【発明の詳細な説明】
エンドセリン拮抗薬の製造方法 発明の背景
エンドセリンは、内皮細胞が産生する21個のアミノ酸からなるペプチドであ
る。このペプチドは、内皮細胞によってだけでなく、気管上皮細胞によっても、
あるいは腎臓細胞からも分泌される。エンドセリン(ET−1)は、強力な血管
収縮薬効果を有する。その血管収縮効果は、エンドセリンが血管平滑筋細胞上の
受容体に結合することで生じる(Nature,332,411-415(1988);FEBS Letters,23 1
,440-444(1988);Biochem.Biophys.Res.Commun.154,868-875(1988))。
エンドセリン−1(ET−1)は、最近確認された3種類の強力な血管収縮性
ペプチドのうちの一つであり、他のものとしては、エンドセリン−2(ET−2
)およびエンドセリン−3(ET−3)があり、これらの配列は、それぞれ2個
および6個のアミノ酸がET−1のものと異なっている(TiPS,13,103-108,M
arch 1992)。
本態性高血圧、急性心筋梗塞、肺高血圧、レイノー病または
アテローム性動脈硬化症の患者における血液あるいは喘息患者の気道洗浄液では
、正常濃度と比較して高いエンドセリン濃度が認められる(Japan J.Hypertensi
on 12,79(1989);J.Vascular Medicine Biology,2,207(1990); J.Am.Med.Ass
ociation,264,2868(1990);およびThe Lancet,ii,207(1990)and The Lancet,ii
,747-748(1989))。
脳血管攣縮の実験モデルおよび急性腎不全の第2のモデルから、エンドセリン
はクモ膜下出血後の脳血管攣縮および腎不全を起こす介在物質の一つであるとい
う結論が得られている(Japan.Soc.Cereb.Blood Flow & Metabol.1,73(1989);
and J.Clin.Invest.,83,1762-1767(1989))。
エンドセリンは、レニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、血管内皮細胞由来
弛緩因子(EDRF)、トロンボキサンA2、プロスタサイクリン、ノルエピネ
フリン、アンギオテンシンIIおよびサブスタンスPなどの多くの生理物質の放
出を制御することも認められている(Biochem.Biophys.Res.Comm.157,1164-116
8(1988); Biochem.Biophys.Res.Comm. 155, 167-172(1989); Proc.Natl.A
cad.Sci.USA,85,9797-9800(1989);J.Cardiovasc.Pharmacol.,13,589-592(1989
);Japan.J.Hypertension
12
,76(1989); および Neuroscience Letters,102,179-184(1989))。さらに
、エンドセリンは、消化管の平滑筋および子宮平滑筋の攣縮を起こす(FEBS Lett
ers,247,337-340(1989);Eur.J.Pharmacol.154,227-228(1988); Biochem.Bioph
ys.Res.Commun.,159,317-323(1989))。エンドセリンはさらに、ラットの血管
平滑筋細胞の成長を促進することが明らかになっており、それは動脈肥厚への関
与を示唆するものであると考えられる(Atherosclerosis,78,225-228(1989))。
エンドセリン受容体は、末梢組織と中枢神経系にも高濃度で存在し、エンドセ
リンを脳に投与することで、動物の行動に変化を誘発することが明らかになって
いて、それはエンドセリンが神経機能を制御する上で重要な役割を果たしている
ことを示唆するものである(Neuroscience Letters,97,276-279(1989))。
内毒素は、エンドセリンの放出を促進することが明らかになっている。この所
見は、エンドセリンが、内毒素誘発疾患の重要な介在物質であることを示唆して
いる(Biochem.Biophys.Res.Commun.161,1220-1227(1989); および Acta.Phys
iol.Scand.,137,317-318(1989))。
ある研究では、腎臓細胞培養物にシクロスポリンを加えるこ
とで、エンドセリン分泌が増加することが明らかになっている(Eur.J.Pharmaco
l.,180,191-192(1990))。別の研究では、ラットにシクロスポリンを投与する
ことで、循環エンドセリン濃度に顕著な上昇を伴って、糸球体濾過速度の低下お
よび血圧上昇が生じることが明らかになっている。このシクロスポリン誘発腎不
全は、抗エンドセリン抗体を投与することで抑制することができる(Kidney Int
.37,1487-1491(1990))。これらの研究は、エンドセリンがシクロスポリン誘
発腎臓疾患の病因に大きく関与していることを示唆するものである。
鬱血性心不全患者での最近の研究から、血漿中のエンドセリン濃度上昇と疾患
の重度との間には良好な相関があることが示されている(Mayo Clinic Proc.,6 7
,719-724(1992))。
エンドセリンは、血管または血管以外の平滑筋の持続性攣縮を直接または間接
に(他の各種内因性物質の放出を制御することにより)誘発する内因性物質であ
る。それの過剰産生または過剰分泌が、高血圧、肺高血圧、レイノー病、気管支
喘息、急性腎不全、心筋梗塞、狭心症、アテローム性動脈硬化症、脳血管攣縮お
よび脳梗塞の原因となる因子の一つであると考えられている(A.M.Doherty,End othelin: A New Challenge
,
J.Med.Chem.,35,1493-1508(1992)参照)。
エンドセリンがそれの受容体に結合するのを特異的に阻害する物質は、エンド
セリンの生理効果を遮断すると考えられ、エンドセリンが関係する障害を有する
患者における治療に有用である。
本発明は、下記式の化合物の立体選択的合成に関するものである。
当該化合物は、メルク社(Merck & Co.,Inc.)によって1994年9月29
日に公開されたPCT国際公開番号WO94/21590号に開示されている。
メルク社が以前記載している製造経路は、ラセミ体からこのエンドセリン拮抗薬
を得るという経路であった。この方途では、所望のエナンチオマーを得るには、
後半段階の中間体を古典的方法によって分割する必要があった。それは、候補薬
剤の大量合成では能率の悪いものであると考えられた。発明の概要
本発明は、下記化合物の立体異性体の大量製造に有用な該化合物の立体選択的
合成に関するものである。この合成には、アルキル化段階の立体選択性を高めるためのキラル補助部の使用
が関与する。あるジアステレオマー純度を持つ塩を再結晶することで、エナンチ
オマー性を高めることができる。発明の詳細な説明
本発明は、下記式の化合物の立体異性体の大量製造に有用な該化合物の立体選
択的合成に関するものである
本発明は、下記構造式Iの構造を有する化合物の製造方法において、
(式中、*はキラル中心を表す)
a)非プロトン性溶媒中、4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香酸メチル
と塩基とを反応させて、下記式の4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香酸メ
チルの塩を得る段階;(式中、M+はNa+、K+もしくはLi+である)
b)ルイス酸および有機溶媒の存在下に、1,3−ベンゾジオキソールをエチ
ルオキサリルクロライドでアシル化して、下記式のエステルを得る段階;
c)前記エステルを溶媒中塩基で加水分解することで、下記式の酸を得る段階
;
d)前記酸を溶媒中で塩素化剤と反応させることで、下記式の酸塩化物を得る
段階;
e)前記酸塩化物をキラル補助部Rcおよび有機塩基と反応させて、下記式の
置換ケトエステル誘導体を得る段階;(式中、Rcは
であり、
Raは、(C1〜C6)アルキル、フェニルもしくはシクロヘキシルであり;
R13は、(C1〜C6)アルキル、フェニルもしくはシクロヘキシルであり;
R14およびR15は独立に(C1〜C10)アルキルであるか、あるいはR14とR1 5
が一つになってピペラジニルもしくはピロリジニルから成る群から選択される
5員もしくは6員の複素環を形成することができる)
f)置換ケトエステル誘導体を還元剤によって還元して、下
記式のヒドロキシ誘導体を得る段階;
g)前記ヒドロキシ誘導体を有機溶媒中でハロゲン化剤によってハロゲン化し
て、下記式のハロゲン誘導体を得る段階;
(式中、XはBr、ClもしくはIである)
h)4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香酸メチルの塩を、有機溶媒中で
前記ハロゲン誘導体でアルキル化して、下記式のキラル補助部フェノキシフェニ
ル酢酸誘導体を得る段階;
i)含水有機溶媒混合液中で、無機塩基によって、前記フェノキシフェニル酢
酸誘導体からキラル補助部を加水分解にて外して、下記式のフェノキシフェニル
酢酸を得る段階;
j)前記フェノキシフェニル酢酸を溶媒中で塩素化剤と反応させて、下記式の
酸塩化物を得る段階;
k)前記酸塩化物をアンモニア源と反応させて、下記式のアミドを得る段階;
l)塩基および溶媒の存在下に、前記アミドを4−イソプロピルベンゼンスル
ホニルクロライドでアルキル化して、下記式のスルホンアミドを得る段階;
m)前記スルホンアミドを溶媒中無機塩基で加水分解して、下記式の前記酸の
塩を得る段階:
n)前記塩を無機酸で中和して、下記式の二酸を得る段階;
o)前記二酸を有機溶媒中で2当量のα−メチルベンジルアミンと反応させて
、下記式のジアステレオマー塩を得る段階;
p)前記塩を無機酸で分解して、下記式の光学異性体豊富な酸を得る段階; q)前記光学異性体豊富な酸を溶媒中または混合溶媒中で塩基と反応させて、
下記式Iの化合物である二カリウム塩を得る段階;
を有してなる方法に関するものである。
上記の方法において、段階aでの塩基は、ナトリウム、カリウムもしくはリチ
ウムの炭酸塩;ナトリウム、カリウムもしくはリチウムのt−ブトキシド;ナト
リウム、カリウムもしくはリチウムのt−アミレート(amylate);ナトリウム
、カリウムもしくはリチウムの水酸化物;ナトリウム、カリウムもしくはリチウ
ムの水素化物からなる群から選択され、段階aでの非プロトン性溶媒は、テトラ
ヒドロフラン、トルエンおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される
。
上記の方法において、アシル化段階bでのルイス酸は、AlCl3、FeCl3
、TiCl4およびBF3−エーテラートからなる群から選択され、アシル化段階
bでの有機溶媒は塩化メチレンおよびジクロロベンゼン類からなる群から選択さ
れる。
上記の方法において、加水分解段階cでの塩基は、NaOH、KOH、NaO
CH3、KOCH3、KOCH2CH3、NaOCH2CH3、KOt−ブチルおよび
NaOt−ブチルからなる群から選択され、加水分解段階cでの溶媒は、テトラ
ヒドロフラン、メタノール、エタノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミ
ドおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択
される。
上記の方法において、段階dでの塩素化剤は、オキサリルクロライド、SO2
Cl2、POCl3、PCl3およびPCl5からなる群から選択され、段階dでの
溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエンおよびジメチルホルムアミドからなる群
から選択される。
上記の方法において、段階eでのキラル補助部は、
からなる群から選択され、段階eでの有機塩基は、トリエチルアミン、ピリジン
およびジイソプロピルエチルアミンからなる群から選択される。
上記の方法において、段階fでの還元剤は、NaBH4、NaCNBH3および
Na(OAc)3BHからなる群から選択され、段階fでの溶媒は、テトラヒド
ロフラン−水、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミドおよびジメチル
スルホキシドから成る群から選択される。
上記の方法において、ハロゲン化段階gでのハロゲン化剤は、PBr3、CB
r4−P(C6H5)3、NBS−DMF、PCl3、CCl4−P(C6H5)3およ
びNCS−DMFからなる群から選択され、該ハロゲン化段階での有機溶媒は、
テトラヒドロフラン、塩化メチレンおよびトルエンからなる群から選択される。
上記の方法において、段階hでの有機溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン
およびジメチルホルムアミドからなる群から選択される。
上記の方法において、キラル補助部加水分解段階iでの無機塩基は、LiOH
−H2O2、LiOH、KOHもしくはNaOHからなる群から選択され、キラル
補助部加水分解段階iでの含水有機溶媒混合物は、テトラヒドロフラン、トルエ
ン−水、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノールおよびt−ブタノール
からなる群から選択される。
上記の方法において、塩化アシル生成段階jでの塩素化剤は、オキサリルクロ
ライド、SO2Cl2、POCl3、PCl3およびPCl5からなる群から選択さ
れ、段階jでの溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエンおよびジメチルホルムア
ミドから
なる群から選択される。
上記の方法において、段階kでのアンモニア源は、NH3(ガス)、アンモニ
ア水(水性水酸化アンモニウム)、塩化アンモニウム−Na2CO3および塩化ア
ンモニウム−K2CO3からなる群から選択される。
上記の方法において、段階lでの塩基は、NaOt−アミル、KOt−アミル
、NaOt−ブチル、KOt−ブチル、NaHおよびKHからなる群から選択さ
れ、段階lでの溶媒は、テトラヒドロフランおよびトルエンからなる群から選択
される。
上記の方法において、段階mでの無機塩基は、NaOH、KOHおよびLiO
Hからなる群から選択され、段階mでの溶媒は、テトラヒドロフラン−水からな
る群から選択される。
上記の方法において、中和段階nでの無機酸は、HCl、H2SO4およびHN
O3からなる群から選択される。
上記の方法において、段階oでの有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル
、メタノール、エタノールおよびt−ブタノールからなる群から選択される。
上記の方法において、分解段階pでの無機酸は、HCl、H2SO4およびHN
O3からなる群から選択される。
上記の方法において、段階qでの塩基は、KOH、KOCH3、KOCH2CH3
およびKOt−ブチルからなる群から選択され、段階qでの溶媒は、メタノー
ル、エタノール、t−ブタノール、水およびそれらの混合物からなる群から選択
される。
本発明において星印で示した立体異性を生じる(stereogenic)中心は、1)
キラル補助部を用いるアルキル化段階、および2)ジアステレオマー選択的再結
晶という本発明における2つの段階で光学異性体豊富となる。実施例に示したも
のは、示した立体化学を有すると考えられる。使用するキラル補助部およびアミ
ン塩により、アルキル化段階で支配的となる異性体と晶出するジアステレオマー
異性体が決まる。
キラル補助部とは、アルキル化部位近くの位置で結合して、求核攻撃の方向に
影響を与えることができる容易に脱離可能なキラル基と定義される。本発明の方
法で有用なキラル補助部の一部を挙げると、以下のものがある。
式中、
Raは、(C1〜C6)アルキル、フェニルもしくはシクロヘキシルであり;
R13は、(C1〜C6)アルキル、フェニルもしくはシクロヘキシルであり;
R14およびR15は独立に(C1〜C10)アルキルであるか、あるいはR14とR1 5
が一つになってピペラジニルもしくはピロリジニルから成る群から選択される
5員もしくは6員の複素環を形成することができる。
本発明で有用な好ましいキラル補助部は、Rcが下記のものである。
上記のアルキル置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、ネオ
ペンチル、イソペンチルなどの指定の長さの直鎖および分岐炭化水素を表す。
アルケニル置換基は、ビニル、アリルおよび2−ブテニルの
ように、それぞれが炭素−炭素二重結合を有するよう変えられている上記のアル
キル基を表す。
シクロアルキルは、3〜8個のメチレン基からなる環であって、各メチレン基
が他の炭化水素置換基で置換されていても未置換であっても良い環を表し、例え
ばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび4−メチルシクロヘ
キシルなどがある。
アルコキシ置換基とは、酸素架橋を介して結合した上記のアルキル基を表す。
ヘテロアリールとは、カルバゾリル、フリル、チエニル、ピロリル、イソチア
ゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾ
リル、ピラジニル、ピリジル、ピリミジル、プリニルまたはキノリニルと定義さ
れる。
この合成は、入手が容易な4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアリル化から始ま
る(反応図式1)。次に、得られたアリル化フェノールをジクロロベンゼン中で
熱転位させ、次に水素化して、所望の4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香
酸メチルを良好な全体収率で得る。反応図式1 1,3−ベンゾジオキソールとエチルオキサリルクロライドとのフリーデル−
クラフツ反応により、ケトエステル3を高収率で得る。その中間体を単離せずに
加水分解して、相当するケト酸を得るが、それは結晶固体として単離することが
できる。次にこの酸を、酸塩化物を介して(S)−エチル乳酸エステル5に変換
する(反応図式2)。反応図式2 ケトエステルの水素化ホウ素ナトリウム還元により、ヒドロキシエステル6の
ジアステレオマー混合物を得る(反応図式3)。65:35という高い比が認め
られている。このアルコールの粗混合物は通常、三臭化リンを用いて相当するジ
アステレオマー臭化物の混合物に変換する。得られた臭化物のジアステレオマー
混合物は結晶ではなく、通常は精製を行わずに次の段階に進む。反応図式3 4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香酸メチルのナトリウム塩と臭化物7
のカップリング反応を−35℃でTHF中にて行う。その条件下では、反応を完
結させるには約18時間必要であり、生成物は収率80%で得られ、ジアステレ
オマー比は約90:10である。それより高い温度で反応を行うと反応速度は高
くなるが、ジアステレオマー選択性は低くなる。
得られた粗カップリング生成物をヒドロ過酸化リチウムで処理して、乳酸補助
部を加水分解する(反応図式4)。この条件下では、キラル中心のラセミ化はほ
とんど認められなかった。
水酸化リチウムなどのより強力な塩基を用いたケン化を行うと若干ラセミ化が生
じる。得られた粗酸とオキサリルクロライドとの反応そして次に水酸化アンモニ
ウムとの反応によってアミドを得て、それを結晶中間体として単離する。得られ
た結果は、この化合物のエナンチオマー純度を再結晶によって高めることができ
ることを示している。この物質は通常、75〜80%エナンチオマー過剰で収率
85%にて単離される。
反応図式4 THF中ナトリウムtert−アミルオキシドと4−イソプロピルベンゼンス
ルホニルクロライドを用いてスルホニル化を
行うことで、ラセミ化を起こさずに良好な収率にて所望の生成物が得られる(反
応図式5。Arは4−イソプロピルベンゼンを表す)。この中間体は単離せず、
通常はメタノール中水酸化カリウムで処理して、エステルの加水分解を行う。得
られた二酸を次に、2当量の(R)−α−メチルベンジルアミンで処理して、ジ
アミン塩を形成する。このジアステレオマー塩はEtOAcから沈殿する。1回
の再結晶で、塩分解後に99%eeを超える物質が得られる。
このジアミン塩をHClで処理して、二酸を遊離させる。二酸14をメタノー
ルおよび水から結晶化させて、純粋な(>99A%、>99%ee)物質を得る
。二カリウム塩14を形成して化合物Iを得るには、生成物が各種の溶媒和物お
よび水和物を形成することで複雑になる。最終的に、化合物IのMeOH溶媒和
物が良好に結晶化し、湿潤空気に曝露することで所望の二水和物に変換できるこ
とが認められた。反応図式5 以下の実施例により、本発明についての理解を深めることができるが、これら
実施例は、本発明を限定するものではない。実施例1 塩化アルミニウム(150g、1.13mol)を塩化メチレン(800mL
)に入れたスラリーに、−55℃でエチルオキサリルクロライド(100mL、
0.89mol)を5分間かけて加えた。反応液は発熱して−48℃となり、1
5分間かけて冷却されて−55℃に戻った。ドライアイス/アセトンを用いて反
応温度を−45℃〜−55℃に維持しながら、1,3−ベンゾジオキソール(1
00g、94mL、0.82mol)を15分間かけて加えた。得られた赤色溶
液を20分間熟成させた。そのバッチを氷水700mLに注意深く投入して反応
停止し、混合物を10分間攪拌した。分液を行い、有機層を水(500mL)で
洗浄した。減圧下に濃縮して、生成物を褐色油状物(184g)として得て、そ
れを精製せずに次の段階
で用いた。実施例2 ケト酸の合成 ケトエステル3(182g、0.82mol)のメタノール(800mL)溶
液に、氷浴を用いて温度を35℃以下に維持しながら、5N水酸化ナトリウム(
300mL)および水(300mL)の混合物を加えた。バッチを20分間熟成
したところ、その間に沈殿が生じた。塩化メチレン(500mL)を加え、混合
物を濃HClを用いてpH3.0の酸性とした。分液を行い、有機相を減圧下に
濃縮して100mLとした。トルエン(300mL)を加え、濃縮を継続して最
終容量を300mLとした。得られたスラリーを1時間熟成し、濾過した。湿ケ
ーキをヘキサンで洗浄し、風乾して、ケト酸120gを黄褐色固体として得た。実施例3 乳酸エステルの形成 ケト酸(80g、0.41mol)を塩化メチレン(800mL)に入れたス
ラリーに、20〜25℃でDMF(3mL)を加えた。オキサリルクロライド(
37mL、0.42mol、d=1.45g/mL)を10分間かけて加えた。
20分以内に反応混合物は透明溶液となった。少量サンプルのNMRアッセイ
によって、ケト酸が<5%で残っていることがわかった。次に、反応混合物をカ
ニューレを介して15分間かけて、(S)−乳酸エチル(44mL、0.39m
ol、d=1.042g/mL)およびTEA(143mL、d=0.72g/
mL)の塩化メチレン(600mL)溶液に、氷浴を用いて温度を<30℃に維
持しながら加えた。混合物を1時間熟成させた。バッチを水(500mL)に投
入して反応停止し、分液を行った。有機層を水(500mL)および次に飽
和重炭酸ナトリウムで洗浄した(300mLで2回)。減圧下に濃縮することで
、生成物100gを油状物として得た。この物質を精製せずに次に段階に用いる
。実施例4 乳酸エステルの還元 乳酸エステル(100g、0.34mol)のTHF(600mL)溶液に1
0〜15℃で水(65mL)を加えた。水素化ホウ素ナトリウム(5g、0.1
4mol)を25分間かけて5回に分けて加えた。
水素化ホウ素ナトリウムを加えると中等度の発熱があった。氷浴を用いて、反
応温度は<25℃に維持した。
混合物を20分間熟成し、ブライン(300mL)および酢酸エチル(600
mL)に投入した。分液を行い、水層を酢酸エチルで抽出し戻した(300mL
)。合わせた有機抽出液を水(200mL)で洗浄し、分液した。減圧下に濃縮
して、生
成物100gを油状物として得て、それを精製せずに次の段階に用いた。実施例5 臭化物の製造 ヒドロキシエステル(100g、0.34mol)の塩化メチレン(500m
L)溶液に、10〜15℃で三臭化リン(12.8mL、0.13mol、d=
2.85g/mL)を5分間かけて加えた。
混合物を昇温させて20℃とし、1.5時間熟成した。バッチを水(250m
L)に投入して反応停止し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液(250mL)で
洗浄した。有機層を減圧下に濃縮することで、臭化物111gを暗色油状物とし
て得て、これを精製せずに次の段階で用いた。実施例6 フェノキサイドのカップリング 5〜10℃とした4−ヒドロキシ−3−n−プロピル安息香酸メチル(23.
7g、0.12mol)のTHF(175mL)溶液に、氷浴で温度を<20℃
に維持しながら、ナトリウムt−ブトキシド(11.7g、0.12mol)を
15分間かけて3回に分けて加えた。
混合物を20分間熟成し、−35℃とした臭化物(55.0g、0.15mo
l)のTHF(400mL)溶液に、カニューレを介して加えた。反応液を−3
5℃で20時間熟成した。混合物をブライン(200mL)、水(200mL)
および酢酸エチル(400mL)の混合液に投入した。分液を行い、有機層を減
圧下に濃縮して、生成物69.0gを油状物として得た。
生成物を、HPLCによる測定で90:10のジアステレオマー混合物として
単離した。
HPLCアッセイ:カラム:Zorbax Rx−C8 4.6mm×25c
m;溶媒:CH3CN:H2O(0.1%H3PO4)60:40;流量:1mL/
分;波長:220nm;カラム温度:25℃;保持時間:主要異性体20.2分
;少量異性体18.8分;臭化物7.8分。実施例7 乳酸エステルの加水分解 過酸化水素(3.5リットル、133.8mol)を水酸化リチウム(709
g、16.9mol)の水溶液(水3.5リットル)に加え、混合物を20〜2
5℃で20分間熟成した。次に、この溶液を乳酸エステル8(3.1kg、6.
76mol)の冷(0〜5℃)THF(28リットル)溶液に30分間かけ
てゆっくり加えた。
反応混合物を30分間熟成し、0〜5℃まで冷却し、飽和重亜硫酸ナトリウム
水溶液(6リットル)で反応停止した。
飽和塩化アンモニウム水溶液(4リットル)およびメチルt−ブチルエーテル
(36リットル)を加え、撹拌後、分液を行った。
有機層をMgSO4(1kg)で脱水し、減圧下に濃縮して粗生成物2.6k
gを暗色油状物として得て、それをそれ以上精製せずに使用した。実施例8 アミド10の製造 酸9(725g、1.9mol)の塩化メチレン(9リットル)溶液に20℃
で、DMF(20mL)を加えた。オキサリルクロライド(203mL、2.3
8mol、d=1.45g
/mL)を20分間かけて加え、混合物を60分間熟成した。添加中、ガスの発
生が認められ、反応を通じてその発生は続いた。次に、酸塩化物溶液を20分間
かけて、水酸化アンモニウム(2.6リットル)、水(3リットル)および塩化
メチレン(10リットル)の冷(0〜5℃)混合物にゆっくり移し入れた。
分液を行い、有機相を減圧下に濃縮し、残留塩化メチレンをメタノールと交換
した。メタノールの最終容量は5リットルであった。水(5リットル)を20℃
で2時間かけて加え、スラリーを30分間熟成した。水2リットルを加えた後に
結晶化が開始した。生成物を濾過によって単離し、ケーキを水(1リットル)で
洗浄した。窒素気流下で乾燥することで、オフホワイト固体606gを得た。生
成物のHPLCアッセイでは、ジアステレオマーの88:12混合物であること
が示された。HPLCアッセイ
カラム:Zorbax Rx−C8 4.6mm×25cm;
溶媒:CH3CN:H2O(0.1%H3PO4)60:40;
流量:1mL/分;波長:220nm;カラム温度:25℃;
保持時間:生成物5.6分;原料6.9分。キラルHPLCアッセイ
カラム:Regis(R,R)−Whelk−O 4.6mm×250mm;
溶媒:ヘキサン:イソプロピルアルコール(0.5%HOAc)30:70;流
量:1mL/分;波長:220nm;カラム温度:25℃;保持時間:少量異性
体6.74分、主要異性体19.84分。実施例9 アミドのスルホニル化 アミド(578g、1.56mol)および4−イソプロピルベンゼンスルホ
ニルクロライド(409g、1.9mol)のTHF(6リットル)溶液に、0
〜5℃で1時間かけて、ナトリウムt−アミルオキシド(378g、3.43m
ol)のTHF(3リットル)溶液を加えた。添加速度を制御し、外部冷却浴を
用いることで、温度を0〜5℃に維持した。混合物を
0.5時間熟成し、飽和塩化アンモニウム水溶液(3リットル)および水(3.
5リットル)で反応停止した。塩化メチレン(18リットル)を加え、分液を行
った。有機相の減圧濃縮によって、生成物を暗色油状物として得て、それを精製
せずに使用した。実施例10 メチルエステルの加水分解 メチルエステル(862g、1.56mol)のメタノール(5リットル)溶
液に、2N KOH(2リットル)を加えた。混合物を1.5時間加熱還流した
。混合物を冷却して25℃とし、1N HCl(9リットル)および塩化メチレ
ン(10リットル)の混合物に投入して反応停止した。分液を行い、有機相を減
圧下に濃縮して、生成物615gを暗色油状物として得た。実施例11 ジアミン塩の生成および再結晶 酸(615g、1.14mol)の酢酸エチル(11リットル)溶液に、(R
)−(2)−メチルベンジルアミン(350mL、2.71mol)を1回で加
えた。溶液にジアミン塩5gを種として入れ、混合物を16時間熟成させた。得
られたスラリーを濾過し、ケーキを窒素気流下に18時間乾燥して、ジアミン塩
800gをオフホワイト固体として得た。得られた物質について溶離液をIPA
/ヘキサン50:50(0.5%HOAc)とする(R,R)−Whelk−O
カラムでのHPLCアッセイを行うことで、93%eeであることがわかった。
ジアミン塩(800g)をメタノール(7リットル)に溶かし、水(6リットル
)を30分間かけて加えた。メタノール(1.5リ
ットル)を20〜30℃での減圧蒸留によって除去し、得られたスラリーに30
分間かけて水(5リットル)を加えた。スラリーを30分間熟成し、濾過した。
生成物を窒素気流下に18時間乾燥して、生成物430gをオフホワイト固体と
して得た。同じ条件下でのHPLCアッセイにより、>99%eeであることが
わかった。実施例12 ジアミン塩の解離 酢酸エチル(15リットル)および1N HCl(10リットル)の混合物に
、ジアミン塩(837g、1.07mol)を加えた。混合物を20分間攪拌し
、静置して層を分離させた。有機層をDarco KB(60g)で1時間処理
し、次にセライト濾過して炭素を除去した。得られた酢酸エチル溶液を減
圧下に濃縮して油状物を得て、それをメタノール(6リットル)に溶かした。水
(1.5リットル)を20℃で30分間かけて加え、次に得られたスラリーに、
追加の水1.5リットルを加えた(30分間かけて)。30分間熟成した後、バ
ッチを濾過し、ケーキをMeOH:水(50:50溶液1リットル)で洗浄した
。生成物を窒素気流下に16時間乾燥して、生成物495gを白色固体として得
た。HPLCアッセイから、得られた物質が>99A%の純度であることがわか
った。キラルHPLCアッセイからは、その物質が>99%eeであることがわ
かった。キラルHPLCアッセイ
カラム:Regis(R,R)−Whelk−O 4.6mm×250mm;
溶媒:ヘキサン:イソプロピルアルコール(0.5%HOAc)50:50;流
量:1mL/分;波長:220nm;カラム温度:25℃;保持時間:少量異性
体7.9分、主要異性体10.5分。実施例13 化合物Iの合成 二酸(451.5g、0.84mol)のIPA(6.3リットル)およびM
eOH(903mL)懸濁液を45℃まで加熱して透明溶液を得た。温度を45
〜50℃に維持しながら、この溶液にKOH溶液(0.97MのIPA溶液1.
9リットル)を15分間かけて加えた。透明溶液を1時間かけてゆっくり冷却し
て20℃とした。約42℃で自然に結晶化が開始する。バッチを20℃で2時間
熟成し、濾過した。ケーキをIPA(1.0リットル)で洗浄し、窒素気流下に
8時間乾燥した。NMRおよびTGAは、MeOHが約5.6%存在することを
示していた。バッチに湿潤空気を1.5時間通すことで、メタノールを除去し、
ケーキを水和させて、化合物I 490gを白色固体として得た。この時点での
NMRおよびTGAは、MeOHが
存在しないことを示していた。TGAおよびKFで、水が約5.7%含まれてい
ることが示された。キラルHPLCアッセイ
カラム:Regis(R,R)−Whelk−O 4.6mm×250mm;
溶媒:ヘキサン:イソプロピルアルコール(0.5%HOAc)50:50;流
量:1mL/分;波長:220nm;カラム温度:25℃;保持時間:少量異性
体7.9分、主要異性体10.5分。
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Z,VN
(72)発明者 ツシヤエン,デイビツド・エム
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126