− (ロ)では非晶に由来するリ
ング状のハローが観察されるだけで、図1−(イ) のよう
な結晶に由来するピークは観察されない。広角X線回折
にて結晶に由来する回折像が観察されることで、繊維が
明らかに結晶化し、構造が固定されていることが分か
る。結晶に由来する回折像が観察されない場合は繊維は
結晶化していない。従って分子が固定されていないため
に、繊維が収縮して巻締まりが発生したり、繊維の物性
が経時変化してしまい長期間にわたって同一条件にて延
伸仮撚加工ができなかったりする。
0、熱応力のピーク値は0.01〜0.12g/d、で
ある必要がある。繊維の複屈折率が0.070を越える
か、あるいは熱応力のピーク値が0.12g/dを越え
ると繊維の収縮する力が強く、巻き取った後に大きく収
縮し、巻締まりが発生してしまう。繊維の複屈折率が
0.07未満か、あるいは熱応力のピーク値が0.01
未満では、配向性が低くかつ結晶化していないために室
温で保存していても沸水収縮率などの物性が経時変化し
てしまう。また経時変化を抑制するために熱処理して結
晶化させると繊維が脆くなってしまう。従って、どちら
の場合も延伸仮撚加工を工業的に行うことはできない。
繊維の複屈折率は好ましくは0.035〜0.065で
あり、更に好ましくは0.040〜0.060である。
また熱応力のピーク値は好ましくは0.015〜0.1
0であり、更に好ましくは0.02〜0.08である。
収縮率が20%を越える場合は、結晶化が進んでいない
ため構造が固定されず、室温で保存していても沸水収縮
率や熱応力のピーク値などの物性が変化してしまい、長
期間にわたって同一条件で同じ品質の仮撚加工糸を毛
羽、糸切れの発生なく安定して生産することができなく
なる。また3%未満では、繊維がもろくなり毛羽、糸切
れが多発するために延伸仮撚加工時ができない。
断伸度が40%未満では伸度が低すぎるために、延伸仮
撚加工ができなくなる。破断伸度が140%を越える場
合は、繊維の配向度が低すぎかつ結晶化が進んでいない
ために、非常に経時変化しやすいか、あるいは配向度が
低すぎかつ結晶化が進んでいるために、非常に脆くなっ
てしまうために工業的に延伸仮撚加工を行うことができ
ない。破断伸度の好ましい範囲は50〜120%であ
り、更に好ましくは60〜100%である。
数G 本発明では、下記式(A) で示される、糸−糸間の静摩擦
係数Fと繊維の総繊度d(デニール)より計算した値を
繊度補正静摩擦係数Gと称する。本発明の繊維はこのG
の値が0.06〜0.20であることが望ましい。 G=F−0.00383×d ・・・ (A) 糸−糸間の静摩擦係数は糸と糸の接触面積に比例するた
め繊度に依存して変化する。従って、式(A)のGの値が
特定の範囲であることが望ましい。Gが0.06未満で
は糸−糸間の静摩擦係数が低すぎるために、糸管上に巻
き取った繊維が滑り、バルジの発生や巻崩れが発生して
しまうことがある。〔バルジとは、図2− (ロ)に示すよ
うに巻締まりによってパッケージ糸の収縮による締め付
け力が強く働いた時に起こるチーズ状パッケージ(10
0)の膨らみのある端面(102a)のことである。〕 一方、Gが0.2を越える場合は糸−糸間の静摩擦係数
が高すぎるため、糸を解舒する際や延伸仮撚加工を行う
際に毛羽や糸切れ多発してしまう。Gの好ましい範囲は
0.1〜0.16であり、更に好ましくは0.12〜
0.14である。糸−糸間の静摩擦を変化させる要因と
しては、繊維の結晶性、配向性、油剤の種類および付着
量、水分の含有量があげられる。これらを本発明の範囲
内で調整することで、上記の好ましい糸−糸間の静摩擦
係数とすることができる。
であることが好ましい。1.5g/d未満では強度が低
いために、糸を解舒する際や延伸仮撚加工を行う際に毛
羽や糸切れ多発してしまう。好ましくは、1.8g/d
以上、更に好ましくは2g/d以上である。 (ii)U% 本発明のポリエステル繊維のU%は2%以下であること
が好ましい。U%が2%を越えると延伸仮撚加工時に延
伸ムラや倦縮ムラ、染め斑が発生しやすくなり満足でき
る品質の仮撚加工糸を得ることができなくなる。U%は
好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下
である。U%は低ければ低いほど繊維か均一であること
を示しており好ましい。
チフィラメントが好ましい。総繊度は限定はされない
が、通常5〜400d、好ましくは、10〜300d、
単糸繊度は限定はされないが0.1〜20d、好ましく
は0.5〜10d、更に好ましくは1〜5dである。繊
維の断面形状は丸、三角、その他の多角形、扁平、L
型、W型、十字型、井型、ドッグボーン型等、制限はな
く、中実繊維であっても中空繊維であってもよい。
れていることが好ましい。近年の仮撚加工工程の近代化
・合理化に追随するには、パッケージのラージ化、即ち
大量巻きの可能なチーズ状パッケージで巻かれているこ
とが好ましい。またチーズ状パッケージとすることで、
延伸仮撚加工時に糸を解舒する際、解舒張力の変動が小
さくなり、安定した加工が可能となる。
が20%以下であることが好ましい。図2−(イ) は糸が
望ましい形状に巻かれたチーズ状パッケージ(100)
を示し、糸が糸管等の巻芯(103)上に平らな端面
(102)を形成した円筒状糸層(104)に巻かれて
いる。バルジは図2− (ロ)に示すように巻締まりによっ
てパッケージ糸の収縮による締め付け力が強く働いた時
に起こるチーズ状パッケージ(100)の膨らみのある
端面(102a)である。バルジ率とは図2−(イ) また
は図2− (ロ)に示す最内層の巻幅Q及び、最も膨らんで
いる部分の巻幅Rを測定して、下記式(B) を用いて算出
した値である。 バルジ率={(R−Q)/Q}×100%・・・(B) バルジ率は巻締まりの程度を示すパラメーターとなる。
チーズ状パッケージのバルジ率が20%を越えるものは
巻締まりが大きく、巻取機のスピンドルからはずれなく
なる場合が多い他、解舒張力の斑による糸切れ、毛羽、
染色斑等が起こりやすい。好ましくはバルジ率は15%
以下であり、更に好ましくは10%以下である。もちろ
ん0%が最も好ましい。
を減らすことが作業効率の向上、コストダウンの観点よ
り極めて重要である。また、延伸仮撚工程においては、
チーズ状パッケージを使用した後、次のチーズ状パッケ
ージにつなぎ込んで使用するが、このつなぎ込みの頻度
を減らすことも作業効率の向上、コストダウンの観点か
ら極めて重要である。従って、該チーズ状パッケージに
は2kg以上の本発明の繊維が巻かれていることが好ま
しく、更に好ましくは3kg以上、一層好ましくは5k
g以上である。2kg未満では糸管交換の頻度やつなぎ
込みの頻度が高過ぎ、工業的に製造するのは困難となっ
てしまう。
の樹脂、金属、紙のいずれでできていても良い。紙の場
合は5mm以上の厚みであることが好ましい。糸管のサ
イズとしては直径が50〜250mmであることが好ま
しく、より好ましくは80〜150mmである。また糸
管上の繊維の巻幅は40〜300mmであることが好ま
しく、より好ましくは60〜200mmである。この範
囲内の糸管、巻幅とすることで、巻姿が良好で、かつ解
舒性の良好なチーズ状パッケージを得ることが容易にな
る。
ージを得る方法を例示する。本発明のポリエステル繊維
は、基本的に、紡口より押出した溶融マルチフィラメン
トを紡口直下に設けた30〜200℃の雰囲気温度に保
持した長さ2〜80cmの保温領域を通過させた後、こ
の溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラ
メントに変え、仕上げ剤を付与し、50〜170℃で熱
処理を行った後、0.02〜0.2g/dの巻取張力に
て2000〜4000m/分の速度で巻き取ることによ
り得られる。
方法を図3及び図4を用いて詳述する。 1)まず、乾燥機1で100ppm以下の水分率まで乾
燥されたPTTペレットを250〜290℃の紡糸温度
に設定された押出機2に供給し溶融する。溶融PTTは
押出機の後の250〜290℃に設定されたスピンヘッ
ド4に送液され、ギヤポンプで計量される。その後紡口
パック5に装着された複数の孔を有する紡糸口金6を経
て溶融マルチフィラメントとして紡糸チャンバーA内に
押出される。押出機に供給するPTTペレットの水分率
は、ポリマーの重合度低下を抑制するという観点から5
0ppm以下が好ましく、更に好ましくは30ppm以
下である。押出機およびスピンヘッドの紡糸温度はPT
Tペレットの極限粘度や形状によって上記範囲内より最
適なものを選ぶ必要があるが、250〜290℃、好ま
しくは255〜280℃の範囲である。紡糸温度が25
0℃未満では、糸切れや毛羽が多発したり、糸径むらが
発生したりしてしまう。また、紡糸温度が290℃を越
えると熱分解が激しくなり、得られた糸は着色し、また
満足し得る強度を示さなくなる。
マルチフィラメントは冷却風9によって室温まで冷却さ
れて固体マルチフィラメント8に変えられる。この際、
紡口直下に設けた30〜200℃の雰囲気温度に保持し
た長さ2〜80cmの保温領域7を通過させて急激な冷
却を抑制した後、この溶融マルチフィラメントを急冷し
て固体マルチフィラメント8に変えて続く熱処理工程に
供することが好ましい。この保温領域7を通過させるこ
とで固化むらを抑制し、高い巻取速度あるいは第一ロー
ル速度まで固化むら(太さむらや配向度むら)無く固体
マルチフィラメントに変えることができる。保温領域の
温度が30℃未満では急冷となり、固体マルチフィラメ
ントの固化むらが大きくなる。また、200℃以上では
糸切れが起こりやすくなる。このような保温領域の温度
は40〜180℃が好ましく、更に好ましくは50〜1
50℃である。また、この保温領域の長さは5〜30c
mが更に好ましい。
理を受けるが、熱処理を受ける前に、仕上げ剤付与装置
10によって仕上げ剤を付与されることが好ましい。仕
上げ剤を付与することにより、繊維の集束性、制電性、
滑り性などが良好となり延伸時、巻取時や後加工時に毛
羽や糸切れが発生することを抑制したり、巻き取ったパ
ッケージのフォームを良好に保つことができる。ここで
仕上げ剤とは乳化剤を用いて油剤を乳化した水エマルジ
ョン液、油剤を溶剤に溶かした溶液、あるいは油剤その
ものであり、繊維の集束性、制電性、滑り性など向上さ
せるものである。付与される仕上げ剤としてはこれらの
いずれでもよい。ここで油剤とは、脂肪酸エステル及び
/又は鉱物油を10〜80重量%含むか、または分子量
1000〜20000のポリエーテルを50〜98重量
%含む混合物が好ましく、必要に応じて成分を選択する
ことが好ましい。
が好ましい。この場合、油剤が仕上げ剤に対して1〜3
0重量%含まれていることが好ましく、2〜10重量%
であることが更に好ましいく、3〜7重量%であること
が特に好ましい。油剤が上記割合の水エマルジョンに希
釈されていることにより、繊維に均一に付着しやすくな
るとともに巻姿を良好にすることが容易になる。油剤の
割合が1重量%未満では、加熱された第一ロールで揮発
する水の量が多すぎるので、揮発熱のために繊維を均一
に所定の温度にすることが困難となる。この結果、熱処
理むらが起こり、染め斑等が発生してしまう。油剤の割
合が30重量%を越えると、仕上げ剤の粘度が高く、し
かも一定量の油剤を繊維に付与しようとしたときに仕上
げ剤の量が少なくなるため、繊維に均一に油剤を付与す
ることが困難となってしまう。
して油剤が0.1〜3重量%付着するようにするのが好
ましく、0.2〜2重量%であることが更に好ましい。
油剤の付着量が0.1重量%以下では、仕上げ剤を付与
する目的である、繊維の集束性、制電性、滑り性などが
悪化してしまい、巻取時や、後加工時に毛羽や糸切れが
多発してしまう。油剤の付着量が3重量%を越えると、
糸−糸間の静摩擦係数が低くなりすぎ、バルジが発生し
やすくなってしまったり、繊維がべとついて取扱性が悪
化したり、紡糸、巻取りの際に用いるガイド類、ロール
類に油剤が付着して汚れてしまい、毛羽や糸切れの原因
となってしまったりする。
オイリングロールを用いる方法や例えば特開昭59−1
16404号公報などに記載されるガイドノズルを用い
る方法を用いることができるが、仕上げ剤付与装置自体
の摩擦による糸切れ、毛羽の発生を抑制するためにはガ
イドノズルを用いる方法が好ましい。仕上げ剤を繊維に
付与する位置は、溶融マルチフィラメントが冷却風9に
よって室温まで冷却されて固体マルチフィラメント8に
変えられた直後で最も紡口口金6に近い位置が好まし
い。繊維は仕上げ剤を付与すると同時に集束されるの
で、この位置が紡口口金6に近いほど空気抵抗を下げる
事ができ、糸切れ、毛羽の発生を抑えることができるか
らである。
%の水分が含まれていることが好ましい。この水分は仕
上げ剤に含まれる水より繊維に含ませるかあるいは、巻
取以前に、油剤を付与するのと同様なガイドノズルを用
いる方法などを用いて、油剤とは別に付与してもかまわ
ない。繊維に含まれる水の量は0.7〜4重量%が更に
好ましく、1〜3重量%が特に好ましい。水分量がこの
範囲にあることにより、巻取パッケージ端面の綾落ちの
発生や、バルジの発生のな良好なフォームのパッケージ
を得ることが容易となる。
ーン14にて、第一ロール11などで熱処理を受ける。
ここで12は自己駆動しないフリーロールである。 ・本発明のポリエステル繊維はロール等を用いずに、ヒ
ーターなどで熱処理を行った後に直接巻取機にて巻取っ
ても良いが、好ましくは回転しているロールに一度巻き
付けた後に、巻取機で巻取ることが好ましい。ロールと
巻取機の速度を調節することで巻取り張力を制御するこ
とが容易になるからである。 ・繊維の熱処理方法としては、図3の第一ロール11の
みを用いる方法の他に、図4− (イ)の第1ロール11又
は/及び第2ロール15により加熱する方法、図4−
(ロ)の第1ネルソンロール16から第2ネルソンロール
17のうちいずれか一つであるいは、複数のロールで加
熱する方法、図4− (ハ)の第1ヒーター18又は/及び
第二ヒーター19により加熱する方法、図4−(ニ)の
第一ヒーター18により加熱する方法などが挙げられ
る。図4− (ハ)、 (ニ)の場合はヒーターでの熱処理に加
えてロールで熱処理を行っても良い。
のヒーター、非接触式のヒーターいずれを用いてもかま
わない。また、加熱気体を用いる方法でも良い。これら
のうち、加熱ロールを用いる方法が、上記のロールと巻
取機の速度調整と熱処理を同時に行うことができること
より最も好ましい。 ・本発明において、ロールで加熱するといった場合は、
自己駆動しているロールで加熱し、フリーロールでは加
熱していないことを示しているが、もちろんフリーロー
ルで加熱を行ってもかまわない。 ・熱処理の温度は50〜170℃であることが必要であ
る。50℃未満では繊維を十分な結晶化度まで高めるこ
とができないために、巻締まりが起きたり、物性が経時
変化するために工業的に延伸仮撚加工ができなかったり
する。また、170℃を越えると結晶化が進みすぎ、糸
−糸間の静摩擦係数が小さくなってバルジ率が大きくな
ったり、高速での延伸仮撚加工が困難になったりする。
好ましくは60〜150℃、更に好ましくは80〜13
0℃である。
秒であることが好ましい。ここで言う熱処理時間とは、
複数のロールやヒーターで熱処理する場合は、これらの
合計時間である。加熱時間が0.001秒未満では熱処
理時間が短く十分な結晶化を進めることができないた
め、巻締まりやバルジが発生しやすく、また経時変化も
しやすい。一方、加熱時間が0.1秒を越えると、結晶
化が進みすぎ、糸−糸間の静摩擦係数が小さくなりすぎ
てしまい、得られるチーズ状パッケージはバルジの大き
いものとなってしまう。 ・本発明においては、熱処理温度が高くなっても、熱処
理時間が長くなっても、また巻取速度が大きくなっても
結晶化度は高くなる。このため熱処理温度、巻取速度に
応じた熱処理時間を選ぶことがより好ましい。
いて巻取られる。 ・巻取速度は2000〜4000m/分であることが必
要である。巻取速度が2000m/分未満では、繊維の
配向が低いために、熱処理工程にてどのような熱処理を
しても本発明の目的である熱応力のピーク値、密度を兼
ね備えた部分配向繊維を得ることはできず、繊維が脆く
なり、繊維の取扱や延伸仮撚加工が困難となる。また、
4000m/分を越えると、繊維の配向や結晶化が進み
すぎ、本発明の目的である熱応力のピーク値、密度を兼
ね備えた部分配向繊維を得ることができず、糸管上で繊
維が大きく収縮し、巻締まりが発生してしまう。好まし
くは、2200〜3800m/分であり、更に好ましく
は2500〜3600m/分である。
0.02〜0.20g/dであることが必要である。従
来行われてきたPETやナイロンの溶融紡糸でこのよう
に低い張力で巻き取ろうとすると、糸の走行が安定せ
ず、糸が巻取機のトラバースから外れたりして糸切れが
発生したり、巻糸を次の糸管に自動で切り替える時に切
替ミスが発生したりする。しかしながら、驚くべきこと
にPTT繊維では本発明のように極低い張力で巻取って
もこのような問題が発生せず、しかも低い張力とするこ
とで初めて巻締まりなく良好な巻姿のチーズ状パッケー
ジを得ることができる。張力が0.02g/d未満では
張力が弱すぎるために巻取機の綾振りガイドでの綾振り
が良好にできず、巻フォームが悪くなってしまったり、
トラバースより糸が外れ、糸切れが起こったりしてしま
う。0.20g/dを越えると、たとえ繊維を熱処理し
て巻き取ったとしても巻締まりが発生してしまう。巻取
るときの張力は好ましくは0.025〜0.15g/
d、更に好ましくは0.03〜0.10g/dである。
力が上記の範囲内になるように、調整することが好まし
い。通常巻取速度に対して0.90〜1.1倍の速度で
あることが好ましい。第1ロールの前か後、あるいはそ
の両方にロールを設置し、補助的な熱処理や変向、張力
の制御を行ってもかまわない。この際各ロール間では繊
維を1.3倍以上伸ばさないことが好ましい。また第1
ロールの後ろにロールを設置する場合は、このロールの
周速度を調整して巻取張力を上記範囲内にすることが好
ましい。 ・本発明では、紡糸過程で必要に応じて、交絡処理を行
ってもよい。交絡処理は、仕上げ剤付与前、熱処理前、
巻取前のいずれか、あるいは複数の場所で行っても良
い。
ドル駆動方式、タッチロール駆動方式、スピンドルとタ
ッチロールの双方が駆動している方式のいずれの巻取機
でもかまわないが、スピンドルとタッチロールの双方が
駆動している方式の巻取機が糸を多量に巻き取るために
は好ましい。タッチロールあるいはスピンドルどちらか
一方のみが駆動する場合、他方は駆動軸からの摩擦によ
り回転しているため、スピンドルに取り付けられている
糸管とタッチロールでは滑りにより表面速度が異なって
しまう。このためタッチロールからスピンドルに糸が巻
き付けられる際、糸が伸ばされたり、ゆるんだりしてし
まい張力が変わって巻姿が悪化してしまったり、糸がこ
すられてダメージを受けたりしやすい。スピンドルとタ
ッチロールの双方が駆動することによりタッチロールと
糸管の表面速度の差を制御することが可能となって滑り
を減らすことができ、糸の品質や、巻姿を良好にするこ
とができる。
あることが好ましい。3.5°未満では糸同士があまり
交差していないために滑りやすく、綾落ちやバルジの発
生が起こりやすい。また8°を越えると糸管の端部に巻
かれる糸の量が多くなるために中央部に比べ端部の径が
大きくなる。このため巻取っている際は端部のみがタッ
チロールに接触してしまい糸品質が悪化してしまった
り、また巻き取った糸を解舒する際の張力変動が大きく
なり、毛羽や糸切れが多発したりしてしまう。綾角は4
〜7°が更に好ましく、特に好ましいのは5〜6.5°
である。このようにして、本発明の特定のポリエステル
繊維からなるチーズ状パッケージが得られる。
とにより非常にソフトで良好な弾性回復性、およびその
持続性を有した仮撚加工糸とするこができる。延伸仮燃
加工の方法としては、一般に用いられているピンタイ
プ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー
加撚タイプ等いかなる方法でも良いが、本発明の部分配
向PPT繊維の特徴を生かすためには、生産性の高い高
速での延伸仮撚加工ができるフリクションタイプが好ま
しい。仮撚加工条件は特に限定されるものではなく、以
下に例示する公知の条件範囲より適宣選択して行うこと
できる。 フリクションタイプでの仮撚加工条件の一例 仮撚速度 : 300〜1000m/min 仮撚温度 : 100〜200°C ドロー比(延伸倍率): 伸度40%となるように調整
(通常1.05〜2.0倍) 加撚デイスク : セラミック、ウレタン等 デイスク速度/糸速度の比(D/Y比): 1.7〜3
詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例など
により何ら限定されるものでない。尚、実施例中の主な
測定値は以下の方法で測定した。 (1) 極限粘度 極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35
℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C
(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロ
に外挿し、以下の式(I)に従って求めた。 [η]=lim(ηsp/c)・・・(I) C→0 (2) 密度 JIS−L−1013に基づいて、四塩化炭素およびn
−ヘプタンにより作成したポリエステル樹脂試料を密度
勾配管を用いて密度勾配管法にて測定を行った。
プレートX線回折装置RINT2000を用いて下記の
条件にてX線回折像の観察を行い、このX線回折データ
をコンピュータで処理して得られたデジタルデータをイ
メージングプレート(1種の写真乾板)上に二次元の画
像としてプリントアウトして、図1に示す画像(電子デ
ジタル写真)とした。 X線種 : CuKa線 カメラ長 : 94.5mm 測定時間 : 1〜5分(繊維の結晶性に応じて適宜選
択) (4) 複屈折率 光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に
観察される偏光のリターデーションから求めた。
0.05g/d、昇温速度100℃/分で測定した。得
られたデータは、横軸に温度、縦軸に熱応力をプロット
し温度−熱応力曲線を描く。熱応力の最大点の値を熱応
力のピーク値とした。 (6) 沸水収縮率沸 JIS−L−1013に基づき、かせ収縮率として求め
た。 (7) 強度(繊維破断強度)、破断伸度(繊維破断伸度) JIS−L−1013に基づいて定速伸長形引張試験機
であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、
つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定し
た。 (8) U% Zellweger Uster(株)社製のUSTE
R TESTER3を用いて測定を行った。測定は10
0m/分の速度にて行い、5分間の平均値を用いた。
ルで洗浄し、ジエチルエーテルを留去して繊維表面に付
着した純油剤量を繊維重量で割って求めた比率を油剤付
着量とした。 (10)糸−糸間静摩擦係数 約690mの繊維を円筒の周りに、綾角15°で約10
gの張力を掛けて巻き付け、更に上述と同じ繊維30.
5cmをこの円筒に掛けた。この時、この繊維は円筒の
上にあり、円筒の巻き付け方向と平行にする。グラム数
で表した荷重の値が円筒上に掛けた繊維の総デニールの
0.04倍になる重りを円筒に掛けた繊維の片方の端に
結び、他方の端にはストレインゲージを連結させた。次
に円筒を0.016mm/秒の周速で回転させ、張力を
ストレインゲージで測定する。
係数fを以下の式(2) に従って求めた。 f=1/π×ln(T2/T1)・・・(2) ここで、T1は繊維に掛けた重りの重さ、T2は少なくと
も25回測定した時の張力、lnは自然対数、πは円周
率を示す。 (11)バルジ率 図2− (イ)または図2− (ロ)に示す糸層(104)の最
内層の巻幅Q及び、最も膨らんでいる部分の巻幅Rを測
定して、以下の式(3) に従って算出した。 バルジ率={(R−Q)/Q}×100%・・・(3)
3−プロパンジオールを1:2のモル比で仕込み、テレ
フタル酸ジメチルの0.1重量%に相当するチタンテト
ラブトキシドを加え、常圧下ヒーター温度240℃でエ
ステル交換反応を完結させた。次にチタンテトラブトキ
シドを更に理論ポリマー量の0.1重量%、二酸化チタ
ンを理論ポリマー量の0.5重量%添加し、270℃で
3時間反応させた。得られたポリマーの極限粘度は0.
9であった。表1に示した条件に従って、得られたポリ
マーを図3に示した装置を用いて、定法により乾燥し、
水分を50ppmにした後、285℃で溶融させ、直径
0.23mmの36個の孔の開いた一重配列の紡口を通
して押出した。押出された溶融マルチフィラメントは、
長さ5cm、温度100℃の保温領域を通過後、風速
0.4m/minの風を当てて急冷し、固体マルチフィ
ラメントに変えた。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル15重量%、リン
酸カリウム3重量%を含んだ油剤を濃度5重量%の水エ
マルジョン仕上げ剤として、繊維に対して油剤付着量が
0.7重量%となるように付着させた後、固体マルチフ
ィラメントを90℃に加熱した、周速度3200m/m
inの第一ロールに6回巻き付けて熱処理を行った後、
スピンドルとタッチロールの双方を駆動する方式の巻取
機を用いて、巻取速度3190m/分、巻取張力0.0
35g/d、綾角5°にて直径124mm、厚み7mm
の紙製の糸管に巻幅90mmにて6kg巻取って、11
0d/36fの部分配高繊維の巻かれたチーズ状パッケ
ージを得た。得られた繊維物性を表2に記す。得られた
繊維は本発明の範囲に相当するものであり、紡糸過程で
糸切れ、毛羽の発生は認められなかった。また巻取った
チーズ状パッケージは巻取機のスピンドルより容易に抜
け、バルジ率も良好な範囲であった。
いて、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。得られた繊維物性を表2に記す。いずれの繊維も本
発明の範囲に相当するものであり、紡糸過程で糸切れ、
毛羽の発生は認められなかった。また、巻取ったチーズ
状パッケージは巻取機のスピンドルより容易に抜け、バ
ルジ率も良好な範囲であった。実施例2で得た繊維を用
いて、帝人製機(株)SDS1200仮撚加工機にてセ
ラミック製の加撚ディスクを4枚用いて、加工速度40
0m/分、ヒーター温度160℃、ディスク速度/糸速
度の比(D/Y比)2.3、ドロー比(延伸倍率)1.
3で延伸仮撚加工を行った。延伸仮撚加工の際に毛羽や
糸切れは見られず、またPET並みの倦縮形態を有し、
しかもPTT特有のソフトさ、弾性回復性を持った優れ
た仮撚加工糸を得ることができた。また3ヶ月後でも物
性の経時変化はほとんど見られず、延伸仮撚加工を行っ
たところ同じ条件で同品質の仮撚加工糸を得ることがで
きた。
て、表1に示した条件で50d/24fの繊維を得た。
得られた繊維物性を表2に記す。得られた繊維は本発明
の範囲に相当するものであり、紡糸過程で糸切れ、毛羽
の発生は認められなかった。また巻き取ったチーズ状パ
ッケージは巻取機のスピンドルより容易に抜け、バルジ
率も良好な範囲であった。
と1,3−プロパンジオールを1:2のモル比で仕込
み、酢酸カルシウムと酢酸コバルト4水和塩の7:1混
合物をテレフタル酸ジメチルに対して0.1重量%加え
て、常圧下、ヒーター温度240℃でエステル交換し
た。次に、テレフタル酸ジメチルに対して0.1重量%
のチタンテトラブトキシド、0.05重量%のトリメチ
ルホスフェート、理論ポリマー量の0.05重量%の二
酸化チタンを加え、270℃、0.2torrで3時間
反応させた。得られたポリマーの極限粘度は0.7であ
った。表1に示した条件に従って、得られたポリマーを
加熱ゾーンとして図4− (イ)を用いた以外は実施例1と
同様にして表1に示した条件で113d/36fの繊維
を得た。この際し、図4− (イ)の第2ロール15により
熱処理を行った。得られた繊維物性を表2に記す。得ら
れた繊維は本発明の範囲に相当するものであり、紡糸過
程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかった。また巻取
ったチーズ状パッケージは巻取機のスピンドルより容易
に抜け、バルジ率も良好な範囲であった。
フタル酸を2モル%共重合した以外は実施例9と同様に
して得た極限粘度0.7のポリマーを用いて、表1に示
した条件で115d/36fの繊維を得た。得られた繊
維物性を表2に記す。得られた繊維は本発明の範囲に相
当するものであり、紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認
められなかった。また巻き取ったチーズ状パッケージは
巻取機のスピンドルより容易に抜け、バルジ率も良好な
範囲であった。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。得られた繊維物性を表2に記す。紡糸過程で糸切
れ、毛羽の発生は認められなかったが、得られた繊維は
配高性、結晶性ともに不十分で密度、熱応力のピーク値
および伸度が本発明の範囲より外れ、またU%も大きか
った。この繊維を用いて実施例2と同様にして延伸仮撚
加工を行ったが、倦縮率が低く、しかも毛羽が多発する
ものしか得られなかった。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかった
が、巻締まりが発生し、チーズ状パッケージを巻取機よ
り抜き出すことができなかった。1kg程度巻き取って
繊維物性を測定したところ、結晶性のピークは観察され
ず、密度や沸水収縮率も本発明の範囲より外れていた。
この繊維を用いて実施例2と同様にして紡糸翌日と紡糸
1ヶ月後に延伸仮撚加工を行ったが、繊維の物性が変化
していたために同じ品質の仮撚加工糸を得ることはでき
なかった。。
限粘度0.7のポリマーを用いて、表1に示した条件で
110d/36fの繊維を得た。紡糸過程で糸切れ、毛
羽の発生は認められなかったが、巻締まりが発生し、チ
ーズ状パッケージを巻取機より抜き出すことができなか
った。1kg程度巻取って繊維物性を測定したところ、
結晶性のピークは観察されず、密度も本発明の範囲より
外れていた。 (比較例4)実施例1のポリマーを用いて、表1に示し
た条件で110d/36fの繊維を得ようとした。紡糸
過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかったが、巻締
まりが発生し、バルジが大きく、チーズ状パッケージを
巻取機より抜き出すこともできなかった。1kg程度巻
取って繊維物性を測定したところ、結晶化が進み過ぎ、
密度が本発明の範囲より外れていた。
以外は、実施例1と同様にして繊維を得ようとした。巻
締まりは発生しないものの得られたチーズ状パッケージ
はバルジが大きく、取り扱いが困難であった。繊維物性
を測定したところ、結晶化が進み過ぎ、密度および糸−
糸間の静摩擦係数が本発明の範囲より外れていた。また
この繊維を用いて実施例2と同様にして延伸仮撚加工を
行ったがPET並みの倦縮形態を有した仮撚加工糸を得
ることはできなかった。 (比較例6)実施例1のポリマーを用いて、表1に示し
た条件で110d/36fの繊維を得た。紡糸過程で糸
切れ、毛羽の発生は認められなかったが、油剤付着率が
大きいため、得られたチーズ状パッケージはバルジが大
きく、取り扱いが困難であった。またこの繊維を用いて
実施例2と同様にして延伸仮撚加工を行おうとしたがガ
イド類の汚れが激しいため、毛羽が多発した。
て、油剤付着量を0.1重量%とした以外は実施例1と
同様にして110d/36fの繊維を得ようとしたが、
油剤付着率が低いため、紡糸過程で糸切れが多発し、繊
維を得ることができなかった。 (比較例8、9)実施例1のポリマーを用いて、表1に
示した条件で110d/36fの繊維を得ようとした。
紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかったが、
比較例8では巻き取り張力が高かったために巻締まりが
発生し、チーズ状パッケージを巻取機より抜き出すこと
ができず、比較例9では巻き取り張力が低すぎたため、
紡糸過程で糸切れが多発した。
により乾燥し、水分を40ppmにした後、285℃で
溶融させ、直径0.23mmの36個の孔の開いた一重
配列の紡口を通して押出した。押出された溶融マルチフ
ィラメントは、長さ8cm、温度60℃の保温領域を通
過後、風速0.35m/minの風を当てて急冷し、実
施例1と同じ油剤を濃度10重量%の水エマルジョン仕
上げ剤として、繊維に対して油剤付着量が1重量%とな
るように付着させた後、未延伸糸を1600m/分にて
巻き取った。得られた未延伸糸を直ちに55℃の予熱ロ
ールを通し、その後140℃のホットプレートを通して
延伸倍率3.2倍で延伸を行い、75d/36fの延伸
糸を得た。得られた糸の物性を表2に示す。このように
延伸糸は配高、結晶化が進んでいるため密度、複屈折
率、熱応力のピーク値が本発明の範囲に比べて高く、ま
た伸度が本発明の範囲に比べて低い。この繊維を用いて
実施例2と同様に延伸仮撚加工を行おうとしたが、糸切
れ、毛羽が多発し、延伸仮撚加工を行うことはできなか
った。
例10と同様にして100d/36fの繊維を得た。部
分配高繊維と同程度の破断伸度の繊維を得ようとした
が、延伸むらが発生し、糸径むらの大きい繊維しか得ら
れなかった。この繊維のU%は3.5%と非常に大き
く、他の物性はバラツキが非常に大きく測定困難であっ
た。
晶性と配向性を兼ね備えた部分配向PTT繊維である。
このため、巻取の際に巻締まりが起こりにくく良好な巻
姿のチーズ状パッケージを得ることができ、工業的に製
造することができる。また、繊維が経時変化しにくいた
めに高速の延伸仮撚加工においても長期間にわたって同
一条件にて同じ品質の仮撚加工糸を工業的に製造するこ
とができる。本発明のポリエステル繊維は、延伸を行わ
ずに、1段階の紡糸工程のみで繊維を得ることができる
ために生産性が高く、低コストにて繊維を製造すること
ができ、巻き量が多いために巻取時や加工時の切り替え
工数が少なく製造作業を効率良く進めることができる。
本発明の部分配向PTT繊維を用いて製造した仮撚加工
糸は、ソフトな風合いと高い伸縮伸長率、伸縮弾性率を
持った極めて優れたストレッチ素材として好適な仮撚加
工糸となる。このためいわゆるゾッキや交編タイプのパ
ンティストッキング、タイツ、ソックス(裏糸、口ゴ
ム)、ジャージー、弾性糸のカバリング糸、交編パンテ
ィストッキング等交編品の伴糸等に有用である。
する回折像が観察される広角X線回折像を示すデジタル
画像(写真)である。 (ロ)本発明のポリエステル繊維の結晶性に由来する回折
像が観察されない広角X線回折像を示すデジタル画像
(写真)である。
チフィラメントを巻き付けたチーズ状パッケージの状態
を示す概略図である。図2− (イ)はその望ましいチーズ
状パッケージを示す概略図であり、図2− (ロ)はバルジ
のあるチーズ状パッケージを示す概略図である。
ある。
示す模式図である。
8)
加工に適したポリトリメチレンテレフタレート繊維、そ
のチーズ状パッケージ及びそれからの仮撚加工糸に関す
る。更に詳しくは、本発明は、工業的に製造可能で、長
期間にわたって安定した延伸仮撚加工ができる部分配向
ポリトリメチレンテレフタレート繊維およびその繊維を
製造する方法に関する。
長期間にわたって安定した延伸仮撚加工ができる部分配
向PTT繊維およびその製造方法、そのチーズ状パッケ
ージ、それからの仮撚加工糸およびその仮撚加工方法を
提供するものである。本発明の目的を達成するために解
決すべき課題は、上記(A)問題に対応して工業的な製造
を可能とするために、巻締まりおよびバルジの発生を抑
制し、上記(B) 問題に対応して工業的な延伸仮撚加工を
可能とするために、室温で物性が経時変化しない部分配
向PTT繊維とすることである。
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを
溶融紡糸する方法において、紡口より押出した溶融マル
チフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変
え、50〜170℃で熱処理を行った後、0.02〜
0.20g/dの巻取張力にて2000〜4000m/
分の速度で巻き取る、ポリエステル繊維の製造方法を提
供する。また、 90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返
単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを
溶融紡糸する方法において、紡口より押出した溶融マル
チフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変
えた後、該繊維に対して0.2〜3重量%となるように
油剤を付与し、その後50〜170℃で熱処理を行った
後、0.02〜0.20g/dの巻取張力にて2000
〜4000m/分の速度で巻き取る、ポリエステル繊維
の製造方法を提供する。(D) ポリエステル繊維を用いた仮撚加工糸とその仮撚加
工方法 〜記載のポリエステル繊維を用いた仮撚加工
糸。 〜記載のポリエステル繊維をフリクションタイ
プの仮撚加工機にて延伸仮撚加工した仮撚加工糸 。 仮撚速度300〜1000m/分、仮撚温度100
〜200℃で仮撚加工した記載の仮撚加工糸。 〜記載のポリエステル繊維を用いる仮撚加工方
法 。 フリクションタイプの方法を用いる、記載のポリ
エステル繊維の延伸仮撚加工方法 。 仮撚速度300〜1000m/分、仮撚温度100
〜200℃で仮撚加工を行う記載の延伸仮撚加工方
法 。
して油剤が0.2〜3重量%付着するようにするのが好
ましく、0.2〜2重量%であることが更に好ましい。
油剤の付着量が0.1重量%以下では、仕上げ剤を付与
する目的である、繊維の集束性、制電性、滑り性などが
悪化してしまい、巻取時や、後加工時に毛羽や糸切れが
多発してしまう。油剤の付着量が3重量%を越えると、
糸−糸間の静摩擦係数が低くなりすぎ、バルジが発生し
やすくなってしまったり、繊維がべとついて取扱性が悪
化したり、紡糸、巻取りの際に用いるガイド類、ロール
類に油剤が付着して汚れてしまい、毛羽や糸切れの原因
となってしまったりする。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかった
が、油剤付着率が大きいため、得られたチーズ状パッケ
ージはバルジが大きく、取り扱いが困難であった。また
この繊維を用いて実施例2と同様にして延伸仮撚加工を
行おうとしたがガイド類の汚れが激しいため、毛羽が多
発した。 (参考例2)実施例1のポリマーを用いて、表1に示し
た条件で110d/36fの繊維を得ようとした。紡糸
過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかったが、巻取
り張力が高かったために巻締まりが発生し、チーズ状パ
ッケージを巻取機より抜き出すことができなかった。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。得られた繊維物性を表2に記す。紡糸過程で糸切
れ、毛羽の発生は認められなかったが、得られた繊維は
配高性、結晶性ともに不十分で密度、熱応力のピーク値
および伸度が本発明の範囲より外れ、またU%も大きか
った。この繊維を用いて実施例2と同様にして延伸仮撚
加工を行ったが、倦縮率が低く、しかも毛羽が多発する
ものしか得られなかった。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得
た。紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかった
が、巻締まりが発生し、チーズ状パッケージを巻取機よ
り抜き出すことができなかった。1kg程度巻き取って
繊維物性を測定したところ、結晶性のピークは観察され
ず、密度や沸水収縮率も本発明の範囲より外れていた。
この繊維を用いて実施例2と同様にして紡糸翌日と紡糸
1ヶ月後に延伸仮撚加工を行ったが、繊維の物性が変化
していたために同じ品質の仮撚加工糸を得ることはでき
なかった。。
て、表1に示した条件で110d/36fの繊維を得よ
うとした。紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められな
かったが、巻締まりが発生し、バルジが大きく、チーズ
状パッケージを巻取機より抜き出すこともできなかっ
た。1kg程度巻取って繊維物性を測定したところ、結
晶化が進み過ぎ、密度が本発明の範囲より外れていた。
以外は、実施例1と同様にして繊維を得ようとした。巻
締まりは発生しないものの得られたチーズ状パッケージ
はバルジが大きく、取り扱いが困難であった。繊維物性
を測定したところ、結晶化が進み過ぎ、密度および糸−
糸間の静摩擦係数が本発明の範囲より外れていた。また
この繊維を用いて実施例2と同様にして延伸仮撚加工を
行ったがPET並みの倦縮形態を有した仮撚加工糸を得
ることはできなかった。
て、油剤付着量を0.1重量%とした以外は実施例1と
同様にして110d/36fの繊維を得ようとしたが、
油剤付着率が低いため、紡糸過程で糸切れが多発し、繊
維を得ることができなかった。 (比較例6)実施例1のポリマーを定法により乾燥し、
水分を40ppmにした後、285℃で溶融させ、直径
0.23mmの36個の孔の開いた一重配列の紡口を通
して押出した。押出された溶融マルチフィラメントは、
長さ8cm、温度60℃の保温領域を通過後、風速0.
35m/minの風を当てて急冷し、実施例1と同じ油
剤を濃度10重量%の水エマルジョン仕上げ剤として、
繊維に対して油剤付着量が1重量%となるように付着さ
せた後、未延伸糸を1600m/分にて巻き取った。得
られた未延伸糸を直ちに55℃の予熱ロールを通し、そ
の後140℃のホットプレートを通して延伸倍率3.2
倍で延伸を行い、75d/36fの延伸糸を得た。得ら
れた糸の物性を表2に示す。このように延伸糸は配高、
結晶化が進んでいるため密度、複屈折率、熱応力のピー
ク値が本発明の範囲に比べて高く、また伸度が本発明の
範囲に比べて低い。この繊維を用いて実施例2と同様に
延伸仮撚加工を行おうとしたが、糸切れ、毛羽が多発
し、延伸仮撚加工を行うことはできなかった。
6と同様にして100d/36fの繊維を得た。部分配
高繊維と同程度の破断伸度の繊維を得ようとしたが、延
伸むらが発生し、糸径むらの大きい繊維しか得られなか
った。この繊維のU%は3.5%と非常に大きく、他の
物性はバラツキが非常に大きく測定困難であった。
Claims (8)
- 【請求項1】 90モル%以上がトリメチレンテレフタ
レート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフ
タレートからなり、下記(I)〜(5) の要件を満足するこ
とを特徴とするポリエステル繊維。 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% - 【請求項2】 下記式(A) で示される、糸−糸間の静摩
擦係数Fと繊維の総繊度d(デニール)より計算した繊
度補正静摩擦係数Gが0.06〜0.20であることを
特徴とする、請求項1記載のポリエステル繊維。 G=F−0.00383×d ・・・ (A) - 【請求項3】 90モル%以上がトリメチレンテレフタ
レート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフ
タレートからなり、下記(I)〜(5) の要件を満足し、更
に該繊維がチーズ状パッケージに巻かれていることを特
徴とするポリエステル繊維。 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% - 【請求項4】 下記式(A) で示される、糸−糸間の静摩
擦係数Fと繊維の総繊度d(デニール)より計算した繊
度補正静摩擦係数Gが0.06〜0.20であることを
特徴とする、請求項3記載のポリエステル繊維。 G=F−0.00383×d ・・・ (A) - 【請求項5】 90モル%以上がトリメチレンテレフタ
レート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフ
タレートからなり、下記(I)〜(5) の要件を満足し且つ
ポリエステル繊維が巻き付けられ、バルジ率が20%以
下であることを特徴とする、チーズ状パッケージ。 (1) 密度 : 1.320〜1.340g/cm3 (2) 複屈折率 : 0.030〜0.070 (3) 熱応力のピーク値 : 0.01〜0.12g/d (4) 沸水収縮率 : 3〜20% (5) 破断伸度 : 40〜140% - 【請求項6】 巻き付けられている繊維の、下記式(A)
で示される、糸−糸間の静摩擦係数Fと繊維の総繊度d
(デニール)より計算した繊度補正静摩擦係数Gが0.
06〜0.20であることを特徴とする、請求項5記載
のチーズ状パッケージ。 G=F−0.00383×d ・・・ (A) - 【請求項7】 90モル%以上がトリメチレンテレフタ
レート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフ
タレートを溶融紡糸する方法において、紡口より押出し
た溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラ
メントに変え、50〜170℃で熱処理を行った後、
0.02〜0.20g/dの巻取張力にて2000〜4
000m/分の速度で巻き取ることを特徴とする、ポリ
エステル繊維の製造方法。 - 【請求項8】 90モル%以上がトリメチレンテレフタ
レート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフ
タレートを溶融紡糸する方法において、紡口より押出し
た溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラ
メントに変えた後、該繊維に対して0.2〜3重量%と
なるように油剤を付与し、その後50〜170℃で熱処
理を行った後、0.02〜0.20g/dの巻取張力に
て2000〜4000m/分の速度で巻き取ることを特
徴とする、ポリエステル繊維の製造方法。
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