JP2000342586A - 超音波診断装置及び超音波診断方法 - Google Patents

超音波診断装置及び超音波診断方法

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JP2000342586A
JP2000342586A JP2000092446A JP2000092446A JP2000342586A JP 2000342586 A JP2000342586 A JP 2000342586A JP 2000092446 A JP2000092446 A JP 2000092446A JP 2000092446 A JP2000092446 A JP 2000092446A JP 2000342586 A JP2000342586 A JP 2000342586A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高分解能フローモードの元で、高感度且つ高分
解能の血流又はパフュージョンの画像を提供し、微細な
血管まで、その存在を精細に観察可能にする。 【解決手段】スキャン手段(81〜83)により、被検
体の同一方向に広帯域な周波数特性を有する超音波パル
スを少なくとも2回ずつ送信しながら画像化したい断面
をスキャンしてエコー信号が各回の送信毎に得られる。
処理手段84は、断面上の各サンプル位置に対応して収
集されるエコー信号の時間軸方向のデータ列に、血流の
信号を抽出する高域濾波又は差分処理を施す。生成手段
85は、この処理信号を輝度又はパワーのデータに生成
する。このデータは、血流又はパフュージョンを表わす
高分解能カラー(フロー)像又はグレースケールフロー
像として表示手段86で表示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検体内の動き要
素としての血流画像を高分解能且つ高感度に表示できる
超音波診断装置および超音波診断方法に関し、とくに、
血流画像を得るために被検体に超音波造影剤を投与して
コントラストエコー法を実施する場合に好適な超音波診
断装置および超音波診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断装置は、比較的小形でかつ安
価である、X線被爆がない、超音波ドプラ法により血流
イメージングが可能であるなどの優位性を有しており、
今や医療現場において診療に必須のイメージングモダリ
ティになっている。
【0003】とくに、この超音波ドプラに拠る血流イメ
ージングは、心臓系などの病変部発見に威力を発揮する
機能で、カラーフローマッピングCFM(Color
Flow Mapping)またはカラードプラ断層法
とも呼ばれ、殆どの超音波診断装置に標準装備されてい
るほどである。このカラーフローマッピングは2次元的
に血流情報をほぼリアルタイムに表示するもので、一般
的に超音波プローブに近づく流れを赤、プローブから遠
ざかる流れを青で表示させる。
【0004】この表示を行うには、従来広く知られてい
るように、被検体内の同一場所(方向)を複数N回、超
音波走査して得られた時系列のエコー信号から所望の深
さ位置における血球の速度をドプラ法に基づき検出す
る。すなわち、ドプラ信号は、同一場所を所定時間間隔
で走査して得られる血球からの反射信号(血流信号)の
単位時間内の位相シフト量(ドプラシフト量)から求め
られ、これが血流速度に換算される。
【0005】各回の超音波走査に伴うエコー信号には、
血球のように移動している物体からの反射波と、血管壁
や臓器実質のように殆ど移動していない固定物体からの
反射波が混在している。しかも特徴的なことは、その反
射強度の点においては後者が支配的であるが、前者には
ドプラシフトが生じているのに対し、後者の固定反射体
からの反射波(クラッタ信号)にはドプラシフトが殆ど
生じていない点にある。そこで、エコー信号から直交位
相検波器(ミキサとLPFを備えて成る)によりドプラ
信号が抽出され、このドプラ信号からMTIフィルタが
ドプラシフト量の差を利用してクラッタ成分を除去する
ことで、血流ドプラ信号が効率良く抽出される。この血
流ドプラ信号はその後、各深さ位置のN個のドプラデー
タを用いて周波数分析が行われ、そのスペクトルの平均
値(ドプラ周波数)、分散値、あるいは血球からの反射
強度(パワー)が算出される。ドプラ周波数f
【数1】 の式に基づきドプラ速度vに換算される。cは音速、
はミキサの基準信号周波数、θは超音波ビームと血
流との成す角度である。このようにして得た血流情報
は、通常、Bモード像を背景にして、モニタ上に2次元
的に表示される。
【0006】ここで、このカラーフローマッピング(C
FM)を行うときのCFMモードを、分解能、S/N、
表示ダイナミックレンジ、折り返り周波数、リアルタイ
ム性などの観点からBモードと比較する。
【0007】送信超音波のバースト波数は、Bモードと
CFMモードとでは異なる。バースト波数は、超音波送
信周波数fの逆数である送信周期Tの長さを有する
超音波パルスの1周期の数である。
【0008】Bモードは断層像、すなわち臓器実質が反
射した超音波信号を観察するモードである。臓器実質か
らの反射信号は、被検体への安全性を考慮した超音波音
圧の範囲内であっても十分に大きな信号値で検出するこ
とができるから、十分に高いS/Nを確保できる。そこ
で、バースト波数を1〜2波と小さい値に設定し、距離
分解能を十分に上げることができ、S/Nと距離分解能
とを両立させることができる。
【0009】これに対して、CFMモードは血流、すな
わち血球からの反射信号(血流信号)を観察するモード
である。この血流信号は、臓器実質からのそれと比べ
て、約−40〜−80dBと格段に小さい信号強度であ
る。このため、Bモードと同じ送信パルス条件の元では
S/Nが悪く、血流情報は殆ど得られない。
【0010】そこで、送信超音波パルスのパワーを上げ
ることによりS/Nを改善できる。しかし、送信音圧
は、通常、Bモードにおいて既に被検体の安全性を考慮
して決めた値が限度であり、それ以上に上げることは困
難である。よって、バースト波数を3波以上の大きな値
に設定することで、送信超音波パルスのパワーを上げて
いる。ただし、バースト波数をあまり大きく設定する
と、距離分解能が劣化するので、バースト波数の上限値
は距離分解能の許容値で決まる。
【0011】このようにして血流信号のS/Nを上げる
ことができるものの、バースト波数を許容範囲の限度値
まで大きく設定したとしても、血流信号のパワー値は依
然として、臓器実質からの反射信号のパワー値に比べ
て、数十dB程度小さい。したがって、表示のダイナミ
ックレンジにも差がある。Bモードの表示ダイナミック
レンジは例えば最大100dBと大きいが、CFMモー
ドの内のパワーを表示するパワーモードの表示ダイナミ
ックレンジは、例えば最大40dBと小さい。
【0012】超音波パルスはレート周期Tで繰り返し
送信される。このため、CFMモードの内のドプラ速度
を表示する速度モードにあっては、サンプリング定理か
ら、レート周期の逆数であるレート周波数f=1/T
の半分の±f/2で折り返り現象が発生する。この
±f/2の値が折り返り周波数と呼ばれる。±の符号
は方向分離していることを示す。前記式(1)により、
折り返り周波数に対応する折り返り速度v/2を求め
ると、θ=0とおいて、
【数2】 となる。c、fは一定値であるから、折り返り速度v
/2も一定値になる。この折り返り速度は、診断に供
するため、通常、TVモニタ上に血流情報の2次元画像
と伴に表示している。
【0013】さらに、Bモードは同一の走査線(ビーム
またはラスタ)方向に1回の超音波パルス送受信を行っ
て断層像を得るが、CFMモードは同一走査線方向に複
数回の超音波パルス送受信を行うことでドプラ信号を得
て、画像化する。これにより、CFMモードにおけるフ
レーム数はBモードに比べて大幅に低下する。例えば、
同一方向に16回の送受信を行う場合、Bモード分も含
めて合計17回の送受信が必要になる。Bモードのフレ
ーム数を例えば100フレーム/秒とすると、CFMモ
ードでは6フレーム/秒となって、リアルタイム性に劣
る。
【0014】CFMモードでのリアルタイム性を改善す
る対策としては、送信を1方向から行い、複数方向から
同時に受信する「並列同時受信」と呼ばれる方法が実用
化されている。しかし、この並列同時受信を行う場合、
送信ビームを広げなければならないので、被検体内での
各サンプル位置(深さ位置)における送信パワーは低下
し、結局、検出感度が低下する。送信パワーは安全性に
関する規定により、所定値よりも上げることはできない
ので、並列同時受信を行えば一般的に検出感度は低下す
る。以上によって、血流信号という感度の低い信号を映
像化することを担うCFMモードの場合、並列同時受信
法の使用にも制限がある。すなわち、診断部位が心腔内
など、比較的感度の良い部位に限られる。並列同時受信
法は、リアルタイム性を改善するために有効な手法では
あるが、診断部位に関係無く常時使用できる手法ではな
い。
【0015】一方、腫瘍や虚血性心疾患の診断等を目的
として、腫瘍血流や冠動脈血流の検出のような、可能な
限り細い血管を検出したいという要求は従来から強くあ
ったため、従来のCFMモードにおいて、高性能の部品
を使用することにより装置の基本性能を向上させると共
に、以下に示す感度向上策が検討された。
【0016】即ち、パワーモードはその方式が近年、改
善されており、速度モードよりも感度が良い。その理由
は以下に拠る。
【0017】速度モードでは、流速が零に近い場合や超
音波ビームと直交する流れは黒で表示されるので、速度
は表示されないに等しい。一方、改善されたパワーモー
ドに拠ると、これらの血流もパワーの強さに応じて表示
される。従って、低流速検出能が高い。
【0018】また、速度モードでは、或る強さ以下の信
号は血流信号であっても、ノイズであると一律に判断さ
れて表示されない。これに対し、改善されたパワーモー
ドによれば、パワーが弱くても、輝度を下げて表示さ
れ、空間的な繋がりをみて血流か否かが判断されるの
で、感度の低い血流も検出され易い。
【0019】このように改善されたパワーモードは感度
が向上しているにも拘らず、従来のCFMモードの条件
がそのまま適用されており、その潜在的な性能を十分に
発揮するには至っていない。例えば、送信のバースト波
数は従来のままであり、空間分解能が低く、細い血管が
太く表示されたり、隣り合う血管が分離されずに表示さ
れたりして、低い診断能しか発揮できなかった。
【0020】このような状況の中で、近年、超音波造影
剤を利用した血流評価の試みが行われている。被検体の
血管に投与した超音波造影剤(以下、造影剤という)
は、超音波信号の散乱強度を増強するので、この増強効
果を利用して診断能を向上させる血流画像を得ることが
期待されている。とくに、ここ数年、造影剤の性能が著
しく向上し、造影効果が上がっていることに加え、静脈
からの投与が可能になって侵襲性が低下していることか
ら、造影剤の使用は今後益々普及するものと思われる。
これに伴い、超音波診断装置に関しても、年々改善され
る造影剤の特徴を余すところ無く活用した診断を行うこ
とができる機能を備えて欲しい、との要望がある。
【0021】この造影剤を投与した被検体の血流を従来
の超音波診断装置で観察する場合、残念ながら現状で
は、以下のような種々の問題が解決されずにいる。
【0022】造影剤は、血流信号の感度を増強させるた
めに被検体に注入される。具体的には、造影剤は体表か
ら静脈に、または、カテーテルから動脈に投与され、心
臓や大血管を通って各臓器に流入する。造影剤の主成分
は直径が約数ミクロンの微小気泡であり、血球に比較し
て散乱強度は格段に高い(例えば数十dB程度、高
い)。この造影剤の投与によって、血流信号(実際には
血管を流れる造影剤からのエコー信号)は臓器実質から
のエコー信号と比肩できる程度に大幅に増強される。こ
れにより、今まで検出が困難であった微細血管や深部血
管の検出も可能であると考えられる。
【0023】しかしながら、実際には、Bモードで表示
される血管径に比較して血流が大幅にはみ出して表示さ
れる、「ブルーミング」と呼ばれる現象の発生が報告さ
れている。図38(a)には、血管Bを描出した通常の
ドプラ速度画像の例を、また同図(b)には造影剤投与
に因りブルーミングを起こしたドプラ速度画像の例を夫
々、説明的に示す。このように、ブルーミングを起こす
と、空間分解能が著しく劣化し、診断は現状では実際
上、困難である。
【0024】ブルーミングの発生原因は次のように考え
られる。例えば、送信する超音波パルスのパルス長がバ
ースト波数M(正の整数)および送信周波数fで決ま
る長さに設定されているとする。送信回路から出力され
る時点のパルス長はM/fとなる。このパルス長の超
音波パルスがプローブを通して送受信されると、被検体
の周波数依存性減衰やプローブの帯域特性に因り、受信
パルスはその時間軸方向に、すなわち深さ方向に鈍っ
て、拡りをもってしまう。さらに、受信してから表示す
るまでの段階で、種々の処理を目的としたフィルタによ
る信号処理がなされるから、これらのフィルタ処理に因
って、受信パルス波形は一層鈍り、時間軸方向に広が
る。
【0025】これに対し、造影剤を使用しない場合、こ
の広がりはあまり生じない。この理由は以下のように考
えられる。血流信号はその強度が低く、装置のノイズレ
ベルを僅かに上回る程度の値に過ぎない。このため、受
信パルスの広がりの裾野の大部分はノイズレベル以下と
なり、このノイズレベル以上の強度を持つパルス長部分
はM/fを僅かに上回る程度か、場合によっては下回
る。表示は通常、ノイズを表示しないようにゲインを設
定して行うので、パルス波形の広がりに因る影響は画像
上では殆ど現れない。すなわち、画像上での深さ方向の
血管径は、本来の血管自体の径にパルス長M/fを加
えた本来の分解能の劣化範囲内に収まり、実使用でき
た。
【0026】しかしながら、造影剤を使用すると、画像
化する血流信号においては造影剤からの反射信号が支配
的となり、信号強度が数十dB程度、増大する。この結
果、受信パルスの時間軸方向の広がりにおける裾野の大
部分がノイズレベルを越え、ブルーミングが発生する。
このブルーミングは方位方向にも発生する。
【0027】造影剤を投与することで、微細血管の血流
をも観察することができる可能性があることは上述した
通りである。この微細血管の血流(重要な血流は、腫瘍
血流や冠動脈血流である)を観察するときに重要な要素
は、血流が流れる瞬間を取りこぼし無く検出するための
リアルタイム性の確保である。従来の装置では、この微
細血管の血流をCFMモードで観察せざるを得ないか
ら、フレーム数の不足は致命的である。CFMモードの
数フレームだけでは明らかに不足しており、血流の流れ
る瞬間を取りこぼす恐れがある。
【0028】さらに、造影剤の投与によって、CFMモ
ードの検出感度はBモード並に向上するものの、CFM
モードのパワーモードの表示ダイナミックレンジは従来
の場合、大きくても40dB程度であり、これも明らか
に不足である。このため、40dBを越える感度の信号
部分は全て40dBで飽和して表示されるから、階調性
に乏しい、平坦な感じの血流画像としか提供されない。
このように表示能に乏しいと、診断能を低下させる恐れ
もある。また、血流画像の輝度値を目視して診断する場
合、飽和部分については正確な輝度情報を提供すること
はできない。
【0029】このように、被検体に造影剤を投与して従
来装置で血流を観察する場合、上述した各種の問題や不
都合があり、結果的に、低い診断能しか発揮できず、殆
ど実用に供することができないものであった。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】以上の状況を要約する
と、従来の超音波診断装置に拠る血流の画像化は、代表
的には、以下のような状況や未解決の問題を有している
ことが分かる。
【0031】(1)従来のカラードプラ法に基づく微細
血管血流の画像化にあっては、血流信号のレベルが低い
ため、送信パルス長を長くすること、各種の空間平均処
理など、検出感度向上を重視した種々の方法を採用して
いる。しかし、これらの手法は空間分解能を犠牲にして
なされたものである。近年、装置の基本性能が向上する
と共に、改善されたパワーモードのように、空間分解能
をこれ以上犠牲にしないで、感度を向上させるモードが
出現している。CFMの速度モードよりも、改善された
パワーモードの方が感度の点で優れている。しかし、こ
のパワーモードも従来のCFMモードにおける分解能の
低さを踏襲したままである。本来、心臓の心腔内を除
き、血流像には、腫瘍診断などのように、血管の存在の
有無や走行状態を観察することが強く求められており、
そのために、より細い血管まで描出することが求められ
ている。
【0032】このような要求があるにも拘らず、依然と
して、解決策は提案されていない。例えば、このような
要求があるにも拘わらず、依然として、例えば米国特許
第4,809,249号及び同第4,928,698号
では、血流速度に基づく相互相関法(時間ドメインでの
相関)に拠って、動きのある物体をマッピングする手法
を開示している。しかしながら、相互相関法で検出でき
るのは、感度で劣る血流速度のみである。また、カラー
・ベロシティ・イメージング(Color Veloc
ity Imaging:CVI)と呼ばれる血流マッ
ピングを行う装置も開発されている。しかしながら、こ
の装置は、ショートパルス(shortpulse)と
呼ばれる波連長の短い超音波パルスを用いるとともに、
相互相関法を用いて、感度で劣る血流速度のカラーマッ
ピングを行う装置である。
【0033】これらの手法は何れも、血流などの動きの
ある物の速度を求めることを基礎としているため、低流
速の血流や微細な血流などに対する検出感度の点で難が
ある。従って、上述した血流の存在そのものを高精度に
観察・確認したいという最近の超音波診断の要求を満た
すことはできていない。
【0034】一方、近年、開発が盛んな造影剤を被検体
に投与して従来の超音波診断装置で微細血管血流を観察
しようとする手法にあっては、以下のような問題があ
る。
【0035】(2)造影剤の増強効果によって検出感度
を大幅に向上させることができるが、その一方で、血流
画像の空間分解能が著しく劣化し、診断が困難になる。
【0036】(3)観察対象が微細血管の血流である場
合、リアルタイム性が不足し、血流の重要な挙動を見落
としてしまう可能性があり、この結果、診断能が著しく
低く、診断の信頼性も低下してしまう。
【0037】(4)造影剤の増強効果によって血流の検
出感度がBモード並に向上し、CFMモードに属するパ
ワーモードにおける表示ダイナミックレンジが不足する
ことから、血流像の表示階調が飽和してしまうことがあ
る。この結果、表示の信頼性が低下し、また輝度情報が
欠落することもあり、診断能の低下を招いてしまう。
【0038】本発明は、上述した従来技術の直面してい
る状況を打破するためになされたもので、血流を観察す
る場合、空間分解能を向上させ、とくに微細な血管や血
流速度の遅い血流までも高精細に描出した血流画像を提
供することを、その1つの目的とする。
【0039】また、微細血管の血流を観察する場合であ
っても、空間分解能を向上させ且つS/Nの高い血流画
像を提供することを、別の目的とする。
【0040】さらに、被検体に造影剤を投与し、造影剤
のエコー信号に対する増強効果を利用して微細血管血流
を画像化する場合、空間分解能の向上に加え、リアルタ
イム性に優れ、且つパワーモードにおける画質を向上さ
せた血流画像を提供することを、別の目的とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る超音波診断装置は、その一形態とし
て、被検体内の同一方向に広帯域な周波数特性を有する
超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しながら画像化
したい断面をスキャンし且つその超音波パルスの反射に
伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得るスキャン
手段と、このスキャン手段によって前記断面上の各サン
プル位置に対応して収集される前記エコー信号の時間軸
方向のデータ列に動き要素の信号を抽出する所望処理を
施す処理手段と、この処理手段よって処理された信号を
2次元画像のデータに生成する生成手段と、前記2次元
画像のデータに基づく画像表示を行う表示手段とを備え
たことを基本的構成とする。
【0042】前記処理手段は、前記データ列に動き要素
又は位相の変化を抽出する所望処理を施すようにしても
よい。
【0043】好適には、前記処理手段で行う所望処理は
高域濾波又は差分処理である。
【0044】また好適には、前記2次元画像のデータ
は、前記被検体の断面内の動き要素により反射された前
記エコー信号の輝度情報又はパワー情報を表すデータ、
又は、前記被検体の断面上に在る造影剤に起因した前記
エコー信号の輝度情報又はパワー情報を表すデータであ
る。
【0045】一方、本発明に係る超音波診断方法は、そ
の一形態として、被検体内の同一方向に広帯域な周波数
特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信し
ながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パ
ルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に
得て、このスキャンによって前記断面上の各サンプル位
置に対応して収集される前記エコー信号の時間軸方向の
データ列に高域濾波処理又は差分処理を施し、この処理
された信号を2次元画像のデータに生成し、この2次元
画像データに基づく画像表示を行うことを特徴とする。
【0046】以上の構成に基づく本発明の作用の一例を
説明する。
【0047】本発明に係るイメージングモードは、「高
分解能フローモード」と呼ぶことにする。この「高分解
能フローモード」により、血液の存在の有無を表す高分
解能カラーフローマッピング像又はグレースケールフロ
ーマッピング像を、コントラストエコー法及び非コント
ラストエコー法の元で表示させることができる。
【0048】すなわち、広帯域な周波数特性を有する超
音波パルス、すなわち空間分解能の高い超音波パルスを
被検体断面に沿って同一方向に数回、送受信しながら、
その断面が走査され、ビームフォーミングされたエコー
信号が得られる。このエコー信号により形成される、ス
キャン断面上の各サンプル位置における時間方向のデー
タ列から不要なクラッタ成分(静止または殆ど静止して
いる組織などからの反射成分)が除去され、血流からの
エコー成分(造影剤からのエコー成分)が抽出される。
このエコー成分は適宜な態様のデータ(具体的には、輝
度又はパワーのデータ)に生成され、血流画像として表
示される。
【0049】このように血流画像は広帯域なエコー信号
の輝度又はパワーを表す画像として提供される。このた
め、従来の送信パルス長が長く且つ/又は血流速度を表
示するCFM血流速度画像に比べて、微細な血流や速度
が遅い血流をも確実に捕捉し、血流の存在を精細に表し
た高分解能で且つ高感度な血流画像を提供できる。これ
により、血流の検出能を向上させた、信頼性の高い血流
存在情報を提示できる。
【0050】一方、超音波パルスを広帯域に設定するの
で、生体内の周波数依存性減衰の影響に因り、深さ毎に
受信信号の帯域が変わる。そこで、深さに応じて、位相
検波の基準信号周波数が変更制御される。また、信号処
理系に挿入した帯域特性可変のフィルタの帯域特性が、
深さに応じて変更制御される。これにより、高分解能お
よび高感度化が両立される。
【0051】さらに、造影剤投与によって感度が著しく
向上することから、被検体断面上の同一方向への送受信
回数を、造影剤を投与しないときに比べて減らした場合
であっても、依然として十分な感度および画質の画像を
得ることができる。特に、血流信号を抽出する信号処理
フィルタを差分フィルタで構成すれば、最低2回の送受
信でクラッタ除去が可能である。また、1方向の送信に
対する複数方向同時受信の方式を採用したときに、その
受信方向数を増やしても、十分な感度および画質の画像
が得られる。したがって、送受信回数の低減及び/又は
同時受信方向数の増加の手法を用いることで、非常に高
いフレームレート(時間分解能)の血流画像を提供でき
る。
【0052】さらに、造影剤によって感度が著しく上が
るため、エコー信号パワー値の表示ダイナミックレンジ
も格段に広くなる。これに合わせて表示ダイナミックレ
ンジを設定することで、画像の飽和(すなわち、血流情
報の欠落)もなく、高品質な血流画像を提供できる。
【0053】造影剤からの反射エコーには、基本波と共
に高レベルの高調波が含まれる。本発明は、これら反射
波の周波数に関係無く、基本波、高調波、及び両者の混
合波の何れに対しても適用できる。
【0054】また、不要なクラッタ成分を除去するに
は、除去能力がより高い高域濾波であってもよく、リア
ルタイム性をより高くできる差分であってもよい。
【0055】また、血流からのエコー成分(造影剤から
のエコー成分)は適宜な態様の画像データに生成可能
で、それは例えば、パワーモード処理を用いたパワー画
像データであってもよく、Bモード処理を用いた輝度画
像データであってもよい。
【0056】また、造影剤が通常の診断に用いる音圧の
範囲内で崩壊したり、不規則な振動をしたりすることが
原因で反射されたエコー信号の位相が不規則に変化す
る。従って、パフュージョンのように、たとえ血流(造
影剤)が組織中で殆ど静止していても、この位相が変化
した造影剤からのエコーは、組織エコー(クラッタ)と
は異なり、高域濾波や差分処理によっても抽出される。
従って、本発明を、造影剤を投与した被検体に適用すれ
ば、従来できなかったパフュージョンの検出が基本波で
も可能で、高分解能、高感度、及びリアルタイムにパフ
ュージョン画像が得られる。
【0057】本発明に係るその他の構成及び作用効果
は、以下の発明の実施形態及び添付図面に基づく説明か
ら明らかになる。
【0058】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る各種の実施の
形態を、図面を参照して説明する。
【0059】(1)第1の実施形態 第1の実施形態に係る超音波診断装置を図1〜4及び図
39に基づき説明する。
【0060】この超音波診断装置は、造影剤を被検体の
例えば静脈に投与してコントラストエコー法を実施する
ことで血流像を得る場合に使用されるが、造影剤は必ず
しも投与しなくてもよく、非コントラストエコー法を実
施する場合にも使用される。
【0061】図1は、この超音波診断装置の概略構成を
示すブロック図である。この装置では、プローブ81に
送信系回路82および受信系回路83が併設されてお
り、受信系回路83の出力側に、高域濾波器(HPF)
又は差分器84、フローデータ処理器85、および表示
器86がこの順に設けられている。HPF又は差分器の
一方のユニット84は、周囲組織由来の信号成分を除去
して、血流からの反射信号を抽出するために設けられて
いる。
【0062】送信系回路82は、広帯域の超音波パルス
を発生させる広帯域送信パルス発生器82Aと、その超
音波パルスを遅延させてプローブ81に印加する送信ビ
ームフォーマ82Bとを備える。また、受信系回路83
は、プローブ81で検出したエコー信号を増幅するプリ
アンプ83Aと、このアンプの出力信号を遅延加算する
受信ビームフォーマ83Bとを備える。この内、広帯域
送信パルス発生器82Aおよび送信ビームフォーマ82
Bは送信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含
み、プリアンプ83Aおよび受信ビームフォーマ83B
は受信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含
む。
【0063】広帯域送信パルス発生器82Aは、従来の
CFMモードのイメージングで使用されている帯域より
も広く、従来の通常のBモード断層像を生成するために
用いる超音波パルスと同程度に広い帯域(広帯域)のパ
ルスを発生し、これを送信ビームフォーマ82Bに送
る。このため、送信ビームフォーマ82Bは、かかる広
帯域なパルスに応じてプローブ81を送信遅延法に基づ
き駆動し、プローブ81から「広帯域」な超音波パルス
を放射するようになっている。これにより、放射された
超音波パルスは被検体内でビームフォーミングされてビ
ームパルスとなる。
【0064】ここで、超音波パルスの広帯域化について
説明する。送信周波数fの逆数が送信周期Tであ
り、超音波1周期Tの時間長さを持つ超音波パルスを
バースト1波のパルス、2周期「2・T」の時間長さ
を持つ超音波パルスをバースト2波のパルス、M周期
「M・T」の時間長さを持つ超音波パルスをバースト
M波のパルスとそれぞれ呼び、1波、2波、…M波をバ
ースト波数と呼ぶ。送信周期にバースト波数を掛けた値
がパルス長に相当する。
【0065】広帯域送信パルス発生器82Aは、本発明
の特徴の1つを実施する要素であり、具体的には、送信
周波数f、バースト波数3未満である広帯域のバース
ト波数Mのパルスを発生する。以下、バースト波数「1
波」を例に説明するが、これは本発明の一般性を失うも
のではない。
【0066】この「広帯域の送受信パルス」は、必ずし
もバースト波数=3未満のパルスによってのみ限定され
るというものではない。例えば、図2に示すように時間
バースト波のエンベロープ上の半値幅ΔWと周期Tとの
比「ΔW/T」で定義してもよい。この比を用いた場
合、本発明で用いる送受信パルスは
【数3】「ΔW/T」=2.2以下 となる。また、図3に示すように、送受信パルスのスペ
クトラムの比帯域=ΔW/fc(ΔW:半値幅、fc:
スペクトラム中心周波数)で広帯域の範囲を定義しても
よい。この場合、
【数4】比帯域=ΔW/fc=0.3以上 が本発明で説明する「広帯域」に相当する。
【0067】図1に戻ると、プローブ81で受信された
送信超音波パルスの反射信号は、受信チャンネル毎に電
気量のエコー信号として、受信系回路83のプリアンプ
83Aを介して受信ビームフォーマ83Bに入力する。
このビームフォーマ83Bでは送信時と同様にエコー信
号に遅延加算が施され、ビームフォーミングがなされ
る。
【0068】このビームフォーミングされたエコー信号
は、HPF又は差分器の一方の回路84に入力する。差
分処理は、エコー信号列中の2データ間の単純な差分に
は限定されない。この差分処理は、周囲組織由来の信号
成分を除去できれば、どのような態様の差分であっても
よい。
【0069】本実施形態では、少なくとも2回以上、超
音波パルスが同一ラスタ方向に送受信される。そこで、
HPF又は差分器の一方のユニット84に入力するエコ
ー信号により、スキャンされる被検体内の断面上のサン
プル位置毎に時間軸方向の並ぶエコーデータ列が生成さ
れる。
【0070】このため、HPF又は差分器84はエコー
信号列に高域フィルタリング又は空間基準での差分処理
を施して、血流に相当するエコー成分を抽出する。これ
により、組織由来の成分は除去される。
【0071】なお、図4には、造影剤からの受信信号の
スペクトラムを示す。造影剤の主成分を成す微小気泡か
ら反射してきたエコー信号には非線形な振動特性に因り
高調波、分調波、超調波などが含まれる。したがって、
受信信号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線形信号
帯域をも含むように設定されている。
【0072】このように、コントラストエコー法を実行
したときには、造影剤由来のエコー成分がフローデータ
処理器85に入力する。この処理器85では、入力した
エコー成分の信号が造影剤エコーの輝度又はパワー情報
の画像データに処理される。なお、非コントラストエコ
ー法が実行されたときには、フローデータ処理器85に
より、エコー成分の信号が血流エコーの輝度又はパワー
情報の画像データに処理される。この画像データは表示
器86により、血流の存在位置を表す血流画像として表
示される。
【0073】以上のように、B−モード又はパワーモー
ド(カラーモード)の血流画像を表示することができ
る。この高分解能フロー画像として表示される血流画像
の一例を説明的に図39(b)に示す(同図(a)に
は、比較のために従来法に拠るドプラ速度画像の例を説
明的に示す)。
【0074】この血流画像を得るに際し、広帯域の超音
波パルスが送信されるので、空間分解能の高いグレース
ケールフロー画像又は高分解能カラー画像が得られる。
また、スキャン断面の空間上のサンプル点毎にハイパス
フィルタリング又は差分処理が行われるので、不要な生
体組織エコーが除去され、造影剤(すなわち血流)由来
のエコー信号(又は、血流由来の直接のエコー信号)が
確実に抽出される。
【0075】また、この超音波診断装置は、血流画像を
得るために従来のCFM(カラーフローマッピング)法
のような、ドプラ法に拠る血流速度を求めるという手法
は採用していない。その代わりに、同一方向に複数回ス
キャンすることで受信したエコー信号をハイパスフィル
タリング又は差分処理することで血流エコー信号を確実
に抽出し、組織エコー信号を排除し、さらに、抽出され
た血流エコー信号は、従来のCFMモードのように速度
分布の演算に付されることなく、輝度又はパワー情報に
処理され、輝度又はパワー情報を血流画像として表示し
ている。このため、ドプラ法に拠り血流速度分布を求め
る場合(図39(a)参照)に比べて、速度が遅い血流
や微細な血流もより感度良く検出することができる。し
たがって、表示された血流画像の血流B(図39(b)
参照)の有無に対する描出能は、血流速度分布に拠る描
出能よりも優れたものとなる。
【0076】この描出能向上の効果は、造影剤を投与し
ない非コントラストエコー法を実施する場合でも得られ
ることから、完全な非侵襲性と相俟って、細い血管を可
視化する上で極めて有益である。
【0077】また、ハイパスフィルタリング又は差分処
理を行うことで血流エコー信号を確実に抽出しているの
で、Bモード画像でもその画像の特徴を活かした血流イ
メージングが可能である。
【0078】(2)第2の実施形態 図5に基づき、第2の実施形態に係る超音波診断装置を
説明する。この超音波診断装置は、コントラストエコー
法又は非コントラストエコー法に基づき使用される装置
で、とくに、帯域可変フィルタの使用に関する。
【0079】図5に示す如く、受信ビームフォーマ83
BとHPF又は差分器84との間に、フィルタ手段とし
ての帯域可変フィルタ87が介挿されている。帯域可変
フィルタ87の通過帯域は周波数帯域設定器88により
制御される。
【0080】帯域可変フィルタ87は、受信ビームフォ
ーミングされた走査線(ラスタ)の深さ毎に、通過する
エコー信号に対して所望の通過特性を設定する。これに
より、信号帯域外のノイズを除去し、S/Nを向上でき
る。また、深さ方向の信号減衰及び帯域変化の影響を補
正したエコー信号が得られる。さらに、高感度な基本
波、アーチファクトの少ない高調波、又は両者の混合波
などを選択でき、状況に応じて最適な受信周波数を選択
できる。
【0081】帯域可変フィルタ87としては、RF信号
を帯域ろ波するフィルタ、中間周波信号を帯域ろ波する
フィルタ、直交位相検波後の信号を低域ろ波するフィル
タなどを採用できる。中間周波方式または直交位相検波
方式を採用する場合、基準周波数(リファレンス周波
数)とフィルタ帯域幅が各ラスタ方向の深さに応じて変
更される。
【0082】その他の構成は第1の実施形態の装置と同
等である。
【0083】このため、前述した第1の実施形態に係る
作用効果に加えて、S/Nの向上を確実化せしめ、各走
査線の深さ方向における帯域変化及び信号減衰の影響を
確実に補正でき、さらに、感度向上・アーチファクトの
影響低減を最適化させた血流画像が得られる。
【0084】(3)第3の実施形態 図6に基づき、第3の実施形態に係る超音波診断装置を
説明する。この超音波診断装置は、コントラストエコー
法又は非コントラストエコー法に基づき選択的に使用す
るときの送受信特性の切換に関する。
【0085】図6に示す如く、図5の構成に加え、エコ
ー法切換スイッチ91、送信回数設定器92、及び方向
数設定器93が追加的に設けられている。
【0086】エコー法切替スイッチ91は、コントラス
トエコー法及び非コントラストエコー法との間の切替を
例えば手動で指令するスイッチであり、そのスイッチ信
号は方向数設定器93および送信回数設定器92に与え
られる。
【0087】方向数設定器93は、並列同時受信の方向
数を設定するために搭載されており、その設定信号を送
信系回路82及び受信系回路83に送る。送信回数設定
器92は、送信時における同一方向への超音波パルスの
送信回数を設定するために搭載されており、その設定信
号を送信系回路82及び受信系回路83に送る。
【0088】受信の方向数設定器93はかかるスイッチ
情報に応じて、すなわちコントラストエコー法であるの
か、または、非コントラストエコー法であるのかに応じ
て、異なる並列同時受信数を自動的に切替設定する。ま
た、送信回数設定器92はかかるスイッチ情報に応じ
て、すなわちコントラストエコー法であるのか、また
は、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異な
る同一方向の送信回数を自動的に切替設定する。
【0089】具体的な切替数としては、エコー法切替ス
イッチ91からコントラストエコー法が指令されたとき
には、非コントラストエコー法のときよりも並列同時受
信数が増やされる一方で、同一ラスタ方向の送信回数は
減らされる。
【0090】送信系回路82にはまた、上述のようにコ
ントラストエコー法か非コントラストエコー法かに応じ
て異なる並列同時受信数を示す情報、及び、送信回数設
定器92からの送信時の同一方向への送信回数を示す情
報が与えられている。これにより、送信系回路82は広
帯域の超音波パルスを同一ラスタ方向に指定回数分、繰
り替えて送信する。一方、受信系回路83は、指定され
た並列同時受信数分の同時受信を行う。
【0091】このため、前述した第1及び第2の実施形
態の作用効果に加え、とくに、以下のような効果が得ら
れる。
【0092】第1に、並列同時受信による効果がある。
すなわち、被検体に造影剤を投与してスキャンする場
合、前述したように、検出感度は通常、数十dB程度、
増強されるので、送信ビームを広げて並列同時受信数を
増加させても検出感度は十分に確保される。そこで、方
向数設定器93は、コントラストエコー法が指令された
ときには、非コントラストエコー法のときよりも並列同
時受信数を増やす。これにより、フレーム数(すなわち
時間分解能)が格段に上がり、血流画像を高い時間分解
能で得ることができる。
【0093】また、送信時の同一方向送信回数の制御に
拠る効果がある。血流エコー信号の強度は低いので、ノ
イズの影響を受け易い。この影響を減らすため、血流エ
コー信号の検出時には、通常、例えば、同一ラスタ方向
に16回、超音波パルスを送受信して同じ信号源(スキ
ャン断面上のサンプル位置)について時系列方向に並ぶ
複数個のデータから成るデータ列を検出し、このデータ
列からハイパスフィルタリング又は差分処理により血流
エコー信号を抽出している。ところが、コントラストエ
コー法を実施する場合、血流からの検出感度が数十dB
程度、増強されるので、S/Nが大幅に良くなって、血
流エコー信号はノイズの影響を殆ど受けなくなる。つま
り、同一ラスタ方向への超音波パルスの送信回数を減ら
しても、高S/Nの安定した血流信号が得られる。そこ
で、コントラストエコー法が指令されたときには、送信
回数設定器92より、同一ラスタ方向の送信回数は減ら
される。送信回数を減少させることにより、単位時間あ
たりのフレーム数(時間分解能に相当)が多くなり、リ
アルタイム性の高い血流像を提供することができる。
【0094】さらに、本実施形態では、上述した並列同
時受信の方向数増加及び同一ラスタ方向の送信回数低減
の両手法を併用しているので、リアルタイム性向上の効
果は極めて高いものになる。なお、必要に応じて、上述
した並列同時受信方向数増加及び同一ラスタ方向の送信
回数低減の内、一方のみを採用する構成を採ってもよ
い。また、この両手法を前述した第1の実施形態の装置
に適用してもよい。
【0095】(4)第4の実施形態 図7に基づき、第4の実施形態に係る超音波診断装置を
説明する。この超音波診断装置は、本発明に係る高分解
能フローモードと従来から使用されている通常のBモー
ド又はCFMモードとの切替制御に関する。
【0096】図7に示す如く、フローデータ処理器85
と表示器86に間に画像データを選択するための選択器
95が設けられる。その一方で受信系回路83の出力端
から、帯域可変フィルタ87、HPF又は差分器84、
及びフローデータ処理器85に、Bモード及び/又はC
FMモードの処理系回路96が併設されている。このた
め、選択器95は、Bモード及び/又はCFMモードの
処理系回路96からの画像データ、又は、高分解能フロ
ーモード側のフローデータ処理器85からの画像データ
の何れかを選択して表示器86に送る。
【0097】スイッチ97は、オペレータがモード切替
を例えば手動で切り替えるための手段を成す。このスイ
ッチ信号はモード切替コントローラ98に送られる。コ
ントローラ98は、指令モードに応じて、送信系回路8
2、受信系回路83、帯域可変フィルタ87、HPF又
は差分器84及びフローデータ処理器85に拠る高分解
能フロー処理部、選択器95、及びBモード及び/又は
CFMモードの処理系回路96に切替指令を出す。
【0098】なお、処理系回路96がBモード用回路で
ある場合、図示しない制御回路による送受信制御機能に
よって、処理系回路96に送るエコー信号は、各ラスタ
当たり1回の超音波パルスの送受信により生成される。
【0099】この結果、オペレータは、血流画像の表示
モードを、高分解能フローモードと従来のBモード及び
/又はCFMモードとの間で自在に切り替えることがで
きる。したがって、同じ血流を多角的に観察することで
き、診断の確実性に寄与可能になるとともに、装置の汎
用性も高くなる。
【0100】(5)第5の実施形態 図8及び図39に基づき、第8の実施形態に係る超音波
診断装置を説明する。この超音波診断装置は、本発明に
係る高分解能フローモードと従来から使用されている通
常のBモードとの合成表示に関する。
【0101】図8に示す如く、帯域可変フィルタ87、
HPF又は差分器84及びフローデータ処理器85に拠
る高分解能フロー処理部にBモード処理系回路96Aが
併設されている。この高分解能フロー処理部の最終段の
処理器85とBモード処理系回路96Aとの出力は、画
像データを画素毎に合成する合成器99を介して表示器
86に至る。
【0102】なお、図示しない制御回路による送受信の
制御機能によって、Bモード処理系96Aに送るエコー
信号は各ラスタ当たり1回の超音波パルスの送受信によ
り生成される。
【0103】この結果、合成器99により、図39
(b)に説明的に示す如く、Bモード断層像に高分解能
フローモードの血流画像が重畳されて表示される(図3
9(a)には、比較のため、従来のドプラ速度画像を説
明的に例示する)。血流速度が遅くても、また径が細い
血流であっても、高感度に検出される。このため、Bモ
ード断層像が背景画像となって、血流の位置を認識し易
い高分解能の血流画像が提供される。
【0104】(6)第6の実施形態 図9に基づき、第6の実施形態に係る超音波診断装置を
説明する。この超音波診断装置は、本発明に係る「高分
解能フローモード」に基づき「高分解能カラー」と呼ば
れる血流画像を得る機能を有する。この超音波診断装置
は、コントラストエコー法及び非コントラストエコー法
の何れでも実施される。
【0105】この超音波診断装置は、図9に示す如く、
受信系回路83の出力側に、HPF84及びフローデー
タ処理器85から成る高分解能フローモードを実現する
回路と、Bモード処理系回路96Aとが併設されてい
る。両回路は更に合成器99を介して表示器86に至
る。合成器99には、血流像と形態画像との表示バラン
ス(合成バランス)を制御するためのバランス制御器1
00及びスイッチ101が接続されている。
【0106】この内、フローデータ処理器85は、CF
Mモードにおけるパワー演算と同じか又はそれに準じる
レベルのパワー演算を行うとともに、パワー値に応じた
輝度を有するカラーデータにコーディングする。
【0107】また、合成器99は、高分解能カラーモー
ド処理回路の出力であるフローデータ処理器85の出力
とBモード処理系回路96Aの出力とを合成して1つの
画像データに生成する。
【0108】バランス制御器100は、スイッチ101
からの例えば手動操作信号を受ける。この信号に応じ
て、制御器100は、Bモード画像データ及び血流画像
データの合成の仕方を調整できるようになっている。
【0109】このため、高分解能フローモード時に受信
系回路83から送られてきたエコー信号はHPF84で
ハイパスフィルタリングを受け、血流又は造影剤に由来
したエコー信号として抽出される。フローデータ処理器
85はそのエコー信号を入力して、信号のパワー値を演
算するとともに、そのパワー値に応じた輝度を有するカ
ラー画像データを生成する。このカラー画像データは合
成器99に送られる。
【0110】一方、Bモード時に受信系回路83から送
られてきたエコー信号はBモード処理系回路96Aによ
り、信号強度に応じた輝度値で成るグレイスケールのB
モード画像デーが生成される。このBモード画像データ
も合成器99に送られる。
【0111】この合成器99によって、Bモード画像に
血流画像が重畳されるように、画像データの合成が画素
毎に行われる。具体的には、Bモード画像データ又は血
流画像データの何れか一方しか存在しない画素について
は、その存在する画素のデータが採用される。一方、両
画像のデータが共に存在する画素については、2つの合
成法を選択的に用いることができる。1つの合成法は、
血流画像の画素データを優先して採用する手法である。
この合成法を用いると、断層像上に血流画像が洩れなく
表示される。もう1つの合成法は、血流画像とBモード
画像との画素値の混合割合を調整しながら合成する手法
である。この合成法により、断層像を透かして見ながら
血流画像を洩れなく表示することができる。
【0112】両合成法は、例えば、両合成法の間で連続
的に切り替えられることが望ましい。即ち、混合合成法
において血流画像の混合比を100%に設定した状態
が、前者の血流画像を優先する合成法に相当する。スイ
ッチ101からの設定状態に応じて、バランス制御器1
00は、この混合割合を調整する。
【0113】この合成像のデータは表示器86に送ら
れ、表示される。この結果、Bモード画像を背景とし
て、これに血流画像が重畳した画像が殆どリアルタイム
に表示される。つまり、形態情報であるBモード画像上
に血流画像が重なって表示される。
【0114】そこで、オペレータは表示器86に表示さ
れた画像を見ながら、スイッチ101を適宜に操作する
ことができる。これにより、Bモード画像と血流画像と
の合成バランスを相対的に変えて、例えば関心部位の画
像上での確認を容易に行うことができる。
【0115】なお、上述の超音波診断装置は、本発明に
係る「高分解能フローモード」に基づき「グレースケー
ルフロー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有すること
もできる。その場合には、フローデータ処理器85に、
上述した構成に代えて、Bモードの輝度演算と同じか又
はそれに準じるレベルの輝度演算を行う構成を備えれば
よい。これによって、コントラストエコー法又は非コン
トラストエコー法の実施状態において、通常のBモード
像を背景とし、これに「高分解能フローモード」の輝度
情報に拠る血流画像を重畳させて表示できる。このとき
も、スイッチ101を操作することで合成器99での混
合比を調整でき、Bモード画像である背景像と輝度情報
から成る血流画像の合成バランスを相対的にコントロー
ルすることができる。
【0116】(7)第7の実施形態 図10に基づき、第7の実施形態に係る超音波診断装置
を説明する。この超音波診断装置は、第6の実施形態と
同様に、本発明に係る「高分解能フローモード」に基づ
き「高分解能カラー」と呼ばれる血流画像を得る機能を
有する。この超音波診断装置は、コントラストエコー法
及び非コントラストエコー法の何れでも実施される。
【0117】この超音波診断装置は、図10に示す如
く、受信系回路83の出力側に、差分器84及びフロー
データ処理器85から成る高分解能フローモードを実現
する回路と、Bモード処理系回路96Aとが併設されて
いる。その他の回路要素は前述した図9のものと同等で
ある。
【0118】したがって、本実施形態においても、高分
解能フローモード時に受信系回路83から送られてきた
エコー信号は差分器84で差分演算を受け、血流又は造
影剤に由来したエコー信号として抽出される。フローデ
ータ処理器85はそのエコー信号を入力して、信号のパ
ワー値を演算するとともに、そのパワー値に応じた輝度
を有するカラー画像データを生成する。このカラー画像
データは合成器99に送られる。
【0119】一方、Bモード時に受信系回路83から送
られてきたエコー信号はBモード処理系回路96Aによ
り、信号強度に応じた輝度値で成るグレイスケールのB
モード画像デーが生成される。このBモード画像データ
も合成器99に送られる。
【0120】この合成器99により、Bモード画像に血
流画像が重畳されるように、画像データの合成が画素毎
に行われる。具体的には、Bモード画像データ又は血流
画像データの何れか一方しか存在しない画素について
は、その存在する画素のデータが採用される。一方、両
画像のデータが共に存在する画素については、2つの合
成法を選択的に用いることができる。1つの合成法は、
血流画像の画素データを優先して採用する手法である。
この合成法を用いると、断層像上に血流画像が洩れなく
表示される。もう1つの合成法は、血流画像とBモード
画像との画素値の混合割合を調整しながら合成する手法
である。この合成法により、断層像を透かして見ながら
血流画像を洩れなく表示することができる。
【0121】両合成法は、例えば、両合成法の間で連続
的に切り替えられることが望ましい。即ち、混合合成法
において血流画像の混合比を100%に設定した状態
が、前者の血流画像を優先する合成法に相当する。スイ
ッチ101からの設定状態に応じて、バランス制御器1
00は、この混合割合を調整する。
【0122】この合成像のデータは表示器86に送ら
れ、表示される。この結果、Bモード画像を背景とし
て、これに血流画像が重畳した画像が殆どリアルタイム
に表示される。
【0123】このため、オペレータはスイッチ101を
適宜に操作することで、Bモード画像と血流画像との合
成バランスを相対的に変えることができる。
【0124】なお、上述の超音波診断装置は、本発明に
係る「高分解能フローモード」に基づき「グレースケー
ルフロー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有すること
もできる。その場合には、フローデータ処理器85に、
上述した構成に代えて、Bモードの輝度演算と同じか又
はそれに準じるレベルの輝度演算を行う構成を備えれば
よい。
【0125】なお、前述した第4〜第7の実施形態にお
いて、異なる種類の画像(例えばBモード又はCFMモ
ードの画像と、本発明に係る「高分解能フローモード」
の血流画像)を表示器86に表示させるときに、必ずし
もそれらを重畳する必要はない。例えば同一画面を分割
して個々に表示してもよい。また、表示器を複数台設置
して、それらの画像を個々に表示させてもよい。
【0126】(8)第8の実施形態 第8の実施形態に係る超音波診断装置を、図11〜1
5、40、及び41に基づき説明する。
【0127】この超音波診断装置は、造影剤投与下で行
うBモードまたはハーモニックBモードの診断に本発明
を適用した例に関する。
【0128】図11は、この超音波診断装置の概略構成
を示すブロック図である。この装置では、プローブ81
に送信系回路82および受信系回路83が併設されてお
り、受信系回路83の出力側に、帯域可変フィルタ10
4、差分フィルタ105、Bモード処理系回路106、
および表示器107がこの順に設けられている。
【0129】送信系回路82は、広帯域の超音波パルス
を発生させる広帯域送信パルス発生器82Aと、その超
音波パルスを遅延させてプローブ81に印加する送信ビ
ームフォーマ82Bとを備える。また、受信系回路83
は、プローブで検出したエコー信号を増幅するプリアン
プ83Aと、このアンプの出力信号を遅延加算する受信
ビームフォーマ83Bとを備える。この内、広帯域送信
パルス発生器82Aおよび送信ビームフォーマ82Bは
送信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含み、
プリアンプ83Aおよび受信ビームフォーマ83Bは受
信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含む。
【0130】送信系回路82は、詳しくは、図12に示
す回路構成になっている。すなわち、広帯域送信パルス
発生器82Aは、送信トリガ発生器191、パルス発生
器192、分周器193、およびパルス長設定器194
を備える。また、送信ビームフォーマ82Bは送信回路
195および遅延データ設定器196を備える。
【0131】送信トリガ発生器191は、図13に示す
如く、送信パルスを発生させるためのタイミング信号を
所定レート周期Tで出力する。このタイミング信号は
パルス発生器192および分周器193に与えられる。
パルス長設定器194は、広帯域の超音波パルスを送信
するためのパルス長設定信号をパルス発生器192に送
っている。
【0132】パルス発生器192は、タイミング信号お
よびパルス長設定信号に応答して送信チャンネル数分の
駆動パルスを発生し、これを送信回路195に与える。
分周器193はタイミング信号を所定周期に分周して
(図13参照;同図には1/2分周の場合を図示してい
る)、その分周信号を遅延データ設定器196に送る。
【0133】さらに、遅延データ設定器196は、例え
ば電子セクタスキャンの如くラスタ(走査線)方向を変
更するための送信チャンネル毎の遅延量データを分周信
号の入力毎(すなわち、ラスタ毎に)に発生し、これを
送信回路195の送信チャンネル毎の遅延要素に与える
(図13参照)。このため、送信回路195は、送信チ
ャンネル毎に、駆動パルスを遅延させ、その後、増幅し
てプローブ81の複数の振動子に与える。したがって、
プローブ81から被検体内に送信された超音波パルスは
遅延量データに応じた送信指向性を有する。
【0134】なお、図14には、この図12の回路構成
に対応した従来の送信系回路82´を参考のために示
す。すなわち、分周器を用いない回路となっており、パ
ルス長設定器は本発明の特徴の1つとする広帯域ではな
い所望のパルス長を設定する。また、図15には、図1
4の回路構成による動作を対比のために示す。
【0135】一方、プローブ81で受信された送信超音
波パルスの反射信号は、受信チャンネル毎に電気量のエ
コー信号として、受信系回路83のプリアンプ83Aを
介して受信ビームフォーマ83Bに入力する。このビー
ムフォーマ83Bでは送信時と同様にエコー信号に遅延
加算が施され、ビームフォーミングがなされる。
【0136】このビームフォーミングされたエコー信号
は、深さ毎に所望の特性あるいは通過帯域が設定された
帯域可変フィルタ104により、深さ毎に所望の周波数
成分が抽出される。帯域可変フィルタ104としては、
RF信号を帯域ろ波するフィルタ、中間周波信号を帯域
ろ波するフィルタ、直交位相検波後の信号を低域ろ波す
るフィルタなどを採用できる。中間周波方式または直交
位相検波方式を採用する場合、基準周波数(リファレン
ス周波数)とフィルタ帯域幅が各ラスタ方向の深さに応
じて変更される。ハーモニックBモードで画像表示する
場合、受信信号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線
形信号帯域をも含むように設定されている。
【0137】本実施形態では、少なくとも2回以上、超
音波パルスが同一ラスタ方向に送受信される。そこで、
差分フィルタ105により、これらの同一ラスタ方向に
沿った複数回の受信エコー信号について空間基準での差
分処理が行われ、造影剤由来の信号が検出される。この
信号がBモード処理系回路106を経て表示器107に
送られ、この表示器107のモニタに表示される。
【0138】なお、空間基準の差分処理は、2データ間
の単純な差分には限定されない。この差分処理は、周囲
組織由来の信号成分の除去を目的としており、2回以上
の同一ラスタ方向への送信で2個以上のデータに対する
高域ろ波処理も含まれる。
【0139】以上のように、通常のBモードまたはハー
モニックBモードの表示を行うことができ、このとき
に、広帯域の超音波パルスが送信されるので、空間分解
能の高いBモード像が得られ、かつ、帯域可変フィルタ
の帯域特性などが深さに応じて変更されるので、検出感
度も良く、S/Nも高い。また空間上の各点毎に差分処
理が行われるので、不要な生体組織エコーが除去され、
造影剤からの信号が確実に抽出される。差分処理は最低
2回の送受信で済むから、従来のCFMモード比べて高
いフレームレートを維持することができる。さらに、B
モードは本来的にダイナミックレンジが大きい。したが
って、このBモードおよびハーモニックBモードのスキ
ャンよって、高分解能、高フレームレート、および高ダ
イナミックレンジの造影剤画像、すなわち血流画像が得
られる。
【0140】とくに、造影剤を投与することで、生体組
織内のパフュージョン像を提供することもできる。図4
0(b)に、この高分解能フロー画像としての、造影剤
を用いたパフュージョン画像の例を説明的に示す(同図
(a)には、比較のため、従来のドプラ速度画像を説明
的に示す。このドプラ速度画像にはパフュージョンは殆
ど描出されない)。超音波造影剤の主成分は微小気泡で
あるので、送信超音波パルスの音圧を所定範囲内(生体
の安全基準の制限値内で)高くしていくと、微小気泡を
消失させることができる。消失する微小気泡からの反射
信号には、微小気泡(造影剤)が生体組織内に静止して
いる場合でも、それが動いている状態のときと同様の信
号成分が含まれる。したがって、超音波パルスで造影剤
を消失させるとともに、差分処理で静止している不要な
生体組織エコーを除去することで、Bモードであって
も、高分解能、高フレームレート、高ダイナミックレン
ジで生体組織内のパフュージョン像を提供することがで
きる。
【0141】造影剤の微小気泡は、送信した超音波信号
の照射エネルギによって消失する現象が知られている。
この消失時における造影剤由来の信号によるデータ間の
変化の速さを利用することで、場合によっては、クッパ
ー細胞に取り込まれ且つ臓器に対して静止している造影
剤信号を、動きの遅い周囲組織由来の信号から弁別する
ことができる。
【0142】また、本発明に係る本実施形態において、
超音波パルスの音圧は造影剤が消失しない値に設定され
る。造影剤は、この造影剤が消失しない音圧で、不規則
な振動を起こす。このとき、同一ラスタ方向に対する複
数回の送信に対する微小気泡(造影剤)からの反射信号
の位相は、毎回異なった値になる。これは、この反射信
号が、動いている状態と同様の信号として認識されるこ
とを示す。従って、微小気泡が消失するときと同様のパ
フュージョン画像が、造影剤を消失させること無く、得
られる。また、従来では、ドプラ法に拠る血流速度画像
では得ることができなかった直交血流の検出が、この不
規則振動現象を起こさせることで可能となる。図41
(b)には、高分解能フロー画像として、超音波ビーム
に直交する血流を検出した血流画像の例を説明的に示す
(同図(a)には、比較のため、直交流を従来のドプラ
速度画像により観察した説明図を例示する)。
【0143】造影剤を消失させないので、今までのよう
な造影剤消失後の感度低下を補うための再充満を待つ必
要が無く、造影剤を用いたパフュージョン及び血流の、
本来の意味でのリアルタイム画像が得られる。また、B
モード(基本波)であっても画像化が可能であるので、
高感度な画像が得られる。
【0144】(9)第9の実施形態 本発明の第9の実施形態に係る超音波診断装置を図16
に基づき説明する。
【0145】この超音波診断装置は、被検体に造影剤を
例えば静脈から注入した状態で血流情報をイメージング
するCFM(カラーフローマッピング)モードの診断に
供される。造影剤としては、例えば、Levovist
やOptison(商品名)が使用される。
【0146】図16に、この超音波診断装置の機能ブロ
ック図を示す。なお、この超音波診断装置は、本発明に
係る各種の特徴のいくつかを具体化するときの概要構成
として示すもので、その特徴の詳細は第10の実施形態
にて説明される。
【0147】同図に示すように、この超音波診断装置
は、被検体の体表に当接させて使用する超音波プローブ
(以下、プローブという)1を備える一方で、このプロ
ーブ1に電気的に接続された送信系回路2および受信系
回路3と、この受信系回路3に電気的に接続されたBモ
ード処理系回路4およびCFMモード処理系回路5と、
この両処理系回路4、5に電気的に接続された表示系回
路6とを備える。
【0148】プローブ1は、超音波信号と電気信号の間
で双方向に信号変換する機能を有する。このプローブ1
は、一例として、その先端にリニアに配置されたアレイ
型圧電振動子を備える。アレイ型振動子は複数の圧電素
子を並列に配置し、その配置方向を走査方向としたもの
で、複数の圧電素子それぞれが送受信の各チャンネルを
成す。
【0149】送信系回路2は、広帯域な送信用パルスを
発生させる広帯域送信パルス発生器2Aと、その送信用
パルスを遅延制御するとともに駆動パルス信号に変換し
てプローブ1の送信チャンネル毎の振動子を励振する送
信ビームフォーマ2Bとを備える。これにより、プロー
ブ1から被検体内に送信される超音波パルスは、例えば
バースト波数が3未満の広帯域を有する。したがって、
プローブ1を介して、広帯域な超音波パルスで送受信が
行われ、このパルスを被検体の断面上の同一ラスタ方向
について少なくとも2回以上、送受信するスキャンが行
われる。広帯域な超音波パルスであるので、空間分解能
が高くなる。
【0150】プローブ1は、反射超音波パルスを電気量
の信号に変換して、これを受信系回路3に送る。受信系
回路3は、受信チャンネル毎のプリアンプ3Aと、受信
遅延加算用の受信ビームフォーマ3Bとを備え、受信し
た信号を遅延加算することで送信時と同一方向にビーム
フォーミングしたエコー信号を形成する。このエコー信
号はBモード処理系回路4およびCFMモード処理系回
路5に送られる。
【0151】Bモード処理系回路4により、超音波パル
ス送受信で得たエコー信号が検波され、Bモードの断層
像データが生成される。
【0152】これに対し、CFMモード処理系回路5
は、図16に示す如く、その入力側から位相検波器5
A、帯域可変フィルタ5B、MTIフィルタ5C、およ
び血流情報検出器5Dをこの順に備えている。
【0153】この内、位相検波器5Aはエコー信号を直
交位相検波してドプラ信号を抽出する要素である。この
直交位相検波時に用いられる基準信号の周波数は、被検
体の断面上の各ラスタ方向における位置、すなわち被検
体の体表からの深さに応じてリアルタイムに変更制御さ
れる。これにより、広帯域な超音波パルスの送受信に伴
う、生体内の周波数依存性減衰の影響が排除または大幅
に抑制される。また、帯域可変フィルタ5Bは、エコー
信号のみを濾波し、ノイズを除去するために挿入されて
いる。このフィルタ5Bの周波数帯域も、ラスタ方向の
深さに応じてリアルタイムに変更される。これにより、
ノイズが有効に除去される。このように、基準信号の周
波数およびフィルタの帯域を深さに応じて変更すること
で、送受信する超音波パルスが広帯域(高分解能)であ
っても、S/Nを向上させて検出感度を上げることがで
きる。
【0154】このノイズ除去されたドプラ信号(ドプラ
データの列)は、固定反射体に起因したクラッタと血流
ドプラ信号を含むが、その後段のMTIフィルタ5Cに
与えられる。このMTIフィルタ5Cにより、ドプラシ
フト量の違いを利用して、ドプラ信号から固定反射体に
起因したクラッタ成分が除去される。
【0155】この後、ドプラ信号(詳しくは血流ドプラ
信号)は血流情報検出器5Dに送られ、その信号の周波
数解析を通して血流の速度(平均速度)が求めらるとと
もに、血流からの反射信号のパワー、速度分布の分散な
どの血流動態の情報、いわゆる血流情報が演算される。
このパワー値を演算するときには、造影剤の投与下での
スキャンなどを考慮して、表示ダイナミックレンジを広
く設定したパワーが演算される。これにより、表示飽和
に因るパワー情報の欠落が防止される。また、この検出
器5Dでは、上述のように基準信号の周波数を変更制御
していることに対応して、速度モードで複数の折り返り
速度を演算している。この折り返り速度の演算は、後述
する第10の実施形態で詳述するように種種の態様で実
施可能である。
【0156】この血流情報は表示系回路6に送られる。
表示系回路6は、画像合成器6Aおよび表示器6Bを備
える。画像合成器6Aは、例えばBモードの断層像デー
タにCFMモードに係る血流情報を重畳し且つ折り返り
速度を併記した状態の画像データを作成し、これを表示
器6Bに表示させる。
【0157】(10)第10の実施形態 本発明の第10の実施形態に係る超音波診断装置を図1
7〜36に基づき説明する。この実施形態では、上述し
た第9の実施形態に係る超音波診断装置の構成をさらに
具体化して説明する。この装置による全体動作の流れ
は、第9の実施形態のものと同様である。
【0158】10.1.装置構成の概要 最初に、この超音波診断装置の構成の概要を説明する。
図17に示す超音波診断装置は、第1の実施形態の装置
と同様に全体的には、プローブ11、送信系回路12、
受信系回路13、Bモード処理系回路14、CFMモー
ド処理系回路15、および表示系回路16を備える一方
で、オペレータが必要な情報を入力するための操作パネ
ル17、および、その操作情報を取り込んで対応する制
御情報を生成して、この情報を装置内の必要なユニット
に送る制御装置18を備える。制御装置18はCPUを
備えており、ソフトウエア的に与えられた各種の演算を
行う。なお、制御装置18は、論理回路などのデジタル
回路を中心に構成してもよい。
【0159】10.2.各部の構成および動作 プローブ11は、第9の実施形態で説明したものと同様
に、一例として、アレイ形振動子を用いた電子セクタス
キャン用の構造を有している。
【0160】10.2.1.送信系の構成および動作 送信系回路12は、図17に示す如く、送信トリガ発生
器21、パルス発生器22、送信回路23を送信経路に
沿ってこの順に備えるとともに、パルス長設定器24、
並列同時受信時の方向数設定器25、同一方向に対する
送信回数設定器26、および、エコー法切替スイッチ2
7を備える。
【0161】これらの要素の動作概要を説明する。ま
ず、送信トリガ発生器21は、送信トリガを発生する。
パルス発生器22は、その送信トリガを受けて送信パル
スを発生する。さらに送信回路23は、その送信パルス
を駆動パルスに変換してプローブ1の各振動子に与え
る。一方、パルス長設定器24は、パルス長を設定する
ために搭載されており、その設定信号をパルス発生器2
2およびCFMモード処理系回路15に送る。方向数設
定器25は、並列同時受信の方向数を設定するために搭
載されており、その設定信号を送信回路23、受信系回
路13、Bモード処理系回路14、およびCFMモード
処理系回路15に送る。送信回数設定器26は、送信時
における同一方向への超音波パルスの送信回数を設定す
るために搭載されており、その設定信号を送信回路2
3、受信系回路13、およびCFMモード処理系回路1
5に送る。さらに、エコー法切替スイッチ27は、コン
トラストエコー法および非コントラストエコー法との間
の切替を指令するスイッチであり、そのスイッチ信号は
方向数設定器25および送信回数設定器26に与えられ
る。
【0162】これらの要素の構成および動作を更に詳述
する。
【0163】送信トリガ発生器21は、超音波送信間隔
(レート周期)Τで送信トリガ信号Strgを発生し
(図19参照)、この送信トリガ信号Strgを後段の
パルス発生器22に送って同発生器にトリガをかける。
【0164】パルス長設定器24は、パルス長を決める
パラメータである送信周波数fおよびバースト波数M
の情報をパルス発生器22に与える。
【0165】パルス発生器22は、図18に示す如く、
パルス長演算器221、カウンタ222、D型フリップ
フロップ(D−F/F)223、およびインバータ22
4、225を備える。この内、パルス長演算器221
は、パルス長設定器24が与える送信周波数f(=1
/T)およびバースト波数M、さらには図示しない基
準クロック発生器から与えられる基準クロック周期T
を入力する。そして、この演算器221は、「M・T
/T」の演算を行なって基準クロックで換算したパル
ス長を演算して、そのパルス長を表すパルス長信号S
lngを出力するとともに、パルス長設定信号Sset
を出力する。
【0166】カウンタ222は、それらパルス長信号S
lngおよびパルス長設定信号S etを入力するとと
もに、図示しない基準クロック発生器から基準クロック
パルスPckを、さらに前述した送信トリガ発生器21
から送信トリガ信号Strgをインバータ224を介し
て負論理で入力している。また、このカウンタ222の
出力パルスSoutはインバータ225を介してD−F
/F223の負論理のクリヤ端子に与えられ、かつ送信
トリガ信号Strgがインバータ224を介してクロッ
ク端子に与えられている。
【0167】このため、送信トリガ信号Strgがオン
ときは、カウンタ222はクリヤされ、その出力信号S
outはオフである。D−F/F223の出力パルス、
すなわちパルス発生器22の出力Splsはイニシャル
状態ではオフになっている。送信トリガ信号Strg
オンからオフに立ち下がると、その立ち下がりに応答し
てカウンタ222による基準クロックパルスPckの計
測が開始され、同時にD−F/F223がセットされ
る。カウンタ222が「M・T/T」分の基準クロ
ックパルスPckをカウントするまでは、その出力パル
スSoutがオフを維持し、その維持の間、D−F/F
223のセット状態(パルス発生器22の出力Spls
のオン)も維持される。
【0168】そして、カウンタ222が「M・T/T
」分の基準クロックパルスPckをカウントし終わる
と、その出力パルスSoutがオン状態になる。このオ
ンに付勢されて、D−F/F223がクリアされる。つ
まり、パルス発生器22の出力Splsもオフになる。
したがって、カウンタ222の計測期間M・Tに相当
するパルスSplsがパルス発生器22から送信回路2
3に出力される。
【0169】このように、パルス発生器22は、送信周
波数f、バースト波数1波(この場合は、「M・T
/T」においてM=1とする)の電気信号パルスS
plsをレート周期Τで発生する(図19参照)。こ
のパルスSplsは送信回路23に与えられる。
【0170】一方、エコー法切替スイッチ27には、超
音波イメージングをコントラストエコー法で行うのか、
非コントラストエコー法で行うのかの設定が例えばオペ
レータにより手動でなされている。この設定されたスイ
ッチ情報は、上記両設定器25および26に与えられて
いる。
【0171】そこで、受信方向数設定器25はかかるス
イッチ情報に応じて、すなわちコントラストエコー法で
あるのか、または、非コントラストエコー法であるのか
に応じて、異なる並列同時受信数を自動的に切替設定す
る。また送信回数設定器26はかかるスイッチ情報に応
じて、すなわちコントラストエコー法であるのか、また
は、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異な
る同一方向の送信回数を自動的に切替設定する。つま
り、超音波造影剤を使用するか否かに応じてエコー法切
替スイッチ27を操作することで、並列同時受信数およ
び同一方向送信回数を切り替えることができる。
【0172】送信回路23にはまた、上述のようにコン
トラストエコー法か非コントラストエコー法かに応じて
切替可能な、受信方向数設定器25からの並列同時受信
数を示す情報および送信回数設定器26かの送信時の同
一方向への送信回数を示す情報が与えられている。
【0173】そこで、送信回路23は、パルス発生器2
2から与えられたパルスSplsを増幅して駆動パルス
を生成する一方で、その駆動パルスの遅延時間を並列同
時受信のビーム数およびビーム位置を加味した遅延時間
パターンで送信チャンネル毎に制御する。これにより、
送信回路23から、所望数の並列同時受信に対する遅延
制御がなされた所望パルス長(送信周波数f、バース
ト波数=1)の駆動パルスがレート周期Tでプローブ
11の各圧電振動子に繰返し供給される。
【0174】プローブ11は、送信回路23から供給さ
れる電気量の駆動パルスを超音波パルスに変換し、これ
を被検体内に送信させる。この送信はレート周期T
に繰り返される。この繰り返しを行う中で、同一のラス
タ方向について、指定された回数分の送信が同一ラスタ
方向について行われる。この送信された超音波パルスの
ビームは、所望数の並列同時受信の受信ビームをカバー
するようにそのビーム開口が広げられる。
【0175】Bモードの送信の場合、送信回路23によ
り、並列同時受信に拠る遅延時間制御の状態で、超音波
送受信毎に各圧電振動子に与える駆動パルスの遅延時間
を少しずつ変化させる。これにより、被検体の断面がB
モード用にスキャンされる。一方、CFMモードの送信
の場合、送信回路23により、並列同時受信に拠る遅延
時間制御の状態で、各圧電振動子に同一の遅延時間の駆
動パルスを同一送信方向数N回(例えば16回)繰返し
供給する。これにより、プローブ11から超音波パルス
が同一ラスタ方向についてN回繰返し送信される。次
に、その遅延時間制御の状態を維持したまま、各圧電振
動子に与える駆動パルスの遅延時間を少し変化させ、同
様の繰返し送信を行う。これにより、被検体の断面がス
キャンされる。BモードおよびCFMモードの各1フレ
ーム分のパルス送信の順番は適宜に、例えば交互に行わ
れる。また、送信周波数fおよび/または設定電圧
(送信音圧に相当)はCFMモードおよびBモードで別
々に設定してもよく、通常、そのようにモード別にマッ
チした送信条件が与えられる。
【0176】このように送信された超音波パルスは被検
体内部を伝播し、音響インピーダンスの異なる境界面で
その一部が反射してエコー信号になる。このエコー信号
の一部または全部はプローブ11の1つまたは複数の振
動子で受信され、対応する電気量のエコー信号に変換さ
れる。
【0177】10.2.2.受信側の構成および動作 続いて、受信系回路13、Bモード処理系回路14、C
FMモード処理系回路15および表示系回路16につい
て説明する。
【0178】プローブ11の振動子には、送信系回路1
2と並列に、受信系回路13が接続されている。この受
信系回路13の出力側にはさらにBモード処理系回路1
4およびCFMモード処理系回路15が併設され、この
両モードの出力側に表示系回路16が接続されている。
【0179】受信系回路13は、プローブの各振動子に
電気的に接続された複数の受信チャンネルの信号処理系
を有する。この受信チャンネルのそれぞれの信号処理系
の入力側にはプリアンプ31a(…31n)が挿入さ
れ、各プリアンプ31a(…31n)の後段にA/D変
換器32a(…32n)、デジタルタイプの受信遅延回
路33a(…33n)がこの順に挿入されている。受信
遅延回路33a…33nの遅延出力は、デジタルタイプ
の加算器34で加算される。
【0180】受信遅延回路33a〜33nおよび加算器
34には、前述した方向数設定器25からの並列同時受
信の方向数および送信回数設定器26からの送信時の同
一方向への送信回数がエコー法の種類毎の指定値として
与えられている。
【0181】プローブ11が受信したエコー信号は、対
応する電気量のアナログ信号として受信チャンネル毎に
受信系回路13に取り込まれる。このエコー信号は受信
チャンネル毎に増幅された後、デジタル量のエコー信号
に変換される。このエコー信号は、受信遅延回路33a
〜33nにより、送信時と逆の遅延時間パターンに並列
同時受信数Lに応じた異なるL種類の遅延時間パターン
を加えたトータルの遅延時間パターンから決まる遅延時
間を用いて受信チャンネル毎に並列に遅延制御される。
遅延制御された各エコー信号は、加算器34により、指
定された並列同時受信数Lを形成する信号毎に同時に並
行して加算される。これにより、複数の受信ビームに
は、送信時とほぼ同じだが僅かに方向が異なるL種類の
受信指向性が与えられ、並列同時受信が行われる。この
並列同時受信数は、エコー法の種類(コントラストエコ
ー法か非コントラストエコー法か)に応じて変更され
る。また、そのエコー法の種類に応じて同一ビーム(ラ
スタ)方向への送信回数も変更されるので、これに対応
して、同一の受信方向に対する受信遅延加算も変更制御
される。
【0182】以下、説明を簡潔にするため、並列同時受
信(受信数L)に関する動作は説明せず、1つの受信ビ
ーム方向の動作についてのみ説明するが、他のL−1方
向についても全く同じ動作が時間的に並列に行われるだ
けである。
【0183】10.2.2.1.Bモード処理系の構成
および動作 Bモード処理系回路14は、ここではデジタル信号を処
理するデジタルタイプの回路群から成り、受信回路13
から供給されたデジタル量のエコー信号からBモードの
画像データを生成する機能を有する。
【0184】この回路14の詳細は図示しないが、対数
増幅器、包絡線検波器を有する。この回路14では、エ
コー信号はまず対数増幅器で対数的に増幅され、その対
数増幅器の出力信号の包絡線が包絡線検波回路で検波さ
れる。この検波信号は断層像データとして表示系回路1
6のDSCのフレームメモリに送られる。この動作は、
並列同時受信ビームのそれぞれに対応して実行される。
【0185】10.2.2.2.CFMモード処理系の
構成および動作 またCFMモード処理系回路15は、CFMモードで血
流動態を観測する画像データの作成を担う回路群であ
り、デジタル信号の状態で各種の処理を行うデジタルタ
イプの回路群により構成されている。
【0186】このCFMモード処理系回路15は、その
入力側から2系統に信号処理系(2チャンネルa,b)
が分岐し、その各系統にミキサ41a(41b)、LP
F42a(42b)、帯域可変フィルタ43a(43
b)、バッファメモリ44a(44b)、およびMTI
フィルタ45a(45b)をこの順に挿入してある。M
TIフィルタ45a,45bの出力側は演算回路46を
介して表示系回路16に至る。
【0187】この内、ミキサ41a,41bには基準信
号発生器47およびπ/2位相器48が接続されてい
る。また、バッファメモリ44a,44bにはそのデー
タ書込みおよび読出し用のアドレスカウンタ49,50
が接続されている。
【0188】さらに、このCFM処理系回路15には、
後述する動作を行う、基準信号周波数設定器51、時間
(深さ)カウンタ52、および周波数帯域設定器53を
備えられている。
【0189】前述したパルス長設定器24から出力され
たパルス長設定信号は、基準信号周波数設定器51およ
び周波数帯域設定器53に与えられる。この内、基準信
号周波数設定器51が後述するように設定した信号は、
基準信号発生器47および演算回路46に供給される。
周波数帯域設定器53が後述するように設定した信号
は、帯域可変フィルタ43a,43bに供給される。
【0190】また、送信トリガ発生器21が発生した送
信トリガ信号Strgは時間(深さ)カウンタ52に与
えられる。このカウンタ52が後述するようにカウント
したカウント値に相当する信号は、基準信号周波数発生
器51、周波数帯域設定器53、および演算回路46に
与えられる。
【0191】なお、基準信号周波数設定器51および時
間(深さ)カウンタ52が発生した信号は後述する表示
系回路16にも供給され、画面表示に供される。
【0192】以下、このCFMモード処理系回路15の
具体的動作を、この回路で実施される信号処理の特徴を
中心に説明する。この特徴は、本発明のいくつかの態様
を実施して得られるもので、前述した広帯域送信を行っ
た場合でも、被検体の体表面からの深さに応じた信号処
理を行って良好なS/Nを維持することである。
【0193】被検体内に送信された超音波パルスは、そ
の内部を伝搬する間に減衰する。この減衰の程度は、伝
搬距離が大きくなるほど大きくなるので、生体内の深い
サンプル点(深さ位置)ほど信号強度(信号感度)は弱
くなる。また、この伝搬は周波数特性もあり、同じ深さ
であっても超音波の周波数が高いほど、減衰も大きくな
る。つまり、周波数に依存した減衰特性(周波数依存性
減衰)を示す。
【0194】これを従来の狭帯域送信と比較して説明す
る。従来のようにバースト波が3波以上の狭帯域送信の
場合の送信パルス波形を図20(a)に示す。送信周波
数はfであり、被検体の減衰特性を合わせて示してあ
る。この狭帯域の超音波パルスで送信したときの受信パ
ルス波形を、深さをパラメータとして同図(b)にそれ
ぞれ示す。超音波パルスは深さに応じて減衰するので、
より深い生体内位置から反射してくる受信パルスほど、
その感度は弱くなる。しかし、この場合は狭帯域である
ので、各深さ位置での最大感度周波数はほぼfにな
る。したがって、直交位相検波の基準信号の周波数f
を、ほぼfの一定値に設定しておくことにより、感度
が最大で受信することができる。
【0195】これに対し、本発明の実施に対応する、バ
ースト波数=1の広帯域送信の場合を図21(a),
(b)で説明する。同図(a)は広帯域の送信パルス波
形を示すもので、送信周波数はfであり、被検体の減
衰特性を合わせて示してある。同図(b)はその受信パ
ルス波形を示す。超音波パルスは深さに応じて減衰する
ので、この受信パルス波形によれば、受信パルスの反射
位置が深いほど、受信感度は弱くなる。この点は狭帯域
送信の場合と同じである。しかし、この場合は広帯域で
あるので、深さに応じて最大感度周波数は異なる。具体
的に、深部になるほど、最大感度周波数は低くなり、し
かも、その値は送信周波数fよりも低くなるととも
に、その帯域幅は深部になるほど狭くなることがわか
る。
【0196】このような広帯域送信に伴う受信パルス特
性に鑑みて、本実施形態のCFMモード処理系回路15
にあっては、以下に示す2つの特徴ある処理を行い、S
/Nを維持または向上させる。
【0197】第1の特徴ある処理は、図22(a)に示
す如く、基準信号(リファレンス信号)の周波数f
検出深さに応じて変えて、常にほぼ最大感度の周波数に
合わせることである。具体的には、送信トリガ発生器2
1からの送信トリガ信号S rgを参照して、深さ=0
のときの時刻を認識し、さらに、
【数5】d=T1・c/2 …… (3) の式から深さdとこれに対応する時間T1との関係を求
めることができる。ここで、cは音速である。
【0198】この時間・深さの関係は時間(深さ)カウ
ンタ52によって演算される。カウンタ52は、送信ト
リガ発生器21から送出される、深さ=0を表す送信ト
リガ信号Strgを受信し、この受信時から経過時間T
1をカウントするとともに、このカウント時間T1を用
いて上記(3)式から深さdを演算し、この演算値を基
準信号周波数設定器51、周波数帯域設定器53、およ
び演算回路46に逐一送る。
【0199】このため、基準信号周波数設定器51に
は、パルス長設定器24からパルス長を設定するデータ
(送信周波数fおよびバースト波数=1)が入力し、
また時間(深さ)カウンタ52から深さdのデータが入
力する。そこで、この設定器51は、パルス長設定デー
タおよび深さデータを用いて、各深さにおける受信パル
スの最大感度周波数に相当する基準信号周波数を演算
し、この周波数値を表す設定信号を基準信号発生器47
に与えるように構成する。
【0200】実際には、生体内での超音波パルスの減衰
には、超音波周波数、被検体部位、固体差などに応じた
ばらつきがあるので、送信パルスの周波数を変更し、各
部位毎に各深さの受信パルスの最大感度周波数を測定
し、多数の固体の平均をとることで精度を高める。この
精度の高い値(最大感度周波数)をROMに書き込み、
このROMを基準信号周波数設定器51に内蔵させる。
このROMからその格納データを読み出すには、送信周
波数f、バースト波数M(=3未満)、深さ、被検体
の部位などを示すパラメータをアドレスとしてROMに
与える。これにより、対応する最大感度周波数が読み出
される。
【0201】被検体の部位は、操作パネル17内のパネ
ルスイッチ(図示せず)からオペレータが指定し、装置
内のCPU(図示せず)がこれを認識して数値化し、C
FMモード処理系回路15の適当なバッファを介して基
準信号周波数設定器51に設定するように構成される。
【0202】基準信号発生器47は、上述のように基準
信号周波数設定器51からリアルタイムに送られてくる
各深さ毎の周波数値と同じ周波数信号を基準信号f
(d)(:深さの関数)として発生する。このように
形成された基準信号f(d)は直交位相検波器の一部
を成すミキサ41a,41bに供給される。
【0203】ミキサ41a,41bおよびLPF42
a,42bは直交位相検波器を構成し、デジタル量のエ
コー信号を直交位相検波して各送受信毎且つ各深さ位置
毎のドプラデータを抽出する。基準信号発生器から発生
される基準信号の周波数は、上述したように、基準信号
周波数設定器51からの設定信号に応じて変更されるの
で、その値は深さに応じて変わり、常にほぼ最大受信感
度を呈する周波数にリアルタイムに合わせられる。この
基準信号は、一方のミキサ41bとπ/2移相器48に
与えられる。移相器48は、基準信号に正確に90度の
位相差を与えてもう一方のミキサ41aに供給する。
【0204】この結果、受信系回路13から出力された
エコー信号と基準信号とがミキサ41a及び41bによ
り乗算される。この乗算によって得られる、位相が90
゜異なった結果信号はそれぞれLPF42a、42bを
通過してミキシングで発生する高調波成分が除去され、
これにより、ベース帯域のドプラデータが得られる。つ
まり、スキャン断面の同一場所、すなわち同一ラスタを
複数のN回スキャンし、その各回のスキャン毎に、得ら
れたエコー信号から直交位相検波によりドプラデータが
抽出される。この直交位相検波を行うことにより、プロ
ーブに近づく血球からの信号と遠ざかる血球からの信号
とを分離して検出すること(方向分離)が可能になる。
【0205】したがって、この直交位相検波において、
位相検波用の基準信号が常に最大受信感度を呈する周波
数にリアルタイムに調整されているので、広帯域送信の
場合であっても、常に高い受信感度を維持させることが
できる。
【0206】このように常にほぼ最大の受信感度で抽出
されたドプラデータは、その後、2系統各別に、帯域可
変フィルタ43a,43bに送られる。
【0207】このCFMモード処理系回路15における
第2の特徴ある処理は、この帯域可変フィルタ43a,
43bに関する。
【0208】この帯域可変フィルタ43a,43bは、
BPF(バンドパスフイルタ)として形成されており、
その周波数帯域は、周波数帯域設定器53からの設定信
号に応じてほぼリアルタイムに変更される。ここでは、
深さに応じて変化する受信パルスの周波数帯域に合わせ
て変更され、ノイズが有効に除去されることである。つ
まり、帯域可変フィルタ43a,43bそれぞれの周波
数特性を、図22(b)に示す如く、直交位相検波によ
り生成されたドプラデータの周波数帯域にほぼ一致させ
る。この制御は深さ位置毎にほぼリアルタイムに行われ
る。
【0209】具体的手法を説明する。S/Nを最優先に
するときは、各深さ位置において受信パルスの帯域特性
と全く同じ特性を帯域可変フィルタ43a,43bに持
たせればよいが、この場合、距離分解能が多少、劣化す
る。このため、距離方向の分解能をあまり劣化させない
ように帯域可変フィルタ43a,43bの特性を多少調
整してもよい。
【0210】帯域可変フィルタ43a,43bの特性を
設定するには、周波数帯域設定器53に、基準信号周波
数設定器51のときと同様にROM(図示せず)を内蔵
させる手法を採用することが好適である。このROMに
は、送信周波数を変えて、各部位毎に各深さ位置の受信
パルスの周波数帯域を測定し、しかも、多数の固体の平
均をとることにより精度および信頼性を高めた帯域値を
予め格納しておく。周波数帯域設定器53には、前述し
たように、パルス長設定器24、時間(深さ)カウンタ
52、および制御装置18からそれぞれデータが入力す
る。このデータは、送信周波数f、バースト波数M
(=3未満)、深さ位置、被検体部位を示す数値であ
る。この数値は周波数帯域設定器53にてアドレス信号
に変換され、このアドレス信号が同設定器の内蔵ROM
に与えられる。これにより、アドレス信号、すなわち入
力データに対応した周波数帯域特性のデータがROMか
ら読み出され、読み出されたデータが設定信号として帯
域可変フィルタ43a,43bに送られる。
【0211】したがって、このフィルタ43a,43b
では、図22(a)の浅部、中間部、および深部として
模式的に例示する如く、設定信号にしたがって各深さ位
置毎の周波数帯域特性がリアルタイムに変更される。こ
のように常に、受信パルス(ドプラデータ)の周波数帯
域に合わせてフィルタリングすることで、ノイズを効率
よくかつ十分に低レベルまで除去でき、広帯域送信であ
っても、S/Nを良好なレベルに維持または改善でき
る。
【0212】とくに、上述した第1、第2の特徴、すな
わち、「基準信号周波数の深さ位置に応じた変更制
御」、および、「ノイズフィルタの周波数帯域を受信パ
ルスのそれに合わせた変更制御」を併用することで、送
信パルスが広帯域であっても、高いS/Nを確保するこ
とができる。
【0213】このようにノイズ除去されたドプラデータ
は、チャンネルa,bそれぞれにおいて、ドプラ用バッ
ファメモリ44a,44bに順次、書き込まれる。
【0214】ドプラ信号は、前述したように、同一サン
プル位置(深さ位置)をレート周期Tで走査して得ら
れる血流からの反射信号の、単位時間内の位相シフト量
(ドプラシフト量)のデータ列である。このドプラ信号
から血流速度が求められる。この演算に供するため、例
えばN回、同一ラスタ位置を走査して得られた受信パル
スデータがバッファメモリ44a,44bに順次格納さ
れる。
【0215】このようにしてスキャン断面上のサンプル
位置それぞれをN回走査して得られる時系列方向に並ん
だドプラ信号から各サンプル位置の血流速度が演算され
ることになる。しかし、この時点のドプラ信号には未
だ、血球のように移動している物体からの反射波と、血
管壁や臓器実質のように殆ど移動しない固定物体からの
反射波とが混在しており、しかも、それらの反射強度は
後者(固定物体)の方が支配的である。これに反し、血
球からの反射波の周波数にはドプラシフトが生じている
のに対して、固定反射体からの反射波(クラッタ信号)
には係るドプラシフトは殆ど生じていない。そこで、こ
のドプラシフトの差を利用してクラッタ信号を除去する
ため、MTIフィルタ45a,45bがチャンネルa,
bそれぞれに介挿されている。
【0216】バッファメモリ44a,44bそれぞれか
ら各サンプル位置毎に時系列方向に読み出されたN個の
ドプラデータの列、すなわちドプラ信号は、対応するM
TIフィルタ45a,45bにそれぞれ与えられる。こ
れにより、上述したドプラシフトの差によって、クラッ
タ成分は殆ど除去され、殆どが血球からの反射波のみと
なって、この血流成分が演算回路46に送られる。
【0217】この演算回路46による演算処理の概要
は、各深さのサンプル位置毎に、時系列方向のN個のド
プラデータを対象とする周波数分析によるスペクトルの
平均値(ドプラ周波数)、分散、あるいは血球からの反
射信号の強度(パワー)の演算である。これらの演算値
は血流情報として次段の表示系回路16に送られる。
【0218】ここで、演算回路46は、本発明のさらに
第3の特徴に係わる回路であるので、これを詳述する。
【0219】この演算回路46は、図23に示す如く、
ドプラ周波数演算回路461と、従来のドプラ速度演算
回路の代わりとしてのドプラ速度範囲演算回路462と
を備えるとともに、従来のパワー演算回路の代わりとし
て、広ダイナミックレンジ・パワー演算回路463を備
える。さらに、周波数分散演算回路464をも備える。
ドプラ速度範囲演算回路462は、時問(深さ)カウン
タ52および基準信号周波数設定器51の出力情報か
ら、折り返り速度範囲を演算する。また、広ダイナミッ
クレンジ・パワー演算回路463は、パワーの表示ダイ
ナミックレンジを拡大するために搭載されている。
【0220】ドプラ周波数演算回路461は、自己相関
器などの周波数解析器を備え、MTIフィルタ45a,
45bから出力される実数部および虚数部に対応するド
プラ信号をそれぞれ入力して、各サンプル位置のスペク
トルのドプラ周波数(平均速度)の解析を行うととも
に、対応するドプラ周波数コードに変換して出力する。
また、この解析結果は、周波数分散回路464にも与え
られる。
【0221】まず、折り返り速度について説明する。ド
プラ速度vは、前述した如く(式(1)を再掲す
る)、通常、
【数6】 の式を用いて演算される。従来の演算の場合、上記
(1)式において、cおよびfは一定値に設定される
が、θはスキャン断面上の各サンプル位置において異な
る。このため、同じドプラ周波数であってもドプラ速度
は一般に異なる(これはドプラ速度の角度依存性と呼ば
れる)。この角度依存性を解消する手法は、現時点では
実用化に至っていないが、その代替手法として次のよう
な方法が採られている。すなわち、式(1)においてθ
=0のときに本来のドプラ速度を計算可能であり、この
ときの折り返り速度v/2が前述した
【数7】v/2=(f/2)・(c/2f) の式(前記(2)式を再掲した)で示されるので、この
式から演算される折り返り速度の値をカラーバーと共に
表示されている。
【0222】しかし、本実施形態の場合、この表示法を
そのまま採用することはできない。それは、広帯域送信
でありながらS/Nを向上させる対策を講じているた
め、基準信号の周波数fをサンプル位置の深さに応じ
てリアルタイムに変更している。したがって、折り返り
速度もサンプル位置の深さに応じて変わってしまうから
である。
【0223】そこで、本実施形態においては、複数の折
り返り速度を表示する。そのための具体的な手法として
は、CFMモードによるイメージングの表示範囲を示す
ROIの最浅部と最深部の値を示す手法、深さ=0と断
層像の最深部の値を示す手法、これらの値に加えて、さ
らに、表示画像上に深さマーカを設け、その深さを表示
する手法などがある。勿論、そのほかの表示法を採って
もよい。ここでは一例として、ROIの最浅部と最深部
の折り返り速度を示す表示法について説明する。
【0224】この表示を行うため、演算回路46内のド
プラ速度範囲演算回路461には、制御装置18からレ
ート周波数f、音速c、およびROI深さ設定値d1
(最浅部)、d2(最深部)、時間(深さ)カウンタ5
2から深さdが、さらには基準信号周波数設定器51か
ら深さdに同期して基準信号周波数fがそれぞれ与え
られている。そこで、ドプラ速度範囲演算回路461
は、常に深さdをモニタしており、d=d1を認識した
ときの基準信号周波数fMd1を用いて、前記(2)式
に基づく、ROI最浅部の折り返り速度vrd1を、
【数8】 により演算する。同様に、深さd=d2を認識したとき
の基準信号周波数fMd を用いて、前記(2)式に基
づく、ROI最深部の折り返り速度vrd2を、
【数9】 により演算する。これらの折り返り速度vrd1/2お
よびvrd2/2は、ROI深さd1、d2と組み合わ
せて表示系回路16のDSC内のフレームメモリに格納
される。
【0225】次いで、パワーモードの表示ダイナミック
レンジについて説明する。
【0226】これは、本発明の第4の特徴に関する。表
示ダイナミックレンジは、実際には演算回路46内で設
定されてしまう要素である。表示階調として64階調
(階調0〜63)を例示するが、ほかの階調度であって
も同様である。
【0227】受信エコー信号の処理においては、通常、
微弱な信号を見逃さないようにするため、ノイズレベル
を基準にしてゲインを設定する。ゆえに、表示ダイナミ
ックレンジが信号強度に対して狭すぎると、表示ダイナ
ミックレンジよりも大きい強度を有する信号は飽和す
る。このため、飽和した信号値はその値の如何を問わ
ず、その表示ダイナミックレンジの上限値で一律に表示
されてしまう。階調は全て63の最高度で表される。つ
まり、画像は一部、階調性の無い平坦な感じのものとな
り、表示分可能は低く、重要なパワー情報が喪失するこ
とにもなる。
【0228】従来から行われている通常のCFMにおい
て得られる血流信号は、血球からの反射信号のパワーに
基づく信号である。血球からの反射信号は強度が弱いた
め、パワーの表示ダイナミックレンジもそれに見合って
狭く、せいぜい40dB程度である。いま、この表示ダ
イナミックレンジを40dBとして図24に基づき説明
する。
【0229】図24(a)に、従来から行われている通
常の表示ダイナミックレンジを設定するときの入出力パ
ワーの特性例を示す。出力パワーの上限値、すなわち表
示ダイナミックレンジは10、20、30、40dBに
それぞれ可変設定できる。この可変設定は、表示階調が
64と固定であるため、飽和しない範囲で信号強度に合
わせた、なるべく広いダイナミックレンジとなるように
表示ダイナミックレンジを設定し、階調性が失われない
ようにするためである。例えば、ある被検体の最大信号
強度が16dBであるときに、表示ダイナミックレンジ
を40dBに設定すると、表示階調は実際には、
【数10】64・(16dB/40dB)=26階調 となり、階調性が低下し、暗い画像となる。これは診断
能の低下を招いてしまう。また、20dBに設定したと
すれば、表示階調は実際には、
【数11】64・(16dB/20dB)=51階調 となり、階調性が上がり、明るい画像となる。当然に診
断能も向上する。
【0230】このように、血球からの反射信号のパワー
の場合、表示ダイナミックレンジは通常、40dBもあ
れば十分である。しかし、被検体に造影剤を投与した場
合、エコー信号の反射強度は数十dB増強されるので、
表示ダイナミックレンジを40dBの最高レンジに設定
した場合でも、必ずと言ってよいほど、表示画像上の至
る個所で飽和し、階調性が無いまたは少ない、平坦な感
じの画像しか得られない。これは、診断能の低下を招く
ことにもなる。
【0231】そこで、本実施形態では、図24(b)に
示す如く、表示ダイナミックレンジを最大、例えば90
dBまで拡大し、10dBから90dBまで、10dB
ずつ可変設定できるようにする。これにより、血球から
の反射信号のみならず、造影剤の微小気泡から高強度の
反射信号が返ってきた場合にも、表示ダイナミックレン
ジを最適に設定することができる。
【0232】これを実現するため、図23に示す如く、
演算回路46に広ダイナミックレンジパワー演算回路4
63が設けられる。この演算回路463の内部は、図示
していないが、その入力側に位置してパワー値を演算す
る演算器と、その出力側に置かれたROMとを備える。
ROMには図24(b)の入出力特性を表すデータとし
て書き込まれている。このため、演算回路463は、M
TIフィルタ45a,45bの出力である血流からの反
射信号からそのパワー値を演算し、このパワー値と表示
ダイナミックレンジの上限設定値がアドレス情報として
ROMに与えられる。この上限設定値は、例えば、操作
パネル17を介してオペレータが指定した値を制御装置
18のCPUが広ダイナミックレンジ・パワー演算回路
463に与えることで設定される。このため、入力パワ
ー値に対応したパワー値がROMから読み出され、図2
4(b)の入出力特性に基づいたパワーコードが出力さ
れる。
【0233】一方、演算回路46の周波数分散演算回路
464は、周波数解析結果から速度分布の分散を演算
し、それに対応する周波数分散コードをそれぞれ出力す
る。
【0234】以上のように演算回路46で演算されたド
プラ周波数コード、周波数分散コード、パワーコード、
および折り返り速度とROI深さの情報は血流動態を表
すドプラデータとして、表示系回路16のDSCのフレ
ームメモリに送られる。
【0235】10.2.2.3.表示系回路の構成およ
び動作 表示系回路16は、Bモード用およびCFMモード用の
2種類のフレームメモリおよびその書込み/読出し制御
回路を備えたデジタルスキャンコンバータ(DSC)6
1、表示用のROI、カラーバー、目盛、アノテーショ
ンなどの表示データを発生させるデータ発生器62、ピ
クセルのカラー付与処理を行うカラー処理器63、D/
A変換器64、および表示用のTVモニタ65を備え
る。Bモード処理系回路14およびCFMモード処理系
回路15から出力されたデジタル量の断層像データおよ
びドプラデータはDSC61のフレームメモリに夫々書
き込まれる。また、操作パネル17を介してオペレータ
から与えられる各種の操作情報は、制御装置18を介し
て、データ発生器62にも与えられる。
【0236】DSC61では、Bモード用フレームメモ
リおよびCFMモード用フレームメモリに格納されたデ
ータが各別に標準TV方式で読み出される。また、この
読出しと並行して、両フレームメモリの共通画素同士の
一方が択一的に選択され、Bモード断層像(背景像)に
CFMモードのCFM画像(造影剤、すなわち血流速
度、分散、パワーなどの血流動態を表すドプラデータ)
が重畳された1フレームの画像データが形成される。さ
らに、この画像データに、データ発生器62が発生した
表示データが重畳される。このように作成された画像デ
ータの内のドプラデータにはカラー処理器63でカラー
付与処理が施される。さらに、この画像データはD/A
変換器64により所定タイミング毎にアナログ信号に変
換され、TVモニタ65にCFM画像として表示され
る。
【0237】図25に、この表示例を示す。同図(a)
はモニタ表示画面の一例を示す。この画面の中央には、
Bモードの断層像が表示され、その一部にコンベックス
状のROIが設定され、そのROI内にCFM画像が重
畳して表示される。画面の隅には、各種の提供データが
数値や目盛で表示される(図中の点線部分参照)。さら
に、同図において、画面の左側サイドにはプローブから
の深さを示す目盛が表示され、これに隣接してカラーバ
ーが表示される。
【0238】同図(b)には、カラーバーの一例とし
て、血流速度を表すカラーバーを示す。従来と同様に、
このカラーバーは、プローブに対する血流方向を分離し
た速度を示す。同じに、このカラーバーの上方の所定画
面位置には、ROIの深さ上限値および下限値、並び
に、それらの深さに応じた折り返り速度が、これらに割
り当てられたウィンドウ内にほぼリアルタイムに表示さ
れる。
【0239】また、この速度のカラーバーの詳細な表示
例を、同図(c),(d)にそれぞれ示す。この内、同
図(c)のものは、その縦軸に方向分離したドプラ周波
数(血流速度)を、その横軸に深さをそれぞれとり、か
つ、同じ速度を同一色で表すものである。縦軸の両端の
周波数は折り返り周波数±f/2である。本実施形態
では、基準信号の周波数を深さ方向の深さに応じて変更
されるようにしているので、同じドプラ周波数であって
も演算されるドプラ速度は異なる値を呈し、折り返り周
波数f/2に対する折り返り速度も深さに応じて異な
る値をとっている。このため、同図(c)に模式的に示
されるカラーマップ(バー)となる。一方、同図(d)
に示す速度のカラーバーでは、縦軸に方向分離されたド
プラ速度を、横軸に深さをそれぞれとり、同じ速度を同
一色相で表している。深さ方向の位置に応じて基準信号
の周波数を変更するようにしているので、このカラーバ
ーの場合も、折り返り速度が深さに応じて異なる値にな
る。このため、各深さ位置の折り返り速度は同図(d)
に模式的に示されるカラーマップ(バー)となる。
【0240】さらに、図25(e)にパワー値のカラー
バーの一例を示す。従来と同様のダイナミックレンジを
示すカラーバー(ここでは、一例として64階調)の上
方の隣接位置に、10dB〜90dBまで変更可能な最
大ダイナミックレンジを表示している。
【0241】10.3.全体的な動作および作用効果 上述したように、この超音波診断装置では、送信系回路
12からの送信遅延された駆動信号にプローブ11が応
答して被検体内に超音波パルスを送信する。この送信さ
れた超音波パルスは、被検体内から反射波として戻って
きてプローブ11で検出される。これにより、プローブ
11から電気量のエコー信号が出力され、このエコー信
号が受信系回路13でデジタル信号に変換された後、受
信遅延される。このエコー信号はさらにBモード処理系
回路14およびCFMモード処理系回路15に並行して
入力し、前述したようにスキャン面の断層像データおよ
びその面内の血流動態を表すCFM像データが生成され
る。そして、表示系回路16にて、表示系断層像データ
にCFM像データが重畳され、最終的なCFM像として
TVモニタ65に表示される。
【0242】このCFM像を得るに際し、この超音波診
断装置では、以下に要約するように各種の作用効果を得
ることができる。
【0243】第1に、広帯域送信にすることに拠る効果
がある。TVモニタ65には、図25(a)に例示した
ように、CFM像上にROIが表示される。このROI
内のCFM像は次のように表示される。CFM像は、造
影剤を投与しない状態(非コントラスト法)でスキャン
した場合でもその感度は向上するが、とくに被検体に造
影剤を投与したコントラスト法でスキャンした場合に
は、血流の検出感度は数十dB程度、増強される。この
コントラストエコー法を実施する場合、本実施形態では
前述した如く、送信系回路12によって、送信超音波パ
ルスの周波数帯域を広帯域に設定される。これにより、
血流信号が高い空間分解能で検出される。例えば、バー
スト波数=1に設定した場合、図26に示すように、従
来のCFMに比べて距離分解能が格段に向上したCFM
像(血流画像)が得られる。したがって、ブルーミング
は殆ど発生しない。
【0244】第2に、並列同時受信数の増加が可能なこ
とに拠る効果がある。被検体に造影剤を投与してスキャ
ンする場合、前述したように、検出感度は通常、数十d
B程度、増強されるので、送信ビームを広げて並列同時
受信数を増加させても検出感度は十分に確保される。そ
こで、方向数設定器25は、エコー法切替スイッチ27
からコントラストエコー法の実施が指令されたときに
は、非コントラストエコー法のときよりも並列同時受信
数を増やす。これにより、フレーム数(すなわち時間分
解能)が格段に上がり、血流動態を高いリアルタイム性
で観察できる。一例として、並列同時受信を行わない通
常のCFMのときに6フレーム/秒であれば、並列同時
受信数=4方向に設定すると24フレーム/秒に、並列
同時受信数=8方向に設定すると48フレーム/秒にそ
れぞれ上がり、リアルタイム性が飛躍的に向上する。
【0245】第3に、送信時の同一方向送信回数を減ら
すことが可能なことに伴う効果がある。血流信号の強度
は低いので、ノイズの影響を浮け易く、血流動態の情報
の値が変動し易い。この影響を減らすため、血流信号検
出時には、通常、同一ラスタ方向に16回、超音波パル
スを送受信して同じ信号源(スキャン断面上のサンプル
位置)から時系列方向に複数個の血流データを検出し、
それらを平均したドプラ周波数(ドプラ速度)を得てい
る。ところが、コントラストエコー法を実施する場合、
血流からの検出感度が数十dB程度、増強されるので、
S/Nが大幅に良くなって、血流信号はノイズの影響を
殆ど受けなくなる。つまり、同一ラスタ方向への超音波
パルスの送信回数を減らしても、高S/Nの安定した血
流信号が得られる。そこで、エコー法切替スイッチ27
を介してコントラストエコー法が指令されたときには、
送信回数設定器26より、かかる同一方向の送信回数は
減らされる。この送信回数の減少により、単位時間あた
りのフレーム数(時間分解能に相当)が多くなり、リア
ルタイム性の高いCFM像を提供することができる。一
例として、通常のCFMのときに6フレーム/秒であれ
ば、同一方向送信回数を1/2に減らすと、フレーム数
は12フレーム/秒に倍増し、リアルタイム性は飛躍的
に向上する。
【0246】さらに、本実施形態では、上述した並列同
時受信の方向数の増加および同一方向の送信回数の低減
の両手法を併用しているので、リアルタイム性の向上の
効果は極めて高いものになる。なお、必要に応じて、上
述した並列同時受信方向数の増加および同一方向送信回
数の低減の両手法の内の一方のみを採用する構成を採っ
てもよい。
【0247】ところで、上述したCFMモード処理系回
路は直交位相検波器の後ろに、2チャンネルa,b別々
に帯域可変フィルタとしてのBPFを挿入する構成とし
ている。このBPFの挿入位置の場合、BPFの設計が
容易化されるという利点がある。
【0248】また、本実施形態の超音波診断装置にあっ
ては、その受信・処理系回路13〜15を、受信増幅器
の直後にA/D変換器を置いたデジタルタイプの回路で
構成している。このデジタル化により、回路動作の安定
化は勿論のこと、受信系回路や処理系回路の性能向上と
処理の多様化とを推進することができる。
【0249】なお、この実施形態のCFMモードにあっ
ては、断層像上にCFM画像を表示する態様で説明して
きたが、必ずしもそのような表示態様に限定されるもの
ではない。
【0250】またなお、本発明は、とくに、造影剤を被
検体に投与することにより血流の検出感度を十分に上げ
てスキャンするコントラストエコー法を実施する超音波
診断装置や、造影剤を投与しなくても血流の検出感度を
向上させた非コントラストエコー法を実施する超音波診
断装置に実施することが好適である。
【0251】また、第8の実施形態で説明した、造影剤
が消失するときの画像化、及び、造影剤の微小気泡が不
規則な振動をするときの画像化の手法は、本実施形態に
も適用可能である。
【0252】10.4.第10の実施形態の変形例 上述した第10の実施形態に関して、以下のように、様
々な変形例を提供できる。
【0253】(第1の変形例)第1の変形例は、CFM
モード処理系回路15に挿入する帯域可変フィルタ43
a,43bに関する。受信したエコー信号を直交位相検
波した超音波パルスの周波数スペクトルは、最大感度周
波数f、f、またはf(図21参照)を中心に高
周波側と低周波側はほぼ対称であるから、帯域可変フィ
ルタ43a,43bは実数型フィルタでも十分であり、
上述した実施形態にあっては2チャンネル別々にフィル
タを持たせた実数型フィルタで示した。しかし、図27
に示す如く、かかる周波数スペクトルは実際には完全に
対称ではないので、帯域可変フィルタを2チャンネル組
み合わせた複素数型フィルタに形成し、スペクトル特性
を最大感度周波数に対して非対称に設定し、直交位相検
波された出力信号に合わせ込めば、フィルタリング精度
を更に向上させることができる。この複素帯域可変フィ
ルタ43cを搭載した超音波診断装置の構成例を図28
に示す。
【0254】(第2の変形例)第2の変形例は、帯域可
変フィルタの帯域特性のみを制御して距離分解能を大幅
に改善させることに関する。この変形例によれば、S/
Nの改善効果は上述した実施形態ほど大きくはないが、
距離分解能を大幅に改善できるものである。
【0255】この変形例では、基準信号の周波数f
常にほぼ一定とする(前述したように深さに応じて変化
させない。ただし、下記の所望の周波数特性如何では、
適宜、変更することも可能である)。しかし、図29
(a)に模式的に示す如く、深さに拠って変化する入力
信号の周波数スペクトラムに応じて、帯域可変フィルタ
43a,43bの帯域特性を深さ毎に変更制御する。こ
の結果、同図(b)に示す如く、帯域可変フィルタ43
a,43bの出力信号が深さに依存せず、常にほぼ同一
の周波数帯域となるようにする(更に、一般的表現とし
ては、深さ毎に所望の周波数帯域特性が得られるように
する)。つまり、これにより、S/N改善効果が得られ
ると同時に、信号帯域を広げることができるので、距離
分解能、とくに深部における距離分解能を大幅に改善す
ることができる。すなわち、広帯域特性を有する送信超
音波パルスの距離分解能に匹敵する優れた距離分解能を
維持することができる。
【0256】この場合、帯域可変フィルタは実数型でも
複素数型であってもよい。複素数型フィルタとした場
合、図29(c)に示す如く、その帯域特性を非対称に
設定することができ、かかる特性を設計する場合の自由
度は高い。この変形例の場合、帯域可変フィルタをデジ
タルフィルタで構成することが望ましく、これにより、
フィルタ特性をよりフレキシブルに設計できる。
【0257】(第3の変形例)第3の変形例は、造影剤
を用いたときの帯域可変フィルタの帯域設定に関する。
【0258】造影剤の主成分を成す微小気泡から反射し
てきたエコー信号には非線形な振動特性に因って、高調
波、分調波、超調波などが含まれる。一例として、図3
0には、送信1波のときの基本波と第2高調波のスペク
トラムの例を示す。送信を1波で行うと、その基本波と
高調波は一部重畳して戻ってくる。造影剤からの信号の
強度自体については基本波の方が第2高調波よりも強い
が、組織エコー(クラッタ)の第2高調波の強度は弱い
ので、第2高調波に関しては造影剤のエコーの方が支配
的である。
【0259】したがって、図31に示すように、帯域可
変フィルタの帯域幅Wは変えずに、基準信号周波数を例
えばf,f,2fとずらし、造影剤の感度を優先
するときは基本波を主体に取り込み、一方、クラッタ除
去能力を優先したいときには第2高調波を主体に取り込
むようにすることができ、これにより、信号の有効な使
い方が可能になる。例えば、一般に浅部での感度は十分
に採れるので、浅部ではクラッタ除去能力を優先して第
2高調波を主体に帯域設定し(基準信号の周波数は一例
として第2高調波の中心周波数2fの位置)、深部で
は生体減衰の影響を補うために感度を優先させるべく基
本波主体に帯域設定し(基準信号の周波数は一例として
基本波の中心周波数fの位置:このとき、クラッタは
後段のMTIフィルタで主に除去させる)、さらに中間
の深さでは両者を混合した帯域になるように設定(基準
信号の周波数は一例として基本波と第2高調波の中心位
置fの位置)することが好適である。
【0260】また別の設定法として、図32に示すよう
に、基準信号周波数fを基本波の中心周波数fと第
2高調波の中心周波数2fの間に設定し、送信帯域W
よりも帯域可変フィルタWの帯域を広くして、基本
波と高調波に跨らせれば、送信帯域よりも広帯域の信号
を得ることができ、距離分解能を向上させることができ
る。
【0261】前述した図4には、造影剤からの受信信号
のスペクトラムを示す。造影剤の主成分を成す微小気泡
から反射してきたエコー信号には非線形な振動特性に因
り高調波、分調波、超調波などが含まれる。したがっ
て、ハーモニックBモードで画像表示する場合、受信信
号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線形信号帯域を
も含むように設定させることができる。
【0262】(第4の変形例)第4の変形例は、帯域可
変フィルタの挿入位置に関する。帯域可変フィルタは必
ずしも直交位相検波器のLPFの後段に挿入する構成に
限定されることなく、図33に示す如く、直交位相検波
器のミキサ回路の前段に帯域可変フィルタ43dを挿入
してもよい。この場合、帯域可変フィルタ43dは高周
波でのフィルタリングとなるが、その個数は1チャンネ
ル分で済む。
【0263】(第5の変形例)第5の変形例は、クラッ
タ成分を除去するフィルタの変形に関する。前述したC
FMモード処理系回路15はクラッタ成分を除去するM
TIフィルタ45a,45bを用いている。このMTI
フィルタは機能的にはハイパスフィルタ(HPF)であ
る。これに対し、このMTIフィルタの代わりに、差分
フィルタを用いることもできる。差分フィルタ45c,
45dを搭載した装置の一例を図34に示す。差分法で
あるので、通常のHPFのように過渡応答現象が発生し
ない。このため、差分フィルタ45c,45dを用いる
分、同一ラスタ方向への超音波パルスの送信回数を減ら
すことができ、単位時間当たりにフレーム数を増加させ
て時間分可能(リアルタイム性)を向上させることがで
きる。具体的には、パワーデータを得るには同一方向へ
の送信は最低2回で可能であり、速度データを得るには
最低3回の送信で可能である。
【0264】(第6の変形例)第6の変形例は、受信側
に挿入するA/D変換器の挿入位置をCFMモード処理
系回路15に置く、いわゆるアナログタイプの受信処理
系の構成に関する。
【0265】第2の実施形態およびその変形例におい
て、これまで説明してきた受信処理系の回路構成は、例
えば図17に示す如く、A/D変換器32a(…,32
n)を受信系回路13のプリアンプ31a(…,31
n)の直ぐ後ろに置いて、それ以降の受信処理をデジタ
ル信号の形態で行う、いわゆる「デジタルタイプ」で構
成している。これに対し、この変形例の受信処理系で
は、図35に示す如く、かかるA/D変換器を2個(7
1a,71b)、CFMモード処理系回路15内の帯域
可変フィルタ43a,43bとバッファメモリ44a,
44との間にチャンネル毎に挿入している。これによ
り、A/D変換器の数を減らすこともできる。
【0266】このA/D変換器71a,71bは、図3
6に示す如く、直交位相検波器のLPF42a,42b
と帯域可変フィルタ43a,43bとの間にチャンネル
毎に挿入してもよい。この場合は、帯域可変フィルタ4
3a,43bをデジタルタイプのフィルタで構成でき
る。このようにすると、帯域可変フィルタをデジタルフ
ィルタとして構成できるので、経時変化や温度変化など
に対する耐性が良好で、フィルタリング特性が安定す
る。
【0267】なおここで、詳細な実施形態の代表である
図17の装置構成との対応関係を説明すると、プローブ
11、送信系回路12、受信系回路13、および制御装
置18がスキャン手段を構成する。また、Bモード処理
系回路14、CFMモード処理系回路15の内のミキサ
41a,41b、LPF42a,42b、帯域可変フィ
ルタ43a,43b、バッファメモリ44a,44b、
MTIフィルタ45a,45b、基準信号発生器47、
π/2移相器48、基準信号周波数設定器51、時間カ
ウンタ52、および周波数帯域設定器53、送信系回路
12内に設けたパルス長設定器24、方向数設定器2
5、送信回数設定器26、並びに制御装置18が第1の
信号処理手段を構成する。さらに、表示系回路16およ
び制御回路18は表示手段に相当する。さらに、CFM
モード処理系回路15内に設置した演算回路46、基準
信号周波数設定器51、時間カウンタ52、送信系回路
12に設けた送信トリガ発生器21およびパルス長設定
器24、並びに制御装置18が第1の信号処理手段を構
成する。
【0268】なお、本発明は上述した実施例に限定され
ることなくその要旨を逸脱しない範囲で種々変形、組合
せ実施可能である。
【0269】例えば、装置構成に関しては、「高分解能
フローモード」で実施する図1の構成において、HPF
又は差分器84と受信系回路83との間に、図37に示
したように、直交位相検波器102を介挿する。この検
波器102により、受信信号をベースバンド信号に生成
させた後、ドプラ信号のデータ列を検出し、このデータ
列にハイパスフィルタリング又は差分演算を施すことで
組織からの信号(クラッタ成分)を除去し、血流画像を
表示させる。このとき、直交位相検波器102で使用す
る基準信号の周波数をラスタ方向の深さに応じて調整す
るとよい。
【0270】また、「高分解能フローモード」を実施す
る第1〜第7の実施形態の構成において、広帯域な超音
波パルスの音圧レベルを、造影剤が消失可能であって且
つエコー信号に造影剤の消失に起因したエコー成分が含
まれる値に設定するようにしてもよい。また、広帯域な
超音波パルスの音圧レベルを、造影剤が消失せずに不規
則な振動が起こり且つエコー信号に造影剤の不規則な振
動に起因したエコー成分が含まれる値に設定するように
してもよい。このとき、エコー信号の所望の周波数成分
を通過させるフィルタの帯域特性を超音波パルスの基本
波成分及び高調波成分の少なくとも一方についてラスタ
方向の深さ毎に設定するようにしてもよい。
【0271】さらに、「高分解能フローモード」を実施
する第1〜第7の実施形態の構成において、第10の実
施形態で説明した、造影剤に起因したエコー成分のパワ
ーを非飽和の状態で処理できる広いダイナミックレンジ
に関する構成を採用してもよい。
【0272】また、例えば、前述した実施形態およびそ
の変形例では、送信用の広帯域な超音波パルスをバース
ト波数で表したが、送信パルスの包絡線が矩形でない場
合、バースト波数では表現できないので、これに代わる
表現法として−6dBでの比帯域、または、−6dBで
の波連長で規定すればよい。また、ほかの様々な定義法
でバースト波数=3未満を定義してもよい。
【0273】さらに、前述した実施形態およびその変形
例では、得られたドプラ信号から血流速度、スペクトラ
ムの分散、ドプラ信号のパワー値などの情報を演算して
断層像と共に表示しているが、この内の所望の情報のみ
を適宜な態様で直接、表示してもよい。
【0274】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば以下のよ
うな効果が得られる。
【0275】第1に、血流画像はエコー信号の輝度又は
パワーを表す画像として提供されるため、従来の単なる
CFM像のような、ドプラ法に基づく血流速度の分布像
に比べて、微細な血流や速度が遅い血流をも確実に捕捉
し、血流の存在を精細に表した血流画像を提供できる。
【0276】第2に、バースト波数が3未満、とりわけ
最も好適な条件では1波と広帯域であるので、ブルーミ
ングが無いまたは殆ど無い空間分解能の良い血流画像を
表示でき、従来法と比べて診断能を格段に向上させるこ
とができる。
【0277】第3に、バースト波数を広帯域に設定する
ので、被検体の周波数依存性減衰の影響により、体表か
らの深さ位置毎にエコー信号の受信時の最大感度周波数
と周波数帯域が変化してしまう。具体的には、深さが深
いほど最大感度周波数は低くなり、受信周波数帯域は狭
くなるが、本発明では各種の補正処理により、かかる変
動を補正でき、S/Nを著しく向上させる。また、クラ
ッタ除去効果の向上、感度の向上、さらには距離分解能
の向上を図ることができ、これにより、診断能が向上す
る。
【0278】さらに、第4に、本発明では、表示ダイナ
ミックレンジを従来法よりも広く可変設定できるので、
造影剤を投与するコントラストエコー法を実施する場合
でも、常に適切な表示ダイナミックレンジを設定でき、
表示画像データを飽和させず、かつ階調性も十分に確保
でき、これにより、演算した血流パワーの情報をフルに
表示でき、診断能を向上させることができる。
【0279】さらに、第5に、コントラストエコー法の
実施時には、並列同時受信数を非コントラストエコー法
の実施時に比べて増やすので、リアルタイム性(時間分
解能)の良い血流像を提供することができる。これによ
り、大幅に単位時間当たり検出率が上がり、診断能を格
段に向上させることができる。また、コントラストエコ
ー法を実施するときには、同一方向送信回数を非コント
ラストエコー法実施時よりも減らすので、これによって
もリアルタイム性の良い血流像を提供することができ、
大幅に検出率をさせて診断能向上に貢献できる。
【0280】このように、本発明によれば、血流の存在
を精細に表した空間分解能の高い血流像を提供でき、診
断能を向上させる。また、従来のCFMに比べて、空間
分解能が高く、かつS/Nの良い血流像を提供でき、診
断能を向上させる。さらに、造影剤を投与するコントラ
ストエコー法の実施時には、空間分解能が高く、S/N
が良く、フレームレート(時間分解能)が高く、かつ表
示ダイナミックレンジが広い血流像あるいはパフュージ
ョン像を提供でき、飛躍的に診断能を向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図2】広帯域の送信超音波パルスのバースト波形を説
明する図。
【図3】広帯域の送信超音波パルスの比帯域を説明する
図。
【図4】ハーモニックイメージングを行うときの周波数
領域の波形の一例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る超音波診断装置
の概略構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る超音波診断装
置の概略構成を示すブロック図。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る超音波診断装
置の概略構成を示すブロック図。
【図12】第8の実施形態の装置に搭載された送信系回
路のブロック図。
【図13】第8の実施形態で用いる送信系回路の動作を
説明するタイミングチャート。
【図14】対比説明のために記載した従来装置の送信系
回路のブロック図。
【図15】対比説明のために記載した従来装置の送信系
回路のタイミングチャート。
【図16】本発明の第9の実施形態に係る超音波診断装
置の機能ブロック図。
【図17】本発明の第10の実施形態に係るデジタルタ
イプの超音波診断装置のブロック図。
【図18】第10の実施形態で採用しているパルス発生
器の詳細を説明するブロック図。
【図19】パルス発生器の動作の一例を説明するタイミ
ングチャート。
【図20】従来装置で送受信される超音波パルスの周波
数領域波形の説明図。
【図21】実施形態の装置で送受信される超音波パルス
の周波数領域波形の説明図。
【図22】実施形態の装置で用いられる帯域可変フィル
タの特性を説明する図。
【図23】実施形態の装置に搭載された演算回路の構成
を示すブロック図。
【図24】実施形態の装置で用いるパワーのダイナミッ
クレンジ演算を、従来法と対比して説明する図。
【図25】実施形態の装置のモニタに表示される画像お
よびカラーバーを例示する図。
【図26】送信される広帯域の超音波パルスと空間分解
能を説明する図。
【図27】帯域可変フィルタの別の特性を説明する図。
【図28】第10の実施形態の第1の変形例に係る複素
帯域可変デジタルフィルタを搭載した超音波診断装置の
ブロック図。
【図29】第10の実施形態の第2の変形例に係る帯域
可変フィルタのさらに別の特性を説明する図。
【図30】第10の実施形態の第3の変形例を説明する
スペクトル図。
【図31】上記第3の変形例を説明する帯域可変フィル
タの帯域シフトの説明図。
【図32】上記第3の変形例を説明する帯域可変フィル
タの帯域設定の説明図。
【図33】第10の実施形態の第4の変形例に係る帯域
可変デジタルフィルタを検波器の前段に挿入した超音波
診断装置のブロック図。
【図34】第10の実施形態の第5の変形例に係るクラ
ッタ成分を除去するフィルタとして差分フィルタを搭載
した超音波診断装置のブロック図。
【図35】第10の実施形態の第6の変形例に係るアナ
ログタイプの超音波診断装置のブロック図。
【図36】アナログタイプの別の超音波診断装置を示す
ブロック図。
【図37】さらに別の変形例を示す超音波診断装置のブ
ロック図。
【図38】従来の血流イメージングに拠る不都合を説明
する画像図。
【図39】第1及び第5の実施形態に係る高分解能フロ
ーモードに拠る血流画像の例を、従来のドプラ速度画像
と対比させて説明する図。
【図40】第8の実施形態に係る、コントラストエコー
法に基づく高分解能フローモードに拠るパフュージョン
画像の例を、従来のドプラ速度画像と対比させて説明す
る図。
【図41】第8の実施形態に係る、直交流に対する高分
解能フローモードに拠る血流画像の例を、従来のドプラ
速度画像と対比させて説明する図。
【符号の説明】
11 プローブ 12 送信系回路 13 受信系回路 15 CFMモード処理系回路 16 表示系回路 17 操作パネル 18 制御装置 21 送信トリガ発生器 22 パルス発生器 23 送信回路 24 パルス長設定器 25 方向数設定器 26 送信回数設定器 27 エコー法切替スイッチ 32a,…,32n A/D変換器 41a,41b ミキサ 42a,42b LPF 43a,43b 帯域可変フィルタ 43c 複素帯域可変デジタルフィルタ 43d 帯域可変デジタルフィルタ 45a,45b MTIフィルタ 45c,45d 差分フィルタ 46 演算回路 51 基準信号周波数設定器 52 時間(深さ)カウンタ 53 周波数帯域設定器 61 DSC 62 データ発生器 71a,71b A/D変換器 81 プローブ 82 送信系回路 82A 広帯域送信パルス発生器 83 受信系回路 84 HPF又は差分器 85 フローデータ処理器 86 表示器 87 帯域可変フィルタ 88 周波数帯域設定器 91 エコー法切替スイッチ 92 送信回数設定器 93 方向数設定器 95 選択器 96 Bモード及び/CFMモード処理系回路 96A Bモード処理系回路 97 スイッチ 98 モード切替コントローラ 99 合成器 100 バランス制御器 101 スイッチ 104 帯域可変フィルタ 105 差分フィルタ 106 Bモード処理系回路 107 表示器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 嶺 喜隆 栃木県大田原市下石上1385番の1 株式会 社東芝那須工場内 Fターム(参考) 4C301 CC02 DD04 EE01 EE04 EE09 EE10 HH56 JB29 JB38 KK21 KK22

Claims (51)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数特
    性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しな
    がら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パル
    スの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得
    るスキャン手段と、このスキャン手段によって前記断面
    上の各サンプル位置に対応して収集される前記エコー信
    号の時間軸方向のデータ列に動き要素の信号を抽出する
    所望処理を施す処理手段と、この処理手段よって処理さ
    れた信号を2次元画像のデータに生成する生成手段と、
    前記2次元画像のデータに基づく画像表示を行う表示手
    段とを備えたことを特徴とした超音波診断装置。
  2. 【請求項2】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数特
    性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しな
    がら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パル
    スの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得
    るスキャン手段と、このスキャン手段によって前記断面
    上の各サンプル位置に対応して収集される前記エコー信
    号の時間軸方向のデータ列に動き要素又は位相の変化を
    抽出する所望処理を施す処理手段と、この処理手段よっ
    て処理された信号を2次元画像のデータに生成する生成
    手段と、前記2次元画像のデータに基づく画像表示を行
    う表示手段とを備えたことを特徴とした超音波診断装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の超音波診断装置に
    おいて、 前記処理手段で行う所望処理は、高域濾波又は差分処理
    であることを特徴とした超音波診断装置。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の超音波診断装置におい
    て、 前記スキャン手段、処理手段、及び生成手段は、各々、
    前記被検体に造影剤を投与した状態でコントラストエコ
    ー法を実施する手段であることを特徴とした超音波診断
    装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4の何れか一項記載の超音
    波診断装置において、 前記超音波パルスは、Bモードで断層像を得るために用
    いる超音波パルスと同程度に広帯域な周波数特性を有す
    ることを特徴とした超音波診断装置。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の超音波診断装置におい
    て、 前記超音波パルスは、パルス長が1波であることを特徴
    とした超音波診断装置。
  7. 【請求項7】 請求項5項記載の超音波診断装置におい
    て、 前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスとし
    て、バースト波数が3未満の超音波パルスを設定する広
    帯域設定手段を有することを特徴とする超音波診断装
    置。
  8. 【請求項8】 請求項5項記載の超音波診断装置におい
    て、 前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスとし
    て、−6dBにおける比帯域が30%以上である超音波
    パルスを設定する広帯域設定手段を有することを特徴と
    する超音波診断装置。
  9. 【請求項9】 請求項5の記載の超音波診断装置におい
    て、 前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスとし
    て、−6dBにおける波連長が3波長未満である超音波
    パルスを設定する広帯域設定手段を有することを特徴と
    する超音波診断装置。
  10. 【請求項10】 請求項3記載の超音波診断装置におい
    て、 前記2次元画像のデータは、前記被検体の断面内の動き
    要素により反射された前記エコー信号の輝度情報又はパ
    ワー情報を表すデータであることを特徴とした超音波診
    断装置。
  11. 【請求項11】 請求項4記載の超音波診断装置におい
    て、 前記2次元画像のデータは、前記被検体の断面上に在る
    造影剤に起因した前記エコー信号の輝度情報又はパワー
    情報を表すデータであることを特徴とした超音波診断装
    置。
  12. 【請求項12】 請求項3記載の超音波診断装置におい
    て、 前記処理手段は、前記エコー信号を基準信号に基づいて
    位相検波する位相検波手段と、前記基準信号の周波数を
    前記超音波パルスに拠るラスタ方向の深さに応じて変更
    する基準信号周波数変更手段と、前記位相検波されたエ
    コー信号に前記高域濾波又は差分処理を施すエコー信号
    処理手段とを備えることを特徴とした超音波診断装置。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記基準信号周波数変更手段は、前記基準信号の周波数
    を、前記ラスタ方向の深さに応じて当該各深さにおける
    前記エコー信号の周波数帯域の中で最も検出感度の高い
    周波数に変更する手段であることを特徴とする超音波診
    断装置。
  14. 【請求項14】 請求項3記載の超音波診断装置におい
    て、 前記処理手段は、前記エコー信号の所望の周波数成分を
    通過させるフィルタ手段と、このフィルタ手段によりフ
    ィルタリングされたエコー信号に前記高域濾波又は差分
    処理を施すエコー信号処理手段とを備えることを特徴と
    した超音波診断装置。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記フィルタ手段は、前記超音波パルスに拠るラスタ方
    向に対する帯域特性を変更可能な帯域可変フィルタであ
    ることを特徴とした超音波診断装置。
  16. 【請求項16】 請求項15記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記処理手段は、前記ラスタ方向の深さに応じて前記帯
    域可変フィルタの帯域特性を変更する帯域特性変更手段
    を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記帯域特性変更手段は、前記帯域特性を前記ラスタ方
    向の深さに応じて当該各深さにおけるエコー信号帯域と
    略同一の帯域特性に変更する手段であることを特徴とす
    る超音波診断装置。
  18. 【請求項18】 請求項14記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記フィルタ手段は、前記被検体の生体減衰を含むファ
    クタに因り変化する前記エコー信号帯域の特性に応じて
    前記エコー信号を整形するフィルタであることを特徴と
    する超音波診断装置。
  19. 【請求項19】 請求項1乃至18の何れか一項記載の
    超音波診断装置において、 前記断面のBモード断層像を得る手段を備え、 前記表示手段は、前記Bモード断層像と前記2次元画像
    のデータとを同時に表示する手段であることを特徴とし
    た超音波診断装置。
  20. 【請求項20】 請求項19記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記2次元画像
    のデータを重ね合わせて表示する手段であることを特徴
    とした超音波診断装置。
  21. 【請求項21】 請求項1乃至20の何れか一項記載の
    超音波診断装置において、 従来法に拠る表示モードの画像データを得る手段と、前
    記処理手段及び前記生成手段に基づく表示モードと前記
    従来法に拠る表示モードの切換を指令するモード切換指
    令手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  22. 【請求項22】 請求項21記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記従来法に拠る表示モードはBモード又はCFM(カ
    ラーフローマッピング)モードであることを特徴とする
    超音波診断装置。
  23. 【請求項23】 請求項1乃至3の何れか一項記載の超
    音波診断装置において、 前記被検体に造影剤を投与して前記断面の画像化を行う
    コントラストエコー法と前記被検体に造影剤を投与しな
    いで前記断面の画像化を行う非コントラストエコー法と
    を選択的に指示する指示手段と、この指示手段を介して
    指示されるコントラストエコー法又は非コントラストエ
    コー法に対して前記超音波パルスの送信及び前記エコー
    信号の処理の内の少なくとも一方に関して前記エコー法
    毎に最適な条件に切り替える切替制御手段とを備えたこ
    とを特徴とする超音波診断装置。
  24. 【請求項24】 請求項23記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記切替制御手段は、前記コントラストエコー法が指示
    されたときには、前記非コントラストエコー法時に比較
    して、前記断面上での送信1方向に対する並列同時受信
    の方向数を増加させるように切り替える手段であること
    を特徴とする超音波診断装置。
  25. 【請求項25】 請求項23記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記切替制御手段は、前記コントラストエコー法が指示
    されたときには、前記非コントラストエコー法時に比較
    して、前記断面上での同一方向に対する送受信の回数を
    減らすように切り替える手段であることを特徴とする超
    音波診断装置。
  26. 【請求項26】 請求項4記載の超音波診断装置におい
    て、 前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスの音圧
    レベルを、前記造影剤が消失可能であって且つ前記エコ
    ー信号に前記造影剤の消失に起因したエコー成分が含ま
    れる値に設定するか、又は、前記造影剤が不規則な振動
    を起こし且つ前記エコー信号に前記造影剤の不規則な振
    動に起因したエコー成分が含まれる値に設定する手段を
    有することを特徴とした超音波診断装置。
  27. 【請求項27】 請求項26記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記処理手段は、前記エコー信号の所望の周波数成分を
    通過させるフィルタ手段と、このフィルタ手段の帯域特
    性を前記超音波パルスの基本波成分及び高調波成分の少
    なくとも一方について前記超音波パルスに拠るラスタ方
    向の深さ毎に設定する設定手段とを備えたことを特徴と
    する超音波診断装置。
  28. 【請求項28】 請求項3記載の超音波診断装置におい
    て、 前記生成手段および前記表示手段は、前記処理手段から
    得られる造影剤に起因したエコー成分のパワーを非飽和
    の状態で処理できる広いダイナミックレンジを共に有す
    ることを特徴とした超音波診断装置。
  29. 【請求項29】 請求項28記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記広いダイナミックレンジは、Bモード用のダイナミ
    ックレンジと同等のレンジであることを特徴とした超音
    波診断装置。
  30. 【請求項30】 請求項28記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記広いダイナミックレンジは、40dBを超え且つ9
    0dBまでの値を上限値として持つように設定されたダ
    イナミックレンジであることを特徴とした超音波診断装
    置。
  31. 【請求項31】 請求項1記載の超音波診断装置におい
    て、 前記処理手段は、基準信号に基づいて前記エコー信号を
    位相検波する位相検波手段を有し、前記生成手段は、前
    記基準信号に基づいて動き要素の運動速度又はドプラ周
    波数を含む情報を演算する速度演算手段を有する一方
    で、 本装置は、前記基準信号の周波数を前記超音波パルスに
    拠るラスタ方向の深さに応じて変更する基準信号周波数
    変更手段を備えることを特徴とした超音波診断装置。
  32. 【請求項32】 請求項31記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記表示手段は、前記ドプラ周波数及び前記速度の少な
    くとも一方を表示するとともに、前記ドプラ周波数の表
    示には折り返り周波数値を付随して表示し且つ前記速度
    の表示には前記基準周波数を前記深さに応じて変更する
    ことに連動した複数の折り返り速度値を付随して表示す
    る手段を備えることを特徴とした超音波診断装置。
  33. 【請求項33】 請求項32記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記表示手段は、前記速度が同一値の場合には同一の色
    相で表わす態様にしたがって当該速度をカラーバーと伴
    に表示する手段であって、前記カラーバーはドプラ周波
    数軸と深さ軸を仮想的に又は実質的に付したカラーバー
    であり、これにより、前記深さ毎の前記ドプラ周波数に
    対応した前記速度を当該カラーバー上に2次元表示する
    ことを特徴とした超音波診断装置。
  34. 【請求項34】 請求項32記載の超音波診断装置にお
    いて、 前記表示手段は、前記速度が同一値の場合には同一の色
    相で表わす態様にしたがって当該速度をカラーバーと伴
    に表示する手段であって、前記カラーバーは速度軸と深
    さ軸を仮想的に又は実質的に付したカラーバーであり、
    これにより、前記深さ毎の折り返り速度を当該カラーバ
    ー上に2次元表示することを特徴とした超音波診断装
    置。
  35. 【請求項35】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数
    特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信し
    ながら画像化したい断面をスキャンし、且つその超音波
    パルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎
    に得るスキャン手段と、このスキャン手段によって前記
    断面上の各サンプル位置に対応して収集される前記エコ
    ー信号の時間軸方向のデータ列に高域濾波を施す処理手
    段と、この処理手段よって高域濾波されたエコー信号か
    ら動き要素の信号又は造影剤の信号の輝度又はパワーの
    情報を生成する生成手段と、前記輝度又はパワーの情報
    に基づく画像表示を行う表示手段とを備えたことを特徴
    とする超音波診断装置。
  36. 【請求項36】 請求項35記載の超音波診断装置にお
    いて、 本装置は、前記断面のBモード断層像を得る手段を更に
    備え、 前記生成手段は、前記動き要素の信号又は造影剤の信号
    のパワーの情報を生成する手段であって、パワー演算処
    理を行う演算手段を有し、 前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記動き要素の
    信号又は造影剤の信号のパワー情報を重ね合わせて表示
    する手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  37. 【請求項37】 請求項35記載の超音波診断装置にお
    いて、 本装置は、前記断面のBモード断層像を得る手段を更に
    備え、 前記生成手段は、前記動き要素の信号又は造影剤の信号
    の輝度の情報を手段であって、輝度演算を行う演算手段
    を有し、 前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記動き要素の
    信号又は造影剤の信号の輝度情報を重ね合わせて表示す
    る手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  38. 【請求項38】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数
    特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信し
    ながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パ
    ルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に
    得るスキャン手段と、このスキャン手段によって前記断
    面上の各サンプル位置に対応して収集される前記エコー
    信号の時間軸方向のデータ列に差分処理を施す処理手段
    と、この処理手段よって差分処理されたエコー信号から
    動き要素の信号又は造影剤の信号の輝度又はパワーの情
    報を生成する生成手段と、前記輝度又はパワーの情報に
    基づく画像表示を行う表示手段とを備えたことを特徴と
    する超音波診断装置。
  39. 【請求項39】 請求項38記載の超音波診断装置にお
    いて、 本装置は、前記断面のBモード断層像を得る手段を備
    え、 前記生成手段は、前記動き要素の信号又は造影剤の信号
    のパワーの情報を生成する手段であって、パワー演算処
    理を行う演算手段を有し、 前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記動き要素の
    信号又は造影剤の信号のパワー情報を重ね合わせて表示
    する手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  40. 【請求項40】 請求項38記載の超音波診断装置にお
    いて、 本装置は、前記断面のBモード断層像を得る手段を備
    え、 前記生成手段は、前記動き要素の信号又は造影剤の信号
    の輝度の情報を得る手段であって、輝度処理を行う演算
    手段を有し、 前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記動き要素の
    信号又は造影剤の信号の輝度情報を重ね合わせて表示す
    る手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  41. 【請求項41】 請求項1乃至4の何れか一項記載の超
    音波診断装置において、 前記生成手段は、前記処理手段により処理されたエコー
    信号から前記2次元画像のデータとしてCFM(カラー
    フローマッピング)モードに拠る前記動き要素の運動速
    度のカラーマッピング像の画像データを生成する手段で
    ある超音波診断装置。
  42. 【請求項42】 請求項1乃至41の何れか一項記載の
    超音波診断装置において、 前記スキャン手段は、前記超音波パルスの送受信を担う
    プローブと、このプローブが出力した前記超音波パルス
    の反射に伴う電気量の信号をデジタル量に変換するA/
    D変換器と、このデジタル量の信号を遅延加算して前記
    エコー信号を生成する遅延制御回路とを備え、 前記処理手段及び前記生成手段は、前記デジタル量のエ
    コー信号に対して各手段に割り当てられた処理および演
    算を行うデジタルタイプの回路構成を備えることを特徴
    とした超音波診断装置。
  43. 【請求項43】 超音波送受信用のプローブと、広帯域
    なパルス駆動信号を設定する設定手段と、このパルス駆
    動信号で前記プローブを駆動して被検体に超音波パルス
    を送信させるプローブ駆動手段と、前記パルス駆動信号
    を遅延制御することで前記被検体の断面に沿って同一方
    向に前記超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信させる
    送信手段と、前記プローブで受信される前記超音波パル
    スの反射に伴うエコー信号を受信する受信手段と、この
    エコー信号から画像および情報の少なくとも一方を生成
    して表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音
    波診断装置。
  44. 【請求項44】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数
    特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信し
    ながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パ
    ルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に
    得て、このスキャンによって前記断面上の各サンプル位
    置に対応して収集される前記エコー信号の時間軸方向の
    データ列に高域濾波処理又は差分処理を施し、この処理
    された信号を2次元画像のデータに生成し、この2次元
    画像のデータに基づく画像表示を行うことを特徴とした
    超音波診断方法。
  45. 【請求項45】 被検体内の同一方向に広帯域な周波数
    特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信し
    ながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パ
    ルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に
    得て、このスキャンによって前記断面上の各サンプル位
    置に対応して収集される前記エコー信号の時間軸方向の
    データ列に動き要素又は位相の変化を抽出する所望処理
    を施し、この処理された信号を2次元画像のデータに生
    成し、この2次元画像のデータに基づく画像表示を行う
    ことを特徴とした超音波診断方法。
  46. 【請求項46】 請求項44又は45記載の超音波診断
    方法において、 前記所望処理は、高域濾波又は差分処理であることを特
    徴とした超音波診断方法。
  47. 【請求項47】 請求項46記載の超音波診断方法にお
    いて、 前記スキャン、処理、及び生成の工程は、前記被検体に
    造影剤を投与した状態で実施される工程であることを特
    徴とした超音波診断方法。
  48. 【請求項48】 請求項44乃至47の何れか一項記載
    の超音波診断方法において、 前記超音波パルスは、Bモードで断層像を得るために用
    いる超音波パルスと同程度に広帯域な周波数特性を有す
    ることを特徴とした超音波診断方法。
  49. 【請求項49】 請求項48記載の超音波診断方法にお
    いて、 前記2次元画像のデータは、前記被検体の断面内の動き
    要素により反射された前記エコー信号の輝度情報又はパ
    ワー情報を表すデータであることを特徴とした超音波診
    断方法。
  50. 【請求項50】 請求項46記載の超音波診断方法にお
    いて、 前記処理は、前記エコー信号を、周波数が前記超音波パ
    ルスに拠るラスタ方向の深さに応じて変更される基準信
    号に基づいて位相検波し、この位相検波されたエコー信
    号に前記高域濾波又は差分処理を施すことを特徴とした
    超音波診断方法。
  51. 【請求項51】 請求項46記載の超音波診断方法にお
    いて、 前記処理は、前記エコー信号の所望の周波数成分を通過
    させ、このフィルタリングされたエコー信号に前記高域
    濾波又は差分処理を施すことを特徴とした超音波診断方
    法。
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