【発明の詳細な説明】
減圧下で表面付着を促進するための室、およびそれを
用いる方法
[背景]
1.発明の分野
本発明は、一般的には、減圧下で表面付着を促進するための室、およびそれを
用いる方法に関し、より詳しくは、表面付着促進材料や表面被覆材料とともに用
い得るそのような室および方法に関する。
2.発明の背景
多くの適用業務で、表面被覆材料の層を表面に与えて、表面の化学的反応性を
低下させることが望ましい。例えば、人体内の様々な化学種と反応できるが、こ
れらの化学反応が生じるのを防ぐことが望ましい材料から、皮下探針を形成し得
る。そのため、探針を化学的に比較的不活性にする表面被覆材料で、そのような
皮下探針を被覆するのが好都合である。
近年、真空蒸着が、表面被覆材料を塗布する一般的な方法になっているが、そ
れは、不活性であり、許容され得る付着力を有する表面被覆材料の層を、この手
法が生じるからである。しかし、何らかの状況下では、表面被覆材料は、問題の
表面に容易に結合せずに、表面への表面被覆材料の比較的劣悪な付着を招くこと
がある。その結果、表面被覆材料を蒸着する前に表面付着促進材料を表面に塗布
することによって、表面被覆材料の付着力を増大させるための、いくつかの方法
が開発されている。
米国特許第3,600,216号明細書は、シランのプライマーを用いて表面付着促進
材料を表面に塗布する方法を開示している。この手法によれば、表面付着促進材
料を溶媒に溶かすことによって生成される溶液で、下地の表面を処理する。この
ときは、浸漬によって下地の表面を該溶液に接触させる。次いで、処理した表面
を乾燥して、溶媒を蒸発させ、表面付着促進材料の層を与える。次に、下地を真
空室に入れ、真空室を吸引す
る。真空室がその基底圧力に達した後、表面を表面被覆材料に接触させる。
この手法は、表面付着促進材料の層を表面に形成するのに多少の成功を収め得
るが、この方法には、いくつかの短所がある。溶媒の使用は、健康や安全性の要
因とともに、貯蔵や処分の懸念を伴い、コストの上昇を招くことがある。その上
、表面付着促進材料の塗布は、真空室の外でなされるため、この手法は、労働集
約的であって、簡便さの低下、およびコストの上昇を招く。
カナダ国特許第1,119,056号明細書は、減圧条件下での表面付着促進材料、例
えばγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(以後「A174」)を
塗布する方法を開示している。この手法によれば、弁を有する配管を通じて真空
室に接続された貯留槽に、A174を貯蔵する。問題の表面を真空室に入れ、弁
を閉じて真空室を吸引する。次いで、弁を開いて、A174を、室温以下に保ち
つつ真空室に入れる。次いで、弁を閉じ、表面被覆材料を蒸着する。
本願の発明者らは、カナダ国特許第1,119,056号明細書に開示された方法は、
通常は研究室という設定での使用にのみ適するにすぎない、比較的小規模の真空
室に限定され得ることを見出した。特に、この方法を商業的用途に設計された真
空室(すなわち、容積が約2.36リットル(約144立方インチ)以上の本体を有す
る真空室)で用いるときは、A174を室温以下に保つことは、A174が真空
室全体に適切に分布して、効果的な被覆を表面に形成するのに充分な量で蒸発す
るのを阻む。代りに、A174は、貯留槽を真空室に接続する配管内で凝縮する
のが観察されており、A174は、不均一に分布した被覆を表面に形成するか、
または全く表面に結合しないかのいずれかである。その結果、その後に蒸着され
る表面被覆材料は、劣悪な付着を示して、この方法を商業的用途には不適切にす
る。加えて、この方法を効果的に使用できる真空室の規模における限定のために
、この方法での使用に適した下地は、せいぜい約645cm2(100平方インチ)の面
積を有するものに限定される。
したがって、その後に蒸着される表面被覆材料が、改良された付着を示すよう
な、表面付着促進材料の層を表面に形成するのに用い得ることができる、商業的
に役立つ真空室を提供することが望ましい。更に、これらの真空室を用いて、付
着が改良された被覆材料の層を与える方法を提供することが望ましい。
[発明の要約]
上記により、改良された付着を示す表面被覆材料の層の形成に用い得る真空室
を提供することが、本発明の目的である。
表面被覆材料のそのような層を製造する方法を提供することが、本発明のもう
一つの目的である。
改良された付着を表面被覆材料が示すように、表面被覆材料の層を担持する、
表面付着促進材料の層をそれが担持する下地を提供することは、本発明の更に一
つの目的である。
例示的な一実施態様では、本発明は、表面被覆材料の層を蒸着する方法を提供
する。該方法は、真空室内で実施され、表面付着促進材料の層を下地の表面に蒸
着する段階と;表面被覆材料の層を表面付着促進材料の層の表面に蒸着する結果
、該表面被覆材料の層が、付着測定試験によれば1cmあたり約0.66kg(1インチ
あたり約3.75ポンド)より大きい付着力を有する段階とを含む。
もう一つの例示的実施態様では、本発明は、製造された物品を提供する。該物
品は、下地、表面付着促進材料の層、および表面被覆材料の層を含む。表面付着
材料の層は、下地によって担持され、表面被覆材料の層は、表面付着促進材料の
層によって担持される。表面被覆材料は、付着測定試験によって測定される限り
で、1cmあたり約0.66kg(1インチあたり約3.75ポンド)より大きい付着力を有す
る。
更に一つの例示的実施態様では、本発明は、真空室を提供する。該室は、本体
、貯留槽および配管を含む。本体は、約0.19cm(約75ミル)の直径の開口がその
中に配置されている。貯留槽は、表面付着材料を内容することができる。配管は
、本体の開口の周辺沿いに配置されて、配
管を本体に物理的に接続する。配管は、貯留槽にも物理的に接続される。配管は
、その中に開口が配置されているため、貯留槽が本体と流体連絡する。
[図面の簡単な説明]
図1は、本発明による真空室の一実施態様の模式的表現である。
図2は、表面被覆材料の層がその上に配置された、表面付着促進材料の層がそ
の上に配置された下地の一実施態様の断面図である。
図3は、本発明による付着測定試験を実施するのに用いられる装置の一実施態
様の模式的表現である。
[詳細な説明]
一態様では、本発明は、その後に蒸着される表面被覆材料が改良された付着を
示すように、表面付着促進材料の層を表面に形成するのに用い得る、真空室に関
する。図1は、付着促進蒸着区画11を有する真空室10の一実施態様を示す。
本発明によれば、区画11は、室10の本体18内に位置する下地28の表面に
、表面付着促進材料の比較的均等な分布が配置されるのを許すように設計されて
いるため、その後に蒸着される表面被覆材料の層は、改良された付着を示す。
区画11は、室10の本体18内へと穿孔された穴14の周辺の周囲で真空室
10に溶接された、溶接物のスタブ12を有する。A174を内容する貯留槽1
6は、本体18の開口22、およびスタブ12に接続された配管20と流体連絡
している。取付けブラケット(図示せず)によってその場に固定された加熱装置
26が、貯留槽16を囲む。真空室10のポンプ排気管31は、排気管31が、
室10を横切って対角線の方向に、穴14からできるだけ遠くに位置するように
配置される。加えて、貯留槽16は、排気管31に対して高い位置にあるのが留
意されることになる。
この配置により、A174の層は、下記のとおり、下地28の表面に被覆され
る。真空室10の圧力は、当業者に公知のとおりの標準的方法を用いて、その最
低圧力まで下げられる。次いで、貯留槽16の温度を、
加熱装置26の使用によって室温から約190℃へと上昇させる。この温度で、
A174は、制御された様式で貯留槽16から蒸発させられる。次いで、蒸発し
たA174は、配管20を通じて開口22へと移動し、開口22から室10の本
体18へと通過する。A174は、高い温度で蒸発させたため、室温以下のA1
74に比して大量の運動エネルギーを含み、その結果、A174は、本体18内
を容易に移動し、本体18の容積の実質的部分と接触する。その上、下地28は
、穴14から対角線の最大距離に位置するため、蒸発したA174の密度は、下
地28の表面の周囲の領域ではほぼ均質となる。そのため、下地28の表面に蒸
着するA174は、比較的均等に分布した層を形成する。下地28の表面への表
面付着促進材料の層の比較的均等に分布した層の形成は、その後に蒸着した表面
被覆材料の層が、改良された付着を示すのを許すと考えられる。下地28の表面
へのA174の蒸着の工程の際に、気化したA174が、真空室10の様々な部
品の内壁の部分も被覆し得ることが留意されることになる。
真空室10は、室温のA174を内容する貯留槽16の弁を開かずに、その最
低圧力にまで吸引できることが図らずも見出された。特に、従来からの知識に反
して、A174の蒸気圧が充分低いので、A174を室温に保持したときに、A
174の蒸発は、真空室10がその最低圧力に達するのを妨げないことが見出さ
れた。開口22は、本体18から貯留槽16へのA174の伝導性を下げること
ができ、それが、A174の蒸発による複雑化なしに真空室10がその最低圧力
に達するのを助けると考えられる。
真空室での蒸着の段階による一つの一般的な問題は、真空室の本体を吸引する
前に、貯留槽および付随する配管を吸引し、次いで弁を開放する段階に付随する
。多くの場合、真空室の操作者は、初めに貯留槽および付随する配管を吸引して
からそれらの弁を開放することを忘れる。その結果、主室を吸引した後に貯留槽
および付随する配管への弁を開いたときに、真空室の圧力が劇的に上昇する。こ
れは、真空室の排気、真空
室装備(例えば、真空室内に保管された感圧電子機器)の破壊、および/または
下地表面の汚染へと導くことがある。これは、実質的量の労力および資源の損失
を招き、この工程に付随するコストを上昇させる。したがって、貯留槽16と本
体18との間の弁の必要性を排除することによって、本発明による真空室は、よ
り効率的で、より廉価な工程を与えることができる。
付着促進蒸着区画11の特定の一配置を本明細書に開示したが、本発明は、他
の配置を包含するものとする。区画11の構成要素のこの特定の配置は、該区画
11が、下地28の表面に充分均等に分布した表面付着材料の層を形成する結果
、その後に蒸着される表面被覆材料の層が、改良された付着を示すことができな
ければならないということにのみ限定されるにすぎない。
例えば、室10の本体18が比較的長く、かつ水平である実施態様では、貯留
槽16は、熱分解室19(下記に説明する)の開口33の付近に位置しなければ
ならない。
貯留槽16は、いかなる表面付着促進材料も収容できる、真空に適合するいか
なる容器であってもよい。貯留槽16は、また、表面付着促進材料を蒸着するの
に用いられる温度以下でそれに内容される表面付着促進材料に対して、化学的に
不活性でなければならない。そのような貯留槽の一例は、100ml入りの304号
ステンレス鋼管である。
加熱装置26は、貯留槽16と、それに内容される表面付着促進材料とを制御
された様式で加熱できるいかなる装置であってもよい。装置26は、ブラケット
24aおよび24bなどによって室10に取り付けられつつ、貯留槽16を担持
できてもよい。一定の実施態様では、装置26は、貯留槽16を囲んでよい。そ
のような加熱装置の一例は、小型オーブンである。
配管20は、貯留槽16を穴14に流体接続できる、真空に適合できるいかな
る材料から形成してもよい。配管20も、A174に対して化学的に不活性でな
ければならない。一実施態様では、配管20は、Viton
(商品名)のOリング、1/8インチのおす軸継手、およびVCOのめすコネク
タから形成する。
穴14および溶接物スタブ12は、ともに溶接して、貯留槽16が本体18に
流体接続されるのを許す、真空に気密であるシールを形成する限り、いかなる大
きさの直径も有してよい。スタブ12が、一般的には、所定の大きさ[例えば3.
9mm(1/8インチ)]で入手できることから、穴14は、これらの所定の大きさ
の一つに相当する直径を有するのが好都合であり得る。一実施態様では、溶接物
スタブ12は、同等の接続装置、例えば、1/8インチユニオン、またはめすの
フラクショナルチューブアジャスタに置き換えてよい。
開口22は、貯留槽16から本体18への気化した表面付着促進材料の伝導性
を下げる結果、装置26による加熱後に、本体18への気化した表面付着促進材
料の流れが、本体18の部分全体での気化した表面付着促進材料の比較的均質な
密度の分布を生起し得ると考えられる。このことは、気化した表面付着促進材料
が、下地28の表面に比較的均等に分布した層を形成するのを可能にして、その
後蒸着される表面被覆材料の層が改良された付着を示すのを可能にする。したが
って、開口22は、貯留槽16から本体18への気化した表面付着促進材料の流
れを、下地28の表面に比較的均等に分布した層を形成するように、かつその後
蒸着される表面被覆材料の層が改良された付着を示すように制約できる限り、い
かなる大きさのものであってもよい。いくつかの実施態様では、開口22は、直
径が約0.25cm(1ミル=0.001インチ)より大きいならば、効果的ではないこと
が見出されている。そのため、そのような実施態様については、開口22は、直
径が約0.19cm(75ミル)未満でなければならない。一実施態様では、開口22は
、直径が約0.04cmである。
真空室10は、区画11を有するように改造できるいかなる真空室であっても
よい。加えて、室10は、表面被覆性蒸着区画13(図1)を含まなければなら
ない。好ましくは、室10の本体18は、容積が約2.36リットル(約144立方イ
ンチ)以上、より好ましくは約4.72リットル(約
288立方インチ)以上、最も好ましくは7.08リットル(約432立方インチ)以上で
ある。そのような真空室は、それぞれSpecialty Coating Systems,Inc.,Clear
Lake,WIから入手できる、下記の商業的に入手できる真空室:モデル1050(
部品番号第2169800番);モデル1030(部品番号第216802番);モデル2090
(部品番号第2169803番);モデル2010(部品番号第2169804番);およびモデル
2060(部品番号第BM02616番)を包含するが、これらに限定されない。
図1に示したとおり、パリレン族の表面被覆材料とともに用いるのに適した表
面被覆性蒸着区画11は、気化室15、熱分解室17および熱分解後室19を含
まなければならない。気化室15は、パリレン二量体を気化し、熱分解室17は
、パリレン二量体を切断して、パリレン単量体を含むガスを形成し、熱分解後室
は、少なくとも1枚の冷却したそらせ板を有して、いかなるパリレン二量体もガ
スから除去する。そのような蒸着区画は、一般的に譲渡された米国特許願第08/5
49,087号明細書に開示され、それは、引用により本明細書に組み込まれる。本明
細書には、区画13の一定の実施態様が開示されているが、区画13は、これら
の実施態様に限定されないものと理解しなければならない。区画13は、下地2
8の表面に配置された表面付着促進材料の層に、表面被覆材料の層を蒸着するよ
う一斉に作用できる装置のいかなる組合わせも含んでよい。そのような区画は、
当業者には公知であり、本発明の範囲内にあるものとする。
区画13を用いて表面被覆材料の層を蒸着する方法は、パリレン二量体を気化
させる段階と、パリレンを熱分解して、パリレンの単量体を含むガスを形成する
段階と、該ガスを少なくとも1枚の冷却したそらせ板を通過させて、ガス中のい
かなるパリレン二量体も除去する段階と、下地28の表面に配置した表面付着促
進材料の層にパリレンの単量体を蒸着する段階とを包含する。そのような方法は
、例えば、米国特許願第08/549,087号明細書に開示されている。表面被覆材料の
層を蒸着するその他の方法は、当業者には公知であり、本発明の範囲内にあるも
のとす
る。
図2は、表面付着促進材料の層32が蒸着される表面30を有する下地28の
一実施熊様の断面図を示す。表面被覆材料の層34は、層32の上に配置される
。表面30は、その後に蒸着される層34が、改良された付着を示すように、層
32を蒸着できる限り、いかなる面積を有してもよい。図1は、その中に1個の
下地28が配置された室10を示すが、室10は、複数の下地がその中に配置さ
れてよいと理解しなければならない。複数の下地が室10内に配置される一定の
実施態様では、下地の全表面積は、好ましくは少なくとも約645cm2(100平方イ
ンチ)である。
本発明によれば、下地28は、本発明の方法の少なくとも一つによって表面付
着促進材料を蒸着してよい表面30を有する、いかなる物体または本体であって
もよい。下地28は、例えば、重合体材料、半導体材料、金属材料、金属材料の
酸化物などを包含する有機材料もしくは無機材料から形成してよい。そのような
有機材料および無機材料は、アルミニウム、鉄、鋼、モリブデン、酸化アルミニ
ウム、酸化チタン、酸化鉛、酸化銅、酸化鉄、酸化ベリリウム、酸化マンガン、
酸化タングステン、酸化タンタル、酸化バナジウム、シリコーン、天然ゴム、プ
ラスチック複合材、セルロース性材料、エポキシ含有化合物、熱硬化性化合物、
熱可塑性化合物、酸化ケイ素(例えば、砂、フライアッシュ、水和シリカ、シリ
カ、石英、エーロゾル、キセロゲル、燻蒸シリカ)などを包含するが、これらに
限定されない。下地28は、真空に適合する液体から形成してもよい。「真空に
適合する」によって、本明細書では、真空室を吸引できる最低圧力が該真空適合
材料の存在と無関係であるような、蒸気圧を室温で有する材料を指すことを意味
する。そのような真空適合材料の一例は、A174である。その他のそのような
真空で記号材料は、当業者には明白であると思われ、本発明の範囲内にあるもの
とする。
一定の実施態様では、下地28は、プリント配線板、シリコンウェーハ、紙、
キーパッド、カテーテル、ペースメーカーカバー、皮下探針、
羽毛、シリコーンOリングなどであってよい。
表面付着促進材料の層32は、表面30と層34とに同時に結合する結果、層
34が、付着測定試験によって測定した限りで、1cmあたり約0.66kg(1インチ
あたり約3.75ポンド)より大きい、好ましくは1cmあたり約0.89kg(1インチあ
たり約5ポンド)以上、最も好ましくは1cmあたり約1.4kg(1インチあたり約
8ポンド)以上の付着力を有することができる、いかなる真空適合材料から形成
してもよい。
本明細書に用いられる限りで、用語「付着測定試験」とは、W.K.Asbeck,Paint
and Varnish Prod.p.23,1970が開発した試験を指す。図3は、付着測定試験
に用いられる実験装置を表わす。矢印が示す方向に移動するモータ駆動の載物台
40に、下地30を載せる。台40が移動するにつれて、ナイフ様の装置42が
、層32/34に溝を切る。装置42は、下地28と層32/34との境界面に
押し込まれ、水平方向の力(Fh)が変換器44によって測定される。下地28
が、その出発点に復帰し、再び走行するため、装置42と表面30との間の摩擦
力による寄与を測定することができる。水平の力と摩擦力との差は、層34の付
着力に等しい。
表面付着促進材料の層32は、上記に考察した特性を有するいかなる材料から
形成してもよいが、層32は、好ましくは有機シラン、より好ましくはアルコキ
シシラン、最も好ましくはA174(すなわちγ−メタクリルオキシプロトリメ
トキシシラン)から形成する。
いくつかの実施態様では、表面付着促進材料の多層の分子から層32を形成す
る。これらの実施態様では、表面付着促進材料のいくつかの分子は表面30と結
合するが、表面付着促進材料のその他の分子は、表面30とは結合しない。本明
細書に用いられる限りで、「結合」とは、化学結合、物理的絡まりまたは物理的
結合、例えば水素結合またはファンデルワールス結合のいかなる組合わせも指す
。
層32が表面付着促進材料の多層の分子から形成される実施態様のためには、
層32は、水晶結晶厚さモニタ、または同等の装置を用いて測
定した限りで、厚さが少なくとも約20Åでなければならない。層32が約20Å未
満であるならば、層34は、充分な付着力を保有しない可能性があることに留意
しなければならない。
いくつかの実施態様では、表面付着促進材料の分子は、極性末端と非極性末端
とを有する。例えば、A174は、極性末端(トリメトキシ)と非極性末端(メ
タクリルオキシ)とを有する。完全に理解されてはいないが、そのような表面付
着促進材料は、該表面付着促進材料の分子の非極性末端より極性である表面とと
もに用いたときは、表面付着材料の分子の極性末端が、表面に結合し、表面付着
材料の分子の非極性末端は、表面から遠ざけられる。この配置によれば、表面被
覆材料の分子は、表面付着材料の分子の、比較的極性である表面ではなく非極性
である末端と接触する。表面被覆材料の表面分子が表面より非極性であれば、表
面被覆材料の表面分子は、表面付着材料の分子の、比較的極性である表面より非
極性である末端に容易に結合し得る。
表面被覆材料の層34は、層32に結合することと、表面30に対して化学的
不活性である材料の層を形成することとができる、いかなる材料から形成しても
よい。そのような材料は、当業者には公知であり、例えば、ポリ−p−キシリレ
ンなる材料を包含する。そのようなポリ−p−キシリレン類の例示的かつ非限定
的リストは、パリレンD、パリレンN、パリレンC、および引用によってここに
組み込まれる、一般に譲渡された米国特許願第08/544,831号明細書に開示された
ようなオクタフルオロー[2,2]パラシクロファンを包含する。
一定の実施態様では、層34は、表面30とは異なる物理的特性を有してよい
。例えば、層34は、表面30とは異なる粗さ、導電率および/または熱伝導率
を有してよい。
下記の実施例は、例示を目的とするものとし、限定として解してはならない。
実施例1
表面被覆材料の層のない下地を、下記のとおり下地に蒸着した。ホウ
ケイ酸塩の下地を、水へのMicrosoap(商品名)の2%溶液で手洗いによって浄
化した。下地を脱イオン水で洗浄し、オートクレーブに入れた。脱イオン水の存
在下、下地をオートクレーブ内で約120℃(250□F)で約1時間加熱した。下地
をオートクレーブから取り出し、残存するいかなる液体も超純粋窒素ガスで掃去
した。次いで、下地を100ミリトル未満の圧力、約50℃の温度で減圧焼成した。
次いで、浄化された下地を、初めにパリレンCの固体二量体を気化することに
よって、パリレンCで被覆した。次いで、パリレンのメチレン−メチレン結合を
熱分解室内で約680℃の温度で切断して、パリレンCの単量体を得た。次いで、
該単量体をA174の層に蒸着した。蒸着に際して、A174の単量体は重合し
た。被覆した下地を真空室から取り出し、脱イオン水の存在下、約120℃(250□
F)で約1時間にわたってオートクレーブに入れることによって、加圧した。
次いで、上記の付着測定試験を用いて、パリレンCの材料の被覆の付着力を測
定した。付着測定試験によれば、平均付着力は、約0.044kg/cm(約0.25ポンド/
インチ)であると測定された。
実施例2
米国特許願第3,600,216号明細書に開示された方法に実質的に従って蒸着され
た表面付着促進材料の層と、表面被覆材料の更に一つの層とを有する下地を、下
記のとおり製造した。実施例1に記載のホウケイ酸塩の下地を、実施例1に開示
した方法に従って浄化した。0.5%のA174、49.75%の脱イオン水、および49
.75%のイソプロパノールの溶液に浸漬することによって、A174の層をホウ
ケイ酸塩の下地に塗布した。この浸漬操作を約15分間実施した。次いで、下地を
約15分間乾燥し、次いで精製イソプロパノールで洗浄した。次に、下地を約1時
間半空気乾燥した。
上記の方法によって与えられたA174の層を、パリレンCで被覆し、実施例
1に記載のとおり加圧した。次いで、上記の付着測定試験を用いて、パリレンC
なる材料の被覆の付着力を測定した。この実験を4回反
復して、全部で5個のデータ点を得た。付着測定試験によって、平均付着力は、
約0.40kg/cm(約2.25ポンド/インチ)であると測定された。
実施例3
表面付着促進材料の層を有する下地を、下記のとおり製造した。実施例1に記
載のホウケイ酸塩の下地を、実施例1に開示した方法に従って浄化した。次いで
、下地を真空室に入れ、A174の層を下地の表面に減圧条件下で塗布した。次
いで、被覆した下地をこの真空室から取り出し、本明細書に記載の方法に従って
、第二の真空室に移した(すなわち、表面被覆材料の蒸着の前に、被覆した下地
を雰囲気条件に接触させた)。
次いで、実施例1に記載のとおり、A174の層をパリレンCで被覆し、加圧
した。表面被覆材料の蒸着の前に、被覆した下地を第二の真空室内で実質的量の
動的な吸引に接触させたことに留意しなければならない。次いで、上記の付着測
定試験を用いて、パリレンCなる材料の被覆の付着力を測定した。この実験を4
回反復して、全部で5個のデータ点を得た。付着測定試験によって、平均付着力
は、約0.66kg/cm(約3.75ポンド/インチ)であると測定された。
実施例4
実施例1に記載のホウケイ酸塩の下地を、実施例1の方法に従って浄化した。
次いで、基質を、図1に示したとおりに改造したモデル1050パリレン生成真
空室(部品番号第2169800番:Specialty Coating Systems,Inc.,Clear Lake,
WI)に入れた。室の圧力を約50ミリトルまで下げた。A174約2.5mlを約190℃
の温度で気化し、A174の被覆の厚さを、水晶結晶厚さモニタ(モデル番号T
M100:Maxtekから入手可能)を用いて追跡した。次いで、実施例1に記載の
とおり、A174の層をパリレンCで被覆し、加圧した。A174の層は、約22
7Åであり、パリレンCの層は、約4,000〜約5,000Åであった。次いで、上記の
付着測定試験を用いて、パリレンCなる材料の被覆の付着力を測定した。この実
験を4回反復して、全部で5個のデータ点を得た。付着測定試験によれば、平均
付着力は、約1.42kg/cm(約8ポンド/インチ)
であると測定された。
実施例1が示すとおり、パリレンなる材料の蒸着前にA174の層をホウケイ
酸塩の表面に塗布しないときは、パリレンなる材料は、最も劣悪な付着を有する
。更に、A174の層を溶液から塗布したとき(実施例2)は、その後蒸着した
パリレンなる材料の層は、劣悪な付着を示す。加えて、A174を被覆したホウ
ケイ酸塩の下地を、パリレンなる材料の蒸着前に雰囲気条件に接触させたとき(
実施例3)は、パリレンなる材料の層は、劣った付着を示す。しかし、本発明の
方法を用いて、A174の層およびパリレンなる材料をホウケイ酸塩の下地に塗
布したとき(実施例4)は、パリレンなる材料の層は、実施例1〜3の方法を用
いたときより優れた付着を示す。
このようにして、本発明の一定の実施態様を説明すると、当業者には、様々な
改良、改造および変更が明らかであると思われる。そのような改良、改造および
変更は、本発明の精神および範囲内にあるものとする。したがって、ここまでの
説明は、例示のためのみであるにすぎず、限定すると意図されてはいない。本発
明は、下記のクレーム、およびそれと同等なものに定義されたとおりにのみ限定
されるにすぎない。
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【要約の続き】
物理的に接続する。配管は、貯留槽にも物理的に接続さ
れる。配管は、貯留槽が本体と流体連絡するよう、その
中に開口が配置されている。