JP2000502323A - フェニルケトン尿症の処置を目的とするトレオニンの使用 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は、フェニルケトン尿症（ＰＫＵ）の治療を目的とするトレオニンの使用に関するものである。本発明は、ＰＫＵ患者の血漿中のフェニルアラニン濃度がさらにトレオニンを投与することによって減少できるという驚くべき発見に基づくものである。したがって、本発明の目的は、アミノ酸１００ｇあたりトレオニンを少なくとも８ｇ含有する、フェニルケトン尿症に食餌または医薬品として使用される物質である。この物質は、食品、特に規定食(formula food)及びＰＫＵ療養食(dietaryfood)であってもよい。

Description

【発明の詳細な説明】 フェニルケトン尿症の処置を目的とするトレオニンの使用 本発明は、フェニルケトン尿症を食餌または医薬により治療するための手段な らびにフェニルケトン尿症を治療するためのトレオニンの使用に関するものであ る。 フェニルケトン尿症（以下、「ＰＫＵ」と称する）は、遺伝子が原因で起こる 疾患であり、物質代謝障害を示し、放置すると、大部分が重度の身体的および精 神的な発育障害を引き起こす。フェニルアラニンは、通常の栄養条件下で、すべ ての動物性および植物性タンパク質と共に吸収される。この病気の患者では、物 質代謝障害のために、血液および組織中にフェニルアラニンが蓄積する。フェニ ルアラニンの量が部分的に過剰に高くなると、物質代謝のバランスが壊れ、その ために様々な症状を通して、不可逆的な、進行性の精神障害を引き起こすことが ある。 ＰＫＵは治癒可能ではないが、身体独自のタンパク質の合成が成長および再生 にとって最適に保証され、同時に血中のフェニルアラニンレベルが標準範囲内に 入るような量のフェニルアラニンだけが供給されるように、フェニルアラニンの 濃度が低い、適切な食餌により、治療することができる。 すべてのタンパク質がフェニルアラニンを含んでいるので、この食餌はタンパ ク質濃度が極めて低くなければならない。そのため、ＰＫＵ患者は、フェニルア ラニン量の低い食品により、他のすべての、生命にとって同様に重要なアミノ酸 の供給量が少な過ぎることになる。したがって、その他のアミノ酸は、ほとんど が遊離アミノ酸を含む療養食の形態で追加供給する。そのような療養食は例えば ＥＰ−Ａ−０４８８０７８ 号に記載されている。フェニルアラニンを含まない乳児用および幼児用食品基礎 物質はさらにＥＰ−Ａ−０４９２１８３号に記載されている。そこでは、上記の ＰＫＵの問題に関する実施態様もある。そこではさらに、ＰＫＵ治療用の特別な 食餌療法製品も開示されている。これらのヨーロッパ特許出願公報をここに参考 として含める。 これまで公知のフェニルアラニンを含まないアミノ酸混合物およびそれを基に する療養食の主な欠点は、味が非常に悪いので、そのようなフェニルアラニンを 含まない療養食が、それを生涯摂取しなければならない患者により拒絶されるこ とが多いという点である。 本発明の目的は、フェニルケトン尿症に食餌または医薬として使用される改良 された、簡単な物質を提供することである。 この課題は、請求の範囲の開示により解決される。 驚くべきことに、トレオニンを追加して、特に大量に与えることにより、ＰＫ Ｕ患者の血漿中フェニルアラニン濃度を低減できることが分かった。血中トレオ ニンレベルを高くするトレオニンの経口または非経口投与により、血中のフェニ ルアラニンレベルを下げることができる。これによって、例えば、トレオニンを 追加投与した場合、ＰＫＵ患者の食品をフェニルアラニン含有量に関してあまり 厳しく管理しなくても済むようになる。その上、トレオニンのフェニルアラニン 低減効果により、ＰＫＵ患者に、健康を損なうことなく、より多くのフェニルア ラニンを、したがってより多くのタンパク質を食品により供給することができる 。これには、ＰＫＵ患者が明らかにより多くの食品を利用できるという大きな利 点がある。同時に、これまで毎日必要であった遊離アミノ酸の供給をそれに応じ て減らすことができる。 本明細書において、「追加」ということばをトレオニンの量に関して使用する 場合、このことばは、ＰＫＵ患者がこれまで、例えば、通常の ＰＫＵ添加剤を含む通常の食品で摂取していた量、ないしＰＫＵ患者がそれまで の推奨により摂取すべきであった量よりも多い、ないし大きい量のトレオニンが 患者に供給されることを意味する。 追加のトレオニンは、適当なすべての形態でＰＫＵ患者に投与することができ る。例えば、通常の食品にトレオニンを添加し、それによって患者に大量のトレ オニンを供給することができる。さらに、大量のトレオニンを食品、特に形式食 品の形態で供給することが可能である。医薬品の形態で投与することもできる。 そのような食品としては、例えば、乳児用ミルク、児童用食品、青少年および 成人用食品、療養食および食品添加物が挙げられる。 好ましい実施態様によると、本発明の物質は、アミノ酸１００ｇあたり８〜８ ０ｇの量のトレオニンを含む療養食品または食品基礎物質の形態にある。その際 、トレオニンの量は、患者に与えられる他の食品および／または食品添加物、例 えば従来公知の食品添加物、に応じて選択する。 別の好ましい実施態様では、本発明の物質は、アミノ酸１００ｇあたりトレオ ニンが８〜１００ｇになる医薬品または食品添加物の形態にある。最も簡単な場 合、有効成分としてトレオニンだけを含む医薬品または食品添加物を患者に与え ることができる。そこで例えば、純粋なトレオニン（遊離アミノ酸）を含むカプ セルを投与することができる。そのような遊離のトレオニンないしトレオニンの カプセルを与えることにより、食品、食品添加物およびＰＫＵ療養食のトレオニ ン含有量を、それらの組成中の他のアミノ酸および／またはタンパク質を変える ことなく、増加することができる。 トレオニンは、個々の食品、食品添加物、調合剤および医薬品中に、遊離アミ ノ酸の形態で存在することができる。さらに、トレオニンは塩 の形態、トレオニン含有ペプチド（例えばウシのグリコマクロペプチド）の形態 、トレオニン濃度の高いタンパク質およびその加水分解物の形態ならびにこれら のトレオニン供給源の混合物の形態でもよい。 同様のことが他のアミノ酸も当てはまり、それらのアミノ酸は、適当なすべて の形態、例えばぺプチドとして、タンパク質として、および遊離アミノ酸として 、またはそれらの混合物として存在することができる。 しかし、本明細書中でアミノ酸１００ｇあたり特定量のトレオニンを記載する 場合、これらのアミノ酸が結合形態で、したがってペプチドまたはタンパク質と して存在する場合も、その値は、計算では遊離のアミノ酸を指す。したがって、 トレオニンおよびアミノ酸に関して記載される量は遊離の酸に関連する。 本発明の中核は、ＰＫＵ患者に追加量のトレオニンを投与し、それによって血 中フェニルアラニン値を下げることにある。その際、トレオニン投与の方法はさ ほど重要ではなく、患者の必要とする量、食餌計画の必要性に応じて、あるいは 他の、患者にとって重要な基準を考慮して選択すべきである。 そこで、大事なことは、ＰＫＵ患者が追加量のトレオニンを任意の形態および 様式で摂取することだけである。好ましい実施態様では、ＰＫＵ患者は、体に供 給されたトレオニンの量が、体に供給された全アミノ酸１００ｇあたり少なくと も８ｇになるような量のトレオニンを摂取する。本明細書の枠内で、トレオニン の量を８ｇ〜１００ｇ、または８ｇ〜８０ｇと記載した場合、無論、その間にあ るすべての個々の値、例えば８、９、１０、１１、１２、．．．１５、１６、． ．．３０、３１、．．．４５、４６、４７、４８、４９、５０、．．．６０、６ １、．．．７０、７１、７２、．．．８０、８１、．．．９０、９１、．．．１ ００、が含まれる。 最も簡単な場合、ＰＫＵ患者は、通常の食品を摂取することができる。必要量 のトレオニンも摂取するには、この患者はトレオニンを、例えばカプセルに入れ た遊離の酸として摂取することができる。 本発明は、ＰＫＵの治療方法であって、ＰＫＵ患者に、そのＰＫＵ患者が通常 または一般的に摂取するトレオニン量に加えて、追加のトレオニンを投与する方 法も提供する。 しかし、本発明の主な応用分野は、すでに公知の、市販されている、一般的に 味が非常に悪いＰＫＵ食品の一部を、トレオニン濃度の高い製品または遊離形態 のトレオニンで補完できるようにすることである。このトレオニンにより患者の 血中フェニルアラニン値が下がるので、乳児用ミルク、粥、ミルク、乳製品、果 物、野菜、等の通常の食品を食餌に使用することができる。 本発明を下記の実施例により詳細に説明する。実施例１ 生後０〜３箇月の乳児用のミルク（１日の量） この年齢に一般的なＰＫＵ食餌、例えば乳児用Milupa PKU 1組成物から出発す る。１００ｇのPKU 1はアミノ酸６０．３ｇ（全体で約５０．３ｇの卵白に相当 する）、脂肪０．０ｇ、炭水化物２１．０ｇ、およびミネラル物質および微量元 素１５．８ｇを含み、残りが水である。 この組成物の５０％を、タンパク質含有量に相当する量のグリコマクロペプチ ドおよび／または市販の乳児用ミルク食品（例えばMilumil 1)で置き換える。し たがって、この追加量のグリコマクロペプチドおよび／または市販の乳児用ミル ク食品のタンパク質含有量が、ＰＫＵ食餌の置き換えた部分のタンパク質含有量 に相当するような量のグリコマクロペプチドおよび／または市販の乳児用ミルク 食品を加える。これに、様々なタンパク質供給源を、２．５〜３．８ｇのタンパ ク質がＰＫＵ食餌に、２．５〜２．８ｇのタンパク質がグリコマクロペプチドに 、およ び３．８〜４．２ｇのタンパク質が市販の乳児用ミルク食品に由来するように混 台する。この混合物中に含まれるトレオニン量は１．０〜１．２ｇであり、健康 な子供に推奨されるトレオニンの最低量より３．３〜２．４倍高い。実施例２ １〜３歳の子供用食餌（１日の量） この年齢に一般的なＰＫＵ食餌、例えば幼児および学童用Milupa PKU２組成物 から出発する。１００ｇのPKU ２ はアミノ酸８０．１ｇ（全体で６６．８ｇの 卵白に相当する）、脂肪０．０ｇ、炭水化物８．５ｇ、およびミネラル物質およ び微量元素７．７ｇを含む（残りは水）。このフェニルアラニンを含まないＰＫ Ｕ食餌の２５％を、タンパク質含有量に相当する量の市販の粥製品、果物および 野菜で置き換える。これにタンパク質供給源を、完成食餌のタンパク質１０．１ ｇが通常のＰＫＵ食餌に、タンパク質６．０ｇが粥製品、果物および／または野 菜に由来するように混合する。 同時に、この食餌を摂取する子供に、１日４ｇのトレオニンを遊離形態で、カ プセルの形態で投与する。 この食餌およびカプセル形態のトレオニンからなる組合せに含まれるトレオニ ン量は４．９ｇであり、健康な子供に推奨されるトレオニンの１日最低量より５ ．４倍高い。実施例３ ７〜１０歳の学童用食餌（１日の量） 実施例２に記載のＰＫＵ食餌から出発する。このフェニルアラニンを含まない ＰＫＵ食餌の７０％を、タンパク質含有量に相当する、グリコマクロペプチドお よび市販の乳製品、果物、野菜、等の混合物で置き換える。これに、タンパク質 供給源を、完成食餌のタンパク質６．７ｇが最初に使用したＰＫＵ食餌に、タン パク質１２．３ｇがグリコマクロペプチドに、タンパク質８．２ｇが市販の乳製 品、果物、野菜、等に由来 するように混合する。 同時に、治療している学童に、７ｇのトレオニンをカプセルまたは糖衣錠また はインスタント飲料の形態で投与する。 この組合せで学童に投与されるトレオニン量は１０．１ｇであり、健康な子供 に推奨されるトレオニンの１日最低量より１０．１倍高い。

【手続補正書】特許法第１８４条の８第１項 【提出日】１９９７年７月３１日（１９９７．７．３１） 【補正内容】 請求の範囲 １．アミノ酸１００ｇあたりトレオニンを少なくとも１５ｇ含有することを特徴 とする、フェニルケトン尿症に食餌または医薬品として使用される物質。 ２．該トレオニンが、遊離アミノ酸として、その塩として、トレオニン含有ペプ チド（特にウシのグリコマクロペプチドとして）、トレオニン濃度の高いタンパ ク質として、またはタンパク質加水分解物として、またはそれらの混合物として 存在する、請求の範囲第１項に記載の物質。 ３．アミノ酸１００ｇあたり１５〜８０ｇの量のトレオニンを含む、ＰＫＵ食餌 療法の療養食または食品基礎物質の形態を有する請求の範囲第１項または第２項 に記載の物質。 ４．アミノ酸１００ｇあたり１５〜１００ｇの量のトレオニンを含む、医薬品ま たは食品添加物の形態を有する請求の範囲第１項または第２項に記載の物質。 ５．有効成分としてトレオニンだけを、特に遊離アミノ酸として含む、医薬品ま たは食品添加物の形態を有する請求の範囲第１項に記載の物質。 ６．フェニルケトン尿症を治療することを目的とする、または血漿中のフェニル アラニンレベルを下げることを目的とするトレオニンの使用。 ７．トレオニンがアミノ酸１００ｇあたり少なくとも１５ｇの量で使用される、 請求の範囲第６項に記載の使用。 ８．ＰＫＵ患者に、そのＰＫＵ患者が通常または一般的に摂取するトレオニン量 に加えて、追加のトレオニンを投与することからなるＰＫＵの治療方法。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．アミノ酸１００ｇあたりトレオニンを少なくとも８ｇ含有することを特徴と する、フェニルケトン尿症に食餌または医薬品として使用される物質。 ２．該トレオニンが、遊離アミノ酸として、その塩として、トレオニン含有ペプ チド（特にウシのグリコマクロペプチドとして）、トレオニン濃度の高いタンパ ク質として、またはタンパク質加水分解物として、またはそれらの混合物として 存在する、請求の範囲第１項に記載の物質。 ３．アミノ酸１００ｇあたり８〜８０ｇの量のトレオニンを含む、ＰＫＵ食餌療 法の療養食または食品基礎物質の形態を有する請求の範囲第１項または第２項に 記載の物質。 ４．医薬品または食品添加物の形態を有する請求の範囲第１項または第２項に記 載の物質。 ５．有効成分としてトレオニンだけを、特に遊離アミノ酸として含む、医薬品ま たは食品添加物の形態を有する請求の範囲第１項に記載の物質。 ６．フェニルケトン尿症を治療することを目的とする、または血漿中のフェニル アラニンレベルを下げることを目的とするトレオニンの使用。 ７．トレオニンがアミノ酸１００ｇあたり少なくとも８ｇの量で使用される、請 求の範囲第６項に記載の使用。 ８．ＰＫＵ患者に、そのＰＫＵ患者が通常または一般的に摂取するトレオニン量 に加えて、追加のトレオニンを投与することからなるＰＫＵの治療方法。