JP4074105B2 - エレクトロクロミック装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロクロミック装置に関し、特に、フルカラー化が容易であり、メモリー性に優れ、応答速度及び繰り返し耐久性が大幅に向上したエレクトロクロミック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロクロミック(以下「EC」と略称する)装置、例えばEC表示装置は、偏光板等が不要であるので視野角依存性がなく受光型で視認性に優れる、電気化学的酸化還元反応により可逆的に発色又は消色する前記EC材料を含む電解質と一対の電極とを少なくとも有すれば成立するので構造が簡単であり大型化が容易である、前記EC材料の選択により多様な色調が得られる、電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるのでメモリー性に優れ、しかもその表示状態を維持するのに電力が不要であるので消費電力が少ない、等の種々の利点があることから各種分野において応用されてきている。
【0003】
例えば、ガラス基板上に、透明電極層(陰極)、三酸化タングステン薄膜層(EC層)、二酸化珪素のような絶縁層、電極層(陽極)を順次積層してなる全固体型EC素子が、特公昭52−46098号公報に開示されている。このEC素子は電圧(着色電圧)を印加すると、三酸化タングステン(WO)薄膜層が青色に着色する。その後、このEC素子に極性が逆の電圧(消色電圧)を印加すると、三酸化タングステン薄膜層の青色が消えて、無色に戻る。この着色消色する機構は詳しく解明されてはいないが、WO薄膜層及び絶縁層(イオン導電層)の中に含まれる少量の水分がWO薄膜層の着色消色を支配していると理解される。
【0004】
近時、例えば、特開平9−120088号公報、特開平7−152050号公報、特開平6−242474号公報等に示されているように、一対の電極上に前記EC材料を蒸着し、該電極間に支持塩と溶媒とを封入したEC表示装置や、一対の電極間に前記EC材料と支持塩と溶媒とを封入したEC表示装置など、各種のEC表示装置が提案されてきている。
【0005】
しかしながら、これらのEC表示装置においては、発色・消色に物質(イオン)の移動を伴うので、応答速度が上げ難いという重大な問題があり、特に後者のEC表示装置の場合には、発色物質の拡散による滲みが発生してしまい、高精細な画像表示が困難であるという問題がある。このため、例えば、特開2000−19567号公報においては、後者のEC表示装置において高分子固体電解質を用いることが提案されているが、加熱等しても十分なイオン伝導度が得られず、応答性に劣るという問題がある。
【0006】
したがって、フルカラー化が容易であり、メモリー性に優れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐久性が大幅に向上したEC装置は未だ提供されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。
即ち、本発明は、フルカラー化が容易であり、メモリー性に優れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐久性が大幅に向上したEC装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素を複数層に形成したことを特徴とするエレクトロクロミック装置である。
<2> 両方の半導体ナノ多孔質層に、エレクトロクロミック色素を複数層に形成した前記<1>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<3> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記電解質中に、少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が含有されてなることを特徴とするエレクトロクロミック装置である。
<4> 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が担持されてなることを特徴とするエレクトロクロミック装置である。
<5> 半導体ナノ多孔質層に異なるエレクトロクロミック色素が複数層担持されている前記<4>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<6> 電解質層中に電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色するエレクトロクロミック色素を少なくとも1種含有する前記<1>から<2>および<4>から<5>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<7> 更に電荷移動剤が、電解質層中に含まれている前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<8> 電荷移動剤が、前記半導体ナノ多孔質層に担持されている前記<7>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<9> 半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微粒子が、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化物半導体及びこれらの混合物から選ばれる前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<10> 複合体酸化物半導体が、SnO−ZnO、Nb−SrTiO、Nb−Ta、Nb−ZrO、Nb−TiO、Ti−SnO、Zr−SnO、In−SnO及びBi−SnOから選ばれる前記<9>に記載のエレクトロクロミック装置である。
<11> 前記エレクトロクロミック色素を半導体ナノ多孔質層に担持させる前に熱処理を施してなる前記<1>から<2>及び<4>から<10のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<12> 半導体ナノ多孔質層の厚みが100μm以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<13> エレクトロクロミック色素が、有機化合物及び金属錯体から選ばれる前記<1>から<12>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<14> 平地混合による面積階調法、平地混合による濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層混合による濃度階調法から選ばれるいずれかの方法でフルカラー化された前記<1>から<13>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
<15> 到達透過率又は到達吸光度となるまでの応答速度が100msec以下である前記<1>から<14>のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置である。
【0009】
前記<1>に記載のEC装置は、半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなり、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のEC色素を複数層に形成したものである。
該EC装置においては、透明電極の表面に形成された半導体ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔にEC色素が複数層に形成されているので、異なる種類のEC色素を積層することにより、多色化、黒色化が可能となり、EC装置の用途の拡大が図れる。また、単一種類のEC色素を積層することにより発色強度を高めることができる。
【0010】
前記<3>に記載のEC装置は、半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持し、前記電解質中に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のEC色素が含有されている。
該EC装置においては、透明電極の表面に形成された半導体ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔のすみずみまで電解質層中のEC色素が効率よく浸透し、これにより応答速度が大幅に向上すると共に、電極面積の拡大が図れ、電極上の色素量の増大により、発色効率(より低い印加電圧で、より速く所望の発色濃度に到達させること)が向上する。また、前記半導体ナノ多孔質層の少なくとも一方が多層構造に形成されているので、発色強度を増強させることができると共に、各層毎に異なるEC色素を担持させて容易にフルカラー化を達成し得る。
【0011】
前記<4>に記載のEC装置は、半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持し、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のEC色素が担持されている。
該EC装置においては、透明電極の表面に形成された半導体ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔にEC色素が担持され、固定化されているので、発色・消色に物質(イオン)の移動を伴うことがないので、拡散による物質移動の時間をなくすことができ、応答速度が大幅に向上すると共に、電極面積の拡大が図れ、電極上の色素量の増大により、発色効率が向上する。また、前記半導体ナノ多孔質層の少なくとも一方が多層構造に形成されているので、発色強度を増強させることができると共に、各層毎に異なるエレクトロクロミック色素を担持させて容易にフルカラー化を達成し得る。
【0012】
前記<5>に記載のEC装置は、前記<4>において、多層構造に形成した半導体ナノ多孔質層の各層毎に異なるEC色素を担持させることにより、フルカラー化を容易に達成することができる。
【0013】
前記<8>に記載のEC装置は、前記<1>から<7>のいずれかにおいて、EC色素と電荷移動剤を併用することにより、両者が電極上で同時に発色し得、発色濃度が増大すると共に、酸化還元反応がスムーズに進行して、応答速度が向上する。
【0014】
前記<9>のEC装置は、前記<1>から<8>のいずれかにおいて、半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微粒子として、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化物半導体及びこれらの混合物を用いることにより、表面及び内部に微細孔を有する半導体ナノ多孔質層が形成し得、EC色素の吸着量が増大して応答速度及び発色効率が向上するものである。
【0015】
前記<11>のEC装置は、EC色素を半導体ナノ多孔質層に担持させる前に熱処理を施すことにより、半導体ナノ多孔質層表面に吸着した水分、その他の不純物を除去し得ると共に、多孔質層表面を活性化し得、EC色素の吸着を効率よく行うことができる。
【0016】
前記<12>に記載のEC装置は、前記<1>から<11>のいずれかにおいて、半導体ナノ多孔質層の厚みが100μm以下であることにより、透明性を低下させることなく、吸着することができるEC色素量を多くすることができ、発色効率を向上し得る。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のEC装置は、多層構造に形成された半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなり、(1)前記半導体ナノ多孔質層に、EC色素が複数層に形成されてなるEC装置、(2)前記電解質層中にEC色素が含有されてなるEC装置、(3)前記半導体ナノ多孔質層にEC色素が担持されてなるEC装置、好ましくは(4)EC色素が前記半導体ナノ多孔質層に担持されていると共に、前記電解質層中に含有されているEC装置、である。
【0018】
−半導体ナノ多孔質層−
前記半導体ナノ多孔質層の比表面積は、1〜5000m/gが好ましく、10〜2500m/gがより好ましい。ここで、比表面積は窒素ガスの吸着量から求めたBET比表面積を意味する。比表面積が小さすぎるとEC色素の吸着量を増大させることができなり、本発明の目的を達成できなくなる場合がある。
【0019】
前記半導体ナノ多孔質層は、一対の透明電極の少なくとも一方、好ましくは両方に、後述するEC色素が複数層に形成されており、好ましくは2〜4層積層されている。
この場合、複数層に形成されるEC色素層は異なる発色を示すEC色素を積層することが好ましい。これにより、多色化、黒色化が可能となる。また、同一種類のEC色素積層する場合には、発色強度が向上する。
【0020】
前記半導体ナノ多孔質層は、一対の透明電極の少なくとも一方、好ましくは両方が多層構造、例えば2〜4層構造に形成し、該多層構造の半導体ナノ多孔質層毎に同一種類のEC色素を担持することにより、発色強度を調整でき、発色強度を増強させることができる。
また、多層構造の半導体ナノ多孔質層の各層毎に異なる色(例えば青色、緑色、赤色の三原色)のEC色素をそれぞれ担持させることにより、フルカラー化を容易に達成することができる。
なお、前記多層構造の半導体ナノ多孔質層は、後述する低温焼成により好適に形成することができる。
【0021】
前記半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化物半導体、又はこれらの混合物が挙げられ、これらにはドーパントとして不純物が含まれていてもよい。なお、半導体の形態の制限は特になく、単結晶、多結晶、非晶質又はこれらの混合形態であってもよい。
【0022】
前記単体半導体としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、などが挙げられる。
【0023】
前記酸化物半導体は、金属酸化物で半導体の性質を持つものであり、例えば、TiO,SnO、Fe、SrTiO、WO、ZnO、ZrO、Ta、Nb、V、In、CdO、MnO,CoO、TiSrO、KTiO、CuO、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、などが挙げられる。
【0024】
前記化合物半導体としては、例えば、カドミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化物、アンチモンの硫化物、ビスマスの硫化物、カドミウムのセレン化物、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物、亜鉛のリン化物、ガリウムのリン化物、インジウムのリン化物、カドミウムのリン化物、ガリウム−ヒ素のセレン化物、銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、などが挙げられる。
【0025】
前記有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、等が挙げられる。
【0026】
前記複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO−ZnO、Nb−SrTiO、Nb−Ta、Nb−ZrO、Nb−TiO、Ti−SnO、Zr−SnO、Bi−SnO、In−SnO、などが挙げられる。
前記SnO−ZnOは、比較的大きなZnO粒子(粒径約0.2μm)を中心に周りをSnO超微粒子(粒径約15nm)で被覆したものであり、両者の複合化は質量比でSnO:ZnO=70:30〜30:70の範囲であることが好ましい。
前記Nb−SrTiO、Nb−Ta、Nb−ZrO、及びNb−TiOなどのNb複合体は、Nbとの質量比が8:2〜2:8となるように複合化される。
【0027】
前記半導体微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、球形、ナノチューブ状、棒状、ウィスカー状のいずれの形状であっても構わず、形状の異なる2種類以上の微粒子を混合することもできる。
前記球形粒子の場合には、平均粒径が0.1〜1000nmが好ましく、1〜100nmがより好ましい。なお、粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合しても構わない。
また、前記棒状粒子の場合には、アスペクト比が2〜50000が好ましく、5〜25000がより好ましい。
【0028】
前記半導体ナノ多孔質層を形成する方法としては、特に制限はなく、半導体の種類に応じて適宜選定することができ、例えば、金属陽極酸化法、陰極析出法、スクリーン印刷法、ゾルゲル法、熱酸化法、真空蒸着法、dc及びrfスパッタ法、化学気相堆積法、有機金属化学気相堆積法、分子線堆積法、レーザーアブレーション法などが挙げられ、また、上記方法を組み合わせて前記半導体ナノ多孔質層を作製することもできる。
【0029】
−酸化物半導体ナノ多孔質層の形成方法−
酸化物半導体(金属酸化物)ナノ多孔質層を形成する1つの方法として、金属酸化物前駆体と、該金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物とを含む溶液中で、前記金属酸化物前駆体を反応させて複合ゲルを生成し、金属酸化物微粒子からなるコロイドの分散ゾルを得る第1の工程と、該ゾルを支持体に塗布し、これを乾燥又は焼成して、前記透明絶縁基板上の透明導電性膜上に微細孔を有する半導体ナノ多孔質層を形成する第2の工程とを含む方法が挙げられる(以下「複合ゲル化法」ということもある)。
【0030】
前記第1の工程では、拡散が規制されたゲル中で金属酸化物微粒子の形成反応が進行するため、粗大粒の形成や粒子の沈降が起こらず、粒径の小さな微粒子が均一に分散したコロイド分散ゾル溶液を得ることができる。いわゆるゾルゲル法では、金属酸化物前駆体同士が、例えば金属アルコキシドの場合、加水分解、脱水縮合反応することでゲル化するが、この場合には、−M−O−M−(ここで、Mは金属元素であり、Oは酸素元素である。)の化学的強固な3次元結合のネットワークが形成され、再びゾル化させることはできず、一旦ゲル化すると塗布等の手段による加工ができない。これに対して前記金属酸化物前駆体と、該金属酸化物前駆体と相互作用する化合物とを含む溶液中で、金属酸化物前駆体を反応させて複合ゲルを得る方法では、金属酸化物前駆体と相互作用する化合物の相互作用の性質を利用することで再びゾル化させることができ、優れた加工性を持たせることが可能となる。
【0031】
ここで、前記金属酸化物前駆体としては、使用する溶媒に可溶である金属ハロゲン化物、金属錯化合物、金属アルコキシド、金属カルボン酸塩あるいはキレート化合物等の金属化合物等が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、TiCl(四塩化チタン)、ZnCl(塩化亜鉛)、WCl6(六塩化タングステン)、SnCl(塩化第一錫)、SrCl(塩化ストロンチウム)等の金属ハロゲン化物、Ti(NO(硝酸チタン)、Zn(NO(硝酸亜鉛)、Sr(NO(硝酸ストロンチウム)等の硝酸塩や、一般式M(OR)(但し、Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である。)で表される金属アルコキシド等が挙げられる。
【0032】
前記金属アルコキシドとしては、例えば、亜鉛ジエトキシド、タングステンヘキサエトキシド、バナジルエトキシド、すずテトライソプロポキシド、ストロンチウムジイソプロポキシド等が挙げられる。
【0033】
例えば、酸化チタンの金属酸化物層を形成する場合、金属アルコキシドとしては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトラターシャリーブトキシド等が好ましく使用できる。
【0034】
また、前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。また、金属酸化物前駆体と相互作用する官能基としては、アミド酸構造のような前記官能基を1種以上有するものでもよい。また、前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物は、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミノ酸構造から選択される官能基を1種以上有する化合物である。特に好ましくは高分子化合物である。このような低分子化合物の具体例としては、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、ジアミド酸等が挙げられる。
【0035】
また、高分子化合物の具体例としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造から選択される官能基を主鎖、側鎖又は架橋部分に1種以上有する高分子化合物が挙げられる。前記高分子化合物の主鎖構造としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン系構造、ポリスチレン系構造、ポリアクリレート系構造、ポリメタクリレート系構造、ポリカーボネート系構造、ポリエステル系構造、セルロース系構造、シリコーン構造、ビニル系重合体構造、ポリアミド系構造、ポリアミドイミド系構造、ポリウレタン系構造、ポリウレア系構造等、又はこれら共重合体構造等の任意の構造を有するものが挙げられる。
【0036】
また、前記カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造から選択される官能基を主鎖、側鎖又は架橋部分に1種以上有する高分子化合物としては、金属酸化物前駆体と相互作用の形態が適当である観点から、側鎖にカルボキシル基を有するポリアクリル酸の使用が特に好ましい。更に、前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する高分子化合物は、相互作用する官能基を有する高分子化合物とカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造を有さない前記同様の主鎖構造を有する高分子化合物との共重合体であってもよい。前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する高分子化合物は、目的に応じて、2種以上の混合系、又はカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド酸構造を有さない前記同様の主鎖構造を有する高分子化合物との混合系を使用してもよい。前記金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する高分子化合物の平均重合度は、100〜10000000程度が好ましく、5000〜250000がより好ましい。
【0037】
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類や、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ベンゼン等の金属酸化物前駆体を溶解し、かつ金属酸化物前駆体とは反応しないものであれば用いることができる。
【0038】
以下、金属酸化物前駆体として金属アルコキシドを用いた場合を例として、半導体ナノ多孔質層の形成方法を詳しく説明する。
【0039】
まず、前記金属アルコキシドを前記溶媒(例えば、アルコール類等の有機溶媒)に添加する。更に、前記金属アルコキシドを部分的に加水分解するのに必要な水と、触媒として、塩酸,硝酸,硫酸又は酢酸等の酸類を添加する。ここで添加する水及び酸類の量は、用いる前記金属アルコキシドの加水分解性の程度に応じて適宜選択することができる。次に、得られる前記混合溶液を攪拌しながら乾燥窒素気流下で室温〜150℃(好ましくは、室温〜100℃)で加熱(又は還流)する。前記還流温度及び時間についても、用いる前記金属酸化物前駆体の加水分解性に応じて適且選択することができる。前記還流の結果、前記金属アルコキシドは部分的に加水分解された状態になる。即ち、前記混合溶液に含まれる前記水の量は、前記金属アルコキシドのアルコキシル基を十分に加水分解するには十分でない程度少量であるため、一般式M(OR)で表される前記金属アルコキシドにおいては、その総ての−OR基は加水分解されず、結果として部分的に加水分解された状態になる。この部分的に加水分解された状態の前記金属アルコキシドにおいては、重縮合反応は進行しない。このため、前記金属アルコキシド間において−M−O−M−の鎖は形成されていても、前記金属アルコキシドはオリゴマー状態となる。このオリゴマー状態にある前記金属アルコキシドを含む前記還流後の混合溶液は、無色透明で粘度の上昇もほとんどない。
【0040】
次に、前記還流後の混合溶液の温度を室温に下げ、該混合溶液にカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、アミノ酸構造から選択される官能基を1種以上有する高分子化合物(好ましくはポリアクリル酸)を添加する。この場合、本来アルコール類等の有機溶媒には溶解しにくい前記高分子化合物が、この混合溶液には容易に溶解し透明ゾルが得られる。これは、前記高分子化合物のカルボキシル基と前記金属アルコキシドとが塩形成反応により結合し、高分子錯体状の化合物が形成されるためであると考えられる。この透明ゾルは、通常、無色透明な均一溶液である。
【0041】
この透明ゾルに更に過剰量の水を加えて、室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃程度に保持して更に反応を継続させることにより、数分から1時間程度で該透明ゾルがゲル化し、前記高分子化合物と前記金属アルコキシドとの架橋状構造を有する複合ゲルが形成される。
【0042】
得られる複合ゲルを更に室温〜90℃(通常、80℃程度)で5〜50時間保持し反応を継続させると、該複合ゲルは再び溶解し半透明な金属酸化物微粒子コロイド分散ゾルが得られる。これは、前記金属アルコキシドの加水分解反応により重縮合反応が進行するとともに、前記高分子化合物と前記金属アルコキシドとによる塩構造が分解して、金属酸化物微粒子とカルボン酸エステル等とに変化することによるものである。
【0043】
以上により得られた半透明な金属酸化物微粒子コロイド分散ゾルを、透明絶縁基板上に堆積された透明導電性膜に塗布後、乾燥又は焼成することにより、微細孔を有した金属酸化物膜が形成される。
【0044】
前記塗布法は、特に限定なく公知の方法で行うことができる、具体的には、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ワイヤーバー法、スプレーコーティング法が挙げられる。また、乾燥には、例えば、風乾、オーブン等の乾燥器を用いて行う乾燥、真空凍結乾燥が可能である。また、ロータリーエバポレーター等の機器を用いて溶媒を蒸発させる方法でもよい。この場合、乾燥の温度、時間等を目的に応じて適且選択することができる。
【0045】
また、乾燥温度により、前記金属酸化物微粒子コロイド分散ゾルを乾燥(前記溶媒を含む液体成分の除去)しただけは、前記高分子化合物又はその反応生成物が除去できないことがある。かかる場合には、更にこれらを除去し純粋な金属酸化物とするため、焼成を行うのが好ましい。前記焼成は、例えば炉等を用いて行うことができ、焼成の温度としては用いた前記官能基を有する高分子化合物の種類により異なるが、低温であることが多層化を図る上で好適であり、約100℃〜700℃が好ましく、100℃〜400℃がより好ましい。
【0046】
前記焼成により、金属酸化物微粒子の結晶化と金属酸化物微粒子の焼結が起こると同時に、有機高分子成分が熱分解して消失する。
【0047】
前記半導体ナノ多孔質層の形成においては、拡散が規制された複合ゲル中で金属酸化物微粒子の形成反応が進行するため、粗大粒子の形成や、粒子の沈降による凝集等が起こらず、粒径の小さな超微粒子が均一に分散した金属酸化物微粒子コロイド分散ゾルを得ることができる。
【0048】
前記半導体ナノ多孔質層の金属酸化物微粒子の大きさ、金属酸化物微粒子凝集構造の周期、金属酸化物微粒子凝集相と空隙相との体積比等については、例えば、前記金属酸化物前駆体に対する、金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加量と、前記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物とを合わせた固形成分の前記混合溶液全体に対する割合で、所望の程度に制御することができる。
【0049】
即ち、金属酸化物前駆体と焼成する官能基を1種以上有する化合物の添加量を増やすと、得られる半導体ナノ多孔質層における空隙相の体積比が増し、前記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物とを合わせた固形成分の前記混合溶液全体に対する割合を減らすと、得られる金属酸化物微粒子凝集構造の周期が小さくなり、空隙相の密度は増すが、金属酸化物微粒子そのものの大きさは大きくなる。
【0050】
前記金属酸化物前駆体に対する、金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加量は、前記固形成分の前記混合溶液全体に対する割合に応じて異なり適宜選択可能であり、一般には質量比で0.1〜1が好ましく、更には0.2〜0.8が好ましい。金属酸化物前駆体対する、金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加量を下げると、マクロ孔が少ない緻密な半導体ナノ多孔質層ができやすくなり、前記質量比で0.1未満であると、−M−O−M−の大きな3次元ネットワークが形成されてしまうため、複合ゲルが再溶解しないことがある。また、逆に添加量を上げて、1を超えると比較的大きな空隙が生じ透明な半導体ナノ多孔質層となりやすい。
【0051】
前記固形成分の前記混合溶液全体に対する割合としては、前記金属酸化物前駆体と金属酸化物前駆体と相互作用する官能基を1種以上有する化合物の添加量に応じて異なるため適宜選択可能であるが、一般には1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。前記割合が、1質量%未満であると、複合ゲル化反応の進行が遅く、流動性の高い透明ゾル状態で金属酸化物微粒子が形成され、粗大な微粒子が形成されてしまい、一方、10質量%を超えると透明ゾルから複合ゲルへの進行が速く均一な複合ゲルが得られないことがある。
【0052】
以下に、金属アルコキシドとしてタングステンヘキサエトキシドを用いた場合を例にして、酸化タングステン多孔質層の形成方法について更に詳しく説明する。
【0053】
まず、タングステンヘキサエトキシドをアルコールに添加して混合溶液を調製する。この際アルコールには、水と、触媒としての酸とが添加されるが、該水は、タングステンヘキサエトキシドに対して0.1倍モル〜等モル程度、該酸は、タングステンヘキサエトキシドに対して0.05倍モル〜0.5倍モル程度それぞれ添加するのが好ましい。得られる混合溶液を、室温〜80℃で攪拌しながら乾燥窒素気流下で還流する。ここでの還流温度及び時間は、80℃で30分〜3時間程度が好ましい。この還流の結果、透明な混合溶液が得られる。
【0054】
この混合溶液中では、タングステンヘキサエトキシドは部分的に加水分解された状態になっており、オリゴマー状態にある。この混合溶液の温度を室温まで下げ、ポリアクリル酸を添加する。本来アルコールには溶けにくいポリアクリル酸が、この混合溶液には容易に溶解し無色の透明ゾルが得られる。これは、ポリアクリル酸のカルボン酸とタングステンヘキサエトキシドとが塩形成反応により結合し、高分子錯体状の化合物が形成されているためである。この透明ゾルに更に過剰量の水を加えて、室温〜80℃に保持すると数分間〜1時間程度で該透明ゾルがゲル化し、ポリアクリル酸とタングステンヘキサエトキシドとを少なくとも含む架橋構造の複合ゲル化が形成される。
【0055】
この複合ゲルを80℃程度で5〜50時間保持すると、該複合ゲルは再び溶解し半透明なゾルが得られる。これは、タングステンヘキサエトキシドの加水分解反応及び重縮合反応が進行するとともに、ポリアクリル酸とタングステンヘキサエトキシドとの塩構造が分解して、酸化チタンとカルボン酸エステルとに変化するためである。
【0056】
得られたゾル溶液を、ディップコーティング法等によって適当な基板に塗布し、約400℃以上の高温に加熱する。この加熱により酸化タングステン微粒子の結晶化と酸化タングステン微粒子同士の焼結が進行すると同時に、高分子相が熱分解し、酸化タングステンが相分離状態に凝集した膜状の酸化タングステン微粒子が形成されることとなる。
【0057】
タングステンヘキサエトキシドに対するポリアクリル酸の量としては、重量比で0.3〜0.7が好ましい。前記質量比が、0.3未満であると−M−O−M−の大きな3次元ネットワークが形成されゲルが溶解しないことがあり、0.7を超えると、比較的大きな空隙が生じ透明な層となることがある。
【0058】
また、タングステンヘキサエトキシドとポリアクリル酸との固形成分の前記混合溶液全体に対する割合としては、1〜10質量%が好ましい。前記割合が1質量%未満であると、複合ゲル化反応の進行が遅く、流動性の高いゾル状態で酸化タングステン微粒子が形成され、粗大な酸化タングステン微粒子が形成されることがある。一方、10質量%を超えると、透明ゾルから複合ゲルへの進行が速く均一な複合ゲルが得られないことがある。
【0059】
−化合物半導体ナノ多孔質層の形成方法−
前記化合物半導体ナノ多孔質層の形成方法としては、電解析出法、化学浴堆積法、光化学堆積法があり、具体的には以下に示すとおりである。
【0060】
(電解析出法)
前記電解析出法は、少なくとも堆積される元素のイオンを含む電解質中に、透明絶縁基板上の透明導電性膜を形成した電極と、該電極に対向する電極とを配置し、これら電極間で電気化学的に酸化還元反応を起こし、前記化合物半導体層を透明導電性膜を形成した電極上に形成するものである(表面技術Vol.49,No.1 3ページ 1998年)。
【0061】
この工程で作製される化合物半導体は、例えば、CuGaS(硫化銅ガリウム)、CuGaSe(セレン化銅ガリウム)、CuGaTe(テルル化銅ガリウム)、CuInS(硫化銅インジウム)、CuInSe(セレン化銅インジウム)、CuInTe(テルル化銅インジウム)、AgInS(硫化銀インジウム)、AgInSe(セレン化銀インジウム)、AgInTe(テルル化銀インジウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnTe(テルル化亜鉛)、CdTe(テルル化カドミウム)、CuS(硫化銅)、CuSe(セレン化銅)、等が挙げられる。
【0062】
前記電解質としては、溶媒中で原料元素となる硫酸化物や塩化物等の溶質を混合したものを使用し、電解質の溶媒としては、水(純水、蒸留水等)が用いられる。しかし、水の電気分解により水素が発生する電圧を卑に印加する場合、前記溶媒は非水溶液として有機物を用いることができる。有機溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート等を使用することができる。また、前記非水溶液は、液体アンモニア、液体二酸化硫黄等の無機非水溶液を前記溶媒として使用することができる。
【0063】
前記溶質は、硫酸物や塩化物等の前記電極上に堆積させる化合物半導体を構成する元素を含むものであり、かつ前記溶媒に可溶であればよい。例えば、硫酸物としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫酸ガリウム、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸カドミウム等が挙げられる。また、塩化物としては、塩化第一銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、塩化銀、塩化亜鉛、塩化カドミウム等の化合物が挙げられ、これらは還元型溶質として用いる。前記溶質は、上記化合物に限定されることはなく、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、前記溶質として、酸化セレン、水素酸セレン、酸化テルル、水素酸テルル、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素等を、酸化型溶質として使用することができる。
【0064】
上記のような酸化型溶質を用いたとき、水素イオン濃度を調整することで該酸化型溶質に含有する元素イオンの堆積を促すことができる。前記水素イオン濃度は、例えば、硫酸、塩酸等の調整剤によって調整することができる。前記調整剤によって調整された水素イオン濃度はpH0.9〜4.0が好ましく、pH1.5〜2.5がより好ましい。
【0065】
前記電解質として上記化合物のほかに、電解質中に電解質の通電性を得るために電解還元に関与しない不活性物質で構成する支持電解質を加えることもできる。支持電解質としては、例えば、NaClO(塩素酸ナトリウム)、LiClO(塩素酸リチウム)等が挙げられる。前記支持電解質は0.05〜1mol/l量の含有が好ましい。
【0066】
前記化合物半導体の堆積が進行するときに必要な密着性を上げるために、前記電解質中に添加剤を入れることもできる。前記添加剤としては、アミン、アルカロイド、スルホン酸、メルカプタン、スルフィド等が挙げられる。
【0067】
前記電解質中に配置された対向する電極間に電圧を印加するには、第三の電極を電圧基準電極として参照電極を用いることができる。前記対向する電極間に一定の電圧又は電流を制御するために参照電極を用いることもできる。前記参照電極は、標準水素電極、飽和カロメル電極、標準銀塩化銀電極、標準酸化水銀電極等を用いることができる。
【0068】
前記電解質中に配置された前記多孔質半導体層に対向する電極としては、溶液中での電圧印加により溶解しにくい材料、即ちイオン化傾向が小さい材料を用いることができる。例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)等が挙げられる。
【0069】
前記電解質中に配置された対向する電極間に印加する電圧は、前記電解質中に含まれる堆積したい化合物半導体を構成する元素を含む化合物の元素イオンの酸化還元電位より卑であることが好ましい。
【0070】
前記電解質中に含む化合物の含有量は、5〜400mmol/lが好ましく、還元型元素イオン堆積では5〜20mmol/lがより好ましく、酸化型元素イオンの堆積では、100〜400mmol/lがより好ましい。前記溶液の温度は20〜100℃が好ましく、22〜70℃がより好ましい。
【0071】
前記化合物半導体層形成時の電圧印加時間は300〜3600秒が好ましく、800〜2400秒がより好ましい。
【0072】
前記工程で堆積した前記化合物半導体を焼成し結晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半導体の種類に依存するが、50〜600℃が好ましく、150〜600℃がより好ましい。該結晶化の時間は1〜60分が好ましく、15〜30分がより好ましい。
【0073】
(化学浴堆積法)
前記化学浴堆積法は、少なくとも堆積されるイオンを1種以上含む溶液中に、透明絶縁基板上の透明導電性膜を形成した電極を配置し、前記溶液の温度調整とイオン濃度調整とにより還元反応を起こし、前記化合物半導体層を電極上に形成するものである(Jounal of Applied Physics, vol.82, 2, 655, 1997)。
【0074】
この化学浴堆積法では、酸化剤や還元剤により元素イオンを生成し、該イオンを安定化するために錯化剤、水素イオン濃度の変動を防止するために緩衝剤、溶液中の自然分解を防止するための安定剤等を添加し、これらの酸化還元反応により前記透明導電性膜を形成した電極上に前記化合物半導体の堆積が可能となる。この工程で作製される前記化合物半導体は、特には限定されないが、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnTe(テルル化亜鉛)、CdTe(テルル化カドミウム)、CuS(硫化銅)、CuSe(セレン化銅)等が挙げられる。
【0075】
前記溶液は、溶媒中でイオンとなる硫酸化物や塩化物等の溶質を混合したものを使用する。前記溶媒としては、水(純水、蒸留水等)等が用いられる。また有機溶媒も用いることができ、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート等を使用することができる。また、液体アンモニア、液体二酸化硫黄等の無機非水溶液を使用することもできる。
【0076】
前記溶質は、硫酸物や塩化物等の前記透明導電性膜を形成した電極上に堆積したい化合物半導体を構成する元素を含むものであればよい。例えば、硫酸物としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫酸ガリウム、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸カドミウム等が挙げられる。また、塩化物としては、塩化第一銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、塩化銀、塩化亜鉛、塩化カドミウム等が挙げられる。前記溶質としては、酸化セレン、水素酸セレン、酸化テルル、水素酸テルル、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素等も好ましく使用することができる。
【0077】
上記のような化合物を用いたとき、水素イオン濃度を調整することで該化合物に含有する元素イオンの堆積を促すことができる。前記水素イオン濃度を調整するための調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物や無機酸、有機酸等を用いることができる。また、前記水素イオン濃度の変動を抑制するために使用される緩衝剤は、クエン酸ナトリウム酢酸ナトリウム、オキシカルボン酸系のものや、ホウ酸あるいは炭酸等の無機酸で解離定数が小さいものや、有機酸及び無機酸のアルカリ塩を用いることができる。また、錯化剤として、水酸化アンモニウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、エチレングリコール等を用いることができる。
【0078】
安定剤として鉛の塩化物、硫化物や硝化物等を用いることができる。前記溶液中の化合物半導体の原料元素を含む前記化合物の濃度は、1.0×10−2〜2mol/lが好ましく、2.0×10−2〜1mol/lがより好ましい。
【0079】
前記溶液の温度は20〜100℃が好ましく、22〜70℃がより好ましい。また、前記化合物半導体層の形成時間は300〜3600秒が好ましく、1200〜2400秒がより好ましい。
【0080】
前記工程で堆積した前記化合物半導体層を焼成し結晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半導体の種類に依存するが、50〜600℃が好ましく、150〜550℃がより好ましい。該結晶化の時間は1〜60分が好ましく、15〜30分がより好ましい。
【0081】
(光化学堆積法)
前記光化学堆積法は、少なくともチオ硫酸ナトリウム及び金属イオンを1種以上含む溶液中に、透明絶縁基板上に透明導電性膜を形した電極を配置し、該電極に紫外線を照射して光反応を生じさせ、前記化合物半導体層を電極上に形成するものである(Japan Journal Applied Physics vol36, L1146 1997年)。
【0082】
この光化学堆積法では、溶液中のイオン(チオ硫酸イオン等)の光励起により化合物生成反応が引き起こされ、光照射の有無や強度変化によって膜厚制御が容易に行える。この工程で作製される前記化合物半導体は、特に限定されないが、CuGaS(硫化銅ガリウム)、CuInS(硫化銅インジウム)、AgInS(硫化銀インジウム)、CuS(硫化銅)等が挙げられる。
【0083】
前記溶液は、溶媒中でイオンとなる硫酸化物や塩化物等の溶質を混合したものを使用する。前記溶質は、硫酸物や塩化物等の前記電極上に堆積したい化合物半導体を構成する元素を含むものであればよい。例えば、硫酸物としては、硫酸第一銅、硫酸インジウム、硫酸ガリウム、硫酸カドミウム等が挙げられる。また、塩化物としては、塩化第一銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、塩化カドミウム等が挙げられる。
【0084】
前記溶質は、上記化合物に限定されることはなく、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。上記のような酸化型の化合物を用いたとき、水素イオン濃度を調整することで該酸化型化合物に含有する元素イオンの堆積を促すことができる。前記水素イオン濃度は、例えば硫酸等の調整剤によって調整することができる。前記調整剤によって調整された水素イオン濃度はpH1.5〜4.0が好ましく、pH2.5〜3.5がより好ましい。
【0085】
前記溶液を攪拌することが好ましく、60rpm以下で攪拌することが好ましい。更に、前記光励起するために用いる光は、高圧水銀光源ランプ等により紫外光を発生させ、単凸レンズにより集光し、前記溶液中に配置された前記電極上に照射される。前記単凸レンズは石英ガラスで作製されていることが好ましい。
【0086】
前記溶液中の化合物半導体の原料元素を含む前記化合物の濃度は、1.0〜20mmol/lが好ましく、2.0〜10mmol/lがより好ましい。前記溶液の温度は20〜40℃が好ましく、22〜35℃がより好ましい。また、前記化合物半導体層の形成時間は2400〜4800秒が好ましく、3000〜3600秒がより好ましい
【0087】
前記堆積した前記化合物半導体を焼成し結晶化する。結晶化温度は堆積する前記化合物半導体の種類に依存するが、80〜600℃が好ましく、80〜500℃がより好ましい。該結晶化の時間は1〜60分が好ましく、15〜30分がより好ましい。特に硫化物系の場合80〜400℃、セレン系の場合300〜550℃、テルル系の場合、400〜600℃が好ましい。
【0088】
−複合体酸化物半導体ナノ多孔質層の形成方法−
前記複合体酸化物半導体ナノ多孔質層は、上記方法により形成した酸化物半導体ナノ多孔質層上に更にゾルゲル法により酸化物半導体ナノ多孔質層を形成し、複合化する方法、又は2種類の酸化物半導体粒子を混合したペーストを電極上に塗布する方法、などが挙げられる。
【0089】
具体的には、酸化物半導体コロイド水溶液に酢酸を滴下し、乳鉢でよく混合したゲル状溶液に対して複合対象となる酸化物半導体粉末、アルコールを少しずつ加えてよく混合する。更に、界面活性剤を加えてよく混合し、これを、フッ素ドープ型酸化スズ導電性膜ガラス(FTO)電極にホットプレート(100〜120℃)上で噴霧塗布し、焼成することにより、半導体微粒子の結晶化と半導体微粒子同士の焼成とが進行し、所望の多孔質を有する複合体酸化物半導体ナノ多孔質層を形成する。
【0090】
前記半導体ナノ多孔質層は、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(又は異なるバインダー、添加剤)を含有する塗布層を多層塗布することもできる。一度の塗布で膜厚が不足する場合にも多層塗布は有効である。前記多層塗布には、エクストルージョン法又はスライドホッパー法が適している。また、多層塗布をする場合は同時に多層を塗布しても良く、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。更に、順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
この場合、多層構造に形成した半導体ナノ多孔質層毎にEC色素を吸着担持させる処理を行うことが好ましく、各層毎に異なるEC色素を吸着担持させてもよく、また同じEC色素を吸着担持させても構わない。
【0091】
前記半導体ナノ多孔質層は、EC色素を担持させる前に熱処理(例えば、100〜550℃で10分間)することが好ましい。これにより、半導体ナノ多孔質層表面に吸着した水分、その他の不純物を除去し得ると共に、多孔質層表面を活性化し得、EC色素の吸着を効率よく行うことができる。
【0092】
前記半導体ナノ多孔質層の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
多孔質層の厚みが薄すぎると、吸着することができるEC色素量が少なくなってしまう場合がある。一方、厚すぎると透明性が低下し、EC素子に注入した電荷のロスが多くなる場合がある。
【0093】
−EC色素−
前記EC色素は、前記半導体ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔に担持されると共に、必要に応じて、電解質層中に溶解乃至分散された状態で含有されることが好ましい。
前記EC色素としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色又は消色する作用を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機化合物、金属錯体などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記金属錯体としては、例えば、プルシアンブルー、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、メタフェリシアニド、これらの誘導体などが挙げられる。
【0095】
前記有機材料としては、例えば、(1)ピリジン化合物類、(2)導電性高分子類、(3)スチリル化合物類、(4)ドナー/アクセプター型化合物類、(5)その他有機色素類、などが挙げられる。
【0096】
前記(1)ピリジン化合物類としては、例えば、ビオローゲン、ヘプチルビオローゲン(ジヘプチルビオローゲンジブロミド等)、メチレンビスピリジニウム、フェナントロリン、アゾビピリジニウム、2,2−ビピリジニウム錯体、キノリン・イソキノリン、などが挙げられる。
【0097】
前記(2)導電性高分子類としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、高分子ビオローゲンポリイオンコンプレックス、TTF、これらの誘導体などが挙げられる。
【0098】
前記(3)スチリル化合物類としては、例えば、2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]−3,3−ジメチルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−[4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1,3−ブタジエニル]−3,3−ジメチルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]−3,3−ジメチル−5−メチルスルホニルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−[4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1,3−ブタジエニル]−3,3−ジメチル−5−スルホニルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、3,3−ジメチル−2−[2−(9−エチル−3−カルバゾリル)エテニル]インドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、2−[2−[4−(アセチルアミノ)フェニル]エテニル]−3,3−ジメチルインドリノ[2,1−b]オキサゾリジン、などが挙げられる。
【0099】
前記(4)ドナー/アクセプター型化合物類としては、例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン、などが挙げられる。
【0100】
前記(5)その他有機色素類としては、例えば、カルバゾール、メトキシビフェニル、アントラキノン、キノン、ジフェニルアミン、アミノフェノール、Tris−アミノフェニルアミン、フェニルアセチレン、シクロペンチル化合物、ベンゾジチオリウム化合物、スクアリウム塩、シアニン、希土類フタロシアニン錯体、ルテニウムジフタロシアニン、メロシアニン、フェナントロリン錯体、ピラゾリン、酸化還元指示薬、pH指示薬、これらの誘導体、などが挙げられる。
【0101】
これらの中でも、ビオローゲン、ヘプチルビオローゲン(ジヘプチルビオローゲンジブロミド等)などのビオローゲン系色素が好適である。
また、前記EC色素としては、酸化状態では無色乃至極淡色を示し、還元状態で発色する還元発色型のもの、還元状態では無色乃至極淡色を示し、酸化状態で発色する酸化発色型のもの、還元状態でも酸化状態でも発色を示し、還元又は酸化の程度により数種類の色が発現する多色発色型のもののいずれであってもよく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0102】
前記EC色素を2種以上併用する場合の組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ビオローゲンとポリアニリンとの組合せ、ポリピロールとポリメチルチオフェンとの組合せ、ポリアニリンとプルシアンブルーとの組合せ、などが挙げられる。
【0103】
前記半導体ナノ多孔質層の表面及び内部にEC色素を担持させる方法としては、特に制限はなく、公知の技術を使用できる。例えば、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法や担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等の方法を適宜選ぶことができる。中でも自然吸着法は、金属酸化物層の微細孔のすみずみにまでむらなく確実に機能性分子を担持させうる、特別な装置を必要としない、多くの場合は単分子層程度であり必要以上に余分な量がつかない等の多くの利点を有しており好ましい方法である。
【0104】
具体的には、EC色素の溶液中に良く乾燥した半導体ナノ多孔質層を有する透明基板を浸漬するか、色素の溶液を半導体ナノ多孔質層に塗布する方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また、後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等がある。
【0105】
なお、EC色素を半導体ナノ多孔質層に複数層形成する場合には、上記色素吸着処理を複数回繰り返すことにより行うことができる。
【0106】
前記EC色素を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0107】
前記EC色素の吸着量は、半導体ナノ多孔質層の単位表面積(1m)当たり0.01〜100mmolが好ましい。また、EC色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜100mmolの範囲であるのが好ましい。
また、EC色素の電解質中濃度は、0.001〜2mol/lが好ましく、0.005〜1mol/lがより好ましい。
【0108】
−電荷移動剤−
前記電荷移動剤は、前記EC色素と同様に、半導体ナノ多孔質層の表面及び内部の微細孔に担持されると共に、必要に応じて、電解質層中に溶解乃至分散された状態で含有されることが好ましい。なお、電荷移動剤の半導体ナノ多孔質層への担持はEC色素と同様の方法で行うことができる。
前記電荷移動剤とEC色素とを併用することにより、両者の同時発色による加色効果、両者の相互作用にして酸化還元反応がスムーズに進行し、発色効率がより向上する。
【0109】
前記電荷移動剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エレクトロクロミック性を示すものが好適であり、例えば、ヒドラゾン、フェノチアジン、〔β−(10−フェノチアジル)−プロポキシ〕ホスホン酸(フェノチアジン誘導体)、などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
前記電荷移動剤の吸着量は、半導体ナノ多孔質層の単位表面積(1m)当たり0.01〜100mmolが好ましい。また、電荷移動剤の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜100mmolの範囲であるのが好ましい。
また、電荷移動剤の電解質中濃度は、0.001〜2mol/lが好ましく、0.005〜1mol/lがより好ましい。
【0111】
−電解質層−
前記電解質層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、EC色素及び電荷移動剤を含有することが好ましく、EC色素及び電荷移動剤としては、上述したものの中から適宜選択して用いることができるが、半導体ナノ多孔質層に担持させたEC色素や電荷移動剤と同じものが好ましい。
前記電解質層の形態としては、液体、固体、ゲル状のいずれであっても構わない。
【0112】
(1)液体の電解質層の場合
前記電解質層が液体の場合には、I/I 、Br/Br 、キノン/ヒドロキノン対等のレドックス対(酸化還元対)を含み、電極間を十分な速度で輸送可能な電解質等の電荷輸送性物質を溶媒に溶かして用いることが好ましい。
【0113】
前記電解質としては、例えば、ヨウ素、臭素、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属ハロゲン化物、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム化合物のハロゲン化塩、メチルビオロゲンクロリド、ヘキシルビオロゲンブロミド等のアルキルビオロゲン、ハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン、フェロセン、フェロシアン酸塩等の鉄錯体等の少なくとも1種を用いることができるが、これに限定するものではない。
また、ヨウ素とヨウ化リチウム等の組合せのように、予めレドックス対(酸化還元対)を生成させる複数の電解質を混合して用いると、EC素子の性能、特に電流特性を向上させることが可能となる。これらの中でも、ヨウ素とアンモニウム化合物、ヨウ素と金属ヨウ化物の組合せ等が好適に挙げられる。
【0114】
これらの電解質を溶解する溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の非プロトン性極性溶媒、水等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
前記溶媒における前記電解質の電解質濃度としては、0.001〜2mol/lが好ましく、0.005〜1mol/lがより好ましい。電解質濃度が0.001mol未満の場合には、キャリアとしての機能が十分に働かなくなるため、特性が低下する場合がある。一方、2mol/lを超える場合には、それに見合う前述の効果が現れず、また、電解質溶液の粘性が高くなり、電流の低下につながることがある。
【0116】
(2)固体の電解質層の場合
前記電解質層が固体の場合には、イオン導電性又は電子伝導性を示すいずれの物質であってもよく、例えば、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF、等のハロゲン化物、AgSBr、CNHAg、RbCu16Cl13、RbCuCl10等の無機復塩、LiN、LiNI、LiNBr等の窒化リチウム及びその誘導体、LiSO、LiSiO、LiPO等のリチウムの酸素酸塩、ZrO、CaO、Gd、HfO、Y、Nb、WO、Bi、及びこれらの固溶体等の酸化物、CaF、PbF、SrF、LaF、TISn、CeF等のフッ化物、CuS、AgS、CuSe、AgCrSe等のカルコゲニド、フッ化ビニル系高分子にパーフルオロスルフォン酸を含む高分子(例えば、ナフィオン)、有機電荷輸送性物質として、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等の化合物、トリフェニルアミン等の芳香族アミン化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール化合物やポリメチルフェニルシラン等のシラン化合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0117】
(3)ゲル電解質層の場合
前記電解質層がゲル状の場合には、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を、前記電解質及び前記溶媒に混合して用いることができる。
前記ポリマー添加によりゲル化させる場合は、「Polymer Electrolyte Revi ews−1及び2」(J.R.MacCallumとC.A.Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)などに記載された化合物を使用することができるが、特に、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンなどが好適である。
前記オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は、「J.Chem Soc.Japan,Ind.Chem.Sec.,46,779(1943)」、「J.Am.Chem.Soc.,111,5542(1989)」、「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,390」、「Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,1949(1996)」、「Chem.Lett.,1996,885」、「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1997,545」などに記載されている化合物を使用することができるが、特に、分子構造中にアミド構造を有する化合物が好ましい。
【0118】
また、マトリックス材と支持電解質との混合液を重合させてフイルム状とした固体電解質層を用いることもできる。
−−支持電解質−−
前記支持電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、無機電解質であってもよいし、有機電解質であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、市販品であってもよく、適宜合成しても構わない。
【0119】
前記無機電解質としては、例えば、無機酸陰イオン−アルカリ金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属などが挙げられ、これらの中でも無機酸陰イオン−アルカリ金属塩が好ましく、無機酸リチウム塩がより好ましい。
【0120】
前記無機酸陰イオン−アルカリ金属塩としては、例えば、XAsF、XPF、XBF、XClO、などが挙げられ、(但し、これらにおいてXは、H、Li、K又はNaを表す。)、具体的には過塩素酸リチウムなどが好適に挙げられる。
【0121】
前記アルカリ金属塩としては、例えば、LiI、KI、LiCFSO、LiPF、LiClO、LiBF、LiSCN、LiAsF、NaCFSO、NaPF、NaClO、NaI、NaBF、NaAsF、KCFSO、KPF、などが挙げられる。
【0122】
前記有機電解質としては、例えば、有機酸陰イオン−アルカリ金属塩、四級アンモニウム塩、アニオン性界面活性剤、イミダゾリウム塩、などが挙げられ、これらの中でも有機酸陰イオン−アルカリ金属塩が好ましく、有機酸リチウム塩がより好ましい。
【0123】
前記有機酸陰イオン−アルカリ金属塩としては、例えば、XCFSO、XC2n+1SO(n=1〜3)、XN(CFSO、XC(CFSO、XB(CH、XB(C、などが挙げられ(但し、これらにおいてXは、H、Li、K又はNaを表す)、具体的には、ポリメタクリル酸リチウムなどが好適に挙げられる。
【0124】
前記四級アンモニウム塩としては、例えば、[CH(CHN・Y、C2n+1N(CH・Y(n=10〜18)、(C2n+1N(CH・Y(n=10〜18)、などが挙げられる(但し、これらにおいてYは、BF、PF、ClO、F、Cl、Br又はOHを表す。)
【0125】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、C2n+1COO・X(n=10〜18)、C2n+1OC2mCOO・X(n=10〜18、m=10〜18)、C10COO・X、C2n+110COO・X(n=10〜18)、C2n+1SO・X(n=10〜18)、C2n+1OC2mSO・X(n=10〜18、m=10〜18)、C10SO・X、C2n+110SO・X(n=10〜18)、C2n+1OSO・X(n=10〜18)、などが挙げられる(但し、これらにおいてXは、H、Li、K又はNaを表す。)。
【0126】
前記支持電解質として、特に、無機酸リチウム塩と有機酸リチウム塩とを含むのが好ましい。
【0127】
−−マトリックス材−−
前記マトリックス材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘテロ原子を有する高分子化合物、などが挙げられる。
【0128】
前記ヘテロ原子を有する高分子化合物としては、例えば、酸素原子を有する高分子化合物、窒素原子を有する高分子化合物、硫黄原子を有する高分子化合物、ハロゲン原子を有する高分子化合物、などが挙げられる。
【0129】
前記酸素原子を有する高分子化合物としては、例えば、R−(OCHCHO−R(nは、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン基、プロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニル基、酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル基、メタクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビニルケトン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、H、CH又はRを表す。)で表される化合物などが好適に挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、非ポリエーテル類(例えば、ポリ(3−ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ酢酸ビニル)、などが好適に挙げられる。
【0130】
前記窒素原子を有する高分子化合物としては、例えば、R−(NHCHCHNH−R(nは、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン基、プロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニル基、酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル基、メタクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビニルケトン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、H、CH又はRを表す。)で表される化合物などが好適に挙げられ、具体的には、ポリエチレンイミン、ポリ−N−メチルエチレンイミン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0131】
前記硫黄原子を有する高分子化合物としては、例えば、R−(SCHCHS−R(nは、整数を表し、Rは、エチレン基、スチレン基、プロピレン基、ブテン基、ブタジエン基、塩化ビニル基、酢酸ビニル基、アクリル酸基、アクリル酸メチル基、メタクリル酸基、メタクリル酸メチル基、メチルビニルケトン基、アクリルアミド基等を表し、Rは、H、CH又はRを表す。)で表される化合物などが好適に挙げられ、具体的には、ポリアルキレンサルファイド類、などが挙げられる。
【0132】
前記マトリックス材の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低いほうが常温で流動性を有する場合が多いため、製膜性の観点からは低いほうが好ましく、例えば、数平均分子量で1000以下であるのが好ましい。
【0133】
前記マトリックス材の前記電解質層における使用量としては、前記支持電解質とのモル比(マトリックス材:支持電解質)が、70:30〜5:95であるのが好ましく、50:50〜10:90であるのがより好ましく、50:50〜20:80であるのが特に好ましい。
【0134】
なお、前記モル比は、前記マトリックス材のモル量と、前記支持電解質のイオンのモル量との比を意味する。該マトリックス材のモル量とは、高分子化合物のモノマー単位を1分子として換算したモル量を意味する。
【0135】
前記フイルム状固体電解質層は、前記マトリックス材と支持電解質との混合液に過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を少量添加したものを薄く延ばし、続いて加熱を行い重合させるか、又はイルガキュア等の光重合開始剤を添加して、紫外線照射により重合させることにより、作製することができる。
なお、固体電解質フイルムの厚さは、通常、30〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
【0136】
−一対の透明電極−
前記一対の透明電極としては、透明で電気を通すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素等が挙げられる。これらの中でも、表面抵抗値が低い、耐熱性が良い、化学的な安定性がある、光透過率が高い、等の点からフッ素をドーピングした酸化スズ(FTO)、酸化スズインジウム(ITO)が好ましい。
【0137】
前記導電性基体の表面抵抗としては、前述のようにより低い方が好ましく、具体的な表面抵抗値としては、100Ω/cm以下が好ましく10Ω/cm以下がより好ましい。
また、前記透明電極の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極の場合、例えば、0.1μm以上、特に0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0138】
−支持体−
前記支持体は、前記透明電極を設ける基材等として使用することができ、その材質、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく適宜設計することができる。
前記支持体としては、例えば、ガラス板、高分子フイルム、などが好適に挙げられる。高分子フイルムの材料としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、などが挙げられる。
【0139】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、EC装置の用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、スペーサー、封止部材、リード線、反射手段、などが挙げられる。
【0140】
本発明のEC装置は、特に制限されないが、平地混合による面積階調法、平地混合による濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層混合による濃度階調法から選ばれるいずれかの方法によりフルカラー化して用いることが好ましい。
【0141】
前記平地混合による面積階調法は、印刷物の網点と同様の原理でカラー画像を表現する方法である。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)に発色する微小画素を平面内に多数設けておき、各画素の発色濃度変化は階調を持たず一定濃度のON/OFFにより発色面積の違いによりカラー画像を表現するものである(例えば、印加電圧と印加時間が一定の場合である)。
【0142】
前記平地混合による濃度階調法は、上記同様に印刷物の網点と同様の原理でカラー画像を表現する方法である。但し、各画素は発色濃度に階調を持たせることができるので、印加電圧や印加時間を制御してセルへの注入電荷量を制御することで発色濃度を制御することができる。
【0143】
前記積層混合による面積階調法は、上記同様に印刷物の網点と同様の原理でカラー画像を表現する方法であるが、同一画素内に垂直に3色のセルを積層するので前記平地混合による面積階調法より画素密度が緩和される。
【0144】
前記積層混合による濃度階調法は、前記平地混合による濃度階調法と同様の発色方法であり、銀塩写真などと同様のフルカラー表現方法である。
【0145】
前記EC装置は、用途に応じて異なるが、透過型素子の場合は到達透過率となるまでの応答速度が100msec以下が好ましく、10msec以下がより好ましい。また、反射型素子の場合には到達吸光度になるまでの応答速度が100msec以下が好ましく、10msec以下がより好ましい。
【0146】
本発明のEC装置の一例としては、図1,2に示す通り、EC色素25が担持された2層の半導体ナノ多孔質膜20が表面に設けられた透明電極10と、EC色素25が担持された2層の半導体ナノ多孔質膜22が表面に設けられた透明電極12との間に電解質層30を半導体ナノ多孔質膜20及び半導体ナノ多孔質膜22で挟み込むようにして介在させたものが挙げられる。なお、透明電極10及び透明電極12はリード線60で結線されており、電源50に接続されている。
前記EC装置は、透明電極10と透明電極12との間に電圧を印加して半導体ナノ多孔質膜に担持されたEC色素25を発消色させるものである。
【0147】
なお、前記EC装置において画像を形成するための電圧としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜10V程度が好ましく、1〜5V程度がより好ましい。
【0148】
本発明のEC装置は、各種分野において好適に使用することができ、例えば、ECD(Electrochromic Display)、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー、調光ガラス等の調光素子、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリー、電子ペーパー、電子アルバムなどに好適に使用することができる。
【0149】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0150】
(実施例1)
チタニウムテトライソプロポキシド6.41gをエタノール20mlで希釈し、攪拌しながら比重1.38の硝酸を0.514g、水を0.2ml加えた。以上の混合操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。この混合液を80℃に昇温し、乾燥窒素気流下で2時間還元して、無色透明のゾル液を得た。このゾル液を室温まで冷却した後、攪拌しながらゾル液2gに対してポリアクリル酸0.1gを溶解した。
得られたゾル液に更に水2mlを加えて無色透明で均一なゾル液を得た。このゾル液をガラス容器に密閉して80℃に昇温した。ゾル液は5分ほどでゲル化し、ほぼ透明で均一なゲルとなった。80℃でさらに15時間保持するとゲルは再び溶解して白っぽい半透明のゾル液となった。
【0151】
このゾル液を、スピンコート法によりITOガラス基板上に塗布し、450℃に昇温して20分保持して焼成した。この塗布及び焼成の工程を20回繰り返し、膜厚3.5μmの多孔質TiO2膜からなる電極を形成した。
得られた膜の結晶構造をX線回折により調べた結果、アナターゼ型の酸化チタンが形成されていることが確認された。膜の微細構造をSEM観察により調べたところ、相分離状の凝集組織が形成されていた。
この焼成物膜(透明導電性膜)の比表面積は100g/cmであった。なお、比表面積は、BET表面積測定装置(ミツワ理化学工業製、マルチソーブ12)を用い、液体窒素温度で、窒素ガスを吸着させる方法により行った。
【0152】
次いで、上記基板を、EC色素として、0.02Mのビス−(2−ホスホノエチル)−4,4’−ビピリジニウムジブロミド(ビオローゲン誘導体)水溶液に浸漬し、色素吸着処理を行い、室温で乾燥した。
更に、ビオローゲン誘導体が吸着した基板を、EC色素として0.02Mのビス−(2−ホスホノエチル)−3,8−フェナントロリンジブロミド(フェナントロリン誘導体)水溶液に浸漬し、色素吸着処理を行い、室温で乾燥した。
以上のようにして、二種類の色素が層状に吸着した多層色素結合TiO電極を作成した。
【0153】
得られた多層色素結合TiO電極と、それと対をなす電極(対電極)とを電解質液に接触させてEC素子を組み立てた。この場合、対電極としては、ITOガラス基板を用い、両電極間の距離は0.5mmとした。
電解質液としては、0.2Mのテトラブチルアンモニウムパークロレートのプロピレンカーボネート溶液を用いた。なお、作製した一対の電極の大きさはいずれも5mm×5mmとした。
【0154】
得られたEC素子における一対の電極をリード線で結線(陰極に多層色素結合TiO電極、陽極にITO電極)して表示装置を作製した。この表示装置について、室温で3Vの電圧を印加したところ、陰極においてビオローゲン誘導体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカチオンとなり、無色から黒色に変わった。なお、到達透過率となるまでの応答速度は100msecであった。
電圧をかけるのを止めても発色は600秒以上もつづいた。
また、発色−消色を1万回繰り返しても発色時の色の濃さも、消色時の透明度ほとんど変わらなかった。
【0155】
(実施例2)
市販品の酸化スズ粉末(和光純薬製、表面積60m/g;平均一次粒径50nm以下)を非イオン性界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に濃度約1質量%で分散させてスラリー液を調製した。
次に、このスラリー液を、フッ素ドープの透明導電性膜が予め形成された厚さ1mmのガラス基板上に塗布し、乾燥した。得られた乾燥物を500℃で1時間、空気中で焼成し、ガラス基板上に厚さ10μmの多孔質焼成物膜(透明導電性層)を形成した。膜の微細構造をSEM観察により調べたところ、相分離状の凝集組織が形成されており、多孔質構造を有していた。
【0156】
この焼成物膜(透明導電性膜)の比表面積は100g/cmであった。なお、比表面積は、BET表面積測定装置(ミツワ理化学工業製、マルチソーブ12)を用い、液体窒素温度で、窒素ガスを吸着させる方法により行った。
【0157】
次いで、上記基板を、0.02Mの〔β−(10−フェノチアジル)プロポキシ〕ホスホン酸(フェノチアジン誘導体)のクロロホルム溶液に浸漬し、色素吸着処理を行い、室温で乾燥させた。
このようにして得られたフェノチアジン誘導体結合電極と、それと対をなす電極として実施例1の多層色素結合TiO結合電極を用いて電解質液に接触させてEC素子を組み立てた。両極間の距離は0.5mmとした。
電解質液としては、0.2Mのテトラブチルアンモニウムパークロレートのプロピレンカーボネート溶液を用いた。なお、作製した一対の電極の大きさはいずれも5mm×5mmとした。
【0158】
得られたEC素子における一対の電極をリード線で結線(陰極に多層色素結合TiO電極、陽極にフェノチアジン誘導体結合SnO電極)して表示装置を作製した。この表示装置について、室温で3Vの電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカチオンとなり、無色から黒色に変った。一方、陽極ではフェノチアジン誘導体が酸化されてラジカルカチオンとなり、無色から赤色に変った。その結果、全体としては、透明なものから波長500nm付近及び600nm付近に大きな吸収を持つ黒色に変化した。なお、到達透過率となるまでの応答速度は60msecだった。
電圧をかけるのを止めても発色は600秒以上も続いた。
また、発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色の濃さも、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0159】
(実施例3)
作用極にITOガラス基板、対極に白金板、参照極に飽和カロメル電極を用い、電気化学セルを構成した。電解液としては0.1M硝酸亜鉛水溶液に50μM相当のビス−(2−ホスホノエチル)−4,4’−ビピリジニウムジブロミド(ビオローゲン誘導体)を加えたものを用いた。
この電解液を70℃に保ち、−0.9Vの電位をポテンシオスタットを用いて1時間印加した。電位を印加すると、ITO電極上に、ビオローゲン誘導体を含んだZnO多孔質膜が形成され、1時間後には、その厚さは約1μmになった。1時間経過後、セルからITO電極を引き上げ、水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0160】
次に、上記のようにして作製したビオローゲン誘導体含有ZnO電極を作用極とし、上記と同様の電気化学セルを構築した。このとき、電解液は、0.1M硝酸亜鉛水溶液に50μM相当のビス−(2−ホスホノエチル)−3,8−フェナントロリンジブロミド(フェナントロリン誘導体)を加えたものを用いた。それ以外は上記と同様の操作を行い、ビオローゲン誘導体含有ZnO膜の上にフェナントロリン誘導体含有ZnO膜が形成された多層構造ZnO電極を作製した。
【0161】
得られた多層構造ZnO電極と、それと対をなす電極(対電極)とに電解質液を接触させてEC素子を組み立てた。この場合、対電極としてはITO電極を用い、両電極間の距離は0.5mmとした。
【0162】
電解質液としては、0.2Mのテトラブチルアンモニウムパークロレートのプロピレンカーボネート溶液を用いた。なお、作製した一対の電極の大きさはいずれも5mm×5mmとした。
【0163】
得られたEC素子における一対の電極をリード線で結線(陰極に多層構造ZnO電極、陽極にITO電極)して表示装置を作製した。この表示装置について、室温で3Vの電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカチオンとなり、無色から黒色に変った。なお、到達透過率となるまでの応答速度は80msecだった。
電圧をかけるのを止めても発色は600秒以上も続いた。
また、発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色の濃さも、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0164】
(実施例4)
対電極として実施例2で作製したフェノチアジン誘導体結合SnO電極を用いるほかは、全て実施例3と同様の操作を行った。
【0165】
得られたEC素子における一対の電極をリード線で結線(陰極に多層構造ZnO電極、陽極にフェノチアジン誘導体結合SnO電極)して表示装置を作製した。この表示装置について、室温で3Vの電圧を印加したところ、陰極ではビオローゲン誘導体及びフェナントロリン誘導体が還元されてラジカルカチオンとなり、無色から黒色に変った。一方、陽極ではフェノチアジン誘導体が酸化されてラジカルカチオンとなり、無色から赤色に変った。その結果、全体としては、透明なものから波長500nm付近および600nm付近に大きな吸収を持つ黒色に変化した。なお、到達透過率となるまでの応答速度は50msecだった。
電圧をかけるのを止めても発色は600秒以上も続いた。
また、発色−消色を1万回以上繰り返しても発色時の色の濃さも、消色時の透明度もほとんど変らなかった。
【0166】
【発明の効果】
本発明によれば、従来における前記問題を解決することができ、構造が簡単で製造が容易であり、フルカラー化が容易であり、メモリー性に優れ、応答速度、発色効率及び繰り返し耐久性が大幅に向上したEC装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のEC装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、図1のX領域の部分拡大図である。
【符号の説明】
10 透明電極
12 透明電極
20 半導体ナノ多孔質層
22 半導体ナノ多孔質層
25 EC色素
30 電解質層
50 電源
60 リード線

Claims (15)

  1. 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素を複数層に形成したことを特徴とするエレクトロクロミック装置。
  2. 両方の半導体ナノ多孔質層に、エレクトロクロミック色素を複数層に形成した請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  3. 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記電解質中に、少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が含有されてなることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
  4. 半導体ナノ多孔質層を少なくとも一方の表面に形成した一対の透明電極を、該半導体ナノ多孔質層同士が対向するように配置した間に、電解質層を挟持してなるエレクトロクロミック装置であって、前記半導体ナノ多孔質層が多層構造に形成されると共に、前記半導体ナノ多孔質層に、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色する少なくとも1種のエレクトロクロミック色素が担持されてなることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
  5. 半導体ナノ多孔質層に異なるエレクトロクロミック色素が複数層担持されている請求項4に記載のエレクトロクロミック装置。
  6. 電解質層中に電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により可逆的に発色又は消色するエレクトロクロミック色素を少なくとも1種含有する請求項1から2及び4から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  7. 更に電荷移動剤が、電解質層中に含まれている請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  8. 電荷移動剤が、前記半導体ナノ多孔質層に担持されている請求項7に記載のエレクトロクロミック装置。
  9. 半導体ナノ多孔質層に含まれる半導体微粒子が、単体半導体、酸化物半導体、化合物半導体、有機半導体、複合体酸化物半導体及びこれらの混合物から選ばれる請求項1から8のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  10. 複合体酸化物半導体が、SnO−ZnO、Nb−SrTiO、Nb−Ta、Nb−ZrO、Nb−TiO、Ti−SnO、Zr−SnO、In−SnO及びBi−SnOから選ばれる請求項9に記載のエレクトロクロミック装置。
  11. 前記エレクトロクロミック色素を半導体ナノ多孔質層に担持させる前に熱処理を施してなる請求項1から2及び4から10のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  12. 半導体ナノ多孔質層の厚みが100μm以下である請求項1から11のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  13. エレクトロクロミック色素が、有機化合物及び金属錯体から選ばれる請求項1から12のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  14. 平地混合による面積階調法、平地混合による濃度階調法、積層混合による面積階調法及び積層混合による濃度階調法から選ばれるいずれかの方法でフルカラー化された請求項1から13のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
  15. 到達透過率又は到達吸光度となるまでの応答速度が100msec以下である請求項1から14のいずれかに記載のエレクトロクロミック装置。
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