JP2000337510A - 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 - Google Patents
耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環Info
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- JP2000337510A JP2000337510A JP14437599A JP14437599A JP2000337510A JP 2000337510 A JP2000337510 A JP 2000337510A JP 14437599 A JP14437599 A JP 14437599A JP 14437599 A JP14437599 A JP 14437599A JP 2000337510 A JP2000337510 A JP 2000337510A
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Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【課題】 耐摩耗性および熱伝導性にすぐれ、かつ相手
攻撃性の小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリ
ング耐摩環の提供。 【解決手段】 遊離黒鉛形成成分としてC:0.5〜5
%、素地形成成分として、Cr、Mn、S、B、Ni、
Cu、Moを特定し、さらに周期律表の4a、5aおよ
び6a族金属の炭化物、窒化物および炭窒化物からな
り、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1〜5μmの
平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:0.1〜5
%、を含有し、残りが素地形成成分としてのFeと不可
避不純物からなる組成、並びに素地が実質的にオーステ
ナイトからなり、遊離黒鉛は素地には実質的に存在せ
ず、気孔内に析出して成長した状態で存在し、かつ素地
には上記硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織を
有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成する。
攻撃性の小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリ
ング耐摩環の提供。 【解決手段】 遊離黒鉛形成成分としてC:0.5〜5
%、素地形成成分として、Cr、Mn、S、B、Ni、
Cu、Moを特定し、さらに周期律表の4a、5aおよ
び6a族金属の炭化物、窒化物および炭窒化物からな
り、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1〜5μmの
平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:0.1〜5
%、を含有し、残りが素地形成成分としてのFeと不可
避不純物からなる組成、並びに素地が実質的にオーステ
ナイトからなり、遊離黒鉛は素地には実質的に存在せ
ず、気孔内に析出して成長した状態で存在し、かつ素地
には上記硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織を
有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ピストンにおけ
るトップリング溝が上方位置移動した条件でも、すぐれ
た耐摩耗性を発揮し、かつ熱伝導性にもすぐれ、さらに
相手攻撃性(ピストンリング攻撃性)も小さい遊離黒鉛
析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環に関するもの
である。
るトップリング溝が上方位置移動した条件でも、すぐれ
た耐摩耗性を発揮し、かつ熱伝導性にもすぐれ、さらに
相手攻撃性(ピストンリング攻撃性)も小さい遊離黒鉛
析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特公昭57−32743号
公報に記載されるように、例えばトラック・バス用ディ
ーゼルエンジンのピストンが、図1(a)の概略縦断面
図および同(b)の要部縦断面図で示される構造を有
し、かつ図示される通りトップランド部直下のトップリ
ング溝にはピストンリング耐摩環がピストン鋳物本体の
鋳造時に鋳ぐるまれて設けられた構造をもつことは良く
知られるところである。また、ピストン鋳物本体が、主
としてSi:8〜13重量%を含有したAl−Si系合
金で構成され、さらに上記ピストンリング耐摩環には、
良好な耐摩耗性と相手攻撃性の低いFe−Ni−Cu系
焼結材料(組成:Fe−8〜25%Ni−3.5〜10
%Cu−2.0%以下C)や、Ni−Cu−Cr系オー
ステナイト鋳鉄であるニレジスト鋳鉄(組成:Fe−
1.5〜3.5%Cr−0.8〜1.5%Mn−3%以
下C−13〜22%Ni−8%以下Cu−1.0〜2.
8%Si、以上重量%、以下%は重量%を示す)などが
広く用いられていることも良く知られるところである。
公報に記載されるように、例えばトラック・バス用ディ
ーゼルエンジンのピストンが、図1(a)の概略縦断面
図および同(b)の要部縦断面図で示される構造を有
し、かつ図示される通りトップランド部直下のトップリ
ング溝にはピストンリング耐摩環がピストン鋳物本体の
鋳造時に鋳ぐるまれて設けられた構造をもつことは良く
知られるところである。また、ピストン鋳物本体が、主
としてSi:8〜13重量%を含有したAl−Si系合
金で構成され、さらに上記ピストンリング耐摩環には、
良好な耐摩耗性と相手攻撃性の低いFe−Ni−Cu系
焼結材料(組成:Fe−8〜25%Ni−3.5〜10
%Cu−2.0%以下C)や、Ni−Cu−Cr系オー
ステナイト鋳鉄であるニレジスト鋳鉄(組成:Fe−
1.5〜3.5%Cr−0.8〜1.5%Mn−3%以
下C−13〜22%Ni−8%以下Cu−1.0〜2.
8%Si、以上重量%、以下%は重量%を示す)などが
広く用いられていることも良く知られるところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、自動車に対する
排気ガス規制は年々厳しさを増す傾向にあり、この対応
手段の1つとして、トラック・バス用ディーゼルエンジ
ンでは、ピストンのトップランド部直下のトップリング
溝の位置を上方へ移動させてトップランド部外周面、ト
ップリング上面、およびシリンダー内周面で形成される
空隙の容量を小さくし、もって未燃焼のまま大気に排出
されてしまう前記空隙部分のガス量を少なくする試みも
なされているが、このようにトップリング溝の位置を上
方へ移動すると、トップリング溝の温度が急激に高くな
り、この結果ピストンリング耐摩環が上記のFe−Ni
−Cu系焼結材料やニレジスト鋳鉄で構成されていて
も、これの摩耗進行の急速な進行は避けられず、この摩
耗現象は近年のエンジンの高出力化および大型化に伴っ
て一段と加速され、この摩耗部分からガス漏れが発生す
るようになるのが現状である。
排気ガス規制は年々厳しさを増す傾向にあり、この対応
手段の1つとして、トラック・バス用ディーゼルエンジ
ンでは、ピストンのトップランド部直下のトップリング
溝の位置を上方へ移動させてトップランド部外周面、ト
ップリング上面、およびシリンダー内周面で形成される
空隙の容量を小さくし、もって未燃焼のまま大気に排出
されてしまう前記空隙部分のガス量を少なくする試みも
なされているが、このようにトップリング溝の位置を上
方へ移動すると、トップリング溝の温度が急激に高くな
り、この結果ピストンリング耐摩環が上記のFe−Ni
−Cu系焼結材料やニレジスト鋳鉄で構成されていて
も、これの摩耗進行の急速な進行は避けられず、この摩
耗現象は近年のエンジンの高出力化および大型化に伴っ
て一段と加速され、この摩耗部分からガス漏れが発生す
るようになるのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、ピストンにおけるトップリング
溝の上方位置移動を可能にするピストンリング耐摩環を
開発すべく研究を行った結果、原料粉末として、基本的
にFeに、合金成分としてS(硫黄)成分、NiとS成
分、あるいはCrとMnとS成分、さらに必要に応じて
これらの成分に加えてMo成分をそれぞれ所定量含有さ
せてなるアトマイズFe合金粉末と、六方晶窒化ほう素
(以下、h−BNで示す)粉末および/またはほう酸粉
末を用い、さらにNi粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu
粉末、S(硫黄)粉末、および黒鉛粉末を用い、さらに
加えて例えばTiC、TiN、TiCN、ZrC、Hf
N、VC、WC、Mo2 C、Cr3 C2 、(Zr,C
r)C、(Ta,Nb)N、および(Ti,Mo)CN
などの化学記号で表される周期律表の4a、5a、およ
び6a族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、C
r、Mo、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化
物、並びにこれらの2種以上の固溶体からなり、かつ
0.1〜5μmの平均粒径を有する硬質金属炭・窒化物
粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に配合
し、通常の条件で混合し、圧粉体にプレス成形した状態
で、前記圧粉体を、還元性雰囲気中、相対的に高い焼結
温度となる1100〜1250℃の範囲内の所定温度に
加熱し、所定時間保持後、相対的に遅い冷却速度、望ま
しくは40℃/分以下の冷却速度で、少なくとも600
℃まで冷却の条件で焼結して、遊離黒鉛形成成分および
素地強化成分として、C:0.5〜5%、いずれも素地
形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、周期律表の4a、5a、および6a
族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、M
o、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化物、並
びにこれらの2種以上の固溶体のうちの1種または2種
以上からなり、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1
〜5μmの平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:
0.1〜5%、を含有し、残りが素地形成成分としての
Feと不可避不純物からなる組成を有し、かつ望ましく
は6.0〜7.2g/cm3 の密度、すなわち80〜9
5%の理論密度比、さらに言い換えれば光学顕微鏡によ
る断面組織観察で、組織全体に占める割合で5〜20面
積%の気孔をもった鉄系焼結材料でピストンリング耐摩
環を形成すると、このピストンリング耐摩環において
は、前記焼結温度で、素地を形成する上記Fe合金粉末
にC成分(黒鉛粉末)が固溶し、この固溶したC成分が
上記h−BN粉末およびほう酸粉末のB成分と前記Fe
合金粉末中に固溶のS成分の共働作用で、冷却過程で気
孔内に遊離黒鉛として析出し、成長して、すぐれた耐焼
付性と高温潤滑性を示すようになり、一方素地は、析出
遊離黒鉛が実質的に存在しないので、著しく強化される
ようになるばかりでなく、Ni、Cr,およびMn成
分、さらに必要に応じてMo成分が固溶して、耐熱性の
すぐれたオーステナイトとなって、低い相手攻撃性で、
かつすぐれた耐熱塑性変形性を発揮し、この結果ピスト
ンにおけるトップリング溝を上方位置移動しても、前記
素地に分散分布する上記のビッカース硬さ(Hv )で1
800〜3200の高硬度を有する硬質金属炭・窒化物
粒子による耐摩耗性向上効果およびCu成分の含有によ
る熱伝導性向上効果と相まって、すぐれた性能を長期に
亘って発揮するようになるという研究結果を得たのであ
る。
上述のような観点から、ピストンにおけるトップリング
溝の上方位置移動を可能にするピストンリング耐摩環を
開発すべく研究を行った結果、原料粉末として、基本的
にFeに、合金成分としてS(硫黄)成分、NiとS成
分、あるいはCrとMnとS成分、さらに必要に応じて
これらの成分に加えてMo成分をそれぞれ所定量含有さ
せてなるアトマイズFe合金粉末と、六方晶窒化ほう素
(以下、h−BNで示す)粉末および/またはほう酸粉
末を用い、さらにNi粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu
粉末、S(硫黄)粉末、および黒鉛粉末を用い、さらに
加えて例えばTiC、TiN、TiCN、ZrC、Hf
N、VC、WC、Mo2 C、Cr3 C2 、(Zr,C
r)C、(Ta,Nb)N、および(Ti,Mo)CN
などの化学記号で表される周期律表の4a、5a、およ
び6a族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、C
r、Mo、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化
物、並びにこれらの2種以上の固溶体からなり、かつ
0.1〜5μmの平均粒径を有する硬質金属炭・窒化物
粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に配合
し、通常の条件で混合し、圧粉体にプレス成形した状態
で、前記圧粉体を、還元性雰囲気中、相対的に高い焼結
温度となる1100〜1250℃の範囲内の所定温度に
加熱し、所定時間保持後、相対的に遅い冷却速度、望ま
しくは40℃/分以下の冷却速度で、少なくとも600
℃まで冷却の条件で焼結して、遊離黒鉛形成成分および
素地強化成分として、C:0.5〜5%、いずれも素地
形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、周期律表の4a、5a、および6a
族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、M
o、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化物、並
びにこれらの2種以上の固溶体のうちの1種または2種
以上からなり、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1
〜5μmの平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:
0.1〜5%、を含有し、残りが素地形成成分としての
Feと不可避不純物からなる組成を有し、かつ望ましく
は6.0〜7.2g/cm3 の密度、すなわち80〜9
5%の理論密度比、さらに言い換えれば光学顕微鏡によ
る断面組織観察で、組織全体に占める割合で5〜20面
積%の気孔をもった鉄系焼結材料でピストンリング耐摩
環を形成すると、このピストンリング耐摩環において
は、前記焼結温度で、素地を形成する上記Fe合金粉末
にC成分(黒鉛粉末)が固溶し、この固溶したC成分が
上記h−BN粉末およびほう酸粉末のB成分と前記Fe
合金粉末中に固溶のS成分の共働作用で、冷却過程で気
孔内に遊離黒鉛として析出し、成長して、すぐれた耐焼
付性と高温潤滑性を示すようになり、一方素地は、析出
遊離黒鉛が実質的に存在しないので、著しく強化される
ようになるばかりでなく、Ni、Cr,およびMn成
分、さらに必要に応じてMo成分が固溶して、耐熱性の
すぐれたオーステナイトとなって、低い相手攻撃性で、
かつすぐれた耐熱塑性変形性を発揮し、この結果ピスト
ンにおけるトップリング溝を上方位置移動しても、前記
素地に分散分布する上記のビッカース硬さ(Hv )で1
800〜3200の高硬度を有する硬質金属炭・窒化物
粒子による耐摩耗性向上効果およびCu成分の含有によ
る熱伝導性向上効果と相まって、すぐれた性能を長期に
亘って発揮するようになるという研究結果を得たのであ
る。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、遊離黒鉛形成成分および素地強化
成分として、C:0.5〜5%、いずれも素地形成成分
として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、周期律表の4a、5a、および6a
族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、M
o、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化物、並
びにこれらの2種以上の固溶体のうちの1種または2種
以上からなり、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1
〜5μmの平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:
0.1〜5%、を含有し、残りが素地形成成分としての
Feと不可避不純物からなる組成、並びに素地が実質的
にオーステナイトからなり、遊離黒鉛は、前記素地には
実質的に存在せず、気孔内に析出して成長した状態で存
在し、かつ前記素地には上記の硬質金属炭・窒化物粒子
が分散分布した組織を有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料
で構成してなる、相手攻撃性が小さく、かつ熱伝導性に
すぐれ、ピストンにおけるトップリング溝の上方位置移
動によってもすぐれた耐摩耗性を発揮する遊離黒鉛析出
鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環に特徴を有するも
のである。
されたものであって、遊離黒鉛形成成分および素地強化
成分として、C:0.5〜5%、いずれも素地形成成分
として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、周期律表の4a、5a、および6a
族金属(Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、M
o、およびW)の炭化物、窒化物、および炭窒化物、並
びにこれらの2種以上の固溶体のうちの1種または2種
以上からなり、電子顕微鏡による断面組織観察で0.1
〜5μmの平均粒径を示す硬質金属炭・窒化物粒子:
0.1〜5%、を含有し、残りが素地形成成分としての
Feと不可避不純物からなる組成、並びに素地が実質的
にオーステナイトからなり、遊離黒鉛は、前記素地には
実質的に存在せず、気孔内に析出して成長した状態で存
在し、かつ前記素地には上記の硬質金属炭・窒化物粒子
が分散分布した組織を有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料
で構成してなる、相手攻撃性が小さく、かつ熱伝導性に
すぐれ、ピストンにおけるトップリング溝の上方位置移
動によってもすぐれた耐摩耗性を発揮する遊離黒鉛析出
鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環に特徴を有するも
のである。
【0006】つぎに、この発明のピストンリング耐摩環
において、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料の
成分組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a)C C成分には、素地に固溶して強度を向上させるほか、上
記の通りBおよびS成分の共存作用で気孔内に遊離黒鉛
として析出して耐焼付性および潤滑性を向上させ、もっ
て耐摩耗性の向上に寄与すると共に、相手攻撃性を緩和
する作用をもつが、その含有量が0.5%未満では前記
作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が5
%を越えると、強度に急激な低下傾向が現れるようにな
ることから、その含有量を0.5〜5%、望ましくは1
〜3%と定めた。
において、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料の
成分組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a)C C成分には、素地に固溶して強度を向上させるほか、上
記の通りBおよびS成分の共存作用で気孔内に遊離黒鉛
として析出して耐焼付性および潤滑性を向上させ、もっ
て耐摩耗性の向上に寄与すると共に、相手攻撃性を緩和
する作用をもつが、その含有量が0.5%未満では前記
作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が5
%を越えると、強度に急激な低下傾向が現れるようにな
ることから、その含有量を0.5〜5%、望ましくは1
〜3%と定めた。
【0007】(b)Cr Cr成分は、オーステナイトの素地に固溶して、これの
耐熱性および耐熱塑性変形性を向上させ、もってピスト
ンリング耐摩環の耐摩耗性向上に寄与する作用をもつ
が、その含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向
上効果が得られず、一方その含有量が5%を越えると、
B成分およびS成分による黒鉛の析出および成長作用が
抑制されるようになることから、その含有量を0.5〜
5%、望ましくは1〜3%と定めた。
耐熱性および耐熱塑性変形性を向上させ、もってピスト
ンリング耐摩環の耐摩耗性向上に寄与する作用をもつ
が、その含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向
上効果が得られず、一方その含有量が5%を越えると、
B成分およびS成分による黒鉛の析出および成長作用が
抑制されるようになることから、その含有量を0.5〜
5%、望ましくは1〜3%と定めた。
【0008】(c)Mn Mn成分は、素地に固溶して強度を向上させる作用をも
つが、その含有量が0.2%未満では所望の強度向上効
果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、B成
分およびS成分による黒鉛化が著しく阻害されるように
なることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは
0.4〜0.8%と定めた。
つが、その含有量が0.2%未満では所望の強度向上効
果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、B成
分およびS成分による黒鉛化が著しく阻害されるように
なることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは
0.4〜0.8%と定めた。
【0009】(d)SおよびB これらの成分は、共働作用により固溶したC成分を冷却
過程で微細な遊離黒鉛として主に気孔内に積極的に析出
させ、成長させる作用をもち、このような黒鉛化作用
は、S成分については、原則として予めFe、Fe−N
i合金やFe−Ni−Mo合金、さらにFe−Cr−M
n合金やFe−Cr−Mn−Mo合金にそれぞれ所定量
のS成分を含有させた溶湯をアトマイズして形成したF
e合金粉末を用い、また、B成分については、ほう素源
としてh−BN粉末およびほう酸粉末をそれぞれ原料粉
末として用いることにより一段と促進されるものである
が、その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも0.
05%未満になると、所望の黒鉛化を図ることができ
ず、この結果耐焼付性および高温潤滑性の向上、すなわ
ち耐摩耗性の向上が不十分となるばかりでなく、硬質の
セメンタイト(Fe3 C)が析出するようになって、相
手攻撃性(ピストンリング攻撃性)が増大するようにな
り、一方その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも
1%を越えると、焼結性が低下し、所望の強度を確保す
ることができなくなることから、その含有量を、それぞ
れS:0.05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%、
B:0.05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%と定
めた。
過程で微細な遊離黒鉛として主に気孔内に積極的に析出
させ、成長させる作用をもち、このような黒鉛化作用
は、S成分については、原則として予めFe、Fe−N
i合金やFe−Ni−Mo合金、さらにFe−Cr−M
n合金やFe−Cr−Mn−Mo合金にそれぞれ所定量
のS成分を含有させた溶湯をアトマイズして形成したF
e合金粉末を用い、また、B成分については、ほう素源
としてh−BN粉末およびほう酸粉末をそれぞれ原料粉
末として用いることにより一段と促進されるものである
が、その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも0.
05%未満になると、所望の黒鉛化を図ることができ
ず、この結果耐焼付性および高温潤滑性の向上、すなわ
ち耐摩耗性の向上が不十分となるばかりでなく、硬質の
セメンタイト(Fe3 C)が析出するようになって、相
手攻撃性(ピストンリング攻撃性)が増大するようにな
り、一方その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも
1%を越えると、焼結性が低下し、所望の強度を確保す
ることができなくなることから、その含有量を、それぞ
れS:0.05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%、
B:0.05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%と定
めた。
【0010】(e)Ni Ni成分は、素地に固溶してオーステナイトを形成し、
かつ上記の通りCr成分との共存固溶によってオーステ
ナイトの耐熱性および耐熱塑性変形性を一段と向上さ
せ、もって耐摩耗性向上に大いに寄与する作用をもつ
が、その含有量が10%未満では前記作用に所望の効果
が得られず、一方その含有量が20%を越えると強度が
急激に低下するようになることから、その含有量を10
〜20%、望ましくは12〜18%と定めた。
かつ上記の通りCr成分との共存固溶によってオーステ
ナイトの耐熱性および耐熱塑性変形性を一段と向上さ
せ、もって耐摩耗性向上に大いに寄与する作用をもつ
が、その含有量が10%未満では前記作用に所望の効果
が得られず、一方その含有量が20%を越えると強度が
急激に低下するようになることから、その含有量を10
〜20%、望ましくは12〜18%と定めた。
【0011】(f)Cu Cu成分は、液相焼結による強度向上のほか、熱伝導性
を一段と向上させ、かつ相手攻撃性を緩和する作用をも
つが、その含有量が8.5%未満では前記作用に所望の
効果が得られず、一方その含有量が20%を越えると、
硬さが急激に低下し、耐摩耗性が低下するようになるこ
とから、その含有量を8.5〜20%、望ましくは12
〜18%と定めた。
を一段と向上させ、かつ相手攻撃性を緩和する作用をも
つが、その含有量が8.5%未満では前記作用に所望の
効果が得られず、一方その含有量が20%を越えると、
硬さが急激に低下し、耐摩耗性が低下するようになるこ
とから、その含有量を8.5〜20%、望ましくは12
〜18%と定めた。
【0012】(g)硬質金属炭・窒化物粒子 硬質金属炭・窒化物粒子は、いずれもHv :1800〜
3200の範囲内の所定の高硬度を有し、耐摩耗性向上
に寄与するが、その含有割合が0.1%未満では所望の
すぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その含
有割合が5%を越えると、相手部材であるボールスタッ
ドに対する攻撃性が増大し、ボールスタッドの摩耗が著
しく促進されるようになることから、その含有割合を
0.1〜5%、望ましくは0.3〜4%と定めた。ま
た、この場合硬質金属炭・窒化物粒子の平均粒径を0.
1μm未満にするには、原料粉末として平均粒径:0.
1μm未満の硬質金属炭・窒化物粉末を用いる必要があ
るが、平均粒径:0.1μm未満の硬質金属炭・窒化物
粉末の調整はコスト高の原因となるばかりでなく、平均
粒径が0.1μm未満になると、所望のすぐれた耐摩耗
性向上効果を得るのが困難になり、一方平均粒径が5μ
mを越えると、素地の強度低下は免れず、しかも相手部
材であるボールスタッドに対する攻撃性も増大するよう
になることから、その平均粒径を0.1〜5μm、望ま
しくは0.5〜4μmと定めた。
3200の範囲内の所定の高硬度を有し、耐摩耗性向上
に寄与するが、その含有割合が0.1%未満では所望の
すぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その含
有割合が5%を越えると、相手部材であるボールスタッ
ドに対する攻撃性が増大し、ボールスタッドの摩耗が著
しく促進されるようになることから、その含有割合を
0.1〜5%、望ましくは0.3〜4%と定めた。ま
た、この場合硬質金属炭・窒化物粒子の平均粒径を0.
1μm未満にするには、原料粉末として平均粒径:0.
1μm未満の硬質金属炭・窒化物粉末を用いる必要があ
るが、平均粒径:0.1μm未満の硬質金属炭・窒化物
粉末の調整はコスト高の原因となるばかりでなく、平均
粒径が0.1μm未満になると、所望のすぐれた耐摩耗
性向上効果を得るのが困難になり、一方平均粒径が5μ
mを越えると、素地の強度低下は免れず、しかも相手部
材であるボールスタッドに対する攻撃性も増大するよう
になることから、その平均粒径を0.1〜5μm、望ま
しくは0.5〜4μmと定めた。
【0013】(h)Mo Mo成分は、素地に固溶して強度を向上させる作用をも
つので、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.
1%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その
含有量が2%を越えると、原料粉末(混合粉末)のプレ
ス成形性(圧縮性)が低下し、この結果焼結材料の密度
が6.0g/cm3 未満となってしまい、望ましい密度
である6.0〜7.2g/cm3 の密度が得られず、所
望の強度を確保することができなくなることから、その
含有量を0.1〜2%、望ましくは0.5〜1.5%と
定めた。
つので、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.
1%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その
含有量が2%を越えると、原料粉末(混合粉末)のプレ
ス成形性(圧縮性)が低下し、この結果焼結材料の密度
が6.0g/cm3 未満となってしまい、望ましい密度
である6.0〜7.2g/cm3 の密度が得られず、所
望の強度を確保することができなくなることから、その
含有量を0.1〜2%、望ましくは0.5〜1.5%と
定めた。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明のピストンリング耐摩環
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも10〜150μmの範囲内の所定の平均粒径を有
するアトマイズFe−S合金粉末(S:0.30%含
有)、アトマイズFe−Ni−Mo−S合金粉末(N
i:4.1%、Mo:1.5%、S:0.11%含
有)、アトマイズFe−Cr−Mn−S合金粉末(C
r:2.1%、Mn:0.71%、S:0.22%含
有)、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu粉末、S
(硫黄)粉末、黒鉛粉末、c−BN粉末、およびほう酸
粉末、さらに硬質金属炭・窒化物粒子形成用原料粉末と
して、いずれも0.1〜5μmの範囲内の所定の平均粒
径を有するTiC粉末、TiN粉末、TiCN粉末、Z
rC粉末、HfN粉末、VC粉末、WC粉末、Mo2 C
粉末、Cr3 C2 粉末、(Zr,Cr)C[重量比で
(以下、同じ)、ZrC/Cr3 C2 =1/2]粉末、
(Ta,Nb)N[TaN/NbN=2/1]粉末、お
よび(Ti,Mo)CN[TiN/Mo2C=1/3]
粉末を用意し、これら原料粉末を表1、2に示される配
合組成に配合し、潤滑材としてステアリン酸亜鉛を0.
7%添加してV型ミキサーにて30分間混合し、6to
n/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体
をアンモニア分解ガス雰囲気中、温度:1140℃に1
時間保持した後、35℃/分の冷却速度で550℃まで
徐冷後放冷の条件で焼結することにより表1、2に示さ
れる配合組成と実質的に同じ成分組成を有し、かつ外
径:120mm×内径:102mm×厚さ:7mmの寸
法をもった本発明ピストンリング耐摩環(以下、本発明
耐摩環と云う)1〜27をそれぞれ製造した。上記本発
明耐摩環1〜27は、いずれも6.2〜7.1g/cm
3 の範囲内の密度を有し、その任意断面を光学および電
子顕微鏡を用いて、組織観察したところ、素地がオース
テナイトからなり、かつ気孔内に遊離黒鉛が析出成長
し、前記素地には実質的に遊離黒鉛の析出がなく、さら
に前記素地には金属炭・窒化物粒子が分散分布する組織
を示し、さらに光学顕微鏡(倍率:100倍)および電
子顕微鏡(倍率:10000倍)で観察した組織写真に
より、組織全体に占める気孔(遊離黒鉛)の割合および
硬質金属炭・窒化物粒子の平均粒径を計測したところ、
表3に示される結果を示した。また、比較の目的で、通
常の高周波溶解炉にて、同じく表2に示される成分組成
をもったニレジスト鋳鉄の溶湯を調製し、これをシェル
モールド鋳型に鋳造して、同じ寸法をもった従来ピスト
ンリング耐摩環(以下、従来耐摩環と云う)を製造し
た。
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも10〜150μmの範囲内の所定の平均粒径を有
するアトマイズFe−S合金粉末(S:0.30%含
有)、アトマイズFe−Ni−Mo−S合金粉末(N
i:4.1%、Mo:1.5%、S:0.11%含
有)、アトマイズFe−Cr−Mn−S合金粉末(C
r:2.1%、Mn:0.71%、S:0.22%含
有)、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu粉末、S
(硫黄)粉末、黒鉛粉末、c−BN粉末、およびほう酸
粉末、さらに硬質金属炭・窒化物粒子形成用原料粉末と
して、いずれも0.1〜5μmの範囲内の所定の平均粒
径を有するTiC粉末、TiN粉末、TiCN粉末、Z
rC粉末、HfN粉末、VC粉末、WC粉末、Mo2 C
粉末、Cr3 C2 粉末、(Zr,Cr)C[重量比で
(以下、同じ)、ZrC/Cr3 C2 =1/2]粉末、
(Ta,Nb)N[TaN/NbN=2/1]粉末、お
よび(Ti,Mo)CN[TiN/Mo2C=1/3]
粉末を用意し、これら原料粉末を表1、2に示される配
合組成に配合し、潤滑材としてステアリン酸亜鉛を0.
7%添加してV型ミキサーにて30分間混合し、6to
n/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体
をアンモニア分解ガス雰囲気中、温度:1140℃に1
時間保持した後、35℃/分の冷却速度で550℃まで
徐冷後放冷の条件で焼結することにより表1、2に示さ
れる配合組成と実質的に同じ成分組成を有し、かつ外
径:120mm×内径:102mm×厚さ:7mmの寸
法をもった本発明ピストンリング耐摩環(以下、本発明
耐摩環と云う)1〜27をそれぞれ製造した。上記本発
明耐摩環1〜27は、いずれも6.2〜7.1g/cm
3 の範囲内の密度を有し、その任意断面を光学および電
子顕微鏡を用いて、組織観察したところ、素地がオース
テナイトからなり、かつ気孔内に遊離黒鉛が析出成長
し、前記素地には実質的に遊離黒鉛の析出がなく、さら
に前記素地には金属炭・窒化物粒子が分散分布する組織
を示し、さらに光学顕微鏡(倍率:100倍)および電
子顕微鏡(倍率:10000倍)で観察した組織写真に
より、組織全体に占める気孔(遊離黒鉛)の割合および
硬質金属炭・窒化物粒子の平均粒径を計測したところ、
表3に示される結果を示した。また、比較の目的で、通
常の高周波溶解炉にて、同じく表2に示される成分組成
をもったニレジスト鋳鉄の溶湯を調製し、これをシェル
モールド鋳型に鋳造して、同じ寸法をもった従来ピスト
ンリング耐摩環(以下、従来耐摩環と云う)を製造し
た。
【0015】ついで、上記の各種耐摩環を、通常の条件
で前処理、すなわち脱脂、乾燥、および温度:700℃
の後述の鋳造Al−Si系合金溶湯と同じ組成をもった
Al−Si系合金溶湯中に5分間浸漬の前処理を施した
状態で、それぞれ精密鋳造金型内に設置し、これにAl
−12.4%Si−1.12%Cu−0.96%Mg−
1.06%Niの組成をもったAl−Si系合金溶湯を
鋳造してピストン本体を形成すると共に、前記耐摩環を
鋳包み、ついで前記耐摩環の外周面に沿って切削加工に
て溝深さ:7mm×溝幅:3mmの寸法のトップリング
溝を形成することにより、トップランド部上面とトップ
リング溝上面間の距離を5mm(この種のピストンで従
来採用されている前記距離は通常15mm)としたトッ
プリング溝上方位置移動のAl−Si系合金製ピストン
をそれぞれ製造した。
で前処理、すなわち脱脂、乾燥、および温度:700℃
の後述の鋳造Al−Si系合金溶湯と同じ組成をもった
Al−Si系合金溶湯中に5分間浸漬の前処理を施した
状態で、それぞれ精密鋳造金型内に設置し、これにAl
−12.4%Si−1.12%Cu−0.96%Mg−
1.06%Niの組成をもったAl−Si系合金溶湯を
鋳造してピストン本体を形成すると共に、前記耐摩環を
鋳包み、ついで前記耐摩環の外周面に沿って切削加工に
て溝深さ:7mm×溝幅:3mmの寸法のトップリング
溝を形成することにより、トップランド部上面とトップ
リング溝上面間の距離を5mm(この種のピストンで従
来採用されている前記距離は通常15mm)としたトッ
プリング溝上方位置移動のAl−Si系合金製ピストン
をそれぞれ製造した。
【0016】さらに、これらのピストンを、排気量:8
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3600rpm、エンジンの冷却温度:
98℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル
出力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環の
トップリング溝の溝幅を外周面にそって測定し、この測
定結果より算出した最大摩耗量(試験後の最大溝幅−試
験前の溝幅)をもって耐摩耗性を評価し、また上記トッ
プリング溝に嵌合されたピストンリング(Fe−2.7
%Si−3.5%Cの組成をもった球状黒鉛鋳鉄製でC
rメッキしたもの)の上下面における最大摩耗深さを測
定することにより相手攻撃性を評価した。これらの測定
結果を表3に示した。
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3600rpm、エンジンの冷却温度:
98℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル
出力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環の
トップリング溝の溝幅を外周面にそって測定し、この測
定結果より算出した最大摩耗量(試験後の最大溝幅−試
験前の溝幅)をもって耐摩耗性を評価し、また上記トッ
プリング溝に嵌合されたピストンリング(Fe−2.7
%Si−3.5%Cの組成をもった球状黒鉛鋳鉄製でC
rメッキしたもの)の上下面における最大摩耗深さを測
定することにより相手攻撃性を評価した。これらの測定
結果を表3に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】表3に示される結果から、本発明耐摩環
1〜27は、いずれもトップリング溝の上方位置移動に
もかかわらず、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材
料のもつ、素地には遊離黒鉛が存在せず、実質的に気孔
内にのみ遊離黒鉛が析出して成長し、かつ前記素地中に
硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織によって、
すぐれた耐摩耗性を示し、かつ相手攻撃性もきわめて小
さいのに対して、ニレジスト鋳鉄からなる従来耐摩環は
十分な耐摩耗性を具備するものでないために、トップリ
ング溝の上方位置移動によって摩耗進行が著しく加速さ
れるようになることが明らかである。上述のように、こ
の発明のピストンリング耐摩環は、トップリング溝の位
置を上方へ移動した状態でAl−Si系合金製ピストン
に適用しても小さい相手攻撃性で、すぐれた耐摩耗性を
発揮することから、エンジンの排気ガス規制に十分満足
に対応することができ、かつこれの具備するすぐれた熱
伝導性がエンジンの高出力化および大型化の促進に寄与
するなど工業上有用な特性をもつものである。
1〜27は、いずれもトップリング溝の上方位置移動に
もかかわらず、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材
料のもつ、素地には遊離黒鉛が存在せず、実質的に気孔
内にのみ遊離黒鉛が析出して成長し、かつ前記素地中に
硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織によって、
すぐれた耐摩耗性を示し、かつ相手攻撃性もきわめて小
さいのに対して、ニレジスト鋳鉄からなる従来耐摩環は
十分な耐摩耗性を具備するものでないために、トップリ
ング溝の上方位置移動によって摩耗進行が著しく加速さ
れるようになることが明らかである。上述のように、こ
の発明のピストンリング耐摩環は、トップリング溝の位
置を上方へ移動した状態でAl−Si系合金製ピストン
に適用しても小さい相手攻撃性で、すぐれた耐摩耗性を
発揮することから、エンジンの排気ガス規制に十分満足
に対応することができ、かつこれの具備するすぐれた熱
伝導性がエンジンの高出力化および大型化の促進に寄与
するなど工業上有用な特性をもつものである。
【図1】ディーゼルエンジンのピストンを例示する概略
縦断面図(a)および同要部縦断面図(b)である。
縦断面図(a)および同要部縦断面図(b)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16J 9/00 F16J 9/00 A 9/26 9/26 A // C22C 33/02 C22C 33/02
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 遊離黒鉛形成成分および素地強化成分として、C:0.
5〜5%、 いずれも素地形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに、 周期律表の4a、5a、および6a族金属の炭化物、窒
化物、および炭窒化物、並びにこれらの2種以上の固溶
体のうちの1種または2種以上からなり、電子顕微鏡に
よる断面組織観察で0.1〜5μmの平均粒径を示す硬
質金属炭・窒化物粒子:0.1〜5%、を含有し、残り
が素地形成成分としてのFeと不可避不純物からなる組
成、並びに素地が実質的にオーステナイトからなり、遊
離黒鉛は、前記素地には実質的に存在せず、気孔内に析
出して成長した状態で存在し、かつ前記素地には上記の
硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織を有する遊
離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成したことを特徴とする耐
摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結
材料製ピストンリング耐摩環。 - 【請求項2】 重量%で、遊離黒鉛形成成分および素地
強化成分として、C:0.5〜5%、 いずれも素地形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:10〜20%、 Cu:8.5〜20%、 Mo:0.5〜2%、 を含有し、さらに、 周期律表の4a、5a、および6a族金属の炭化物、窒
化物、および炭窒化物、並びにこれらの2種以上の固溶
体のうちの1種または2種以上からなり、電子顕微鏡に
よる断面組織観察で0.1〜5μmの平均粒径を示す硬
質金属炭・窒化物粒子:0.1〜5%、を含有し、残り
が素地形成成分としてのFeと不可避不純物からなる組
成、並びに素地が実質的にオーステナイトからなり、遊
離黒鉛は、前記素地には実質的に存在せず、気孔内に析
出して成長した状態で存在し、かつ前記素地には上記の
硬質金属炭・窒化物粒子が分散分布した組織を有する遊
離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成したことを特徴とする耐
摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結
材料製ピストンリング耐摩環。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14437599A JP2000337510A (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14437599A JP2000337510A (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000337510A true JP2000337510A (ja) | 2000-12-05 |
Family
ID=15360671
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14437599A Withdrawn JP2000337510A (ja) | 1999-05-25 | 1999-05-25 | 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000337510A (ja) |
-
1999
- 1999-05-25 JP JP14437599A patent/JP2000337510A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060801 |