JP2001013531A - 光学装置及びその製造方法、並びに撮像装置 - Google Patents

光学装置及びその製造方法、並びに撮像装置

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JP2001013531A
JP2001013531A JP11187318A JP18731899A JP2001013531A JP 2001013531 A JP2001013531 A JP 2001013531A JP 11187318 A JP11187318 A JP 11187318A JP 18731899 A JP18731899 A JP 18731899A JP 2001013531 A JP2001013531 A JP 2001013531A
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electrode
oxide layer
tin oxide
optical device
silver
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English (en)
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Toru Kihira
徹 紀平
Toru Uko
融 宇高
Mitsunobu Sekiya
光信 関谷
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銀膜の着色の度合を小さく抑え、透明電極の
抵抗が小さく抑えられて電解液の副反応が生じないよう
な、優れた分光特性を有する光学装置及びその製造方
法、更にはその光学装置を組込んだ撮像装置を提供する
こと。 【解決手段】 ITO層33上に薄膜の酸化錫層35を
積層して、2層構造の作用電極2a〜2e、3a〜3e
を形成する。これにより、作用電極の表面に電析させた
金属膜の着色が小さく抑えられて優れた分光特性を発揮
すると共に、酸化錫層が薄いので、駆動時の作用電極の
分極を小さく抑えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光学装置及びその製
造方法、並びに撮像装置に関し、例えば、数字若しくは
文字表示又はX−Yマトリックス表示等を行うための表
示装置や、可視光域(波長λ=400〜700nm)に
おいて光透過率又は光反射率の制御が可能な光学フィル
ター等に好ましく適用される光学装置及びその製造方
法、並びに前記光学装置を光量絞り等に適用した撮像装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、エレクトロクロミック表示素
子(以下、「ECD」と略することがある。)は、例え
ば電圧駆動型のデジタル時計などの表示装置に採用され
ている。そしてこのECDは非発光型の表示素子であ
り、電気化学調光素子として、反射光や透過光による表
示であるため長時間の観察によっても疲労感が少ない等
の利点を有する。
【0003】例えば、特開昭59−24879号公報に
開示されているように、液体型ECDとして可逆的に着
色/消色状態を形成する有機分子系のビオロゲン分子誘
導体をEC材料に用いるものが知られている。
【0004】しかしながら、ビオロゲン分子誘導体など
のEC材料をECD素子に利用した場合、応答速度や遮
蔽度が不十分である点で問題があった。しかも光量調節
デバイスとしては、可視光領域(波長:400〜700
nm)において光透過率を制御できることが必要になる
が、上記のようなEC材料では充分な特性は得られなか
った。
【0005】そこで、本発明者はECDに置き換えて、
金属塩の析出/溶解を利用した調光素子に着目し、銀の
析出/溶解を用いた電気化学的調光素子の検討を行った
結果、応答速度や遮蔽度において、EC材料より優れた
特性を得ることができた。
【0006】このような光学装置によれば、電解液用の
溶液を作製した際に、その溶液が可視光域(波長:40
0〜700nm)において吸収を持たず、かつ、着色時
に可視光域においてほぼ均等な遮蔽が可能な銀(錯)塩
を銀の析出/溶解を生じさせるような可逆的なメッキ、
即ち、RED(Reversible Electro-Deposition)の材料
として用いており、しかも、この銀(錯)塩は駆動制御
によって析出/溶解の可能性に富むものである。これに
反し、銀(錯)塩からの銀の析出に関して、めっき浴と
して用いるシアン系溶液が従来から知られているが、シ
アン系溶液では、安全な作業環境の確保や、その廃液の
処理の問題がある。この点から、本発明では、非シアン
系の銀塩を用いるのが望ましい。
【0007】従って、銀(錯)塩から銀を透明電極上に
析出/溶解させる可逆的な系を用いることにより、即
ち、可逆的なめっき材料であるRED(Reversible Ele
ctro-Deposition)材料を用いることにより、低消費電力
で非発光型の可視光域に好適な光学フィルタなどの光学
装置を作製することができる。
【0008】図12及び図13に、この従来の電気化学
的調光素子のセル構造を示す。
【0009】図12(a)及び図13に示すように、一
対の透明ガラス基板24、25が一定の間隔を置いて表
示窓として配置されている。図12(a)に示すよう
に、各基板24、25の内面にはITO(Indium tin o
xide:酸化インジウムに錫をドープして得られたもの)
からなる作用電極22、23が対向して設けられ、この
対向する作用電極22、23間に銀塩溶液21が配され
ている。26は、基板24、25間の全周にスペーサー
を兼ねて設けられた銀板からなる対極である。
【0010】銀塩溶液21は、例えば、臭化銀をジメチ
ルスルホキシド(DMSO)に溶解させたもので、図示
の如く、対極26を陽極、作用電極22、23を陰極と
して、それらの間に所定時間だけ直流の駆動電圧を印加
すると、銀塩に Ag+ +e- →Ag なる酸化還元反応が陰極側において生じ、このAg析出
物により陰極側の作用電極22、23が透明→着色状態
に移行する。図12(b)は、この時の作用を示す原理
図である。
【0011】このように、作用電極22、23上にAg
を析出させることにより、表示窓からはそのAg析出物
による特定の色(例えば、反射光)が観察される。この
着色によるフィルター作用、即ち、可視光の透過率(又
は着色の濃淡)は電圧の大きさ若しくはその印加時間と
ともに変化し、従って、それらを制御することによっ
て、このセルを透過率可変表示素子又は光学フィルター
として機能させることができる。
【0012】一方、この着色状態の時、対極26と作用
電極22、23との間に上述とは逆の方向に直流電圧を
印加すると、その上にAgが析出している作用電極2
2、23が今度は陽極側となり、そこで Ag→Ag+ +e- なる反応が起こって、作用電極22、23上に析出して
いたAgが銀塩溶液21中に溶解する。これにより、着
色状態だった作用電極22、23が着色→透明状態に復
元する。
【0013】図14及び図15に、従来の別の電気化学
的調光素子を示す。
【0014】この例では、図14の断面図に示すよう
に、セルを構成する一対の透明ガラス基板4、5が一定
の間隔を置いて配置され、各基板4、5の内面に、各一
対のITOからなる作用電極2a、2b、2c、2d、
2e及び3a、3b、3c、3d、3eが夫々互いに対
向して設けられている。これらの作用電極2a〜2e及
び3a〜3eの外周部には、銀板からなる対極7a、7
bが設けられている。基板4と5は、スペーサー6によ
り所定間隔に保持され、その間に銀塩溶液1が封入され
ている。
【0015】図15の平面図に示すように、作用電極2
a〜2e、3a〜3e及び対極7a、7bは同心円状の
パターンに形成されている。各電極2aと3a、2bと
3b、2cと3c、2dと3d、2eと3e、7aと7
bは、夫々、駆動電源8a、8b、8c、8d、8e、
8fにクロム細線等からなる配線9a、9b、9c、9
d、9e、9fにより接続されている。
【0016】この構成では、互いに対向する作用電極2
aと3a、2bと3b、2cと3c、2dと3d、2e
と3eに夫々所定の電位(V1 、V2 、V3 、V4 、V
5 とする。V6 は対極7a、7bにおける基準電位。)
を与えることにより、陰極である各電極上に銀塩溶液1
から銀を析出させ、着色することができる。この着色に
よるフィルター作用、即ち、可視光の透過率(又は着色
の濃淡)は電圧の大きさ又はその印加時間とともに変化
する。
【0017】そこで、V1 =V2 =V3 =V4 =V5
すれば、セルの全域に亘って一様に着色することがで
き、且つ、電圧又はその印加時間に応じて濃度の程度を
一様に変化させることができる。また、例えば、|V1
|<|V2 |<|V3 |<|V4 |<|V5 |とすれ
ば、中心部から周辺へ行くに従い着色濃度が大となる
(換言すれば、透過率が小となる。)。逆に、|V1
>|V2 |>|V3 |>|V4 |>|V5 |とすれば、
中心部から周辺へ行くに従い透過率が大となる。この構
成は、テレビカメラ等のCCD(電荷結合素子)用の光
学絞りとして有用であり、CCDの集積度の向上に充分
に対応できる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の電気化
学的調光素子では、作用電極としてインジウムに錫をド
ープして得られたものを使用しているが、この場合電析
させた銀膜に色がつくことがあった。例えば、市販され
ているITOではIn/Snの元素比が4(8:2)〜
9(9:1)程度であるが、これを作用電極に用いた場
合には、室温において析出した銀膜は500〜600n
mに吸収がみられ、赤色に着色する。このようになる
と、調光した時に撮像した画が銀膜の色に着色するとい
う不具合が生じる。
【0019】この問題解決の検討の中で本発明者は、錫
の含有量が多くなるほど析出した銀膜の分光特性が優
れ、インジウムを含まない酸化錫単体上へ析出した銀膜
の分光特性が最も優れていることを見出しているが、作
用電極膜中の錫の含有量が多くなるほど、逆に作用電極
の抵抗値は大きくなっていく。
【0020】例えば、通常のITOでは膜の結晶性によ
って異なるが、4端子法で測定した表面抵抗は3〜10
Ω/m程度であるのに対し、酸化錫の膜では100Ω/
m以上に及ぶ場合が多く、このように作用電極の抵抗が
大きくなると、素子を駆動させたときに平衡電位からの
ずれ(即ち分極)が大きくなる。
【0021】そして、このように作用電極の分極が大き
くなると、電解液成分の分解等種々の副反応が起こり得
る。特に銀塩等を溶解させた電解液系の場合には、例え
ば支持電解質として溶解させているヨウ素イオンが酸化
されて分子化したためと考えられるが、電解液が黄色に
着色するのが観測され、同様な不具合が生じてしまう。
【0022】一方、CCD(Charge coupled device)カ
メラの光量調整には、これまで機械的な光量絞りが用い
られてきた。しかしながら、CCDカメラの小型化が進
むに従い、前記の機械的な光量絞りでは、絞り領域が小
さくなるにつれて、反対にそれを駆動させる周囲の機械
構成が大がかりとなり、システム全体としての小型化に
は限界があった。また、CCDの小型化が進むにつれ、
前記の機械的な光量絞りでは光の回折の影響で像がぼや
けるなど、種々の問題が生じてきた。
【0023】そこで本発明の目的は、電極の抵抗を小さ
く抑え優れた分光特性を持った光学装置及びその製造方
法と、この光量装置を光量調節に適用することによっ
て、システムの小型化、像のぼやけ防止などを実現した
撮像装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、インジ
ウムに錫をドープした酸化物層と酸化錫層との積層体に
よって形成された電極を有する光学装置(以下、本発明
の光学装置と称する。)に係るものである。
【0025】本発明の光学装置によれば、インジウムに
錫をドープした酸化物層(例えば透明電極)と酸化錫層
との積層体で電極が形成されているため、この酸化錫層
によって電極上に金属などが被着される場合のその分光
特性が向上し、また、酸化物層の厚さを薄く(例えば1
30nm以下)することによって電極全体としての抵抗
を小さく抑えることができる。その結果、装置駆動時の
電極の分極を小さく抑えることが可能となる。
【0026】また、本発明は、インジウムに錫をドープ
した酸化物層と酸化錫層との積層体によって形成された
電極を有する光学装置を製造するに際し、前記酸化錫層
を気相成膜法で形成する、光学装置の製造方法(以下、
本発明の製造方法と称する。)に係るものである。
【0027】本発明の製造方法によれば、気相成膜法と
して、例えばスパッタリング又は真空蒸着法により同じ
真空装置内において、ターゲットや放電条件などを変え
れば、前記酸化錫層を前記酸化物層と連続して成膜する
ことができると共に、酸化錫層を所望の膜質、膜厚に形
成できるため、上記したと同様の効果が奏せられる再現
性の良い光学装置の製造方法を提供することができる。
【0028】また、本発明は、インジウムに錫をドープ
した酸化物層と酸化錫層との積層体によって形成された
電極を有する光学装置が、光路中に光量調節用として設
けられている撮像装置(以下、本発明の撮像装置と称す
る。)に係わるものである。
【0029】本発明の撮像装置によれば、それに取付け
た前記光学装置が分光特性に優れる上に電界の印加によ
って光量を調節できるため、これまでの機械的な光量絞
りと違って大がかりな機械構成を必要とせず、実質的に
光路の有効範囲の大きさまで小型化することができ、ま
た光量を印加電界の大きさで制御して回折を防止し、像
のぼやけ等も効果的に防止することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0031】上記した本発明の光学装置及び製造方法に
おいては、光透過率が可視光域において70%以上であ
る前記電極としての作用電極と、対極と、これらの電極
に接して配された電解液とを有し、この電解液への印加
電界により電気化学的に調光される光学装置に好適に適
用することができる。
【0032】この場合、前記酸化物層を覆うように前記
酸化錫層が5nm以上、130nm以下、好ましくは5
nm〜10nmの厚さに積層されていることが望まし
い。
【0033】更に、前記酸化錫層が気相成膜法により形
成されていることが望ましく、気相成膜法としては、ス
パッタリング及び蒸着法又は化学的気相成長法を用いて
好適に成膜することができる。
【0034】これにより、互いに対向して配された一対
の透明又は半透明基板と、この一対の透明又は半透明基
板の対向面の少なくとも一方の面に設けられた前記作用
電極と、この作用電極及び前記対極に接して前記透明又
は半透明基板間に配された前記電解液としての銀塩溶液
とを有する光学装置を良好に駆動することができ、更
に、CCDカメラの如き撮像装置として構成することが
できる。
【0035】以下、本発明の好ましい実施の形態を図面
を参照して更に詳細に説明する。
【0036】図1を参照して、図14及び図15で説明
したのと同様の光学フィルター(電気化学的調光素子)
に本発明を適用した実施の形態を説明する。
【0037】本実施の形態の光学装置では、図1(a)
に示すように、セルを構成する一対の透明基板(例え
ば、ガラス基板)4、5が一定の間隔を置いて配置さ
れ、各基板4、5の内面(対向面)に、各一対の作用電
極(以下、透明電極又はITO電極と称することがあ
る。)2a、2b、2c、2d、2e及び3a、3b、
3c、3d、3eが夫々互いに対向して設けられ、その
外側に対極17a、17b及び参照極27a、27bが
設けられている。基板4と5は、スペーサー6により所
定間隔に保持され、その間に銀塩溶液1が封入されてい
る。
【0038】本実施の形態では、作用電極2a〜2e及
び3a〜3eを、次のように構成している。即ち、図1
(a)の一部分を抽出して拡大図示した図1(b)に示
すように、基板4、5上に厚さ約200nmのITO
(In/Sn=9)の上に厚さ約5nmの酸化錫の薄い
層を例えばスパッタリング等の気相成膜法によって2層
構造に形成している。なお、作用電極2a〜2e及び3
a〜3e並びに対極17a、17bの平面形状は、図1
5に示したものと実質的に同一である。
【0039】上記した2層構造の作用電極の形成には、
金属又はその酸化物をターゲットとして、減圧又は常圧
中で直流電圧若しくは直流電圧に交流電圧を印加して上
記金属又はその酸化物の薄膜を成膜するスパッタリン
グ、金属またはその酸化物を溶融させて蒸気化して成膜
する蒸着法、所望の金属を含むガスを気化させ、直流電
圧若しくは直流電圧に交流電圧を印加して化学的に活性
化させ、被対象物に所望の金属を含む膜を形成する化学
的気相成長法(CVD)など、種々の気相成膜法が好ま
しく用いられる。
【0040】また、前記スパッタリングで使用するター
ゲットでは、成膜成分元素を含む化合物の単結晶又は多
結晶体を使用する。ターゲット内の元素組成比によっ
て、成膜の組成が制御可能である。たとえばITOに酸
化錫を混入した多結晶体では、混入させる酸化錫の量を
変えることによって、膜の成分を制御することができ
る。
【0041】また前記ターゲットは、膜の抵抗値を低減
させる等の理由により、フッ素やアンチモンといった異
種元素を若干量混入させたものを使用してもよい。
【0042】スパッタリングによる成膜時には、反応槽
内の温度は適切に調整する。成膜時の結晶性と非晶質性
との臨界温度は、膜内のIn/Sn比にも依存するた
め、その温度は、所望のIn/Sn比に応じた適切な温
度に調整するのが望ましい。
【0043】スパッタリングは、反応槽内をいったん脱
気し、主にアルゴンを槽内に導入しながら行う。成膜す
る膜のシート抵抗値などの諸物性値の仕様により、必要
に応じて若干量の酸素を混入させてもよい。
【0044】また、透明電極を電気化学的又は物理的に
修飾することにより、透明電極への銀の析出電位を下
げ、銀の析出を容易とし、透明電極や溶液自身が電気的
に受ける損傷を軽減させることができる。
【0045】この場合の化学的修飾法として、錫溶液及
びパラジウム溶液の二液処理法によるパラジウム等によ
って透明電極の表面処理(化学めっき)を行うのが好ま
しい。即ち、パラジウムによる透明電極の表面活性化処
理として、ITO単独基板上にパラジウム核を析出させ
ることで透明電極表面上の活性を高める。
【0046】この場合、錫溶液としては、塩化錫(Sn
Cl2 )0.10〜1.0gを濃度0.010〜0.1
0%で、1リットルのHClに溶解させたもの、パラジ
ウム溶液としては、塩化パラジウム(PdCl2 )0.
10〜1.0gを濃度0.010〜0.10%で、1リ
ットルのHClに溶解させたものが使用できる。
【0047】また、物理的修飾法としては、銀より貴な
金属等を透明電極上へ蒸着する方法が採用可能である。
【0048】対極は、電析金属を異種金属面上に析出溶
解させることもできる。例えば、銀塩を含む電解液を使
用した場合には、白金、金、パラジウムのような銀より
もイオン化傾向の小さい金属上に、銀を電析させること
が可能である。
【0049】また、対極の第1層を白金、パラジウムま
たは金の金属で構成し、その表面上に銀を電析させれ
ば、電極の電位を安定化させることが可能となる。
【0050】即ち、対極の最表面に、銀よりも貴な電位
を示し、且つ、銀の析出/溶解反応を円滑に進行させる
金属を用いているので、安定で素子駆動時の対極の分極
(分極電位)を小さく抑えることが可能であり、消費電
力の低減のみならず、副反応の抑制も実現できる。
【0051】上記の場合には、白金、パラジウム、金と
いった金属の薄膜は、例えば、ガラスなどとの密着性が
低いため、上記の金属をガラスなどの絶縁基板上に形成
させる場合には、白金もしくはパラジウム又は金を含む
層を第1層とし、絶縁基板との間に良導体で且つ膜付き
の良いチタン、クロム、タングステンといった金属や、
ITOや酸化錫といった金属酸化物を、第2層として介
在させるのがよい。
【0052】即ち、絶縁基板上に、第2層を形成した後
に、第1層を形成した対極とする。この場合、条件によ
り第2層が電解液に対して化学的に不安定になる場合や
電解液との間に反応を起こす場合もあるので、第2層を
覆い尽くし、第2層が電解液と直接接しない構造とする
のが望ましい。
【0053】前記第1層または第2層の金属又は金属酸
化物は、蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法又は
めっき法によって形成することができる。
【0054】即ち、第1層または第2層の金属又は金属
酸化物は、金属又は金属酸化物を減圧中で蒸気化させて
所定の表面に成膜させる蒸着法や、金属又は金属酸化物
をターゲットとして減圧又は常圧中で、交流電圧若しく
は交流電圧に直流電圧を加えて印加することによって、
所定の表面に所望の金属又は金属酸化物を成膜させるス
パッタリング法等が好ましく用いられる。前記の蒸着法
には高真空中で抵抗加熱によって金属又は金属酸化物を
蒸気化させる方法や、ターゲット金属又は金属酸化物に
電子線照射を施すことによって蒸気化させる方法(EB
蒸着)等を用いることが可能であり、いずれの手法によ
っても本発明の効果に変わりはない。
【0055】なお、白金若しくはパラジウム又は金との
密着性が良好な絶縁基板、例えば二酸化珪素などの上に
成膜する場合には、白金もしくはパラジウム又は金の層
と、絶縁基板との間には、前記の第2層の介在は任意で
あることは言うまでもない。
【0056】また、白金、パラジウム若しくは金の金属
は、基板上に成膜する外、上記の金属を予め所定の形状
に加工を施し、基板表面の対応する凹部に埋め込んでも
よい。この埋め込み(又は嵌合)固定による場合、必要
とあれば接着剤を用いて凹部に嵌め込んで固定する等、
基板上に配置し易いという利点もある。しかしながらこ
の場合には、電極は形状的に鋭利な角を有する場合が多
くなるので、図16に示すように、電極の角の尖った部
分に電界集中が生じ、そのために対極上に不活性な粒子
状の銀が析出する結果、その不活性な銀粒子が銀塩溶液
中に浮遊して、素子の透明度を低下させたり、電極間を
短絡させたりすることが起こりうる。したがって、前記
の気相成膜法がより好適である。
【0057】また、白金およびパラジウム、又は金は銀
より貴な金属であるため、浸漬したときに生じる自然電
位は、銀に対して高い電位を示す。例えば25℃の水溶
液中における標準電極電位は、白金の場合1.188V
であり、パラジウムは0.915V、金は1.50Vで
ある。銀の標準電極電位は0.7991Vであるので
(いずれも化学便覧より抜粋)、銀に対して白金は0.
389V貴な電位を示し、パラジウムは0.116V貴
な電位、金は0.70V貴な電位を示すことになる。ま
た、ジメチルスルホキシド(DMSO)/アセトニトリ
ル(AN)=55/45混合の非水溶媒においても、銀
に対する白金若しくはパラジウムの相対電位はそれぞれ
水溶液中における電位に近い貴な電位を示すことが確認
できる。
【0058】対極として、これらの金属をそのまま使用
することが光学装置の性能を発揮せしめる上で全く支障
はないが、光学装置駆動時の対極の分極値をより小さく
抑えるためには、上記金属上に予めより卑な異種金属元
素の層を形成させておくのがよい。例えば、銀塩溶液を
使用する場合に、白金若しくはパラジウム、又は金はこ
の上に銀の層を形成させておけば、本電極を上記溶液に
浸漬したときに示す電位は銀とほぼ同じとすることがで
き、銀の析出/溶解反応に可逆性に優れた電極を得るこ
とができる。
【0059】前記の異種金属元素の層は、前述の気相成
膜法や、電解メッキによって形成することが可能であ
り、いずれの方法によっても、対極としての特性に変わ
りはない。
【0060】また、対極には導電性粒子を含む混合物層
で構成することも可能である。そして前記導電性粒子は
少なくとも1種の炭素材料からなること、また導電性粒
子を結着するためのバインダーは天然ゴム系、セルロー
ス系、フェノール系、ウレタン系及びエポキシ系からな
る群より選ばれた少なくとも1種の樹脂材料で構成され
ていることが好ましい。
【0061】前記導電性粒子に用いる炭素材料として
は、グラファイト(黒鉛)、易黒鉛化炭素(ソフトカー
ボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、カーボンブ
ラック、活性炭等がある。
【0062】ここで、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)
とは、2800〜3000℃程度で熱処理された時に黒
鉛化する炭素材料であり、難黒鉛化炭素(ハードカーボ
ン)とは、3000℃程度で熱処理されても黒鉛化しな
い炭素材料である。
【0063】易黒鉛化炭素は、例えば、石炭やピッチ
を、窒素気流中、昇温速度毎分1〜20℃、到達温度9
00〜1300℃、到達温度での保持時間0〜5時間程
度の条件で焼成することにより生成される。ピッチは、
コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解
で得られるタール類、アスファルト等より蒸留(真空蒸
留、常圧蒸留、スチーム蒸留等)、熱重縮合、抽出、化
学重縮合等の操作により得られるもの、或いは、木材乾
留時に生成するピッチ等である。
【0064】また、易黒鉛化炭素は、ポリ塩化ビニル樹
脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、
3,5−ジメチルフェノール樹脂等の高分子化合物原料
を、窒素気流中、300〜700℃で炭化した後、上述
と同じ条件で焼成しても生成される。
【0065】更に、易黒鉛化炭素は、ナフタレン、フェ
ナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、
ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン等の縮合多環炭化
水素化合物及びその誘導体(例えば、それらのカルボン
酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等)、更に、
上記各化合物の混合物、アセナフチレン、インドール、
イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリ
ン、フタラジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジ
ン、フェナントリジン等の縮合複素環化合物及びその誘
導体を、上述と同様に炭化及び焼成しても生成される。
【0066】一方、難黒鉛化炭素は、例えば、フルフリ
ルアルコール又はフルフラールのホモポリマーやコポリ
マーよりなるフラン樹脂を、上述の易黒鉛化炭素の場合
と同様の条件で炭化及び焼成して生成される。
【0067】また、難黒鉛化炭素は、特定のH/C原子
比(例えば、0.6〜0.8)を有する石油ピッチに、
酸素を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)した有機
材料からも生成される。例えば、難黒鉛化炭素材料は、
H/C原子比が0.6〜0.8のフェノール樹脂、アク
リル樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポ
リアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、共役系樹脂、セ
ルロース及びその誘導体等の有機高分子系化合物や、ナ
フタレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニ
レン、ピレン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン等
の縮合多環炭化水素化合物及びその誘導体(例えば、そ
れらのカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミ
ド等)、更に、上記各化合物の混合物を主成分とする各
種ピッチ、アセナフチレン、インドール、イソインドー
ル、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フタラジ
ン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナン
トリジン等の縮合複素環化合物及びその誘導体を、上述
と同様の条件で炭化及び焼成して生成される。
【0068】なお、以上に説明した易黒鉛化炭素及び難
黒鉛化炭素の出発原料又は前駆体にリン化合物を添加し
た後、上述の炭化及び焼成を行っても良い。
【0069】また、本実施の形態の導電性粒子をグラフ
ァイト(黒鉛)で構成する場合、天然黒鉛や、例えば、
上述した易黒鉛化炭素を前駆体として、これを2000
℃以上の高温で熱処理した人造黒鉛を用いることができ
る。
【0070】次の表1に、グラファイト(黒鉛)、易黒
鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカ
ーボン)及び活性炭の特性を比較して示す。 表1 ──────────────────────────────────── カーボン種 結晶性 密 度 空孔度 焼成温度 導電性 ──────────────────────────────────── グラファイト 高 い 大きい 小さい 高 い 高 い ソフトカーボン ↓ ↓ ↑ ↓ ↓ ハードカーボン ↓ ↓ ↑ ↓ ↓ 活性炭 低 い 小さい 大きい 低 い 低 い ────────────────────────────────────
【0071】本実施の形態において、上述した導電性粒
子と混合して用いるバインダーは、銀塩溶液1に耐性を
有するものであればよく、例えば、天然ゴム系、セルロ
ース系、フェノール系、ウレタン系又はエポキシ系の樹
脂を用いることができる。このバインダーと導電性粒子
の混合比は、重量比で、約80:20〜約99:1の範
囲であるのが好ましく、約90:10〜約99:1の範
囲であるのがより好ましい。この混合比が80:20よ
り少ないと、得られる膜の強度が弱くなり過ぎるおそれ
があり、一方、混合比が99:1より多いと、相対的に
導電性粒子が少なくなり過ぎて、必要な導電性が得られ
なくなるおそれがある。
【0072】前記対極は、炭素材料を主とする導電性粒
子と前記バインダーとからなっているのがよいが、これ
らの混合物の印刷または塗布によって前記対極の一部を
形成するのがよい。
【0073】また、ペースト状の材料を印刷又は塗布し
て対極17a、17bを形成すると材料の流動性及び表
面張力によって端縁部の角が丸められ、実質的に角の存
在しない形状の対極17a、17bが形成される。従っ
て、既述したような電界集中が緩和され、その結果、銀
塩溶液1から析出した銀が粒状に比較的大きく形成され
ることが防止される。即ち、本実施の形態では、銀塩溶
液1中に浮遊して、作用電極消色時の素子の透明度を低
下させたり、電極間を短絡させたりする原因となる不活
性な銀粒子が対極17a、17b上で形成されることが
防止される。
【0074】なお、前記導電性粒子とバインダーの混合
物を構成する導電性粒子には、少なくとも1種炭素材料
を含んでいるが、他に銀やそれ以外の銅、ニッケルなど
の金属又は合金、化合物を、夫々単独、或いは、混合し
て用いることができる。このなかでも特に銀粒子は、対
極の電位を安定させる効果を持たせるために、好ましく
用いることができる。
【0075】即ち、本実施の形態のように、導電性粒子
をバインダーに含有させたもので対極を構成することに
よって、コスト低減をはじめ、素子の透過率の向上、電
極間の短絡の防止を実現でき、また、素子の駆動電圧に
起因すると考えられる分光特性についても、対極材料が
替わることにより改善されるものと考えられるが、導電
性粒子をバインダーに含有させるか又は、焼結させて対
極を形成しているため、駆動中に対極内に銀が取り込ま
れて銀板と異なる電位を示したり、対極が化学的に不安
定な材料からなる(銀が析出し、対極の組成が変わる)
ために、駆動制御が困難になることがある。
【0076】しかしながら、前記の銀粒子などを前記対
極の一部として形成すれば、電極の電位が安定化する。
【0077】前記対極の電位が銀電極の電位よりも50
mV以上、正又は負に異なっている場合に、前記金属を
銀とし、電極内に銀粒子を混合させると効果的である。
前記対極が銀電位よりも|50mV|以上異なっている
と、銀の析出、溶解が生じ難くなるため、上記した銀成
膜層の使用によって電極の電位を銀電極と同等若しくは
銀の析出、溶解を生じ易い電位にすることができる。
【0078】この場合、前記銀粒子が、前記銀粒子以外
の導電性粒子と前記バインダーとからなる成分に対し、
0.01倍〜100倍の重量比で添加されていること
が、前記対極の電位の安定化と混合物の調製のし易さか
らみて望ましく、この添加量は更に0.05〜10倍と
するのがよい。
【0079】具体的には、前記銀粒子が、前記銀粒子以
外の導電性粒子と前記バインダーとからなるペーストの
固形分の0.01倍〜100倍(更には0.05〜10
倍)の重量比で添加することが望ましい。
【0080】また前記導電性粒子の粒径は、数μm〜数
10μmであるのが好ましく、粒径がこの範囲より小さ
過ぎても大き過ぎても、導電性粒子をバインダー中に均
一に分散させることが困難になり、この結果、膜の電気
抵抗が高くなりすぎるおそれがある。
【0081】第3層を構成する集電体には、電子伝導性
を有し、かつ電気化学的に安定な材料を用いる。本実施
の形態の調光装置に使用する電解液に対して用いられる
代表的な集電体材料の例としては、周期律表の4A族、
6A族、8族および1B族から選ばれた少なくとも1種
の金属材料及びこれらの合金、またはITOなどの金属
酸化物を用いることができる。
【0082】また、前記カーボンペーストなどの導電性
粒子層を用いた対極においては、この導電性粒子層と前
記集電体との密着性を上げるために、その間に高分子層
を介在させてもよい。
【0083】このような高分子層は、集電体から導電性
粒子層への電荷移動を円滑に行わせるため、導電性高分
子で構成されるのがよい。そして、この導電性高分子層
の形成には、キャスト法や蒸着法など種々の方法を用い
ることができるが、中でも電気化学重合法が好ましく用
いられる。
【0084】電気化学重合法は、モノマー分子を有する
溶液中に被形成物を浸漬し、被形成物に通電することに
よって、モノマー分子を重合させ、被形成物表面に高分
子を形成させる手法である。この電気化学重合法によっ
て形成される導電性高分子の種類には、モノマーをアニ
リンとするポリアニリン、モノマーをピロールとするポ
リピロール、同じくモノマーをチオフェンとするポリチ
オフェンなどがある。
【0085】また、アニリン、ピロール、チオフェンな
どは化学修飾が容易であるため、種々の誘導体が存在
し、それに伴い誘導体高分子が存在する。例えば、ポリ
アニリンでは、誘導体のN−アルキルアニリン、N,N
−ジメチルアニリン、1−アミノピレン、σ−フェニレ
ンジアミンなどの重合体、ポリピロールでは、誘導体の
N−メチルピロールなどの重合体、ポリチオフェンで
は、チオフェンの3および4位をアルキル基、アルコキ
シル基、アリル基などで置換したポリチオフェン誘導体
がある。
【0086】電気化学重合による高分子の合成は、図1
1に示すようなビーカーセル46によって行う。重合を
行うには、できれば空気中の酸素を取り除くために不活
性ガスを導入できるコック44を備えたものがよい。通
常、高分子を重合するもの(基板5)を正極48とし
て、負極47に適切な電極材料を用いる。
【0087】不活性ガスを吹き込んで脱酸素した溶媒
に、重合するモノマーを適切な濃度溶存させ、この電解
液中の両極間に適切な電圧をかけると、正極上に所望の
重合体が生成する。
【0088】例えば、アニリンを電気化学重合する場合
には、塩酸、硫酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸な
どの水溶液(pH<2)に、アニリンを約0.2〜1m
ol/l溶かし、ITOを正極として、銀を参照電極と
して、0.7〜1.0Vの定電位または定電流の通電に
より酸化を行うと、ITO上にポリアニリンがフィルム
上に生成する。
【0089】また、ピロールを電気化学重合する場合に
は、例えばアセトニトリルを溶媒とし、ピロールの濃度
が0.05〜0.1mol/lとし、ITOを正極、白
金を負極とし、両極間に約3.5Vの電圧をかけると、
ITO上にポリピロールが生成する。
【0090】さらに、チオフェンを電気化学重合する場
合には、溶媒はアセトニトリルの他に、ベンゾニトリ
ル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどがよく使わ
れ、負極には白金、ニッケル、グラファイトなどが使用
できる。正極にITOとして電圧をかけると、ITO上
にポリチオフェンが生成する。
【0091】通常電気化学重合を行うには、十分な電流
値の通電を行うために、電解質を溶存させる。例えば、
ポリアニリンの電気化学重合では、上記の塩酸などを加
えてpH1程度の酸性とし、またポリピロールやポリチ
オフェンを電気化学重合させる場合には、本発明の光学
装置の中で使用する電解液に含まれる臭化銀といった銀
塩の他に、ヨウ化リチウムや過塩素酸リチウムといった
リチウム塩などが電解質として用いられる。このような
電気化学重合膜では、重合と同時に電解質のアニオンが
ドーパントとして取り込まれるため、導電性の高いフィ
ルムが得られる。
【0092】電気化学重合を行う条件は、モノマーの種
類や溶媒や駆動法により異なるが、良好な膜を得るため
に、例えば定電流のポリアニリンの重合の場合には、3
mA/cm2 以下、より好ましくは0.5mA/cm2
であるのが望ましい。
【0093】電気化学重合では、共重合、例えばピロー
ルとチオフェンの共重合は、二種のモノマーの酸化電位
が異なるため不可能であるが、2,2’−チエニルピロ
ールや2,5−ジ(2−チエニル)−ピロールなどの誘
導体をモノマーとすることにより、酸化電位が近くなる
ため、チオフェンとピロールが1:1や2:1の交互共
重合体を合成することが可能である。
【0094】以上、対極部分に電気化学重合を行って第
2層を形成した後に、導電性粒子を含む層を塗布または
印刷し、第1層を形成する。
【0095】前記第1層の厚さは数μm〜数十μm、前
記第2層の厚さは50〜500nm、前記第3層の厚さ
は100〜400nmであるのがよい。前記第3層は、
ガラス、繊維強化プラスチック(FRP)等の絶縁基板
(厚さは例えば1mm程度)上に設けられ、ITO、
銅、銀、金、白金、SUS等からなっていてよい。
【0096】このように、対極17a、17bを、導電
性粒子とバインダーの混合物の層、高分子層及び下地の
集電体の層で積層構造とすることにより、従来のように
銀板等の金属板で構成した場合に比し、銀粒子が浮遊す
ることなく、安定した特性を有する光学装置を形成する
ことができる。
【0097】また、上記した光学装置に参照極を設ける
ことは、作用(透明)電極及び対極の安定した制御を行
うには有効である。
【0098】即ち、図1に示すように、参照極27a、
27bを電解液1中に設けることにより、電解液中にお
ける作用電極や対極の正確な電位を得て作用電極2a〜
2e、3a〜3eや対極17a、17bの電位を高精度
に制御することができ、また、作用電極又は対極と参照
電極との電位差が所定範囲に保たれるように外部電源を
制御するリミッタを設けることにより、作用電極又は対
極の過剰な分極を防止して素子の劣化を抑制できる。
【0099】参照極としては、前記対極と同様の材料構
成のものを使用することができる。即ち、白金などの遷
移金属やITOなどの酸化物を最表面とした電極構成、
また白金などの遷移金属やITOなどの酸化物といった
集電体上に、炭素材料などの導電性粒子とバインダーの
混合物を塗布又は印刷したもの、若しくは白金などの遷
移金属やその表面上に電析金属(例えば、銀)を析出さ
せたものなどが、参照極に使用することができる。但
し、白金などの遷移金属やITOなどの酸化物を最表面
とした電極構成の場合には、この金属若しくは酸化物の
浸漬電位が、作用電極や対極の電位を監視・制御するた
めの基準となる。また前記混合物を塗布又は印刷して参
照極を構成する場合は、参照極では銀等の金属の析出・
溶解反応を積極的に行わせないため、例えば炭素材料と
バインダーの混合物に担持させる銀等の金属の量は、対
極よりも少なくてよい。
【0100】また集電体に使用する金属としては、対極
で示した金属等の他に、タンタル、ニオブなども使用す
ることができる。タンタル及びニオブは、比抵抗が他の
ものと比較して大きいため、対極の集電体には使用する
と分極が大きくなるため使用しないが、参照極には電位
の監視のため、微小な電流しか流れず、参照極の電位は
ほとんど変化しないので、これらの金属も参照極の集電
体に使用することができる。
【0101】このような光学装置の構成としては、具体
的には、互いに対向して配された一対の透明又は半透明
基板と、これら一対の透明又は半透明基板の対向面に夫
々設けられて互いに対向するように配された少なくとも
一対の透明又は半透明電極(特に、可視光域において光
透過率が70%以上のITO等の透明電極)と、前記少
なくとも一対の透明又は半透明電極に接してそれらの間
に配された銀塩からなる前記電解液と、前記電解液に接
して配され、且つ、前記積層構造を有する対極とを具備
することが好ましい。
【0102】本実施の形態において、銀塩溶液1として
は、臭化銀、塩化銀、ヨウ化銀等のハロゲン化銀を水又
は非水溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。こ
の時、非水溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DM
SO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホ
ルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド
(DMAA)、N−メチルプロピオン酸アミド(MP
A)、N−メチルピロリドン(MP)、プロピレンカー
ボネート(PC)、アセトニトリル(AN)、2−メト
キシエタノール(MEOH)、2−エトキシエタノール
(EEOH)等を用いることができる。
【0103】また、銀塩溶液中のハロゲン化銀の濃度
は、0.03〜2.0 mol/lであるのが好ましく、
0.05〜2.0 mol/lであるのがより好ましい。
【0104】また、銀塩溶液の導電性を上げるととも
に、ハロゲン化銀の溶解のために、臭素その他のハロゲ
ンを供給可能な支持塩(支持電解質)を添加するのが好
ましい。例えば、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カ
リウム、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化四級アンモ
ニウム塩等をこの目的に用い得る。このような支持塩
は、ハロゲン化銀の1/2〜5倍程度の濃度範囲で添加
されるのが好ましい。
【0105】次に、図10を参照して、図1に示した光
学装置(例えば図14の如き電極パターンを有するも
の)をCCD(Charge coupled device)カメラに組み込
んだ実施の形態について、本発明の撮像装置を例示す
る。
【0106】図10に示すCCDカメラ70において、
一点鎖線で示す光軸に沿って、1群レンズ71、2群レ
ンズ(ズーム用)72、3群レンズ73、4群レンズ
(フォーカス用)74およびCCDパッケージ75が適
宜の間隔をおいてこの順に配設されており、CCDパッ
ケージ75には赤外カットフィルタ75a、光学ローパ
スフィルタ系75b、CCD撮像素子75cが収納され
ている。2群レンズ72と3群レンズ73との間には、
3群レンズ73寄りに既述した本発明に基づく光学装置
76が光量調節(光量絞り)のために同じ光路上に取付
けられている。なおフォーカス用の4群レンズ74は、
リニアモータ77により光路に沿って3群レンズ73と
CCDパッケージ75との間を移動可能に配設され、ま
たズーム用の2群レンズ72は、光路に沿って1群レン
ズ71と光学装置75との間を移動可能に配設されてい
る。
【0107】この実施の形態によると、2群レンズ72
と3群レンズ73の間にセットされた本発明に基づく光
学装置76は、既述したように電界の印加によって光量
を調節できるので、これまでの機械的な光量絞り機構と
根本的に違って、絞りを駆動させる機械構成を必要とし
ないため、システムが小型化でき、実質的に光路の有効
範囲の大きさまで小型化できる。したがって、CCDカ
メラの小型化を達成することが可能である。また、パタ
ーン化された電極への印加電圧の大きさによって光量を
適切に制御できるので、従来のような回折現象を防止
し、撮像素子へ十分な光量を入射させ、像のぼやけをな
くせる。
【0108】
【実施例】以下、本発明を好ましい実施の形態に従い作
製した光学装置の実施例を説明する。
【0109】実施例1〜3 まず、図1を参照して、図14及び図15で説明したと
同様の光学フィルター(電気化学的調光素子)に本発明
を適用した実施例を説明する。
【0110】本実施例では、図1(a)に示すように、
セルを構成するガラスからなる一対の透明基板4、5を
一定間隔で配置し、各基板4、5の内面(対向面)に、
各一対の作用電極2a、2b、2c、2d、2e及び3
a、3b、3c、3d、3eを夫々互いに対向して設
け、その外側に対極17a、17b及び参照極27a、
27bを設けた。基板4と5は、スペーサ6により所定
間隔に保持し、その間に銀塩溶液1を封入している。
【0111】そして、上記の作用電極2a〜2e、3a
〜3eを、次のように構成した。即ち、図1(b)の拡
大図に示すように、基板4、5上にスパッタ法により厚
さ約200nmのITO(In/Sn=9)の上に酸化
錫層を設けた2層構造とし、酸化錫層の厚さを実施例1
は5nm、実施例2は10nm、実施例3は50nmと
して3通りを形成した。なお、作用電極2a〜2e及び
3a〜3e並びに対極17a、17bの平面形状は、図
15に示したものと実質的に同一である。
【0112】この製造工程を図2〜図4に示す。但し、
酸化錫層は実施例1の場合を例にとり説明するが、実施
例2及び実施例3の場合も製造工程は同じである。ま
た、各図共、図1(a)における一部分を示して簡略図
示する。
【0113】まず、図2(a)に示すように、基板31
上にインジウムと錫の元素組成比が約9(In:Sn=
9:1)のITO層33をスパッタリング法により、約
200nmの厚さに成膜し、更に、この上に薄い酸化錫
層35を同じくスパッタリング法により厚さ約5nmに
成膜した。透明導電層(ITO層)33のスパッタリン
グは、酸化錫を5重量%含むITOの多結晶体をターゲ
ットとして行い、酸化錫層35は多結晶体をターゲット
として行った。
【0114】次に、図2(b)に示すように、酸化錫層
35の上にクロム層32を同じくスパッタリング法によ
り、約200nmの厚さに形成した。そして図2(c)
に示すように、この上にレジスト34をスピンコートに
より塗布した後に、図2(d)に示すようにマスクによ
り所望のパターンに露光/現像した。
【0115】次に、図2(e)に示すように、クロム層
32の一部にエッチングを施し、イオンミリング(プラ
ズマ雰囲気中で基板に高周波バイアスを印加してイオン
を衝突させ、その物理的な作用によりエッチングするこ
と)により、酸化錫層35の一部にエッチングを施し、
更に塩酸と硝酸の混酸により、ITO層33のエッチン
グを施した。そして図2(f)に示すように、残ったレ
ジスト34を剥離し、所望の平面形状の作用電極2A及
び対極17A、また必要に応じて参照電極27Aを形成
した。
【0116】次に、図3(g)に示すように、再びレジ
スト34を塗布し、図3(h)に示すように、異なるマ
スクを用いて露光/現像を行った。そして、図3(i)
に示すように、再度クロム層32のエッチングを行って
作用電極2A上には引き出し電極39を形成し、対極1
7A及び参照極27A上からはクロム層32を全て除去
した。
【0117】次に、図3(j)に示すように、レジスト
層34を再度剥離した後、図3(k)に示すように、二
酸化珪素36をスパッタリング法により成膜し、各電極
の表面が全面覆われるようにした。
【0118】しかる後に、図1には図示省略したが、図
3(l)に示すように、作用電極2A以外の部分で光を
透過させないために、遮光用にブラックレジスト37を
スピンコートで塗布した。そして、図4(m)に示すよ
うに、更に別のフォトマスクにより露光/現像を行い、
作用電極2A、対極17A及び参照極27A上のブラッ
クレジスト37を除去した。
【0119】次に、図4(n)に示すように、電極部分
でブラックレジスト37に覆われていない表面上の二酸
化珪素36を、フッ酸とフッ化アンモニウムの混合液に
よりエッチングし、作用電極2A、対極17A及び参照
極27Aの表面を露出させた。
【0120】次に、図4(o)に示すように、対極17
A及び参照極27Aに、炭素材料とセルロース系のバイ
ンダーからなり、炭素重量と同重量の銀粉(粒径1〜3
μm)を分散させたペースト38のスクリーン印刷を施
し、これらの電極を形成した。
【0121】以上の製造工程を経て所望のパターニング
を施した基板を用い、図1に示したように、作用電極2
a〜2e及び3a〜3e並びに対極17a、17bを対
向するように配置し、スペーサを介して貼り合わせ、内
部に臭化銀500mM、ヨウ化ナトリウム750mMを
ジメチルスルホキシド(DMSO)/ジメチルアセトア
ミド(DMAc)=50/50の混合溶媒に溶解させた
銀塩溶液1を封入して調光素子を作製した。
【0122】なお、上記した実施例と対比するために比
較例を併せて作製した。
【0123】比較例1 上記した製造工程において、酸化錫層35を形成せず、
その他は同様に形成した調光素子のサンプルを比較例1
として作製した。
【0124】比較例2 更に、上記した製造工程において、ITO層33を設け
ずに、酸化錫層35のみで約200nmの厚さに成膜
し、その他は同様に形成した調光素子のサンプルを比較
例2として作製した。
【0125】そして上記した各実施例、比較例1及び比
較例2の調光素子について、作用電極であるITO電極
2a、2b、2c、2d、2e及び3a、3b、3c、
3d、3eと対極17a、17bの間に定電流を通電さ
せて、ITO電極上に銀を析出及び溶解を行った。この
ときの電流密度は作用電極において18mA/cm2
なるように、析出及び溶解共に2秒間通電させ、これを
銀の析出及び溶解の1サイクルとした。
【0126】このときの実施例1の作用電極の室温(2
2℃)における銀析出時の分光特性を図6に示す。な
お、実施例2及び実施例3の分光特性も実施例1の場合
とほぼ同様であるので図示省略する。
【0127】これによれば、2秒間の酸化還元サイクル
で駆動電圧を印加した場合、電位の変化においても分光
スペクトルが平坦な状態を呈し、従って、酸化錫層を設
けない比較例1の分光スペクトル(図7(a)参照)に
比べ、分光特性が改善されることが明らかである。
【0128】また、比較例1の作用電極の室温(22
℃)における銀析出時の分光特性を図7(a)に示す。
【0129】これによれば、印加電圧の電位の変化に伴
い分光スペクトルの平坦性が乱れるが、これは酸化錫層
が存在しないために分光特性が良くないためであること
が分かる。
【0130】また、比較例2の作用電極の室温(22
℃)における銀析出時の分光特性を図7(b)に示す。
【0131】これによれば、分光スペクトルは印加電位
を変化させても平坦化され、酸化錫単体の場合の分光ス
ペクトルが顕著に表れている。
【0132】また、このときの各実施例及び比較例2の
作用電極の室温(22℃)における分極特性を図8に示
す。
【0133】これによれば、比較例2では銀析出のとき
の作用電極の分極は約−2Vであるのに対して、実施例
では−1.5V程度と小さく抑えられている。また銀溶
解のときにおいても、実施例は比較例2と比較して小さ
く抑えられており、消費電力の低減化に寄与するばかり
でなく、銀溶解(酸化)のときに電解液が酸化されて副
反応を起こすこともない。これに対して、比較例2では
多数回の繰り返しにより、電解液が黄色に変色するのが
観察された。これは主にヨウ素イオンが酸化されてヨウ
素を発生したことによるものと考えられる。
【0134】上記酸化錫の膜厚に対する分極電位の変化
を図9に示す。
【0135】図9は、上記した図8において酸化時の電
位が立ち上がる直前の3.4秒の時の分極電位値を、I
TO層(膜厚200nm)上の酸化錫層の膜厚に対して
プロットして示したものであるが、図示の如く、酸化錫
の膜厚が比較例2のように200nmの場合の駆動電圧
は1.3Vとなり、電解液に変性(主としてヨウ素の発
生)をきたすおそれのある電位の限界値1.2Vを超え
てしまう。このことから、酸化錫層の膜厚の上限は13
0nm、下限は成膜の制御性を考慮して5nm、即ち5
nm〜130nmとすることが望ましく、より好ましく
は10nm以下とすることにより、作用極の分極を大き
くすることなく優れた分光特性が得られることが分か
る。
【0136】本実施例によれば、作用電極2a〜2e、
3a〜3eをITO層33上に酸化錫層35を薄く積層
して、2層構造に形成することにより、電析させた金属
膜が、酸化錫単体の薄膜上に電析させた場合と類似の状
態となるため、金属膜の着色が小さく抑えられて優れた
分光特性を発揮すると共に、酸化錫層35の膜厚が薄い
ため、作用電極の膜全体の抵抗が小さく抑えられ、駆動
時に作用電極2a〜2e、3a〜3eの分極を小さく抑
えることができる。
【0137】上記した実施例は、本発明の技術的思想に
基づいて種々変形が可能である。
【0138】例えば、図5に示すように、酸化錫層35
は、ITO層33上に間欠的に設けることも可能であ
る。
【0139】また、図1に示した電極パターンは、同心
円状に限らず、ストライプ状、格子状等種々に変更が可
能である。また、各分割電極毎に異なるセルを設けるこ
ともできる。作用電極は一対の基板にそれぞれ設けるの
がよいが、一方の基板のみに設けてもよい。
【0140】また、本発明の光学装置は、公知のほかの
フィルター材(例えば、有機系のエレクトロクロミック
材、液晶、エレクトロルミッネセンス材等)と組み合わ
せて用いることも可能である。
【0141】更に、本発明の光学装置は、既述したCC
Dの光学絞りをはじめ、各種光学系、例えば、電子写真
複写機の光通信機器等の光量調節用としても広く適用が
可能である。更に、本発明の光学装置は、光学フィルタ
ー以外に、キャラクターやイメージを表示する各種の画
像表示素子に適用することができる。
【0142】
【発明の作用効果】上述した如く、本発明の光学装置
は、インジウムに錫をドープした酸化物層(例えば透明
電極)と酸化錫層との積層体で電極が形成されているた
め、この酸化錫層によって電極上に金属などが被着され
る場合のその分光特性が向上し、また、酸化物層の厚さ
を薄く(例えば130nm以下)することによって電極
全体としての抵抗を小さく抑えることができる。その結
果、装置駆動時の電極の分極を小さく抑えることが可能
となる。
【0143】また、この製造方法によれば、気相成膜法
として、例えばスパッタリング又は真空蒸着法により同
じ真空装置内において、ターゲットや放電条件などを変
えれば、前記酸化錫層を前記酸化物層と連続して成膜す
ることができると共に、酸化錫層を所望の膜質、膜厚に
形成できるため、上記したと同様の効果が奏せられる再
現性の良い光学装置の製造方法を提供することができ
る。
【0144】また、本発明の撮像装置によれば、電界の
印加によって光量を調節できる上記光学装置を光量絞り
に適用するため、これまでの機械的な光量絞りと異なっ
て大がかりな機械構成を必要とせず、実質的に光路の有
効範囲にまで小型化することが可能となり、しかも光量
を印加電界の大きさで制御して回折を防止し、像のぼや
け等も効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による光学フィルターの電気化
学セル部の構成を示し、(a)は概略断面図、(b)は
一部分を抽出して示した拡大断面図である。
【図2】本発明の実施例による光学フィルターの製造方
法を工程順に示す概略断面図である。
【図3】同、製造方法の他の工程を工程順に示す概略図
である。
【図4】同、製造方法の更に他の工程を工程順に示す概
略図である。
【図5】同、光学フィルターの変形例を示す概略図であ
る。
【図6】同、実施例の作用電極において、銀の析出を行
ったときの分光特性を示す図である。
【図7】比較例1及び比較例2の作用電極において、銀
の析出を行ったときの分光特性を示す図である。
【図8】実施例及び比較例2の作用電極において、銀の
析出を行ったときの分極の時間変化を示した図である。
【図9】酸化錫の膜厚に対する分極電位の変化を示すグ
ラフである。
【図10】本発明の実施例による光学フィルターを組込
んだCCDカメラの断面図である。
【図11】電気化学重合のための装置を示す拡大図であ
る。
【図12】従来の電気化学的調光素子の構成及び動作原
理を示す断面図である。
【図13】図12に示した素子の外観斜視図である。
【図14】従来の別の電気化学的調光素子の構成を示す
断面図である。
【図15】図14に示した素子の概略平面図である。
【図16】従来の問題点を示す概念図である。
【符号の説明】
1、21…銀塩溶液(電解液)、2A、2a〜2e、3
a〜3e、22、23、54…作用電極(ITO電
極)、4、5、24、25…ガラス基板、6、26…ス
ペーサー、17A、7a〜7b、17a、17b…対
極、27A…参照極、33…ITO層、35…酸化錫
層、37…ブラックレジスト、44…コック、46…ビ
ーカーセル、47…負極、48…正極、70…CCDカ
メラ、71…1群レンズ、72…2群レンズ、73…3
群レンズ、74…4群レンズ、75…CCDパッケー
ジ、75a…赤外カットフィルター、75b…ローパス
フィルタ系、75c…撮像素子、76…光学装置、77
…リニアモータ
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年6月13日(2000.6.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】本発明の光学装置によれば、インジウムに
錫をドープした酸化物層(例えば透明電極)と酸化錫層
との積層体で電極が形成されているため、この酸化錫層
によって電極上に金属などが被着される場合のその分光
特性が向上し、また、酸化錫層の厚さを薄く(例えば1
30nm以下)することによって電極全体としての抵抗
を小さく抑えることができる。その結果、装置駆動時の
電極の分極を小さく抑えることが可能となる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正内容】
【0057】また、白金やパラジウム、金は銀より貴な
金属であるため、浸漬したときに生じる自然電位は、銀
に対して高い電位を示す。例えば25℃の水溶液中にお
ける標準電極電位は、白金の場合1.188Vvs.N
HEであり、パラジウムは0.915Vvs.NHEで
あり、金は1.50Vvs.NHEである。銀の標準電
極電位は0.7991Vvs.NHEであるので(いず
れも化学便覧より抜粋)、銀に対して白金は0.389
V貴な電位を示し、パラジウムは0.116V貴な電
位、金は0.70V貴な電位を示すことになる。また、
ジメチルスルホキシド(DMSO)/アセトニトリル
(AN)=55/45混合の非水溶媒においても、銀に
対する白金若しくはパラジウム又は金の相対電位はそれ
ぞれ水溶液中における電位に近い貴な電位を示すことが
確認できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正内容】
【0121】以上の製造工程を経て所望のパターニング
を施した基板を用い、図1に示したように、作用電極2
a〜2e及び3a〜3e並びに対極17a、17bを対
向するように配置し、スペーサを介して貼り合わせ、内
部に臭化銀500mM、ヨウ化ナトリウム750mMを
ジメチルスルホキシド(DMSO)/ジメチルアセトア
ミド(DMAA)=50/50の混合溶媒に溶解させた
銀塩溶液1を封入して調光素子を作製した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正内容】
【0133】これによれば、比較例2では銀析出のとき
の作用電極の分極は、銀の電位を基準にしたときに約−
2Vvs.Ag/Ag+であるのに対して、実施例では
−1.5Vvs.Ag/Ag+程度と小さく抑えられて
いる。また銀溶解のときにおいても、実施例は比較例2
と比較して小さく抑えられており、消費電力の低減化に
寄与するばかりでなく、銀溶解(酸化)のときに電解液
が酸化されて副反応を起こすこともない。これに対し
て、比較例2では多数回の繰り返しにより、電解液が黄
色に変色するのが観察された。これは主にヨウ素イオン
が酸化されてヨウ素を発生したことによるものと考えら
れる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正内容】
【0135】図9は、上記した図8において酸化時の電
位が立ち上がる直前の3.4秒の時の分極電位値を、I
TO層(膜厚200nm)上の酸化錫層の膜厚に対して
プロットして示したものであるが、図示の如く、酸化錫
の膜厚が比較例2のように200nmの場合の駆動電圧
は1.3Vvs.Ag/Ag+となり、電解液に変性
(主としてヨウ素の発生)をきたすおそれのある電位の
限界値1.2Vvs.Ag/Ag+を超えてしまう。こ
のことから、酸化錫層の膜厚の上限は130nm、下限
は成膜の制御性を考慮して5nm、即ち5nm〜130
nmとすることが望ましく、より好ましくは10nm以
下とすることにより、作用極の分極を大きくすることな
く優れた分光特性が得られることが分かる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正内容】
【0142】
【発明の作用効果】上述した如く、本発明の光学装置
は、インジウムに錫をドープした酸化物層(例えば透明
電極)と酸化錫層との積層体で電極が形成されているた
め、この酸化錫層によって電極上に金属などが被着され
る場合のその分光特性が向上し、また、酸化錫層の厚さ
を薄く(例えば130nm以下)することによって電極
全体としての抵抗を小さく抑えることができる。その結
果、装置駆動時の電極の分極を小さく抑えることが可能
となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関谷 光信 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 2K001 AA06 AA11 BA02 BB28 CA08 CA09 CA31 CA32 DA03 DA10 4M104 AA10 BB06 BB07 BB09 BB36 DD34 DD37 DD40 DD43 DD51 DD52 DD53 FF13 GG17 HH16 HH20 4M118 AA10 AB01 AB08 GC17 5C094 AA01 BA41 CA19 DA13 EA10 FB02 GB01 HA10 JA08 JA20

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インジウムに錫をドープした酸化物層と
    酸化錫層との積層体によって形成された電極を有する光
    学装置。
  2. 【請求項2】 光透過率が可視光域において70%以上
    である前記電極としての作用電極と、対極と、これらの
    電極に接して配された電解液とを有し、この電解液への
    印加電界により電気化学的に調光される、請求項1に記
    載した光学装置。
  3. 【請求項3】 前記酸化物層を覆うように前記酸化錫層
    が5nm以上、130nm以下の厚さに積層されてい
    る、請求項1に記載した光学装置。
  4. 【請求項4】 前記酸化錫層が気相成膜法により形成さ
    れている、請求項3に記載した光学装置。
  5. 【請求項5】 互いに対向して配された一対の透明又は
    半透明基板と、この一対の透明又は半透明基板の対向面
    の少なくとも一方の面に設けられた前記作用電極と、こ
    の作用電極及び前記対極に接して前記透明又は半透明基
    板間に配された前記電解液としての銀塩溶液とを有す
    る、請求項1に記載した光学装置。
  6. 【請求項6】 インジウムに錫をドープした酸化物層と
    酸化錫層との積層体によって形成された電極を有する光
    学装置を製造するに際し、前記酸化錫層を気相成膜法で
    形成する、光学装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記気相成膜法として、スパッタリング
    及び蒸着法又は化学的気相成長法を用いる、請求項6に
    記載した光学装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 光透過率が可視光域において70%以上
    である前記電極としての作用電極と、対極と、これらの
    電極に接して配された電解液とを有し、この電解液への
    印加電界により電気化学的に調光する、請求項6に記載
    した光学装置の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記酸化物層を覆うように前記酸化錫層
    を5nm以上、130nm以下の厚さに積層する、請求
    項6に記載した光学装置の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記酸化錫層を気相成膜法により形成
    する、請求項9に記載した光学装置の製造方法。
  11. 【請求項11】 互いに対向して配した一対の透明又は
    半透明基板と、この一対の透明又は半透明基板の対向面
    の少なくとも一方の面に設けた前記作用電極と、この作
    用電極及び前記対極に接して前記透明又は半透明基板間
    に配した前記電解液としての銀塩溶液とを設ける、請求
    項6に記載した光学装置の製造方法。
  12. 【請求項12】 インジウムに錫をドープした酸化物層
    と酸化錫層との積層体によって形成された電極を有する
    光学装置が、光路中に光量調節用として設けられている
    撮像装置。
  13. 【請求項13】 光透過率が可視光域において70%以
    上である前記電極としての作用電極と、対極と、これら
    の電極に接して配された電解液とを有し、この電解液へ
    の印加電界により電気化学的に調光される、請求項12
    に記載した撮像装置。
  14. 【請求項14】 前記酸化物層を覆うように前記酸化錫
    層が5nm以上、130nm以下の厚さに積層されてい
    る、請求項12に記載した撮像装置。
  15. 【請求項15】 前記酸化錫層が気相成膜法により形成
    されている、請求項12に記載した撮像装置。
  16. 【請求項16】 互いに対向して配された一対の透明又
    は半透明基板と、この一対の透明又は半透明基板の対向
    面の少なくとも一方の面に設けられた前記作用電極と、
    この作用電極及び前記対極に接して前記透明又は半透明
    基板間に配された前記電解液としての銀塩溶液とを有す
    る、請求項12に記載した撮像装置。
  17. 【請求項17】 CCD(Charge coupled device)カメ
    ラとして構成されている、請求項12に記載した撮像装
    置。
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