【発明の詳細な説明】
粉体塗装用ポリアミド組成物による下塗りなし金属の塗装
発明の分野
本発明は、下塗りしていない金属を粉体塗装用ポリアミド組成物で被覆する方
法、特に下塗りしていないアルミニウムまたは鋼に粉体塗装用ポリアミド組成物
を塗装する上記方法に関する。加うるに、本発明は、下塗りしていない金属を粉
体塗装用ポリアミド組成物で被覆する塗装をより低い温度、例えば20℃以上低
い温度で行う方法に関し、静電噴霧方法では温度を200℃より低くすることが
できる。
発明の背景
粉体塗装用組成物はよく知られていて幅広く多様な最終用途で利用されている
。粉体塗装用組成物で用いられるポリマー類は多くが一般にアクリル(acry
lic)ポリマー類として分類分けされ、特に塗料産業、例えば自動車産業にお
ける塗料または塗料用下塗りの用途で用いられる。また、上記粉体塗装では他の
金属物の塗装も行われる。加うるに、多様な用途、例えばパイプラインおよび他
の金属物などで用いられる金属、例えば鋼などの被覆では、また、ポリオレフィ
ン類、例えばポリエチレンなどとして一般に分類分けされるポリマー類を基とす
る粉体塗装も用いられる。そのようなポリオレフィン類は修飾ポリオレフィン類
であり、例えば満足されるレベルの接着を達成することができるようにポリオレ
フィン類に極性モノマーをグラフト化させる(grafted)ことなどが行わ
れてきた。
また、ポリアミド類から生じさせた粉体塗装用組成物も公知である。
粉体塗装用ポリアミド組成物の例は、ナイロン11またはナイロン12
に官能化を受けさせたポリマーから生じさせた組成物であり、その例には、芳香
族スルホンアミドとアルデヒドもしくはジカルボン酸の重縮合物とポリアミドが
入っている組成物が含まれ、このような組成物は米国特許第5,387,653
号に開示されている。上記官能化を受けさせたポリアミド類は下塗り剤の使用な
しに金属基質(これにはアルミニウムおよび鋼が含まれる)に塗布可能であると
理解する。しかしながら、また、そのような官能化ポリアミド類の塗装に要する
温度は静電噴霧塗装の場合には少なくとも約220℃で流動床塗装の場合には約
300℃であると言ったことも理解している。更に、下塗りしていない金属表面
にそのようなポリアミドを塗装しようとする時には、非常に骨の折れる様式で金
属の表面を前以て処理しておく必要があり得、そのような処理には、鋼または鉄
含有合金の場合には溶媒またはアルカリを用いた脱グリースに続いて機械的吹き
付け(blasting)または化学処理を行い、アルミニウムの場合には脱グ
リースに続いて機械的吹き付けを行い、そして亜鉛メッキ製品の場合には亜鉛の
燐酸塩処理(phosphating)またはクロム酸塩処理(chromat
ing)を行うことが含まれる。
アルミニウムなどの如き金属に1回の浸漬流動床塗装で塗布可能な被膜厚の限
界は300−350℃の範囲の温度の時に約1.0mmであることはポリアミド
粉体塗装の分野の技術者によく知られている。浸漬(dipping)を数段階
行うことによって1.0mm以上の被膜厚を得ることができる。静電噴霧塗装方
法の場合に1回のポリアミド粉体塗装で塗布可能な被膜厚の限界は約0.40m
mであり、被膜の厚みを約0.40mmより厚くすると融着中に粉体が落下する
可能性がある。
1992年7月23日付けで公開されたN.Farkas他のPCT特許出願
WO92/12194には、炭素原子数が4−12の少なくとも1種の脂肪族ジ
アミンを約0から約99.5モルパーセント用いそして補足量で2−メチル−ペ
ンタメチレンジアミンを用いてそれらを炭素原子数が6−12の少なくとも1種
の脂肪族ジカルボン酸と一緒に重合させたものから本質的に成るポリアミド類が
開示されており、このポリアミドが示すRVは約20以上である。この公開され
た特許出願は主に充填材含有組成物の射出成形に向けたものであるが、充填材が
入っていないポリアミド組成物から製品を生じさせることも可能であると述べら
れている。その後者の例には粉体塗装が含まれる。そこには、ヘキサメチレンジ
アミン/2−ペンタメチレンジアミンの65/35混合物とアジピン酸から作ら
れたポリアミドをアルミニウムの粉体塗装方法で用いることが例示されている。
上記ポリマーの融点は約240℃である。その実施例では、基質を前以て315
℃の温度に加熱しておいて流動床粉体塗装を行っており、アルミニウム製プラー
ク上にポリアミドの被覆層を1.6mmの厚みで生じさせている。
そのような厚みの被膜を1回の浸漬で生じさせるのは本技術分野の他の技術者
が金属基質上に得ているポリアミド被膜の結果と比較して異常であると思われる
。
1990年6月15日付けで公開されたDaicel Huls KKの特開
平02/155960A号には、コモノマー類を10重量%以下の量で任意に一
緒に用いたポリヘキサメチレンドデカアミドを基とする粉体塗装用組成物(この
組成物がm−クレゾール中で示す相対粘度は好適には1.5−1.8である)が
開示されており、そしてそれを脱グ
リースと下塗りを受けさせた金属表面に流動床塗装方法、静電噴霧塗装方法およ
び静電流動床塗装方法で被覆することが開示されている。
180℃以下、特に160℃以下の融点を有していて金属基質の高価な表面処
理を前以て行う必要なく満足される被膜を与える粉体塗装用組成物が得られたな
らば、これは塗装が容易なことから、粉体塗装産業で有用である。
発明の要約
塗装温度がより低い粉体塗装用組成物をポリアミド類から得ることができそし
て更に上記粉体塗装用ポリアミド組成物を下塗りをしていないアルミニウムおよ
び鋼に塗装することができることをここに見い出した。
従って、本発明は金属表面を被覆する方法を提供し、この方法は、
(a)炭素原子数が1−3のペンダント型アルキル分枝を少なくとも1つ
有するポリマーバックボーンに沿って隣接するアミド結合が少なくとも数個と連
続炭素原子数が少なくとも7の配列を有するポリマーバックボーンに沿って隣接
するアミド結合が少なくとも数個存在していて蟻酸中8.4%のポリマーを用い
て25℃で測定した時に少なくとも20の相対粘度を示しかつ140−200℃
の範囲の融点を示すポリアミドから生じさせた粉体を、粉体塗装方法で、アルミ
ニウムおよび鋼から選択される金属の下塗りしていない表面に接触させ、そして
(b)上記金属表面上に上記ポリアミドの融着被膜を生じさせる、ことを
含み、ここで、上記被膜は少なくとも60ショアD単位の硬度を示す。態様にお
いて、上記融着被膜は少なくとも70ショアD硬度単位の硬度を示し、最も好適
には少なくとも75ショアD硬度単位の硬度を示す。
本発明の方法の好適な態様におけるポリアミドは、炭素原子数が4−12の少
なくとも1種の脂肪族ジアミン、特にヘキサメチレンジアミンを約0から99.
5モルパーセントの範囲の量で用いそして2−メチル−ペンタメチレンジアミン
を補足量で用いて上記ジアミン類を1,12−ドデカン二酸と一緒に重合させた
ポリアミドから本質的に成る。
さらなる態様におけるポリアミドは、2−メチル−ペンタメチレンジアミンと
ドデカン二酸から作られたホモポリマーであるか或はヘキサメチレンジアミンと
2−メチル−ペンタメチレンジアミンの混合物と1,12−ドデカン二酸から作
られたコポリマーである。
本発明は、また、
(a)ポリアミドから生じさせた粉体を、粉体塗装方法で、アルミニウム
および鋼から選択される金属の下塗りしていない表面に接触させ、そして
(b)上記金属表面上に上記ポリアミドの融着被膜を生じさせる、ことを
含む金属表面被覆方法も提供し、ここでの改良は、段階(b)の温度を少なくと
も20℃低くし、そして炭素原子数が1−3のペンダント型アルキル分枝を少な
くとも1つ有するポリマーバックボーンに沿って隣接するアミド結合が少なくと
も数個と連続炭素原子数が少なくとも7の配列を有するポリマーバックボーンに
沿って隣接するアミド結合が少なくとも数個存在していて蟻酸中8.4%のポリ
マーを用いて25℃で測定した時に少なくとも20の相対粘度を示しかつ140
−2000℃の範囲の融点を示すポリアミドを用いることを含む。
加うるに、本発明は、
(a)ポリアミドから生じさせた粉体を、粉体塗装方法で、アル
ミニウムおよび鋼から選択される金属の下塗りしていない表面に接触させ、そし
て
(b)上記金属表面上に上記ポリアミドの融着被膜を生じさせる、ことを
含む金属表面被覆方法も提供し、ここでの改良は、炭素原子数が1−3のペンダ
ント型アルキル分枝を少なくとも1つ有するポリマーバックボーンに沿って隣接
するアミド結合が少なくとも数個と連続炭素原子数が少なくとも7の配列を有す
るポリマーバックボーンに沿って隣接するアミド結合が少なくとも数個存在して
いて蟻酸中8.4%のポリマーを用いて25℃で測定した時に少なくとも20の
相対粘度を示しかつ140−200℃の範囲の融点を示すポリアミドを用いて粉
体塗装を行うことで上記金属の下塗りしていない表面への接着性を向上させるこ
とを含む。
発明の詳細
下塗りしていない金属表面上に粉体融着被膜を生じさせる目的で本発明で用い
るポリアミド類は、連続的に存在する炭素原子の数が少なくとも7の配列を少な
くとも持っていて炭素原子数が1−3のペンダント型アルキル分枝が少なくとも
1つ付いているポリマーバックボーンに沿って隣接するアミド結合を少なくとも
数個有していて、140−200℃の融点を示す。このようなポリアミド類の例
は、
(a)少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジアミン[上記
少なくとも1種のジカルボン酸および/または上記少なくとも1種のジアミンは
炭素原子数が1から3のアルキル分枝を少なくとも1つ含みそして上記少なくと
も1種のジカルボン酸および/または上記少なくとも1種のジアミンはメチレン
基の数が少なくとも7の配列を有す
る]から作られたポリアミド類;
(b)式H2N−R1−COOH[式中、R1は、炭素原子数が1から3の
ペンダント型アルキル分枝を少なくとも1個有していて配列中のメチレン基の数
が少なくとも7の脂肪族部分である]で表される少なくとも1種のアルファ,オ
メガアミノカルボン酸から作られたポリアミド類;
(c)アルファ,オメガ−アミノアルキレンニトリル類およびアルファオ
メガアルキレンジニトリル類から成る群から選択される少なくとも1種のニトリ
ルと少なくとも1種のジアミン[上記ジアミン、ニトリルおよび/またはジニト
リルは炭素原子数が1から3のアルキル分枝を少なくとも1つ有しそして上記ジ
アミン、ニトリルまたはジニトリルはメチレン基を少なくとも7個含む]から作
られたポリアミド類;または
(d)上記(a)−(c)に記述したモノマー類いずれかの混合物から作
られたポリアミド類、
であり得る。
分枝していないジアミン類の例には、1,6−ヘキサメチレンジアミン;1,
8−オクタメチレンジアミン;1,10−デカメチレンジアミンおよび1,12
−ドデカメチレンジアミンが含まれる。分枝しているジアミンの例には2−メチ
ルペンタメチレンジアミンが含まれるが、C1−C3アルキル分枝を有する他の分
枝ジアミン類も使用可能である。
分枝していないジカルボン酸の例には、1,6−ヘキサン二酸(アジピン酸)
;1,7−ヘプタン二酸(ピメリン酸);1,8−オクタン二酸(スベリン酸)
:1,9−ノナン二酸(アゼライン酸);1,10−
デカン二酸(セバシン酸)および1,12−ドデカン二酸が含まれる。分枝して
いるジカルボン酸の例には2−メチルグルタル酸が含まれるが、C1−C3アルキ
ル分枝を有する他の分枝ジカルボン酸も使用可能である。
アルファオメガアミノカルボン酸の例は、アミノカプロン酸、アミノカプリル
酸、アミノデカン酸、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸である。この
ようなアミノカルボン酸は特に脂肪族部分がメチレン基を6個有する時にはラク
タムの形態であり得ることを注目すべきである。分枝しているアルファ,オメガ
アミノカルボン酸の例は2−メチル−アミノドデカン酸および2−メチル−アミ
ノデカン酸であるが、他の関連した酸を用いることも可能である。
ニトリル類の例は1,5−アミノカプロニトリル、アジポニトリル、1,11
−アミノウンデカノニトリル、1,10−アミノデカノニトリルおよび2−メチ
ル−1,11−アミノウンデカノニトリルであるが、他の関連したニトリル類を
用いることも可能である。
本発明のポリアミド類の調製では、本明細書に挙げるモノマー類(a)−(c
)に加えて、他のモノマー類も使用可能である。このような他のモノマー類には
、これらに限定するものでないが、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン類、脂
環式ジカルボン酸および脂環式ジアミン類が含まれる。芳香族ジカルボン酸の例
にはテレフタル酸およびイソフタル酸が含まれる。脂環式ジカルボン酸の例は1
,4−ビスメチレンシクロヘキシルジカルボン酸である。脂環式ジアミンの例は
1,4−ビスメチレンジアミノシクロヘキサンである。
上記ポリアミド類は本技術分野でよく知られている方法を用いて製造可能であ
る。特に、上記ポリアミド類の重合を上記ジアミンとジカルボ
ン酸の塩を用いて行ってもよい。別法として、この上に記述した如き相当するニ
トリル類を用いて上記ポリアミド類の重合を行うことも可能である。
上記ポリアミドは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸を用いるか、ア
ミノカルボン酸を用いるか、アミノアルキルニトリルを用いるか、或は1種類の
ジアミンとジニトリルを用いて、重合させたホモポリマーの形態であってもよい
。別法として、上記ポリアミドは、少なくとも1種類のジアミンと2種以上のジ
カルボン酸を用いるか、少なくとも1種のジカルボン酸と2種以上のジアミンを
用いるか、或は少なくとも1種類のジアミンと少なくとも1種類のジカルボン酸
と少なくとも1種のアミノカルボン酸から成る組み合わせ(任意にニトリル類を
含めてもよい)を用いて重合させたコポリマーであってもよい。
本発明の方法で用いるポリアミド類に、分枝している部分を、このポリアミド
中の脂肪族部分の全量を基準にして好適には少なくとも約20モルパーセント、
より好適には少なくとも約30モルパーセント、最も好適には分枝部分を少なく
とも約50モルパーセント含める。同様に、上記ポリアミド類に、また、連続し
て存在するメチレン基の数が少なくとも7の部分を少なくとも20モルパーセン
ト、好適には少なくとも30モルパーセント、特に上記部分を約50モルパーセ
ント含める。
そのようなポリアミド類の好適な例には、2−メチルペンタメチレンジアミン
とドデカン二酸もしくはデカン二酸から作られたホモポリマー類が含まれる。他
の好適なポリアミド類には、ヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレ
ンジアミンとドデカン二酸もしくはデカン二酸から上記ジアミン類を10:90
から90:10の範囲の比率で用い
て作られたコポリマー類が含まれる。他の好適なポリアミド類には、2−メチル
ペンタメチレンジアミンとドデカン二酸もしくはデカン二酸とテレフタル酸もし
くはイソフタル酸から上記脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を99:1
から70:30の範囲の比率で用いて作られたコポリマー類、そして1,12−
ドデカメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンとアジピン酸から
上記ジアミン類を10:90から90:10の範囲の比率で用いて作られたコポ
リマー類が含まれる。
本発明のポリアミド類は、使用するモノマー類の組み合わせに応じて、半結晶
性であるか或は非晶質であり得る。このポリアミドが半結晶性である時には、上
記ポリアミドが約200℃に等しいか或はそれより低い融点を示すばかりでなく
幅広い溶融プロファイルを示すようにするのが望ましく、本明細書では上記プロ
ファイルを示差走査熱量計(DSC)試験における融点と溶融曲線開始点の間の
温度範囲であると定義する。従って、下塗りしていない金属表面に対して満足さ
れる強度を示す接着を得るには、鮮明な融点を示すのではなく幅広い温度範囲に
渡る融点を示すと言った特徴を有するポリアミドを用いるのが好適である。
本発明のポリアミド類に添加剤、例えばこれらに限定するものでないが熱安定
剤、難燃剤、充填材、抗ブロッキング剤、スリップ添加剤、抗へこみ(anti
cratering)剤、流展(leveling)剤、顔料もしくは染料、加
工助剤、抗酸化剤、可塑剤または紫外線遮蔽剤などを含有させることも可能であ
る。
本組成物に添加可能な充填材の例には、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネ
シウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸
カルシウム、またはステアリン酸マグネシウムなどが含まれる。
顔料の例には二酸化チタン、燐酸亜鉛、カーボンブラックおよび酸化鉄が含ま
れる。
UV安定剤または他の安定剤の例には、フェノール系抗酸化剤、脂肪族もしく
は脂環式の立体障害アミン類および芳香族モノ−、ジ−もしくはポリアミン類が
含まれる。また、金属不活性化剤を添加することも可能である。このような安定
剤の典型的な量は約0.01から約2.5重量%、好適には0.1から2.0重
量%である。
本組成物はいろいろな方法で調製可能であり、そのような方法には上記添加剤
と上記ポリアミドをドライブレンドまたは溶融コンパンド化することが含まれる
。溶融コンパンド化の場合には、適切な混合用スクリューが備わっている単軸押
出し加工機を用いることも可能であるが、二軸押出し加工機を用いる方が好適で
ある。
本発明において上記ポリアミド類が90%蟻酸中8.4重量%のポリマーで2
5℃で測定した時に示す相対粘度(RV)は、約20以上、好適には30から6
0、より好適には35から50の範囲である。
本発明で金属表面の塗装を下塗りなしに行う時に用いるに適切な粉体は、ポリ
アミド粉体塗装技術の技術者によく知られている方法を用いて低温冷却した装置
、例えばアトリション(attrition)、ブレード、ハンマーおよびディ
スク粉砕装置などで固体状のポリアミドを粉砕することで生じさせた粉体であっ
てもよい。この得た粉体粒子を、これらに限定するものでないが、ふるい分けお
よびタービンによる空気分級などの方法を用いた適当な様式で選択することによ
り、粒子サイズが金属の被覆で用いるに望ましくない画分、例えば過剰に粗いか
或は微細
な粒子を除去する。
本発明で上記ポリアミドを粉砕することで生じさせる粉体の粒子サイズ分布は
5ミクロメートルから1ミリメートルの範囲でなければならない。
本発明でポリアミド粉体を用いて下塗り剤の使用なしに被覆することができる
金属基質は、幅広い範囲の材料から選択可能であり、それらには、これらに限定
するものでないが、通常鋼または亜鉛メッキした鋼、アルミニウムまたはアルミ
ニウム合金が含まれる。この使用する金属基質に幅広く多様な形状および厚みを
持たせることができる。
特殊な金属表面処理を受けさせていない奇麗な金属表面に上記ポリアミドを被
覆することを通して、下塗り剤を用いることなく、被膜と金属基質の接着を満足
されるレベルで達成することができる。また、本分野の技術者によく知られてい
る洗浄技術を用いて表面処理を受けさせておいた金属基質を用いることでも同様
な接着レベルを達成することができ、そのような洗浄技術には、これらに限定す
るものでないが、脱グリース、砂吹き、洗い流し、鉄および亜鉛の燐酸塩処理、
クロム酸塩処理および陽極酸化処理、濯ぎ、不動態化、オーブン乾燥およびこの
ような処理の組み合わせが含まれる。
本発明で上記ポリアミドを粉砕することで生じさせた粉体を金属基質に塗装す
る時、この塗装は通常の粉体塗装技術で実施されてもよい。このような技術の代
表的な技術は、流動床浸漬塗装、静電噴霧、フロック加工および火炎溶射である
。
流動床浸漬塗装方法では、塗装を受けさせるべき金属部分を下塗りなしにオー
ブンに入れて、それの性質、形状および要求される被膜厚で決
めておいた温度にまで加熱する。次に、これを、多孔質の基部が備わっているタ
ンクに入っていて空気で懸濁(流動)状態に保持されているポリアミド粉体の中
に浸漬する(dipped)。この粉体が熱い金属表面に接触して溶融すること
で被膜層が形成され、これの厚みは上記部分の温度および上記粉体内に浸漬する
時間の関数である。この流動床浸漬塗装で用いる上記粉体の粒子サイズ分布は通
常10から1000ミクロメートル、好適には80から200ミクロメートルの
範囲である。被膜の厚みは通常150から1,000ミクロメートル、好適には
200から700ミクロメートルの範囲である。
また、静電噴霧方法を用いて、上記ポリアミドを粉砕することで生じさせた粉
体を下塗りなし金属基質に被覆することも可能である。この方法では、上記粉体
をガンでノズルに高い電位、一般的には約10から100kV以上の電位で送り
込む。このかける電圧は正極性または負極性の電圧であってもよい。上記粉体が
上記ガンの中を通る流量は10から200g/分、好適には50から120g/
分の範囲であってもよい。上記粉体は、上記ノズルの中を通った時点で帯電する
。この帯電した粒子を、アースを付けた、即ちゼロ電圧の金属表面(この被覆す
べき金属は下塗りしていない金属である)に噴霧する。上記粉体粒子は上記表面
に静電帯電で保持され、その結果として上記粉体が付着した物を取り出してオー
ブンに入れて、上記粉体が溶融する温度に加熱することで、上記金属の表面に連
続被膜を生じさせる。本発明では上記塗装温度を有利に200℃以下、即ち本分
野の一般的技術に従って要求される温度より少なくとも約10℃(好適には少な
くとも20℃)低い温度にすることができる。上記静電噴霧塗装で用いる上記粉
体の粒子サイズ分布は5か
ら100ミクロメートル、好適には5から65ミクロメートルの範囲であっても
よい。上記被膜の厚みはから40から400ミクロメートルの範囲であってもよ
い。
本発明ではまたフロック加工方法を用いて上記ポリアミドの粉体を下塗りなし
金属基質に塗装することも可能であり、このフロック加工方法では、金属物を前
以てオーブン内で加熱しておいた後、それの塗装を静電噴霧技術で行う。この塗
装条件および粉体サイズの要求は静電噴霧方法で用いたのと同様である。この塗
装温度(予熱温度)もまた有利に200℃以下にすることができる。
以下に例証するように、下塗りしていない鋼またはアルミニウム表面に付着さ
せた上記ポリアミドの被膜が上記金属表面に対して示す接着力は、米国特許第5
,387,653号に教示されている如き接着促進剤が入っている自己接着性官
能化ナイロンの被膜が示す接着力に等しいか或はそれよりも良好である。
更に、下塗りしていない鋼またはアルミニウム表面に付着させた上記ポリアミ
ドの被膜が上記金属表面に対して示す接着力は、下塗り剤を用いるか或は用いな
いで同じ金属表面に被覆した通常のポリアミド粉体が示す接着力に等しいか或は
それよりも良好である。
本発明に従って下塗りなし鋼またはアルミニウム基質に被覆した上記ポリアミ
ドの被膜は、有利に、押し込みおよび引っ掻きに対して高い抵抗を示す。押し込
み抵抗はショアD硬度で示される。引っ掻き抵抗はコニグ(Konig)硬度で
示される。上記被膜は周囲条件で少なくとも60ショアD硬度単位、より好適に
は少なくとも70ショアD硬度単位、最も好適には75ショアD硬度単位の押し
込み硬さを示す。上記被膜は
また周囲条件で少なくとも60コニグ硬度単位、より好適には80コニグ硬度単
位、最も好適には約105コニグ硬度単位の引っ掻き硬さを示す。
本明細書に例証するように、本発明の方法に従って下塗りなし鋼またはアルミ
ニウム基質に上記ポリアミドを被覆することで得た被膜は、有利に、それのガラ
ス転移温度以上の温度からそれの融点より約20℃低い温度に及ぶ温度で高い押
し込みおよび引っ掻き抵抗を示す。このように上記ポリアミドはショアDおよび
コニグ硬度両方の温度依存で示されるように有利な特性を有することから、これ
はより高い温度条件下で使用される被膜の用途で用いるに適切である。
本発明の方法で用いるポリアミドは、ナイロン11の溶融物に比較して、粉体
塗装に適用可能な温度範囲に渡って低いせん断速度で低い溶融粘度を示す。この
ような溶融流動性を示す上記ポリアミドは、また、300秒-1以下のせん断速度
でニュートン流れ挙動に近い挙動も示す。上記ポリアミドがそのような溶融特性
を示すことは、溶融物の溶融粘度が低い結果として被膜を生じさせている間の流
展性が良好になり得ることで被膜の表面がより滑らかになると言った点で、粉体
塗装にとって有利である。ニュートン流れ特性は有利に粉体塗装中の工程管理が
より容易になることの一因に成り得る。
本発明に従って下塗りなし鋼またはアルミニウム基質に上記ポリアミドを被覆
した被膜は、有利に、気体または蒸気の透過に対して高い遮断特性を示す。上記
被膜が示す酸素透過率はASTM−398581に従って測定して約60cc・
ミル/100平方インチ/日以下である。上記被膜はまたASTM F−124
9−90に従って測定して30g・ミ
ル/100平方インチ/日以下の水蒸気透過率を示す。このように上記被膜は気
体を遮断する特性を有することから、上記ポリアミドで被覆した金属製品は良好
な耐化学品性を示す。
本発明の最終使用用途には、これらに限定するものでないが、押し込み硬さお
よび引っ掻き硬さ、耐摩耗性、耐傷性、衝撃強度、耐食性、耐候性、耐化学品性
、W安定性、色、接着性およびじん性が要求される機能的(例えば保護)および
装飾用金属被膜が含まれる。その例には冷蔵庫および食器洗い器のラック、屋外
用金属製家具、産業用ポンプのハウジング、産業用装置のハウジング、スポーツ
保護ワイヤーマスク、ファンスクリーン、エンジンのフライホイールなどが含ま
れる。
本明細書で用いた試験方法は下記の通りである。
被膜と金属基質の接着部の接着力を米国特許第5,387,653号の手順に
従って測定し、それの要約は簡単に示すと下記の通りである。
鋭利な切り込み用道具を用いて、2本の切り込みを10mmの間隔で平行に生
じさせるが、これらは両方とも被膜を貫いていて金属を露出させる切り込みであ
る。次に、最初に付けた2本の切り込みに対して直角に別の切り込みを入れる。
幅が10mmの刃を用いて、最後の溝を上記金属/被膜の接触面に入れ込むこと
で上記被膜に舌状部分を生じさせる。
次に、この舌状部分を引っ張ることで上記被膜を金属から引き離す試みを行った
。その結果を下記の如く分類分けして、それを「接着等級」と呼ぶ。
等級0:被膜が表面に全く接着していない。
等級1:被膜が表面から容易に剥がれる、即ち結合が弱い。
等級2:被膜が均等に剥がれ、その被膜を引き剥がすに要する力がこの
被膜の引張り強度であるか或はほぼ引張り強度である。
等級3:被膜が不規則に剥がれ、剥がれる面積が表面積の50%未満である。
等級4:被膜を金属から剥がすことができない。
ショアD硬度はポリマーの被膜が押し込みに対して示す抵抗の尺度であり、こ
れをASTM D−2240−91に従って測定する。
コニグ硬度はポリマーの被膜が引っ掻きに対して示す抵抗の尺度であり、これ
をASTM D−4366に従って測定する。
ポリアミドが粉体塗装で示す溶融流動性をASTM D−3835の試験手順
に従うKayenessメルトレオメータ(melt reometer)で測
定した。
融点およびガラス転移温度をASTM D−3418(1998)の手順を用
いてDuPont DSC装置モデル2100で加熱および冷却速度を10℃/
分にして測定した。相対粘度をJenningsが米国特許第4 702 87
5号に記述した手順を用いて測定した。
以下に示す実施例で本発明の説明を行う。
実施例I
2−メチルペンタメチレンジアミン(D)とドデカン二酸から作られたホモポ
リアミド(D12と呼ぶ)を、例えば上述したPCT WO92/12194の
実施例XIVに記述されている如き公知手順に従う典型的なオートクレーブ重縮
合方法で調製した。この得たホモポリアミドの相対粘度(RV)は40であった
。D12の融点およびガラス転移温度をナイロン11で得たデータと一緒に表1
に示す。
D12がより低い融点を示すことは、粉体塗装における塗装温度および加工温
度をより低くすることができる点で有利であり得る。逆に、D12のガラス転移
温度はナイロン11のそれよりも約6℃高いことで、それが使用時に示す温度特
性(例えば硬度)は等しいか或は優れる。
この上で得たD12ポリマーをアトリションミル(Wedco)で低温粉砕し
て、粗い粒子および微細な粒子を除去するように設定したメッシュサイズを有す
る一連のスクリーンに通してふるい分けした。D12の低温粉砕は効率良く、問
題がないことを確認した。このふるい分け過程の代わりに、空気タービン(例え
ばNisshin)を用いて粉体塗装で要求されるサイズ画分が得られるように
サイズに従って粉末を分級する過程に置き換えることも可能である。D12粉体
のふるい分けおよび分級は有利に効率良く、問題がないことを確認した。
本明細書に報告する粉体塗装試験で用いたD12粉体の典型的な粒子サイズを
表2に示す。Coulter分析装置を用いたレーザー回折分析で上記粉体の平
均粒子サイズを測定した。このD12粉体の粒子サイズ分布を使用する粉体塗装
方法に応じて調整した。
実施例II
この実施例では静電噴霧(ES)技術を用いてD12粉体を下塗りなし鋼に粉
体塗装することを説明する。
この手順は、塗装温度および加工温度を有利に20℃以上低くする以外はポリ
アミド類に典型的なES塗装方法であった。得た結果を表3に示す。比較として
、また、米国特許第5,387,653号に報告されている接着促進剤を含有す
る自己接着性の官能化ナイロン11を下塗りなし冷間圧延鋼にES粉体塗装した
場合のデータも報告する。 a研磨していない冷間圧延鋼板(ACI Lab.10.2−cl0.2−
c0.08cm)にD12を塗装
b接着促進剤を含有。鋼板を亜鉛の燐酸塩で処理した。
D12−下塗りなし鋼の場合の被膜と金属基質の接着力の方が官能化ナイロン
11−下塗りなし鋼の場合の接着力よりも優れていることが明らかに実証された
。
D12粉体に顔料を添加すると、顔料の選択および充填量に応じて、後加熱温
度をより高くする必要があり得ることを確認した。また、D12粉体と顔料のド
ライブレンドは効率良く、問題がないことも確認した。
表4に、顔料と一緒にドライブレンドしたD12を下塗りなし冷間圧延鋼板に
粉体塗装した時の結果を示す。全てのケースで、被膜が下塗りなし鋼表面に対し
て示す接着力は優れており、これはカーボンブラック顔料をD12粉体に添加し
てそれを上記板に2回塗装することを包含する。 a研磨していない冷間圧延鋼板(ACT Lab.10.2x0.08cm
)に塗装
b各配合とも顔料をD12粉体と一緒にドライブレンドした。TiO2はDu
PontのTiPureグレードのものであった。カーボンブラックをAbbo
tから入手した。青色顔料はSun Chemicalsから入手したSun
Forest Blueであった。
D12の静電噴霧塗装はかけた正または負電圧下で有利に実施可能であること
を確認した。また、噴霧ガンにかける電圧を調整することで被膜の厚みを調節す
ることができることも確認した。
粉体塗装分野の技術者は、一般に、下塗りしていない鋼基質に付着させたD1
2被膜の外観は優れていると等級付けした。この被膜の表面は、
基質に傷がないことを条件として滑らかで欠陥がない。
実施例III
この実施例では、下塗りしていない鋼にD12粉体を流動床浸漬塗装(FB)
技術で粉体塗装することを示す。
この手順は、塗装温度および加工温度を約20℃以上低くすることができる以
外はFB塗装技術に典型的な手順であった。
表5に、下塗りなし冷間圧延鋼板にD12をFB粉体塗装をした時の結果をナ
イロン11を用いた場合の塗装結果との比較で示す。
a鋼金属基質は研磨していない冷間圧延鋼板[10.2x15.2x0.0
8cm(4x6x1/32インチ) (ACT Laboratories,I
nc.、Hillsdale、MIが供給]である。
bナイロン11粉体は灰色の顔料が入っている市販の流動床グレード(Ri
lsan)である。平均粒子直径は124ミクロンである。
D12−下塗りなし鋼では優れた接着力が観察された(接着等級:4)
。直接的な比較として、ナイロン11−下塗りなし鋼の接着力は劣っており(接
着等級:1)、D12の被膜に比べてずっと劣っていることは明らかである。
また、表5の結果も、FB塗装条件が同様であるならばD12の方がナイロン
11よりも被膜の構成がより容易である(被膜の厚みをより厚くすることができ
る)と言った利点を有することを示している。このような効果は、被覆部分の機
械加工がより容易であること、即ち機械的に研磨することが容易であることの一
因になる(これは塗装産業で用いられている通常の実施である)。D12はより
低い溶融温度を有することから塗装中にD12の溶融層を生じさせる時の伝熱が
より容易な結果として、より厚い被膜厚を得ることができると考えられる。
表6に、下塗りしていないが砂を吹き付けた鋼基質にD12をFB粉体塗装し
た時の結果をナイロン11を用いた場合との比較で示す。D12/下塗りなしで
砂を吹き付けた鋼では優れた被膜/金属接着力が得られることは明らかである(
接着力:4)が、ナイロン11/下塗りなしで砂を吹き付けた鋼の接着力は劣っ
ている(接着力:1−2)。
a砂を吹き付けた厚い冷間圧延鋼板(7.62x15.24x0.32cm
) (3x6x1/8インチ) (ACT Lab.から入手)に塗装。b水で急冷すると優れた光沢を示す被膜外観が得られた。
c市販の流動床グレードのナイロン11ナチュラルパウダー(Atoche
m、Natural RDP 15−10FB)。
表7に、下塗りしていないが砂を吹き付けた鋼に顔料と一緒にドライブレンド
したD12をFB粉体塗装した時の結果を顔料と一緒にブレンドしたナイロン1
1を用いた場合との比較で示す。下塗りなしで砂を吹き付けた鋼基質に顔料添加
D12を被覆すると優れた接着力が得られる
ことは明らかである(接着力:3−4)。同じ表面に対して顔料添加ナイロン1
1が示す接着力は劣っている(接着力:1)。
a砂を吹き付けた厚い冷間圧延鋼板(3x6x1/8インチ)(ACT L
ab.から入手)に塗装
bDuPont Ti−pureグレードのTiO2。
cRilsan市販流動床グレード。
表8に、産業用鋼部品のFB粉体塗装に関して、下塗りしていない鋼部品にD
12を塗装した時の結果を、同じ部品であるが通常の下塗り方法を用いて市販の
下塗り剤で表面を前以て処理しておいた部品にナイロン11を塗装した時の結果
との比較で示す。D12/下塗りなし鋼部品の接着力は優れている(接着力:4
)一方、ナイロン11/下塗りをした鋼部品の接着力は容認される度合であるが
D12よりも劣っている(接着力:3−3.5)。
aレーシングカーのエンジンに調波緩衝装置として用いられているODが6
”の鋼製フライホイール(厚みが1インチで重さが約1−2ポンドの物にグリッ
トを吹き付けて、下塗りを行うか或は下塗りを行わない)。
bカーボンブラックが20−30%入っている市販の流動床グレードナイロ
ン11粉体。
表9に、下塗りしていない市販鋼部品のFB粉体塗装の結果を示す。産業用バ
ッテリーハンドル(下塗りなし鋼表面)に対してD12被膜が示す接着力は優れ
ている(接着力:4)一方、産業用ガターフック(下塗りなし鋼表面)に被覆し
た官能化ナイロン11が示す接着力(接着促進剤が入っているナイロン11)は
容認され得るがD12よりも劣っている(接着力:3−3.5)。 a塗装条件 − 予熱を337℃で6分間、浸漬を2秒間、後加熱を302
℃で1分間。
b商業的に入手可能。
下塗りしていない鋼基質にFBで含めたD12被膜の外観は粉体塗装の技術者
が一般に優れていると等級付けする外観である。この被膜の表面は、基質に傷が
ないことを条件として滑らかで、欠陥を含まない。
実施例IV
この実施例では、下塗りしていないアルミニウムにD12粉体を流動床浸漬塗
装(FB)技術で粉体塗装することを説明する。
この手順は、塗装温度および処理温度を約20℃以上低くすることができる以
外は典型的なFB塗装技術であった。
表10に、下塗りしていないアルミニウム板にD12をFB粉体塗装した時の
結果をナイロン11に対比させて示す。
両方の場合とも下塗り剤を用いなかった。D12の接着力(接着力:2−3)
はナイロン11の接着力(接着力:1)よりも優れていた。 a研磨していない厚いアルミニウム板(7.6x10.2x0.32cm−3
x4x1/8インチ)に塗装
bRilsan市販流動床グレードに灰色顔料を添加
表11に、下塗りしていないが砂を吹き付けた産業用アルミニウム製品をD1
2でFB粉体塗装した時の結果を示す。D12被膜とアルミニウム基質の間の接
着力は優れていることを観察した(接着力:4)。
aアルミニウム支持体ブラケット − 厚みが1/8”で長さが1フィ
ート。
下塗りしていないアルミニウム基質にFB塗装したD12被膜の外観は粉体塗
装の技術者が一般に優れていると等級付けする外観である。この被膜の表面は、
基質に傷がないことを条件として滑らかで、欠陥を含まない。
実施例V
この実施例では、下塗りしていない鋼にD12粉体をフロック加工技術で粉体
塗装することを説明する。
この手順は、塗装温度および処理温度を約20℃以上低くすることができる以
外は典型的なフロック加工技術であった。
表12に、下塗りしていないが砂を吹き付けた産業用鋼製品をD12粉体でフ
ロック加工粉体塗装した時の結果を示す。D12被膜と金属基質の間の接着力は
優れていることを観察した(接着力:3−4)。
a重量が約1ポンドで曲率が90度でIDが2インチで厚みが1/4インチの
鋼で出来ている産業用取り付け連結具に砂を吹き付けた。
実施例VI
D12およびナイロン11両方のショアDおよびコニグ硬度を室温で測定した
。その結果を表13に報告する。
被覆品が通常使用される時の温度範囲(23−7S℃)に渡るショアD硬度の
温度依存性をD12およびナイロン11の両方で測定した。その結果を表14に
示す。
コニグ硬度の温度依存性をD12およびナイロン11の両方に関して室温から
130℃の高温に及んで測定した。その結果を表15に示す。
a ショアD硬度値は49回行った測定の平均値で標準偏差(シグマ)
は0.7である。b
コニグ硬度値は12−15回行った測定の平均値で標準偏差(シグマ)は1
.5である。
a Atochemから商業的に入手可能なRilsan粉体
a Atochemから商業的に入手可能なRilsan粉体
硬度の結果は、D12が周囲温度および日々の高い使用温度で金属被覆用途に
充分な耐押し込み性および耐引っ掻き性を有することを示している。D12の硬
度特性は、D12が示す融点はナイロン11のそれよりも低いにも拘らず、ナイ
ロン11のそれに等しいことが分かる。
実施例VII
代表的な2つの粉体塗装温度(220℃および250℃)でD12およびナイ
ロン11の両方が示す溶融流動特性を表16に示す。 a ASTM D 3835−90に従って測定b
市販FBグレードのナイロン11粉体(Rilsan)に灰色顔料を添加
D12はナイロン11に比較して低いせん断速度で低い溶融粘度を示すことが
分かる。また、D12の溶融粘度はせん断速度が300秒-1の時にはニュートン
流れ挙動に近いことも分かる。D12がこのような溶融特性を示すことは、D1
2溶融物の粘度がより低い結果として塗膜の流展性がより良好になり得、結果と
して被膜の表面がより滑らかになる点で、粉体塗装に有利である。このようなニ
ュートン流れは加工の管理がより容易になる一因になり得る。
実施例VIII
水蒸気透過率と酸素透過率はポリマー被膜の遮断特性を示す2つの特性である
。上記特性をD12およびナイロン11の両方で測定して、その結果を表17に
示す。 a ASTM F−1249−90に従って測定b
ASTM D−3985−81に従って測定
商業的に入手可能なグレードのポリオレフィン類が示す酸素透過率は一般に1
00−5O0cc・ミル/100平方インチ/日の範囲である。他のポリアミド
類、例えばナイロン66およびナイロン6などが示す水蒸気透過率は典型的に5
0g・ミル/100平方インチ/日の範囲である。D12が示す酸素透過率およ
び水遮断性の結果は、D12の被膜が示す遮断特性はナイロン11のそれに比較
して充分であることを示している。
実施例IX
本発明の実施例Iに示した既知手順に従う典型的なオートクレーブ重縮合方法
を用いて、2−メチルペンタメチレンジアミン(25モル%)と1,6−ヘキサ
メチレンジアミン(25モル%)とドデカン二酸(50モル%)からコポリアミ
ド(D12/612と呼ぶ)を製造した。こ
の得たコポリアミドの相対粘度(RV)は32であった。このコポリアミドの融
点、ガラス転移温度およびショアD硬度(室温)はそれぞれ174C、46.8
Cおよび76である。
この上で得たD12/612コポリマーを本発明の実施例Iに記述した手順に
従ってアトリッションミルで低温粉砕してふるいにかけた。
この実施例では、下塗りしていない鋼にD12/612粉体を流動床浸漬塗装
(FB)技術で粉体塗装することを説明する。この手順は塗装温度および処理温
度を約10℃以上低くすることができる以外はFB塗装技術に典型的な手順であ
った。
表18に、下塗りしていない冷間圧延鋼板にD12/612をFB粉体塗装し
た時の結果をナイロン11を用いた場合の塗装結果との比較で示す。
a鋼金属基質は研磨していない冷間圧延鋼板である
−薄板:10.2x15.2X0.08cm(4x6x1/32インチ)
−厚板:7.7x15.2X0.32cm(3x6x1/8インチ)
(ACT Laboratories Inc.Hillsdale、MI
が供給)
bナイロン11粉体は灰色顔料を添加した市販の流動床グレード(Rilsa
n)である。平均粒子サイズは124ミクロンである。
D12/612−下塗りなし鋼の接着力は優れていることを観察した(接着等
級:3.5−4)。直接的な比較において、ナイロン11−下塗りなし鋼の接着
力は劣っていて(接着力:1)、D12/612被膜に比べてずっと劣っている
ことは明らかである。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1998年1月26日(1998.1.26)
【補正内容】
請求の範囲
1. 金属表面を被覆する方法であって、
(a)炭素原子を4−12個有する少なくとも1種の脂肪族ジアミンを0
から99.5モルパーセントの範囲の量で用いそして2−メチル−ペンタメチレ
ンジアミンを補足量で用いて上記ジアミン類を1,12−ドデカン二酸と一緒に
重合させたものから本質的になっていて蟻酸中8.4%のポリマーを用いて25
℃で測定した時に少なくとも20の相対粘度を示しかつ140−200℃の範囲
の融点を示すポリアミドから生じさせた粉体を、粉体塗装方法で、下塗りしてい
ない鋼に接触させ、そして
(b)上記金属表面上に上記ポリアミドの融着被膜を生じさせる、ことを
含み、ここで、上記被膜が少なくとも70ショアD単位の硬度を示す方法。
2. 上記融着被膜が少なくとも75ショアD硬度単位の硬度を示す請求の範
囲第1項記載の方法。
3. 該脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミンである請求の範囲第1また
は2項記載の方法。
4. 該ポリアミドが2−メチル−ペンタメチレンジアミンとドデカン二酸か
ら作られたホモポリマーであるか或はヘキサメチレンジアミンと2−メチル−ペ
ンタメチレンジアミンの混合物と1,12−ドデカン二酸から作られたコポリマ
ーである請求の範囲第1または2項記載の方法。
5. 該ポリアミドが30から60の範囲のRVを示す請求の範囲第1−4項
いずれか1項記載の方法。
6. 該粉体塗装方法が流動床浸漬塗装方法である請求の範囲第1−5項いず
れか1項記載の方法。
7. 該粉体塗装方法が静電噴霧方法でありそして段階(b)における温度が
200℃以下である請求の範囲第1−5項いずれか1項記載の方法。
8. 該粉体塗装方法がフロック加工方法である請求の範囲第1−5項いずれ
か1項記載の方法。
9. 該粉体塗装方法が火炎溶射方法である請求の範囲第1−5項いずれか1
項記載の方法。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C09D 5/46 C09D 5/46
177/00 177/00
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),AU,CA,JP,K
R,MX,NZ