【発明の詳細な説明】
発明の背景 発明の技術分野
沈降による水溶媒体からのタンパク質の除去
従来技術の考察
タンパク質は伝統的に試薬または熱の使用によって水溶媒体から除去されてき
た。ある溶媒(クロロホルム、尿素)は、タンパク質を変性させその沈澱を生じ
させる。同様に、塩の添加により高度に溶媒の電解質レベルを上昇してもタンパ
ク質が沈降する。更に、加熱は変性のみならず一般的にタンパク質を凝集させ、
水性溶媒からそれを分離する。
タンパク質除去のこれらの方法には大きな3つの欠点がある。まず第一に、媒
体から除去される物質は単にタンパク質に限られない。媒体が細胞溶解物(cell
ysate)である場合など、媒体が化学物質の複合混合物を含有する場合、これら
の方法はタンパク質に添加した他の物質を除去する可能性がある。第二に、これ
らの方法によって除去されたタンパク質は、透析などの単に時間のかかる処理に
よって一般に不可逆的に変性されまたは不可逆的に変性されうる。第三に、タン
パク質のエーテル単離や精製は、伝統的に幾分有毒な溶媒(フェノールおよび/
又はクロロホルム)を使用する。
米国特許4,421,653記載の重合物質は、これらの問題を克服しようとした。こ
の物質ジアミンで架槁されたポリエチレン無水マレイン酸誘導体は、血清の単容
積をタンパク除去するために溶液中に9容積までを要求する。大過剰の「除蛋白
剤」は低い交率を表わすものであり、それを
商業的使用に関し不適切に高価なものにする。更に、このマトリックスはアルカ
リ性域内(すなわちpH10)でタンパク質を沈降し、このようにマイルドなアルカ
リ状態においてこのマトリックスから要求されるタンパク質の脱離を非常に困難
にする。
この問題への新しいアプローチは、出願人の先の米国特許5,294,681およびそ
の一部継続出願である米国特許5,453,493において見いだされている。しかしあ
る状況下、粘性の問題がこれらの新しい組成の使用において生ずる。それゆえに
これらの粘性に関する問題を避ける出願人によって、あらかじめ開示された組成
の改良を求めることは、望ましいと考えられる。
発明の要旨
式:
ここに、Rは水素、炭素数1〜4の低級アルキレンもしくは低級アルコキシまた
はフェニルであり、
xおよびyは整数である、
wは2〜12の整数であるポリマーと、
式:H2N[(H)P(CH)z(OH)m]NH2 (II)
ここに、zは1〜6の整数であり、
pは0またはz−1までの整数であり、
mは0またはzまでの整数である、好ましくは水酸基を含んでいるα,ω−ジ
アミノアルカンを架橋し、および
未反応の無水物基を加水分解して得られる水不溶性架橋ポリカルボン酸組成物の
一群が提供される。
この架橋ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物は、式の骨格を有する。
ここに、式IIIにおいて、各鎖の少なくとも一つの内部鎖マレオイル部分の
カルボニル基は、式
ここに、R、x、y、z、pおよびmは前記と同様である、の少なくとも一つ
の内部鎖架橋部分を形成するために、
-HN.[(H)p(CH)z.(OH)m].NH- (IV)部分と共有結合し、化合物(V)、す
なわち式
を形成する。
架橋ポリカルボン酸組成物の作成方法は、式Vの化合物を得るために、式Iで
表されるポリマーと式IIで表されるα,ω−ジアミノアルカンとの架橋を必要
とする。
これらの架橋ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物は、
タンパク質/ポリカルボン酸組成物マトリックスを形成するために、架橋ポリカ
ルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の有効量をここに添加する
ことを含む当該物質を含有する水性媒体からタンパク質を沈降する方法を提供す
る。好ましくは、ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の
重量による使用量は、それが含まれる水性媒体中に含まれるタンパク質の推定含
有量と少なくとも等しい。更に、ポリカルボン酸組成物は、水性媒体中で使用さ
れること
が好ましい。この沈降段階では、これらの各水性媒体におけるタンパク質および
ポリカルボン酸組成物の濃度は、重量で約3:1から約1:3の間の割合であり
、最も好ましくは、各水性媒体中のタンパク質および架橋ポリカルボキシ酸また
はポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の濃度は、重量で実質的に等しいことで
ある。
実際の沈降過程は、広い範囲内で多少pHに依存する。従って、架橋ポリカル
ボン酸組成物を含有する媒体のpHは、約3から約7.5の間であることが好ま
しく、成分の混合後は約pH6.5を越えない。
沈降反応の後、そこからペレットとしてマトリックスを回収するために反応混
合物を遠心分離することが望ましい。
当該タンパク質を変性させることなくマトリックスからタンパク質を分離する
ことは、約pH8.6〜約9.5において緩衝液を用いて前記マトリックスを処
理することによって行ってもよい。マトリックスのペレットの容積当たり、約p
H8.6〜約9.5において、約1〜約5容積の緩衝液を使用することが好まし
い。本発明はそれに限定されないが、緩衝液がトリス緩衝液である場合により好
ましい結果が得られた。
この方法は、また、特にタンパク質および核酸を含む流体からの核酸の分離に
も有用である。この場合、核酸またはその混合物の源は、しばしば水性グアニジ
ニウムチオシアナート(aqueous guanidinium thiocyanate)またはドデシル硫
酸ナトリウム中に懸濁する細胞溶解物(Ccell lysate)である。
代わりに、マトリックスをラウリル硫酸ナトリウムの水溶液で処理し、その後
好ましくは反応混合物を遠心分離して残渣ペレットととしてまたはそれからポリ
ヒドキロシポリカルボン酸を回収することにより、マトリックスから架橋ポリヒ
ドロキシポリカルボン酸組成物を回収してもよい。
この方法において、タンパク質が変性される場合、マトリックスの残渣ペレッ
トの容積当たり、約0.5〜約2%(w/w)濃度のラウリル硫酸ナトリウムの
約1〜約3容積が使用される。その後、回収ポリヒドロキシポリカルボン酸(残
渣)を洗浄し、緩衝液中で再懸濁する工程を含むことが好ましく、ここにおいて
R=メトキシであり、pH4〜4.5で脱イオン水を使用する。
図面の簡単な説明
図は、ポリマーNおよび従来のポリマー、ポリマーPA(米国特許5,453
,493−実施例2の化合物V、ポリマーはメチルビニルエーテル無水マレイン
酸共重合物および1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンから得られる)の
水および各種の塩の存在下に膨張する場合において、粘度を時間に対しプロット
したものである。本発明の化合物であるポリマーNは、下記のように、メチルビ
ニルエーテル無水マレイン酸共重合物を1,9−デカジエンを用いて架橋し、そ
の後同様に1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンで架橋することにより得
られる。
図1は、水中の実験の結果を示し、
図2は、塩化リチウム水中の実験の結果を示し、
図3は、塩化ナトリウム水中の実験の結果を示し、
図4は、塩化カリウム水中の実験の結果を示し、
図5は、塩化セシウム水中の実験の結果を示す。
好適な実施態様の記述 架橋ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物
本発明は、式I:のポリマーをα,ω−ジアミノアルカン、好ましくは式II:
H2N.[(H)p(CH)z.(OH)m].NH2 (II)
ここに、式中、m,p,wおよびzは上記と同じであり、xおよびyは7〜1
0、000の整数である、のジアミノヒドロキシアルカンで架橋することにより
形成される組成物を含んでいる。
Rは、水素、炭素原子数1〜4の低級アルケンもしくは低級アルコキシまたは
フェニルである。
式IのRがメトキシであることが好ましい。
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニールエーテル/無水マレイン酸の
共重合体は、商品名スタビライズ(Stabileze)06およびスタブレズ(Stablez
e)Q,Mとして販売されている。これらの二つの生成物は粒径だけが違っており
、インターナショナル スペシャリティ プロダクツ(ISP、Bound Brook,New
Jersey)により提供される。これらの生成物は増粘剤であり、それらは特に皮膚
ケア、毛髪ケアおよび着
色化粧品のために開発された。逆説的にいえば、本発明は、最終的に不均質に結
合された生成物が低い粘性であることを要求するものである。本質的に高粘性の
出発物質が、非常に低い粘性の生成物に変換された。
式IIにおいて、zが1〜6の整数であり、pは0またはz−1までの整数で
あり、mは0またはzまでの整数である。式IIの各(CH)基は、そこに付着
されるヒドロキシル基を一つ有するかまたは有さないのいずれかである。架橋部
分はヒドロキシル基を有しなくてもよく、または架橋結合鎖中に(CH)基につき
1つまでのヒドロキシル基、即ち、二つのアミド基の間にz個までのヒドロキシ
ル基を有してもよい。
式IIのそのようなα,ω−ジアミノアルカン類としては、市販のアルカン類
、好ましくは1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミンの
ようなジアミノアルカンが、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン(Aldr
ich Chemical Co.,Milwaukee,Wl)等のジアミノヒドロキシアルカン類が挙げら
れる。
水不溶性架橋ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸中に残って
いるいかなる無水物基も、アルカリ加水分解によって加水分解される。
不溶性架橋ポリカルボン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物におい
て、ジアミノヒドロキシアルカンの初期仕込量のポリ(アルキレンマレイン酸無
水物)初期仕込量との割合は、仕込まれたポリマー1gに対し、架橋剤約1×1
0-5〜1×10-3モルであることが好ましい。
化合物Vは、すなわちこのように形成される: ここに、m=0または1、p=3〜6、w=6、およびxとyは7〜1000
0である。架橋ポリカルボン酸組成物の製造方法
水不溶性の架橋ポリカルボン酸組成物を製造する方法は、厳格に無水条件下で
、式Iのポリマーを式IIのα,ω−ジアミノアルカンで架橋させ、その後未反
応無水物基を加水分解させる反応が含まれる。式Iに相当する所定量のアルキレ
ン架橋ポリ(アルキレン無水マレイン酸)を反応容器に加える。式IIに相当す
る所定量のα,ω−ジアミノアルカンを、同様に反応容器に加える。ジアミノア
ルカンの初期仕込量とポリ(アルキレン無水マレイン酸)の初期仕込量の割合は
、ポリマー1.0gに対し、約1×10-5〜1×10-3モルの架橋剤であること
が好ましい。
上記は、式Iのポリマーを無水溶媒、好ましくはアセトンに懸濁させ、α,ω
−ジアミノまたはジアミノヒドロキシアルカンの溶液をアセトンのような類似の
溶媒に1〜5時間で加え、その後、24〜48時間撹拌し、その間反応混合物を
室温に放置する。反応は常圧、室温で又は加熱下で行ってもよい。ジアミノアル
カンは、式Iのポリマーの無水物基と架橋してカルボキシル基及びアミド基とな
る。反応は水を添加して停止し、次に水性アルカリで塩基加水分解することが好
ましい。
この加水分解ステップの間に、未反応無水物基はカルボキシ塩基に変換され、
反応液から除去される。
本発明のポリマー類の溶液群がアルカリ金属塩類によって安定化されることが
驚くべきことに見いだされた。この安定化は、Li+<Na+<K+<Rb+<Cs
の順で増大する。市販のものとして容易に入手できるカリウムおよびセシウムが
、好ましいものである。任意の可溶性ハロゲン化物、特に塩化物は、これらが市
販のものとして容易に入手できるために有用である。アルカリ金属イオンの濃度
は安定化に適当であるべきであるが塩析を生じる程は高くないものとされるべき
である。これゆえ、0.05〜0.5Mアルカリ金属水溶液中の0.1%〜10
%w/wのポリマー溶液を調製することが有用である。最も好ましくは、0.1
〜0.3M塩化カリウムまたは塩化セシウム水溶液中の1%〜3%w/wのポリ
マー溶液、特に0.0M塩化カリウムまたは塩化セシウム水溶液中の1%w/w
のポリマー溶液である。水不溶性架橋ポリヒドロキシポリカルボン酸組成物を用いてのタンパク質除去方 法
本発明のさらなる実施態様は、タンパク質含有水性媒体からの同タンパク質の
沈降方法であり、これは、上記架橋ポリヒドロキシポリカルボ
ン酸組成物の有効量を前記水性媒体中へ添加し、これによってタンパク質/ポリ
カルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物マトリックスを形成する
ことよりなる。
前記水性媒体は、除去すべきと欲されるタンパク質を含有する希釈ないしは非
希釈の生物学的液体であり得、例えば、全血、血漿、血清、リンパ、胆汁、尿、
脊髄液、痰および汗等ならびに便排泄物などが包含される。さらにまた、ヒトま
たはその他の動物の組織、例えば、骨格筋、心臓、腎臓、肺、脳などの組織の液
状調製物、および細胞培養抽出物または乳汁または微生物学的培養液またはプラ
ント抽出物などに使用することも可能である。好ましい生物学的流体は、ヒト血
液および微生物細胞溶解物(bacterial cell lysates)である。
前記水不溶性架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物
は、エマルジョン、懸濁液、溶液または乾燥粉末の形態でタンパク質含有水性媒
体中へ添加してもよい。
架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の生物学的流
体に対する割合は、所望する除タンパクの度合に応じて変更できる。しかしなが
ら、最適な割合は、タンパク質の濃度、純化すべき物質の状態および濃度、温度
、pH値およびイオン濃度に留意して、それぞれの場合に応じて、好ましく決定
されるべきである。温度およびpH値は、原則として臨界的なものではない。し
かしながら、温度は通常、0℃〜100℃の間にあり、好ましくは、4℃以上で
かつ60℃以上でない温度である、というのはこの温度以上では実質的に回復不
能なタンパク質変性が生じるからである。
架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物によるタンパ
ク質沈降の効率は、より高い温度で増大するように思われることが留意される。
換言すれば、より少ない架橋ポリカルボン酸組成物が
60℃の試料溶液からタンパク質の90%を除去するために、30℃の別の同一
の溶液から除去する場合よりも、より少ない架橋ポリカルボン酸組成物が必要と
されるというものである。該組成物の効率は、鎖間の架橋に水酸基が存在する、
すなわち、架橋剤がジアミノヒドロキシアルカンである場合はより大きいもので
ある。
タンパク質含有水性媒体のpH値は、水不溶性架橋ポリカルボン酸ないしポリ
ヒドロキシポリカルボン酸組成物の添加後において、約pH7.5を超えず、好
ましくは約pH6.5を越えない。
タンパク質の重量濃度およびポリヒドロキシポリカルボン酸の重量濃度はそれ
ぞれの水性媒体で、好ましくは約3:1〜約1:3の比率である。
用いられる架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の
重量による使用量は、通常、水性媒体中に含有されると見積もられるタンパク質
の量と、少なくとも等しい量である。
タンパク質含有水性媒体への添加に先立ち、水不溶性架橋ポリカルボン酸ない
しポリヒドロキシポリカルボン酸組成物がそれの固有の水性媒体中に懸濁される
場合、RがMeOで、該ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組
成物を含有する媒体のpHが約3〜約5であり、これによってpH約6.5を超
えない当該組成物の混合後の媒体が得られる。
該水性媒体の除タンパクの度合は、該架橋ポリカルボン酸組成物試薬における
反応性基の濃度に依存する。反応性基の濃度は、その適当な量によって十分な量
の結合を保証する本発明の実施可能性に関して臨界的なものではない。
代表的には、架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物
試薬は、生物学的流体へ添加され、そして、ある固定時間(fi
xed time通常、5〜15分間)に激しい接触(例えば、撹拌またはその後に静置
を伴う反転による)を受ける。この結果得られたタンパク質と結合している架橋
ポリカルボン酸組成物とタンパク質とのマトリックスからなる水不溶性相は、除
去される。この除去は、相分離(例えば、遠心分離、濾過または沈降)に関して
慣習的な任意の周知の方法によって実施できる。水不溶性相の除去は、これによ
って除タンパクされた上澄液を提供する。
水不溶性相の除去が遠心分離による場合、遠心は、約5〜100,000×g
にて、0.2〜10時間、または単位重力下に設定して行うべきである。超遠心
の速度は、得られるペレットが非常に密に充填され、上澄み液がデカンテーショ
ンされた際に微細物が失われないために好ましく用いられ得る。
タンパク質除去の本方法は、また、該架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキ
シポリカルボン酸組成物によって沈降される、または、それと共に適当な処理に
よって、例えば、特定の緩衝液あるいはその他の抽出薬、例えば界面活性剤の使
用によって沈降される、ある物質の抽出にも用いることができる。この物質の除
去は、調製的または分析的目的のためのものとなりうる。緩衝液がマトリックス
からのタンパク質の分離に用いられる場合は、これは約pH7.0〜約8.5で
10〜60分間緩衝液で該マトリックスを撹拌、粉砕および/または振盪するこ
とによって行うことができる。該マトリックスのペレットの1容積当たり、緩衝
液を約pH7.0〜約8.5にて、約1〜約5容積用いる。緩衝液は、好ましく
はトリス(Tris)緩衝液である。マトリックスが界面活性の抽出薬(好ましくは
トウィーン(Tween)またはラウリル硫酸ナトリウム)を用いて処理される場合
、マトリックス残存ペレットの1容積当たり、約0.5〜約2%w/wの濃度の
ラウリル硫酸ナトリウム約1〜約
3容積が用いられる。
上述したステップ群を実行し、そして該水不溶性架橋ポリカルボン酸ないしポ
リヒドロキシポリカルボン酸組成物を沈降したマトリックスから回収しようとす
る場合、該不溶性ポリマーは、(a)残存する界面活性剤を除去するために水で
洗浄し、(b)該マトリックスを約pH1.5へと酸性化し、(c)該マトリッ
クスを4〜4.5の間のpHが得られるまで脱イオン水で洗浄し、そして(c)
該ポリマーを蒸留水中に再懸濁する(最終pH4〜4.5)ことによって回収さ
れ得る。
タンパク質を沈降するこの方法は、タンパク質が核酸またはその混合物ととも
に水性媒体中に存在する場合に特に有用である。これは、核酸またはその混合物
の源が、水溶性グアニジニウムチオシアナート(guanidinium thiocyanate)中
に懸濁された細胞溶解物である場合に頻繁にある。
除タンパク化された上澄液(除タンパク後に後ろに残された除タンパク化され
た流体)は、さらに任意の方法においてさらに処理されることが可能である。調
製的目的のため(例えば、ペプチド、グリコプロテイン、ステロイド、リポイド
、核酸、酵素、ホルモン、ビタミン、ウィルス、多糖類またはアルカロイドの精
製のため)、例えば、更なる精製ステップが実施され得る。この場合、特に、ク
ロマトグラフィー(例えば、イオン交換、セファデックス(Sephadex)、アフィ
ニティーまたは吸着クロマトグラフィー)、濾過(例えば、限外濾過)、電気泳
動(例えば、ブロック、ディスク、または無重力電気泳動(carrier-free elect
rophoresis))、等電収束および選択的沈降が好ましいものである。
本発明の範囲を何ら限定することなく、出願人は、本発明についての当人の理
解、すなわち、架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物
が水性媒体からタンパク質を除去することによる機構
を述べたい。沈降性は水性媒体における溶解性の一つの機能である。換言すれば
、溶解性とは、タンパク質の疎水性の度合いの少なくとも一部における一つの機
能である。全てのタンパク質は、水性媒体に曝されたそれらの表面に少なくとも
いくつかの疎水性部分を有している。出願人は、当人の架橋ポリカルボン酸ない
しポリヒドロキシポリカルボン酸組成物が、異なるタンパク質分子の疎水性部分
をお互いに近づけ、そしてタンパク質が結果的に沈降するような度合いで凝集さ
せると思っている(これは、より高い温度での、溶液からの架橋ポリカルボン酸
ないしポリヒドロキシポリカルボン酸組成物の増大したタンパク質除去効率によ
って、確証されるであろう。対照的に、他の現象、例えば、会合/脱離、によっ
てタンパク質沈降が引き起こされる場合、タンパク質沈降は、温度上昇に従って
減少することが観察される。)。
このことが生じ得る前に、該架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカ
ルボン酸組成物は、非共有的な相互作用、例えば電荷誘引、によって、1ないし
それ以上のタンパク質分子と結合している(該架橋ポリカルボン酸ないしポリヒ
ドロキシポリカルボン酸組成物は、数多くの陰電荷を有しており、この陰電荷は
、全てのタンパク質分子におけるいくつかの部位に存在する、例えば、アルギニ
ン残基での、部分陽電荷と相互作用することができる。)。表面疎水性基によっ
て課された(impose)水の局部配置は、熱力学的に好ましくない。結合水は、無極
性のこれらの疎水性基が相互に作用しそして凝集した際に、放出されるであろう
。従って、フレキシブルな架橋ポリカルボン酸ないしポリヒドロキシポリカルボ
ン酸組成物と相互作用している2ないしそれ以上のタンパク質が、一本の糸上の
ビーズ群のようである場合、該組成物−糸は、別々のタンパク質−ビーズ群の無
極性部分群が凝集するように、折り畳むことができる。凝集したタンパク質分子
群の数ないし大きさが十分に大き
な場合、該タンパク質−組成物複合体が沈降する。
次の実施例は本発明を説明することを意図するものであって、いかなる点から
も発明を制限するものではない。
実施例1 水不溶性ポリマーV(a)の調製
ポリマーの調製
3.0gの0.033モルの1,3−ジアミノ2ヒドロキシプロパンが2.0
L(アセトン)乾燥されたガラス容器内に収容された1.0Lのアセトンに溶解
された。無水条件は、常時維持された。
1,9−デカジエン(Stabilize06)で架橋された60gの無水マ
レイン酸メチルビニルエーテルが5L容反応フラスコ内に収容された1Lのアセト
ンに溶解され、4.5撹拌セッティングを用いて30分間撹拌された。(このポ
リマーは、アセトンに不溶である。)。架橋剤は、FMI定量ポンプ(ポンプセ
ッティング4)を使用して、370ml/hourの流速で反応フラスコに供給
された。反応は室温で、48時間あるいはそれ以上行われた。
この反応時間後、2Lの水道水が反応液に攪拌されながら添加された。内容物
が4つの1L遠心管に移され、3000gで10分間遠心分離された。上清は2
0L容のプラスチック容器に移され、換気フード内に置かれた。ペレットは、ペ
レットと等容量の水中に分散され、60のセッティングで30秒間ジフォード
ウッド(Gifford wood)ホモジナイザーでホモジナイズされた。ホモジネートの
容積は、水で2.5Lに調整された。マグネティックスターラで撹拌しながら、
2.5Lの0.2N
水酸化ナトリウムが添加され、15分間撹拌されて、3000×gで10分間遠
心分離された。ペレットは4Lの水で抽出され、分散されて、再び遠心分離され
た。この洗浄処置は、さらに2回繰り返された。
このペレットは、ペレットと等量の蒸留水中に分散され、マグネティックスタ
ーラで撹拌され、ホモジネートのpHは4N HClの添加により1.5に調節
された。遠心分離後、上清は除去された。このペレットは蒸留水で水洗され、再
び遠心分離され、そして上清のpHが5.0〜5.5になるまで、洗浄処置が繰
り返された。これにより、w=6でRがメトキシである式V(a)のポリマーが
提供される。
二つの炭素原子を有する架橋部分を有するポリカルボン酸またはポリヒドロキ
シポリカルボン酸組成物を、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンをジア
ミノ−ヒドロキシエタン(例えば1,2−ジアミノ−1−ヒドロキシエタン)と
代える以外は、上記のステップに従って形成され得る。架橋部分が多数のヒドロ
キシル基を有するポリヒドロキシポリカルボン酸組成物は、1,3−ジアミノ−
2−ヒドロキシプロパンを1,2−ジアミノ−1,2−ジヒドロキシエタンと代
えることにより上記のステップに従って形成され得る。
多数のヒドロキシル基を持つ三つの炭素原子を有する架橋部分を有するポリカ
ルホン酸またはポリヒドロキシポリカルボン酸組成物は、1,3−ジアミノ−2
−ヒドロキシプロパンを1,3−ジアミノ−ジ−または1,3−ジアミノ−トリ
−ヒドロキシプロパン(例えば1,3−ジアミノ−1,2−ジヒロキシプロパン
または1,3−ジアミノ−1,2,3−ジヒロキシプロパン)と代える以外は、
上記のステップに従って形成され得る。
四つの炭素原子を有する架橋部分を有するポリカルボン酸またはポリヒドロキ
シポリカルボン酸組成物は、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキ
シプロパンをα,ω−ジアミノ−モノ−ヒドロキシ−n−ブタン(例えば1,4
−ジアミノ−3−ヒドロキシブタンまたは1,4−ジアミノ−1−ヒドロキシ−
ブタン)と代える以外は、上記のステップに従って形成され得る。架橋部分が1
以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシポリカルボン酸組成物は、α,ω
−ジアミノ−モノ−ヒドロキシ−n−ブタンを1,4−ジアミノ−ジ−、1,4
−ジアミノ−トリ−または1,4−ジアミノ−テトラヒドロキシブタン(例えば
1,4−ジアミノ−2,3−ジヒドロキシブタンまたは1,4−ジアミノ−1,
2−ジヒドロキシブタン、1,4−ジアミノ−1,2,3−トリヒドロキシブタ
ン、1,4−ジアミノ−1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン)と代える以
外は、上記のステップにより形成され得る。実施例2 デオキシ脂肪族ジアミン(すなわち、m=0)を用いたポリマーV(b)の調製
3.66gの1,3−プロピレンジアミンは、3L乾燥ガラス容器で1.0L
アセトンと混合された。無水条件は、常時維持された。
60gの無水マレイン酸メチルビニルエーテルは、5Lの反応フラスコ内に収
容された1Lアセトン中の1,9−デカジエン(Stabileze 06)で架橋され、4
.5の撹拌セッティングを使用して30分間撹拌された。(このポリマーは、アセ
トンに不溶であった。)。架橋剤は370ml/hourの流速(ポンプセッテ
ィング4)で反応フラスコに供給された。反応は室温で、48時間あるいはそれ
以上進行された。
反応後、2Lの水道水が反応液に撹拌されながら添加された。反応物は4つの
1L遠心管に移され、3000×gで10分間遠心分離された。上清は20Lの
プラスチック容器に移され、換気フード内に置かれた。
このペレットは、ペレットと等容積の水に分散され、60のセッティングで30
秒間ギフォードホモジナイザーでホモジナイズされた。ホモジネートの容積は、
水で2.5Lに調整された。マグネティックスターラを用い、2.5Lの0.2
N水酸化ナトリウム溶液が添加され、15分間かき混ぜられて、3000×gで
10分間遠心分離された。ペレットは4Lの水で処理され、分散されて、再び遠
心分離された。この洗浄処置は、さらに2回繰り返された。
このペレットは、ペレットと等容積の蒸留水で分散され、マグネティックスタ
ーラで撹拌され、ホモジネートのpHは4NHClの添加により1.5に調節さ
れた。遠心分離後、上清は除去された。上清は、蒸留水で水洗され、再び遠心分
離され、上清のpHが5.0〜5.5になるまで、洗浄処置が繰り返された。
実施例3
実施例1(V)(ポリマーN)により作製された主たるポリヒドロキシポリカ
ルボン酸組成物が、以下の表1に列記された様々な物質を沈降させる能力に関し
て評価される。
表1(ヒト血清アルブミンからプラスミドDNAまで)に記載される全ての物
質は、シグマ ケミカル カンパニー、ミズーリー州セントルイス(Sigma Chem
ical Company,St.Louis,Missouri)から粉末または微粒子形状として得られ
る。
ウシ血清アルブミン(BSA)は、33mg/mlの濃度で、pH7.3〜7
.5の、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝0.9%生理食塩水に溶解される。(
残りの化合物であるウシイムノグロブリンから糖タンパク質までは表1に示され
る濃度で同じリン酸緩衝生理食塩水に同様に溶解される。)
US 5,4543,493(ポリマーPA)の実施例2のポリマー(V)と
同様に、実施例1において作製されたポリヒドロキシポリカルボン酸組成物(ポ
リマーN)の1%w/w溶液は、リン酸ナトリウム緩衝生理食塩水溶液を用いて
作られる。
架橋ポリヒドロキシポリカルボン酸組成物溶液(「除蛋白剤」)の1容積は、
試料溶液の等容積と組み合わされる。各々の溶液の組合せは反転により混合され
、そして10分間、室温で静置される。各々の溶液は、2,000×Gで10分
間、タンパク質−ポリヒドロキシポリカルボン酸組成物マトリックスを除去する
ために、遠心分離される。各々の残留する上清のタンパク質除去の百分率は、紫
外線吸収(280ナノメートル)または比色定量(ピアスカンパニー、イリノイ
州ロックビル(Pierce Company,Rockville,IL)からの「BCA プロティン
アッセイ リージェント(BCA Protein Assay Reagent)」を使用する)によ
り測定される。タンパク質除去(「除去%」)の百分比は、表1に示される。
タンパク質のウシ血清アルブミン、ウシイムノグロブリンおよびヘモグロビン
は、架橋ポリヒドロキシポリカルボン酸組成物により、90%あるいはそれ以上
のレベルで除去される。これらのタンパク質は、これらと結合する炭水化物のレ
ベルが一様に低い。反対に、α1酸性糖タンパク質は、炭水化物をたくさん有し
ているゆえに「除去%」は低い。最後に、表1のDNA試料については見られる
ように、非タンパク性の物質は架橋ポリヒドロキシポリカルボン酸組成物によっ
て、ほとんど沈降されない。 タンパク質結合データは、ポリマーNがポリマーPAより高いタンパク質結合
能を有することを明瞭に証明した。未反応性成分の効果は、ポリマーPAのそれ
と同様であると思われる。
実施例4 アニオンおよび中性界面活性剤の存在下でのポリマーNのタンパク質結合能
BSA溶液は、リン酸緩衝生理食塩水pH7.3中に33mg/mlの濃度で
かつ(a)1.0%w/vトウィーン80または1.0%w/vラウリル硫酸ナ
トリウム(SDS)のいずれか1つを含有させてそれ
ぞれ調製した。水に分散したポリマーNの1.0%w/w懸濁液を用いた。1容
量のポリマー懸濁液及びそれぞれの界面活性剤を含む1容量のタンパク質溶液を
本実験に用いた。タンパク質溶液およびポリマー懸濁液の各混合物を撹拌し、1
0分間室温で放置し、10分間2000×gで遠心分離した。上澄みを取出し、
280nmでのUV吸収を利用してタンパク質を分析した。
BSA-SDS溶液及びBSA-トウィーン80溶液からのタンパク質除去率は
、99%より大きかった。
実施例5 デオキシ脂肪族(Deoxyaliphatic)ジアミンスペーサー(すなわち、mはゼロに 等しい)で架橋されたポリマーNのタンパク質結合能
化合物(Vb)、すなわち、プロピレンジアミンで架橋されたポリマーN(1
.0%w/w)の類似化合物(ポリマーNB)及びポリマーPA(1.0%w/
wの従来品ポリマー)を、1mlの各々の懸濁液を1mlのBSA(33mg/
ml、リン酸緩衝生理食塩水pH7.3)を含む分離した複数の試験管に添加し
てタンパク質結合能に関して比較された。
タンパク質除去率は、ポリマーNB(m=0)で83%、従来品(ポリマーP
A)で73.5%であった。
デオキシ型のポリマーNB(m=0)が、脂肪族スペーサにヒドロキシルを一
つ有するポリマーN(m=1)より反応性が小さいことは興味のあることである
。ポリマーN(m=1)は、BSA(初期濃度33mg/ml)の98%を除く
ことを示した。実施例6
ポリマーNおよびPAの安定度に関するイオン環境と同様に温度の影響を測定
するために、実験を水及びグループIエレメントの塩化物塩を含む溶液の存在下
に、45℃で実施した。これらは水(該ポリマーは、対イオンを構成するH+を
有するそれらの形で存在した)、0.1MLiCl、0.1M NaCl、0.
1M KCl及び0.1M CsClである。
全ての実験は、1.0w/w%のポリマーN及びポリマーPAをそれぞれ用い
て行った。ポリマーの懸濁液を、10分間3000×gで遠心分離し、その後該
ポリマーのゲルと液体の容積比を遊離の液体4容量に対し該ゲル1容量の割合に
調節した。
試験管の内容物を混合し、45℃のインキュベータに入れた。該試験管を24
時間間隔でインキュベータから取り出し、遠心分離し、遊離の液体容積に対する
該ゲル容積の比率を記録した。当該比率はインキュベーション時間に伴って増加
し、増加する粘性の指標となる。
いくつかの媒質中でのゲルの容積の増加をグラフに表した(図1〜5)。ゲル
の膨張は、存在する対イオンまたはインキュベーション時間に関係なく、ポリマ
ーNの懸濁液よりもポリマーPAの懸濁液においてより顕性である。非ピペッタ
ブル(non-pipettable)な粘着性ゲルへのポリマーPAの全変換は、純水において
は72時間経過後に;0.1M塩化リチウムおよび0.1M塩化ナトリウムにお
いてはそれぞれ96時間後に、そして0.1M塩化カリウムおよび0.1M塩化
セシウムにおいてはそれぞれ120時間後に生じた。対照的に、ポリマーNの懸
濁液は、少ないゲル形成によって証明されたように、ゲル化の傾向がより少なか
った。120時間のインキュベーションの後、液相の相当な量がポリマーNの調
製液の全てに存在していた。懸濁媒質中の対イオンの性
質に関し、その回収容量は、Cs+>K+>Na+>Li+>H+の順序に減少した
。
ポリマーNの全ての懸濁液は、120時間、45℃でインキュベーション後、
ピペッタブル(pipettable)なものであった。これらの条件下において、ポリマー
PAは、粘着性ゲル状態への全変換を受け、継続して試験を受けることができな
かった。インキューベートされたポリマーNの懸濁液をタンパク質結合能につき
試験し、結果を非加熱の対照品と比較した。
実施例7
ポリマーNのタンパク質結合能への長期加熱の影響を測定した。水中及びグル
ープIエレメントの塩化物塩の水性溶液の存在下の1.0%w/wの懸濁液を1
20時間、45℃で加熱した後、このポリマーをタンパク質結合に関して試験し
た。1mlの各ポリマー懸濁液を、リン酸緩衝生理食塩水pH7.3中の33.
0mg/ml濃度のウシ血清アルブミン(BSA)1.0mlに添加した。内容
物を撹拌し(vortexed)、10分間室温で放置し、その後遠心分離した。上澄みを
取出し、タンパク質を分析した。結果をポリマーNについてのみ下記に表した。 データは、120時間45℃でのインキュベーションがポリマーNのタンパク
質結合能への検知できる影響がないことを示した。
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