JP2003315843A - エレクトロクロミックディスプレイ - Google Patents

エレクトロクロミックディスプレイ

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JP2003315843A
JP2003315843A JP2002118460A JP2002118460A JP2003315843A JP 2003315843 A JP2003315843 A JP 2003315843A JP 2002118460 A JP2002118460 A JP 2002118460A JP 2002118460 A JP2002118460 A JP 2002118460A JP 2003315843 A JP2003315843 A JP 2003315843A
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semiconductor
electrochromic
layer
dye
semiconductor nanoporous
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JP2002118460A
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Inventor
Kiyoshi Fujimoto
潔 藤本
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フルカラー化が容易であり、メモリー性に優
れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐久性が大幅に向
上したECディスプレイの提供。 【解決手段】 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の
表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質
層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持
してなり、パッシブマトリクスパネル構造及びアクティ
ブマトリクスパネル構造のいずれかの構造を有するEC
ディスプレイであって、前記半導体ナノ多孔質層が多層
構造に形成されると供に、前記電解質中に、電気化学的
な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的
に発色又は消色する少なくとも1種のEC色素が含有さ
れてなるECディスプレイである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレクトロクロミ
ックディスプレイに関し、特に、フルカラー化が容易で
あり、メモリー性に優れ、応答速度及び繰り返し耐久性
が大幅に向上したエレクトロクロミックディスプレイに
関する。
【0002】
【従来の技術】エレクトロクロミック(以下「EC」と
略称する)装置、例えばEC表示装置は、偏光板等が不
要であるので視野角依存性がなく受光型で視認性に優れ
る、電気化学的酸化還元反応により可逆的に発色又は消
色する前記EC材料を含む電解質と一対の電極とを少な
くとも有すれば成立するので構造が簡単であり大型化が
容易である、前記EC材料の選択により多様な色調が得
られる、電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだ
けで表示状態を静止できるのでメモリー性に優れ、しか
もその表示状態を維持するのに電力が不要であるので消
費電力が少ない、等の種々の利点があることから各種分
野において応用されてきている。
【0003】例えば、ガラス基板上に、透明電極層(陰
極)、三酸化タングステン薄膜層(EC層)、二酸化珪
素のような絶縁層、電極層(陽極)を順次積層してなる
全固体型EC素子が、特公昭52−46098号公報に
開示されている。このEC素子は電圧(着色電圧)を印
加すると、三酸化タングステン(WO)薄膜層が青色
に着色する。その後、このEC素子に極性が逆の電圧
(消色電圧)を印加すると、三酸化タングステン薄膜層
の青色が消えて、無色に戻る。この着色消色する機構は
詳しく解明されてはいないが、WO薄膜層及び絶縁層
(イオン導電層)の中に含まれる少量の水分がWO
膜層の着色消色を支配していると理解される。
【0004】近時、例えば、特開平9−120088号
公報、特開平7−152050号公報、特開平6−24
2474号公報等に示されているように、一対の電極上
に前記EC材料を蒸着し、該電極間に支持塩と溶媒とを
封入したEC表示装置や、一対の電極間に前記EC材料
と支持塩と溶媒とを封入したEC表示装置など、各種の
EC表示装置が提案されてきている。
【0005】しかしながら、これらのEC表示装置にお
いては、発色・消色に物質(イオン)の移動を伴うの
で、応答速度が上げ難いという重大な問題があり、特に
後者のEC表示装置の場合には、発色物質の拡散による
滲みが発生してしまい、高精細な画像表示が困難である
という問題がある。このため、例えば、特開2000−
19567号公報においては、後者のEC表示装置にお
いて高分子固体電解質を用いることが提案されている
が、加熱等しても十分なイオン伝導度が得られず、応答
性に劣るという問題がある。
【0006】したがって、フルカラー化が容易であり、
メモリー性に優れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐
久性が大幅に向上したECディスプレイは未だ提供され
ていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来におけ
る前記問題を解決し、以下の課題を解決することを目的
とする。即ち、本発明は、フルカラー化が容易であり、
メモリー性に優れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐
久性が大幅に向上したECディスプレイを提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は、以下の通りである。即ち、 <1> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に
形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士
が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してな
るエレクトロクロミックディスプレイであって、前記半
導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反
応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少
なくとも1種のエレクトロクロミック色素を複数層に形
成したことを特徴とするエレクトロクロミックディスプ
レイである。 <2> 両方の半導体ナノ多孔質層に、エレクトロクロ
ミック色素を複数層に形成した前記<1>に記載のエレ
クトロクロミックディスプレイである。 <3> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に
形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士
が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してな
るエレクトロクロミックディスプレイであって、前記半
導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記
電解質中に、少なくとも1種のエレクトロクロミック色
素が含有されてなることを特徴とするエレクトロクロミ
ックディスプレイである。 <4> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に
形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士
が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してな
るエレクトロクロミックディスプレイであって、前記半
導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記
半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元
反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する
少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が担持され
てなることを特徴とするエレクトロクロミックディスプ
レイである。 <5> 半導体ナノ多孔質層に異なるエレクトロクロミ
ック色素が複数層担持されている前記<3>又は<4>
に記載のエレクトロクロミックディスプレイである。 <6> 電解質層中に電気化学的な酸化反応及び還元反
応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色するエ
レクトロクロミック色素を少なくとも1種含有する前記
<4>又は<5>に記載のエレクトロクロミックディス
プレイである。 <7> 更に電荷移動剤が、電解質層中に含まれている
前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロク
ロミックディスプレイである。 <8> 電荷移動剤が、前記半導体ナノ多孔質層に担持
されている前記<7>に記載のエレクトロクロミックデ
ィスプレイである。 <9> 半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微粒子
が、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有機半
導体、複合体酸化物半導体及びこれらの混合物から選ば
れる前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクト
ロクロミックディスプレイである。 <10> 複合体酸化物半導体が、SnO−ZnO、
Nb−SrTiO、Nb−Ta
Nb−ZrO、Nb−TiO、Ti−
SnO、Zr−SnO、In−SnO及びBi−
SnOから選ばれる前記<9>に記載のエレクトロク
ロミックディスプレイである。 <11> 前記エレクトロクロミック色素を半導体ナノ
多孔質層に担持させる前に熱処理を施してなる前記<1
>から<2>及び<4>から<10>のいずれかに記載
のエレクトロクロミックディスプレイである。 <12> 半導体ナノ多孔質層の厚みが100μm以下
である前記<1>から<11>のいずれかに記載のエレ
クトロクロミックディスプレイである。 <13> エレクトロクロミック色素が、有機化合物及
び金属錯体から選ばれる前記<1>から<12>のいず
れかに記載のエレクトロクロミックディスプレイであ
る。 <14> 平地混合による面積階調法、平地混合による
濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層混合に
よる濃度階調法から選ばれるいずれかの方法でフルカラ
ー化された前記<1>から<13>のいずれかに記載の
エレクトロクロミックディスプレイである。 <15> 到達透過率又は到達吸光度となるまでの応答
速度が100msec以下である前記<1>から<14
>のいずれかに記載のエレクトロクロミックディスプレ
イである。
【0009】前記<1>に記載のEC装置は、半導体ナ
ノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透
明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように
配置した間に、電解質層を挟持してなり、前記半導体ナ
ノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少
なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくと
も1種のEC色素を複数層に形成したものである。該E
C装置においては、透明電極の表面に形成された半導体
ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔にEC色素が複数
層に形成されているので、異なる種類のEC色素を積層
することにより、多色化、黒色化が可能となり、EC装
置の用途の拡大が図れる。また、単一種類のEC色素を
積層することにより発色強度を高めることができる。
【0010】前記<3>に記載のECディスプレイは、
半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した
一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向す
るように配置した間に、電解質層を挟持し、パッシブマ
トリクスパネル構造及びアクティブマトリクスパネル構
造のいずれかの構造を有してなり、前記電解質中に、電
気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方によ
り可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のEC色素
が含有されている。該ECディスプレイにおいては、透
明電極の表面に形成された半導体ナノ多孔質層の表面及
び内部の微細孔のすみずみまで電解質層中のEC色素が
効率よく浸透し、これにより応答速度が大幅に向上する
と共に、電極面積の拡大が図れ、電極上の色素量の増大
により、発色効率(より低い印加電圧で、より速く所望
の発色濃度に到達させること)が向上する。また、前記
半導体ナノ多孔質層の少なくとも一方が多層構造に形成
されているので、発色強度を増強させることができると
共に、各層毎に異なるエレクトロクロミック色素を担持
させて容易にフルカラー化を達成し得る。
【0011】前記<4>に記載のECディスプレイは、
半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した
一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向す
るように配置した間に、電解質層を挟持し、パッシブマ
トリクスパネル構造及びアクティブマトリクスパネル構
造のいずれかの構造を有してなり、前記半導体ナノ多孔
質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくと
も一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種
のEC色素が担持されている。該ECディスプレイにお
いては、透明電極の表面に形成された半導体ナノ多孔質
層の表面及び内部の微細孔にEC色素が担持され、固定
化されているので、発色・消色に物質(イオン)の移動
を伴うことがないので、拡散による物質移動の時間をな
くすことができ、応答速度が大幅に向上すると共に、電
極面積の拡大が図れ、電極上の色素量の増大により、発
色効率が向上する。また、前記半導体ナノ多孔質層の少
なくとも一方が多層構造に形成されているので、発色強
度を増強させることができると共に、各層毎に異なるエ
レクトロクロミック色素を担持させて容易にフルカラー
化を達成し得る。
【0012】前記<7>に記載のECディスプレイは、
前記<1>から<6>のいずれかにおいて、EC色素と
電荷移動剤を併用することにより、両者が電極上で同時
に発色し得、発色濃度が増大すると共に、酸化還元反応
がスムーズに進行して、応答速度が向上する。
【0013】前記<9>に記載のECディスプレイは、
前記<1>から<8>のいずれかにおいて、半導体ナノ
多孔質層に含まれる半導体微粒子として、単体半導体、
酸化物半導体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化
物半導体及びこれらの混合物を用いることにより、表面
及び内部に微細孔を有する半導体ナノ多孔質層が形成し
得、EC色素の吸着量が増大して応答速度及び発色効率
が向上するものである。
【0014】前記<11>に記載のECディスプレイ
は、前記<1>から<2>及び<4>から<10>のい
ずれかにおいて、EC色素を半導体ナノ多孔質層に担持
させる前に熱処理を施すことにより、半導体ナノ多孔質
層表面に吸着した水分、その他の不純物を除去し得ると
共に、多孔質層表面を活性化し得、EC色素の吸着を効
率よく行うことができる。
【0015】前記<12>に記載のECディスプレイ
は、前記<1>から<11>のいずれかにおいて、半導
体ナノ多孔質層の厚みが100μm以下であることによ
り、透明性を低下させることなく、吸着することができ
るEC色素量を多くすることができ、発色効率を向上し
得る。
【0016】前記<14>に記載のECディスプレイ
は、前記<1>から<13>のいずれかにおいて、平地
混合による面積階調法、平地混合による濃度階調法、積
層混合による面積階調法及び積層混合による濃度階調法
から選ばれるいずれかの方法を採用することにより、フ
ルカラー化が容易に達成できるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のECディスプレイは、多
層構造に形成された半導体ナノ多孔質層を少なくとも一
方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多
孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を
挟持してなり、パッシブマトリクスパネル構造及びアク
ティブマトリクスパネル構造のいずれかの構造を有し、
(1)前記半導体ナノ多孔質層に、EC色素が複数層に
形成されてなるECディスプレイ、(2)前記電解質層
中にEC色素が含有されてなるECディスプレイ、
(3)前記半導体ナノ多孔質層にEC色素が担持されて
なるECディスプレイ、好ましくは(4)EC色素が前
記半導体ナノ多孔質層に担持されていると共に、前記電
解質層中に含有されているECディスプレイ、である。
なお、前記ECディスプレイは、ディスプレイ内部にバ
ックライト等の光源を有する透過型、太陽光等の外光を
光源として利用する反射型、或いは前二者の組み合わせ
である半透過型のいずれであっても構わない。また、前
記ECディスプレイは、単色発色のものであってもよい
し、多色発色のフルカラータイプのものであっても構わ
ない。
【0018】図1〜3は、単色発色のパッシブマトリク
スパネルを示し、(A)は斜視図、(B)は概略断面図
である。図1(A),(B)は、透明電極表面に半導体
ナノ多孔質層を形成していない従来の単色発色パッシブ
マトリクスパネルを示し、このパネルは一対のガラス基
板12,12上に、互いに平行に配置された帯状の透明
電極5,5(例えば、ITO電極)を有し、この透明電
極5,5間に、EC色素を含む電解質9aを配置したも
のである。図2(A),(B)は、本発明の単色発色パ
ッシブマトリクスパネルの一例を示し、一対のガラス基
板12,12上に、互いに平行に配置された帯状の透明
電極5,5(例えば、ITO電極)を有し、この透明電
極5,5間に、電解質層9を介して一対の半導体ナノ多
孔質層8,8同士が対向するように配置されたものであ
る。図3(A),(B)は、本発明の単色発色パッシブ
マトリクスパネルの一例を示し、一対のガラス基板1
2,12上に、互いに平行に配置された帯状の透明電極
5,5(例えば、ITO電極)を有し、該透明電極5,5
上に、半導体ナノ多孔質膜8,8が積層され、これら一
対の表面に半導体ナノ多孔質膜を有する電極で電解質層
9を挟持してなるものである。なお、どちらか一方の透
明電極の上にのみ半導体ナノ多孔質膜を作成してもよ
い。また、EC色素は両極に吸着させても、片方だけで
もよく、また、一方にEC色素、他方に無色の酸化還元
物質を吸着させても構わない。
【0019】図4〜図6は、フルカラータイプのパッシ
ブマトリクスパネルを示し、(A)は斜視図、(B)は
概略断面図である。図4(A),(B)は、本発明のフ
ルカラータイプのパッシブマトリクスパネルの一例を示
し、ガラス基板12上に、互いに平行に配置された帯状
の透明電極5,5(例えば、ITO電極)を有し、一方
の透明電極5上に半導体ナノ多孔質膜8を設け、順番に
赤色(R)発色EC色素、緑色(G)発色EC色素及び
青色(B)発色EC色素を順番に担持させて、他方の透
明電極5との間に電解質層9を介在させたものである。
図5(A),(B)は、本発明のフルカラータイプのパ
ッシブマトリクスパネルの一例を示し、図4において、
対極上での酸化還元反応の効率を上げるため、対極上に
も半導体ナノ多孔質膜8aを設け、無色の酸化還元物質
を吸着させたものである。図6(A),(B)は、本発
明のフルカラータイプのパッシブマトリクスパネルの一
例を示し、両極で発色させて発色効率及び応答効率を向
上させたものである。即ち、一方の透明電極5上に半導
体ナノ多孔質膜8を設け、赤色(R)発色EC色素、緑
色(G)発色EC色素及び青色(B)発色EC色素を順
番に担持させると共に、これらと直交するように対極に
ドット状に半導体ナノ多孔質膜8を設け、色が合うよう
にEC色素を吸着させて、電解質層9を介在させてなる
ものである。
【0020】前記パッシブマトリクスパネルにおいて
は、例えば、複数の正極からなる正極ラインと、複数の
負極からなる負極ラインとが互いに略直行方向に交差し
て回路が形成されている。各交差点に位置する、赤色発
色用、緑色発色用及び青色発色用の各EC色素が担持さ
れた半導体ナノ多孔質膜が画素として機能し、各画素に
対応してEC色素が複数存在している。該パッシブマト
リクスパネルにおいて、正極ラインにおける正極の1つ
と、負極ラインにおける負極の1つとに対し、定電流源
により電流を印加すると、その際、その交差点に位置す
るEC色素に電流が印加され、該位置のEC色素が発色
する。この画素単位の発色を制御することにより、容易
にフルカラーの画像を形成することができる。
【0021】図7は、本発明の単色のアクティブマトリ
クスパネルの一例を示し、TFT基板20は、ガラス基
板上に、走査線、データライン及び電流供給ラインが碁
盤目状に形成されており、碁盤目状を形成する走査線等
に接続され、各碁盤目に配置されたTFT回路により駆
動可能であり、各碁盤目中に配置された正極23(例え
ば、ITO電極)とを有している。この図7のパネルで
は、TFT基板側にはEC色素を吸着させず、負極側の
ガラス基板12上に全体を覆うように半導体ナノ多孔質
膜8を設け、これにEC色素を吸着させて、正負極間に
電解質層9を介在させたものである。図8は、本発明の
単色のアクティブマトリクスパネルの一例を示し、図7
において、TFT基板の正極23上に半導体ナノ多孔質
膜8を設け、これにEC色素を吸着させて、正負極間に
電解質層9を介在させたものである。図9は、本発明の
フルカラータイプのアクティブマトリクスパネルの一例
を示し、TFT基板の正極23上に半導体ナノ多孔質膜
8を設け、画素毎に赤色(R)発色EC色素、緑色
(G)発色EC色素及び青色(B)発色EC色素を順番
に担持させると共に、負極側のガラス基板12上に全体
を覆うように半導体ナノ多孔質膜8aを設け、無色の酸
化還元物質を吸着させて、電解質層9を介在させたもの
である。図10は、本発明のフルカラータイプのアクテ
ィブマトリクスパネルの一例を示し、TFT基板の正極
23上に半導体ナノ多孔質膜8を設け、画素毎に赤色
(R)発色EC色素、緑色(G)発色EC色素及び青色
(B)発色EC色素を順番に担持させると共に、負極側
に半導体ナノ多孔質膜8をドット状にパターンニング
し、該ドット(画素)毎にEC色素を正極と色が合うよ
うに吸着させて、電解質層9を介在させてなるものであ
る。
【0022】前記アクティブマトリクスパネルにおいて
は、例えば、複数平行に設けられた走査線と、複数平行
に設けられたデータライン及び電流供給ラインとが互い
に直交して碁盤目を形成しており、各碁盤目には、スイ
ッチング用TFTと、駆動用TFTとが接続されて回路
が形成されている。駆動回路から電流を印加すると、碁
盤目毎にスイッチング用TFTと駆動用TFTとが駆動
可能となっている。そして、各碁盤目は、赤色発色用、
緑色発色用及び青色発色用の各EC色素が画素として機
能し、該アクティブマトリクスパネルにおいて、横方向
に配置された走査線の1つと、縦方向に配置された電流
供給ラインとに対し、駆動回路から電流を印加すると、
その際、その交差点に位置するスイッチング用TFTが
駆動し、それに伴い駆動用TFTが駆動し、該位置のE
C色素が発色する。この画素単位の発色を制御すること
により、容易にフルカラーの画像を形成することができ
る。
【0023】前記ECディスプレイを構成するEC素子
は、半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成
した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対
向するように配置した間に、電解質層を挟持してなり、
前記電解質層中にEC色素が含まれるか、又は前記半導
体ナノ多孔質層にEC色素が担持されている。以下、各
構成要素について詳細に説明する。
【0024】−半導体ナノ多孔質層− 前記半導体ナノ多孔質層は、一対の透明電極の少なくと
も一方、好ましくは両方の表面に形成され、表面積を大
きくするため、その表面及び内部に、EC色素、必要に
応じて電荷移動剤を担持可能な微細孔を有している。前
記半導体ナノ多孔質層の比表面積は、1〜5000m
/gが好ましく、10〜2500m/gがより好まし
い。ここで、比表面積は窒素ガスの吸着量から求めたB
ET比表面積を意味する。比表面積が小さすぎるとEC
色素の吸着量を増大させることができなり、本発明の目
的を達成できなくなる場合がある。
【0025】前記半導体ナノ多孔質層は、一対の透明電
極の少なくとも一方、好ましくは両方に、後述するEC
色素が複数層に形成されており、好ましくは2〜4層積
層されている。この場合、複数層に形成されるEC色素
層は異なる発色を示すEC色素を積層することが好まし
い。これにより、多色化、黒色化が可能となる。また、
同一種類のEC色素積層する場合には、発色強度が向上
する。
【0026】前記半導体ナノ多孔質層は、一対の透明電
極の少なくとも一方、好ましくは両方が多層構造、例え
ば2〜4層構造に形成し、該多層構造の半導体ナノ多孔
質層毎に同一種類のEC色素を担持することにより、発
色強度を調整でき、発色強度を増強させることができ
る。また、多層構造の半導体ナノ多孔質層の各層毎に異
なる色(例えば青色、緑色、赤色の三原色)のEC色素
をそれぞれ担持させることにより、フルカラー化を容易
に達成することができる。なお、前記多層構造の半導体
ナノ多孔質層は、後述する低温焼成により好適に形成す
ることができる。
【0027】前記半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体
微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選
択することができ、例えば、単体半導体、酸化物半導
体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化物半導体、
又はこれらの混合物が挙げられ、これらにはドーパント
として不純物が含まれていてもよい。なお、半導体の形
態の制限は特になく、単結晶、多結晶、非晶質又はこれ
らの混合形態であってもよい。
【0028】前記単体半導体としては、例えば、シリコ
ン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、
などが挙げられる。
【0029】前記酸化物半導体は、金属酸化物で半導体
の性質を持つものであり、例えば、TiO,Sn
、Fe、SrTiO、WO、ZnO、Z
rO、Ta、Nb、V、In
、CdO、MnO,CoO、TiSrO、KTiO
、CuO、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウ
ム、ニオブ酸カリウム、などが挙げられる。
【0030】前記化合物半導体としては、例えば、カド
ミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化
物、アンチモンの硫化物、ビスマスの硫化物、カドミウ
ムのセレン化物、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル
化物、亜鉛のリン化物、ガリウムのリン化物、インジウ
ムのリン化物、カドミウムのリン化物、ガリウム−ヒ素
のセレン化物、銅−インジウムのセレン化物、銅−イン
ジウムの硫化物、などが挙げられる。
【0031】前記有機半導体としては、例えば、ポリチ
オフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニ
レンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、等が挙げら
れる。
【0032】前記複合体酸化物半導体としては、例え
ば、SnO−ZnO、Nb−SrTiO、N
−Ta、Nb−ZrO、Nb
−TiO、Ti−SnO、Zr−SnO、B
i−SnO、In−SnO、などが挙げられる。前
記SnO−ZnOは、比較的大きなZnO粒子(粒径
約0.2μm)を中心に周りをSnO超微粒子(粒径
約15nm)で被覆したものであり、両者の複合化は質
量比でSnO:ZnO=70:30〜30:70の範
囲であることが好ましい。前記Nb−SrTiO
、Nb−Ta、Nb−ZrO
及びNb−TiOなどのNb複合体は、
Nbとの質量比が8:2〜2:8となるように複
合化される。
【0033】前記半導体微粒子の形状は、特に制限はな
く、目的に応じて適宜選定することができ、球形、ナノ
チューブ状、棒状、ウィスカー状のいずれの形状であっ
ても構わず、形状の異なる2種類以上の微粒子を混合す
ることもできる。前記球形粒子の場合には、平均粒径が
0.1〜1000nmが好ましく、1〜100nmがよ
り好ましい。なお、粒径分布の異なる2種類以上の微粒
子を混合しても構わない。また、前記棒状粒子の場合に
は、アスペクト比が2〜50000が好ましく、5〜2
5000がより好ましい。
【0034】前記半導体ナノ多孔質層を形成する方法と
しては、特に制限はなく、半導体の種類に応じて適宜選
定することができ、例えば、金属陽極酸化法、陰極析出
法、スクリーン印刷法、ゾルゲル法、熱酸化法、真空蒸
着法、dc及びrfスパッタ法、化学気相堆積法、有機
金属化学気相堆積法、分子線堆積法、レーザーアブレー
ション法などが挙げられ、また、上記方法を組み合わせ
て前記半導体ナノ多孔質層を作製することもできる。
【0035】−酸化物半導体ナノ多孔質層の形成方法− 酸化物半導体(金属酸化物)ナノ多孔質層を形成する1
つの方法として、金属酸化物前駆体と、該金属酸化物前
駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物とを
含む溶液中で、前記金属酸化物前駆体を反応させて複合
ゲルを生成し、金属酸化物微粒子からなるコロイドの分
散ゾルを得る第1の工程と、該ゾルを支持体に塗布し、
これを乾燥又は焼成して、前記透明絶縁基板上の透明導
電性膜上に微細孔を有する半導体ナノ多孔質層を形成す
る第2の工程とを含む方法が挙げられる(以下「複合ゲ
ル化法」ということもある)。
【0036】前記第1の工程では、拡散が規制されたゲ
ル中で金属酸化物微粒子の形成反応が進行するため、粗
大粒の形成や粒子の沈降が起こらず、粒径の小さな微粒
子が均一に分散したコロイド分散ゾル溶液を得ることが
できる。いわゆるゾルゲル法では、金属酸化物前駆体同
士が、例えば金属アルコキシドの場合、加水分解、脱水
縮合反応することでゲル化するが、この場合には、−M
−O−M−(ここで、Mは金属元素であり、Oは酸素元
素である。)の化学的強固な3次元結合のネットワーク
が形成され、再びゾル化させることはできず、一旦ゲル
化すると塗布等の手段による加工ができない。これに対
して前記金属酸化物前駆体と、該金属酸化物前駆体と相
互作用する化合物とを含む溶液中で、金属酸化物前駆体
を反応させて複合ゲルを得る方法では、金属酸化物前駆
体と相互作用する化合物の相互作用の性質を利用するこ
とで再びゾル化させることができ、優れた加工性を持た
せることが可能となる。
【0037】ここで、前記金属酸化物前駆体としては、
使用する溶媒に可溶である金属ハロゲン化物、金属錯化
合物、金属アルコキシド、金属カルボン酸塩あるいはキ
レート化合物等の金属化合物等が挙げられる。具体的な
化合物としては、例えば、TiCl(四塩化チタ
ン)、ZnCl(塩化亜鉛)、WCl6(六塩化タン
グステン)、SnCl(塩化第一錫)、SrCl
(塩化ストロンチウム)等の金属ハロゲン化物、Ti
(NO(硝酸チタン)、Zn(NO(硝酸
亜鉛)、Sr(NO(硝酸ストロンチウム)等の
硝酸塩や、一般式M(OR)(但し、Mは金属元素、
Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である。)で表
される金属アルコキシド等が挙げられる。
【0038】前記金属アルコキシドとしては、例えば、
亜鉛ジエトキシド、タングステンヘキサエトキシド、バ
ナジルエトキシド、すずテトライソプロポキシド、スト
ロンチウムジイソプロポキシド等が挙げられる。
【0039】例えば、酸化チタンの金属酸化物層を形成
する場合、金属アルコキシドとしては、例えば、チタニ
ウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマ
ルプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニ
ウムテトラノルマルブトキシド、チタニウムテトライソ
ブトキシド、チタニウムテトラターシャリーブトキシド
等が好ましく使用できる。
【0040】また、前記金属酸化物前駆体と相互作用す
る官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロ
キシル基等が挙げられる。また、金属酸化物前駆体と相
互作用する官能基としては、アミド酸構造のような前記
官能基を1種以上有するものでもよい。また、前記金属
酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化
合物は、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、
アミノ酸構造から選択される官能基を1種以上有する化
合物である。特に好ましくは高分子化合物である。この
ような低分子化合物の具体例としては、ジカルボン酸、
ジアミン、ジオール、ジアミド酸等が挙げられる。
【0041】また、高分子化合物の具体例としては、カ
ルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構
造から選択される官能基を主鎖、側鎖又は架橋部分に1
種以上有する高分子化合物が挙げられる。前記高分子化
合物の主鎖構造としては、特に限定されるものではない
が、ポリエチレン系構造、ポリスチレン系構造、ポリア
クリレート系構造、ポリメタクリレート系構造、ポリカ
ーボネート系構造、ポリエステル系構造、セルロース系
構造、シリコーン構造、ビニル系重合体構造、ポリアミ
ド系構造、ポリアミドイミド系構造、ポリウレタン系構
造、ポリウレア系構造等、又はこれら共重合体構造等の
任意の構造を有するものが挙げられる。
【0042】また、前記カルボキシル基、アミノ基、ヒ
ドロキシル基、アミド酸構造から選択される官能基を主
鎖、側鎖又は架橋部分に1種以上有する高分子化合物と
しては、金属酸化物前駆体と相互作用の形態が適当であ
る観点から、側鎖にカルボキシル基を有するポリアクリ
ル酸の使用が特に好ましい。更に、前記金属酸化物前駆
体と相互作用する官能基を1種以上有する高分子化合物
は、相互作用する官能基を有する高分子化合物とカルボ
キシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造を
有さない前記同様の主鎖構造を有する高分子化合物との
共重合体であってもよい。前記金属酸化物前駆体と相互
作用する官能基を1種以上有する高分子化合物は、目的
に応じて、2種以上の混合系、又はカルボキシル基、ア
ミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造を有さない前記
同様の主鎖構造を有する高分子化合物との混合系を使用
してもよい。前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能
基を1種以上有する高分子化合物の平均重合度は、10
0〜10000000程度が好ましく、5000〜25
0000がより好ましい。
【0043】前記溶媒としては、メタノール、エタノー
ル、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類
や、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサ
ン、ベンゼン等の金属酸化物前駆体を溶解し、かつ金属
酸化物前駆体とは反応しないものであれば用いることが
できる。
【0044】以下、金属酸化物前駆体として金属アルコ
キシドを用いた場合を例として、半導体ナノ多孔質層の
形成方法を詳しく説明する。
【0045】まず、前記金属アルコキシドを前記溶媒
(例えば、アルコール類等の有機溶媒)に添加する。更
に、前記金属アルコキシドを部分的に加水分解するのに
必要な水と、触媒として、塩酸,硝酸,硫酸又は酢酸等
の酸類を添加する。ここで添加する水及び酸類の量は、
用いる前記金属アルコキシドの加水分解性の程度に応じ
て適宜選択することができる。次に、得られる前記混合
溶液を攪拌しながら乾燥窒素気流下で室温〜150℃
(好ましくは、室温〜100℃)で加熱(又は還流)す
る。前記還流温度及び時間についても、用いる前記金属
酸化物前駆体の加水分解性に応じて適且選択することが
できる。前記還流の結果、前記金属アルコキシドは部分
的に加水分解された状態になる。即ち、前記混合溶液に
含まれる前記水の量は、前記金属アルコキシドのアルコ
キシル基を十分に加水分解するには十分でない程度少量
であるため、一般式M(OR)で表される前記金属ア
ルコキシドにおいては、その総ての−OR基は加水分解
されず、結果として部分的に加水分解された状態にな
る。この部分的に加水分解された状態の前記金属アルコ
キシドにおいては、重縮合反応は進行しない。このた
め、前記金属アルコキシド間において−M−O−M−の
鎖は形成されていても、前記金属アルコキシドはオリゴ
マー状態となる。このオリゴマー状態にある前記金属ア
ルコキシドを含む前記還流後の混合溶液は、無色透明で
粘度の上昇もほとんどない。
【0046】次に、前記還流後の混合溶液の温度を室温
に下げ、該混合溶液にカルボキシル基、アミノ基、ヒド
ロキシ基、アミノ酸構造から選択される官能基を1種以
上有する高分子化合物(好ましくはポリアクリル酸)を
添加する。この場合、本来アルコール類等の有機溶媒に
は溶解しにくい前記高分子化合物が、この混合溶液には
容易に溶解し透明ゾルが得られる。これは、前記高分子
化合物のカルボキシル基と前記金属アルコキシドとが塩
形成反応により結合し、高分子錯体状の化合物が形成さ
れるためであると考えられる。この透明ゾルは、通常、
無色透明な均一溶液である。
【0047】この透明ゾルに更に過剰量の水を加えて、
室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃程度に保持
して更に反応を継続させることにより、数分から1時間
程度で該透明ゾルがゲル化し、前記高分子化合物と前記
金属アルコキシドとの架橋状構造を有する複合ゲルが形
成される。
【0048】得られる複合ゲルを更に室温〜90℃(通
常、80℃程度)で5〜50時間保持し反応を継続させ
ると、該複合ゲルは再び溶解し半透明な金属酸化物微粒
子コロイド分散ゾルが得られる。これは、前記金属アル
コキシドの加水分解反応により重縮合反応が進行すると
ともに、前記高分子化合物と前記金属アルコキシドとに
よる塩構造が分解して、金属酸化物微粒子とカルボン酸
エステル等とに変化することによるものである。
【0049】以上により得られた半透明な金属酸化物微
粒子コロイド分散ゾルを、透明絶縁基板上に堆積された
透明導電性膜に塗布後、乾燥又は焼成することにより、
微細孔を有した金属酸化物膜が形成される。
【0050】前記塗布法は、特に限定なく公知の方法で
行うことができる、具体的には、ディップコーティング
法、スピンコーティング法、ワイヤーバー法、スプレー
コーティング法が挙げられる。また、乾燥には、例え
ば、風乾、オーブン等の乾燥器を用いて行う乾燥、真空
凍結乾燥が可能である。また、ロータリーエバポレータ
ー等の機器を用いて溶媒を蒸発させる方法でもよい。こ
の場合、乾燥の温度、時間等を目的に応じて適且選択す
ることができる。
【0051】また、乾燥温度により、前記金属酸化物微
粒子コロイド分散ゾルを乾燥(前記溶媒を含む液体成分
の除去)しただけは、前記高分子化合物又はその反応生
成物が除去できないことがある。かかる場合には、更に
これらを除去し純粋な金属酸化物とするため、焼成を行
うのが好ましい。前記焼成は、例えば炉等を用いて行う
ことができ、焼成の温度としては用いた前記官能基を有
する高分子化合物の種類により異なるが、低温であるこ
とが多層化を図る上で好適であり、約100℃〜700
℃が好ましく、100℃〜400℃がより好ましい。
【0052】前記焼成により、金属酸化物微粒子の結晶
化と金属酸化物微粒子の焼結が起こると同時に、有機高
分子成分が熱分解して消失する。
【0053】前記半導体ナノ多孔質層の形成において
は、拡散が規制された複合ゲル中で金属酸化物微粒子の
形成反応が進行するため、粗大粒子の形成や、粒子の沈
降による凝集等が起こらず、粒径の小さな超微粒子が均
一に分散した金属酸化物微粒子コロイド分散ゾルを得る
ことができる。
【0054】前記半導体ナノ多孔質層の金属酸化物微粒
子の大きさ、金属酸化物微粒子凝集構造の周期、金属酸
化物微粒子凝集相と空隙相との体積比等については、例
えば、前記金属酸化物前駆体に対する、金属酸化物前駆
体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加
量と、前記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆体と相互
作用する官能基を1種以上有する化合物とを合わせた固
形成分の前記混合溶液全体に対する割合で、所望の程度
に制御することができる。
【0055】即ち、金属酸化物前駆体と焼成する官能基
を1種以上有する化合物の添加量を増やすと、得られる
半導体ナノ多孔質層における空隙相の体積比が増し、前
記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆体と相互作用する
官能基を1種以上有する化合物とを合わせた固形成分の
前記混合溶液全体に対する割合を減らすと、得られる金
属酸化物微粒子凝集構造の周期が小さくなり、空隙相の
密度は増すが、金属酸化物微粒子そのものの大きさは大
きくなる。
【0056】前記金属酸化物前駆体に対する、金属酸化
物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物
の添加量は、前記固形成分の前記混合溶液全体に対する
割合に応じて異なり適宜選択可能であり、一般には質量
比で0.1〜1が好ましく、更には0.2〜0.8が好
ましい。金属酸化物前駆体対する、金属酸化物前駆体と
相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加量を
下げると、マクロ孔が少ない緻密な半導体ナノ多孔質層
ができやすくなり、前記質量比で0.1未満であると、
−M−O−M−の大きな3次元ネットワークが形成され
てしまうため、複合ゲルが再溶解しないことがある。ま
た、逆に添加量を上げて、1を超えると比較的大きな空
隙が生じ透明な半導体ナノ多孔質層となりやすい。
【0057】前記固形成分の前記混合溶液全体に対する
割合としては、前記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆
体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加
量に応じて異なるため適宜選択可能であるが、一般には
1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好まし
い。前記割合が、1質量%未満であると、複合ゲル化反
応の進行が遅く、流動性の高い透明ゾル状態で金属酸化
物微粒子が形成され、粗大な微粒子が形成されてしま
い、一方、10質量%を超えると透明ゾルから複合ゲル
への進行が速く均一な複合ゲルが得られないことがあ
る。
【0058】以下に、金属アルコキシドとしてタングス
テンヘキサエトキシドを用いた場合を例にして、酸化タ
ングステン多孔質層の形成方法について更に詳しく説明
する。
【0059】まず、タングステンヘキサエトキシドをア
ルコールに添加して混合溶液を調製する。この際アルコ
ールには、水と、触媒としての酸とが添加されるが、該
水は、タングステンヘキサエトキシドに対して0.1倍
モル〜等モル程度、該酸は、タングステンヘキサエトキ
シドに対して0.05倍モル〜0.5倍モル程度それぞ
れ添加するのが好ましい。得られる混合溶液を、室温〜
80℃で攪拌しながら乾燥窒素気流下で還流する。ここ
での還流温度及び時間は、80℃で30分〜3時間程度
が好ましい。この還流の結果、透明な混合溶液が得られ
る。
【0060】この混合溶液中では、タングステンヘキサ
エトキシドは部分的に加水分解された状態になってお
り、オリゴマー状態にある。この混合溶液の温度を室温
まで下げ、ポリアクリル酸を添加する。本来アルコール
には溶けにくいポリアクリル酸が、この混合溶液には容
易に溶解し無色の透明ゾルが得られる。これは、ポリア
クリル酸のカルボン酸とタングステンヘキサエトキシド
とが塩形成反応により結合し、高分子錯体状の化合物が
形成されているためである。この透明ゾルに更に過剰量
の水を加えて、室温〜80℃に保持すると数分間〜1時
間程度で該透明ゾルがゲル化し、ポリアクリル酸とタン
グステンヘキサエトキシドとを少なくとも含む架橋構造
の複合ゲル化が形成される。
【0061】この複合ゲルを80℃程度で5〜50時間
保持すると、該複合ゲルは再び溶解し半透明なゾルが得
られる。これは、タングステンヘキサエトキシドの加水
分解反応及び重縮合反応が進行するとともに、ポリアク
リル酸とタングステンヘキサエトキシドとの塩構造が分
解して、酸化チタンとカルボン酸エステルとに変化する
ためである。
【0062】得られたゾル溶液を、ディップコーティン
グ法等によって適当な基板に塗布し、約400℃以上の
高温に加熱する。この加熱により酸化タングステン微粒
子の結晶化と酸化タングステン微粒子同士の焼結が進行
すると同時に、高分子相が熱分解し、酸化タングステン
が相分離状態に凝集した膜状の酸化タングステン微粒子
が形成されることとなる。
【0063】タングステンヘキサエトキシドに対するポ
リアクリル酸の量としては、質量比で0.3〜0.7が
好ましい。前記質量比が、0.3未満であると−M−O
−M−の大きな3次元ネットワークが形成されゲルが溶
解しないことがあり、0.7を超えると、比較的大きな
空隙が生じ透明な層となることがある。
【0064】また、タングステンヘキサエトキシドとポ
リアクリル酸との固形成分の前記混合溶液全体に対する
割合としては、1〜10質量%が好ましい。前記割合が
1質量%未満であると、複合ゲル化反応の進行が遅く、
流動性の高いゾル状態で酸化タングステン微粒子が形成
され、粗大な酸化タングステン微粒子が形成されること
がある。一方、10質量%を超えると、透明ゾルから複
合ゲルへの進行が速く均一な複合ゲルが得られないこと
がある。
【0065】−化合物半導体ナノ多孔質層の形成方法− 前記化合物半導体ナノ多孔質層の形成方法としては、電
解析出法、化学浴堆積法、光化学堆積法があり、具体的
には以下に示すとおりである。
【0066】(電解析出法)前記電解析出法は、少なく
とも堆積される元素のイオンを含む電解質中に、透明絶
縁基板上の透明導電性膜を形成した電極と、該電極に対
向する電極とを配置し、これら電極間で電気化学的に酸
化還元反応を起こし、前記化合物半導体層を透明導電性
膜を形成した電極上に形成するものである(表面技術V
ol.49,No.1 3ページ 1998年)。
【0067】この工程で作製される化合物半導体は、例
えば、CuGaS(硫化銅ガリウム)、CuGaSe
(セレン化銅ガリウム)、CuGaTe(テルル化
銅ガリウム)、CuInS(硫化銅インジウム)、C
uInSe(セレン化銅インジウム)、CuInTe
(テルル化銅インジウム)、AgInS(硫化銀イ
ンジウム)、AgInSe(セレン化銀インジウ
ム)、AgInTe(テルル化銀インジウム)、Zn
Se(セレン化亜鉛)、ZnTe(テルル化亜鉛)、C
dTe(テルル化カドミウム)、CuS(硫化銅)、
CuSe(セレン化銅)、等が挙げられる。
【0068】前記電解質としては、溶媒中で原料元素と
なる硫酸化物や塩化物等の溶質を混合したものを使用
し、電解質の溶媒としては、水(純水、蒸留水等)が用
いられる。しかし、水の電気分解により水素が発生する
電圧を卑に印加する場合、前記溶媒は非水溶液として有
機物を用いることができる。有機溶媒としては、アセト
ニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネ
ート等を使用することができる。また、前記非水溶液
は、液体アンモニア、液体二酸化硫黄等の無機非水溶液
を前記溶媒として使用することができる。
【0069】前記溶質は、硫酸物や塩化物等の前記電極
上に堆積させる化合物半導体を構成する元素を含むもの
であり、かつ前記溶媒に可溶であればよい。例えば、硫
酸物としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫酸ガリ
ウム、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸カドミウム等が挙げられ
る。また、塩化物としては、塩化第一銅、塩化インジウ
ム、塩化ガリウム、塩化銀、塩化亜鉛、塩化カドミウム
等の化合物が挙げられ、これらは還元型溶質として用い
る。前記溶質は、上記化合物に限定されることはなく、
1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。ま
た、前記溶質として、酸化セレン、水素酸セレン、酸化
テルル、水素酸テルル、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素
等を、酸化型溶質として使用することができる。
【0070】上記のような酸化型溶質を用いたとき、水
素イオン濃度を調整することで該酸化型溶質に含有する
元素イオンの堆積を促すことができる。前記水素イオン
濃度は、例えば、硫酸、塩酸等の調整剤によって調整す
ることができる。前記調整剤によって調整された水素イ
オン濃度はpH0.9〜4.0が好ましく、pH1.5
〜2.5がより好ましい。
【0071】前記電解質として上記化合物のほかに、電
解質中に電解質の通電性を得るために電解還元に関与し
ない不活性物質で構成する支持電解質を加えることもで
きる。支持電解質としては、例えば、NaClO4(塩
素酸ナトリウム)、LiClO4(塩素酸リチウム)等
が挙げられる。前記支持電解質は0.05〜1mol/
l量の含有が好ましい。
【0072】前記化合物半導体の堆積が進行するときに
必要な密着性を上げるために、前記電解質中に添加剤を
入れることもできる。前記添加剤としては、アミン、ア
ルカロイド、スルホン酸、メルカプタン、スルフィド等
が挙げられる。
【0073】前記電解質中に配置された対向する電極間
に電圧を印加するには、第三の電極を電圧基準電極とし
て参照電極を用いることができる。前記対向する電極間
に一定の電圧又は電流を制御するために参照電極を用い
ることもできる。前記参照電極は、標準水素電極、飽和
カロメル電極、標準銀塩化銀電極、標準酸化水銀電極等
を用いることができる。
【0074】前記電解質中に配置された前記多孔質半導
体層に対向する電極としては、溶液中での電圧印加によ
り溶解しにくい材料、即ちイオン化傾向が小さい材料を
用いることができる。例えば、白金(Pt)、金(A
u)、銀(Ag)等が挙げられる。
【0075】前記電解質中に配置された対向する電極間
に印加する電圧は、前記電解質中に含まれる堆積したい
化合物半導体を構成する元素を含む化合物の元素イオン
の酸化還元電位より卑であることが好ましい。
【0076】前記電解質中に含む化合物の含有量は、5
〜400mmol/lが好ましく、還元型元素イオン堆
積では5〜20mmol/lがより好ましく、酸化型元
素イオンの堆積では、100〜400mmol/lがよ
り好ましい。前記溶液の温度は20〜100℃が好まし
く、22〜70℃がより好ましい。
【0077】前記化合物半導体層形成時の電圧印加時間
は300〜3600秒が好ましく、800〜2400秒
より好ましい。
【0078】前記工程で堆積した前記化合物半導体を焼
成し結晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半導
体の種類に依存するが、50〜600℃が好ましく、1
50〜600℃がより好ましい。該結晶化の時間は1〜
60分が好ましく、15〜30分がより好ましい。
【0079】(化学浴堆積法)前記化学浴堆積法は、少
なくとも堆積されるイオンを1種以上含む溶液中に、透
明絶縁基板上の透明導電性膜を形成した電極を配置し、
前記溶液の温度調整とイオン濃度調整とにより還元反応
を起こし、前記化合物半導体層を電極上に形成するもの
である(Jounal of Applied Phys
ics, vol.82, 2, 655, 1997)。
【0080】この化学浴堆積法では、酸化剤や還元剤に
より元素イオンを生成し、該イオンを安定化するために
錯化剤、水素イオン濃度の変動を防止するために緩衝
剤、溶液中の自然分解を防止するための安定剤等を添加
し、これらの酸化還元反応により前記透明導電性膜を形
成した電極上に前記化合物半導体の堆積が可能となる。
この工程で作製される前記化合物半導体は、特には限定
されないが、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnTe(テ
ルル化亜鉛)、CdTe(テルル化カドミウム)、Cu
S(硫化銅)、CuSe(セレン化銅)等が挙げら
れる。
【0081】前記溶液は、溶媒中でイオンとなる硫酸化
物や塩化物等の溶質を混合したものを使用する。前記溶
媒としては、水(純水、蒸留水等)等が用いられる。ま
た有機溶媒も用いることができ、例えば、アセトニトリ
ル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート等
を使用することができる。また、液体アンモニア、液体
二酸化硫黄等の無機非水溶液を使用することもできる。
【0082】前記溶質は、硫酸物や塩化物等の前記透明
導電性膜を形成した電極上に堆積したい化合物半導体を
構成する元素を含むものであればよい。例えば、硫酸物
としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫酸ガリウ
ム、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸カドミウム等が挙げられ
る。また、塩化物としては、塩化第一銅、塩化インジウ
ム、塩化ガリウム、塩化銀、塩化亜鉛、塩化カドミウム
等が挙げられる。前記溶質としては、酸化セレン、水素
酸セレン、酸化テルル、水素酸テルル、チオ硫酸ナトリ
ウム、チオ尿素等も好ましく使用することができる。
【0083】上記のような化合物を用いたとき、水素イ
オン濃度を調整することで該化合物に含有する元素イオ
ンの堆積を促すことができる。前記水素イオン濃度を調
整するための調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウ
ム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物や無機酸、有
機酸等を用いることができる。また、前記水素イオン濃
度の変動を抑制するために使用される緩衝剤は、クエン
酸ナトリウム酢酸ナトリウム、オキシカルボン酸系のも
のや、ホウ酸あるいは炭酸等の無機酸で解離定数が小さ
いものや、有機酸及び無機酸のアルカリ塩を用いること
ができる。また、錯化剤として、水酸化アンモニウム、
クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、エチレングリコ
ール等を用いることができる。
【0084】安定剤として鉛の塩化物、硫化物や硝化物
等を用いることができる。前記溶液中の化合物半導体の
原料元素を含む前記化合物の濃度は、1.0×10−3
〜2mol/lが好ましく、2.0×10−2〜1mo
l/lがより好ましい。
【0085】前記溶液の温度は20〜100℃が好まし
く、22〜70℃がより好ましい。また、前記化合物半
導体層の形成時間は300〜3600秒が好ましく、1
200〜2400秒がより好ましい。
【0086】前記工程で堆積した前記化合物半導体層を
焼成し結晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半
導体の種類に依存するが、50〜600℃が好ましく、
150〜550℃がより好ましい。該結晶化の時間は1
〜60分が好ましく、15〜30分がより好ましい。
【0087】(光化学堆積法)前記光化学堆積法は、少
なくともチオ硫酸ナトリウム及び金属イオンを1種以上
含む溶液中に、透明絶縁基板上に透明導電性膜を形した
電極を配置し、該電極に紫外線を照射して光反応を生じ
させ、前記化合物半導体層を電極上に形成するものであ
る(Japan Journal Applied Ph
ysics vol36, L1146 1997年)。
【0088】この光化学堆積法では、溶液中のイオン
(チオ硫酸イオン等)の光励起により化合物生成反応が
引き起こされ、光照射の有無や強度変化によって膜厚制
御が容易に行える。この工程で作製される前記化合物半
導体は、特に限定されないが、CuGaS(硫化銅ガ
リウム)、CuInS(硫化銅インジウム)、AgI
nS(硫化銀インジウム)、CuS(硫化銅)等が
挙げられる。
【0089】前記溶液は、溶媒中でイオンとなる硫酸化
物や塩化物等の溶質を混合したものを使用する。前記溶
質は、硫酸物や塩化物等の前記電極上に堆積したい化合
物半導体を構成する元素を含むものであればよい。例え
ば、硫酸物としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫
酸ガリウム、硫酸カドミウム等が挙げられる。また、塩
化物としては、塩化第一銅、塩化インジウム、塩化ガリ
ウム、塩化カドミウム等が挙げられる。
【0090】前記溶質は、上記化合物に限定されること
はなく、1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても
よい。上記のような酸化型の化合物を用いたとき、水素
イオン濃度を調整することで該酸化型化合物に含有する
元素イオンの堆積を促すことができる。前記水素イオン
濃度は、例えば硫酸等の調整剤によって調整することが
できる。前記調整剤によって調整された水素イオン濃度
はpH1.5〜4.0が好ましく、pH2.5〜3.5
がより好ましい。
【0091】前記溶液を攪拌することが好ましく、60
rpm以下で攪拌することが好ましい。更に、前記光励
起するために用いる光は、高圧水銀光源ランプ等により
紫外光を発生させ、単凸レンズにより集光し、前記溶液
中に配置された前記電極上に照射される。前記単凸レン
ズは石英ガラスで作製されていることが好ましい。
【0092】前記溶液中の化合物半導体の原料元素を含
む前記化合物の濃度は、1.0〜20mmol/lが好
ましく、2.0〜10mmol/lがより好ましい。前
記溶液の温度は20〜40℃が好ましく、22〜35℃
がより好ましい。また、前記化合物半導体層の形成時間
は2400〜4800秒が好ましく、3000〜360
0秒がより好ましい。
【0093】前記堆積した前記化合物半導体を焼成し結
晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半導体の種
類に依存するが、80〜600℃が好ましく、80〜5
00℃がより好ましい。該結晶化の時間は1〜60分が
好ましく、15〜30分がより好ましい。特に硫化物系
の場合には80〜400℃、セレン系の場合には300
〜550℃、テルル系の場合には400〜600℃が好
ましい。
【0094】−複合体酸化物半導体ナノ多孔質層の形成
方法− 前記複合体酸化物半導体ナノ多孔質層は、上記方法によ
り形成した酸化物半導体ナノ多孔質層上に更にゾルゲル
法により酸化物半導体ナノ多孔質層を形成し、複合化す
る方法、又は2種類の酸化物半導体粒子を混合したペー
ストを電極上に塗布する方法、などが挙げられる。
【0095】具体的には、酸化物半導体コロイド水溶液
に酢酸を滴下し、乳鉢でよく混合したゲル状溶液に対し
て複合対象となる酸化物半導体粉末、アルコールを少し
ずつ加えてよく混合する。更に、界面活性剤を加えてよ
く混合し、これを、フッ素ドープ型酸化スズ導電性膜ガ
ラス(FTO)電極にホットプレート(100〜120
℃)上で噴霧塗布し、焼成することにより、半導体微粒
子の結晶化と半導体微粒子同士の焼成とが進行し、所望
の多孔質を有する複合体酸化物半導体ナノ多孔質層を形
成する。
【0096】前記半導体ナノ多孔質層は、粒径の違った
半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる
半導体微粒子(又は異なるバインダー、添加剤)を含有
する塗布層を多層塗布することもできる。一度の塗布で
膜厚が不足する場合にも多層塗布は有効である。前記多
層塗布には、エクストルージョン法又はスライドホッパ
ー法が適している。また、多層塗布をする場合は同時に
多層を塗布しても良く、数回から十数回順次重ね塗りし
てもよい。更に、順次重ね塗りであればスクリーン印刷
法も好ましく使用できる。この場合、多層構造に形成し
た半導体ナノ多孔質層毎にEC色素を吸着担持させる処
理を行うことが好ましく、各層毎に異なるEC色素を吸
着担持させてもよく、また同じEC色素を吸着担持させ
ても構わない。
【0097】前記半導体ナノ多孔質層は、EC色素を担
持させる前に熱処理(例えば、100〜550℃で10
分間)することが好ましい。これにより、半導体ナノ多
孔質層表面に吸着した水分、その他の不純物を除去し得
ると共に、多孔質層表面を活性化し得、EC色素の吸着
を効率よく行うことができる。
【0098】前記半導体ナノ多孔質層の厚みは、100
μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、2
0μm以下が更に好ましい。多孔質層の厚みが薄すぎる
と、吸着することができるEC色素量が少なくなってし
まう場合がある。一方、厚すぎると透明性が低下し、E
C素子に注入した電荷のロスが多くなる場合がある。
【0099】−EC色素− 前記EC色素は、前記半導体ナノ多孔質層の表面及び内
部の微細孔に担持されると共に、必要に応じて、電解質
層中に溶解乃至分散された状態で含有されることが好ま
しい。前記EC色素としては、電気化学的な酸化反応及
び還元反応の少なくとも一方により発色又は消色する作
用を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択す
ることができ、例えば、有機化合物、金属錯体などが好
適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよい
し、2種以上を併用してもよい。
【0100】前記金属錯体としては、例えば、プルシア
ンブルー、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリ
ン錯体、金属−フタロシアニン錯体、メタフェリシアニ
ド、これらの誘導体などが挙げられる。
【0101】前記有機材料としては、例えば、(1)ピ
リジン化合物類、(2)導電性高分子類、(3)スチリ
ル化合物類、(4)ドナー/アクセプター型化合物類、
(5)その他有機色素類、などが挙げられる。
【0102】前記(1)ピリジン化合物類としては、例
えば、ビオローゲン、ヘプチルビオローゲン(ジヘプチ
ルビオローゲンジブロミド等)、メチレンビスピリジニ
ウム、フェナントロリン、アゾビピリジニウム、2,2
−ビピリジニウム錯体、キノリン・イソキノリン、など
が挙げられる。
【0103】前記(2)導電性高分子類としては、例え
ば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポ
リフェニレンジアミン、ポリアミノフェノール、ポリビ
ニルカルバゾール、高分子ビオローゲンポリイオンコン
プレックス、TTF、これらの誘導体などが挙げられ
る。
【0104】前記(3)スチリル化合物類としては、例
えば、2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]
エテニル]−3,3−ジメチルインドリノ[2,1−
b]オキサゾリジン、2−[4−[4−(ジメチルアミ
ノ)フェニル]−1,3−ブタジエニル]−3,3−ジ
メチルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−
[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]
−3,3−ジメチル−5−メチルスルホニルインドリノ
[2,1−b]オキサゾリジン、2−[4−[4−(ジ
メチルアミノ)フェニル]−1,3−ブタジエニル]−
3,3−ジメチル−5−スルホニルインドリノ[2,1
−b]オキサゾリジン、3,3−ジメチル−2−[2−
(9−エチル−3−カルバゾリル)エテニル]インドリ
ノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−[2−[4−
(アセチルアミノ)フェニル]エテニル]−3,3−ジ
メチルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、など
が挙げられる。
【0105】前記(4)ドナー/アクセプター型化合物
類としては、例えば、テトラシアノキノジメタン、テト
ラチアフルバレン、などが挙げられる。
【0106】前記(5)その他有機色素類としては、例
えば、カルバゾール、メトキシビフェニル、アントラキ
ノン、キノン、ジフェニルアミン、アミノフェノール、
Tris−アミノフェニルアミン、フェニルアセチレン、
シクロペンチル化合物、ベンゾジチオリウム化合物、ス
クアリウム塩、シアニン、希土類フタロシアニン錯体、
ルテニウムジフタロシアニン、メロシアニン、フェナン
トロリン錯体、ピラゾリン、酸化還元指示薬、pH指示
薬、これらの誘導体、などが挙げられる。
【0107】これらの中でも、ビオローゲン、ヘプチル
ビオローゲン(ジヘプチルビオローゲンジブロミド等)
などのビオローゲン系色素が好適である。また、前記E
C色素としては、酸化状態では無色乃至極淡色を示し、
還元状態で発色する還元発色型のもの、還元状態では無
色乃至極淡色を示し、酸化状態で発色する酸化発色型の
もの、還元状態でも酸化状態でも発色を示し、還元又は
酸化の程度により数種類の色が発現する多色発色型のも
ののいずれであってもよく、目的に応じて適宜選択する
ことができる。
【0108】前記EC色素を2種以上併用する場合の組
合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択
することができるが、例えば、ビオローゲンとポリアニ
リンとの組合せ、ポリピロールとポリメチルチオフェン
との組合せ、ポリアニリンとプルシアンブルーとの組合
せ、などが挙げられる。
【0109】前記半導体ナノ多孔質層の表面及び内部に
EC色素を担持させる方法としては、特に制限はなく、
公知の技術を使用できる。例えば、真空蒸着法等のドラ
イプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電
界重合法や担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等
の方法を適宜選ぶことができる。中でも自然吸着法は、
金属酸化物層の微細孔のすみずみにまでむらなく確実に
機能性分子を担持させうる、特別な装置を必要としな
い、多くの場合は単分子層程度であり必要以上に余分な
量がつかない等の多くの利点を有しており好ましい方法
である。
【0110】具体的には、EC色素の溶液中に良く乾燥
した半導体ナノ多孔質層を有する透明基板を浸漬する
か、色素の溶液を半導体ナノ多孔質層に塗布する方法を
用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ
法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。浸
漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開
平7−249790号公報に記載されているように加熱
還流して行ってもよい。また、後者の塗布方法として
は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストル
ージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等があ
る。
【0111】前記EC色素を溶解する溶媒としては、例
えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、t
−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類
(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプ
ロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水
素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、
クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミ
ド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチ
ルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジ
メチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノ
ン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エ
ステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレ
ン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘ
キサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベ
ンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げられ
る。
【0112】前記EC色素の吸着量は、半導体ナノ多孔
質層の単位表面積(1m)当たり0.01〜100m
molが好ましい。また、EC色素の半導体微粒子に対
する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜10
0mmolの範囲であるのが好ましい。また、EC色素
の電解質中濃度は、0.001〜2mol/lが好まし
く、0.005〜1mol/lがより好ましい。
【0113】−電荷移動剤− 前記電荷移動剤は、前記EC色素と同様に、半導体ナノ
多孔質層の表面及び内部の微細孔に担持されると共に、
必要に応じて、電解質層中に溶解乃至分散された状態で
含有されることが好ましい。なお、電荷移動剤の半導体
ナノ多孔質層への担持はEC色素と同様の方法で行うこ
とができる。前記電荷移動剤とEC色素とを併用するこ
とにより、両者の同時発色による加色効果、両者の相互
作用にして酸化還元反応がスムーズに進行し、発色効率
がより向上する。
【0114】前記電荷移動剤としては、特に制限はな
く、目的に応じて適宜選択することができるが、エレク
トロクロミック性を示すものが好適であり、例えば、ヒ
ドラゾン、フェノチアジン、〔β−(10−フェノチア
ジル)−プロポキシ〕ホスホン酸(フェノチアジン誘導
体)、などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種
以上を組み合わせて用いることができる。
【0115】前記電荷移動剤の吸着量は、半導体ナノ多
孔質層の単位表面積(1m)当たり0.01〜100
mmolが好ましい。また、電荷移動剤の半導体微粒子
に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜
100mmolの範囲であるのが好ましい。また、電荷
移動剤の電解質中濃度は、0.001〜2mol/lが
好ましく、0.005〜1mol/lがより好ましい。
【0116】−電解質層− 前記電解質層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選
択することができるが、EC色素及び電荷移動剤を含有
することが好ましく、EC色素及び電荷移動剤として
は、上述したものの中から適宜選択して用いることがで
きるが、半導体ナノ多孔質層に担持させたEC色素や電
荷移動剤と同じものが好ましい。前記電解質層の形態と
しては、液体、固体、ゲル状のいずれであっても構わな
い。
【0117】(1)液体の電解質層の場合 前記電解質層が液体の場合には、I/I 、Br
/Br 、キノン/ヒドロキノン対等のレドックス対
(酸化還元対)を含み、電極間を十分な速度で輸送可能
な電解質等の電荷輸送性物質を溶媒に溶かして用いるこ
とが好ましい。
【0118】前記電解質としては、例えば、ヨウ素、臭
素、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、LiB
r、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属
ハロゲン化物、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ
化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルア
ンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テト
ラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム
等のアンモニウム化合物のハロゲン化塩、メチルビオロ
ゲンクロリド、ヘキシルビオロゲンブロミド等のアルキ
ルビオロゲン、ハイドロキノン、ナフトハイドロキノン
等のポリヒドロキシベンゼン、フェロセン、フェロシア
ン酸塩等の鉄錯体等の少なくとも1種を用いることがで
きるが、これに限定するものではない。また、ヨウ素と
ヨウ化リチウム等の組合せのように、予めレドックス対
(酸化還元対)を生成させる複数の電解質を混合して用
いると、EC素子の性能、特に電流特性を向上させるこ
とが可能となる。これらの中でも、ヨウ素とアンモニウ
ム化合物、ヨウ素と金属ヨウ化物の組合せ等が好適に挙
げられる。
【0119】これらの電解質を溶解する溶媒としては、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカ
ーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル、エ
チレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類、
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレ
ングリコール等のアルコール類、アセトニトリル、ベン
ゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルスルホキシド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等
の非プロトン性極性溶媒、水等を用いることができる
が、これらに限定されるものではない。
【0120】前記溶媒における前記電解質の電解質濃度
としては、0.001〜2mol/lが好ましく、0.
005〜1mol/lがより好ましい。電解質濃度が
0.001mol未満の場合には、キャリアとしての機
能が十分に働かなくなるため、特性が低下する場合があ
る。一方、2mol/lを超える場合には、それに見合
う前述の効果が現れず、また、電解質溶液の粘性が高く
なり、電流の低下につながることがある。
【0121】(2)固体の電解質層の場合 前記電解質層が固体の場合には、イオン導電性又は電子
伝導性を示すいずれの物質であってもよく、例えば、A
gBr、AgI、CuCl、CuBr、CuI、Li
I、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF
、等のハロゲン化物、AgSBr、CNHAg
、RbCu16Cl13、RbCu
10等の無機復塩、LiN、LiNI、Li
Br等の窒化リチウム及びその誘導体、Li
、LiSiO、LiPO等のリチウムの酸
素酸塩、ZrO、CaO、Gd、HfO、Y
、Nb、WO、Bi、及びこれら
の固溶体等の酸化物、CaF、PbF、SrF
LaF、TISn、CeF等のフッ化物、C
S、AgS、CuSe、AgCrSe等のカ
ルコゲニド、フッ化ビニル系高分子にパーフルオロスル
フォン酸を含む高分子(例えば、ナフィオン)、有機電
荷輸送性物質として、ポリチオフェン、ポリアニリン、
ポリピロール等の化合物、トリフェニルアミン等の芳香
族アミン化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾ
ール化合物やポリメチルフェニルシラン等のシラン化合
物を用いることができるが、これに限定されるものでは
ない。
【0122】(3)ゲル電解質層の場合 前記電解質層がゲル状の場合には、ポリマー添加、オイ
ルゲル化剤添加、多官能モノマー類を、前記電解質及び
前記溶媒に混合して用いることができる。前記ポリマー
添加によりゲル化させる場合は、「Polymer E
lectrolyte Revi ews−1及び2」
(J.R.MacCallumとC.A.Vincen
tの共編、ELSEVIER APPLIED SCI
ENCE)などに記載された化合物を使用することがで
きるが、特に、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニ
リデンなどが好適である。前記オイルゲル化剤添加によ
りゲル化させる場合は、「J.Chem Soc.Ja
pan,Ind.Chem.Sec.,46,779
(1943)」、「J.Am.Chem.Soc.,1
11,5542(1989)」、「J.Chem.So
c.,Chem.Commun.,1993,39
0」、「Angew.Chem.Int.Ed.Eng
l.,35,1949(1996)」、「Chem.L
ett.,1996,885」、「J.Chem.So
c.,Chem.Commun.,1997,545」
などに記載されている化合物を使用することができる
が、特に、分子構造中にアミド構造を有する化合物が好
ましい。
【0123】また、マトリックス材と支持電解質との混
合液を重合させてフイルム状とした固体電解質層を用い
ることもできる。 −−支持電解質−− 前記支持電解質としては、特に制限はなく、目的に応じ
て適宜選択することができ、無機電解質であってもよい
し、有機電解質であってもよい。これらは、1種単独で
使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、
市販品であってもよく、適宜合成しても構わない。
【0124】前記無機電解質としては、例えば、無機酸
陰イオン−アルカリ金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ
土類金属などが挙げられ、これらの中でも無機酸陰イオ
ン−アルカリ金属塩が好ましく、無機酸リチウム塩がよ
り好ましい。
【0125】前記無機酸陰イオン−アルカリ金属塩とし
ては、例えば、XAsF、XPF 、XBF、XC
lO、などが挙げられ、(但し、これらにおいてX
は、H、Li、K又はNaを表す。)、具体的には過塩
素酸リチウムなどが好適に挙げられる。
【0126】前記アルカリ金属塩としては、例えば、L
iI、KI、LiCFSO、LiPF、LiCl
、LiBF、LiSCN、LiAsF、NaC
SO、NaPF、NaClO、NaI、Na
BF、NaAsF、KCFSO、KPF、な
どが挙げられる。
【0127】前記有機電解質としては、例えば、有機酸
陰イオン−アルカリ金属塩、四級アンモニウム塩、アニ
オン性界面活性剤、イミダゾリウム塩、などが挙げら
れ、これらの中でも有機酸陰イオン−アルカリ金属塩が
好ましく、有機酸リチウム塩がより好ましい。
【0128】前記有機酸陰イオン−アルカリ金属塩とし
ては、例えば、XCFSO、XC2n+1SO
(n=1〜3)、XN(CFSO、XC(C
SO、XB(CH、XB(C
、などが挙げられ(但し、これらにおいてXは、H、
Li、K又はNaを表す)、具体的には、ポリメタクリ
ル酸リチウムなどが好適に挙げられる。
【0129】前記四級アンモニウム塩としては、例え
ば、[CH(CHN・Y、C2n+1
N(CH・Y(n=10〜18)、(C
2n+1 N(CH・Y(n=10〜18)、
などが挙げられる(但し、これらにおいてYは、B
、PF、ClO、F、Cl、Br又はOHを表
す。)
【0130】前記アニオン性界面活性剤としては、例え
ば、C2n+1COO・X(n=10〜18)、C
2n+1OC2mCOO・X(n=10〜1
8、m=10〜18)、C10COO・X、C
2n+110COO・X(n=10〜18)、C
2n+1SO・X(n=10〜18)、C
n+1OC2mSO・X(n=10〜18、m=
10〜18)、C10 SO・X、C2n+1
10SO・X(n=10〜18)、C
2n+1OSO・X(n=10〜18)、などが挙げ
られる(但し、これらにおいてXは、H、Li、K又は
Naを表す。)。
【0131】前記支持電解質として、特に、無機酸リチ
ウム塩と有機酸リチウム塩とを含むのが好ましい。
【0132】−−マトリックス材−− 前記マトリックス材としては、特に制限はなく、目的に
応じて適宜選択することができ、例えば、ヘテロ原子を
有する高分子化合物、などが挙げられる。
【0133】前記ヘテロ原子を有する高分子化合物とし
ては、例えば、酸素原子を有する高分子化合物、窒素原
子を有する高分子化合物、硫黄原子を有する高分子化合
物、ハロゲン原子を有する高分子化合物、などが挙げら
れる。
【0134】前記酸素原子を有する高分子化合物として
は、例えば、R−(OCHCH O−R(n
は、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン基、プ
ロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニル基、
酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル基、メ
タクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビニルケ
トン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、H、CH
又はRを表す。)で表される化合物などが好適に挙
げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール、非ポリエーテル類(例えば、ポリ
(3−ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ酢酸ビニル)、
などが好適に挙げられる。
【0135】前記窒素原子を有する高分子化合物として
は、例えば、R−(NHCHCHNH−R
(nは、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン
基、プロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニ
ル基、酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル
基、メタクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビ
ニルケトン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、
H、CH又はRを表す。)で表される化合物などが
好適に挙げられ、具体的には、ポリエチレンイミン、ポ
リ−N−メチルエチレンイミン、ポリアクリロニトリル
などが挙げられる。
【0136】前記硫黄原子を有する高分子化合物として
は、例えば、R−(SCHCH S−R(n
は、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン基、プ
ロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニル基、
酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル基、メ
タクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビニルケ
トン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、H、CH
又はRを表す。)で表される化合物などが好適に挙
げられ、具体的には、ポリアルキレンサルファイド類、
などが挙げられる。
【0137】前記マトリックス材の分子量としては、特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる
が、低いほうが常温で流動性を有する場合が多いため、
製膜性の観点からは低いほうが好ましく、例えば、数平
均分子量で1000以下であるのが好ましい。
【0138】前記マトリックス材の前記電解質層におけ
る使用量としては、前記支持電解質とのモル比(マトリ
ックス材:支持電解質)が、70:30〜5:95であ
るのが好ましく、50:50〜10:90であるのがよ
り好ましく、50:50〜20:80であるのが特に好
ましい。
【0139】なお、前記モル比は、前記マトリックス材
のモル量と、前記支持電解質のイオンのモル量との比を
意味する。該マトリックス材のモル量とは、高分子化合
物のモノマー単位を1分子として換算したモル量を意味
する。
【0140】前記フイルム状固体電解質層は、前記マト
リックス材と支持電解質との混合液に過酸化ベンゾイル
やアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を少量添
加したものを薄く延ばし、続いて加熱を行い重合させる
か、又はイルガキュア等の光重合開始剤を添加して、紫
外線照射により重合させることにより、作製することが
できる。なお、固体電解質フイルムの厚さは、通常、3
0〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
【0141】−一対の透明電極− 前記一対の透明電極としては、透明で電気を通すもので
あれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すること
ができ、例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化
スズ(NESA)、フッ素をドープした酸化スズ(FT
O)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジ
ウム、銅、クロム、炭素等が挙げられる。これらの中で
も、表面抵抗値が低い、耐熱性が良い、化学的な安定性
がある、光透過率が高い、等の点からフッ素をドーピン
グした酸化スズ(FTO)、酸化スズインジウム(IT
O)が好ましい。
【0142】前記導電性基体の表面抵抗としては、前述
のようにより低い方が好ましく、具体的な表面抵抗値と
しては、100Ω/cm以下が好ましく、10Ω/c
以下がより好ましい。また、前記透明電極の厚みと
しては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこ
とができるが、前記透明電極の場合、例えば、0.1μ
m以上、特に0.1〜20μmであるのが一般的であ
る。
【0143】−支持体− 前記支持体は、前記透明電極を設ける基材等として使用
することができ、その材質、形状、構造、大きさ等につ
いては、特に制限はなく適宜設計することができる。前
記支持体としては、例えば、ガラス板、高分子フイル
ム、などが好適に挙げられる。高分子フイルムの材料と
しては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエ
チレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタ
レート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン
(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポ
リカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、
ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン
(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリ
オレフィン、ブロム化フェノキシ、などが挙げられる。
【0144】−その他の部材− 前記その他の部材としては、特に制限はなく、ECディ
スプレイの用途等に応じて適宜選択することができ、例
えば、スペーサー、封止部材、リード線、反射手段、な
どが挙げられる。
【0145】本発明のEC素子の一例としては、図1
1,12に示す通り、EC色素2が担持された半導体ナ
ノ多孔質膜8が表面に設けられた透明電極5と、EC色
素2が担持された半導体ナノ多孔質膜8が表面に設けら
れた透明電極5との間に電解質層9を半導体ナノ多孔質
膜8及び半導体ナノ多孔質膜8で挟み込むようにして介
在させたものが挙げられる。なお、透明電極5及び透明
電極5はリード線60で結線されており、電源50に接
続されている。前記EC素子は、透明電極5と透明電極
5との間に電圧を印加して半導体ナノ多孔質膜8に担持
されたEC色素2を発消色させるものである。
【0146】本発明のECディスプレイは、特に制限さ
れないが、平地混合による面積階調法、平地混合による
濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層混合に
よる濃度階調法から選ばれるいずれかの方法によりフル
カラー化して用いることが好ましい。
【0147】前記平地混合による面積階調法は、印刷物
の網点と同様の原理でカラー画像を表現する方法であ
る。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)に発色する
微小画素を平面内に多数設けておき、各画素の発色濃度
変化は階調を持たず一定濃度のON/OFFにより発色
面積の違いによりカラー画像を表現するものである(例
えば、印加電圧と印加時間が一定の場合である)。
【0148】前記平地混合による濃度階調法は、上記同
様に印刷物の網点と同様の原理でカラー画像を表現する
方法である。但し、各画素は発色濃度に階調を持たせる
ことができるので、印加電圧や印加時間を制御してセル
への注入電荷量を制御することで発色濃度を制御するこ
とができる。
【0149】前記積層混合による面積階調法は、上記同
様に印刷物の網点と同様の原理でカラー画像を表現する
方法であるが、同一画素内に垂直に3色のセルを積層す
るので前記平地混合による面積階調法より画素密度が緩
和される。
【0150】前記積層混合による濃度階調法は、前記平
地混合による濃度階調法と同様の発色方法であり、銀塩
写真などと同様のフルカラー表現方法である。
【0151】前記ECディスプレイは、用途に応じて異
なるが、透過型素子の場合は到達透過率となるまでの応
答速度が100msec以下が好ましく、10msec
以下がより好ましい。また、反射型素子の場合には到達
吸光度になるまでの応答速度が100msec以下が好
ましく、10msec以下がより好ましい。
【0152】なお、前記ECディスプレイにおいて画像
を形成するための電圧としては、特に制限はなく目的に
応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜
10V程度が好ましく、1〜5V程度がより好ましい。
【0153】本発明のECディスプレイは、例えば、コ
ンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、
業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示
器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響
機器等をはじめとする各種分野において好適に使用する
ことができる。
【0154】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明
はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0155】(実施例1)チタニウムテトライソプロポ
キシド6.41gをエタノール20mlで希釈し、攪拌
しながら比重1.38の硝酸を0.514g、水を0.
2ml加えた。以上の混合操作は乾燥窒素雰囲気下で行
った。この混合液を80℃に昇温し、乾燥窒素気流下で
2時間還元して、無色透明のゾル液を得た。このゾル液
を室温まで冷却した後、攪拌しながらゾル液2gに対し
てポリアクリル酸0.1gを溶解した。得られたゾル液
に更に水2mlを加えて無色透明で均一なゾル液を得
た。このゾル液をガラス容器に密閉して80℃に昇温し
た。ゾル液は5分ほどでゲル化し、ほぼ透明で均一なゲ
ルとなった。80℃でさらに15時間保持するとゲルは
再び溶解して白っぽい半透明のゾル液となった。
【0156】このゾル液を、スピンコート法によりIT
Oガラス基板上に塗布し、450℃に昇温して20分保
持して焼成した。この塗布及び焼成の工程を20回繰り
返し、膜厚3.5μmの多孔質TiO2膜からなる電極
を形成した。得られた膜の結晶構造をX線回折により調
べた結果、アナターゼ型の酸化チタンが形成されている
ことが確認された。膜の微細構造をSEM観察により調
べたところ、相分離状の凝集組織が形成されていた。こ
の焼成物膜(透明導電性膜)の比表面積は100g/c
であった。なお、比表面積は、BET表面積測定装
置(ミツワ理化学工業製、マルチソーブ12)を用い、
液体窒素温度で、窒素ガスを吸着させる方法により行っ
た。
【0157】次いで、上記基板を、EC色素として、
0.02Mのビス−(2−ホスホノエチル)−4,4’
−ビピリジニウムジブロミド(ビオローゲン誘導体)水
溶液に浸漬し、色素吸着処理を行い、室温で乾燥した。
更に、ビオローゲン誘導体が吸着した基板を、EC色素
として0.02Mのビス−(2−ホスホノエチル)−
3,8−フェナントロリンジブロミド(フェナントロリ
ン誘導体)水溶液に浸漬し、色素吸着処理を行い、室温
で乾燥した。以上のようにして、二種類の色素が層状に
吸着した多層色素結合TiO電極を作成した。
【0158】得られた多層色素結合TiO電極と、T
FTアクティブマトリクス基板とを用いて、図7に示し
たようなEC表示装置を作製した。スペーサーを介して
両基板を貼り合せ、両基板間の空隙に電解質液を注入
し、基板間の空隙の周辺部を硬化性樹脂で封止した。両
基板間の距離は0.5mmであった。電解質液として
は、テトラブチルアンモニウムパークロレートの0.2
Mプロピレンカーボネート溶液を用いた。なお、作製し
たEC表示装置の表示部分の大きさは2cm×2cmで
あった。
【0159】得られたEC表示装置について、室温で3
Vの電圧を印加したところ、陰極においてビオローゲン
誘導体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカ
ルカチオンとなり、無色から黒色に変った。なお、到達
透過率となるまでの応答速度は100msecであっ
た。電圧をかけるのを止めても発色は600秒以上もつ
づいた。また、発色−消色を1万回繰り返しても発色時
の色の濃さも、消色時の透明度ほとんど変わらなかっ
た。
【0160】(実施例2)市販品の酸化スズ粉末(和光
純薬製、表面積60m/g;平均一次粒径50nm以
下)を非イオン性界面活性剤を含む水とアセチルアセト
ンとの混合液(容量混合比=20/1)中に濃度約1質
量%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このス
ラリー液を、スピンコート法によりTFTアクティブマ
トリクス基板上に塗布し、乾燥した。得られた乾燥物を
400℃で20分、空気中で焼成し、厚さ10μmの多
孔質焼成物膜(透明導電性層)を形成した。膜の微細構
造をSEM観察により調べたところ、相分離状の凝集組
織が形成されており、多孔質構造を有していた。
【0161】この焼成物膜(透明導電性膜)の比表面積
は100g/cmであった。なお、比表面積は、BE
T表面積測定装置(ミツワ理化学工業製、マルチソーブ
12)を用い、液体窒素温度で、窒素ガスを吸着させる
方法により行った。
【0162】次いで、上記基板を、0.02Mの〔β−
(10−フェノチアジル)プロポキシ〕ホスホン酸(フ
ェノチアジン誘導体)のクロロホルム溶液に浸漬し、色
素吸着処理を行い、室温で乾燥させた。このようにして
得られたフェノチアジン誘導体結合電極と、それと対を
なす電極基板として実施例1の多層色素結合TiO
合電極を用い、図9に示したようなEC表示装置を作製
した。スペーサーを介して両基板を貼り合せ、両基板間
の空隙に電解質液を注入し、基板間の空隙の周辺部を硬
化性樹脂で封止した。両基板間の距離は0.5mmであ
った。電解質液としては、テトラブチルアンモニウムパ
ークロレートの0.2Mプロピレンカーボネート溶液を
用いた。なお、作製したEC表示装置の表示部分の大き
さは2cm×2cmであった。
【0163】このEC表示装置について、室温で3Vの
電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導体及
びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカチオ
ンとなり、無色から黒色に変った。一方、陽極ではフェ
ノチアジン誘導体が酸化されてラジカルカチオンとな
り、無色から赤色に変った。その結果、全体としては、
透明なものから波長500nm付近及び600nm付近
に大きな吸収を持つ黒色に変化した。なお、到達透過率
となるまでの応答速度は60msecだった。電圧をか
けるのを止めても発色は600秒以上も続いた。また、
発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色の濃さ
も、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0164】(実施例3)作用極にITOガラス基板、
対極に白金板、参照極に飽和カロメル電極を用い、電気
化学セルを構成した。電解液としては0.1M硝酸亜鉛
水溶液に50μM相当のビス−(2−ホスホノエチル)
−4,4’−ビピリジニウムジブロミド(ビオローゲン
誘導体)を加えたものを用いた。この電解液を70℃に
保ち、−0.9Vの電位をポテンシオスタットを用いて
1時間印加した。電位を印加すると、ITO電極上に、
ビオローゲン誘導体を含んだZnO多孔質膜が形成さ
れ、1時間後には、その厚さは約1μmになった。1時
間経過後、セルからITO電極を引き上げ、水で洗浄し
た後、室温で乾燥した。
【0165】次に、上記のようにして作製したビオロー
ゲン誘導体含有ZnO電極を作用極とし、上記と同様の
電気化学セルを構築した。このとき、電解液は、0.1
M硝酸亜鉛水溶液に50μM相当のビス−(2−ホスホ
ノエチル)−3,8−フェナントロリンジブロミド(フ
ェナントロリン誘導体)を加えたものを用いた。それ以
外は上記と同様の操作を行い、ビオローゲン誘導体含有
ZnO膜の上にフェナントロリン誘導体含有ZnO膜が
形成された多層構造ZnO電極を作製した。
【0166】得られた多層構造ZnO電極と、それと対
をなす対向基板としてTFTアクティブマトリクス基板
とを用いて、図7に示したようなEC表示装置を作製し
た。スペーサーを介して両基板を貼り合せ、両基板間の
空隙に電解質液を注入し、基板間の空隙の周辺部を硬化
性樹脂で封止した。両基板間の距離は0.5mmであっ
た。電解質液としては、テトラブチルアンモニウムパー
クロレートの0.2Mプロピレンカーボネート溶液を用
いた。なお、作製したEC表示装置の表示部分の大きさ
は2cm×2cmであった。
【0167】得られたEC表示装置について、室温で3
Vの電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導
体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカ
チオンとなり、無色から黒色に変った。なお、到達透過
率となるまでの応答速度は80msecだった。電圧を
かけるのを止めても発色は600秒以上も続いた。ま
た、発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色の
濃さも、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0168】(実施例4)対向基板として実施例2で作
製したフェノチアジン誘導体結合SnO電極を用いる
ほかは、全て実施例3と同様の操作を行った。
【0169】得られたEC表示装置について、室温で3
Vの電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導
体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカ
チオンとなり、無色から黒色に変った。一方、陽極では
フェノチアジン誘導体が酸化されてラジカルカチオンと
なり、無色から赤色に変った。その結果、全体として
は、透明なものから波長500nm付近および600n
m付近に大きな吸収を持つ黒色に変化した。なお、到達
透過率となるまでの応答速度は50msecだった。電
圧をかけるのを止めても発色は600秒以上も続いた。
また、発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色
の濃さも、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0170】
【発明の効果】本発明によれば、従来における前記問題
を解決することができ、構造が簡単で製造が容易であ
り、フルカラー化が容易であり、メモリー性に優れ、応
答速度、発色効率及び繰り返し耐久性が大幅に向上した
ECディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の単色発色のパッシブマトリクス
パネルを示し、(A)は斜視図、(B)は概略断面図で
ある。
【図2】図2は、本発明の単色発色のパッシブマトリク
スパネルの一例を示し、(A)は斜視図、(B)は概略
断面図である。
【図3】図3は、本発明の単色発色のパッシブマトリク
スパネルの一例を示し、(A)は斜視図、(B)は概略
断面図である。
【図4】図4は、本発明のフルカラー発色のパッシブマ
トリクスパネルの一例を示し、(A)は斜視図、(B)
は概略断面図である。
【図5】図5は、本発明のフルカラー発色のパッシブマ
トリクスパネルの一例を示し、(A)は斜視図、(B)
は概略断面図である。
【図6】図6は、本発明のフルカラー発色のパッシブマ
トリクスパネルの一例を示し、(A)は斜視図、(B)
は概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の単色発色のアクティブマトリ
クスパネルの一例を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の単色発色のアクティブマトリ
クスパネルの一例を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明のカラー発色のアクティブマト
リクスパネルの一例を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明のカラー発色のアクティブ
マトリクスパネルの一例を示す斜視図である。
【図11】図11は、EC素子の一例を示す概略断面図
である。
【図12】図12は、図11のX領域の部分拡大図であ
る。
【符号の説明】 2 EC色素 5 透明電極 8 半導体ナノ多孔質層 9 電解質層 12 ガラス基板 14 正極 20 EC素子 22 負極 24 赤色発色用のEC素子 26 緑色発色用のEC素子 28 青色発色用のEC素子 40 TFT回路 50 電源 60 リード線

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の
    表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質
    層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持
    してなるエレクトロクロミックディスプレイであって、
    前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び
    還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色
    する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素を複数
    層に形成したことを特徴とするエレクトロクロミックデ
    ィスプレイ。
  2. 【請求項2】 両方の半導体ナノ多孔質層に、エレクト
    ロクロミック色素を複数層に形成した請求項1に記載の
    エレクトロクロミックディスプレイ。
  3. 【請求項3】 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の
    表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質
    層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持
    してなるエレクトロクロミックディスプレイであって、
    前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共
    に、前記電解質中に、少なくとも1種のエレクトロクロ
    ミック色素が含有されてなることを特徴とするエレクト
    ロクロミックディスプレイ。
  4. 【請求項4】 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の
    表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質
    層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持
    してなるエレクトロクロミックディスプレイであって、
    前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共
    に、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応
    及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は
    消色する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が
    担持されてなることを特徴とするエレクトロクロミック
    ディスプレイ。
  5. 【請求項5】 半導体ナノ多孔質層に異なるエレクトロ
    クロミック色素が複数層担持されている請求項3又は4
    に記載のエレクトロクロミックディスプレイ。
  6. 【請求項6】 電解質層中に電気化学的な酸化反応及び
    還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色
    するエレクトロクロミック色素を少なくとも1種含有す
    る請求項4又は5に記載のエレクトロクロミックディス
    プレイ。
  7. 【請求項7】 更に電荷移動剤が、電解質層中に含まれ
    ている請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロク
    ロミックディスプレイ。
  8. 【請求項8】 電荷移動剤が、前記半導体ナノ多孔質層
    に担持されている請求項7に記載のエレクトロクロミッ
    クディスプレイ。
  9. 【請求項9】 半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微
    粒子が、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有
    機半導体、複合体酸化物半導体及びこれらの混合物から
    選ばれる請求項1から8のいずれかに記載のエレクトロ
    クロミックディスプレイ。
  10. 【請求項10】 複合体酸化物半導体が、SnO−Z
    nO、Nb−SrTiO、Nb−Ta
    、Nb−ZrO、Nb−TiO
    Ti−SnO、Zr−SnO、In−SnO及び
    Bi−SnO から選ばれる請求項9に記載のエレクト
    ロクロミックディスプレイ。
  11. 【請求項11】 前記エレクトロクロミック色素を半導
    体ナノ多孔質層に担持させる前に熱処理を施してなる請
    求項1から2及び4から10のいずれかに記載のエレク
    トロクロミックディスプレイ。
  12. 【請求項12】 半導体ナノ多孔質層の厚みが100μ
    m以下である請求項1から11のいずれかに記載のエレ
    クトロクロミックディスプレイ。
  13. 【請求項13】 エレクトロクロミック色素が、有機化
    合物及び金属錯体から選ばれる請求項1から12のいず
    れかに記載のエレクトロクロミックディスプレイ。
  14. 【請求項14】 平地混合による面積階調法、平地混合
    による濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層
    混合による濃度階調法から選ばれるいずれかの方法でフ
    ルカラー化された請求項1から13のいずれかに記載の
    エレクトロクロミックディスプレイ。
  15. 【請求項15】 到達透過率又は到達吸光度となるまで
    の応答速度が100msec以下である請求項1から1
    4のいずれかに記載のエレクトロクロミックディスプレ
    イ。
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