JP2001000524A - 低級アルデヒド類の吸着剤 - Google Patents

低級アルデヒド類の吸着剤

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紀夫 相部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低級アルデヒド類、特にホルムアルデヒドおよ
びアセトアルデヒドを常温下に効率よく、長期に亙り除
去することができる吸着剤の提供。 【解決手段】飽和環状第二アミンと不揮発性酸、尿素お
よびチオ尿素から選ばれた少なくとも1種を多孔質担体
に担持せしめてなる吸着剤が上記課題を解決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホルムアルデヒ
ド、アセトアルデヒド等の低級アルデヒド類に対して優
れた吸着性能を有する吸着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド等
に代表される低級アルデヒド類はいずれも特異な刺激臭
をもつ有毒ガスである。その中でホルムアルデヒドは空
気中の許容量が暫定値で0.5ppmであり、またアセ
トアルデヒドは悪臭物質に指定されている。ホルムアル
デヒドの発生源としては、ホルムアルデヒドの製造工場
および尿素、メラミン、フェノール等とホルムアルデヒ
ドを原料とした樹脂の製造工場のほか、これらの樹脂を
使用する加工工場、さらにこれらの樹脂を使用した建
材、家具等の各種加工製品の製造工場等が挙げられる。
また消毒剤として使用されるホルマリンや石油ストーブ
の不完全燃焼からも発生し、たばこの副流煙にも多く含
まれると言われている。最近では、新建材を使用した室
内においても建材から発生するホルムアルデヒドが問題
になっている。アセトアルデヒドの発生源としては、ア
セトアルデヒドおよびその誘導体の製造工場のほか、下
水汚泥の加熱処理時にも発生し、また、たばこの主流煙
中にも含まれている。近年、これら低級アルデヒド類に
対して、作業環境の改善および生活環境の向上の両面か
ら、有害性と臭気が問題とされ、それらに対する有効な
除外対策が強く要望されている。
【0003】従来から低級アルデヒド類の吸着剤として
は、活性炭、活性白土、シリカゲル、活性アルミナ、粘
土鉱物等が挙げられ、なかでも活性炭が多く用いられて
きた。 しかしながら、活性炭をはじめとするこれらの
吸着剤自体は、その特性上、ホルムアルデヒド、アセト
アルデヒド等の低級アルデヒド類に対する吸着量が小さ
く、また寿命が短いという欠点がある。この改善策とし
て、前記の吸着剤に低級アルデヒド類との反応性を有す
る化合物、例えば、ヒドラジン類、脂肪族アミン類、芳
香族アミン類、尿素類などの有機化合物、またはアンモ
ニウム塩、亜硫酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類
金属等の酸化物および水酸化物、ヨウ素、臭素およびそ
れらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属との化合物
等の無機化合物を担持させたものが提案されている。さ
らに、触媒として白金族化合物を前記の吸着剤に担持さ
せたものも提案されている。しかしながら、有機化合物
を担持した吸着剤は、有機化合物の経時安定性、有害
性、臭気等に問題があり、特にアニリンを担持させたも
の(特公昭60−54095号)は、アニリン自身が低
級アルデヒド類の吸着に対して経時的に不安定であると
いう欠点を有し、また発ガン性があるとされているため
実用化には問題があった。さらに、このような有機化合
物を担持した低級アルデヒド類の吸着剤は、一般的に耐
熱性に劣るという欠点を有していた。無機化合物を担持
した吸着剤では低濃度の低級アルデヒド類に対する吸着
速度が充分ではない。また、触媒を担持させたものは触
媒が高価な上、常温では除去効果が低い。このように、
従来の技術はいずれも低級アルデヒド類の除去に対して
満足とは言い難い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低級アルデ
ヒド類を効率よく長時間に亙り吸着除去し、優れた吸着
能を示す吸着剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の点に
鑑み、鋭意検討した結果、飽和環状第二アミンに加え
て、不揮発性酸、尿素およびチオ尿素の少なくとも1種
を多孔質担体に担持させることにより、低級アルデヒド
類を常温で効率よく長時間に亙り除去し、安定かつ安全
で、しかも安価な吸着剤が得られることを知見し、この
知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、
本発明は、(1)環状飽和第二アミンと、不揮発性酸、
尿素およびチオ尿素から選ばれた少なくとも1種とを多
孔質担体に担持せしめてなる低級アルデヒド類の吸着
剤、(2)多孔質担体が活性炭である前記(1)記載の
低級アルデヒド類の吸着剤、および(3)多孔質担体が
ハニカム状活性炭である前記(1)記載の低級アルデヒ
ド類の吸着剤、である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる飽和環
状第二アミンとしては、好ましくは五員環もしくは六員
環の飽和環状第二アミンが用いられる。五員環の飽和環
状第二アミンとしては、例えばピロリジン、チアゾリジ
ン等が用いられる。六員環の飽和環状第二アミンとして
は、例えばピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラ
ジン、モルホリン、チオモルホリン等が用いられる。前
述の飽和環状第二アミンのなかでは六員環の飽和環状第
二アミンが好ましく、特にピペリジン、ピペラジン、モ
ルホリンが好ましい。多孔質担体に対する飽和環状第二
アミンの添加量は、多孔質担体無水物重量当たり1〜5
0重量%、好ましくは5〜20重量%である。本発明で
用いられる不揮発性酸は、50℃、1気圧の下、蒸気圧
が10mmHg以下のものをいう。例えば硫酸、リン
酸、ホウ酸等の無機酸やシュウ酸、クエン酸などの有機
酸があげられる。この不揮発性酸の多孔質担体に対する
添加量は、多孔質担体無水物重量当たり0.5〜40重
量%、好ましくは1〜20重量%である。本発明におい
ては、不揮発性酸に代えて、またはともに、尿素または
チオ尿素が多孔質担体に担持させられるが、この尿素ま
たはチオ尿素の添加量は多孔質担体無水物重量当たり
0.5〜40重量%、好ましくは1〜20重量%であ
る。本発明で用いられる多孔質担体としては活性炭、活
性白土、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、粘土
鉱物等で特に制約はなく、一般に市販されているものが
利用できるが、特に活性炭が好適に用いられる。
【0007】活性炭原料としては、たとえば木粉、ヤシ
殻などの植物原料、無煙炭、石油ピッチ、コークスなど
の化石系原料、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂などの
各種合成樹脂原料などがあげられる。これらの活性炭原
料は、たとえば固定床、移動床、流動床で炭化・賦活さ
れる。賦活にはたとえば水蒸気、塩化水素、一酸化炭
素、二酸化炭素、酸素を用いるガス賦活、アルカリ、酸
または塩化亜鉛などを用いる薬品賦活などがあげられる
が、本発明においてはそのいずれによって賦活されたも
のでも使用することができる。本発明に用いられる活性
炭としては、液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBE
T表面積が通常350〜3,500m2/g、好ましくは
500〜3,000m 2/gのものである。環状飽和第
二アミン、不揮発性酸、尿素、チオ尿素を多孔質担体に
担持させるには、それらの物質が水に可溶であるか否か
により、各々次のような方法が挙げられる。水に可溶な
物質の場合:該物質を予め水に溶解せしめ、多孔質担体
をこの水溶液に浸漬後濾別する方法、多孔質担体を撹拌
混合しながら該物質の水溶液を噴霧または散布する方
法、粉末状の活性炭と該物質の水溶液を混合し、必要に
応じてバインダーを添加して造粒、成型する方法。
【0008】水に不溶な物質の場合:粉末状の多孔質担
体と粉末状の該物質を物理的に混合する方法。粉末状の
多孔質担体と粉末状の該物質をあらかじめ混合してお
き、水、バインダーを加えて造粒、成型する方法。水に
該物質およびバインダーを加えてあらかじめスラリーを
調製し、このスラリーを多孔質担体に噴霧または散布し
て混合する方法。これらの物質はどれかを先に多孔質担
体に担持させてもよく、また同時に担持させてもよい。
前記担持方法において、必要に応じて用いられるバイン
ダーとしては、公知のものが用いられるが、例えばカル
ボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アラ
ビヤゴム等があり、使用量は少ないほど望ましい。本発
明では、飽和環状第二アミンのほかに、さらにアルカリ
金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を担持させ
ることにより、得られる吸着剤の耐熱性を向上させるこ
とができるので好ましい。
【0009】ハロゲン化物を形成するアルカリ金属とし
ては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられ、アル
カリ土類金属としては例えばマグネシウム、カルシウム
等が挙げられる。また、ハロゲンとしては、例えばヨウ
素、臭素が好ましく用いられる。多孔質担体に対する該
ハロゲン化物の添加量としては、多孔質担体無水物重量
当たり0.5〜20重量%が好ましく、さらに好ましく
は1〜10重量%である。このようなアルカリ金属およ
びアルカリ土類金属のハロゲン化物は、前記の飽和環状
第二アミンの担持方法と同様の方法で多孔質担体へ担持
される。この時、飽和環状第二アミンのハロゲン化物の
どちらかを先に担持させてもよく、また同時に担持させ
てもよい。本発明の吸着剤の形状は特に限定されない
が、たとえば粉末状、粒状、球状、ハニカム状などの形
状、または粉末状、粒状、球状のものを不織布、ウレタ
ンフォーム、紙、加工ボード等に添着した形状があげら
れる。このようにして得られた吸着剤を、そのままある
いは適当な通気性容器や吸着装置に充填、収容してホル
ムアルデヒド、アセトアルデヒド等の低級アルデヒド類
が充満しやすい自動車内、喫茶店、会議室、作業場ある
いは家庭の居室等に配置することにより空気の浄化が達
成される。またタバコフィルターに使用するとタバコ煙
中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の有害・刺
激成分を効率よく除去することができる。
【0010】前述の吸着剤の形状の中でハニカム状多孔
質担体は、経時的吸着能をあまり低下させることなく、
通気抵抗を大幅に小さくすることができるので、本発明
の吸着剤の形状として特に好ましいものである。ハニカ
ム状多孔質担体の製造はそれぞれ公知であり、特にハニ
カム状活性炭の製法は、たとえば特公昭57−9581
6号に開示されている。本発明に用いられるハニカム状
多孔質担体のセル数は10〜1,500個/in2、好
ましくは50〜1,000個/in2程度である。ハニ
カム状多孔質担体の厚みは、低級アルデヒド類の除去性
能が低下しない範囲で選択できるが、通常5〜200m
m、好ましくは7.5〜150mm程度である。このハ
ニカム状担体は、必要に応じて複数個を重ね合わせて用
いることができる。低級アルデヒド類としては炭素数1
〜5のもの、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド
が代表的であるが、沸点が約100℃以下であるプロピ
オンアルデヒド、アクロレイン、n−ブチルアルデヒ
ド、i−ブチルアルデヒド、グリオキサール等に対して
も、悪臭対策上有効な吸着剤が必要とされている。本発
明の吸着剤はこれらのアルデヒド類に対しても効果が期
待でき、とりわけ、ホルムアルデヒドおよびアセトアル
デヒドの吸着に対して有効に用いるられる。
【0011】
【実施例】以下に実施例および試験例を挙げて本発明を
さらに具体的に説明する。 実施例1 吸着材A〜Gの製造 (1)多孔質担体として、BET表面850m2/g、
セル数300/in2、厚み20mmのハニカム状活性
炭を用いた。このハニカムを直径20mmに切り出し
て、これを吸着剤Aとした。重量は1.70gであっ
た。 (2)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgを含有する水溶液1.5mlを均一に散布し、40
℃で乾燥し吸着剤Bを製造した。 (3)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgおよびリン酸64mgを含有する水溶液1.5ml
を均一に散布し、40℃で乾燥して吸着剤Cを製造し
た。 (4)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgおよび硫酸96mgを含有する水溶液1.5mlを
均一に散布し、40℃で乾燥して吸着剤Dを製造した。 (5)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgおよびクエン酸96mgを含有する水溶液1.5m
lを均一に散布し、40℃で乾燥して吸着剤Fを製造し
た。 (6)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgおよび尿素59mgを含有する水溶液1.5mlを
均一に散布し、40℃で乾燥して吸着剤Fを製造した。 (7)前記(1)で得た吸着剤Aに、モルホリン170
mgおよびチオ尿素84mgを含有する水溶液1.5m
lを均一に散布し、40℃で乾燥して吸着剤Gを製造し
た。
【0012】試験例1 ホルムアルデヒド含有大気の破過率5%到達時間 内径20mmφのカラムに前記(1)〜(7)で得た吸
着剤A〜Gを各々1カラムに5個づつ積層し、それぞれ
のカラムにホルムアルデヒド15ppm含有空気(25
℃、相対湿度70%)を18.9リットル/分で通過さ
せ、カラム入口と出口のガスをガスクロマトグラフィー
で分析して、ホルムアルデヒドの破過率{(出口濃度/
入口濃度)×100}が5%になる時間(分)を測定し
た。その結果を〔表1〕に示す。
【0013】
【表1】 〔表1〕から明らかなごとく、本発明の吸着剤C〜Gは
いずれも破過率5%到達時間が200分以上であり、特
に尿素、チオ尿素担持吸着剤FおよびGは400分を越
える。これに対し薬品無担持の吸着剤Aおよびモルホリ
ンのみを担持させた吸着剤Bはいずれも200分到達前
に破過率が5%を越える。このことから本発明の吸着剤
が長期に亙りホルムアルデヒド吸着能を発揮することが
明らかである。
【0014】実施例2 4〜6.5メッシュ(新JIS標準篩網による。)に製
粒したBET表面積1200m/gの粒状のヤシ殻活
性炭を吸着剤Hとした。この粒状活性炭Hに実施例1と
同様の方法で各種薬品を担持させ、〔表2〕のような吸
着剤I,J,K,Lを製造した。なお水溶液の噴霧は均
一に散布するため、粒状活性炭を回転混合しながら行っ
【0015】試験例2 内径40mmのカラムに吸着剤H〜Lを、それぞれ層高
40mmに充填し、それぞれのカラムにアセトアルデヒ
ド250ppm含有空気(25℃、相対湿度70%)
を、1.5リットル/分で通過させた。カラムの入口と
出口のガスの検知管で測定し、アセトアルデヒドの破過
率{(出口濃度/入口濃度)×100}が5%を越える
時間を調べた。
【表2】 〔表2〕から明らかな如く、本発明の多孔質担体として
薬品担持の粒状活性炭を用いた吸着剤I〜Lは、破過率
5%到達時間が2630〜2850時間である。これに
対し、薬品無担持の吸着剤Hの場合は、390分で破過
率5%に到達した。このことから、本発明の薬品を担持
した吸着剤が長期に亘りアセトアルデヒド吸着能を発揮
することが明らかである。
【0016】
【発明の効果】本発明の吸着剤は、低級アルデヒド類を
常温で効率よく長期に亙り除去することができ、しかも
安価に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C080 AA05 BB02 CC02 HH09 JJ06 KK08 LL10 MM14 MM17 MM18 NN05 4G066 AA05C AA50D AB05A AB07D AB10D AB11B AB13A AB13B AC02D AE19C BA07 BA36 CA52 DA03 FA12 FA26 FA40

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】環状飽和第二アミンと、不揮発性酸、尿素
    およびチオ尿素から選ばれた少なくとも1種とを多孔質
    担体に担持せしめてなる低級アルデヒド類の吸着剤。
  2. 【請求項2】多孔質担体が活性炭である請求項1記載の
    低級アルデヒド類の吸着剤。
  3. 【請求項3】多孔質担体がハニカム状活性炭である請求
    項1記載の低級アルデヒド類の吸着剤。
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