【発明の詳細な説明】
不粘着剤を使用して材料、特に紙及び厚紙からできた材料からなる平坦なウェブ
を熱機械表面処理する方法
本発明は、材料からなる平坦なウェブ、特に紙や厚紙のウェブの熱機械表面処
理の改良であって、該材料のウェブと前記熱機械表面処理に使用される工具、例
えばロール、の表面との間での接着を低減するか更には防止する薬剤(いわゆる
不粘着剤)を使用する改善に関する。
紙や厚紙の特級品の製造方法では、熱機械表面処理の方法が最終加工段階を代
表し、この段階では材料ウェブの特性が実質的に改質され、用途の要求に応じて
調節される。紙及び厚紙の種類によって満足すべき要求特性の内容は広範であり
、例えば透過性、インク吸収性、印刷適性、及び/又は例えば溶剤含有コーティ
ングもしくは水性コーティングに対する特別の障壁特性のような特性があり、こ
れらは例えばミクロな粗さ(micro-roughness)やマクロな粗さ(macro-roughness)
、多孔度、吸収性、紙むけ(picking)及び耐摩耗性、並びにダストが存在しな
いこと等の紙の特性によって逆に影響を受ける。表面に影響するこれらの特性の
多くは水分と原密度(raw density)の局在的な分布に強い関係を有している。
材料の平坦なウェブを熱機械的表面形成するすべての方法は、ウェブが表面特
性、硬さ及び柔軟性の異なる2又はそれ以上のロールの間を通過する際に形成さ
れるべき平坦な材料の上に加えられる同時のもしくは直接に連続した熱および圧
力の作用の機能的原理に基づいている。このような熱機械的表面処理に先だって
、形成されるべきウェブに湿式前処理を施すことが多く、この処理では水又は水
蒸気を用いて予備加湿が行われる。この目的のために、スムーザー、光沢カレン
ダー、ホットカレンダー、くせ取りロール、ソフトカレンダー及び類似の装置が
紙や厚紙の等級の種類、必要な表面仕上げ、および生産速度に応じて使用される
。
しかし、周知の熱機械表面処理の方法には、処理される材料の成分が材料を高
温に加熱したときにその融点及び/又は軟化温度に達することに由来する重大な
欠点がある。この結果、材料ウェブが前述の装置例えばロールに部分的もしくは
完全に接着することになり、そのため生産の効率的な流れに必要な熱供給や生産
速度に例示される利用出来るはずの装置条件を利用することが出来ない。
特に、こうした欠点は感水性及び/又は感熱性のバインダーを含有する表面を
サイジングしたもしくはコートした紙において、あるいは合成繊維を含有する、
ラテックスを含浸させたもしくはラテックスをコートした特殊紙(special paper
)において、着色コーティング(pigment coating)中にラテックスを高い割合で
含有するコート紙の生産において生じる。この場合、生産の過程で上述したタイ
プの障害は特定の温度及び/又は生産の流れ速度において起こる。
隣接する表面同士の接着力を低減する薬剤(いわゆる不粘着剤)を使用するこ
とは周知である。この目的のために、シリコーン、水中油型エマルジョン、金属
石鹸、ワックス特にパラフィン、及びタルクが使用される。これらの材料の他に
膜形成テトラフルオロエチレンポリマーが熱可塑性プラスチックの加工において
粘着防止剤として使用される。自己乳化性の脂肪酸モノグリセライドおよび脂肪
酸モノトリグリセライドからなる水中油型エマルジョンに基づく剥離性エマルジ
ョンを使用することは食料産業においてなじみ深い。
ヨーロッパ特許公報0 478 177 A1によると、かかる状況下では、カ
ルナバワックスとパラフィンワックスのコ(co)−エマルジョンが厚紙の製造の
際に粘着防止剤として使用される。
これまで述べてきた不粘着剤は熱機械表面処理には適しない。というのは、そ
れらは効果が不十分であるか、あるいは得られる製品の目的とする表面処理に影
響を与えない形でそれらの方法に従って使用することが出来ない。
ドイツ特許明細書DE 43 01 677 C2には、特定のエチレン/ア
クリルエステル共重合物を使用して、熱可塑性張り合わせ用フィルムをカレンダ
ーを用いて製造する際の家具産業用のプラスチックフィルムの印刷適性を改良す
ることが提案されている。
ドイツ特許公報44 12 624 A1には、オフラインカレンダーで艶出し
(glazing)により紙を製造することが記載され、これによると、巻き上げられ
た材料ウェブが制御された温度及び/又は湿度を有する周囲雰囲気中に中間的に
保管され、均一な処理と印刷適性の改良が達成される。
トナーを紙の表面から除去し、接着剤残留物をプラスチックから除去し、プラ
スチックのコーティングを剥ぎ取り、金属表面から切削油の残留物又は色鉛筆の
マークをとって清浄化し、又は接着剤で接着されたPVCの断片を除去するため
に使用される組成物がヨーロッパ特許公報0 648 820 A2により公知で
ある。この目的のために、非水性相を8〜90重量%含有する濃縮された水中油
型エマルジョンが使用され、このエマルジョンは例えばジカルボン酸ジエステル
のような実に様々な有機成分を含有しており、部分的に超音波や他の手段(不織
布の細片)を適用して5〜70℃の温度範囲内で、すなわち清浄化工程で該洗剤
を追加加熱する操作を部分的に行って使用される。更にこのエマルジョンはイソ
プロパノール、トルエン、ベンジルアルコール、メチルエチルケトン、N−メチ
ルピロリドン、ジ−およびトリエリレングリコールジメチルエーテル、ならびに
3−メチル−3−メトキシブタノールを溶剤として含有しており、これらの溶剤
のために、工業上の安全性の理由および健康への害のためにこのエマルジョンを
閉鎖したシステム内で使用することは制限される。
ドイツ特許出願P 195 19 268は、セルロース、紙、厚紙、およびカ
ートンもしくはそれ用の厚紙の製造に使用される機械類および工場設備の部品を
洗浄するための、およびこのような機械類が接着剤や接着性の樹脂により汚れる
のを防止するためのエマルジョンとして使用される組成物であって、油相成分と
して飽和もしくは不飽和の脂肪酸モノアルキルエステルと飽和もしくは不飽和の
一価もしくは多価の炭素原子数2〜30のカルボン酸をポリオールとともに含有
する組成物の使用方法に関する。
ヨーロッパ特許公報0 529 385 B1には紙の表面に平滑性及び/又
は光沢を与える方法であって、加熱及び加圧の後で紙ウェブをそのような光沢及
び平滑性を得るために衝撃処理を受けさせて予め成形された繊維を固定すること
からなる方法が記載されている。
1-514頁(1984)]による刊行物により、脂肪族ジカルボン酸エステルが高温で粘度
を有し、蒸発傾向が低く、耐酸化性のために合成潤滑油の成分として使用するこ
とが知られているが、ジカルボン酸エステルは燃焼エンジン中の金属表面に堆積
しピストンの清浄化が改善されることがわかった。
米国特許4,776,970には、紙のコーティング、特に紙の印刷に使用さ
れるための剥離効果を有する滑剤が記載されており、この滑剤は炭素原子数11
〜21の脂肪酸エステルであって、40〜100℃の温度範囲内でのコーティン
グ及びカレンダリングに添加剤として使用される。比較のためにテストされたエ
チレングリコールジステアレートはこの脂肪酸エステルに比較して効果が劣るこ
とが示された。
ル、特にアジピン酸、フタル酸、セバシン酸及びアゼライン酸のエステルをプラ
スチック製品やフィルムの製造に使用することが知られている。
そこで本発明の目的は、平坦な材料、特に紙や厚紙のウェブの熱機械表面処理
において材料のウェブがロールやプレス工具のような設備の装置部品に接着する
という接着効果を軽減しまたは防止することによって、表面品質が改良されたこ
のような材料ウェブの製造を可能にし、このような平坦な材料の製造において利
用可能な方法技術の潜在力をより多く利用可能にする点、即ち、例えばより高い
生産流れ速度及びより高い温度で運転することを可能なようにすることである
上記の目的は、ジカルボン酸ジアルキルエステル及び/又は飽和及び/もしくは
不飽和の炭素原子数8〜18の脂肪酸の炭素原子数3〜6の多価アルカノールと
のエステル及び/又はモノ不飽和及び/もしくはポリ不飽和の炭素原子数16〜
22の脂肪酸を不粘着性有効成分として含有する薬剤を使用することによって達
成される。
そこで本発明は、平坦な材料、好ましくは水含有量が50重量%未満である平
坦な材料、特に紙及び厚紙(carton)から作られた材料を少なくとも一種の不粘
着剤を用いて熱機械表面処理する方法において、該不粘着剤がジカルボン酸ジア
ルキルエステル、及び/又は飽和及び/もしくは不飽和の炭素原子数8〜18の
脂肪酸と炭素原子数3〜6の多価アルカノールとのエステル、及び/又はモノ不
飽和及び/もしくは多価不飽和の炭素原子数16〜22の脂肪酸を含有すること
を特徴とする前記の方法に関する。
ジカルボン酸エステル、飽和及び/もしくは不飽和の炭素原子数8〜18の脂
肪酸の炭素原子数3〜6の多価アルカノールとのエステル並びに不飽和の炭素原
子数16〜22の脂肪酸が熱機械加工作業において驚くほどの不粘着性効果を示
し、その結果材料の装置のパーツへの付着、例えばロールやプレスの加熱した表
面への付着が低減され、又は完全に防止されることがわかった。
特に、紙及び厚紙ウェブの製造においてより具体的には表面処理された特殊紙
(special paper)の製造において並びにコーティング、平滑化(smoothing)又
は艶出し(glazing)において、本発明によると上記の不粘着剤を使用すること
ができる。
本発明に従って使用することができる不粘着剤は、ジカルボン酸エステル、好
ましくは炭素原子数2〜12のジカルボン酸エステルと炭素原子数1〜13のn
−アルカノール及び/又はイソアルカノールとのジカルボン酸ジアルキルエステ
ル及び/又はジイソアルキルエステル、例えばジn−ブチルオクサレート、ジn
−ブチルマロネート、ジn−ブチルサクシネート、ジn−ブチルグルタレート、
ジn−ブチルアジペート、ジn−ブチルスベレート、ジn−ブチルセバケート、
ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジn−プロピルアジペート、ジイソ
プロピルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ第三ブチルアジペート、ジイ
ソアミルアジペート、ジn−ヘキシルアジペート、ジ(2−エチルブチル)アジ
ペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジメ
チルフタレート、ジエチルフタレート、ジn−ブチルフタレート、ジイソブチル
フタレート、ジ(2−エチルエキシル)フタレート、及びジイソデシルフタレー
ト並びにC9ジカルボン酸(トリメチルアジピン酸)及びドデカンジカルボン酸
のジエステルである。
更に、飽和及び/又は不飽和の炭素原子数8〜18の脂肪酸の炭素原子数3〜
6の多価アルカノールとのエステル、例えばグリセロール、ソルビトール及びソ
ルビタンの前記の脂肪酸とのエステル、具体例としてはグリセロールのモノ脂肪
酸エステル及び/もしくはグリセロールのジ脂肪酸エステル及び/もしくはグリ
セロールのトリ脂肪酸エステル、ソルビトールのモノ脂肪酸エステル及びソルビ
トールのジ脂肪酸エステル、並びにソルビタンのモノ脂肪酸エステル及び/もし
くはソルビタンのジ脂肪酸エステル、及び/もしくはソルビタンのトリ脂肪酸エ
ステルを使用してもよい。
好ましくは、アジピン酸とソルビタンとのエステルが使用され、そして特に好
ましくは炭素原子数1〜6のn−アルカノール及び/又はイソアルカノールのア
ジピン酸エステル、例えばジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジn−プ
ロピルアジペート及びジイソプロピルアジペート、ジn−ブチルアジペート及び
/もしくはジイソブチルアジペート、並びに、グリセロールトリオレエート及び
上述したジカルボン酸と種々の炭素原子数1〜6のn−アルカノール及び/もし
くはイソアルカノールとの混合エステルである。
本発明の方法に従って不粘着剤として使用することができる脂肪酸は、不飽和
の炭素原子数16〜22のカルボン酸であり、好ましくはオレイン酸、リノール
酸、リノレン酸、エレオステアリン酸及び5,9,12−オクタデカントリエン酸
であり、これらは植物油及び動物油中に混合物として存在し、例えばタル油の脂
肪酸として知られていいる。
該エステル及び不飽和の脂肪酸はそのまま直接に又は希釈もしくは濃縮した水
性のもしくは無水の溶液もしくは水性分散液の形で使用される。適切な溶媒はn
−アルカノール及びイソアルカノール、液状炭化水素、アセトン及びその他周知
の溶媒であり、特に天然油又はナタネ油のメチルエステルのような改質天然油が
使用される。
これらの不粘着的に効果を有するエステル及び不飽和脂肪酸は単独で又は適当
な水溶性もしくは水不溶性の溶媒と共に非イオノゲン性(非イオン形成性)、イ
オン性及び両性の、特にノニオン性及びアニオン性の界面活性剤を乳化剤として
使用して分散させてエマルジョンとして使用してもよい。
適当なノニオン性乳化剤は、ヒドロキシアルキルエーテル、例えば、好ましく
は脂肪族アルコール及び脂肪酸及びオイル類それぞれのヒドロキシエチレート及
び/又は末端封鎖されたヒドロキシエチレートである。アニオン性乳化剤として
適するものは、アルキルスルホネート及び/又はアリールスルホネート、α−オ
レフィンスルホネート、α−スルホ脂肪酸エステル、スルホコハク酸エステル及
びアルキルスルホネート及びエーテルスルホネート並びにカルボキシメチル化ヒ
ドロキシエチレート及び石鹸である。本発明に従って使用される好ましく安定な
エマルジョンの製造方法は周知である。例えば、該不粘着性成分を含有する疎水
性相を乳化剤を含有する水性相に加え、攪拌又は再循環させて分散させる。
本発明によると、熱的に安定な本発明の不粘着剤は装置、すなわち例えばロー
ルやプレスの表面にそのまま直接適用することができ、また同様に、含浸液また
は紙塗布混合液(mass)または予備加湿するときの加湿用の水もしくは水蒸気に
添加してもよく、あるいは仕上げ後の紙ウェブに好ましくは含浸装置もしくは塗
布装置の直後または平滑化ロールの直前に適用してもよい。
本発明の不粘着剤は水蒸気加湿のための過熱水蒸気に好ましくは連続的な態様
で計量して供給される。該水蒸気揮発性不粘着剤は例えばエタノール、イソプロ
パノールまたはアセトンのような水混和性の溶媒に溶かした状態で計量供給され
る。
使用される不粘着剤の量は例えば必要な効果、所望の温度上昇、またはその他
のプロセスの尺度に応じて、装置、すなわちロールやプレスの表面に適用される
量によって制御することができる。通常、0.1〜10.0g/m2、好ましく
は0.1〜5g/m2の不粘着剤が装置の表面に適用される。過熱水蒸気のライ
ンに計量供給するときは、0.1〜10.0kg/時間の不粘着剤、好ましくは
0.2〜4.0kg/時間の不粘着剤を水蒸気に加える。示したこれらの量のお
のおのが不粘着剤組成物の有効物質に関している。
本発明によると、不粘着剤は混合物としてまたは周知の不粘着剤との混合物と
して使用してもよい。
本発明に従って不粘着剤を使用することにより、着色塗料をコートした(pigm
ent-coated)が表面特性、特に平滑性、光沢及びミクロな粗さが目立って改良さ
れた状態で得られ、一方紙ウェブの原密度(raw density)は変わらないままで
ある。本発明によって処理された紙の紙特性は、一回の処理ステップでの加工に
よって、これまで二回のソフトカレンダリングを行うことによって初めて達成す
ることができた品質レベルにほぼ到達する。
家具のプレプレグの製造においては、ワニス塗り後の光沢が著しく改善され、
この時、水性及び/または溶媒含有のグラビアインクによる湿潤性に影響はおこ
らない。
本発明にしたがって不粘着剤を用いて材料の平坦ウェブを製造すると、著しく
改善された特性を有する追加の製品が得られる。すなわち、両面にラテックスを
含浸し一面にラテックスを塗布した可撓性の研磨原紙(abrasive raw paper)の
製造においては、例えば、該不粘着剤を加熱したスチールのロールに塗布するこ
とによって表面温度を70℃超える分高めても接着効果がまったく起こらないよ
うにすることができる。かかる温度の増加のために約80%平滑性が増加し、ミ
クロな粗さが減少し、厚さが減少しさらに剛性の低下が達成される。
同様の利点が、表面着色したシリコーン原紙(raw paper)の製造において本
発明による不粘着剤を使用すると得られる。
本発明を次の実施例を参照して実験的に説明する。ここで、物質に関連して使
用したパーセントは成分の重量に関するものである。
例1
両面にラテックスが含浸され実質的に一方の面にラテックスがコートされた、
120g/m2であって全ラテックスの割合が約25%である研磨原紙からなる
幅約20cmで長さ約80cmのストライプを、約6%の平衡湿分において、kl
einewefers AG社(クレフェルトD−47803)製の二本ロールの実験室用カ
レンダーで、可能な限り高いライン圧において加熱スチールロールの温度を上昇
されながら平滑化処理した。逆転ロール(counter−roll)は普通の
ハートニップ(Hartnip)カレンダーの構造に類似した木綿/硬質紙ロー
ルであった。
スチールロールの表面温度が約60℃の時、該紙ウェブのロールへのわずかな
付着が起こった。この付着は約70℃では増加することが認められた。
1.85重量部の非イオノゲン性の植物油のエトキシレート、17.1重量部
の水及び3.1重量部のジn−ブチルアジペートからなる本発明の熱安定性不粘
着剤を加熱ロール(スチール)に塗布しさらにこの加熱ロールを加熱すると、表
面温度150℃においてのみ紙ウェブがスチールロールに塊状に付着した。その
結果、非処理の加熱ロールと処理した加熱ロールとを比較すると、不粘着剤を使
用したときには付着結果は温度を70℃よりも大きく上げた後だけ表れた。材料
ウェブをより強く加熱してこのように行うことができた操作によって、平滑性が
約755Bekk−sから1180Bekk−sに増加し、ミクロな粗さ(Pa
rker Print Surf)が約2.8μmから2.4μmに減少し、厚
さが124mmから118mmに減少し、剛性が227mNから212mNに減
少した。
例2
ラテックスを含浸しラテックスをコートした例1の120g/m2の研磨原紙
を約13%に加湿し、密閉したプラスチックの袋に中間的に約1時間保管して紙
内部の水分の分布を均一にし、その後で艷だしをおこなった。再び、60℃を超
える非処理スチールロールの表面温度では紙ウェブの塊状の付着が始まったが、
一方実施例1の熱安定性不粘着剤で処理したスチールロールには紙ウェブの付着
は表面温度が約140℃のときだけ起こった。艶だし前に紙ウェブの水分含有量
がより高くなっている(例1の6%ではなくて13%)ことを考慮すると、処理
した研磨原紙の表面特性の改良は例1に記載したものよりもよりはっきりしてい
た。
例3
パイロットプラントのスムーザーで、例1及び例2によるラテックスを含浸し
コートした120g/m2の研磨原紙を、可能である最高のライン圧力下、可能
である最低のウェブスピード5m/分において、スチールロール表面の温度を可
能である最高の200℃まで加熱を高めながらカレンダリングに供した。逆転ロ
ールはソフトカレンダー構造に類似した91°Sh Dの硬度を有する繊維/プ
ラスチックのコーティングを有するものであった。
紙試料の水分含有量がそれぞれ7.7%と9.7%であるものにカレンダリン
グをおこなった。加熱ロールの表面が本発明にしたがって処理されていないとき
は、70℃の表面温度ではわずかな付着しか起こらなかったが、水分含有量がよ
り高い紙試料では塊状の付着が起こった。あらかじめ加湿した二つの紙では80
℃を超える表面温度を調節することができなかった。というのは付着作用のため
に紙ウェブに皺ができたためである。
例1による熱安定性不粘着剤で加熱ロールの表面を処理した後は、可能な最高
表面温度で紙ウェブの付着を肉眼的に検知することはできなかった。温度が80
℃から200℃に上昇したために、研磨原紙の平滑性が約80%上昇しミクロな
粗さ(Parker Print Surf)が約25%減少した。厚さ及び剛
性の減少は例1の値の範囲であった。
例4
70g/m2のベニヤ単板の細片からなり、ラテックスと尿素/ホルムアルデ
ヒド樹脂の混合物があらかじめ含浸された、ラテックス/樹脂の割合が約30%
である、幅約20cmで長さ約80cmのストライプを、スチールロールの表面
温度を可能である最高温度の150℃に加熱した後、例1にしたがって二本ロー
ルのカレンダーで平滑化処理をおこなった。尚、前記の紙はあらかじめ2.5%
、6.4%、7.1%、及び9.4%の異なった水分含有量にしておき一時間の
中間保管に供し、おのおのを別々にシールしたプラスチックの袋に入れておいた
。
カレンダリングでは、加熱ロールの表面の半分を、4.2重量部のジ(2−エ
チルブチル)アジペート、23.2重量部の水及び2.5重量部の非イオノゲン
性界面活性剤からなる熱安定性不粘着剤で処理した。
紙試験体はウェブの水分が7.1%から上のものでは非処理のロール表面に実
質的な付着を示したが、ロールの表面処理した部分では最も高い9.4%のウェ
ブ水分でも紙ウェブの付着は検出されなかった。
例5
例4と同様にして、80g/m2の予備含浸した、但しフィラー含有量が非常
に高いベニヤ単板の細片を用いてテストを繰り返し、そして再び個々の試料を2
.5%、5.8%、6.4%および8.5%の種々の水分含有量に調節した。水
分含量が5.8%の試料は表面温度150℃の非処理のスチールロールに付着す
る作用を示した。この付着結果はウェブの水分が高くなるにつれてますます強く
なった。4.2重量部のジイソデシルアジペート、23.2重量部の水および2
.5重量部の非イオノゲン性界面活性剤からなる熱安定性不粘着剤で処理した表
面では、ウェブ成分が8.5%のときのみわずかな付着が検出された。
例6
例4の条件と同様にして、一方の面が着色された62g/m2のシリコーン原
紙を使用してテストを繰り返した。塗布されたコーティングは5g/m2で40
%を超える非常に高いラテックス分を含むものであった。試料をそれぞれ4.5
%、8.1%。9.2%。及び12.0%にあらかじめ加湿し、再び各試料を別
々に保管した。スチールロールを可能である最高表面温度の150℃に加熱した
後、12%の場合にロールの非処理部分にわずかな付着が起こった。5.46重
量部のトリメチルアジピン酸のC8/10アルフォールエステル、25.0重量部の
水、5.2部のイソプロパノール、及び3.3重量部の非イオノゲン性界面活性
剤からなる熱安定性不粘着剤で処理したスチールロール上ではウェブの水分が最
も高い場合でも紙の付着を検出しなかった。
例7−12
例1による加熱した実験室用カレンダーにおいて艶出し剤(finish)が塗布さ
れた研磨紙を400バールのライン圧力下で艶出しし、ついでスチール製シリン
ダーの表面をそれぞれ70℃と130℃の温度に調節した。種々の不粘着剤を水
中油型エマルジョンの状態でテストした。このテストで加熱されたスチールのシ
リンダーをこすることによって表面に不粘着剤を塗布した。これらのエマルジョ
ンは2.0重量部の脂肪族アルコールヒドロキシエチレート、11.6重量部の
水及び1.3重量部の研磨成分を使用して調製した。カレンダリングにおいて、
付着の挙動及び艶出し処理をした紙の平坦性を次の指標を用いて評価した:
少々うねりがある(+)、ほとんど平らな平坦性を有する(++)、理想的な
平坦性を有する(+++)。ロールの表面に付着が起こる(+)、紙はよじれて
クレープ紙のような状態になる。
結果を次の表1に要約して示す。
例13
熱安定性不粘着剤を使用すると水、水性ワニスまたは水性グラビアインクによ
る湿潤性に関して紙の表面特性が変化するかどうかを調べた。
このために、不粘着剤を水でそれぞれ1:1および1:10の比で希釈したも
のを例4の家具のプレプレグに、実験室用ドクターコーティング装置を使用して
塗布し、例1にしたがって可能な限り最も高いライン圧力と150℃に加熱され
たスチールロールの表面温度で例1にしたがって二本ロールの実験室用カレンダ
ーで実質的に艶出しをおこなった。
上述のようにして艶出しした紙試料の平滑化のレベルは300±30Bekk
−sの平滑度であった。同様に実験室で艶出しした約300Bekk−sを有す
る紙の試験体であってただし表面コーティングを有しないものを比較試料として
使用した。表2のデータは、艶出しした試料の水に対する接触角が不粘着剤によ
って有意に変化しないが、一方不粘着剤を水との混合比が混合比1:1で使用す
るとワニス塗りした後で光沢が著しく向上することを示している。グラビア印刷
適性は比較試料に対して少々変化している。
実験データは、熱安定性不粘着剤を使用する表面処理に供した紙は水による湿
潤性については損なわれず、部分的にはある程度改善すらされていることも示し
ている。同様にして、溶剤含有インクと比較して、紙の湿潤挙動は有意なほど相
違が検出されなかった。将来の比較のために、平滑化していない紙(ゼロサンプ
ル)と製造条件下で製造された紙のデータを表2に示す。
表2
種々の表面処理後の家具プレプレグ(70g/m2)の特性
*)評価:1…非常に良好;5…最悪
全試料の接着テープに対する耐性は完璧であった。
彩色適性に関しては、湿潤性を欠くことによる欠点は見出されなかった。
例14
一方の面に着色塗料を塗布した50g/m2の紙(原紙、テストNo.200)を
パイロットプラントのスムーザー(ソフトカレンダー:スチール/プラスチック
ロール)で下記の実際の条件下で平滑化をおこなった。
速度:500m/分
ライン圧力:400kN/m2
最初の処理前に両面水蒸気加湿
(下側)加熱ロールの表面温度
最初の処理、それぞれ120℃と160℃
第2回目の処理、160℃
ジn−ブチルアジペートの10%イソプロパノール溶液からなる完全に水蒸気
揮発性不粘着剤を、下側水蒸気加湿器のための加熱水蒸気ラインに1リットル/
時間の流速で連続的に導入した。
個々の段階、テストNo.201〜204を通してテストをおこなった。このと
き、第1回目の処理の前に、加熱されたカレンダーロール(スチール)の上にま
すます多量の堆積が認められるまで紙のウェブに水蒸気を適用するようにした。
テスト201では、堆積が加熱ロールの上に生じるまで、120℃で時間あた
り2×58kgの水蒸気を適用することができた。例1の本発明の不粘着剤を添
加することによって、試験203では1時間あたりの可能な最高量としてスチー
ムを約110kg適用することができこの時ロール上には堆積は生じなかった。
しかし同時に、紙の最終的な水分は約0.5%(絶対値)増加し、その結果表面
特性の値がわずかに低下した。テスト204では、ロール温度を160℃に上げ
て前記の不粘着剤を使用したところ、紙のウェブを可能である最高のスチーム量
として1時間あたり170kgのスチーム(合計)にさらすことができ、この時
スムーザーのロール上には堆積物はまったく検出されなかった。
温度が40℃増加し、同時に増加した水蒸気の吸収が54kg/時間(合計)
であったため、平滑性、光沢およびミクロな粗さといった表面特性の明確な改良
が達成され、一方原密度は変化しないままだった。
紙の特性は、これまでダブルソフトカレンダリング(テストNo.202)によ
ってのみ達成することができた品質レベルにほとんど達している。
該不粘着剤を使用したおよび使用しないソフトカレンダリングの後のテストデ
ータ及び紙の特性を比較のために表3に示す。表3
軽量紙P(50g/m2)のソフトカレンダリング
*)不粘着剤を使用
【手続補正書】
【提出日】1998年11月13日(1998.11.13)
【補正内容】
請求の範囲
1. 平坦な材料、特に紙や厚紙からできた平坦な材料を不粘着剤を用いて熱機
械表面処理する方法において、C2−C12のジカルボン酸のC1−C13のn−アル
カノールおよび/もしくはイソアルカノールとのジカルボン酸ジアルキルエステ
ルおよび/またはジカルボン酸ジイソアルキルエステルを不粘着効果を有する成
分として含有する不粘着剤を少なくとも一種使用することを特徴とする前記の方
法。
2. 請求項1に記載の方法であって、C1−C6のn−アルカノールおよび/ま
たはイソアルカノールのアジピン酸ジエステルを含有する不粘着剤を使用するこ
とを特徴とする方法。
3. 請求項1または2に記載の方法であって、前記不粘着剤が水中油型エマル
ジョンとして使用されることを特徴とする方法。
4. 請求項1〜3の1項に記載の方法であって、前記の不粘着剤が熱機械処理
で使用される工具の表面に適用される、または含浸液もしくは紙に塗布する混合
液もしくは予備加湿用の水もしくは水蒸気に添加される、または紙のウェブに好
ましくは含浸装置もしくは塗布装置の直後または平滑化ロールの直前に適用され
ることを特徴とする方法。
5. 請求項4に記載の方法であって、前記の不粘着剤が水蒸気揮発性であって
、水蒸気加湿用の水蒸気ラインを介して好ましくは連続的に計量供給される方法
。
6. 請求項5に記載の方法であって、前記の不粘着剤が、該不粘着剤の有効物
質を基準として、設備装置の表面について0.1〜10.0g/m2の量で使用
されることを特徴とする方法。
7. 請求項6に記載の方法であって、前記の不粘着剤が有効物質を基準として
前記の水蒸気に0.1〜10.0kg/時間の量、好ましくは0.2〜4.0k
g/時間の量添加されることを特徴とする方法。
8. 請求項3に記載の方法であって、前記の不粘着剤の水中油型エマルジョン
がノニオン性、アニオン性または両性の乳化剤、好ましくはノニオン性またはア
ニオン性の乳化剤を含むことを特徴とする方法。
9. 請求項1〜8の1項に記載の方法であって、前記の平坦な材料が50重量
%未満の水含有量で使用されることを特徴とする方法。
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(72)発明者 ヴェレス,ヨアヒム
ドイツ連邦共和国,ドレッバー ディー―
49457,ビーネンシュトラーセ 3
(72)発明者 ラインハルト,ベルント
ドイツ連邦共和国,オスナブリュック デ
ィー―49082,ボーネンカンプシュトラー
セ 40