JP2001011582A - 加工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその薄鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその薄鋼板の製造方法

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JP2001011582A JP11183785A JP18378599A JP2001011582A JP 2001011582 A JP2001011582 A JP 2001011582A JP 11183785 A JP11183785 A JP 11183785A JP 18378599 A JP18378599 A JP 18378599A JP 2001011582 A JP2001011582 A JP 2001011582A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 海塩粒子の少ない大気環境、貯水槽等の温淡
水環境で耐銹性、耐穴開き性、耐腐食疲労性に優れ、成
形加工性、表面の美麗さも優れ、建材部品や貯水槽等に
広く使用できるフェライト系ステンレス鋼とその製造法
を提供する。 【解決手段】 重量%で、Cr:7〜30%,Al:0.005〜0.5%,T
i:0.01〜1.0%,Mg:0.0003〜0.005%, その他C,Si, 選択的
にMo,Ca,Nb,B等微量元素の組成からなり、且つ少なくと
もMgを含む非金属介在物面積占有率がO.1%以下であるフ
ェライト系ステンレス鋼。前記鋼の溶鋼中へのMg添加に
より鋳片の組織を微細化し、熱延中にTi硫化物又はTi炭
化物をMg介在物上に析出被覆させ、冷間加工すること
で、r値向上、縞模様(リジング)の低減と共に、介在
物を起点とした発銹を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工性および厳し
い腐食環境における耐食性の優れたフェライト系ステン
レス鋼、およびその薄鋼板、薄鋼帯の製造法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、フェライト系薄鋼板は厨房機器や
家電機器などに広く利用されており、このような用途に
おいては加工性とともに美麗さが要求されているが、冷
間圧延後の表面にはローピング、プレス成形後にはリジ
ングと称される縞模様が発生し、美麗さの低下が大きな
問題点であった。一方、例えば特開平4−17615号
公報に開示されているような、大径ロール(直径110
mm以上)圧延による加工性向上技術を適用しようとする
と、固溶しているC,N濃度が高く、冷延焼鈍後の集合
組織変化が低炭素冷延鋼板と同様にならないために加工
性の向上は得られなかった。そのため、加工性とロ−ピ
ングやリジングの発生が少ないことの各要請を有効に満
足させることが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは鋭
意検討の結果、溶鋼中にMgを添加して鋳片の組織を微
細化し、熱間圧延した鋼板を大径ロールにより冷間加工
することによりr値を向上せしめることを見出した。し
かし、Mg系介在物は溶解し易く発銹起点となることか
ら、耐食性の劣化が生じる場合があった。そこで、r値
向上、縞模様(リジング)の低減と共に耐食性を向上さ
せたステンレス鋼を製造することを課題とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するためになされたものであり、その要旨は以下の構成
からなる。 (1)重量%で、 C :0.01%以下、 Si:1.6%以下、 Mn:2.0%以下、 Cr:7〜30%、 Al:0.005〜0.5%、 Mg:0.0003〜0.05%、 N :0.05%以下、 P :0.05%以下、 S :0.06%以下、 Ti:0.01〜1.0% を含有し、 [S] ≧2[C]、かつ [Ti]≧[P]+2[O]+2[N]+[S]+4
[C]+[Mg] (但し、[ ]内元素は元素の濃度 (重量%) を示す)
を満足する組成であり、残部鉄および不可避的不純物の
組成よりなり、かつまたMgを含む非金属介在物の面積
占有率が0.1%以下であることを特徴とする、加工性
および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【0005】(2)介在物中のMg化合物がTi炭化物
あるいはTi硫化物で覆われており、さらに介在物の大
きさが30μm以下で、介在物間の距離が10μm以上
であることを特徴とする、前記(1)記載の加工性およ
び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 (3)重量%でさらに、 Mo:0.2〜3.0% を含有することを特徴とする前記(1)または(2)記
載の加工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレ
ス鋼。 (4)重量%でさらに、 Ca:0.0003〜0.0050% を含有することを特徴とする前記(1)乃至(3)のい
ずれか1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼。 (5)重量%でさらに、 Nb:0.05〜1.0% を含有することを特徴とする前記(1)乃至(4)のい
ずれか1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼。 (6)重量%でさらに、 B:0.0003〜0.005% を含有することを特徴とする前記(1)乃至(5)のい
ずれか1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼。
【0006】(7)重量%でさらに、 Ni:0.05%〜1.0%、 W :0.05〜0.5%、 V :0.05〜0.5%、 Zr:0.05〜1.0%、 Co:0.005〜0.5%、 Se:0.005〜0.5%、 Ta:0.005〜0.5%、 Re:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする前
記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の加工性およ
び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。(8)重
量%でさらに、 Cu:0.03〜1.0% を含有することを特徴とする前記(1)乃至(7)のい
ずれか1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼。
【0007】(9)重量%でさらに、 Y :0.005〜0.5%、 Sn:0.005〜0.1%、 La:0.005〜0.5%、 Hf:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする前
記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の加工性およ
び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 (10)重量%でさらに、 Pd:0.005〜0.5%、 Ag:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする前
記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の加工性およ
び耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 (11)重量%でさらに、 Ce:0.005〜0.5% を含有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれ
か1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト
系ステンレス鋼。
【0008】(12)連続鋳造法によって前記(1)乃
至(11)のいずれか1項に記載の成分を含有せしめ、
等軸晶率が50%以上の鋳片となし、前記鋳片を125
0℃以下で加熱して熱間圧延し、熱間圧延工程以降の鋼
帯製造工程において、Mg系介在物の周りにTi硫化物
あるいはTi炭化物を析出させることを特徴とする、加
工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス薄鋼
板の製造法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の内容を詳細に説明
する。まず、上記した鋼板の成分限定理由について述べ
る。本発明者らは、本発明に関わるステンレス薄鋼板の
耐食性が、合金元素のみではなく、非金属介在物の占有
面積率、さらに精度の高い指標として、介在物の大き
さ、介在物の分布状態、および介在物の組成に大きく支
配されることを見出した。以下実験に基づき詳細に説明
する。
【0010】供試材は、Cr:16wt%で、Mg,T
i,Al,Ca,C,S,N,O,P含有量を種々変化
させた薄鋼板で、表面をエメリ−研磨紙600番で湿式
研磨仕上げした切板を用いた。耐銹性試験は、人工海水
噴霧(35℃×4時間)−乾燥(60℃×2時間)−湿
潤(RH95%以上×2時間)を1サイクルとし、6サ
イクルで評価した。評価方法は、ステンレス協会で設定
されたレイティングナンバ−(SARN)を用いた。S
ARNは発銹面積率(銹の占める面積の割合)と相関が
あり、SARN=10は発銹面積率=0、SARN=0
は発銹面積率が50〜100%を示す。
【0011】介在物の最大径の測定は、JIS G 0
555の方法に従って採取した試験片の被検面(15mm
×20mm=300mm2 )を鏡面研磨し、介在物について
個別に測定した。連続した介在物全体を内包する最小円
(介在物の外接円)の直径を介在物径とし、被検面全体
における介在物径の最大値を介在物の最大径とした。介
在物間距離の測定は、鏡面研磨した被検面(15mm×2
0mm=300mm2 )の介在物における外接円の中心間距
離のうち、最小距離を測定した。耐食性については、亜
熱帯海浜大気環境を模擬した促進腐食試験である複合サ
イクル腐食試験により評価した。
【0012】図1に、非金属介在物の占有面積率と発銹
レイティングナンバ−との関係を示す。図1に示すよう
に、占有面積率が0.1%以下であれば良好な耐食性を
示す。好ましくは、0.02%以下であればさらに良好
な耐食性を示す。また図2に、介在物の最大径および介
在物間距離と発銹レイティングナンバ−との関係を示
す。図2に示すように、介在物の最大径が30μm以下
でかつ介在物間距離が10μm以上であれば、良好な耐
食性を示す。好ましくは、介在物の最大径が5μm以下
でかつ介在物間距離が10μm以上、あるいは介在物の
最大径が10μm以下でかつ介在物間距離が50μm以
上であれば、さらに良好な耐食性を示す。さらに好まし
くは、介在物の最大径が5μm以下でかつ介在物間距離
が50μm以上であれば、安定した良好な耐食性を示
す。
【0013】以上のように介在物の占有面積が小さくな
るほど耐食性が良好となる理由は、以下のように考えて
いる。鋼板表層に現れた介在物は、その組成によって
は、酸性〜中性水溶液に対する溶解度が大きく、発銹起
点となりやすい。この発銹起点となる介在物が小さけれ
ば、介在物が溶解してもピット内の再不動態化が容易で
局部腐食が進展し難い。そして介在物間の距離は、小さ
いと腐食したピット間で連結して腐食が拡大しやすいた
め、これを十分抑制できるだけの距離が必要となるので
ある。なお介在物占有面積率の下限は特に規定しない
が、本発明ではMgを添加することが前提であるため、
これによる介在物は必ず生成する。本発明に従ってMg
を添加した場合、通常は占有面積率で0.001%以上
となる。
【0014】さらに介在物の組成について、Mg酸化
物、Ca酸化物、Ca硫化物は中性〜酸性の溶液環境で
溶解するため、介在物自身の溶解を防止するには、これ
らの酸化物をTi硫化物あるいはTi炭化物により被覆
する構造が有効である。Ti硫化物あるいはTi炭化物
は、中性〜酸性の溶液環境においても溶けにくいため、
Mg酸化物、Ca酸化物、Ca硫化物の溶解を防ぐと考
えられる。
【0015】このようなTi硫化物あるいはTi炭化物
がMg酸化物、Ca酸化物、Ca硫化物に被覆した介在
物は、鋳片を1250℃以下で加熱して熱間圧延する
と、以降の工程において形成されやすい。すなわち加熱
温度を1250℃以下にすると、Mg酸化物、Ca酸化
物、Ca硫化物は固溶せずに介在物として残存する。一
方Ti硫化物、Ti炭化物を含むその他の介在物は一旦
固溶し、以後の工程で析出するが、このときすでにある
Mg酸化物、Ca酸化物、Ca硫化物を核として析出
し、上述のような2層構造ができる確率が増加するので
ある。
【0016】図3に、Mg酸化物を含む介在物のTi硫
化物、あるいはTi炭化物による、被覆率と介在物の断
面溶解面積率の関係を示す。被覆率は、鏡面研磨した試
料の被検面上の介在物断面について、Mg酸化物の周囲
長さに対する、Ti酸化物あるいはTi窒化物のMg酸
化物との付着部分、すなわちMg酸化物の被覆部分の長
さの百分率と定義した。
【0017】介在物の断面溶解面積率は、介在物断面を
露出した鏡面研磨試料を試験液浸漬前後でSEM観察お
よびEPMA元素分析し、介在物面積を比較し、次の式
で定義した。 断面溶解面積率(%)=100−(試験溶液浸漬後の介
在物投影面積)/(試験溶液浸漬前の介在物投影面積)
【0018】試験条件としては、50℃の5%NaCl
水溶液中に24時間浸漬した。図3に示すように、被覆
率50%以上で介在物が解け難くなるため、被覆率は5
0%以上が望ましい。耐食性の向上を図るためには、よ
り好ましくは被覆率70%以上であり、さらに好ましく
は90%以上である。
【0019】次に、成分の限定理由について説明する。
成分の含有量は重量%である。 C:0.01%以下 Cは、フェライト系ステンレス鋼においては固溶限が小
さく、主としてCr炭化物として析出し粒界腐食を引き
起こすが、強度の観点からある程度の含有量が必要であ
るため、0.01%以下に制限する。
【0020】Si:1.6%以下 Siは鋼表面に安定なSiO2 の保護皮膜を形成し、耐
酸化性を高めるために好ましくは0.1%以上含有させ
る。一方過剰に添加すると靱性を低下させ加工性を阻害
するため1.6%以下とした。好ましくは0.5%以下
が良い。
【0021】Mn:2.0%以下 Mnは鋼の脱酸および脱硫のために適量、好ましくは
0.1%以上を添加するが、過度に添加すると耐酸化性
を損なうことから、上限を2.0%とした。
【0022】Cr:7〜30% Crは耐食性および耐高温腐食性を確保する上で不可欠
な成分であり、7%以上は必要であるが、30%を超え
るとその効果が飽和する上、加工性および靭性の低下を
来たすことになるため、7〜30%に限定する。好まし
くは11〜25%が良い。さらに好ましくは11〜20
%が良い。
【0023】Al:0.005〜0.5% AlはNと結合してAlNを形成し、母相中のNを低減
して靭性および強度を高めるだけでは無く脱酸剤として
も重要である。しかし含有量が0.005%未満では効
果が無く、0.5%を超えると製品のリジングが顕著と
なることから、0.005〜0.5%の範囲とした。好
ましくは0.01〜0.2%である。
【0024】Mg:0.0003〜0.05% Mgは本発明では特に重要な役割を担う成分である。M
gはTiやAlより脱酸能力が強い元素であり、Mg酸
化物となって微細分散させることにより鋳片の凝固核と
なり、鋳片組織中央部を微細な等軸晶粒とすることがで
きる。微細な等軸晶粒組織のスラブでは熱間圧延中に再
結晶が促進され、冷延後の伸びやr値が向上し、さらに
冷延後の縞模様(ロ−ピング)やプレス加工後の縞模様
(リジング)が大きく低減するなど、加工性および表面
性状が向上する。ただしMg酸化物は介在物となって鋼
中に残存する。介在物中のMg酸化物は酸性溶液中で溶
解する可能性があるため、環境によっては使用中におい
て発銹起点となる。Mg酸化物からの発銹を防ぐには、
Mg添加量を最適化すること、および介在物の大きさを
抑制しさらに発銹起点の連結拡大を防止するために、特
定の分散状態とすることが有効であることを見出した。
加工性向上のために、Mgは0.0003%以上含有す
ることが必要である。但し、0.05%を超えると耐食
性が劣化するので、上限を0.05%とした。
【0025】N:0.05%以下 Nについては、固溶Nを少なくすることによって靭性を
向上させる成分であり、特にN含有量が0.05%を超
えると靭性を著しく損なうことから、0.05%以下に
抑制する。好ましくは0.02%以下が良い。
【0026】P:0.05%以下 Pは熱間加工性の点から少ないことが望ましく、0.0
5%以下、好ましくは0.03%以下が良い。
【0027】S:0.06%以下 Sは、熱間加工性および耐食性の点から少ない方が望ま
しく、0.06%以下にするが、Mg酸化物を被覆する
ためのTiS,Ti4 2 2 生成条件としてC量の2
倍以上必要である。さらに好ましいS含有量は0.03
〜0.06%である。
【0028】Ti:0.01〜1.0% Tiを添加する大きな理由は、Ti系析出物を利用し
て、再結晶の促進、加工性の向上、耐食性の向上を図る
ことにある。本発明においては、Ti硫化物あるいはT
i炭化物をMg化合物に被覆することにより、Mg化合
物の溶解を抑制することで製品表面の発銹を抑えること
にある。すなわち、溶鋼から薄板製品までの加工熱処理
中にTiN,TiS,Ti4 2 2 ,FeTiP,T
iC等を析出させ、このうち溶鋼段階に於いてTiNを
析出させ、熱間圧延以降の段階においてTiS,Ti4
2 2 をMg酸化物の回りに析出成長させ被覆するの
である。これらの析出被覆条件は、S濃度、Ti濃度を
他の元素濃度の関数として規定し、さらに熱間圧延のス
ラブ加熱温度を規定することによって達成できることを
見出した。
【0029】すなわち、固溶状態からTi硫化物がTi
炭化物より優先的に析出する条件として、[S]≧2
[C]、さらにTiのリン化物、酸化物、窒化物、硫化
物、炭化物が析出し、さらにMg化合物をTiが被覆す
るために必要なTi量として、[Ti]≧[P]+2
[O]+2[N]+[S]+4[C]+[Mg]、さら
にスラブ加熱において1250℃以下に加熱すればMg
介在物、Ti酸化物、Ti窒化物以外は再固溶し、後工
程の加工冷却中に、TiS,Ti4 2 2 が、既に存
在する核すなわちMgを含む介在物上に析出する。ただ
しこの場合、1250℃以下でTiが析出する条件とし
ては、Ti量は0.01%以上である。
【0030】また、析出に使われなかった固溶TiはC
rとの共存により不動態皮膜を強化する。さらにMoと
の共存ではより一層不動態皮膜が強化され、また不動態
皮膜が破壊されても再不動態化が促進されるため、塩化
物イオンの多い環境においても高い耐食性を発揮するこ
とができる。しかし、1.0%を超えると熱間加工性を
劣化させるため、Ti量の上限を1.0%とした。
【0031】以上が本発明における基本成分であるが、
必要に応じ以下の成分を更に添加することができる。 Mo:0.2〜3.0% Moは加工性の向上に大きな効果のある成分である。加
工性の指標であるランクフォ−ド(r)値は、Moを添
加し、大径ロ−ルで冷間圧延し、焼鈍することによって
向上する。また、厳しい中性塩化物腐食環境における耐
食性を飛躍的に向上させる。その理由は、不動態皮膜を
強化し、介在物溶解後のピット底面の再不動態化を促進
することによって発銹を防止し、腐食進展を防止するか
らである。さらに本発明の他の選択元素との複合添加に
より、さらに耐食性が向上する。これら加工性および耐
食性の効果は、Moが0.2%未満では効果がなく、
3.0%を超えるとその効果は飽和する。したがって下
限0.2%、上限3.0%とした。
【0032】Ca:0.0003〜0.0050% Caは低硫黄鋼中でAlと共存してOを固定し、局部腐
食の発生起点となりうるMnS系の介在物の生成を抑制
し、耐食性を改善する。但しCa硫化物、Ca酸化物は
酸性溶液中で溶解し易いため、Caを含む介在物は発銹
の起点となり得る。発銹を防ぐためには、Mgと同様に
含有量の低減および介在物の大きさを抑制し、さらにま
た発銹起点の連結拡大を防止するために、特定の分散状
態とすることが有効である。加工性向上のためにCaは
0.0003%以上含有することが必要である。0.0
05%を超えると耐食性が劣化するので、上限を0.0
05%とした。
【0033】Nb:0.05〜1.0% NbはCまたはNを固定し、ステンレス鋼の耐食性の劣
化を防ぐ。耐食性を向上させるため0.05%以上、
1.0%以下添加される。0.05%未満では効果がな
く、1.0%を超えると熱間加工性を劣化させる。
【0034】B:0.0003〜0.005% Bは粒界強度を増大する効果があり、成形加工時の割れ
いわゆる2次加工割れの抵抗力を増大するため、0.0
003%以上の添加が有効である。多すぎると加工時に
脆化割れを引き起こすため、上限を0.005%とし
た。
【0035】Ni:0.1〜1.0% Niは、高い耐食性を要求される環境ではCrその他元
素と共存して用いられる。局部腐食進展抑制に効果があ
るが、0.1%未満では効果が無く、1.0%を超える
とその効果は飽和し、また経済的にも高価となる。
【0036】W:0.05〜0.5% Wの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食性
を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.05%
未満では効果がない。
【0037】V:0.05〜0.5% Vの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食性
を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.05%
未満では効果がない。
【0038】Zr:0.05〜1.0% Zrの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食
性を向上させるので、必要に応じて1.0%以下添加す
る。1.0%を超えるとその効果は飽和し、0.05%
未満では効果がない。
【0039】Co:0.005〜0.5% Coの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食
性を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.005
%未満では効果がない。
【0040】Se:0.005〜0.5% Seの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食
性を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.005
%未満では効果がない。
【0041】Ta:0.005〜0.5% Taの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食
性を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.005
%未満では効果がない。
【0042】Re:0.005〜0.5% Reの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、耐局部腐食
性を向上させるので、必要に応じて0.5%以下添加す
る。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.005
%未満では効果がない。
【0043】Cu:0.03〜1.0% CuはCrをベースとした成分系、さらにはNiその他
元素と共存の形で添加され、酸性環境での耐食性を向上
させる元素である。0.03%以上で共存効果が著し
く、また1.0%を超えると耐食性は飽和し、かつ熱間
加工性を劣化させる。
【0044】Y:0.005〜0.5% Yの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、特に耐粒界腐
食性、耐孔食性を向上させるので、必要に応じて0.5
%以下添加する。0.5%を超えるとその効果は飽和
し、0.005%未満では効果がない。
【0045】Sn:0.005〜0.1% Snは耐粒界腐食性を向上させるので、必要に応じて
0.005〜0.1%添加する。0.1%を超えて添加
すると凝固あるいは熱延時の割れ発生の原因となり得る
ので、0.1%以下とする。0.005%未満では効果
がない。
【0046】La:0.005〜0.5% Laの共存効果は、ステンレス鋼の耐食性、特に耐粒界
腐食性、耐孔食性を向上させるので、必要に応じて0.
5%以下添加する。0.5%を超えるとその効果は飽和
し、0.005%未満では効果がない。
【0047】Hf:0.005〜0.5% Hfの共存効果は炭化物生成元素であり、ステンレス鋼
の耐粒界腐食性を向上させるので、必要に応じて0.5
%以下添加する。0.5%を超えるとその効果は飽和
し、0.005%未満では効果がない。
【0048】Pd:0.005〜0.5% Pdの共存効果は、水素過電圧が小さく貴な金属であ
り、ステンレス鋼の不動態化を促進し耐食性を向上させ
るので、必要に応じて0.5%以下添加する。0.5%
を超えるとその効果は飽和し、経済的でない。0.00
5%未満では効果がない。
【0049】Ag:0.005〜0.5% Agの共存効果は、貴な金属であり、ステンレス鋼の不
動態化を促進し耐食性を向上させるので、必要に応じて
0.5%以下添加する。0.5%を超えるとその効果は
飽和し、経済的でない。0.005%未満では効果がな
い。
【0050】Ce:0.005〜0.5% Ceは低硫黄鋼中でAlと共存してOを固定し、耐食性
を改善する効果があるので、必要に応じて0.5%以下
添加する。0.5%を超えるとその効果は飽和し、0.
005%未満では効果がない。
【0051】上記の鋼成分組成および介在物の鋼板は、
Mgを添加することにより連続鋳造後の鋳片において断
面組織が等軸晶率50%以上を占め、介在物が微細分散
されたスラブを用いることにより、さらに大きな効果が
得られる。以後の工程としては、熱間圧延工程あるいは
さらに焼鈍などの熱処理を施した後、大径ロ−ル(直径
110mm以上)で冷間圧延し、焼鈍する。大径ロ−ルの
冷間圧延はr(ランクフォ−ド)値を向上させる。
【0052】焼鈍作業は、冷延されて硬化したステンレ
ス鋼板を軟質化させるのが第一目的であり、組織および
軟質度を安定させるためには鋼板成分に基づく再結晶温
度よりも高い温度で焼鈍することが必要である。また高
温に晒される結果生成する酸化膜の特性を制御すること
により、後続の酸洗において好適な表面状態を確保する
ことも大きな目的である。この様な目的のために、焼鈍
の温度および雰囲気のガス組成、露点が適宜調整され
る。
【0053】
【実施例】表1に示した本発明鋼および比較鋼につい
て、溶製、加熱、熱延の後に直径が500mmの冷延ロ−
ルで冷間圧延し、表中に記載した条件で軟化焼鈍および
酸洗した後、耐食性および加工性を評価した。耐食性評
価方法は、前記説明中の記載と同じである。評価結果を
表2に示す。表2から明らかなように、本発明法は耐食
性、加工性ともに優れていることが分かる。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明より得られ
たフェライト系ステンレス鋼は、加工性および耐食性に
優れ、電気器具、ガス器具、厨房用品など加工性、耐食
性、表面の美麗さを要求される設備用素材として使用で
き、優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】発銹レイティングナンバ−(SARN)からみ
た、好適な非金属介在物の面積占有率の範囲を示す図で
ある。
【図2】発銹レイティングナンバ−(SARN)からみ
た、好適な介在物最大径、介在物間距離の範囲を示す図
である。
【図3】介在物の溶解を防止するのに効果的な、Mg酸
化物へのTi酸化物あるいはTi窒化物による被覆率の
範囲を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 明彦 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 槌永 雅光 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA08 AA09 AA12 AA13 AA14 AA16 AA19 AA20 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA30 AA31 AA32 AA33 AA35 AA36 AA37 AA40 BA01 CA02 CA03 CH05 4K037 EA00 EA01 EA02 EA04 EA09 EA10 EA12 EA13 EA14 EA15 EA17 EA18 EA19 EA20 EA23 EA25 EA27 EA28 EA29 EA31 EA32 EA33 EA36 EB03 EB07 EB08 EB09 EB13 FA02 FA03 FJ02 FJ06 HA05 JA06

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01%以下、 Si:1.6%以下、 Mn:2.0%以下、 Cr:7〜30%、 Al:0.005〜0.5%、 Mg:0.0003〜0.05%、 N :0.05%以下、 P :0.05%以下、 S :0.06%以下、 Ti:0.01〜1.0% を含有し、 [S] ≧2[C]、かつ [Ti]≧[P]+2[O]+2[N]+[S]+4
    [C]+[Mg] (但し、[ ]内元素は元素の濃度 (重量%) を示す)
    を満足する組成であり、残部鉄および不可避的不純物の
    組成よりなり、かつまたMgを含む非金属介在物の面積
    占有率が0.1%以下であることを特徴とする、加工性
    および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 介在物中のMg化合物がTi炭化物ある
    いはTi硫化物で覆われており、さらに介在物の大きさ
    が30μm以下で、介在物間の距離が10μm以上であ
    ることを特徴とする、請求項1記載の加工性および耐食
    性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 重量%でさらに、 Mo:0.2〜3.0% を含有することを特徴とする請求項1または2記載の加
    工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】 重量%でさらに、 Ca:0.0003〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか
    1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト系
    ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】 重量%でさらに、 Nb:0.05〜1.0% を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト系
    ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】 重量%でさらに、 B:0.0003〜0.005% を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか
    1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト系
    ステンレス鋼。
  7. 【請求項7】 重量%でさらに、 Ni:0.05%〜1.0%、 W :0.05〜0.5%、 V :0.05〜0.5%、 Zr:0.05〜1.0%、 Co:0.005〜0.5%、 Se:0.005〜0.5%、 Ta:0.005〜0.5%、 Re:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする請
    求項1乃至6のいずれか1項に記載の加工性および耐食
    性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  8. 【請求項8】 重量%でさらに、 Cu:0.03〜1.0% を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか
    1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト系
    ステンレス鋼。
  9. 【請求項9】 重量%でさらに、 Y :0.005〜0.5%、 Sn:0.005〜0.1%、 La:0.005〜0.5%、 Hf:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする請
    求項1乃至8のいずれか1項に記載の加工性および耐食
    性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  10. 【請求項10】 重量%でさらに、 Pd:0.005〜0.5%、 Ag:0.005〜0.5% の群より少なくとも1種を含有することを特徴とする請
    求項1乃至9のいずれか1項に記載の加工性および耐食
    性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  11. 【請求項11】 重量%でさらに、 Ce:0.005〜0.5% を含有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれ
    か1項に記載の加工性および耐食性に優れたフェライト
    系ステンレス鋼。
  12. 【請求項12】 連続鋳造法によって請求項1〜11の
    いずれか1項に記載の成分を含有せしめ、等軸晶率が5
    0%以上の鋳片となし、前記鋳片を1250℃以下で加
    熱して熱間圧延し、熱間圧延工程以降の鋼帯製造工程に
    おいて、Mg系介在物の周りにTi硫化物あるいはTi
    炭化物を析出させることを特徴とする、加工性および耐
    食性に優れたフェライト系ステンレス薄鋼板の製造法。
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