JP2000356631A - 全有機体炭素測定方法及び装置 - Google Patents

全有機体炭素測定方法及び装置

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JP2000356631A
JP2000356631A JP11169019A JP16901999A JP2000356631A JP 2000356631 A JP2000356631 A JP 2000356631A JP 11169019 A JP11169019 A JP 11169019A JP 16901999 A JP16901999 A JP 16901999A JP 2000356631 A JP2000356631 A JP 2000356631A
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淳 宇田川
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洋 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低沸点の有機物を含む試料水に対しては誤差
の原因となることもあり、また、分析方法及び分析装置
を複雑化するIC除去の前処理工程を必要としないTO
C分析方法及び分析装置を提供する。 【解決手段】 遷移金属元素と含窒素芳香族配位子との
錯体及び/又は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸化
して、遷移金属元素及び/又は希土類元素の酸化数を増
加させ、次いで、得られた酸化体と試料水又は必要に応
じて酸化された試料水とを接触させて化学発光せしめ、
その化学発光強度からTOC値を求める。ルテニウム錯
体やセリウムの硝酸アンモニウム塩を検出用試薬(化学
発光物質)として好ましく用いることができる。必ずし
も試料水の希釈や濃縮といった操作を行わなくても広い
濃度範囲に渡るTOCの定量分析が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水中の全有機体炭
素(Total Organic Carbon:TOC)の定量分析方法及
び装置に関し、特に水中のTOCを特定の方法で定量す
ることを特徴とするTOC測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、TOCを定量するための分析方法
及び装置としては、燃焼酸化/赤外線式TOC分析法、
湿式酸化/赤外線式TOC分析法、湿式酸化/導電率式
TOC分析法などの方法と各分析法を利用した分析装置
が知られている(JIS−K0551)。
【0003】燃焼酸化/赤外線式TOC分析法とは、試
料水に酸を加えてpHを2以下にし、通気して二酸化炭
素等の無機体炭素(Inorganic Carbon:IC)を除去し
た後、試料水の一定量を空気、窒素、酸素などのキャリ
アーガスと共に、例えば、600℃〜1000℃の高温
に保持された全炭素測定管に送り込み、有機物中の炭素
を燃焼分解して二酸化炭素とした後、該二酸化炭素の濃
度を非分散型赤外線ガス分析計(Non-Dispersive Infra
red Gas Analyzer:NDIR)で測定してTOC濃度を
求める方法である。
【0004】湿式酸化/赤外線式TOC分析法とは、試
料水に酸を加えてpHを2以下にし、通気してICを除
去した後、試料水の一定量をペルオキソ二硫酸塩などの
酸化剤及び空気、窒素、酸素などのキャリアーガスと共
に湿式酸化反応器に送り込み、有機物中の炭素を二酸化
炭素とした後、該二酸化炭素の濃度をNDIRで測定し
てTOC濃度を求める方法である。ここで、湿式酸化反
応器とは、例えば、200℃、2MPaの高温高圧状態
で有機物の酸化分解を行うものや、水銀ランプを光源と
し、波長253.7nm及び185nmを主波長とする
紫外線を照射して有機物を酸化分解するもの、またはこ
れらを組み合わせたものなどがある。
【0005】温式酸化/導電率式TOC分析法とは、上
記湿式酸化/赤外線式TOC分析法と同様に有機物の酸
化分解を行った後、分解によって生成した二酸化炭素の
濃度を試料水の導電率の変化から求める方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来のTOC分
析方法には、下記の様な問題があった。まず、従来のT
OC分析方法では、酸化方法、酸化条件、検出方法等の
制限によって定量範囲が限定され、試料水の希釈や濃縮
操作を行わずに広い濃度範囲のTOC分析を行うことが
できない。即ち、燃焼酸化/赤外線式TOC分析法にお
いては、一度に多量の試料水を注入すると燃焼炉の温度
が低下して分解率が低下するので、試料水の注入量が制
限されるため、有機物濃度の低い試料水の分析はできな
い。また、一般に湿式酸化法は、純水などの有機物濃度
が低い試料水に適しているが、燃焼酸化法と比較すると
有機物の分解率が低いため、有機物濃度の高い試料水の
分析には不向きである。
【0007】また、上述の従来のTOC分析方法では、
検出にNDIRや導電率計のいずれを用いた場合におい
ても、ICとTOCを区別して検出できないため、前処
理として試料水のpHを酸性として、通気してICを除
去する工程が必須であり、分析方法及び分析装置を複雑
にしている。加えて、試料水中に低沸点の有機物が含ま
れる場合には、このIC除去工程によって、ICばかり
でなく低沸点有機物の一部または大部分も同時に除去さ
れてしまうため、TOC測定値の誤差の原因となってい
る。
【0008】従って、本発明の目的は、低沸点の有機物
を含む試料水に対しては誤差の原因となることもあり、
また、分析方法及び分析装置を複雑化するIC除去の前
処理工程を必要としないTOC分析方法及び分析装置を
提供することにある。また、本発明は、必ずしも試料水
の希釈や濃縮といった操作を行わなくても広い濃度範囲
に渡るTOCの定量分析を可能とするTOC測定方法及
び測定装置をも提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
従来のTOC分析方法及び分析装置の問題を解決すべく
鋭意研究を重ねた結果、広範囲の被測定系について、有
機物を含有する試料水に化学発光法を適用した場合、化
学発光法によって計測される発光強度が、従来法による
TOC測定値と広いTOC濃度範囲に渡って優れた相関
を示すことを見い出し、本発明に至ったものである。即
ち、本発明は、化学発光法を用いて水中の全有機体炭素
の定量を行うことを特徴とする全有機体炭素測定方法を
提供するものである。
【0010】発光反応を利用した有機物検出方法が最近
注目を集めている。この方法は、吸光光度法や蛍光分析
法に比較して高感度であり、定量範囲が広く、応答速度
が速い(発光反応に要する時間が短い)ため、特に連続
流れ系や循環系等の流通系における高感度検出方法とし
て注目されている。発光には、化学発光、生物発光等が
あるが、現在、分析法としては、化学発光を利用したも
のが多く、既に多くの種類の化学発光原因有機物が知ら
れている。化学発光法における化学発光原因有機物の例
を挙げれば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、
N−エチルモルホリン、N−エチルピペラジン、チウラ
ムなどの三級アミン類〔S. Yamazaki etal., J. High R
esol. Chromatogr., 21, 315(1998)、岩淵ら、クロ
マトグラフィー、14(5)132(1993)〕やトリプ
トファン、インドール等の二級アミン類(特開平4−3
15048号公報)、クロロチアジド、ヒドロクロロチ
アジド等のチアジド類、蓚酸、ピルビン酸、マロン酸、
アセト酢酸、レブリン酸のようなα−、β−あるいはγ
−ジケトン構造を持つ化合物類(特開平5−52755
号公報)、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキ
サノン、3−ヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類
や、先に本発明者等が見出した2−メチル−3−イソチ
アゾロン、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロ
ン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチ
アゾロン等のイソチアゾロン類やポリアクリル酸、ポリ
メタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸類
(特願平11−82686号、特願平11−82687
号)など、天然有機物、合成有機物の多岐に渡ってお
り、更に、化学発光法が比較的新しい分析手法であるこ
とと有機物の種類が膨大な数であることのために、今後
も新規な化学発光原因有機物が見出されるものと考えら
れている。更に最近、試料水を完全分解に至らない程度
に酸化させることで、試料水中の有機物を上記の様な既
知の化学発光原因有機物、または現在は未知の化学発光
原因有機物に誘導し、より多種類の有機物を化学発光法
により高感度で検出できることが報告されており〔山崎
ら、第4回クロマトグラフィーシンポジウム,6,(19
97)〕、化学発光法の適用分野を飛躍的に拡大できる技
術として注目されている。しかしながら、従来、化学発
光法は、比較的純粋な系において、特定の化学発光原因
有機物やその前駆体の検出、定量に用いられる分析法と
して用いられるに止まっており、TOCのような有機物
総量の指標として用いられることはなかった。
【0011】一般に、化学発光法における発光波長は検
出用試薬(化学発光物質)の種類のみに依存し、化学発
光原因有機物の種類による波長依存性がないため、化学
発光原因有機物に対する選択性がない。本発明者等は、
このことに着目し、化学発光法における発光波長が化学
発光原因有機物の種類による波長依存性がないことは、
化学発光反応条件にはよるがTOC測定には都合良く作
用すると考え、本発明を想到するに到ったものである。
【0012】本発明において、前述の様に、化学発光法
を適用する前段として、試料水中の有機物を完全分解に
至らない程度に酸化分解することが、より多種類の有機
物を化学発光原因有機物に誘導できる点で好ましいが、
後述の様に、或る被測定系の化学発光強度とTOC値の
相関関係を把握しておけば、必ずしも試料水中の有機物
を完全分解に至らない程度に酸化分解することは必須の
要件ではない。これは、一般に或る被測定系の水中の有
機物は、例え化学発光原因有機物でなくとも、該水中に
或る時間保持されることにより生物酸化等により或る程
度は酸化されており、或る程度の化学発光を示すのが通
常であることからも頷けるし、また、例えば、(超)純
水等のTOC値の非常に低い被測定系の試料水の場合
は、後述の代表的な本発明方法では、検出用試薬(化学
発光物質)の酸化体が一種の酸化剤として充分に働くこ
とができ、試料水中の微量の有機物を酸化して化学発光
原因有機物に誘導することもあり得るからである。ここ
で、「試料水中の有機物を完全分解に至らない程度に酸
化分解する」とは、所望の感度でTOC測定できる程度
に試料水を酸化処理に供することを言い、どの程度の酸
化処理を行うかは被測定系の種類により異なるが、一般
には、ほぼ最高の化学発光強度が得られる酸化反応条件
(ほぼ応答が最大となる条件)を予備実験により選ぶ。
なお、非水系の試料も、水を加えて試料水とすることに
より、本発明によりTOC測定が可能である。
【0013】本発明の方法は、化学発光法を利用して水
中のTOCの分析測定が行える限り、如何なる態様によ
り実施することもできるが、好ましい代表的な方法は、
遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯体及び/又
は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸化して、遷移金
属元素及び/又は希土類元素の酸化数を増加させ、次い
で、得られた酸化体と試料水又は必要に応じて酸化され
た試料水とを接触させて化学発光せしめることを特徴と
するTOC測定方法である。
【0014】本発明で検出用試薬(化学発光物質)とし
て用い得る遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯
体における遷移金属元素としては、例えば、ルテニウ
ム、イリジウム、クロム、コバルト、鉄、ロジウム、オ
スミウム等が挙げられる。これらのうち、特に好ましい
遷移金属元素は、低毒性や高発光効率などの点でルテニ
ウムとオスミウムである。一方、含窒素芳香族系配位子
としては、例えば、ビピリジン、ビピラジン、フェナン
トロリン及びこれらの誘導体が挙げられる。ここで言う
誘導体とは、ビピリジン、ビピラジン、フェナントロリ
ン中のピリジン環又はピラジン環内の炭素原子に直接結
合した水素原子の少なくとも一つが他の置換基によって
置換されているものを指す。このような置換基の例とし
ては、メチル基、フェニル基、ビニル基、カルボキシル
基、カルボン酸エステル基、硫酸基、硫酸アミド基、水
酸基、アミノ基、アミド基、アンモニウム基、ピリジニ
ウム基等が挙げられる。含窒素芳香族系配位子の若干の
具体例としては、2,2’−ビピリジン、2,2’,
5,5’−ビピラジン、1,10−フェナントロリン、
バソフェナントロリン、4,4’−ジカルボキシ−2,
2’−ビピリジン及びその塩、4,4’−ジカルボキシ
−2,2’−ビピリジンのモノ−及びジ−アルキルエス
テル及びそれらの塩、4,4’−ジカルボキシ−2,
2’−ビピリジンのモノ−及びジ−N−ヒドロキシスク
シンイミド及びそれらの塩、4,4’−ジスルホン酸−
2,2’−ビピリジン及びその塩、4−メチル−4’−
ビニル−2,2’−ビピリジン及びその単独重合体と共
重合体、4−クロロメチル−4’−メチル−2,2’−
ビピリジン、4,4’−ジ(クロロメチル)−2,2’
−ビピリジン、バソフェナントロリンジスルホン酸及び
その塩等が挙げられる。これらのうち、特に好ましい含
窒素芳香族系配位子は、2,2’−ビピリジンと1,1
0−フェナントロリンである。
【0015】また、本発明で検出用試薬(化学発光物
質)として用い得る希土類元素の硝酸アンモニウム塩と
しては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリ
ウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリ
ウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジス
プロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッ
テルビウム、ルテチウムの硝酸アンモニウム塩が挙げら
れる。これらのうち、特に好ましい化合物は、硝酸二ア
ンモニウムセリウム(III) と硝酸二アンモニウムセリウ
ム(IV)である。硝酸二アンモニウムセリウム(IV)
は、既に酸化されて酸化数が増加した化合物であるが、
比較的安定で、これをそのまま酸化体として用いること
ができ、この場合も本発明による上述の代表的な方法の
範囲に含まれる。即ち、本発明による上述の方法は、遷
移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯体及び/又は
希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸化して、遷移金属
元素及び/又は希土類元素の酸化数を増加させる工程を
含むが、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)の場合は、
検出作業現場でこの工程を行う代わりに試薬メーカーが
この工程を行うというだけである。
【0016】本発明で利用される化学発光の一般的な発
光機構について、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテ
ニウム(II)錯体を例として説明する。ルテニウムが2
価のトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)
錯体は、酸化を受けるとルテニウムが3価のトリス
(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(III) 錯体とな
り、これが化学発光原因有機物により還元され、その化
学反応のエネルギーにより、励起状態の2価錯体を生成
し、これが基底状態の2価錯体となる時に過剰のエネル
ギーを発光として放出するものと考えられる。また、セ
リウムの硝酸アンモニウム塩の場合は、3価のセリウム
(III) と4価のセリウム(IV)の間の酸化と還元が利用
されるのを除いて、上記と同様である。この時の発光波
長は、ルテニウムの場合には610〜620nm近辺で
あり、セリウムの場合には550nm近辺である。以
下、遷移金属錯体の代表例としてルテニウム錯体、希土
類元素の硝酸アンモニウム塩の代表例としてセリウムの
硝酸アンモニウム塩について主に説明するが、本発明が
これらに限定されないことは勿論である。なお、ルテニ
ウム錯体とセリウムの硝酸アンモニウム塩との併用によ
り感度の増大(増感作用)が期待され、同様の効果は他
の複数の化学発光物質の組み合わせでも期待される。
【0017】上述のことから明らかな様に、化学発光原
因有機物やその前駆体物質を酸化して得た酸化体(即
ち、化学発光原因物質)を化学発光法によって検出しよ
うとする場合、ルテニウムやセリウムを酸化により酸化
数(価数)の増加した状態にすることが必要である。こ
のルテニウムやセリウムの酸化方法には幾つかの方法が
知られている。例えば、ルテニウムを酸化剤を用いて酸
化する方法〔酸化剤として二酸化鉛、酸化ビスマス、酸
化金などの金属酸化物を用い、この金属酸化物をカラム
に充填し、ルテニウム錯体をカラムに通すことで酸化す
る方法(特開平5−302895号公報)、酸化剤とし
てペルオキソ二硫酸カリウム等を例えば水溶液として用
い、この酸化剤とルテニウム錯体を接触させた状態で紫
外線等の光を照射して光化学的に酸化する方法(S. Yam
azaki et al., J. High Resol. Chromatogr., 21, 315
〜316, 1998)、酸化剤として半導体光触媒を担体上に
固定化した固体酸化剤を用い、この酸化剤とルテニウム
錯体を接触させた状態で紫外線等の光を照射して光化学
的に酸化する方法、酸化剤として二酸化鉛/硫酸(水溶
液)を用いる方法など〕、電極上で電気化学的にルテニ
ウムを酸化する方法(特開平5−52755号公報)等
が挙げられる。本発明において上記の様な検出用試薬を
用いる場合は、ルテニウムやセリウムの酸化方法に特に
制限はなく、いずれの酸化方法を用いても良い。
【0018】しかし、測定装置の長期間の連続自動運転
を達成するためには、電極上で電気化学的にルテニウム
を酸化する方法、または、酸化剤として半導体光触媒を
担体上に固定化した固体酸化剤を用い、この酸化剤とル
テニウム錯体やセリウムの硝酸アンモニウム塩を接触さ
せた状態で紫外線等の光を照射して光化学的に酸化する
方法が好ましい。なお、検出用試薬として、硝酸二アン
モニウムセリウム(III) ではなく、比較的安定な硝酸二
アンモニウムセリウム(IV)を最初から用いることもで
き、この場合には酸化工程が不要なのは上述の通りであ
る。
【0019】上記の酸化により得られるトリス(2,
2’−ビピリジル)ルテニウム(III)等は、水性媒体中
では不安定なため、その調製後、速やかに(必要に応じ
て酸化された)試料水中の化学発光原因有機物と反応さ
せる必要がある。
【0020】上述の様に、ルテニウム錯体やセリウムの
硝酸アンモニウム塩が発光するためには、励起状態の活
性種を生成してやることが重要であり、化学発光原因有
機物は効率的に励起状態の活性種形成に関与するため、
高感度でのそれらの検出が可能となる。
【0021】一方、二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素
イオン及びこれらの塩に代表されるICは、化学発光法
においては検出されない。従って、本発明の方法によれ
ば、高感度でのTOC分析が可能な上に、TOC測定の
前段としてのICの除去を行う必要が無く、IC除去の
ための工程が不要となって分析操作と分析装置を簡素化
できるばかりでなく、低沸点の有機物がICと共に除去
されることによるTOC測定値の誤差を防ぐこともでき
る。
【0022】前述のように、化学発光原因有機物は、天
然及び合成有機物の多岐に渡っているので、本発明のT
OC測定方法で、一般の河川水、湖沼水、地下水など
や、各種工場排水、工業用水、純水、超純水など多くの
被測定系の試料水のTOC測定が可能である。但し、化
学発光強度は化学発光原因有機物の種類に依存するの
で、含有する有機物の種類及び組成が異なる全ての被測
定系の試料水について、測定される化学発光強度とTO
C値とが必ずしも比例関係にあるとは言えない。このた
め、化学発光法による化学発光強度をTOC値として精
度高く換算、表示させるためには、測定に先立って被測
定系の試料水を用いて従来のTOC分析方法と本発明の
方法における化学発光強度の相関を取り、検量線を作成
するなどの準備が必要となる。但し、この検量線作成
は、本発明によるTOC分析法の適用の初期調整段階、
および、例えば月1回乃至年1回程度に定められた定期
点検時に限定されるので、本発明のTOC測定方法の利
便性を著しく損なうものとはならない。
【0023】本発明の方法によりTOC測定を行う際の
測定条件(化学発光反応条件)としては、特に制限はな
く、測定温度、pH等は任意に設定することができる。
ただし、TOCの検出感度は、測定温度、pHの影響を
受けるため、これらに関しては一定した測定条件で測定
を行うのが望ましい。化学発光強度が最大となる様な測
定温度やpHも被測定系の種類によって異なるのが通常
なので、予備実験を行って設定しておくのが望ましい。
【0024】また、本発明の方法において、試料水に化
学発光法を適用する前段として、試料水中の有機物を完
全分解に至らない程度に酸化分解して、既知の化学発光
原因有機物又は現在は未知の化学発光原因有機物に誘導
することが好ましく、こうすれば、化学発光原因有機物
及び/又はその前駆体物質を含むより多種類の有機物を
高感度で検出可能とし、TOC定量の精度を更に向上さ
せることもできる。
【0025】本発明の方法において好ましく行われる試
料水中の有機物を完全分解に至らない程度の酸化分解に
より、化学発光原因有機物を生成する物質(前駆体物
質)としては、例えば、酸化により蓚酸やその誘導体を
生成するヒドロキシ酸や活性メチレン化合物、酸化によ
りジケトン構造を有する化合物を生成する電子吸引基を
有するα,β−不飽和化合物やカテコール化合物、酸化
によりヒドラジンやその誘導体を生成する尿素及び尿素
誘導体等が挙げられる。このような前駆体物質の若干の
具体例としては、乳酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ
酸、クエン酸等のヒドロキシ酸及び/又はそれらの塩及
び/又はそれらのエステル(α−乳酸リチウム、α−乳
酸ナトリウム、α−乳酸カルシウム、α−乳酸鉄、α−
乳酸メチル、α−乳酸エチル、α−乳酸ブチル、クエン
酸三ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸鉄、ク
エン酸鉄アンモニウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、ク
エン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチ
ル、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸ジ
イソプロピル、酒石酸ジエチル、リンゴ酸ナトリウム、
リンゴ酸ジメチル、グルコン酸カルシウム、グルコン酸
亜鉛、グルコン酸第一鉄、グルコン酸銅、グルコン酸メ
チル、マロノニトリル、マロンジアルデヒド、シアノ酢
酸、シアノ酢酸メチル、アクリル酸、アクロレイン、ア
クリロニトリル、メタクリル酸、マレイン酸、フマル
酸、ムコン酸、クロトン酸、クロトンアルデヒド、クロ
トンニトリル、プロピオール酸、カテコール、アドレナ
リン、ドーパミン、ドーパミン塩酸塩、酒石酸水素ノル
エピネフリン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニ
ン、尿素、メチル尿素、エチル尿素、ジメチル尿素、テ
トラメチル尿素等の多岐に渡る有機物を挙げることがで
きる。従って、上記の様な酸化分解を行うことにより、
本発明によってTOC測定を行うに当たって検出対象と
なる有機物の種類の数を飛躍的に増加させ、化学発光法
を利用した本発明のTOC測定方法をより広範な種類の
被測定系に対して適用可能とすることができることが分
かる。
【0026】本発明で用い得る試料水の酸化方法は、試
料水中の有機物を完全分解に至らない程度に酸化分解で
きる限り特に限定されず、例えば、酸化剤を用いて酸化
する方法〔酸化剤として二酸化鉛、酸化ビスマス、酸化
金などの金属酸化物を用い、この金属酸化物と試料水を
接触させて酸化する方法や、酸化剤として臭素酸ナトリ
ウム、臭素酸カリウム等を用い、この酸化剤と試料水を
接触させた状態で紫外線等の光を照射して光化学的に酸
化する方法や、酸化剤として半導体光触媒を担体上に固
定化した固体酸化剤を用い、この酸化剤と試料水を接触
させた状態で紫外線等の光を照射して光化学的に酸化す
る方法や、酸化剤として二酸化鉛/硫酸の水溶液を用
い、均一系でこの酸化剤と試料水を接触させて酸化する
方法など〕、電極上で電気化学的に試料水を酸化する方
法等が挙げられる。酸化反応条件〔温度、時間、pH、
酸化剤量、(光照射量)、その他〕は、酸化方法により
大きく異なり、一概には特定できない。
【0027】本発明では、固体酸化剤を用いた試料酸化
装置で試料水を酸化する方法が好ましく採用される。用
い得る固体酸化剤としては、例えば、二酸化鉛、酸化ビ
スマス、酸化金などの金属酸化物や半導体光触媒を担体
上に固定化した固体酸化剤が挙げられる。二酸化鉛、酸
化ビスマス、酸化金などの金属酸化物は長期間の使用で
は消耗してしまうのに対し、半導体光触媒を担体上に固
定化した固体酸化剤は光照射により触媒が再生するので
好ましく用いられる。固体酸化剤として半導体光触媒を
担体上に固定化した酸化剤を用いる場合、酸化方法とし
ては、この酸化剤と試料水を接触させた状態で紫外線等
の光を照射して光化学的に酸化する方法となる。光化学
的酸化で用いられる光源としては、例えば、紫外線ラン
プのみならず、ブラックライト(遠紫外線源)、一般の
蛍光灯、太陽光線も挙げることができる。このような半
導体光触媒を担体上に固定化した固体酸化剤は、臭素酸
ナトリウムや臭素酸カリウム、二酸化鉛/硫酸等の酸化
剤に比べて取り扱いが簡便であり、試料との分離が可能
で、更に光照射により触媒が再生するため、二酸化鉛、
酸化ビスマス、酸化金等の金属酸化物系の酸化剤の場合
と異なり、酸化剤自体の消耗がなく、定期的な酸化剤の
交換を実質的に必要としないかその頻度が極めて低い点
で好ましい。一方、電極上で電気化学的に試料を酸化す
る方法は、前述の様に連続自動操作は行える点で好まし
いが、長期間連続的に運転した際に電極の汚染等の問題
の懸念を伴う。上述の点から、半導体光触媒を担体上に
固定化した固体酸化剤の使用が特に有利である。
【0028】半導体光触媒を担体上に固定化した固体酸
化剤は、例えば、各種担体上に各種半導体光触媒を担持
した光触媒担持体(特願平11−143958号)であ
る。このような光触媒担持体において、半導体光触媒と
しては、例えば、酸化チタン、チタン酸ストロンチウ
ム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ニオ
ブ、酸化タングステン、酸化錫、硫化カドミウム、セレ
ン化カドミウム、硫化モリブデン、珪素等を挙げること
ができ、担体としては、例えば、ガラス板、ガラスバル
ーン、ガラスビーズ、ガラス繊維、紙や、ポリオレフイ
ン、ナイロン、弗素樹脂等の各種樹脂の板、繊維、パイ
プ、粉末、粒状体等を挙げることができるが、試料との
分離が可能である限り、特にこれらに限定されない。た
だし、半導体光触媒を担体上に固定化した固体酸化剤の
調製の容易さと、液体中での取り扱いの簡便性や安定性
の観点から、担体としてのポリオレフィンに半導体光触
媒としての酸化チタンを担持させた光触媒担持体が固体
酸化剤として好ましく、その形状は、酸化反応の形式に
よって異なるが、一般的には粒状が好ましい。
【0029】また、担体への半導体光触媒の担持量は、
所望の酸化反応を進行させ得る限り特に限定されない
が、一般的には担体+光触媒の合計量にたいして1pp
m〜50重量%の範囲で選択することができる。なお、
担体への半導体光触媒の担持の形態としては、半導体光
触媒が担体の最外層近辺に担持されている形態が好まし
く、更に半導体光触媒の粒子が担体の最外層に一重に担
持されている形態よりも、最外層近辺に多重に担持され
ている形態の方が好ましい。
【0030】この場合の酸化反応は、その目的である試
料水の所望の酸化が達成されれば如何なる条件(温度、
時間、pH、固体酸化剤量、光照射量等)で行っても良
い。酸化反応の進行の度合いは、前駆体物質から化学発
光原因有機物への変換率に影響を与え、化学発光強度を
変化させるので、定点(所定の測定箇所)におけるTO
Cモニタリングなどのように、一連の同種の被測定系の
試料水に対しては一定の酸化条件を適用する必要があ
る。また、同一の被測定系の試料の場合でも、酸化反応
の進行の度合いによって、化学発光強度が変化するの
で、測定に先立って、上記酸化反応条件を変化させてほ
ぼ最高の化学発光強度が得られる条件を設定しておけ
ば、より高精度の分析を行うことができる。反応条件は
上述の様に一概に特定できず、例えば、反応温度が高い
方が(例えば、70〜80℃)、反応時間が短くてよい
(例えば、10秒前後)。pHも限定されないが、一般
に酸性条件より塩基性条件が有利である。また、反応の
方式についても特に制限はなく、カラム等に上記固体酸
化剤を充填して試料を連続的に接触させる連続方式で
も、上記固体酸化剤を容器中で試料と接触させるバッチ
方式でもよい。
【0031】また、本発明は、酸化された遷移金属元素
と含窒素芳香族系配位子との錯体及び/又は酸化された
希土類元素の硝酸アンモニウム塩を混合装置に供給する
試薬供給ポンプと、試料水を前記混合装置に供給する試
料供給ポンプと、酸化された遷移金属元素と含窒素芳香
族系配位子との錯体及び/又は酸化された希土類元素の
硝酸アンモニウム塩を含む試薬と試料水又は必要に応じ
て酸化された試料水を混合する前記混合装置と、前記混
合装置で得られた混合物の発する化学発光を検出する化
学発光検出装置とを備えていることを特徴とする全有機
体炭素測定装置も提供する。この全有機体炭素測定装置
は、通常、遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯
体及び/又は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸化し
て、遷移金属元素及び/又は希土類元素の酸化数を増加
させる試薬酸化装置を更に備え、上記試薬供給ポンプが
遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯体及び/又
は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を上記試薬酸化装置
を通して上記混合装置に供給する構成である。但し、硝
酸二アンモニウムセリウム(IV)は、前述の様に、既に
酸化されて酸化数が増加した化合物であるが、比較的安
定で、これをそのまま酸化体として用いることができ、
この場合は、試薬酸化装置は不要である。
【0032】本発明の全有機体炭素測定装置は、試料水
を酸化する試料酸化装置を更に備え、上記試料供給ポン
プが試料水を上記試料酸化装置を通して上記混合装置に
供給する構成であるのが好ましい。この場合、上記試料
酸化装置が、半導体光触媒を担体上に固定化した固体酸
化剤を用いたものであり、上記固体酸化剤と試料水が接
触した状態で紫外線等の光を照射する構成であるのが好
ましいのは、前述の通りである。
【0033】また、本発明の全有機体炭素測定装置は、
上記化学発光検出装置から出力される化学発光強度を電
気信号として取込み、そのデータを記録し、必要に応じ
て該データを全有機体炭素濃度に換算して記録、表示す
るデータプロセッサーを更に備えているのが好ましい。
このようなデータプロセッサーは、化学発光強度対TO
C濃度の検量線を内包し、TOC濃度計算等の演算処理
を行うことができるのが好ましく、更に必要に応じて試
薬供給ポンプを起動、停止させるための出力信号も発す
ることができるのが好ましい。
【0034】次に、本発明のTOC測定装置の一例につ
いて説明する。このTOC測定装置は、基本的には、試
料水を送液するポンプ、試料水を酸化する試料酸化反応
器、ルテニウム錯体及び/又はセリウムの硝酸アンモニ
ウム塩等の検出用試薬を含む溶液を送液するポンプ、ル
テニウム錯体及び/又はセリウムの硝酸アンモニウム塩
等の検出用試薬を酸化する試薬酸化反応器、必要に応じ
て酸化された試料水と酸化されたルテニウム錯体及び/
又は酸化されたセリウムの硝酸アンモニウム塩等の検出
用試薬の溶液を混合する混合機、発光を検出する検出
器、検出器で得られた化学発光強度データをTOC値に
変換して記録するデータプロセッサーで構成される。混
合機としては、インラインミキサー、混合コイル等でも
よく、混合後の混合物は直ちに検出に供されるのが望ま
れるので、検出器に混合機を付設したり、検出器中で攪
拌混合や合流混合するような構成の検出器が混合機を兼
ねるものでも良い。
【0035】上記の試薬酸化反応器としては、ルテニウ
ム錯体及び/又はセリウムの硝酸アンモニウム塩等の検
出用試薬を酸化させる酸化方式により異なる反応器が用
いられる。例えば、酸化剤として二酸化鉛、酸化ビスマ
ス、酸化金などの金属酸化物を用いる場合には、この金
属酸化物をカラムに充填させたものを反応器として用い
る。また、酸化剤としてペルオキソ二硫酸カリウムや半
導体光触媒を担体上に固定化した固体酸化剤等を用いる
場合には、かかる酸化剤とルテニウム錯体及び/又はセ
リウムの硝酸アンモニウム塩等の検出用試薬を共存させ
た状態で紫外線等の光を照射して光化学的に酸化させる
ことが可能な装置を反応器として用いる。この場合、光
源としては、紫外線ランプやブラックライトの他にも一
般的な蛍光灯や太陽光線などを用いることができる。一
方、電極上で電気化学的にルテニウム錯体及び/又はセ
リウムの硝酸アンモニウム塩等の検出用試薬を酸化する
方法を採用する場合には、安定化直流電源を備えた電解
酸化装置を反応器として用いる。ただし、検出用試薬と
して硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を用いる場合に
は試薬酸化反応器は不要である。また、試薬酸化反応器
は、酸化された試薬が不安定なため、基本的には極めて
短時間に試薬の供給と排出を行え且つその中では連続的
に酸化を進行させる酸化反応器となる。
【0036】一方、試料酸化反応器は、好ましくは固体
酸化剤を用いて試料水を酸化する試料酸化装置である。
用い得る固体酸化剤としては、二酸化鉛、酸化ビスマ
ス、酸化金等の金属酸化物や半導体光触媒を担体上に固
定化した固体酸化剤が挙げられるが、二酸化鉛、酸化ビ
スマス、酸化金等の金属酸化物は長期間の使用で消耗し
てしまうため、これに比べて光照射により触媒が再生す
る半導体光触媒を担体上に固定化した固体酸化剤が好ま
しく用いられる。固体酸化剤として半導体光触媒を担体
上に固定化した酸化剤を用いる場合、酸化方法として
は、この酸化剤と試料水を接触させた状態で紫外線等の
光を照射して光化学的に酸化する方法となる。試料酸化
反応器の具体例を挙げると、連続的に酸化反応を実施し
たい場合には、二酸化鉛、酸化ビスマス、酸化金等の金
属酸化物をカラムに充填させ、試料水をカラムに流す構
成の反応器や半導体光触蝶を担体上に固定化した固体酸
化剤をカラムに充填させ、試料水をカラムに流しながら
カラムに光を照射できる反応器を用いることができ、一
方、バッチ式で酸化反応を実施したい場合には、二酸化
鉛、酸化ビスマス、酸化金等の金属酸化物を容器中で試
料水と接触させることができる反応器や半導体光触媒を
担体上に固定化した固体酸化剤を容器中で試料水と接触
させ、容器に光を照射できる反応器を用いることができ
る。ただし、前述した様に、被測定系の種類等にもよる
が、試料水の予備酸化は必須の要件ではないので、試料
酸化反応器が不要である場合も多い。
【0037】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好ましい実施の形
態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0038】本発明を図1を参照して更に具体的に説明
する。図1は、本発明のTOC測定方法を実施する本発
明のTOC測定装置の一例を示すフロー図である。試料
水とルテニウム錯体及び/又はセリウムの硝酸アンモニ
ウム塩を含む溶液(図1では、この溶液を「Ru錯体溶
液」で代表している)は、それぞれポンプ1、2により
供給される。なお、試薬用の酸化剤としてペルオキソ二
硫酸カリウム等の水溶性酸化剤を用い、光化学的に酸化
する場合には、ルテニウム錯体及び/又はセリウムの硝
酸アンモニウム塩を含む溶液にこの酸化剤を予め添加し
ておくことが望ましい。ルテニウム錯体及び/又はセリ
ウムの硝酸アンモニウム塩を含む溶液は、試薬酸化反応
器3で連続的に酸化されて混合器5に供給される。一
方、試料水は試料酸化反応器4で連続的に酸化されて混
合器5に供給される。混合器5では酸化された試料水と
酸化されたルテニウム錯体及び/又はセリウムの硝酸ア
ンモニウム塩の溶液が混合されて反応し、化学発光が起
こる。この化学発光が混合器5の直後に設置された検出
器6で検出され、化学発光強度はデータプロセッサー7
でTOC値に変換されて記録される。検出器6には、光
電子倍増管、アバランシェフォトダイオード、イメージ
インテンシファイヤー等を用いることができる。データ
プロセッサー7は、A/Dコンバーター、コンピュータ
ー、表示装置(CRT、液晶ディスプレイ、レコーダー
等)を包含するのが一般的である。なお、試薬酸化反応
器3や試料酸化反応器4が不要の場合もあることは、前
述の通りである。
【0039】本発明の方法は、広いTOC濃度範囲に渡
るTOCの定量分析が可能なので、通常は図1のTOC
測定装置で充分であるが、例えば、ポンプにより供給さ
れるキャリアー液に試料水の一定量をインジェクターで
注入して希釈し、希釈液を試料酸化装置4に供給する構
成の装置を用いることもできる。
【0040】上述の実施の形態によれば、試料水に化学
発光法を適用する前段として、試料水中の有機物を完全
分解に至らない程度に酸化分解することにより、より多
種類の有機物が検出可能となり、TOC定量の精度を更
に向上させることができる。
【0041】
【実施例】以下に実施例により本発明を更に詳しく説明
するが、実施例は本発明の実施態様を説明するものであ
り、本発明を何ら限定するものではない。
【0042】実施例1 図1に示した本発明のTOC測定装置及び湿式酸化/導
電率式TOC計(シーバースインスツルメンツ社製、
「MODEL−810」)を用いて、工業用水のTOC
分析を行った。工業用水は、適宜にTOC値が0.5μ
gC/L(リットル、以下同様)の超純水で希釈して、
TOC濃度を変化させた試料水を調製した。図1中の試
薬酸化反応器3としては、電解酸化装置(コメット社
製、商品名「コメット2000」)を用いた。試料酸化
反応器4としては、酸化剤として半導体光触媒を担体上
に固定化した固体酸化剤を用い、固体酸化剤と試料とを
接触させた状態で遠紫外線を照射して光化学的に酸化す
る装置を用いた。この固体酸化剤としては、半導体光触
媒として酸化チタン(ドイツ・デグサ社製、商品名「P
25」)、担体として高密度ポリエチレンペレット(東
ソー株式会社製、商品名「ニポロンハード2500」)
を混合し、加熱攪拌して酸化チタンをポリエチレンペレ
ットに熱融着により担持させて調製した酸化チタン担持
ポリエチレン粒状体(酸化チタン担持量:3重量%)を
用いた。次にこの酸化チタン担持ポリエチレン粒状体を
テフロンチューブに詰め、このチューブをブラックライ
ト(波長:352nm)に巻き付けて試料酸化反応器を
構成した。
【0043】試料水としての工業用水又は超純水で希釈
した工業用水は、試料酸化反応器4にて酸化処理を施し
た後、混合器5に導入した。なお、酸化反応時間は、約
10秒であった。
【0044】一方、ルテニウム錯体溶液としては、トリ
ス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩酸塩を
10ミリモル/L濃度の硫酸水溶液に溶解させ、0.3
ミリモル/Lの濃度に調製した溶液を用いた。このルテ
ニウム錯体溶液を0.3ml/分で送液して試薬酸化反
応器(電解酸化装置)3に供給し、100μAで連続的
に定電流電解してRu(II)をRu(III) に酸化した。
【0045】上記試料水の化学発光強度と、湿式酸化/
導電率式TOC計(シーバースインスツルメンツ社製、
「MODEL−810」)の測定値の相関を図2に示し
た。上記化学発光強度は、試料水の化学発光強度測定値
から純水の測定強度値をバックグラウンドとして差し引
いた差分、即ち、補正値である。相関係数rは、0.
9976で、良好な相関を示しており、本発明の方法で
TOC測定が良好に行われることが示された。
【0046】実施例2 図1に示した本発明のTOC測定装置及び燃焼式TOC
計(島津製作所製、商品名「TOC−5000」)を用
いて、排水処理前の紙パルプ工場排水のTOC分析を行
った。紙パルプ工場排水は、適宜にTOC値が2.1m
gC/Lの工業用水で希釈して、TOC濃度を変化させ
た試料水を調製した。本発明のTOC測定条件として
は、試料酸化反応器4を用いなかったことを除いて、実
施例1と同じTOC測定装置を用い、実施例1と同じ測
定条件で測定を行った。
【0047】上記試料水の化学発光強度と、燃焼式TO
C計(島津製作所製、「TOC−5000」)の測定値
の相関を図3に示した。上記化学発光強度は、試料水の
化学発光強度測定値から純水の測定強度値をバックグラ
ウンドとして差し引いた差分、即ち、補正値である。相
関係数rは、0.9993で、良好な相関を示してお
り、本発明の方法でTOC測定が良好に行われることが
示された。
【0048】上記実施例1と2の結果と総合すれば、本
発明の方法で0.1μg/L〜100mg/Lの広い濃
度範囲に渡って、希釈や濃縮などの操作を必要とせずに
TOC分析が良好に行われることが示された。
【0049】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、化学発
光法を用いることにより、場合によっては試料水の希釈
や濃縮といった操作を行わなくとも広い濃度範囲に渡る
TOCの定量分析を可能にし、そのため通常は試料水の
希釈や濃縮といった操作を必要とせず、且つ、低沸点の
有機物を含む試料水に対して従来のTOC測定方法では
誤差の原因となる得るIC除去の前処理工程を必要とし
ない簡素化されたTOC測定方法及びTOC測定装置を
提供することができる。更に、本発明の方法及び装置
は、応答速度が速い(化学発光反応に要する時間が短
い)ため、特に連続流れ分析法(FIA: Flow Inject
ion Analysis)に代表される全自動連続測定系における
高感度検出法としての応用展開も可能である。
【0050】また、本発明において、試料水に化学発光
法を適用する前段として、試料水中の有機物を完全分解
に至らない程度に酸化分解して、既知の化学発光原因有
機物又は現在は未知の化学発光原因有機物に誘導するこ
とが好ましく、こうすれば、化学発光原因有機物及び/
又はその前駆体物質を含むより多種類の有機物を高感度
で検出可能とし、TOC定量の精度を更に向上させるこ
ともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明を実施するための装置の一例を
示すフロー図である。
【図2】図2は、実施例1における本発明方法の測定値
〔(化学)発光強度〕と湿式酸化/導電率式TOC計の
測定値の相関を示す相関図である。
【図3】図3は、実施例2における本発明方法の測定値
〔(化学)発光強度〕と燃焼式TOC計の測定値の相関
を示す相関図である。
【符号の説明】
1、2 ポンプ 3 試薬酸化反応器 4 試料酸化反応器 5 混合器 6 検出器 7 データプロセッサー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇田川 淳 東京都江東区新砂1丁目2番8号 オルガ ノ株式会社内 (72)発明者 井上 洋 東京都江東区新砂1丁目2番8号 オルガ ノ株式会社内 (72)発明者 梅香 明子 東京都江東区新砂1丁目2番8号 オルガ ノ株式会社内 Fターム(参考) 2G042 AA01 BA03 CA02 CB03 DA08 FA04 FA11 FB05 GA01 GA10 HA02 2G054 AA02 AB10 CA30 CB02 CB03 CD01 CE02 EA01 GE01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学発光法を用いて水中の全有機体炭素
    の定量を行うことを特徴とする全有機体炭素測定方法。
  2. 【請求項2】 試料水に化学発光法を適用する前段とし
    て、試料水中の有機物を完全分解に至らない程度に酸化
    分解することを特徴とする請求項1に記載の全有機体炭
    素測定方法。
  3. 【請求項3】 半導体光触媒を担体上に固定化した固体
    酸化剤と試料水を接触させた状態で光を照射することに
    より、試料水中の有機物を完全分解に至らない程度に酸
    化分解することを特徴とする請求項2に記載の全有機体
    炭素測定方法。
  4. 【請求項4】 遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子と
    の錯体及び/又は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸
    化して、遷移金属元素及び/又は希土類元素の酸化数を
    増加させ、次いで、得られた酸化体と試料水又は必要に
    応じて酸化された試料水とを接触させて化学発光せしめ
    ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の
    全有機体炭素測定方法。
  5. 【請求項5】 酸化された遷移金属元素と含窒素芳香族
    系配位子との錯体及び/又は酸化された希土類元素の硝
    酸アンモニウム塩を混合装置に供給する試薬供給ポンプ
    と、試料水を前記混合装置に供給する試料供給ポンプ
    と、酸化された遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子と
    の錯体及び/又は酸化された希土類元素の硝酸アンモニ
    ウム塩を含む試薬と試料水又は必要に応じて酸化された
    試料水を混合する前記混合装置と、前記混合装置で得ら
    れた混合物の発する化学発光を検出する化学発光検出装
    置とを備えていることを特徴とする全有機体炭素測定装
    置。
  6. 【請求項6】 遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子と
    の錯体及び/又は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を酸
    化して、遷移金属元素及び/又は希土類元素の酸化数を
    増加させる試薬酸化装置を更に備え、前記試薬供給ポン
    プが遷移金属元素と含窒素芳香族系配位子との錯体及び
    /又は希土類元素の硝酸アンモニウム塩を前記試薬酸化
    装置を通して前記混合装置に供給する構成であることを
    特徴とする請求項5に記載の全有機体炭素測定装置。
  7. 【請求項7】 試料水を酸化する試料酸化装置を更に備
    え、前記試料供給ポンプが試料水を前記試料酸化装置を
    通して前記混合装置に供給する構成であることを特徴と
    する請求項5又は6に記載の全有機体炭素測定装置。
  8. 【請求項8】 前記試料酸化装置が、半導体光触媒を担
    体上に固定化した固体酸化剤を用いたものであり、前記
    固体酸化剤と試料水が接触した状態で光を照射する構成
    であることを特徴とする請求項7に記載の全有機体炭素
    測定装置。
  9. 【請求項9】 前記化学発光検出装置から出力される化
    学発光強度を電気信号として取込み、そのデータを記録
    し、必要に応じて該データを全有機体炭素濃度に換算し
    て記録、表示するデータプロセッサーを更に備えている
    ことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の全
    有機体炭素測定装置。
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