JP2001003750A - ファン装置の騒音低減機構 - Google Patents

ファン装置の騒音低減機構

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 衝撃音および気流音を共に効果的に消音し
て、騒音を確実に低減できるファン装置の騒音低減機構
を提供すること。 【解決手段】 ファン4の先端部側に対向するファンシ
ュラウド20の内周面全域に、従来のパンチングメタル
を用いることなく、多孔質の吸音材40を対抗空間に露
出した状態で貼付した。従って、ファン4とファンシュ
ラウド20との間の強い旋回流に起因する気流音を吸音
材40で吸音できるうえ、衝撃音も生じ難くできる。以
上により、衝撃音および気流音を共に効果的に消音で
き、騒音を確実に低減できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ファン装置の騒音
低減機構に係り、例えば、パワーショベル等の建設機械
を含む特殊車両やその他の車両のエンジン冷却システ
ム、あるいは、各種の産業用冷却システムに用いられる
ファン装置の騒音低減機構に関する。
【0002】
【背景技術】従来より、車両等のエンジン冷却システム
として、エンジンおよびラジエータ間で冷却液を循環さ
せるものが知られている。このような冷却システムで
は、ラジエータに近接してファンを取り付け、ファンに
よって吸引される冷却空気とラジエータ内の冷却液との
間で熱交換を行い、この熱交換後の冷却液でエンジンを
冷却している。この際、ファンの周囲にはファンシュラ
ウドが設けられ、このファンシュラウドでラジエータを
通過する冷却空気の流れを整えることにより、ラジエー
タでの熱交換を良好に行えるようにし、エンジンの冷却
効率を向上させている。
【0003】ところで、ファンの先端部とファンシュラ
ウドとの間の僅かな隙間では、ファンの旋回に伴って強
い旋回流が生じ、この旋回流によって気流音が生じる。
このため、例えば、実開昭56−41119号公報、実
開昭57−126524号公報、実開昭64−1322
9号公報、および実開平2−39956号公報など
(含、各公報に係る当該出願のマイクロフィルム)に
は、その気流音を低減する目的で、ファンシュラウドに
消音手段を施すことが開示されている。
【0004】これら公報等に記載の消音手段はいずれ
も、ファンの先端部側に対向するファンシュラウドの対
向面を、多数の貫通孔が穿設された硬質のパンチングメ
タル等で形成し、このパンチングメタルのさらに外側に
設けられた吸音材やエネルギ減衰空間で気流音を低減す
るものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記各公報等
に記載の消音手段によれば、強い旋回流が生じる部分に
パンチングメタルを用いているので、パンチングメタル
の貫通孔による段差部分に冷却空気がぶつかると、その
衝撃で特に高周波の衝撃音が発生する。従って、そのよ
うな消音手段では、旋回流による気流音は低減するが、
新たに衝撃音が生じてしまい、全体の騒音を効果的に低
減できないという問題がある。
【0006】本発明の目的は、衝撃音および旋回流によ
る気流音を共に効果的に消音して、騒音を確実に低減で
きるファン装置の騒音低減機構を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のファン装置の騒
音低減機構は、ファンの先端側に近接対向する部材の材
質や、ファン(ファンシュラウド)周辺の構造を変える
ことで、前記目的を達成しようとするものである。
【0008】具体的には、請求項1の発明は、回転駆動
されるファンと、このファンの先端部回転軌跡から所定
間隔を離して設けられたファンシュラウドと、このファ
ンシュラウドを支持するシュラウド支持部材と、前記フ
ァンシュラウドの少なくとも一部に取り付けられるかま
たは当該一部を形成する形で、かつファン先端部に直面
させて設けられた多孔質吸音材とを有しているファン装
置の騒音低減機構である。ここで、本明細書において、
「多孔質」とは材質が多孔のもの、すなわち、スポンジ
状のものを言い、この点で多数の孔がプレス加工等によ
って穿設されるパンチングメタルとは異なる。
【0009】本発明では、ファンシュラウドのファン先
端部側に対向して直面する面(内面)、すなわち、強い
旋回流が生じる部分に多孔質吸音材を貼付等により取り
付けたり、または、ファンシュラウドのファン先端部側
に対向する面自身を多孔質吸音材で形成するので、多孔
質吸音材が有する吸音性により、旋回流による気流音が
吸音される。また、従来のようなパンチングメタルを用
いないから、冷却空気が硬質の段差部分にぶつかること
がなく、衝撃音が生じ難い。以上により、衝撃音および
気流音が共に効果的に消音され、ファンの先端部分とフ
ァンシュラウドとの間での騒音が確実に低減する。
【0010】請求項2の発明は、請求項1に記載のファ
ン装置の騒音低減機構において、前記ファンの上流また
は下流に設けられるラジエータと、このラジエータおよ
びファンシュラウド間を気密に接続するラジエータフー
ドおよび端板とを有しているファン装置の騒音低減機構
である。この発明によれば、ラジエータフードおよび端
板で囲まれる気密な空間は、騒音が有するエネルギ(圧
力波)の減衰空間として作用するので、消音性能が向上
する。さらに、ラジエータフードを設けることで、冷却
空気の流れがスムーズになり、ラジエータでの熱交換が
より良好に行われる。
【0011】請求項3の発明は、請求項2に記載のファ
ン装置の騒音低減機構において、前記ラジエータフード
の内面および/または前記端板の内面に、多孔質吸音材
を取り付けたファン装置の騒音低減機構である。この発
明によれば、ラジエータフードの内面や単板の内面にも
多孔質吸音材を取り付けるので、騒音がさらに低減す
る。
【0012】請求項4の発明は、請求項1ないし請求項
3のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記多孔質吸音材が取り付けられた前記ファンシュ
ラウドに多数の孔を形成したファン装置の騒音低減機構
である。この発明によれば、ファンシュラウドに多数の
孔を形成することで、特に低周波の騒音が低減する。
【0013】請求項5の発明は、請求項1ないし請求項
4のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記ファンシュラウドおよび/または前記多孔質吸
音材をベルマウス状としたファン装置の騒音低減機構で
ある。この発明によれば、ファンシュラウドや多孔質吸
音材をベルマウス状にすることにより、ファンの先端側
とファンシュラウドまたは多孔質吸音材との間での冷却
空気の流れがスムーズになるので、発生する気流音が小
さくなり、騒音がさらに低減する。
【0014】請求項6の発明は、請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記多孔質吸音材には、前記ファン先端部と対向す
る表面側を覆う被覆部が形成されているファン装置の騒
音低減機構である。この発明によれば、多孔質吸音材の
表面側を被覆部で覆うので、表面のみを単に薬品等で撥
水処理する場合に比して水分の吸水等がより確実に防止
されるうえ、ファンで弾き飛ばされた砂塵等が多孔質吸
音材での多孔質部分に直に衝突する心配がなくなるの
で、多孔質吸音材の劣化や欠損が防止されて耐候性、耐
久性が向上する。また、被覆部を形成することで多孔質
吸音材の腰が強くなり、撓み難くなるから、多孔質吸音
材を例えば貼付等によってファンシュラウドに取り付け
る際の取扱性が良好になり、ファンシュラウドの製作が
容易に行える。
【0015】請求項7の発明は、請求項1ないし請求項
6のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記ファンシュラウドには、前記多孔質吸音材にお
ける気流方向の上流側および下流側の少なくとも一端を
保護する保護部が設けられているファン装置の騒音低減
機構である。多孔質吸音材がファンシュラウドに取り付
けられている場合、多孔質吸音材の上流側や下流側の端
部は、ファンで飛ばされる砂塵の衝突によってファンシ
ュラウドから容易に剥離するおそれがあるが、この発明
では、砂塵の衝突が保護部によって回避されるため、多
孔質吸音材の剥離が有効に防止される。
【0016】請求項8の発明は、請求項1ないし請求項
7のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記ファンシュラウドには、前記多孔質吸音材を部
分的に係止する係止手段が設けられているファン装置の
騒音低減機構である。この発明によれば、係止手段によ
って多孔質吸音材の取付状態が維持されるから、ファン
シュラウドからの多孔質吸音材の脱落が防止され、信頼
性も向上する。
【0017】請求項9の発明は、請求項1ないし請求項
8のいずれかに記載のファン装置の騒音低減機構におい
て、前記ファンシュラウドを、前記気流方向の上流側お
よび下流側にそれぞれ設けられてベルマウス状に湾曲し
た開口部と、前記ファンの回転軸の軸線方向に対して平
行でかつ前記開口部間に設けられた平行部とを備えて構
成し、前記多孔質吸音材を前記ファンシュラウドの平行
部に取り付けたファン装置の騒音低減機構である。この
発明によれば、ファンシュラウドの平行部によって内径
が等しい円筒状部分が形成されるから、多孔質吸音材を
この円筒状部分に取り付ければよい。このため、多孔質
吸音材を湾曲した開口部に押し当てる等して取り付ける
必用がなく、取付作業が容易になる。
【0018】請求項10の発明は、請求項9に記載のフ
ァン装置の騒音低減機構において、前記多孔質吸音材
を、前記気流方向の上流側および下流側に設けられたベ
ルマウス状の開口部の一部まで含んで、滑らかなシュラ
ウド状に形成したファン装置の騒音低減機構である。こ
の発明によれば、ファンシュラウドのベルマウス状とさ
れた開口部の一部が多孔質吸音材によっても形成される
から、多孔質吸音材で形成した分だけファンシュラウド
自身で形成する部分を短くしても、多孔質吸音材を含め
たファンシュラウド全体のベルマウス形状、および多孔
質吸音材の幅寸法(軸線方向と平行な方向の幅寸法)が
ほぼ維持される。従って、吸音性能を確実に維持しつ
つ、ファンシュラウドによる開口部を短くした分だけ、
このファンシュラウドのコンパクト化が図れる。
【0019】請求項11の発明は、回転駆動されるファ
ンと、このファンの先端部回転軌跡から所定間隔を離し
て設けられたファンシュラウドと、前記ファンの上流ま
たは下流に設けられたラジエータと、このラジエータお
よびファンシュラウド間を気密に接続するラジエータフ
ードおよび端板と、前記ラジエータフード、前記端板、
および前記ファンシュラウドによって囲まれた空間を準
密閉状態として構成された消音室とを有し、この消音室
と前記ラジエータフード内とを当該消音室の周方向に沿
って複数設けられた共鳴管で連通させたファン装置の騒
音低減機構である。
【0020】この発明によれば、ファンシュラウドに取
り付けられた多孔質吸音材によって気流音および衝撃音
からなる騒音が低減され、また、準密閉状態の消音室を
形成することで騒音がより低減する。加えて、本発明で
は、消音室とラジエータフード内とを共鳴管で連通させ
るので、共鳴管の径寸法、長さ寸法、および消音室の容
積等を適宜設定して共鳴管での共振周波数を決めれば、
この共振周波数と同じ特定周波数の騒音が共鳴管で共鳴
し、騒音エネルギが良好に減衰される。
【0021】
【発明の実施の形態】〔第1実施形態〕以下、本発明の
第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1
実施形態に係るファン装置の騒音低減機構を、パワーシ
ョベル等の建設機械のエンジン冷却システム1に適用し
た例を模式的に示す全体図、図2は、前記騒音低減機構
の要部を示す拡大図である。
【0022】エンジン冷却システム1は、エンジン2お
よびラジエータ3間で冷却液を循環させ、ラジエータ3
で熱交換された冷却液によってエンジン2を冷却するも
のであり、エンジン2とラジエータ3との間には、熱交
換用の冷却空気をエンジンルーム5の外部から吸引する
ためのファン4が配置され、このファン4がエンジン2
のクランクシャフトよりプーリーおよびファンベルトで
伝達される出力で回転駆動される。
【0023】また、本実施形態では、ラジエータ3のさ
らに上流側(冷却空気の流れ方向における上流側)にオ
イルクーラ6(図1参照)が配置され、エンジン2のオ
イルパン(不図示)およびオイルクーラ6間でエンジン
オイルを循環させ、オイルクーラ6で熱交換されたエン
ジンオイルでもエンジン2を冷却および潤滑している。
但し、このようなオイルクーラ6は必要に応じて設けら
れればよい。
【0024】ラジエータ3の下流側には、それぞれ板金
製のラジエータフード10と、ファンシュラウド20
と、カバーフード30とが設けられ、このカバーフード
30は、前述したプーリーやファンベルトを覆うエンジ
ンカバー31およびエンジンカバー31の上方に設けら
れた半円台状の外周カバー32から構成されている。そ
して、これらの部材で冷却空気の流路を形成している。
【0025】ラジエータフード10は、下流側の端部に
設けられた外フランジ12を有する四角筒状または一部
円筒状を含む形状とされ、上流側でラジエータ3側にボ
ルトおよびナット等で固定されている。外フランジ12
には、平板状の鉛直な端板13がボルトおよびナットに
よって固定され、端板13の中央に設けられた大きな開
口部分には、円筒形状の前記ファンシュラウド20が溶
接等によって固定されている。すなわち、この端板13
は、ラジエータフード10とファンシュラウド20との
隙間を塞ぐとともに、ファンシュラウド20を支持する
シュラウド支持部材を兼ねている。
【0026】ファンシュラウド20は、ファン4の先端
部側の回転軌跡から所定間隔を離して設けられていると
ともに、端板13を略境にして上流側に向けてベルマウ
ス状に開口した上流側開口部21と、下流側に向けてベ
ルマウス状に開口した下流側開口部22とからなり、各
開口部21,22をベルマウス形状とすることで、冷却
空気がファン4の先端側とファンシュラウド20との間
でスムーズに流れるように構成されている。
【0027】図2にも拡大して示すように、ファンシュ
ラウド20の内周面には、例えば、発泡ウレタン樹脂、
あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合
成樹脂からなる多孔質(ポーラス状)の吸音材40が、
パンチングメタルを用いることなく略全面にわたって露
出した状態で、かつファンシュラウド20のベルマウス
形状を維持するように貼付され、ファン4の先端側とフ
ァンシュラウド20との間で生じる気流音や衝撃音を低
減している。すなわち、本実施形態では、この吸音材4
0が本発明の騒音低減機構としての大きな特徴の一つに
なっている。この吸音材40の表面は、薬品による化学
処理等されて撥水性を有し、冷却空気に混じって吸引さ
れる雨水などから表面を保護することで、吸音材40の
耐候性を向上させている。
【0028】このようなファンシュラウド20におい
て、上流側開口部21は、下流側開口部22よりも大き
く延出してラジエータフード10内に開口しており、上
流側開口部21の上流側の周縁部分が、周方向の四箇所
(正面から見た場合の上下左右の四箇所)で四角筒状ま
たは一部円筒状を含む形状とされたラジエータフード1
0の内面に近接している。この結果、ラジエータフード
10、端板13、およびファンシュラウド20の上流側
開口部21とで囲まれた空間は、隙間51(図2参照)
を介してラジエータフード10内と連通するだけであ
り、ほぼ密閉された消音室50になっている。すなわ
ち、本実施形態では、この消音室50も本発明の騒音低
減機構としての大きな特徴の一つになっている。
【0029】一方、カバーフード30(図1参照)を構
成するエンジンカバー31の外面、および外周カバー3
2の内面にも、ファンシュラウド20と同様に吸音材4
1,42が貼付され、ファンシュラウド20を通過した
冷却空気の気流音を低減している。なお、このようなカ
バーフード30は、本発明に必須の構成ではなく、必要
に応じて設けられればよい。
【0030】このような本実施形態においては、エンジ
ン2でファン4を駆動し、図1中に矢印で示すように、
エンジンルーム5の外部から冷却空気を吸引する。吸引
された冷却空気は、オイルクーラ6を通過することでエ
ンジンオイルとの間で熱交換を行った後、ラジエータ3
を通過して冷却液との間で熱交換を行い、この後、順次
ラジエータフード10、ファンシュラウド20、カバー
フード30を通ってエンジン2側に送られ、最終的にエ
ンジンルーム5外に排出される。この際、ラジエータフ
ード10内では消音室50によって、また、ファンシュ
ラウド20およびカバーフード30内では吸音材40〜
42により、それぞれファン4の旋回に伴う騒音が低減
するようになっている。
【0031】このような本実施形態によれば、以下のよ
うな効果がある。 1)ファン4の先端部側に対向するファンシュラウド2
0の内周面全域には、多孔質の吸音材40が対抗空間に
露出した状態で貼付されているので、ファン4とファン
シュラウド20との間の強い旋回流に起因する気流音を
吸音材40で吸音できる。
【0032】2)従来のようなパンチングメタルを用い
ないから、冷却空気が硬質の段差部分にぶつかることが
なく、衝撃音を生じ難くできる。
【0033】3)以上の1)、2)により、ファン4の
旋回に伴う衝撃音および気流音を共に効果的に消音で
き、ファン4の先端部分とファンシュラウド20との間
での騒音を確実に低減できる。
【0034】4)ファンシュラウド20の上流側開口部
21は、ラジエータフード10の内面に近接するように
延出されており、この上流側開口部21、ラジエータフ
ード10、および端板13で囲まれた空間が、小さな隙
間51を介してラジエータフード10内と連通した密閉
度合いの大きい消音室50になっているので、この消音
室50を消音効果の高いものにできるうえ、ファン4か
ら上流側に伝搬する騒音のエネルギ(圧力波)を消音室
50内で大幅に減衰でき、騒音をより確実に低減でき
る。
【0035】5)ファンシュラウド20は、上流側およ
び下流側の両方に対してベルマウス状に開口しているた
め、ファン4の先端部側とファンシュラウド20との間
を冷却空気がスムーズに流れるようになり、騒音の消音
効果を大きくできる。
【0036】6)ファン4の下流側に配置されたカバー
フード30にも、冷却空気の流路に露出するように吸音
材41,42が貼付されているから、ファン4から下流
側に伝搬する騒音のエネルギも吸音材41,42で吸音
でき、この点からも騒音を低減できる。
【0037】7)吸音材40,41,42の表面には、
化学処理等によって撥水性が付与されているから、冷却
空気に混じって吸引された雨水等の水分で吸音材40,
41,42が著しく劣化する心配がなく、吸音材40,
41,42の耐候性を向上させることができる。
【0038】8)ラジエータ3とファンシュラウド20
との間にラジエータフード10が配置されていることに
より、冷却空気がスムーズに吸引されるので、オイルク
ーラ6およびラジエータ3での熱交換を良好にでき、エ
ンジン2の冷却効率を向上させることができる。また、
カバーフード30を設けることで冷却空気がスムーズに
エンジン2側に送られるから、これに伴って冷却空気の
吸引もさらに効率よく行える。
【0039】以下には、本発明の他の実施形態を図面に
基づいて説明する。なお、以下において、前記第1実施
形態と同一もしくは相当構成部分には、同一もしくは相
当符号を用い、説明を省略もしくは簡略化する。また、
図示しない部分も、第1実施形態と同じ構成であり、そ
の説明を省略する。
【0040】〔第2実施形態〕図3には、本発明の第2
実施形態に係るファン装置の騒音低減機構の要部が模式
的に示されている。本実施形態では、ファンシュラウド
20に多数の孔23を穿設した点、およびファンシュラ
ウド20の上流側開口部21をよりラジエータフード1
0の内面に近づけ、消音室50の密閉度を向上させた点
が第1実施形態とは異なる。この実施形態によれば、第
1実施形態の1)〜8)の効果に加えて以下の効果があ
る。 9)ファンシュラウド20には多数の孔23が穿設され
ているため、特に上流側開口部21では、ファン4の旋
回時に生じる騒音のうち、吸音材40内を伝搬し易い低
周波の騒音を低減できる。これは、そのような低周波の
騒音がファンシュラウド20に到達した時点で、孔23
およびこれと連通した消音室50でより有効に消音され
るからである。
【0041】〔第3実施形態〕図4には、本発明の第3
実施形態として、前記第2実施形態の構成に加え、ラジ
エータフード10の内面全域にも吸音材43を貼付した
例が示されている。本実施形態によれば、前述した1)
〜9)の効果に加え、以下の効果がある。 10)ラジエータフード10内に貼られた吸音材43によ
り、ファン4の上流側のより広い範囲で騒音を吸音で
き、消音効果を増大できる。
【0042】〔第4実施形態〕図5には、本発明の第4
実施形態として、前記第1実施形態の構成に加え、ラジ
エータフード10の内面全域、および端板13の内面に
吸音材44を貼付した例が示されている。なお、ラジエ
ータフード10に貼られる吸音材43と、端板13に貼
られる吸音材44とは、それぞれ別体であっても一体で
あってもよい。各吸音材43,44が別体であれば、ラ
ジエータフード10および端板13のそれぞれに吸音材
43,44を貼付した後に、互いの部材10,13を結
合すればよく、一体であれば、各部材10,13を結合
した後に、吸音材43,44を貼付すればよい。
【0043】本実施形態によれば、前述した1)〜
8)、10)の効果に加え、以下の効果がある。 11)端板13の内面にも吸音材44が貼付されているか
ら、ラジエータフード10内の略全域で吸音でき、消音
効果をさらに増大できる。そして、吸音材44が露出し
た大きな面で消音室50の一内面が形成されているの
で、特に消音室50内での消音を効果的に行える。
【0044】〔第5実施形態〕図6には、本発明の第5
実施形態として、前記第4実施形態の構成に加え、ラジ
エータフード10の周面部分に孔14を穿設した例が示
されている。本実施形態によれば前述した1)〜8)、
10)、11)の効果に加え、以下の効果がある。 12)ラジエータフード10に穿設された孔14により、
低周波の騒音をファン4の上流側の広い範囲でさらに低
減できる。
【0045】〔第6実施形態〕図7には、本発明の第6
実施形態として、第5実施形態の構成に加え、端板13
にも孔15を穿設した例が示されている。本実施形態に
よれば、前述した1)〜8)、10)〜12)の効果に加
え、以下の効果がある。 13)端板13に穿設された孔15により、低周波の騒音
をファン4の上流側の略全域で一層低減でき、特に消音
室50内での消音をより効果的に行える。
【0046】〔第7実施形態〕図8には、本発明の第7
実施形態が示されている。本実施形態では、ファンシュ
ラウド20が下流側開口部22のみで構成されている点
が前記第1実施形態とは異なる。従って、ラジエータフ
ード10内にはファンシュラウド20が延出しておら
ず、消音室50(図2〜図7参照)が設けられていな
い。
【0047】本実施形態によれば、ファンシュラウド2
0が下流側開口部22のみで構成されていることや、消
音室50が設けられていないことにより、第1実施形態
の1)〜8)の効果のうち、4)および5)の効果につ
いては、十分に達成できない可能性がある。しかしなが
ら、ラジエータフード10と端板13とで囲まれた空間
52で騒音を幾分低減できる。なお、ラジエータフード
10内にファンシュラウド20が延出しないタイプとし
ては、図8中の一点鎖線で示すように、端板13を省略
し、ラジエータフード10をベルマウス状に形成してフ
ァンシュラウド20と連続させた構造でもよい。また、
下流側開口部22がベルマウス状であることで、例え
ば、図8中の二点鎖線で示すように、ファンシュラウド
20が下流側に向けて水平に延出した構造や、下流側に
向かうに従って開口が直線的に拡開する構造に比べれ
ば、冷却空気の流れをよりスムーズにでき、騒音の低減
効果がある。
【0048】〔第8実施形態〕図9には、本発明の第8
実施形態が示されている。本実施形態では、ファンシュ
ラウド20において、上流側開口部21の上流側の周縁
をラジエータフード10の内面の全周にわたって結合す
るとともに、この上流側開口部21の周方向に沿って複
数の共鳴管24を設けた点で、第1実施形態とは異な
る。このことにより、消音室50は、複数の共鳴管24
によってのみラジエータフード10内と連通した準密閉
状態に構成されている。
【0049】本実施形態によれば、第1実施形態の1)
〜8)の効果を同様に得ることができるうえ、以下の効
果がある。 14)ラジエータフード10内と消音室50内とが複数の
共鳴管24で連通しているので、共鳴管24の径寸法、
長さ寸法、および消音室50の容積等を適宜設定して共
鳴管24での共振周波数を決めれば、この共振周波数と
同じ特定周波数の騒音を共鳴管で共鳴させることがで
き、騒音エネルギを良好に減衰して消音効果を向上させ
ることができる。また、消音室50が準密閉状態とされ
ているから、消音室50内での消音効果をさらに向上さ
せることができる。
【0050】〔第9実施形態〕図10には、前記請求項
1に係る発明の別実施形態が第9実施形態として示され
ている。本実施形態では、ファンシュラウド60自身が
多孔質の吸音材で形成されており、ファン4の先端部側
と対向する面がベルマウス状に形成されている。このよ
うなファンシュラウド60の外周面側には、内部まで切
り込まれたスリット61が設けられ、このスリット61
に断面逆T字形(下方側では断面T字形となる)の端板
13の内縁側が挿入され、ファンシュラウド60が端板
13に接着等されて固定されている。他の構成は前記第
1実施形態と同じである。
【0051】本実施形態でも、ファンシュラウド60そ
のものが多孔質の吸音材で形成されているので、第1実
施形態で説明した1)〜3)の効果を同様に得ることが
でき、本発明の目的を達成できる。また、ファンシュラ
ウド60の形状を断面三日月形にするなどして、その上
流側の端縁をラジエータフード10の内面に近づけれ
ば、消音室50の密閉度が増し、前述した4)の効果を
得ることができる。さらに、他の同様な構成により、
5)〜8)の効果も得ることができる。
【0052】〔第10実施形態〕図11に基づき、第1
0実施形態を説明する。本実施形態のファンシュラウド
70は、この端部に端板13が連続して設けられたタイ
プであって、シュラウド全体がラジエータフード10内
に収容されている。ファンシュラウド70の上流側およ
び下流側は、それぞれベルマウス状に湾曲して開口した
上流側開口部71および下流側開口部72になってお
り、これら開口部71,72は、ファン4の回転軸(不
図示)の軸線と平行(断面形状において平行)な平行部
73に連結されている。平行部73は、ファンシュラウ
ド20の周方向にわたって連続して設けられた凹溝74
の一内面で形成されている。
【0053】凹溝74内には多孔質吸音材80が配置さ
れている。多孔質吸音材80のファン4と対向する側の
表面は、平行部73と平行でかつ両側の開口部72,7
3の表面と略連続した平面部81になっている。また、
吸音材80の上流側および下流側の端部82は凹溝74
の立面部75で覆われており、ファンシュラウド20内
に引き込まれた砂塵がファン4で弾き飛ばされても、吸
音材80の端部82に衝突しないようになっている。つ
まり、本実施形態では、凹溝74の立面部75で請求項
7の発明に係る保護部が形成されている。
【0054】このような吸音材80は、前述の各実施形
態で説明した吸音材40と同様に、ウレタン樹脂や、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂から
なるが、平面部81側に層状の被覆部83を有してい
る。被覆部83は、アクリル系樹脂の樹脂シートや、ポ
リエステル系樹脂繊維あるいはアルミガラス系繊維を編
んだクロスシート等の中から、吸音材80の吸音性能に
与える影響および要求される耐候性、耐久性を勘案して
選択され、この選択したものを吸音材80に接着または
熱融着等して形成されている。この被覆部83は、吸音
材80の表面を単に薬品等で撥水処理する場合よりも防
水効果に優れ、また、吸音材80の多孔質部分に比して
幾分硬質であって、ファン4で弾き飛ばされた砂塵等が
ぶつかっても容易に破損することのない強度を有してい
る。被覆部83の厚みは、被覆部83および吸音材80
の材質や要求される前記特性によっても異なるが、建設
機械のエンジン冷却システムに適用する場合において、
例えば、10〜200μm程度である。なお、吸音材8
0自身の平行部73側を薬品処理や熱処理等して同程度
の厚みの層状の被覆部(被覆層)を形成してもよい。ま
た、本発明に係る被覆部は、ファン4側に完全に露出す
る状態に形成される他、露出面寄りの中段層部分に形成
されていてもよい。
【0055】本実施形態によれば、前述した1)〜
5)、10)、11)の効果に加え、以下の効果がある。 15)吸音材80の表面側が防水効果に優れ、かつ強度的
にも優位な被覆部83で覆われているため、ファンシュ
ラウド20内に引き込まれた雨水等の吸水をより確実に
防止できるうえ、ファン4で弾き飛ばされた砂塵等がぶ
つかっても容易に破れず、砂塵が吸音材80での多孔質
部分に直に衝突するのを防止できる。従って、吸音材8
0の水分等による劣化や砂塵等による欠損が防止されて
耐候性、耐久性を向上させることができる。
【0056】16)被覆部83が幾分硬質であるから、吸
音材80の腰を強くでき、撓み難くできる。このため、
吸音材80をファンシュラウド70の凹溝74内に容易
に嵌め込むことができ、ファンシュラウド20の製作を
容易に行える。
【0057】17)吸音材80を凹溝74の平坦な平行部
73に押し当てて貼付すればよいから、湾曲した面に貼
付する場合に比べて吸音材80の一部に浮きが生じる心
配がなく、吸音材80を平行部73に対して確実かつ簡
単に貼り付けることができ、この点でもファンシュラウ
ド20の製作を容易にできる。
【0058】18)吸音材80がファンシュラウド70の
凹溝74内に配置されていることにより、吸音材80の
上流側および下流側の端部82が凹溝74の立面部75
で隠蔽されているため、端部82に砂塵等が衝突するの
を防止してファンシュラウド70から端部82が離剥す
るのをおさえることができ、吸音材80の耐久性を一層
向上させることができる。
【0059】19)ファン4の先端側と対向する面が軸線
方向と平行な平面部81であるため、吸音材80の幅方
向においては、吸音材80全体が湾曲している場合に比
してファン4および吸音材80間の隙間(チップクリア
ランス)の狭い領域を幅広くできる。このため、吸音材
80は幅方向の広い範囲でファン4の先端側と近接する
から、旋回流に伴う気流音を良好に吸音でき、消音効果
を向上させることができる。
【0060】〔第11実施形態〕図12に基づき、第1
1実施形態を説明する。本実施形態では、ファンシュラ
ウド70の上流側および下流側の開口部76,77が前
記第10実施形態の開口部71,72(図11参照)に
比べて小さい。吸音材80のファン4の先端側と対向し
た面は、平面部81と、これの両側に設けられた上流側
曲面部84および下流側曲面部85とからなり、各曲面
部84,85が開口部76,77の表面と面一となって
連続している。上流側曲面部84と上流側開口部76と
を合わせた大きさは、図11に示す上流側開口部71と
略同じであり、これらの曲面部84および開口部76全
体で前記請求項10に係る上流側のベルマウス状の開口
部を形成している。また、下流側曲面部85と下流側開
口部77とを合わせた大きさは、図11に示す下流側開
口部72と略同じであり、これらの曲面部85および開
口部77全体で請求項10に係る下流側のベルマウス状
の開口部を形成している。さらに、本実施形態の吸音材
80も被覆部83を備え、耐候性、耐久性の向上が図ら
れている。他の構成は、第10実施形態と略同じであ
る。
【0061】本実施形態によれば、第10実施形態と同
様に1)〜5)、10)、11)、15)〜19)の効果を得る
ことができ、加えて以下の効果がある。 20)本実施形態では、前記第10実施形態と比較し、フ
ァンシュラウド70のベルマウス状部分の全体の大きさ
は略同じであるが、ファンシュラウド70の湾曲した開
口部76,77がより小さく、ベルマウス状部分の一部
を吸音材80の曲面部84,85で形成しているため、
吸音材80の幅寸法wを同じにして吸音性能を維持しつ
つ、本実施形態でのファンシュラウド70の幅寸法W2
を図11に示す幅寸法W1よりも小さくでき、ファンシ
ュラウド70やラジエータフード10をよりコンパクト
にできる。
【0062】〔第12実施形態〕図13に示す第12実
施形態では、ファンシュラウド70全体がベルマウス状
であり、上流側開口部71および下流側開口部72にわ
たって湾曲した凹溝74が設けられている。凹溝74は
いわゆるリップ付きの溝であって、凹溝74の開口側に
は周方向に連続した二条の突片部74Aが形成され、こ
の突片部74Aに吸音材80が係止されている。つま
り、突片部74Aで請求項8の発明に係る係止手段が形
成されている。吸音材80の表面側には被覆部83が形
成され、この表面が突片部74Aを含むファンシュラウ
ド70の開口部71,72の表面と面一になっている。
なお、図13では、突片部74Aと被覆部83の厚みが
同じになっているが、それぞれの厚みは別々に決められ
てよく、同じである必要はない。本実施形態では、1)
〜5)、10)、11)、15)、16)、18)の効果の他、以
下の効果がある。 21)ファンシュラウド70には吸音材80を係止する突
片部74Aが設けられているので、吸音材80が剥がれ
て凹溝74から外れる心配がなく、吸音材80の取付状
態を良好に維持でき、信頼性を向上させることができ
る。
【0063】なお、本発明のファン装置の騒音低減機構
は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の
目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような
変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第1〜第8、
第10〜第12実施形態のファンシュラウド20,70
は、湾曲した開口部21,22,71,72を有するこ
とでベルマウス状に形成されていたが、本発明に係るフ
ァンシュラウドは、図14(第1変形例)に示すよう
に、直線状に拡開した上流側および下流側の開口部2
1,22を有していてもよく、また、これらの間に平行
部25を設けてもよい。この場合には、前記第1実施形
態で説明した5)の効果を十分に達成できない可能性が
あるが、他の1)〜4)、6)〜8)の効果を同様に達
成できる。
【0064】この他、ファンシュラウドの形状として
は、上流側開口部と下流側開口部の大きさが等しいもの
や、図15(第2変形例)に示すように、平行部25の
みで形成された円筒状でもよく、また、図16(第3変
形例)に示すように、上流側のラジエータフード10内
に延出した直線状の開口部21のみや、図17(第4変
形例)に示すように、下流側に延出した直線状の開口部
22のみで形成されていてもよい。そして、これらの場
合でも、ラジエータフード10、端板13、およびファ
ンシュラウド20で囲まれた空間により消音室50、あ
るいは空間52を形成できる。さらに、ファンシュラウ
ドは、図8中の二点鎖線で示した形状であってもよく、
この場合でも、ファンシュラウドに吸音材を貼付すれ
ば、前記請求項1の発明に含まれる。その他、ラジエー
タフードの形状も任意であり、図8中の一点鎖線で示し
たように、ファンシュラウドと連続するようなベルマウ
ス状であってもよい。
【0065】第1〜第6実施形態では、ファンシュラウ
ド20の上流側開口部21を上流側により延出させ、よ
って消音室50の密閉度合いを高めていたが、図18
(第5変形例)に示すように、上流側開口部21の大き
さを下流側開口部22と略同じにしたり、もしくは小さ
くする等し、ラジエータフード10の内面に別体の調整
部材16を設けて、消音室50の密閉度合いを向上させ
てもよい。そして、この際、調整部材16にも吸音材4
5を取り付けることが望ましい。
【0066】前記各実施形態では、ラジエータフード1
0側に直に固定された端板13が用いられていたが、例
えば、図19(第6変形例)に示すように、エンジン2
側に支持されるカバーフード30の上流側に端板13を
固定し、この端板13をシール材を兼ねた吸音材46な
どを介してラジエータフード10に当接してもよい。要
するに、本発明の端板はラジエータフードのファン側に
設けられていればよく、どの部材に固定するかは任意で
ある。
【0067】また、端板13とファンシュラウド20,
70とが別体で構成されている場合には、これらを溶接
等によって一体とする他、ボルトおよびナット等で互い
に接合してもよい。さらに、ファンシュラウドを端板で
支持させる他、端板とは別体の支持部材で支持させても
よい。しかし、端板で支持部材を兼用させる方が、支持
部材を別途製作する必要がなく、経済的で好ましい。
【0068】請求項5に係る発明の形態としては、図2
0(第7変形例)に示すようなファンシュラウド20お
よび吸音材40も含まれる。すなわち、このファンシュ
ラウド20は全体の内径が等しい円筒状とされてベルマ
ウス状ではないが、これに貼付された吸音材40自身の
内面形状がベルマウス状とされている。
【0069】ラジエータフード、ファンシュラウド、端
板の材質は金属製に限らず、樹脂製であってもよい。そ
して、多孔質吸音材の材質も発泡ウレタン樹脂やPET
(ポリエチレンテレフタレート)に限定されず、多孔質
で吸音性を有していればよい。そのような吸音材として
は、例えば、吸音性に加えて耐候性および耐熱性に優れ
た多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や発
泡FEP(フロリネーテッドエチレンプロピレン)など
がある。しかし、発泡ウレタン樹脂は、これらの材質に
比べて安価であり、吸音性能も良好であることから、よ
り好ましい。
【0070】さらに、吸音材としては、単層のものに限
らず、複数層を有するものであってもよく、この場合、
露出面に近い層の吸音材を、孔の大きさがより小さいも
ので構成すれば、騒音をより良好に低減可能である。な
お、このような層は、消音効果を向上させるためのもの
であって、第10実施形態以下で説明した被覆部とは区
別される。
【0071】また、前記第1実施形態の構成に対し、各
孔14,15,23をどのように組み合わせて設けるか
や、ラジエータフード10および端板13のいずれに吸
音材43,44を貼付するか等は任意であり、第2〜第
7実施形態の組み合わせに限定されない。例えば、図示
を省略するが、端板には吸音材を貼るが、ラジエータフ
ードには吸音材を貼らない場合も考えられる。また、ラ
ジエータフードと端板との両方に吸音材を貼るが、端板
にのみ孔を穿設することも考えられる。なお、孔が穿設
された部分は、衝撃音の発生を防止するために、必ず冷
却空気の流路側から吸音材で覆われることが望ましい。
【0072】第1〜第8実施形態、第1〜第7変形例の
吸音材40に、耐候性、耐久性を向上させるための被覆
部を形成してもよく、また、各図に示す吸音材41〜4
6に被覆部を形成してもよい。さらに、それらの吸音材
40〜46の端部を必要に応じて保護部で保護したり、
係止手段を用いてラジエータフード10やファンシュラ
ウド20、カバーフード30からの脱落を防止してもよ
い。
【0073】図21(第8変形例)には、ファンシュラ
ウド70のベルマウス状部分が上流側端部の厚み部分に
までわたって形成された例が示されている。このような
構成では、上流側の冷却空気をよりスムーズに吸引する
ことができ、さらなる騒音低減および冷却効率の向上に
効果がある。なお、このようなベルマウス状部分を下流
側の厚み部分にわたって形成してもよく、これによれ
ば、下流側での冷却空気の吐出をスムーズにできる。
【0074】請求項7の発明に係る保護部は、第10〜
第12実施形態で説明したような凹溝74の立面部75
に限定されない。例えば、ファンシュラウドの周方向に
沿って固定される環状の部材で吸音材の端部を保護して
もよく、保護部の具体的な形状等は、その実施にあたっ
て任意に決められてよい。
【0075】図22〜24(第9〜11変形例)には、
請求項8の発明に係る係止手段の変形例が示されてい
る。図22において、凹溝74は蟻溝であり、ファン4
側に向かって狭まるように開口している。このような凹
溝74では、保護部としての傾斜した立面部75が係止
手段をも兼用しており、この立面部75に係止されて吸
音材80がファンシュラウド70から外れないようにな
っている。このような立面部75の角度θは、吸音材8
0が外れない角度であれば特に限定されないが、10〜
30°程度が良好である。図23において、ファンシュ
ラウド70の上流側および下流側の端部には、それぞれ
係止手段としての別体の円環部材78がビス止め等によ
って固定され、円環部材78の凹溝74側に突出した部
分で吸音材80が係止されている。図24には、係止手
段として合成樹脂製のリベット79を用いた例が示され
ている。このようなリベット79は、弾力性のある吸音
材80の厚みを確保するために、筒状部材79Aに貫通
させて用いられる。なお、係止手段の形状等は任意であ
り、これらに限定されるものではない。例えば、ピース
状のブラケットを用いて吸音材80の周方向の複数箇所
を係止させてもよい。また、吸音材を凹溝74内に収容
しないタイプでも、適宜な形状の環状部材や、ブラケッ
ト、リベット等を用いて係止させてもよい。
【0076】さらに、本発明に係るファンの先端部形状
としては、前記各実施形態および各変形例で説明した形
状に限定されず、図25(第12変形例)に示す形状で
あってもよい。図25に示すファン4の先端部形状は、
ファンシュラウド70の形状に沿って中凹形状に湾曲し
ており、ファン4の先端部とファンシュラウド70(含
む多孔質吸音材40)との隙間が一定となるように構成
されている。このような構成でも、ファンシュラウド7
0に吸音材40が取り付けられていることで請求項1の
発明に含まれ、騒音を低減できる。また、このような構
成では、ファン4の先端形状に沿って冷却空気が上流か
ら下流にスムーズに流れるようになるので、騒音が低減
しつつ、流量を増加させることができる。
【0077】本発明のファン装置の騒音低減機構は、パ
ワーショベルのエンジン冷却システムに限らず、他の建
設機械を含む特殊車両や一般の乗用車のエンジン冷却シ
ステム、さらには、各種の工場において、プラント冷却
水を冷却する冷水塔に代表されるような産業用冷却シス
テムに利用可能である。すなわち、本発明は、ファンが
エンジン駆動されるものの他、モータ駆動されるものも
含まれる。
【0078】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明によれば、
ファンシュラウド内の強い旋回流が生じる部分に多孔質
吸音材が取り付けられたり、ファンシュラウド自身が多
孔質吸音材で形成されるため、旋回流による気流音を吸
音できるとともに、従来のような衝撃音を生じ難くでき
る。従って、衝撃音および気流音を共に効果的に消音で
き、騒音を確実に低減できるという効果がある。
【0079】さらに、ラジエータフード、端板、および
ファンシュラウドによって囲まれた空間を準密閉状態と
して構成された消音室と、この消音室とラジエータフー
ド内とを連通させるとともに消音室の周方向に沿って複
数設けられた共鳴管とを具備した場合には、準密閉状態
の消音室を形成することで騒音がより低減し、加えて、
消音室とラジエータフード内とを共鳴管で連通させるの
で、共鳴管の径寸法、長さ寸法、および消音室の容積等
を適宜設定して共鳴管での共振周波数を決めれば、この
共振周波数と同じ特定周波数の騒音を共鳴管で共鳴させ
てエネルギを減衰でき、騒音を有効に低減できるという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファン装置の騒音
低減機構を模式的に示す全体図である。
【図2】前記第1実施形態の要部を拡大して示す断面図
である。
【図3】本発明の第2実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図6】本発明の第5実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図7】本発明の第6実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図8】本発明の第7実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図9】本発明の第8実施形態の要部を拡大して示す断
面図である。
【図10】本発明の第9実施形態の要部を拡大して示す
断面図である。
【図11】本発明の第10実施形態の要部を拡大して示
す断面図である。
【図12】本発明の第11実施形態の要部を拡大して示
す断面図である。
【図13】本発明の第12実施形態の要部を拡大して示
す断面図である。
【図14】本発明の第1変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の第2変形例を示す断面図である。
【図16】本発明の第3変形例を示す断面図である。
【図17】本発明の第4変形例を示す断面図である。
【図18】本発明の第5変形例を示す断面図である。
【図19】本発明の第6変形例を示す断面図である。
【図20】本発明の第7変形例を示す断面図である。
【図21】本発明の第8変形例を示す断面図である。
【図22】本発明の第9変形例を示す断面図である。
【図23】本発明の第10変形例を示す断面図である。
【図24】本発明の第11変形例を示す断面図である。
【図25】本発明の第12変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン冷却システム 2 エンジン 3 ラジエータ 4 ファン 10 ラジエータフード 13 シュラウド支持部材を兼用する端板 14 ラジエータフードの孔 15 端板の孔 20,60,70 ファンシュラウド 23 ファンシュラウドの孔 24 共鳴管 40〜46,80 多孔質吸音材 50 消音室 51 隙間 52 空間 71,76 上流側開口部 72,77 下流側開口部 74 凹溝 74A 係止手段である突片部 75 保護部である立面部 73 平行部 78 係止手段である円環部材 79 係止手段であるリベット 82 吸音材の端部 83 被覆部 84 上流側曲面部 85 下流側曲面部

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転駆動されるファンと、このファンの
    先端部回転軌跡から所定間隔を離して設けられたファン
    シュラウドと、このファンシュラウドを支持するシュラ
    ウド支持部材と、前記ファンシュラウドの少なくとも一
    部に取り付けられるかまたは当該一部を形成する形で、
    かつファン先端部に直面させて設けられた多孔質吸音材
    とを有していることを特徴とするファン装置の騒音低減
    機構。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のファン装置の騒音低減
    機構において、前記ファンの上流または下流に設けられ
    るラジエータと、このラジエータおよびファンシュラウ
    ド間を気密に接続するラジエータフードおよび端板とを
    有していることを特徴とするファン装置の騒音低減機
    構。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のファン装置の騒音低減
    機構において、前記ラジエータフードの内面および/ま
    たは前記端板の内面には、多孔質吸音材が取り付けられ
    ていることを特徴とするファン装置の騒音低減機構。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記多孔質吸
    音材が取り付けられた前記ファンシュラウドには、多数
    の孔が形成されていることを特徴とするファン装置の騒
    音低減機構。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記ファンシ
    ュラウドおよび/または前記多孔質吸音材は、ベルマウ
    ス状であることを特徴とするファン装置の騒音低減機
    構。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし請求項5のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記多孔質吸
    音材には、前記ファン先端部と対向した表面側を覆う被
    覆部が形成されていることを特徴とするファン装置の騒
    音低減機構。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし請求項6のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記ファンシ
    ュラウドには、前記多孔質吸音材における気流方向の上
    流側および下流側の少なくとも一端を保護する保護部が
    設けられていることを特徴とするファン装置の騒音低減
    機構。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし請求項7のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記ファンシ
    ュラウドには、前記多孔質吸音材を部分的に係止する係
    止手段が設けられていることを特徴とするファン装置の
    騒音低減機構。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれかに記
    載のファン装置の騒音低減機構において、前記ファンシ
    ュラウドは、前記気流方向の上流側および下流側にそれ
    ぞれ設けられてベルマウス状に湾曲した開口部と、前記
    ファンの回転軸の軸線方向に対して平行でかつ前記開口
    部間に設けられた平行部とを備え、前記多孔質吸音材が
    前記ファンシュラウドの平行部に取り付けられているこ
    とを特徴とするファン装置の騒音低減機構。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載のファン装置の騒音低
    減機構において、前記多孔質吸音材は、前記気流方向の
    上流側および下流側に設けられたベルマウス状の開口部
    の一部まで含んで、滑らかなシュラウド状に形成されて
    いることを特徴とするファン装置の騒音低減機構。
  11. 【請求項11】 回転駆動されるファンと、このファン
    の先端部回転軌跡から所定間隔を離して設けられたファ
    ンシュラウドと、前記ファンの上流または下流に設けら
    れたラジエータと、このラジエータおよびファンシュラ
    ウド間を気密に接続するラジエータフードおよび端板
    と、前記ラジエータフード、前記端板、および前記ファ
    ンシュラウドによって囲まれた空間を準密閉状態として
    構成された消音室とを有し、この消音室と前記ラジエー
    タフード内とが当該消音室の周方向に沿って複数設けら
    れた共鳴管で連通していることを特徴とするファン装置
    の騒音低減機構。
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