【発明の詳細な説明】
ヒドロキサム酸を基礎とするコラゲナーゼ阻害剤
本発明は可溶性ヒトCD23形成の新規阻害剤ならびに自己免疫疾患およびア
レルギーのごとき可溶性CD23(s−CD23)の過剰産生に関連する症状の
治療におけるそれらの使用に関する。
CD23(低親和性IgE受容体FceRII、ブラスト2)はBおよびTリ
ンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、ランゲルハンス細胞、単球お
よび血小板等の種々の成熟細胞の表面に発現する45kDのII型の細胞膜内タ
ンパク質である[Delespesse ら、Adv.Immunol.49:149-191(1991)]。好酸球上
にもCD23様分子がある[Grangette ら、J.Immunol.143:3580-3588(1989)]
。CD23は免疫応答の制御に関与している[Delespesse ら、Immunol.Rev.125:
77-97(1992)]。ヒトCD23は別個に制御される2種のアイソホーム、aおよ
びbとして存在し、これはアミノ酸の細胞内N末端において異なるだけである[Y
okota ら、55:611-618(1988)]。ヒトでは構成性aアイソホームはBリンパ球に
おいてのみ見出され、一方IL4により誘導可能なb型はCD23を発現できる
全ての細胞において見出される。
無傷の、細胞結合性CD23(i−CD23)が、細胞表面から切断され、複
雑な一連のタンパク質溶解事象の結果として生成される、多くの熟知されている
可溶性フラグメント(s−CD23)を形成することが知られているが、その機
構は未だ明確ではない[Bourget ら、J.Biol.Chem.269:6927-6930(1994)]。未
だ解明されてはいないが、これらのタンパク質溶解事象の結果生じる主要な可溶
性フラグメント(Mr 37、33、29および25kD)は、全てi−CD2
3に共通するC末端レクチン・ドメインを保持しており、その事象は最初の37
kDのフラグメントの形成を介して連続的に生じると考えられる[Letellier ら
、J.Exp.Med.172:693-700(1990)]。別の細胞内切断経路によりC末端ドメイン
がi−CD23とは異なる安定した16kDaのフラグメントを生じる[Grenier
−Brosette ら、Eur.J.Immunol.22:1573-1577(1992)]。
ヒトの膜結合性i−CD23に寄与する作用がいくつかあるが、それらは全て
IgE
制御において役割を果たすことがわかっている。それらの作用にはとりわけ:a
)抗原の提示、b)IgE媒介好酸球細胞毒性、c)B細胞のリンパ節および脾
臓の胚中枢へのホーミング、およびd)IgE合成のダウンレギュレーション等
がある[Delespesse ら、Adv.Immunol.49:149-191(1991)]。3種の高分子量可
溶性CD23フラグメント(Mr37、33および29kD)は多機能サイトカ
イン特性を有し、IgE産生において重要な役割を果たすと考えられる。従って
、s−CD23の過剰形成は、外因性喘息、鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、
アトピー性皮膚炎およびアナフィラキシーのごときアレルギー疾患の特徴である
、IgEの過剰産生に関与している[Sutton および Gould、Nature,366:421-42
8(1993)]。
s−CD23に起因するその他の生物学的作用にはBセル成長の刺激および単
球からのメディエーター放出の誘導等がある。従って、慢性Bリンパ球性白血病
の患者の血清[Sarfati ら、Blood,71:94-98(1988)]およびリュウマチ性関節炎
の患者の滑液[Chomarat ら、Arthritis and Rheumatism,36:234-242(1993)]
では高レベルのs−CD23が観察される。炎症におけるCD23の役割は多種
のサンプルにより示唆される。最初に、sCD23は活性化されると、細胞が媒
介する炎症に関与する細胞外受容体に結合すると報告されている。従って、sC
D23は単球TNF、IL−1およびIL−6放出を直接的に活性化すると報告
されている[Armant ら、J.Exp.Med.180:1005-1011(1994)]。CD23は単球/
マクロファージ上の、NO2 -、過酸化水素およびサイトカイン(IL−1、IL
−6およびTNF)放出を作動させるB2インテグリン付着分子、CD11bお
よびCD11cと相互作用することが報告されている[S.Lecoanet−Henchoz ら
、Immunity,3:119-125(1995)]。最後に、IL−4またはINFがCD23の
発現を誘起し、ヒト単球がそれをsCD23として放出するのを誘起する。膜結
合性CD23受容体をIgE/抗IgE免疫複合体または抗CD23mAbと連
結してcAMPおよびIL−6産生ならびにトロンボキサンB2形成を活性化し
、これは炎症におけるCD23の受容体媒介の役割を示している。
これらのCD23の種々の特性により、s−CD23の形成を妨げる化合物に
はa)Bセル表面上のi−CD23のレベルを維持することによるIgE合成の
ネガティブフィードバック阻害の増強、およびb)s−CD23の高分子量可溶
性フラグメント
(Mr37、33および29kDa)の免疫刺激サイトカイン活性の阻害作用
という二面的な作用があるはずである。加えて、CD23の切断を阻止すること
によりs−CD23誘起の単球活性化およびメディエーター形成が軽減され、そ
れにより炎症応答が低減するはずである。
国際特許出願PCT/EP95/02693(Snithkline Beecham plc)はマ
トリックス・メタロプロテアーゼ(例えばコラゲナーゼ、ストロメリシンおよび
ゲラチナーゼ)の作用を阻止する化合物が哺乳動物細胞培養系にトランスフェク
トしたヒト可溶性CD23の放出を効果的に阻止することを開示している。既知
のマトリックス・メタロプロテアーゼ・阻害剤には以下の表に列挙する特許出願
に記載される化合物等がる。 本発明によれば式(I):
(式中、RおよびR3は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル
またはアリールを意味し;R1はアリールメチルを意味し;およびR2はアルキ
ル、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはシクロアルケニルを意味する
)で示される化合物が提供される。
本明細書で用いるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は6個までの炭素
原子を含有する直鎖および分岐鎖の基を包含し、アリール、ヘテロサイクリル、
(C1-6)ア
ルキルチオ、(C1-6)アルケニルチオ、(C1-6)アルキニルチオ、アリールチ
オ、ヘテロサイクリルチオ、(C1-6)アルコキシ、アリール(C1-6)アルコキ
シ、アリール(C1-6)アルキルチオ、アミノ、モノ−またはジ−(C1-6)アル
キルアミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、それらのカルボキシおよびエ
ステル、ヒドロキシ、ならびにハロゲンからなる群から選択される1個またはそ
れ以上の基で置換されていてもよい。
本明細書で用いるシクロアルキルおよびシクロアルケニル基は3から8個の環
炭素原子を有する基を包含し、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基につい
て前記されているように置換されていてもよい。
本明細書で用いる「アリール」なる用語はフェニルおよび2−ナフチルのごと
きナフチルを包含する。適当には、フェニルおよびナフチル等の任意のアリール
基は5個まで、好ましくは3個までの置換基で置換されていてもよい。適当な置
換基にはハロゲン、(C1-6)アルキル、アリール(C1-6)アルキル、(C1-6
)アルコキシ、(C1-6)アルコキシ(C1-6)アルキル、ハロ(C1-6)アルキ
ル、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、モノ−およびジ−N−(C1-6)アルキルア
ミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシ塩、カルボキシエ
ステル、カルバモイル、モノ−およびジ−N−(C1-6)アルキルカルバモイル
、(C1-6)アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ウレイド、グ
アニジノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、(C1-6)アルキルチオ、(
C1-6)アルキルスルフィニル(C1-6)アルキルスルホニル、ヘテロサイクリル
ならびにヘテロサイクリル(C1-6)アルキル等がある。加えて2個の隣接する
環炭素原子は(C1-6)アルキレン鎖により連結され、炭素環を形成できる。
本明細書で用いる「ヘテロサイクリル」および「複素環式」なる用語は、特記
しなければ、適当には各環に各々酸素、窒素および硫黄から選択されるヘテロ原
子を適当に4個まで含有し、例えば3個までの置換基で置換されていてもいなく
てもよい芳香族および非芳香族単環および縮合環を包含する。各複素環は適当に
は4から7個の、好ましくは5または6個の環原子を有する。縮合複素環系は炭
素環を含有でき、複素環1個は含有する必要がある。
好ましくは、ヘテロサイクリル基の置換基はハロゲン、(C1-6)アルキル、
アリー
ル(C1-6 )アルキル、(C1-6)アルコキシ、(C1-6)アルコキシ(C1-6)ア
ルキル、ハロ(C1-6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ−およびジ−N−
(C1-6)アルキル−アミノ、アシルアミノ、カルボキシ塩、カルボキシエステ
ル、カルバモイル、モノ−およびジ−N−(C1-6)アルキルカルボニル、アリ
ールオキシカルボニル、(C1-6)アルコキシカルボニル(C1-6)アルキル、ア
リール、オキシ基、ウレイド、グアニジノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニ
ル、(C1-6)アルキルチオ、(C1-6)アルキルスルフィニル、(C1-6)アル
キルスルホニル、ヘテロサイクリルならびにヘテロサイクリル(C1-6)アルキ
ルから選択される。
本発明の特定の態様において、Rは水素またはアリールチオまたはヘテロサイ
クリルチオで置換されていてもよいメチルを意味し;および/またはR1はベン
ジル基を意味し;および/またはR2はベンジル基を意味し;および/またはR
3は水素、メチルまたはベンジルを意味する。
さらなる態様によれば、本発明はs−CD23の過剰産生が関与するアレルギ
ー、炎症性疾患および自己免疫疾患のごとき障害の治療または予防用の医薬品を
製造するための式(I)で示される化合物の使用を提供する。
さらなる態様において、本発明はs−CD23の過剰産生が関与するアレルギ
ー、炎症性疾患および自己免疫疾患のごとき障害の治療または予防のための方法
であって、式(I)で示される化合物をそれらを必要とするヒトまたはヒト以外
の哺乳動物に投与することからなる方法を提供する。
本発明はまたs−CD23の過剰産生が関与するアレルギー、炎症性疾患およ
び自己免疫疾患のごとき障害の治療または予防のための医薬組成物であって、式
(I)で示される化合物を含んでなり、医薬上許容される担体を含んでもよい医
薬組成物を提供する。
とりわけ炎症性障害にはアルツハイマー病、多発性硬化症および多発梗塞性痴
呆、ならびに炎症により媒介される発作および頭部外傷の後遺症のごときCNS
障害等がある。
医薬上許容される塩、溶媒和物および式(I)で示される化合物のその他の医
薬上許容される誘導体もまた本発明の範囲内に包含されることは理解されるべき
である。
式(I)で示される化合物の塩には例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素
酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢
酸塩、プロピ
オン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、
乳酸塩、蓚酸塩、酒石酸塩および安息香酸塩のごとき無機または有機酸から誘導
される酸付加塩等がある。
塩基で塩を形成するすることもできる。このような塩には無機または有機塩基
から誘導される塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩のごときアルカリ金属塩
、およびモルホリン、ビペリジン、ジメチルアミンまたはジエチエルアミン塩の
ごとき有機アミン塩等がある。
驚くべきことに、本発明の化合物は強力で選択的なCD23プロセッシングの
阻害剤であるが、一方先行文献の前記の化合物と比較してコラゲナーゼ阻害活性
が低いことが解っている。
本発明の化合物は任意の適当な常法を用いて製造でき、例えば特許出願WO9
0/05716、WO93/24475、WO94/21625、WO95/1
9956、W090/05719、WO91/02716、WO92/1383
1、WO93/20047、EP−A−0214639、EP−A−02368
72、EP−A−0274453、EP−A−0489577、EP−A−04
89579、EP−A−0497192、EP−A−0574758およびUS
P4599361に開示される方法に類似の方法により製造できる。
従って、本発明のさらなる態様は、前記した式(I)で示される化合物の製法
であって、
(a)式(II):
(式中、RないしR3は前記で定義するとおりであり、Xはベンジルもしくはト
リメチルシリルのごとき保護基を意味する)で示される化合物を脱保護するか;
または
(b)式(III):
(式中、RないしR3は前記で定義するとおりである)で示される化合物をヒド
ロキシルアミンもしくはその塩と反応させるか;または
(c)式(IV):
(式中、RないしR3は前記で定義するとおりである)で示される化合物をチオ
ールと反応させて式(I)(ここでRはアルキルチオ、アリールチオ、アラルキ
ルチオまたはヘテロサイクリルチオで置換されたメチルを意味する)で示される
化合物を得るか;または
(d)式(I)で示される化合物を前記で定義した別の式(I)で示される化合
物に変換すること;
からなる方法を提供する。
式(II)、(III)および(IV)で示される化合物は新規であり、本発
明のさらなる態様である。
式(II)で示される化合物は式(III)で示される化合物から、保護した
ヒドロキシルアミンと反応させることにより製造できる。式(III)で示され
る化合物は式(V):(式中、RないしR3は前記で定義するとおりであり、Yはt−ブチルのごとき
保護基
を意味する)で示される化合物を加水分解することにより製造できる。
ヒドロキサム酸の適当な保護基は当業界で周知であり、ベンジル、トリメチル
シリル、t−ブチルおよびt−ブチルジメチルシリル等がある。
カルボン酸の適当な適当な保護基は当業界で周知であり、t−ブチル、ベンジ
ルおよびメチル等がある。
式(V)で示される化合物は式(VI):
(式中、R1ないしR3およびYは前記で定義するとおりであり、ZはZCH2
−がRとなるような基を意味する)で示される化合物を還元することにより製造
できる。
式(V)で示される化合物は式(VII):
(式中、R、R1およびYは前記で定義するとおりである)で示される化合物を
式(VIII):(式中、R2およびR3は前記で定義するとおりである)で示される化合物また
はその活性誘導体と反応させて製造することもできる。
式(III)で示される化合物は式(IX):
(式中、R1ないしR3は前記で定義するとおりである)で示される化合物をチ
オールと反応させて製造でき、式(III)(ここでRはアルキルチオ、アリー
ルチオ、アラルキルチオまたはヘテロサイクリルチオで置換されたメチルを意味
する)で示される化合物が得られる。
式(IX)で示される化合物は式(X):
(式中、R1ないしR3およびYは前記で定義するとおりである)で示される化
合物を加水分解することにより製造できる。
式(X)で示される化合物は式(XI)
(式中、R1およびYは前記で定義するとおりである)で示される化合物を前記
で定義した式(VIII)で示される化合物またはその活性化誘導体と反応させ
ることにより製造できる。
出発物質およびその他の試薬は市販により入手可能であるかまたは周知の常法
により
合成できる。
立体異性体を包含する本発明の化合物の異性体はかかる異性体の混合物として
、または個々の異性体として製造できる。個々の異性体は任意の適当な方法によ
り製造でき、例えば個々の立体異性体はキラル基質から出発して立体特異的な化
学合成によるか、または常法によりジアステレオマーの混合物を分離して製造で
きる。好ましい態様において、本発明は式(IA):
で示される化合物を提供する。
化合物は実質的に純粋な形態で単離されるのが好ましい。
本明細書で記載するように、可溶性ヒトCD23形成の阻害剤は医学的に有用
な特性を有する。好ましくは活性な化合物を医薬上許容される組成物として投与
する。
組成物を経口投与するのが好ましい。しかしながら、これらをその他の投与様
式、例えば気道の障害の治療にはスプレイ、エアロゾルの形態もしくはその他の
通常の吸入方法で、心不全の患者には非経口投与することができる。別の投与様
式には舌下または経皮投与等がある。
組成物を錠剤、カプセル、散剤、顆粒、糖衣錠、坐剤、復元可能な散剤、また
は経口投与用もしくは滅菌非経口投与用溶液もしくは懸濁液のごとき液体調製物
の形態に処方できる。
投与に一貫性をもたらすために、本発明の組成物を単位用量の形態にするのが
好ましい。
経口投与用の単位投与形は錠剤およびカプセルであり、結合剤例えばシロップ
、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、もしくはポリビニルピ
ロリドン;充填剤、例えばラクトース、ショ糖、トウモロコシデンプン、リン酸
カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;錠剤化滑沢剤、例えばステアリン
酸マグネシウム;崩壊剤、
例えばデンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムもし
くは微結晶セルロース;またはラウリル硫酸ナトリウムのごとき医薬上許容され
る湿潤化剤等の慣用される賦形剤を含有できる。
固体の経口用組成物は通常の混和、充填または錠剤化方法により製造できる。
繰り返し混和操作を用いて多量の充填剤を用いるこれらの組成物全体に活性成分
を分配できる。もちろんこれらの操作は当業界で償用されるものである。錠剤は
通常の医薬品製造において周知の方法によりコーティングとりわけ腸溶コーティ
ングできる。
経口用液体調製物は例えば乳剤、シロップまたはエリキシルの形態に処方でき
るか、または使用前に水もしくはその他の適当なベヒクルで復元するための乾燥
品にできる。かかる液体調製物は懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メ
チルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、硬化食用脂肪;乳化剤、例えばレシ
チン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴム;非水性ベヒクル(食用
油を含む)、例えば落花生油、分留ココナッツ油、グリセリン、プロピレングリ
コールもしくはエチルアルコールのエステルのごとき油状エステル;保存剤、例
えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸;および
所望により着香剤または着色剤のごとき慣用される添加剤を含有できる。
非経口投与の場合、本発明の化合物および滅菌ベヒクルを用いて流体単位投与
形を調製し、用いる濃度に応じて化合物をベヒクル中に溶解または懸濁させるこ
とができる。溶液を調製するにおいて、本発明の化合物を注射用水に溶解し、滅
菌濾過した後に適当なバイアルまたはアンプルに充填し密封することができる。
局所麻酔剤、保存剤および緩衝化剤のごとき補助剤をベヒクル中に溶解するのが
有利である。安定性を増すために組成物をバイアルに充填した後凍結し、真空下
水を除去できる。非経口用懸濁液は、本発明の化合物をベヒクル中に溶解させる
代わりに懸濁させること、滅菌処理を濾過により行うことができないことを除い
て、実質的に同一の方法で処方できる。本発明の化合物を滅菌ベヒクルに懸濁す
る前にエチレンオキサイドに曝露して滅菌できる。有利には、界面活性剤または
湿潤化剤を紹成物中に配合し、化合物の均一な分散を容易にする。
本発明の組成物はまた嗅剤もしくはエアロゾルもしくはネブライザー用溶液と
して、
または通気用の微細粉末として、単独でまたはラクトースのごとき不活性担体と
組み合わせて気道投与用に適当に処方できる。このような場合、活性化合物の粒
子の直径を適当には50ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下、例えば1
−50ミクロン、1−10ミクロンまたは1−5ミクロンの範囲にする。必要な
らば少量のその他の抗喘息薬および気管支拡張剤、例えばイソプレナリン、イソ
エタリン、サルブタモール、フェニルフェリンおよびエフェドリンのごとき交感
神経興奮作用性アミン;テオフィリンおよびアミノフィリンのごときキサンチン
誘導体ならびにプレドニゾロンのごときコルチコステロイドおよびACTHのご
とき副腎刺激薬を含有してもよい。
該組成物は投与方法に応じて活性物質を0.1重量%から99重量%、好まし
くは10−60重量%含有できる。吸入投与には10−99%、とりわけ60−
99%の範囲、例えば90、95または99%の範囲で投与するのが好ましい。
微細粉末製剤は規定用量のエアロゾルで、または適当な呼吸器により適当に投
与できる。
適当な規定用量のエアロゾル製剤は慣用されるスプレイ用高圧ガス、エタノー
ルのごとき共存溶媒、オレイルアルコールのごとき界面活性剤、オレイルアルコ
ールのごとき潤滑剤、硫酸カルシウムのごとき乾燥剤および塩化ナトリウムのご
とき密度改変剤を含んでなる。
適当なネブライザー用溶液は等張滅菌溶液であり、所望により緩衝化し、例え
ばpH4−7で本発明の化合物を20mg/mlまで含有するが、より一般には
0.1−10mg/mlであり、標準的なネブライザー装置を用いる。
有効量は本発明の化合物の相対的な効果、処置すべき障害の重篤度および患者
の体重に依存する。適当には本発明の組成物の投与量単位は本発明の化合物を0
.1から1000mg(吸入では0.001から10mg)および通常1から5
00mg、例えば1から25または5から500mg含有できる。このような組
成物を1日1から6回、より通常的には1日2から4回、一日投与量が70kg
の成人で1mgから1g、とりわけ5から500mgになるように投与できる。
これは約1.4x10-2mg/kg/日から14mg/kg/日の範囲であり、
とりわけ約7x10-2mg/kg/日から7mg/kg/日の範囲にできる。
以下の実施例は本発明を説明するものであり、何ら本発明を限定するのではな
い。生物学的試験法 方法1:
試験化合物が可溶性CD23の放出を妨げる能力を以下の方法を用いて試験した
。RPMI8866細胞膜CD23切断活性のアッセイ:
高レベルのCD23を発現する、ヒト・エプステイン−バール(Epstein−Bar
r)ウイルスで形質転換したBセルラインであるRPMI8866細胞の原形質
膜[Sarfati ら、Immunology,60:539-547(1987)]を水抽出法を用いて精製する
。ホモジナイゼーション・バッファー(20mM HEPES、 pH7.4、1
50mM NaCl、1.5mM MgCl2、1mM DTT)に細胞を再懸濁し
、パールボム(Parr bomb)中N2キャビテーションにより粉砕してその他の膜と
混合された原形質膜分画を10000xgで遠心して回収する。軽いペレットを
0.2M リン酸カリウム、pH7.2を湿った細胞1−3gあたり2mlを用
いて再懸濁し、核ペレットを捨てる。その膜を膜タンパク質10−15mg当た
り合計16gにて、0.25Mシュークロースで、デキストラン500(6.4
重量/重量%)およびポリエチレングリコール(PEG)5000(6.4重量
/重量%)(ref)間で分配してさらに分画化する[Morre and Morre,BioTe
chniques,7:946-957(1989)]。1000xgで短時間遠心して相分離し、PE
G(上)相を収集し、20mM リン酸カリウム緩衝液、pH7.4で3−5倍
に希釈し、100000xgで遠心してその相の膜を回収する。ペレットをリン
酸緩衝化セイラインに再懸濁し、原形質膜およびその他の細胞膜(例えばリソソ
ーム、ゴルジ体)が3−4倍豊富になる。膜を等分し、−80℃で保存する。6
.6%デキストラン/PEGでの分画化により原形質膜が10倍豊富になる。
分画化した膜を37℃で4時間までインキュベートしてCD23のフラグメン
トを得、これをP30994の5μM調製物1でアッセイをクエンチした後0.
2ミクロンのデュラポア(Durapore)・フィルター・プレート(Millipore)で
濾過して膜から分離する。The Bibding Site(Birmingham,UK)のEIAキッ
トまたはサンドウィッチEIAにて捕捉抗体としてMHM6抗CD23mAb[R
owe ら、Int,J,Cancer,29:373-382(1982)]もしくは別の抗CD23mAbを用
いる類似のキットを用いて膜から放出し
たsCD23を測定する。リン酸緩衝化セイラインの全容量中0.5μg膜タン
パク質が生成した可溶性CD23の量をEIAにより測定し、種々濃度の阻害剤
の存在下で生成した量と比較する。水またはジメチルスルフォキシド(DMSO
)の溶液中に阻害剤を調製し、DMSOの最終濃度を2%以下にする。阻害剤な
しでインキュベートした対照とのsCD23の差異に相対して観察された、sC
D23産生が50%阻害される濃度として曲線適合によりIC50を決定する。方法2:
試験化合物がコラゲナーゼを阻害する能力を以下の方法を用いて試験した。コラゲナーゼ阻害アッセイ
コラゲナーゼの阻害剤として作用する化合物の能力を Cowston および Barett
の方法[Anal.Biochem.99:340-345(1975)]により測定し(これを出典明示によ
り本明細書の一部とする)、これにより試験すべき阻害剤の1mM 溶液または
これの希釈物をコラーゲンおよびイー・コリ(E.coli)からクローン化し、発現
し、精製した滑液の繊維芽細胞からのヒト組み換えコラーゲンと共に37℃で1
8時間インキュベートした(15mM 塩化カルシウム、0.005% Brij35
、200mM 塩化ナトリウムおよび0.02% アジドナトリウムを含有する1
50mM トリス、pH7.6で緩衝化)。コラーゲンは Cawston および Murph
y の方法[methods in Enzymology,80:711(1981)]により調製したアセチル化3
H 1型ウシコラーゲンである。サンプルを遠心し、未消化のコラーゲンを沈降
させ、放射活性のある上澄部分を取り、シンチレーションカウンターのアッセイ
に供し、加水分解を測定した。1mMの阻害剤またはその希釈物の存在下のコラ
ゲナーゼ活性を阻害剤を含まない対照における活性と比較し、結果をコラゲナー
ゼ活性を50%阻害する濃度として報告した(IC50)。実施例1
N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノスクシニル)−(S)−フ
ェニルアラニン−N’−ベンジルアミド
a)2−ベンジリデン−4−ターシャリー・ブトキシコハク酸
メタノール(20ml)中2−べンジリデン−4−ターシャリー・ブトキシコ
ハク酸メチル(2g、7.25ミリモル)の溶液を水酸化ナトリウム溶液(2M
、7.25m1、14.5ミリモル)と反応させて混合物を20℃で16時間攪
拌した。反応物を真空下濃縮して水(20ml)を加えた。水溶液をエーテル(
2x20ml)で抽出し、2M塩酸で酸性にし、再度エーテル(3x25ml)
で抽出した。酸性抽出物からのエーテルを乾燥し(MgSO4)濾過して蒸発さ
せて白色固体の酸を得た(1.74g、92%)。融点110−115℃。
dH(CDCl3)1.46(9H,s),3.47(2H,s),7.38(5H,m),7.94(1H,s),12.58,brs).
b)N−(2−ベンジリデン−4−ターシャリー・ブトキシスクシニル)−(S
)−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド
DMF(20ml)中2−ベンジリデン−4−ターシャリー・ブトキシコハク
酸(524mg、2ミリモル)、塩酸(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジ
ルアミド(580mg、2ミリモル)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和
物(486mg、3.6ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(0.3
5ml、2ミリモル)の溶液を0℃で塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)
−3−エチルカルボジイミド(424mg、2.2ミリモル)と反応させ、反応
物を0℃で1時間、および20℃で16時間攪拌した。蒸発させた後、残留物を
飽和炭酸水素ナトリウム(25ml)およびジクロロメタン(50ml)間で分
配した。有機相を炭酸水素ナトリウム(2x25ml)、10%クエン酸(2x
25ml)および塩類溶液(25ml)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾
過し蒸発させて得た残留物をシリカのクロマトグラフィー(クロロ
ホルム−メタノール100:1)に供し、オフホワイト色の泡状の標題化合物を
得た(850mg、85%)。
dH(CDCl3)1.40 9H,s),3.25(2H,m),3.32(1H,d,J=16.5Hz),3.50(1H,d,J=16.5Hz)
,4.40(2H,m),4.80(1H,dd,J=6.9,7.2Hz),6.75(2H,m),7.26(16H,m).
c)N−(2−(R/S)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシスクシニル
)−(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド
エタノール(50ml)中N−(2−ベンジリデン−4−ターシャリー・ブト
キシスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド(790
mg、1.58ミリモル)の溶液を大気圧下4.5時間水素化した。反応物を濾
過し、減圧下蒸発させて残留物をシリカのクロマトグラフィー(クロロホルム−
メタノール100:1)に供し、白色固体のジアステレオマーの1:1混合物で
ある所望の物質を得た(660mg、83%)。融点95−100℃。
dH(CDCl3)1.25+1.41(9H,2xs),2.3-3.5(7H,m),4.05-4.70(2H,m),4.60-4.80(1H
,m),5.33-6.02(2H,m),6.7-7.4(15H).
d)N−(2−(R/S)−ベンジル−4−ヒドロキシスクシニル)−(S)−
フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド
ジクロロメタン(15ml)中N−(2−(R/S)−ベンジル−4−ターシ
ャリー・ブトキシスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジルア
ミド(6
50mg、1.3ミリモル)の溶液をトリフルオロ酢酸(15ml)と反応させ
、20℃で4時間攪拌した。反応物を蒸発させてトルエンと同時蒸発させた。残
留物をエーテルで粉砕し、白色固体の酸を1:1のジアステレオマー異性体とし
て得た(470mg、81%)。融点172−175℃。
dH[(CD3)2SO]2.01-3.03(7H,m),[4.22(d,J=5.8Hz)+4.27(d,J=5.4Hz),合計 2H],4.
53(1H,m),7.02-7.31(15H,m),[8.18(t,J=5.8Hz)+8.27(t,J:5.9Hz,合計 1H],[8.2
2(d,J=8.3Hz)+8.35(d,J=8.5Hz),合計 1H],12.1(1H,brs,CO2H).
e)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノスクシニル)−(S)
−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド
ジクロロメタン(10ml)中N−(2−(R/S)−ベンジル−4−ヒドロ
キシスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミドのジアス
テレオマー1:1混合物(250mg、0.56ミリモル)、ジイソプロピルエ
チルアミン(0.2ml、1.12ミリモル)およびO-トリメチルシリルヒドロ
キシルアミン(300mg、2.8ミリモル)の溶液を0℃まで冷却し、アルゴ
ン下ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(
PyBroP)(160mg、0.67ミリモル)と反応させた。反応物を0℃
で1時間、および20℃で16時間攪拌した。有機相を塩類溶液(2x10ml
)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、蒸発させて粘着性の固体を得た。この残留
物をVYDACタンパク質およびペプチドC18逆相カラムを用いる分取HPLC
に供し、水中0.1% TFA:水中0.1%TFA中70%アセトニトリルの
1:1混合物で20ml/分で溶出した。最初に溶出したジアステレオマー(9
.7分)がN−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノスクシニル)−
(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジルアミド(50mg、19%)、融点
195−197℃であった。
dH[(CD3)2SO]1.88(1H,dd,J:6.9,14.9Hz),2.09(1H,dd,J=7.5,14.9Hz),2.72-3.
05(5H,m),4.21(2H,m),4.47(1H,m),7.23(15H,m),8.18(2H,m),8.70(1H,brs),10.35
(1H,brs).
2番めに溶出したジアステレオマー(12.5分)はN−(2−(S)−ベン
ジル−4−ヒドロキシスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−ベンジ
ルアミド(30mg、12%)、融点203−205℃であった。
dH[(CD3)2SO]1.92(1H,dd,J=6.1,15.1Hz),2.23(1H,dd,J=8.8,15.0Hz),2.35-2.75(
3H,m),2.98(2H,m),4.27(2H,m),4.45(1H,m),7.21(15H,m),8.33(1H,d,J=8.5Hz),8.
45(1H,m),8.71(1H,s),10.42(1H,s).実施例2
N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノスクシニル)−(S)−フ
ェニルアラニン−N’−メチルアミド
a)4−(S)−ベンジル−3−(3−フェニルプロピオニル)−2−オキサゾ
リジノン
テトラヒドロフラン(250ml)中4−(S)−ベンジル−2−オキサゾリ
ジノン(23.9g、135ミリモル)の溶液に−65℃でn−BuLi(ヘキ
サン中1.6M101ml、178ミリモル)を滴加した。得られたオレンジ色
の溶液を30分間攪拌し、次いでテトラヒドロフラン(40ml)中3−フェニ
ルプロピオニル・クロライド(25g、148ミリモル)の溶液を滴加した。1
.5時間後反応物を氷冷2M塩酸(200ml)に注ぎ、酢酸エチル(3x15
0ml)で抽出した。オレンジ色の抽出物を合わせて2M塩酸(150ml)、
炭酸水素ナトリウム(150ml)、および塩類溶液(100ml)で洗浄した
。乾燥(MgSO4)および蒸発させた後、残留物をエーテルから結晶化し、白
色針状の標題化合物を得た。融点109−111℃。
dH(CDCl3)2.75(1H,dd,J=13.5,10Hz),2.96-3.07(2H,m);3.17-3.38(3H,m),4.14(1H
,s),4.16(1H,d,J=4),4.60-4.70(1H,m),7.15-7.35(10H,m).
b)4−(S)−ベンジル−3−(2−[ターシャリー・ブトキシカルボニルメ
チル]3−フェニル)プロピオニル−2−オキサゾリジノン テトラヒドロフラン(60ml)中1,1,1−3,3,3−ヘキサメチルジ
シラザン(9.6ml、45ミリモル)の溶液に−20℃でn−BuLi(ヘキ
サン中1.6M 28.3ml、45ミリモル)を滴加した。45分後溶液を−
75℃まで冷却し、テトラヒドロフラン(60ml)中4−(S)−ベンジル−
3−(3−フェニルプロピオニル)−2−オキサゾリジノン(10g、32ミリ
モル)の溶液を滴加した。溶液を1時間攪拌し、次いでさらに1時間−50℃ま
で加温した。−75℃まで冷却した後テトラヒドロフラン(50ml)中ブロモ
酢酸ターシャリー・ブチル(7.8ml、48ミリモル)を滴加し、溶液を1時
間攪拌してからさらに2.5時間以上−20℃まで加
温した。次いで反応物を飽和塩化アンモニウム溶液(100ml)に注ぎ、エー
テル(3x100ml)で抽出した。オレンジ色の抽出物を2M 塩酸(50m
l)、炭酸水素ナトリウム(50ml)、および塩類溶液(50ml)で洗浄し
た。乾燥(MgSO4)および蒸発させた後、黄色油状物をエーテル/ヘキサン
(1:4)で粉砕し、白色固体の標題化合物を得た(12.3g、90%)。融
点111.5−112.5℃。
dH(CDCl3)1.4(9H,s),2.37(1H,dd,J=17,4Hz),2.64(1H,dd,J=13,9Hz),2.72(1H,
dd,J=14,10Hz),2.85(1H,dd,J=17,11Hz),3.01(1H,dd,J=13,6Hz),3.31(1H,dd,J
=13.5,3Hz),3.93(1H,t,J=6Hz),4.07(1H,dd,J=9,2.5Hz),4.44-4.57(2H,m),7.18-7
.37(10H,m).
c)2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシコハク酸 THF/水3:1(200ml)中4−(S)−ベンジル−3−(2−[ター
シャリー・ブトキシカルボニルメチル]3−フェニル)プロピオニル−2−オキ
サゾリジノン(5.5g)13ミリモル)の溶液を27.5% 過酸化水素(9
.65ml)78ミリモル)と0℃で反応させ、10分間攪拌した後水(100
ml)中水酸化リチウム(1.1g、26ミリモル)の溶液を加えた。反応物を
0℃で30分間攪拌し、水(58ml)中1.5M亜硫酸ナトリウム(11g、
87ミリモル)溶液を添加して過剰の過酸化物を駆逐した。炭酸水素ナトリウム
で溶液をpH9まで緩衝し、THFを蒸発させた。残留物を水(300ml)お
よびジクロロメタン(300ml)間で分配し、水相をジクロロメタン(2x2
00ml)で洗浄した。水相を1M HClで酸性にし、酢酸エチル(3x20
0ml)で抽出した。有機相(MgSO4)を乾燥し、濾過して蒸発させ、透明
油状の所望の酸を得た(3.4g、100%)。
dH(CDCl3)1.42(9H,s),2.35(1H,dd,J=4.7,16.8Hz),2.56(1H,dd,J=8.7,16.8Hz),2.
77(1H,dd,J=10.4,15.4Hz),3.09(2H,m),7.17-7.34(5H,m),酸プロトンは観察され
なかった。
d)N−(2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシスクシニル)−
(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド
DMF(70ml)中2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシコ
ハク酸(1g、3.78ミリモル)、塩酸(S)−フェニルアラニン−N’−メ
チルアミド(812mg、3.78ミリモル)、N,N−ジイソプロピルエチル
アミン(0.66ml、3.78ミリモル)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾー
ル水和物(919mg、6.8ミリモル)および塩酸1−(3−ジメチルアミノ
プロピル)−3−エチルカルボジイミド(797mg、4.16ミリモル)を実
施例1b)のように反応させ、白色固体の標題化合物を得、これを酢酸エチル−
ヘキサンから再結晶した(1.15g、72%)。
dH(CDCl3)1.43(9H,s),2.38(1H,dd,J=4.4,16.8Hz),2.57(3H,d,J=4.7Hz),2.53-2
.99(5H,m)3.15(1H,dd,J=5.8,13.8Hz),4.54(1H,m),5.33(1H,br m),5.90(1H,br d,
J=8Hz),7.12-7.31(10H,m).
e)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシスクシニル)−(S)−フェ
ニルアラニン−N’−メチルアミド
ジクロロメタン(10ml)中N−(2−(R)−ベンジル−4−ターシャリ
ー・ブトキシスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド(
1.02g、2.41ミリモル)を実施例1d)に準じて反応させ、白色固体の
所望の酸を得た(830mg、94%)。
dH[(CD3)2SO]2.03(1H,dd,J=5.5,16.5Hz),2.33(1H,dd,J=8.4,16.6Hz),2.50(3H,d
,J=4.6Hz),2.56(1H,m),2.75-2.99(4H,m),4.39(1H,m),7.14-7.27(10H,m),7.47(1H
,m),8.17(1H,d,J=8.2Hz),12.07(1H,brs).
f)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノスクシニル)−(S)
−フェニルアラニン−N’−メチルアミド
THF(50ml)中N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシスクシニ
ル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド(0.8g、2.17ミ
リモル)の溶液を−20℃まで冷却し、N−メチルモルホリン(0.29ml、
2.61ミリモル)およびイソブチルクロロホルメート(0.34ml、2.6
1ミリモル)と反応させ、反応物を−20℃で1時間攪拌した。O−TMS−ヒ
ドロキシルアミン(2.2ml、20.9ミリモル)を滴加し、反応物を外気温
まで加温し、16時間攪拌した。その後、反応物を蒸発させ、酢酸エチルおよび
10% クエン酸間で分配した。有機相を塩類溶液で洗浄し乾燥した(MgSO4
)。濾過し蒸発させて固体を得、これを酢酸エチル−メタノールから再結晶して
白色固体の標題化合物を得た(300mg、36%)。融点188−190℃。
dH[(CD3)2SO]1.91(1H,dd,J=7.2,15.0Hz),2.06(1H,dd,J=7.2,15.0Hz),2.50(4H,m)
,2.75(2H,m),2.95(2H,m),4.31(1H,m),7.06-7.27(10H,m),7.38(1H,m),8.11(1H,d,
J=8.2Hz),8.73(1H,s),10.4(1H,S).実施例3
N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノ−3−(S)−[2−チエ
ノチオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニンアミド
a)3−(R)−フェニル酢酸ベンジル
THF(160ml)中3−(R)−フェニル乳酸(20.381g、123
ミリモル)の溶液をトリエチエルアミン(23.5ml、17.02g、168
.5ミリモル)および臭化ベンジル(16.2ml)23.18g、135.3
ミリモル)と反応させ、混合物を1時間還流して攪拌した。冷却後、沈殿物を濾
過により除去し、濾液を蒸発させた。残留物を酢酸エチルに取り、飽和炭酸水素
ナトリウム、1M HCl、塩類溶液で洗浄し、乾燥(MgSO4)した。濾過し
、蒸発させて黄色油状の標題化合物を得た(24.086g、76%)。
dH[(CD3)2SO]2.84(1H,dd,J=7.97,13.75 Hz),2.97(1H,dd,J=5.5,13.75 Hz),4.26-
4.34(1H,m),5.09(2H,s),5.62(1H,d,J=6.32 Hz),7.16-7.43(10H,m)
b)2−(R)−ベンジル−3−ターシャリー・ブトキシカルボニルコハク酸ジ
ベンジル
DMF(165ml)中ターシャリー・ブチルマロン酸ベンジル(21.1g
、84.4ミリモル)の溶液に水素化ナトリウム(鉱物油中60% 分散物、3
.37g、84.3ミリモル)を0℃で加えた。溶液を室温まで加温し、アルゴ
ン下1時間攪拌した。
無水トリフラート(21.85ml、36.6g、130.2ミリモル)をジ
クロロメタン(220ml)中3−(R)−フェニル酢酸ベンジル(24g、9
3.75ミリモル)およびピリジン(7.09ml、86.8ミリモル)の溶液
をに0℃で一度に加えた。溶液をアルゴン下1時間攪拌した。混合物を氷冷水、
塩類溶液で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過した。
濾液を0℃でマロン酸塩のDMF溶液に加え、溶液を外気温まで加温し、16
時間攪拌した。蒸発させた後、残留物を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナト
リウム溶液、1M HCl、塩類溶液で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過し
、蒸発させて残留物を得、これをシリカのクロマトグラフィー(5% 酢酸エチ
ル−へキサン)に供し、油状の標題化合物を得た(24.67g、60%)。
dH(CDCl3)1.35(9H,d,J=11.55 Hz)2.84-3.02(2H,m),3.38-3.48(1H,m),3.68(1H,d
d,J=3.7,9.5Hz),4.86-5.19(4H,m),7.03-7.37(15H,m)
c)2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシ−3−エテニルコハク
酸
イソプロピルアルコール(90ml)中2−(R)−ベンジル−3−ターシャ
リー・ブトキシカルボニルコハク酸ジベンジル(14.64g、30ミリモル)
の溶液を10%Pd/Cと反応させ、大気圧下で水素化した。反応物を濾過し、
濾液をピペリジン(8.91ml、90ミリモル)およびホルムアルデヒド(3
7%、36.63ml、450ミリモル)と反応させて一晩外気温で攪拌した。
蒸発させた後残留物を酢酸エチルに溶解し、1M HCl、塩類溶液で洗浄し、
乾燥(MgSO4)した。濾過し、蒸発
させて無色油状の標題化合物を得た(7.17g、87%)。
dH(CDCl3)1.48(9H,s),2.96(1H,dd,J=8.25,14.02 Hz),3.26(1H,dd,J=7.98,14.02H
z),3.75(1H,t,J=7.98Hz),5.55(1H,s),6.23(1H,s),7.14-7.30(5H,m),酸プロトン
は見られなかった.
d)N−(2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキシ−3−エテニル
スクシニル)−(S)-フェニルアラニンアミド
DMF(80ml)中2−(R)−ベンジル−4−ターシャリー・ブトキジ−
3−エテニルコハク酸(7.083g、25.63ミリモル)、塩酸(S)−フ
ェニルアラニンアミド(4.68g、23.3ミリモル)、ジイソプロピルエチ
ルアミン(3.97ml、23.3ミリモル)および1−ヒドロキシベンゾトリ
アゾール水和物(7.16g、46.4ミリモル)の溶液を0℃で塩酸1−(3
−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(5.35g、27.
96ミリモル)と反応させ、反応物を0℃で1時間、および外気温で16時間攪
拌した。蒸発させた後残留物をジクロロメタンに溶解し、10%クエン酸、飽和
炭酸水素ナトリウムで洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過し蒸発させて残留
物を得、これをシリカのクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル7:3−3
:7でグラジエント溶出)に供し、白色固体の標題化合物を得た(5.83g、
60%)。
dH[(CD3)2SO]1.39(9H,s),2.68-2.79(2H,m),2.92-3.05(2H,m),3.72(1H,t,J=7.42H
z),4.38-4.47(1H,m),5.44(1H,s),5.94(1H,s),7.03-7.25(12H,m),7.90(1H,d,J=8.
25 Hz).
e)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−エテニルスクシニル)
−(S)−フェニルアラニンアミド
ジクロロメタン(50ml)中N−(2−(R)−ベンジル−4−ターシャリ
ー・ブトキシ−3−エテニルスクシニル)−(S)−フェニルアラニンアミド(
2.11g、5ミリモル)の溶液をトリフルオロ酢酸(50ml)と反応させ、
外気温で3時間攪拌した。反応物を蒸発させてトルエンで同時蒸発させた。残留
物をエーテルで粉砕し、白色固体の標題化合物を得た(1.59g、87%)。
dH[(CD3)2SO]2.70-2.78(2H,m),2.92-3.05(2H,m),3.77(1H,t,J=7.42 Hz),4.36−4
.44(1H,m),5.48(1H,s),6.02(1H,s),7.04-7.24(12H,m),7.87(1H,d,J=8.53 Hz),12
.59(1H,br.s).
f)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−(S)−[2−チエノ
チオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニンアミド
メタノール(20ml)中N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシ−3
−エテニルスクシニル)−(S)−フェニルアラニンアミド(1.48g、3.
9ミリモル)
の溶液を外気温で2−メルカプトチオフェン(5.07ml)と反応させ、アル
ゴン下18時間加熱還流した。反応物を蒸発させてトルエンで同時蒸発させた。
残留物をエーテルで粉砕し、白色固体の標題化合物を得た(1.63g、86%
)。
dH[(CD3)2SO]1.95(1H,dd,J=3.03,12.92 Hz),2.28-2.75(6H,m),2.98(1H,dd,J=4,1
3.5 Hz),4.32-4.41(1H,m),6.32(1H,s),6.91-7.27(13H,m),7.60(1H,dd,J=1.37,5.
22Hz),8.19(1H,d,J=8.53Hz),12.70(1H,br.s)
g)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノ−3−(S)−[2−
チエノチオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニンアミド
THF(25ml)およびDMF(10ml)中N−(2−(R)−ベンジル
−4−ヒドロキシ−3−(S)−[2−チエノチオメチル]スクシニノレ)−(S
)−フェニルアラニンアミド(1.445g、3ミリモル)の溶液をアルゴン下
−20℃でN−メチルモルホリン(0.42ml、3.6ミリモル)およびイソ
ブチルクロロホルメート(0.48ml、489mg、3.6ミリモル)と反応
させた。−20℃で1時間攪拌した後、O−トリメチルシリルヒドロキシルアミ
ン(2.6ml、2.53g、21ミリモル)を滴加して反応させ、外気温で1
6時間攪拌した。蒸発させた後残留物を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸、
塩類溶液で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過し、蒸発させ、エーテルで粉
砕した後固体を酢酸エチル中加熱し、残留物を濾過して(これを何回も繰り返す
)白色固体の標題化合物を得た(25mg)。
dH[(CD3)2SO]1.81(1H,dd,J=2.3,12.5 Hz),2.25-2.66(6H,m),2.97(1H,dd,J=3.7,
13.5Hz),4.25-4.33(1H,m),5.89(1H,s),6.85(1H,s),6.96-7.24(12H,m),7.56(1H,d
d,J=1.2,5.4Hz,8.13(1H,d,J=8.52 Hz),8.98(1H,s),10.71(1H,s).実施例4
N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノ−3−(S)−[2−チエ
ノチオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド
a)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−(S)−[2−チエノ
チオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド
実施例3fに準じるがN−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−エ
テニルスクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルアミド(200
mg、0.53ミリモル)を用いて製造し、白色固体の標題化合物を得た(10
0mg、38%)。
dH[(CD3)2SO]1.94(1H,dd,J=3.2,12.8Hz),2.28-2.72(6H,m),2.44(3H,d,J=4.7Hz),
2.93(1H,dd,J=4.1,13.5Hz),4.37(1H,m),6.79(1H,m),7.01-7.27(12H,m),7.60
(1H,dd,J=1.5,5.1Hz),8.23(1H,d,J=8.8Hz),12.7(1H,brs).
b)N−(2−(R)−ベンジル−4−ヒドロキシアミノ−3−(S)−[2−
チエノチオメチル]スクシニル)−(S)−フェニルアラニン−N’−メチルア
ミド
実施例3gに準じて製造し白色固体の標題化合物を得た(35%)。
dH[(CD3)2SO] 1.83(1H,d,J=10.5Hz),2.30(1H,m),2.39(3H,d,J=4.7Hz),2.50-2.63
(5H,m),2.94(1H,dd,J=4.1,13.7Hz),4.33(1H,m),6.45(1H,m),7.00(4H,m),7.17(8H
,m),7.56(1H,dd,J=1.4,5.2Hz),8.20(1H,d,J=8.2Hz,),8.97(1H,brs),10.70(1H,br
s).
活性データ
*「比較実施例」はEO90/05719の実施例2の、式:[式中、RはCH2S−(2−チエニル)を意味し、R1はメチルを意味する]で示
される化合物である。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61K 31/16 A61K 31/16
31/381 31/38 601
C07C 237/22 C07C 237/22
C07D 333/34 C07D 333/34
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,
CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G
E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR
,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,
MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK
,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,
VN
(72)発明者 バックル,デレク・リチャード
イギリス、ケイティ18・5エックスキュ
ー、サリー、エプソム、ユー・トゥリー・
ボトム・ロード、スミスクライン・ビーチ
ャム・ファーマシューティカルズ
(72)発明者 ファラー,アンドリュー
イギリス、シーエム18・5エイダブリュ
ー、エセックス、ハーロウ、サード・アベ
ニュー、ニュー・フロンティアーズ・サイ
エンス・パーク・サウス、スミスクライ
ン・ビーチャム・ファーマシューティカル
ズ
(72)発明者 スミス,デイビッド・グリン
イギリス、シーエム18・5エイダブリュ
ー、エセックス、ハーロウ、サード・アベ
ニュー、ニュー・フロンティアーズ・サイ
エンス・パーク・サウス、スミスクライ
ン・ビーチャム・ファーマシューティカル
ズ