JP2000336586A - リグノセルロース材料の蒸解法 - Google Patents

リグノセルロース材料の蒸解法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】リグノセルロース材料の蒸解法において、同一
有効アルカリ添加率でカッパー価を減少させ、かつ同一
カッパー価におけるパルプ収率を向上させる。 【解決手段】蒸解釜の内部に頂部から底部に向けて、塔
頂ゾーン、上部蒸解ゾーン、下部蒸解ゾーンを備えると
ともに、各ゾーン底部にストレーナが設けられ、かつ、
各ストレーナのうち少なくとも1つのストレーナから抽
出された蒸解黒液が蒸解系外に排出される1ベッセル蒸
解釜を使用する連続蒸解法において、広葉樹または針葉
樹のチップを用い、硫黄分として3〜20g/Lの濃度
のポリサルファイドサルファを含み、かつ蒸解系へ導入
されるアルカリ性蒸解液に含まれる全量に対し45〜1
00重量%の硫黄分と45〜79重量%の有効アルカリ
とを含むアルカリ性蒸解液が前記蒸解釜の頂部で添加
し、さらに絶乾チップ当り0.01〜105重量%のキ
ノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を前記蒸解釜に供給
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リグノセルロース
材料の蒸解法に関し、より詳しくは、従来の蒸解法に対
して、パルプ収率を一層向上させ、カッパー価とパルプ
収率との関係をさらに改善させることができ、同一有効
アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、かつ同
一カッパー価におけるパルプ収率を向上させることがで
きるリグノセルロース材料の蒸解法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで工業的に実施されている化学パ
ルプの主な製造法は木材チップ等のリグノセルロース材
料のアルカリ性蒸解法であり、このうち、水酸化ナトリ
ウムと硫化ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液を用
いるクラフト法が多く利用されている。従来、パルプ収
率を向上させる方法としては、蒸解系にアントラキノン
スルホン酸塩、アントラキノンやテトラヒドロアントラ
キノン等の環状ケト化合物であるキノン化合物を蒸解助
剤として添加する蒸解法(例えば、特公昭55ー139
8号公報、特公昭57ー19239号公報、特公昭53
ー45404号公報、特開昭52ー37803号公報)
が知られている。キノン化合物は脱リグニンの選択性を
向上させ、蒸解パルプのカッパー価の低減、収率の向上
に寄与する。
【0003】ポリサルファイドを含むアルカリ性蒸解液
を用いて蒸解を行うポリサルファイド蒸解法も収率向上
に非常に有効な方法である。ポリサルファイドは炭水化
物のカルボニル末端を酸化し、ピーリング反応による炭
水化物の分解を抑制することにより収率向上に寄与す
る。このポリサルファイドを含んだアルカリ性蒸解液は
硫化ナトリウムを含むアルカリ性溶液を活性炭等の触媒
の存在下に空気等の分子状酸素により酸化することによ
り製造される(例えば特公昭50ー40395号公報、
特開昭61ー257238号公報、特開昭61ー259
754号公報、特公平7ー58344号公報)。この方
法により硫化物イオンベースで転化率60%、選択率6
0%程度でポリサルファイドサルファ濃度5g/L(L
はリットルを表す。本明細書中同じ)程度のポリサルフ
ァイドを含むアルカリ性蒸解液を得ることができる。し
かし、この方法では副反応により蒸解には全く寄与しな
いチオ硫酸イオンが副生してしまうため、高濃度のポリ
サルファイドサルファを含むアルカリ性蒸解液を高選択
率で製造することは困難であった。
【0004】一方、PCT国際公開WO95/0070
1号、WO97/0071号にはポリサルファイドを含
むアルカリ性蒸解液の電解製造法について記載されてい
る。この方法は高濃度のポリサルファイドサルファを含
むアルカリ性蒸解液をチオ硫酸イオンの副生を極めて少
なくして高選択率で製造できる。また、別の高濃度のポ
リサルファイドサルファを含むアルカリ性蒸解液を得る
方法としては硫化ナトリウムを含むアルカリ性水溶液に
分子状硫黄を溶解する方法がある。また、特開平7ー1
89153号公報には蒸解キノン化合物とポリサルファ
イドを含むアルカリ性蒸解液とを併用する蒸解が開示さ
れ、特開昭57ー29690号公報にはキノン化合物に
よるポリサルファイドの熱アルカリ条件下での分解の緩
和について開示されている。
【0005】ところで、近年、クラフト法における問題
点であるパルプ強度に関して向上が図られ、一般に修正
クラフト法(以下MCC法と記す)と呼ばれる、蒸解時
により選択的な脱リグニンを行う蒸解法が提示された。
MCC法は、従来のクラフト法と異なり、蒸解の最初お
よび蒸解温度が最高温度に達した後の上部蒸解ゾーンに
蒸解液を分割して添加する点、蒸解釜内部において向流
蒸解を実施する点に特徴がある。向流とは蒸解液の流れ
方向が釜の底部から頂部方向である場合をいう。しか
し、MCC法ではパルプ強度の向上、カッパー価の低減
はみられるものの、蒸解温度の上昇や蒸解薬品が対リグ
ノセルロース材料当り増加するという問題点などがあ
り、必ずしもパルプ収率増加にはつながっていなかっ
た。
【0006】蒸解の最初および所定の蒸解ゾーンに蒸解
液を添加する場所を有する特徴を持つMCC法に対して
蒸解助剤としての環状ケト化合物を添加する検討がなさ
れ、特開平4ー119184号公報、特開平4ー209
883号公報、特開平4ー209884号公報、特開平
4ー209885号公報、特開平4ー209886号公
報には2ベッセル型の連続蒸解釜に関して開示されてい
る。特開平4ー119184号公報ではMCC法蒸解液
に対して環状ケト化合物を添加した場合、特開平4ー2
09883号公報では環状ケト化合物を蒸解の最初(浸
透ベッセル)に添加した場合、特開平4ー209884
号公報では環状ケト化合物を上部蒸解ゾーン等に添加し
た場合、特開平4ー209885号公報では環状ケト化
合物を下部蒸解ゾーンに添加した場合、特開平4ー20
9886号公報では環状ケト化合物を蒸解の最初、上部
蒸解ゾーンおよび下部蒸解ゾーンに添加した場合につい
て開示されているが、それぞれの添加法間での効果上の
差異は記載されておらず、ポリサルファイド蒸解におけ
る環状ケト化合物であるキノン化合物のより効果的な添
加法についても不明確である。
【0007】最近になって、MCC法の問題点に対し、
Lo−Solids(登録商標)法と呼ばれる改善方法
が提案された。この方法では蒸解釜内の脱リグニンが行
われる大部分での溶解有機固形分濃度を最小にするた
め、蒸解釜の何箇所かで蒸解黒液の抽出を行い、さら
に、蒸解の最初および蒸解温度が最高温度に達した後の
蒸解ゾーンに蒸解液が分割して添加され、蒸解釜内部に
おいて並流蒸解および向流蒸解が実施される。蒸解液は
蒸解釜の底部においても添加されるため、蒸解釜の下部
でも蒸解が行われ、その結果、従来に比べ低温で緩やか
な蒸解がなされ、全体の蒸解ゾーンでの処理時間が長く
なる。また、向流蒸解である上部蒸解ゾーン上部の、す
なわち、塔頂ゾーン底部の抽出ストレーナあるいは並流
蒸解である下部蒸解ゾーン底部の、すなわち、向流蒸解
である蒸解洗浄ゾーンの上部の抽出ストレーナから蒸解
黒液の多くが抽出され、蒸解釜内の有機固形分濃度が低
く保たれる。
【0008】蒸解薬品(蒸解用の薬品)はリグノセルロ
ース材料の脱リグニン溶出反応以外にリグノセルロース
材料から溶出した有機物によっても消費される。Lo−
Solids(商標)法においては、蒸解釜の数箇所か
ら有機物を含む蒸解黒液を抽出し、かつ、蒸解の最初だ
けでなく蒸解途中に蒸解液を供給することで蒸解釜内黒
液中のリグニン主体の溶解有機物濃度を低減させ、この
溶解有機物による蒸解薬品の消費を抑え、蒸解時の脱リ
グニンの選択性を向上させる。その結果、パルプ強度向
上、使用する蒸解薬品の低減等が達成された。
【0009】ところが、1ベッセル蒸解釜におけるLo
−Solids(登録商標)法においては、キノン化合
物を添加してポリサルファイド蒸解を行うに当り、蒸解
途中に相当量の蒸解黒液が抽出されることにより高価な
蒸解助剤であるキノン化合物も一緒に蒸解系外に排出さ
れてしまい、さらなる蒸解薬品の節減、パルプ収率の向
上、カッパー価とパルプ収率との関係の改善という点に
おいて問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上記
問題点を解決し、1ベッセル蒸解釜において蒸解釜の複
数箇所から蒸解黒液を抽出し、蒸解釜の塔頂、所定の蒸
解ゾーンにアルカリ性蒸解液を添加する特徴を持つ蒸解
法において、収率増加に寄与するポリサルファイド蒸解
を行い、かつ蒸解助剤であるキノン化合物をより効果的
に使用することができるリグノセルロース材料の蒸解法
を提供することを目的とする。
【0011】また、本発明は、パルプ収率を一層向上さ
せるとともに、カッパー価とパルプ収率の関係をさらに
改善し、蒸解および漂白に必要な薬品量を減少させる改
良方法を提供することにある。すなわち、本発明の目的
は同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少さ
せ、同一カッパー価におけるパルプ収率を向上させるこ
とにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、蒸解釜の内部
に頂部から底部に向けて、塔頂ゾーン、上部蒸解ゾー
ン、下部蒸解ゾーンを備えるとともに、各ゾーン底部に
ストレーナが設けられ、かつ、各ストレーナのうち少な
くとも1つのストレーナから抽出された蒸解黒液が蒸解
系外に排出される1ベッセル蒸解釜を使用する連続蒸解
法において、広葉樹または針葉樹のチップを用い、硫黄
として3〜20g/Lの濃度のポリサルファイドサルフ
ァを含み、かつ蒸解系へ導入されるアルカリ性蒸解液に
含まれる全蒸解活性な硫黄分および全アルカリに対し4
5〜100重量%の硫黄分と45〜79重量%の有効ア
ルカリとを含むアルカリ性蒸解液が前記蒸解釜の頂部で
添加され、さらに絶乾チップ当り0.01〜1.5重量
%のキノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を前記蒸解釜
に供給することを特徴とするリグノセルロース材料の蒸
解法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、蒸解釜の内部に頂部か
ら底部に向けて、塔頂ゾーン、上部蒸解ゾーン、下部蒸
解ゾーンを備えるとともに、各ゾーン底部にストレーナ
が設けられ、かつ、各ストレーナのうち、少なくとも1
つのストレーナから抽出された蒸解黒液が蒸解系外に排
出される1ベッセル蒸解釜を使用する連続蒸解法であ
る。ここで必須ではないが、蒸解系外に排出する黒液は
塔頂ゾーン底部に設置されたストレーナから抽出されて
もよい。また、同じくここで必須ではないが、下部蒸解
ゾーンの下部に蒸解洗浄ゾーンを配置するのが好まし
い。
【0014】そして本発明においては、蒸解釜の頂部、
上部蒸解ゾーン底部およびその他の個所から異なった組
成のアルカリ性蒸解液を添加する。本発明で使用される
アルカリ性蒸解液としては、ポリサルファイドと水酸化
ナトリウムが主成分の溶液、水酸化ナトリウムと硫化ナ
トリウムが主成分の溶液、あるいは水酸化ナトリウムが
主成分の溶液等が用いられる。各個所から蒸解系に導入
されるアルカリ性蒸解液に含まれる薬品量は全量とし
て、有効アルカリで10〜25重量%(蒸解釜に供給さ
れる絶乾チップに対するNa2Oの重量%)、硫黄分で
1〜10重量%(蒸解釜に供給される絶乾チップに対す
る硫黄の重量%)である。
【0015】本発明においては、第1の蒸解液として、
蒸解釜の頂部に硫黄として3〜20g/Lの濃度のポリ
サルファイドサルファを含むアルカリ性溶液が供給さ
れ、そのポリサルファイドサルファの濃度はより好まし
くは8〜18g/Lである。ポリサルファイドは炭水化
物保護により収率増加に寄与する一方、高温(120℃
以上)における安定性に欠け、蒸解最高温度では水酸化
ナトリウムの消費を伴う分解が起る。本発明の1ベッセ
ル蒸解釜における蒸解法に対してポリサルファイドを含
むアルカリ性蒸解液を蒸解時に分割して添加する場合、
これが蒸解途中にて供給されるとポリサルファイドはす
ぐに高温に曝されて分解を受け、収率向上効果を十分得
ることができない。
【0016】そのため、本発明においては、ポリサルフ
ァイドは蒸解が最高温度に達する以前である蒸解釜の頂
部に添加し、チップへ浸透させ、反応させることが必要
である。ポリサルファイドサルファ濃度は、収率向上効
果を得るために必要な上記濃度範囲、すなわち硫黄とし
て3〜20g/Lの濃度のポリサルファイドサルファを
含むアルカリ性溶液として添加される。第1の蒸解液の
ポリサルファイドサルファ濃度が3g/L未満であると
収率増加への寄与がほとんど現れず、20g/Lを超え
ると炭水化物保護反応に寄与できず、残った多くのポリ
サルファイドは蒸解が最高温度に達するにつれ分解を受
けると同時に蒸解に必要な水酸化ナトリウムを消費し、
蒸解に必要なアルカリ分を確保できなくなり、蒸解自体
が進行せず、得られるパルプのカッパー価も非常に高く
なる。
【0017】本発明で用いるポリサルファイドを含んだ
アルカリ性蒸解液としては、従来の空気酸化法で得るこ
ともできるが、ポリサルファイドの空気酸化に起因して
ポリサルファイドの一部がチオ硫酸ナトリウムに転ずる
副反応が起るなどの不利点があるため、好ましくは水酸
化ナトリウムと硫化ナトリウム、あるいは炭酸ナトリウ
ムと硫化ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液等の硫
化物イオンを含む溶液中の硫化物イオンを電気化学的に
酸化する方法、すなわち電解法により生成させる。
【0018】本発明で用いる電解法としては好ましくは
以下のような電解法を適用することができる〔(A)特
願平10ー166374号、(B)特願平11ー510
16号、(C)特願平11ー51033号〕。これらは
本発明者等により先に開発されたもので、電解法に関し
て、アノードの構成、アノードのアノード室への配置条
件、カソード室内とアノード室内との圧力条件、その他
の諸要件について追求、研究し、チオ硫酸イオンの副生
を極度に少なくできる等、有効な効果を得る上で重要な
要件を見い出し、構成されたものである。
【0019】ここで、ポリサルファイドサルファ(PS
ーS)とは、たとえば多硫化ナトリウムNa2Xにおけ
る価数0の硫黄、すなわち原子(x−1)個分の硫黄を
いう。また、ポリサルファイドイオン(ポリサルファイ
ド)中の酸化数−2の硫黄に相当する硫黄(SX 2-または
Na2Xにつき1原子分の硫黄)と硫化物イオン
(S 2-)を総称したものを本明細書中では適宜Na2
態硫黄と表すことにする。この点からして、ポリサルフ
ァイドとはポリサルファイドサルファとNa2S態硫黄
とを合わせたものを意味し、Na2S態硫黄とは硫化ナ
トリウム(Na2S)とNa2XのうちNa2Sの分を意
味し、また、蒸解活性な硫黄分とは蒸解反応に寄与する
硫黄分のうち、ポリサルファイドサルファとNa2S態
硫黄とを合わせたものを意味する。
【0020】(A)特願平10ー166374号の技術
は、少なくとも表面がニッケルまたはニッケルを50重
量%以上含有するニッケル合金からなる物理的に連続な
3次元の網目構造を有し、かつ、アノード室の単位体積
当りのアノードの表面積が500〜20000m2/m3
である多孔性アノードを配するアノード室、カソードを
配するカソード室、アノード室とカソード室を区画する
隔膜を有する電解槽のアノード室に硫化物イオンを含有
する溶液を導入し、電解酸化によりポリサルファイドイ
オンを得ることを特徴とする多硫化物の製造方法であ
る。この方法によれば、チオ硫酸イオンの副生が極めて
少なく、高濃度のポリサルファイドサルファを含む蒸解
液を高い選択率を維持しながら製造することができ、こ
うして得られたポリサルファイド蒸解液を蒸解に用いる
ことによりパルプ収率を効果的に増加させることができ
る。また、アノードは、繊維の集合体とは違い、物理的
に連続した網目構造体であり、セル電圧をより低くする
ことができるので、操業コストを低く抑えることができ
る。更に、この技術で用いるアノードは良好な電気伝導
性であるため、アノードの空隙率を大きくすることが可
能となり、圧力損失を小さくすることができる。
【0021】(B)特願平11ー51016号の技術
は、多孔性アノードを配するアノード室、カソードを配
するカソード室、アノード室とカソード室を区画する隔
膜を有する電解槽のアノード室に硫化物イオンを含有す
る溶液を導入し、電解酸化によりポリサルファイドイオ
ンを得る多硫化物の製造方法であって、カソード室内の
圧力がアノード室内の圧力よりも高いことを特徴とする
多硫化物の製造方法である。この方法によれば、チオ硫
酸イオンの副生が極めて少なく、高濃度のポリサルファ
イドサルファを含み、残存Na2S態イオウの多い蒸解液
を高い選択率を維持しながら低電力で製造することがで
き、特にパルプ製造工程の白液または緑液から、このよ
うにして得られたポリサルファイド蒸解液を蒸解に用い
ることによりパルプ収率を効果的に増加させることがで
きる。
【0022】本技術では、電解操作において、カソード
室内の圧力がアノード室内の圧力よりも大きい条件下で
行われる。電解槽は一般的に隔膜がアノードとカソード
との間に挟まれた構造を有している。組立精度や隔膜保
護の観点からアノードとカソードの間は比較的距離をあ
けて配される。具体的には数mm程度の距離があけられ
ることが多い。その間に配される隔膜は電解の条件によ
ってアノード側に近づいたり、あるいはカソード側に近
づいたりすることになる。本技術においては、隔膜をア
ノードに強制的に常時接するようにし、アノードと隔膜
間に空間部分をなくして、アノード液を多孔性アノード
内部に全て導入することによって、電流効率等を向上さ
せるものである。その手段として、カソード室内の圧力
がアノード室内の圧力よりも大きい条件下で電解操作を
行う。こうすることにより、隔膜がアノードに押し付け
られるので、多孔性アノード内部に十分にアノード液を
流すことができ、高い選択率が実現される。
【0023】この技術において、カソード室内の圧力を
アノード室内の圧力より高くする手段としては、カソー
ド室に導入する溶液(カソード液)の流量をアノード室
に導入する溶液の流量に対して相対的に上げる方法、カ
ソード側の出口配管径を小さくするなどしてカソード液
の出口抵抗を増す方法などがあげられる。
【0024】(C)特願平11ー51033号の技術
は、多孔性アノードを配するアノード室、カソードを配
するカソード室、アノード室とカソード室を区画する隔
膜を有する電解槽のアノード室に硫化物イオンを含有す
る溶液を導入し、電解酸化によりポリサルファイドイオ
ンを得るポリサルファイドの製造方法であって、多孔性
アノードが該多孔性アノードと隔膜との間の少なくとも
一部に空隙を有するように配され、かつ、多孔性アノー
ドの見掛け体積がアノード室の体積に対して60%〜9
9%であることを特徴とする多硫化物の製造方法であ
る。この方法によれば、チオ硫酸イオンの副生が極めて
少なく、高濃度のポリサルファイドサルファを含み、残
存Na2S態イオウの多い蒸解液を高い選択率を維持し
ながら製造することができ、こうして得られた多硫化物
蒸解液を蒸解に用いることにより、パルプ収率を効果的
に増加させることができる。また、電解操作時の圧力損
失を小さくでき、SS(懸濁物質)の詰まりを抑制する
ことができる。
【0025】本技術においては、多孔性アノードが該多
孔性アノードと隔膜との間の少なくとも一部に空隙を有
するように配され、この多孔性アノードの見掛け体積が
アノード室の体積に対して60%〜99%になるよう構
成される。ここでアノード室の体積とは、隔膜の有効通
電面とアノード液の流れの隔膜から最も距離のある部分
の見掛け上の面とで区画された空間の体積である。アノ
ードと隔膜との間に形成される空隙は隔膜の有効通電面
全体に形成されてもよく、その一部に形成されていても
よい。粒径の大きな固形成分が電解槽内に混入した際に
目詰まりを起すおそれがある場合、この空隙は流路とし
て連続であることが好ましい。この見掛け体積が99%
を超えると、電解操作上圧力損失が大きく、また懸濁物
質が詰まりやすくなり好ましくない。見掛け体積が60
%を下回ると、多孔性アノード内を流れるアノード液量
が少なくなりすぎ、電流効率が悪くなるので好ましくな
い。この範囲ならば、電解操作を、良好な電流効率を保
ちつつ、小さい圧力損失で、しかも目詰まりの心配なく
行うことができる。この値は70〜99%に設定するの
がさらに好ましい。
【0026】また、本技術では、隔膜側の空隙がさらに
意外な効果を発揮させることを見い出した。本技術にお
けるアノード電極反応は多孔性アノードのほぼ全面で起
ると考えられるが、アノードの隔膜に近い部分の方が液
の電気抵抗が小さいため電流が流れやすく、優先的に反
応が進行する。したがって、この部位では反応が物質移
動律速になり、チオ硫酸イオンや酸素などの副生成物が
できやすくなったり、アノード溶解が起きやすくなった
りする。しかし、多孔性アノードと隔膜との間に空隙を
設けると、この空隙のアノード液の線速度が大きくな
り、この流れに引きずられてアノードの隔膜側部位の液
流速が大きくなるため、アノードの隔膜に近い部分での
物質拡散が有利となり副反応を効果的に抑制することが
できる。また、この空隙によりアノード液の流れがスム
ーズになり、隔膜のアノード側表面に沈着物をたまりに
くくすることができるという利点がある。
【0027】これら(A)〜(C)の技術はパルプ製造
工程における白液または緑液を処理してポリサルファイ
ドを製造し且つNaOH溶液を得るのに特に適してお
り、本発明においては、電解槽のアノード室すなわち陽
極側に白液または緑液を導入し、ここで生じるポリサル
ファイドをそのまま、あるいは苛性化した後に、チップ
が最高温度に達する以前に添加することにより利用す
る。また電解槽のカソード室すなわち陰極側で生じるN
aOH(少量のKOHを含む)溶液をチップが最高温度
に到達した後に添加することにより利用する。
【0028】以下、これら方法に関し(A)の技術内容
および諸態様を中心に説明するが、(B)〜(C)の技
術についても同様である。水酸化ナトリウムおよび硫化
ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液を、アノードを
配置したアノード室、カソードを配置したカソード室お
よびアノード室とカソード室とを区画する隔膜を有する
電解槽のアノード室に連続的に供給する。
【0029】この場合、アノード材質はアルカリ性で耐
酸化性があれば特に限定されることはなく、非金属また
は金属が用いられる。非金属としては例えば炭素材料を
用いることができ、金属としては例えばニッケル、コバ
ルト、チタンなどの卑金属、それらの合金、白金、金、
ロジウムなどの貴金属、それらの合金または酸化物を用
いることができる。アノードの構造としては物理的に3
次元網目構造を有する多孔性アノードを用いることが好
ましい。具体的には、例えばニッケル陽極材質の場合
は、発泡高分子材料の骨格にニッケルメッキをした後、
内部の高分子材料を焼成除去して得られる多孔性ニッケ
ルをあげることができる。
【0030】上記物理的に3次元網目構造を有する多孔
性アノードの場合、アノード室に少なくとも表面がニッ
ケルまたはニッケルを50重量%以上含有するニッケル
合金からなる物理的に連続な3次元の網目構造を有し、
かつ、アノード室の単位体積当りのアノードの表面積が
500〜20000m2/m3 である多孔性アノードを配
する。アノードの少なくとも表面部分がニッケルまたは
ニッケル合金であるので、多硫化物の製造において実用
的に十分な耐久性を有する。アノード表面は、ニッケル
であることが好ましいが、ニッケルを50重量%以上含
有するニッケル合金も使用することができ、ニッケル含
有率が80重量%以上であるのがより好ましい。ニッケ
ルは、比較的安価であり、その溶出電位や酸化物の生成
電位が、ポリサルファイドサルファやチオ硫酸イオンの
生成電位より高いので、電解酸化によりポリサルファイ
ドイオンを得るのに好適な電極材料である。
【0031】また、多孔性で3次元の網目構造であるの
で大きな表面積を有し、アノードとして用いた場合に、
電極表面の全面で目的とする電解反応が起き、副生物の
生成を抑制することができる。更に、該アノードは、繊
維の集合体とは違い、物理的に連続した網目構造体であ
るため、アノードとして十分な電気伝導性を示し、アノ
ードにおけるIRドロップを小さくできるので、セル電
圧をより低くすることができる。またアノードが良好な
電気伝導性であるため、アノードの空隙率を大きくする
ことが可能となり、圧力損失を小さくすることができ
る。
【0032】アノード室の単位体積当りのアノードの表
面積は、500〜20000m2/m3であることが必要
である。ここでアノード室の体積は、隔膜の有効通電面
とアノードの集電板とで区画された部分の体積である。
アノードの表面積が500m2/m3よりも小さいと、ア
ノード表面における電流密度が大きくなり、チオ硫酸イ
オンのような副生物が生成しやすくなるだけでなく、ニ
ッケルがアノード溶解を起しやすくなるので好ましくな
い。アノードの表面積を20000m2/m3より大きく
しようとすると、液の圧力損失が大きくなるといった電
解操作上の問題が生じるおそれがあるので好ましくな
い。アノード室の単位体積当りのアノードの表面積は、
1000〜10000m2/m3の範囲であるのがさらに
好ましい。
【0033】また、アノードの表面積は、アノード室と
カソード室を隔てる隔膜の単位面積当り2〜100m2
/m2であるのが好ましい。アノードの表面積は、該隔
膜の単位面積当り5〜50m2/m2であるのがさらに好
ましい。アノードの網目の平均孔径は0.1〜5mmで
あることが好ましい。網目の平均孔径が5mmよりも大
きいと、アノード表面積を大きくすることができず、ア
ノード表面における電流密度が大きくなり、チオ硫酸イ
オンのような副生物が生成しやすくなるだけでなく、ニ
ッケルがアノード溶解を起しやすくなるので好ましくな
い。網目の平均孔径が0.1mmより小さいと、液の圧
力損失が大きくなるといった電解操作上の問題が生じる
おそれがあるので好ましくない。アノードの網目の平均
孔径は0.2〜2mmであるのがさらに好ましい。
【0034】3次元網目構造のアノードは、その網目を
構成する線条材の直径が0.01〜2mmであることが
好ましい。線条材の直径が0.01mmに満たないもの
は、製造が極めて難しく、コストがかかるうえ、取扱い
も容易でないので好ましくない。線条材の直径が2mm
を超える場合は、アノードの表面積が大きいものが得ら
れず、アノード表面における電流密度が大きくなり、チ
オ硫酸イオンのような副生物が生成しやすくなるので好
ましくない。網目を構成する線条材の直径が0.02〜
1mmである場合は特に好ましい。
【0035】アノードは隔膜に接するようにアノード室
いっぱいに配されてもよく、またアノードと隔膜との間
にいくらかの空隙を有するように配されてもよい。アノ
ード内を被処理液体が流通する必要があるので、アノー
ドは十分な空隙を有することが好ましい。これらいずれ
の場合もアノードの空隙率は90〜99%であるのが好
ましい。空隙率が90%に満たない場合は、アノードに
おける圧力損失が大きくなるので好ましくない。空隙率
が99%を超える場合は、アノード表面積を大きくする
ことが困難になるので好ましくない。空隙率が90〜9
8%である場合は特に好ましい。(C)特願平11ー5
1033号の技術では、更に、アノードとして多孔性ア
ノードを用いるに際し、該多孔性アノードと隔膜との
間、アノード室の体積と該多孔性アノードの見掛け体積
との間に、チオ硫酸イオンの副生を極めて少なく、高濃
度のポリサルファイドを含み、残存Na2S態イオウの多
い蒸解液を高い選択率を維持しながら製造する上で重要
な要件があることを見い出し、その要件を設定したもの
である。この技術では、得られた多硫化物蒸解液を蒸解
に用いてパルプ収率を効果的に増加させることができる
等、前記のとおりの諸効果を得ることができる。
【0036】隔膜面での電流密度は0.5〜20kA/
2 で運転するのが好ましい。隔膜面での電流密度が
0.5kA/m2 に満たない場合は不必要に大きな電解
設備が必要となるので好ましくない。隔膜面での電流密
度が20kA/m2 を超える場合は、チオ硫酸、硫酸、
酸素などの副生物を増加させるだけでなく、ニッケルが
アノード溶解を起すおそれがあるので好ましくない。隔
膜面での電流密度が2〜15kA/m2 である場合は、
更に好ましい。隔膜の面積に対して、表面積の大きなア
ノードを用いているためアノード表面での電流密度が小
さい範囲で運転することができる。
【0037】このアノードは表面積が大きいため、アノ
ード表面の電流密度を小さな値にすることができる。ア
ノード各部分の表面での電流密度が均一であると仮定し
て、アノードの表面積からアノード表面での電流密度を
求めた場合、その値は5〜3000A/m2 であること
が好ましい。より好ましい範囲は10〜1500A/m
2 である。アノード表面での電流密度が5A/m2 に満
たない場合は不必要に大きな電解設備が必要となるので
好ましくない。アノード表面での電流密度が3000A
/m2 を超える場合は、チオ硫酸、硫酸、酸素などの副
生物を増加させるだけでなく、ニッケルがアノード溶解
を起すおそれがあるので好ましくない。
【0038】このアノードは、繊維の集合体とは違い、
物理的に連続した網目構造体であり、十分な電気伝導性
を有するので、アノードにおけるIRドロップを小さく
維持しつつ、アノードの空隙率を大きくすることができ
る。従って、アノードの圧力損失を小さくできる。
【0039】アノード室の液流は流速の小さい層流域に
維持するのが、圧力損失を小さくする意味で好ましい。
しかし層流ではアノード室内のアノード液が攪拌され
ず、場合によってはアノード室に面する隔膜に沈着物が
たまりやすく、セル電圧が経時的に上昇しやすくなる。
この場合、アノード液流速を大きく設定してもアノード
の圧力損失を小さく維持できるので、隔膜表面付近のア
ノード液が攪拌され沈着物がたまり難くすることができ
るという利点がある。アノード室の平均空塔速度は1〜
30cm/秒が好適である。カソード液の流速は限定さ
れないが、発生ガスの浮上力の大きさにより決められ
る。アノード室の平均空塔速度のより好ましい範囲は1
〜15cm/秒であり、特に好ましい範囲は2〜10c
m/秒である。
【0040】カソード材料としては耐アルカリ性の材料
が好ましく、例えばニッケル、ラネーニッケル、鋼、ス
テンレス鋼などを用いることができる。カソードは平板
またはメッシュ状の形状のものを一つ、またはその複数
を多層構成にして用いる。線状の電極を複合した3次元
電極を用いることもできる。電解槽としては1つのアノ
ード室と1つのカソード室とからなる2室型の電解槽や
3つまたはそれ以上の部屋を組み合わせた電解槽が用い
られる。多数の電解槽は単極構造または複極構造に配置
することができる。
【0041】アノード室とカソード室とを隔てる隔膜と
してはカチオン交換膜を用いるのが好ましい。カチオン
交換膜はアノード室からカソード室へカチオンを導き、
硫化物イオンおよび多硫化物イオンの移動を妨げる。カ
チオン交換膜としては、炭化水素系またはフッ樹脂系の
高分子に、スルホン基、カルボン酸基などのカチオン交
換基が導入された高分子膜が好ましい。また、耐アルカ
リ性などの面で問題がなければ、バイポーラ膜、アニオ
ン交換膜などを使用することもできる。
【0042】温度、電流密度等の電解条件はアノードに
おいて硫化物イオンの酸化生成物としてS2 2-、S3 2-
4 2-、S5 2-などの多流化物イオン(SX 2-)すなわち
ポリサルファイドイオンが生成し、チオ硫酸イオンが副
生しないように調整、維持することが好ましい。これに
より硫化ナトリウムの電解酸化法によりチオ硫酸イオン
を実質上副生させずに、高効率で、硫黄として8〜20
g/Lのポリサルファイドサルファ濃度のアルカリ性蒸
解液を生成することができる。もちろん、温度、電流密
度等の電解条件を選ぶことで8g/Lを下回るポリサル
ファイドサルファ濃度のアルカリ性蒸解液も生成するこ
とができる。
【0043】本発明においては、蒸解液は蒸解系すなわ
ち蒸解釜の複数箇所に分割して添加されるが、第1の蒸
解液が蒸解釜の頂部に供給される。また本発明において
は、第1の蒸解液として、蒸解系に導入される全量に対
して45〜100重量%の蒸解活性な硫黄分、好ましく
は50〜100重量%の蒸解活性な硫黄分、蒸解系に導
入される全量に対して45〜79重量%の有効アルカ
リ、好ましくは50〜60重量%の有効アルカリが供給
されることが重要である。
【0044】第1の蒸解液の蒸解活性な硫黄分について
は、これが45重量%未満であると、蒸解前半が硫化ナ
トリウム不足になり、選択的な脱リグニンが行われず、
蒸解により得られるパルプのカッパー価の上昇や収率の
減少が起る。第1の蒸解液の蒸解活性な硫黄分を100
重量%とした場合も良好なカッパー価とパルプ収率が得
られる。第1の蒸解液の有効アルカリについては、これ
が45重量%未満であると蒸解前半がアルカリ不足とな
り、収率が大きく損なわれる。また、第1の蒸解液の有
効アルカリが79%を超えると蒸解途中で添加される下
記の第2の蒸解液等に含まれる有効アルカリが減少する
ため、蒸解後半が有効アルカリ不足に陥り、得られるパ
ルプのカッパー価の上昇や収率の減少が起る。
【0045】そして、第2の蒸解液として、蒸解温度が
最高に達した後の上部蒸解ゾーン底部に、水酸化ナトリ
ウムと硫化ナトリウム等が主成分のまたは水酸化ナトリ
ウム等が主成分のアルカリ性蒸解液が供給される。その
際の蒸解液の硫化度は0〜40%である。さらに、第3
の蒸解液として、蒸解の後半の蒸解洗浄ゾーン底部から
第2の蒸解液と同様のアルカリ性蒸解液が供給される。
第2、第3の蒸解液としては、具体的には水酸化ナトリ
ウムと硫化ナトリウムが主成分の白液を用いることが望
ましいが、さらに好ましくは電解によりポリサルファイ
ドを得るときに、陰極で生成する水酸化ナトリウムを主
成分とするアルカリ性蒸解液が用いられる。
【0046】このように、本発明においては、まず蒸解
釜の頂部でチップと共にポリサルファイドおよび水酸化
ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液が添加され、ま
た、蒸解釜における蒸解途中に水酸化ナトリウムおよび
硫化ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液、または水
酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液が添加され
る。このようにそれぞれ組成の異なったアルカリ性蒸解
液を蒸解釜に複数箇所から添加することによって1ベッ
セル蒸解釜での蒸解法の中で、より効果的なポリサルフ
ァイド蒸解を行うことができる。
【0047】また、本発明では、蒸解釜から直接回収工
程に送られる全蒸解黒液の20〜60容量%が塔頂ゾー
ン底部のストレーナで抽出され、蒸解系外に排出されて
もよい。この箇所で蒸解系外へ排出される蒸解黒液が全
蒸解黒液の20容量%未満であると蒸解釜内にリグニン
が主体の溶解有機物固形分が多く残存してしまい、蒸解
後のカッパー価の低減が小さく、カッパー価とパルプ収
率の関係に改善がみられない。一方、この箇所で蒸解系
外へ排出される蒸解黒液が全蒸解黒液の60%を超える
と上部蒸解ゾーン以降での有効アルカリが不足するため
蒸解不足となり、カッパー価も上昇してしまう。
【0048】次に、ポリサルファイド蒸解におけるキノ
ン化合物の添加については、MCC法やLo−Soli
ds(登録商標)法でのキノン化合物の効果的な添加方
法は明確でなかったが、本発明によれば、蒸解を以上の
とおりに行い、キノン化合物を蒸解釜の頂部または上部
蒸解ゾーン底部に添加することが蒸解助剤のキノン化合
物の効果を高める上で重要であることが分かった。
【0049】そこで、本発明においては、キノン化合物
を、絶乾チップ当り0.01〜1.5重量%、好ましく
は0.01〜0.15重量%、さらに好ましくは0.0
2〜0.06重量%になるよう前記蒸解釜の頂部に供給
される第1の蒸解液または上部蒸解ゾーン底部に供給さ
れる第2のアルカリ性蒸解液に添加して供給する。キノ
ン化合物の添加が0.01重量%未満であると添加量が
少なすぎて蒸解後パルプのカッパー価が低減されず、カ
ッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。また、キ
ノン化合物を1.5重量%を超えて添加してもそれ以上
の蒸解後パルプカッパー価の低減およびカッパー価とパ
ルプ収率の関係の改善は認められない。
【0050】キノン化合物の効果を得るためには、キノ
ン化合物が蒸解釜内のチップとなるべく長く共存するこ
と、蒸解における脱リグニン反応が進んでいる所で添加
されることが好ましく、このため本発明の1ベッセル蒸
解釜での蒸解法においては、キノン化合物は上部蒸解ゾ
ーン底部への添加が好ましい。また、本発明において蒸
解釜の頂部からチップと共にポリサルファイドを含んだ
アルカリ性蒸解液が供給される。特開昭57ー2969
0号公報に開示されているキノン化合物のポリサルファ
イド分解緩和効果を得るにはキノン化合物とポリサルフ
ァイドがなるべく長く共存するようにキノン化合物を添
加すれば良く、蒸解釜の頂部へのキノン化合物の添加が
好ましい。
【0051】使用されるキノン化合物はいわゆる公知の
蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又
はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくと
も1種の化合物を使用することができる。これらの化合
物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアント
ラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノ
ン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,
4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,
3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアント
ラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メ
チルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン
(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノ
ン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1
−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラ
キノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒド
ロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラ
ヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアント
ラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−
メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒド
ロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,1
0−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属
塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム
塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアント
ラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であ
り、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、
メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら
前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン
化合物に変換する可能性を有している。
【0052】本発明に使用されるリグノセルロース材料
は針葉樹または広葉樹のチップが使用され、いずれの樹
種でも良い。例えば、針葉樹としてはスプルース、ダグ
ラスファー、松、杉等、広葉樹ではユーカリ、ブナ、ナ
ラ等があげられる。
【0053】以下に、本発明の好ましい実施形態を説明
するが、本発明は以下の説明に限定されるものではな
い。図1は、本発明において好適に使用されるLo−S
olids(登録商標)法を実施する1ベッセル型連続
蒸解装置の態様例を示す図である。蒸解釜2本体は頂部
から底部に向けて塔頂ゾーンA、上部蒸解ゾーンB、下
部蒸解ゾーンC、および蒸解洗浄ゾーンDの4ゾーンに
大別される。蒸解洗浄ゾーンDは必須ではないが、配置
するのが好ましい。各ゾーン底部にストレーナが設けら
れ、それぞれ、1番目の塔頂ゾーンA底部の上部抽出ス
トレーナ4、2番目の上部蒸解ゾーンB底部のストレー
ナ5、3番目の下部蒸解ゾーンC底部の下部抽出ストレ
ーナ6、4番目の蒸解洗浄ゾーンD底部のストレーナ7
である。
【0054】チップ1は蒸解釜2の頂部に供給され、塔
頂ゾーンAに入る。一方、ポリサルファイドおよび水酸
化ナトリウムが主成分の第1のアルカリ性蒸解液はポリ
サルファイドを含むアルカリ性蒸解液供給管3を通り蒸
解釜2の頂部で供給される。蒸解釜2頂部において供給
され充填されたチップは蒸解液とともに下降し、この間
に第1の蒸解液が有効に作用して初期の脱リグニンが起
き、チップから蒸解液へリグニンの溶出が起る。そして
チップからのリグニンを含んだ蒸解黒液の所定量が上部
抽出ストレーナ4から抽出され、黒液排出導管10を通
って回収工程に送られる。
【0055】塔頂ゾーンAから下降したチップは上部蒸
解ゾーンBに入る。このゾーンにおいてチップは蒸解最
高温度に達し、脱リグニンがより進行する。上部蒸解ゾ
ーンBの底部に設けられたストレーナ5から蒸解黒液が
抽出液導管17により抽出される。この抽出蒸解黒液
は、抽出液導管17において、第2の蒸解液すなわち上
部アルカリ性蒸解液供給管8を流れる水酸化ナトリウム
および硫化ナトリウムが主成分の、または水酸化ナトリ
ウムが主成分のアルカリ性蒸解液、および、キノン化合
物供給導管16から供給されるキノン化合物含有液と合
流され、流路に設けられているヒータ14によって加熱
される。この循環液(上部蒸解循環液)は上部蒸解循環
液導管19を介して上部蒸解ゾーンBの底部のストレー
ナ5近傍において供給される。
【0056】上部蒸解ゾーンBにおいてチップは上部抽
出ストレーナ4底部よりストレーナ5の上部に向って下
降するが、この間、ストレーナ5近傍において循環液導
管19から供給された循環蒸解液は上部抽出ストレーナ
4に向って上昇し、この第2蒸解液の作用による向流蒸
解によって脱リグニン反応が進行する。上部抽出ストレ
ーナ4に向って上昇した循環蒸解液は黒液となり上部抽
出ストレーナ4から抽出され、黒液排出導管10を通っ
て回収工程に送られる。上部蒸解ゾーンBで脱リグニン
されたチップはストレーナ5の下部の下部蒸解ゾーンC
に入り第2蒸解液との並流蒸解によりさらに脱リグニン
を受ける。このゾーンで得られた蒸解黒液は下部蒸解ゾ
ーンCの底部にある下部抽出ストレーナ6から抽出さ
れ、黒液排出導管11を通って回収工程に送られる。
【0057】下部蒸解ゾーンCから下降したチップは蒸
解洗浄ゾーンDに入る。このゾーンにおいてチップは向
流蒸解を受け、さらに脱リグニンが進行する。蒸解洗浄
ゾーンDの下部に設けられた蒸解釜底部近傍のストレー
ナ7から抽出された蒸解黒液は、抽出液導管18におい
て、下部アルカリ性蒸解液供給管9を流れる水酸化ナト
リウムおよび硫化ナトリウムが主成分の、または水酸化
ナトリウムが主成分のアルカリ性蒸解液と合流され、流
路に設けられているヒータ15によって加熱される。こ
の循環液は下部循環液導管20を介してストレーナ7の
近傍において供給される。
【0058】蒸解洗浄ゾーンDにおいてチップは下部抽
出ストレーナ6よりストレーナ7に向って下降する。こ
の間、ストレーナ7近傍において下部循環液導管20か
ら供給された循環蒸解液は下部抽出ストレーナ6に向っ
て上昇し、蒸解黒液は下部抽出ストレーナ6から抽出さ
れ、黒液排出導管11を通って回収工程に送られる。こ
のゾーンにおいて蒸解反応は終了し、蒸解パルプ排出管
12を経てパルプが得られる。
【0059】蒸解釜2においては、塔頂ゾーンAで初期
温度は120℃付近であり、塔頂ゾーンAの底部にかけ
て140〜170℃の範囲内にある蒸解最高温度まで加
熱され、上部蒸解ゾーンB、下部蒸解ゾーンCでは14
0〜170℃の範囲内にある最高温度に保たれ、蒸解洗
浄ゾーンDでは、蒸解洗浄ゾーンDの底部にかけて14
0〜170℃の範囲内にある蒸解最高温度から140℃
付近まで低下する。
【0060】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限され
ないことはもちろんである。実施例1〜8、11〜1
8、比較例1〜4、9〜11は針葉樹の混合チップを、
実施例9、10、比較例5〜8は広葉樹の混合チップを
1ベッセル蒸解釜にて蒸解したものであり、実施例1〜
8、11〜18、実施例9、10が本発明の方法により
蒸解したものである。
【0061】蒸解はH−ファクター(HF)を指標とし
た。H−ファクターは蒸解過程で反応系に与えられた熱
の総量を表す目安であり、本発明では次の式によって表
す。式中、HFはH−ファクターを、Tはある時点の絶
対温度を表し、dtは蒸解釜内の温度プロファイルによ
り経時的に変化する時間の関数である。H−ファクター
は積分記号より右側の項をチップとアルカリ性蒸解液が
混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで
算出する。
【0062】
【数1】
【0063】≪試験法≫得られた未漂白パルプのパルプ
収率は、粕を除去した精選パルプの収率を測定した。未
晒しパルプのカッパー価は、TAPPI試験法T236
os−76に従って行った。アルカリ性蒸解液中の硫化
ナトリウムおよび硫黄換算でのポリサルファイド濃度の
定量は、TAPPI試験法T624hm−85に従って
行った。パルプ収率は、TAPPI試験法T249hm
−85に従って行った炭水化物収率とTAPPI試験法
T204os−76に従って行ったパルプのアルコール
・ベンゼン抽出分とTAPPI試験法T222os−7
4に従って行ったパルプの酸不溶性リグニン分とを足し
合わせた。
【0064】≪実施例1≫ラジアタパイン40、ダグラ
スファー30およびカラマツ30の各絶乾重量%で混合
したチップを図1に示す連続蒸解釜を使用した蒸解に用
いた。全有効アルカリ添加率は14.5、16.5、1
8.5重量%(対絶乾チップ;Na2O換算)の3種類
で行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液として、水
酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカ
リ性溶液を下記電解槽により電解して得たポリサルファ
イドサルファ濃度4g/L(硫黄換算)、水酸化ナトリ
ウム濃度70g/L(Na2O換算)および硫化ナトリ
ウム濃度22g/L(Na2O換算)が主成分のポリサ
ルファイドを含むアルカリ性蒸解液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対し53重量%の硫黄分(蒸解活性な硫黄
分、以下同じ)および50重量%の有効アルカリになる
ように添加した。その際、液比はチップ持込水分と合わ
せ、絶乾チップに対して約3.5L/kgとなった。
【0065】電解槽は以下のとおり構成した。アノード
としてニッケル多孔体(アノード室体積当りのアノード
表面積:5600m2/m3、網目の平均孔径:0.51
mm、隔膜面積に対する表面積:28m2/m3)、カソ
ードとして鉄のエクスパンジョンメタル、隔膜としてフ
ッ素樹脂系カチオン交換膜とからなる2室型の電解槽を
組み立てた。
【0066】上部抽出ストレーナからは前記の全蒸解黒
液の45容量%を抽出した。上部蒸解ゾーンでは硫化度
30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対
して31.6重量%の有効アルカリになるよう添加し
た。蒸解洗浄ゾーン底部では硫化度30%の第2の蒸解
液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対して
18.4重量%の有効アルカリになるよう添加した。
【0067】塔頂ゾーンでは、塔頂ゾーン頂部から底部
にかけて120℃から140℃まで30分で加温し、上
部蒸解ゾーンでは50分、156℃に保持し、下部蒸解
ゾーンでは160分、156℃に保持し、蒸解洗浄ゾー
ンでは、蒸解洗浄ゾーン頂部から底部にかけて156℃
から140℃まで170分で温度を下げて、H−ファク
ター1400まで蒸解を行った。キノン化合物としては
1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノンを絶
乾チップに対して0.05重量%上部蒸解ゾーンで添加
する第2蒸解液に混合させた。蒸解の結果は表1に示
す。本実施例によれば、比較例1〜4に比べ、同一有効
アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同一カ
ッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0068】≪実施例2≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物の添加は
実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1
の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し72重量%
の硫黄分および70重量%の有効アルカリになるように
した。上部蒸解ゾーン底部では硫化度30%の第2の蒸
解液を、蒸解系に導入される全量に対して21.6重量
%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン
底部では硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表1に示
す。本実施例によれば、比較例1〜4に比べ、同一有効
アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同一カ
ッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0069】≪実施例3≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物の添加は
実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1
の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し100重量
%の硫黄分および50重量%の有効アルカリになるよう
にした。上部蒸解ゾーンでは、水酸化ナトリウムが主成
分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して
31.6重量%の有効アルカリ分になるよう添加した。
蒸解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%の
有効アルカリになるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部
で添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添
加する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが
主成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表1
に示す。本実施例によれば、比較例1〜4に比べ、同一
有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同
一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0070】≪実施例4≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物の添加は
実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1
の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し100重量
%の硫黄分および70重量%の有効アルカリになるよう
にした。上部蒸解ゾーンでは、水酸化ナトリウムが主成
分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して
21.6重量%の有効アルカリ分になるよう添加した。
蒸解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部で
添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添加
する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが主
成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表1に
示す。本実施例によれば、比較例1〜4に比べ、同一有
効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同一
カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0071】≪実施例5≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの蒸
解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクターお
よびキノン化合物の添加は実施例1と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液としては、水酸化
ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカリ性
溶液を電解槽に導入し、前記アルカリ性溶液中の硫化ナ
トリウムを電気化学的に酸化して得たポリサルファイド
サルファ濃度10g/L(硫黄換算)、水酸化ナトリウ
ム濃度70g/L(Na2O換算)および硫化ナトリウ
ム濃度11g/L(Na2O換算)が主成分のアルカリ
性蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対し55重量%
の硫黄分および50重量%の有効アルカリになるように
添加した。上部蒸解ゾーンでは、硫化度30%の第2の
蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して31.6重
量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾー
ン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の
液を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%
の有効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表2
に示す。本実施例によれば、比較例1〜4に比べ、同一
有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同
一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0072】≪実施例6≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの蒸
解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクターお
よびキノン化合物の添加は実施例1と同様にし、第1の
蒸解液の製法、組成は実施例5と同様にして行った。釜
の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入される
全量に対し74重量%の硫黄分および70重量%の有効
アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーンでは、硫化
度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に
対して21.6重量%の有効アルカリ分になるよう添加
した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%の第2の
蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対
して8.4重量%の有効アルカリになるよう添加した。
蒸解の結果は表2に示す。本実施例によれば、比較例1
〜4に比べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー
価を減少させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増
加させた。
【0073】≪実施例7≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの蒸
解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクターお
よびキノン化合物の添加は実施例1と同様にし、第1の
蒸解液の製法、組成は実施例5と同様して行った。釜の
頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入される全
量に対し100重量%の硫黄分および50重量%の有効
アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーンでは、水酸
化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入
される全量に対して31.6重量%の有効アルカリにな
るよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸解
液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対して
18.4重量%の有効アルカリ分になるよう添加した。
蒸解の結果は表2に示す。本実施例によれば、比較例1
〜4に比べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー
価を減少させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増
加させた。
【0074】≪実施例8≫蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの蒸
解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクターお
よびキノン化合物の添加は実施例1と同様にし、第1の
蒸解液の製法、組成は実施例5と同様にして行った。釜
の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入される
全量に対し100重量%の硫黄分および70重量%の有
効アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーンでは、水
酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導
入される全量に対して21.6重量%の有効アルカリに
なるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸
解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対し
て8.4重量%の有効アルカリ分になるよう添加した。
上部蒸解ゾーン底部で添加する第2の蒸解液および蒸解
洗浄ゾーン底部で添加する蒸解液は電解で陰極に生じた
水酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性溶液を利用し
た。蒸解の結果は表2に示す。本実施例によれば、比較
例1〜4に比べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッ
パー価を減少させ、同一カッパー価におけるパルプ収率
を増加させた。
【0075】≪実施例9≫アカシア30、オーク30お
よびユーカリ40の各絶乾重量%で混合した広葉樹チッ
プを図1に示す連続蒸解釜を使用した蒸解に用いた。全
有効アルカリ添加率は11.9、12.8、13.6重
量%(対絶乾チップ;Na2O換算)の3種類で行っ
た。蒸解に使用した第1の蒸解液の製法、組成、および
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量は実施例1と
同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液
は、蒸解系に導入される全量に対し53重量%の硫黄分
および50重量%の有効アルカリになるようにした。そ
の際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾チップに対
して約2.5L/kgとなった。蒸解洗浄ゾーン底部で
は硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される
全量に対して31.6重量%の有効アルカリになるよう
添加した。下部蒸解ゾーンでは硫化度30%の第2の蒸
解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対し
て18.4重量%の有効アルカリになるよう添加した。
【0076】キノン化合物としては1,4,4a,9a
−テトラヒドロアントラキノンを絶乾チップに対して
0.03重量%上部蒸解ゾーンで添加する第2の蒸解液
に混合させた。塔頂ゾーンでは、塔頂ゾーン頂部から底
部にかけて120℃から140℃まで20分で加温し、
上部蒸解ゾーンでは30分、152℃に保持し、下部蒸
解ゾーンでは120分、152℃に保持し、蒸解洗浄ゾ
ーンでは、蒸解洗浄ゾーン頂部から底部にかけて156
℃から140℃まで140分で温度を下げて蒸解をH−
ファクター830まで蒸解を行った。蒸解の結果は表4
に示す。本実施例によれば、比較例5〜8に比べ、同一
有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同
一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0077】≪実施例10≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間、H−
ファクターおよびキノン化合物の添加は実施例9と同様
にし、上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量は実施
例1と同様にし、第1の蒸解液の製法、組成は実施例5
と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液
は、蒸解系に導入される全量に対し100重量%の硫黄
分および50重量%の有効アルカリになるように添加し
た。蒸解洗浄ゾーン底部では、水酸化ナトリウムが主成
分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して
31.6重量%の有効アルカリになるよう添加した。下
部蒸解ゾーンでは、第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸
解系に導入される全量に対して18.4重量%の有効ア
ルカリになるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部で添加
する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添加する
蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが主成分
のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表4に示
す。本実施例によれば、比較例5〜8に比べ、同一有効
アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同一カ
ッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0078】≪実施例11≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜
の温度、時間およびH−ファクターは実施例1と同様に
し、キノン化合物の添加は実施例11と同様にして行っ
た。キノン化合物としては1,4,4a,9a−テトラ
ヒドロアントラキノンを絶乾チップに対して0.05重
量%上部蒸解ゾーンで添加する第2の蒸解液に混合させ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し53重量%の硫黄分および50重量%
の有効アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーン底部
では、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対して31.6重量%の有効アルカリになる
よう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%
の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される
全量に対して18.4重量%の有効アルカリになるよう
添加した。蒸解の結果は表6に示す。本実施例によれ
ば、比較例2、9〜11に比べ、同一有効アルカリ添加
率におけるカッパー価を減少させ、同一カッパー価にお
けるパルプ収率を増加させた。
【0079】≪実施例12≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜
の温度、時間およびH−ファクターは実施例1と同様に
し、キノン化合物の添加は実施例11と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し72重量%の硫黄分および70重量%
の有効アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーン底部
では、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対して21.6重量%の有効アルカリになる
よう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%
の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される
全量に対して8.4重量%の有効アルカリになるよう添
加した。蒸解の結果は表6に示す。本実施例によれば、
比較例2、9〜11に比べ、同一有効アルカリ添加率に
おけるカッパー価を減少させ、同一カッパー価における
パルプ収率を増加させた。
【0080】≪実施例13≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜
の温度、時間およびH−ファクターは実施例1と同様に
し、キノン化合物の添加は実施例11と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し100重量%の硫黄分および50重量
%の有効アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーン底
部では、水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液を、
蒸解系に導入される全量に対して31.6重量%の有効
アルカリ分になるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部で
は、第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入され
る全量に対して18.4重量%の有効アルカリになるよ
う添加した。上部蒸解ゾーン底部で添加する第2の蒸解
液および蒸解洗浄ゾーン底部で添加する蒸解液は電解で
陰極に生じた水酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性溶
液を利用した。蒸解の結果は表6に示す。本実施例によ
れば、比較例2、9〜11に比べ、同一有効アルカリ添
加率におけるカッパー価を減少させ、同一カッパー価に
おけるパルプ収率を増加させた。
【0081】≪実施例14≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜
の温度、時間およびH−ファクターは実施例1と同様に
し、キノン化合物の添加は実施例11と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し100重量%の硫黄分および70重量
%の有効アルカリになるようにした。上部蒸解ゾーン底
部では、水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液を、
蒸解系に導入される全量に対して21.6重量%の有効
アルカリ分になるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部で
は、第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入され
る全量に対して8.4重量%の有効アルカリになるよう
添加した。上部蒸解ゾーン底部で添加する第2の蒸解液
および蒸解洗浄ゾーン底部で添加する蒸解液は電解で陰
極に生じた水酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性溶液
を利用した。蒸解の結果は表6に示す。本実施例によれ
ば、比較例2、9〜11に比べ、同一有効アルカリ添加
率におけるカッパー価を減少させ、同一カッパー価にお
けるパルプ収率を増加させた。
【0082】≪実施例15≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間およびH−ファク
ターは実施例1と同様にし、第1の蒸解液の製法、組成
は実施例5と同様にし、キノン化合物の添加は実施例1
1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解
液としては、蒸解系に導入される全量に対し55重量%
の硫黄分および50重量%の有効アルカリになるように
添加した。上部蒸解ゾーン底部では、硫化度30%の第
2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して31.
6重量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄
ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組
成の液を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重
量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は
表7に示す。本実施例によれば、比較例2、9〜11に
比べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減
少させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させ
た。
【0083】≪実施例16≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間およびH−ファク
ターは実施例1と同様にし、第1の蒸解液の製法、組成
は実施例5と同様にし、キノン化合物の添加は実施例1
1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解
液は、蒸解系に導入される全量に対し74重量%の硫黄
分および70重量%の有効アルカリになるようにした。
上部蒸解ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液
を、蒸解系に導入される全量に対して21.6重量%の
有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底
部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表7に示
す。本実施例によれば、比較例2,9〜11に比べ、同
一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、
同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0084】≪実施例17≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間およびH−ファク
ターは実施例1と同様にし、第1の蒸解液の製法、組成
は実施例5と同様にし、キノン化合物の添加は実施例1
1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解
液は、蒸解系に導入される全量に対し100重量%の硫
黄分および50重量%の有効アルカリになるようにし
た。上部蒸解ゾーン底部では、水酸化ナトリウムが主成
分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して
31.6重量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸
解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%の
有効アルカリ分になるよう添加した。上部蒸解ゾーン底
部で添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で
添加する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウム
が主成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表
7に示す。本実施例によれば、比較例2、9〜11に比
べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少
させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させ
た。
【0085】≪実施例18≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間およびH−ファク
ターは実施例1と同様にし、第1の蒸解液の製法、組成
は実施例5と同様にし、キノン化合物の添加は実施例1
1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解
液は、蒸解系に導入される全量に対し100重量%の硫
黄分および70重量%の有効アルカリになるようにし
た。上部蒸解ゾーン底部では、水酸化ナトリウムが主成
分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して
21.6重量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸
解洗浄ゾーン底部では、第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリ分になるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部
で添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添
加する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが
主成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表7
に示す。本実施例によれば、比較例2、9〜11に比
べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少
させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させ
た。
【0086】<比較例1>蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
蒸解釜の温度、時間、H−ファクターおよびキノン化合
物の添加は実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添
加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し
53重量%の硫黄分および50重量%の有効アルカリに
なるようにした。上部抽出ストレーナからは前記の全蒸
解黒液の15容量%を抽出した。上部蒸解ゾーンでは、
硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全
量に対して21.6重量%の有効アルカリになるよう添
加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%の第2
の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に
対して8.4重量%の有効アルカリになるよう添加し
た。蒸解の結果は表3に示す。
【0087】<比較例2>蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間およびH−ファクターは実施例1と同様にして
行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に
導入される全量に対し53重量%の硫黄分および50重
量%の有効アルカリになるように添加した。上部蒸解ゾ
ーンでは、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導
入される全量に対して11.6重量%の有効アルカリに
なるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度3
0%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対して8.4重量%の有効アルカリ分になる
よう添加した。キノン化合物は無添加で行った。蒸解の
結果は表3に示す。
【0088】<比較例3>蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物の添加は
実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1
の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し82重量%
の硫黄分および80重量%の有効アルカリになるように
添加した。上部蒸解ゾーンでは、硫化度30%の第2の
蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して16.6重
量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾー
ン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の
液を、蒸解系に導入される全量に対して3.4重量%の
有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解の結果は表3
に示す。
【0089】<比較例4>蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
上部抽出ストレーナからの蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温
度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物の添加は
実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する第1
の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し32重量%
の硫黄分および30重量%の有効アルカリになるように
添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%の第
2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して41.
6重量%の有効アルカリになるよう添加した。下部蒸解
ゾーンでは、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の
液を、蒸解系に導入される全量に対して28.4重量%
の有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解の結果は表
3に示す。
【0090】<比較例5>蒸解に使用したチップおよび
全有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間、H
−ファクターおよびキノン化合物の添加は実施例9と同
様にし、第1の蒸解液の製法、組成は実施例1と同様に
して行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解
系に導入される全量に対し53重量%の硫黄分および5
0重量%の有効アルカリになるように添加した。上部抽
出ストレーナからは前記の全蒸解黒液の15容量%を抽
出した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%の第2
の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して31.6
重量%の有効アルカリになるよう添加した。下部蒸解ゾ
ーンでは、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%の
有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解の結果は表5
に示す。
【0091】<比較例6>蒸解に使用したチップおよび
全有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナから
の蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間およびH−ファ
クターは実施例9と同様にし、第1の蒸解液の製法、組
成は実施例1と同様にして行った。釜の頂部で添加する
第1の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に対し53重
量%の硫黄分および50重量%の有効アルカリになるよ
うに添加した。上部蒸解ゾーンでは、硫化度30%の第
2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して31.
6重量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄
ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組
成の液を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重
量%の有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解釜に添
加したキノン化合物はテトラヒドロアントラキノンであ
り、絶乾チップに対して0.03重量%を第1の蒸解液
に混合させた。蒸解の結果は表5に示す。
【0092】<比較例7>蒸解に使用したチップおよび
全有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナから
の蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクタ
ーおよびキノン化合物の添加は実施例9と同様にし、第
1の蒸解液の製法、組成は実施例1と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し82重量%の硫黄分および80重量%
の有効アルカリになるように添加した。上部蒸解ゾーン
では、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対して16.6重量%の有効アルカリになる
よう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%
の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される
全量に対して3.4重量%の有効アルカリ分になるよう
添加した。蒸解の結果は表5に示す。
【0093】<比較例8>蒸解に使用したチップおよび
全有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナから
の蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクタ
ーおよびキノン化合物の添加は実施例9と同様にし、第
1の蒸解液の製法、組成は実施例1と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入
される全量に対し32重量%の硫黄分および30重量%
の有効アルカリになるように添加した。上部蒸解ゾーン
では、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入さ
れる全量に対して41.6重量%の有効アルカリになる
よう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%
の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される
全量に対して28.4重量%の有効アルカリ分になるよ
う添加した。蒸解の結果は表5に示す。
【0094】<比較例9>蒸解に使用したチップ、全有
効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組成、
蒸解釜の温度、時間およびH−ファクターは実施例1と
同様にし、キノン化合物の添加は実施例11と同様にし
て行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解系
に導入される全量に対し53重量%の硫黄分および50
重量%の有効アルカリになるようにした。上部抽出スト
レーナからは前記の全蒸解黒液の15容量%を抽出し
た。上部蒸解ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸
解液を、蒸解系に導入される全量に対して21.6重量
%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン
底部では、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表8に示
す。
【0095】<比較例10>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、蒸解釜の温度、時間およびH−ファクターは実施例
1と同様にし、キノン化合物の添加は実施例11と同様
にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸
解系に導入される全量に対し82重量%の硫黄分および
80重量%の有効アルカリになるように添加した。上部
蒸解ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液を、
蒸解系に導入される全量に対して16.6重量%の有効
アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部で
は、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸
解系に導入される全量に対して3.4重量%の有効アル
カリ分になるよう添加した。蒸解の結果は表8に示す。
【0096】<比較例11>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、第1の蒸解液の製法、組
成、蒸解釜の温度、時間およびH−ファクターは実施例
1と同様にし、キノン化合物の添加は実施例11と同様
にして行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸
解系に導入される全量に対し32重量%の硫黄分および
30重量%の有効アルカリになるように添加した。上部
蒸解ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸解液を、
蒸解系に導入される全量に対して41.6重量%の有効
アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部で
は、硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸
解系に導入される全量に対して28.4重量%の有効ア
ルカリ分になるよう添加した。蒸解の結果は表8に示
す。
【0097】≪実施例19≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にして行った。蒸
解装置は任意の温度プロファイルを設定できるエアーバ
ス内で天地転倒回転をする2.5L容量のオートクレー
ブを用いた。また、この装置にはオートクレーブ内の液
を抽出できるバルブおよびオートクレーブ内に外部から
液を注入できるバルブを有する。蒸解の温度プロファイ
ルを説明すると、室温から蒸解を開始し、30分で14
0℃まで昇温し、さらに60分かけて160℃まで昇温
し、その後、250分、160℃に保持し、H−ファク
ター1400まで蒸解を行った。
【0098】蒸解開始時に室温でチップとともに第1の
蒸解液としては水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主
成分とするアルカリ性溶液を電解槽に導入し、前記アル
カリ性溶液中の硫化ナトリウムを電気化学的に酸化して
得たポリサルファイドサルファ濃度4g/L(硫黄換
算)、水酸化ナトリウム濃度70g/L(Na2O換
算)および硫化ナトリウム濃度22.6g/L(Na2
O換算)が主成分のポリサルファイドを含むアルカリ性
蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対し53重量%の
硫黄分および50重量%の有効アルカリになるように添
加し、昇温を開始した。その際、液比はチップ持込水分
と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/kgとした。
【0099】昇温開始後、30分で140℃に到達した
時点でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽
出した。抽出後、予め90℃に加温しておいた硫化度3
0%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対し
て31.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の液比が
2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸解開始か
ら240分に達した時点で予め90℃に加温しておいた
硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系
に導入される全量に対して18.4重量%の有効アルカ
リになるよう添加した。キノン化合物としては、テトラ
ヒドロアントラキノンを1,4,4a,9a−テトラヒ
ドロアントラキノンを絶乾チップに対して0.05重量
%を第2の蒸解液に混合させた。蒸解の結果は表9に示
す。本実施例によれば、比較例12〜15に比べ、同一
有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、同
一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0100】≪実施例20≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し72
重量%の硫黄分および70重量%の有効アルカリになる
ように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチップ
持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/kg
とした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時点
でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽出し
た。抽出後、予め90℃に加温しておいた硫化度30%
の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して2
1.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の液比が2.5
L/kgになるよう添加した。さらに蒸解開始から24
0分に達した時点で、予め90℃に加温しておいた硫化
度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導
入される全量に対して8.4重量%の有効アルカリにな
るよう添加した。蒸解の結果は表9に示す。本実施例に
よれば、比較例12〜15に比べ、同一有効アルカリ添
加率におけるカッパー価を減少させ、同一カッパー価に
おけるパルプ収率を増加させた。
【0101】≪実施例21≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し10
0重量%の硫黄分および50重量%の有効アルカリにな
るように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチッ
プ持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/k
gとした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時
点でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽出
した。抽出後、予め90℃に加温しておいた水酸化ナト
リウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される
全量に対して31.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内
の液比が2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸
解開始から240分に達した時点で、予め90℃に加温
しておいた硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%の
有効アルカリになるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部
で添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添
加する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが
主成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表9
に示す。本実施例によれば、比較例12〜15に比べ、
同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少さ
せ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0102】≪実施例22≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し10
0重量%の硫黄分および70重量%の有効アルカリにな
るように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチッ
プ持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/k
gとした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時
点でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽出
した。抽出後、予め90℃に加温しておいた水酸化ナト
リウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される
全量に対して21.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内
の液比が2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸
解開始から240分に達した時点で、予め90℃に加温
しておいた硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。上部蒸解ゾーン底部で
添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾーン底部で添加
する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナトリウムが主
成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の結果は表9に
示す。本実施例によれば、比較例12〜15に比べ、同
一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、
同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0103】≪実施例23≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
蒸解の温度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物
の添加は実施例19と同様にして行った。蒸解に使用し
たチップ、全有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし
て行った。蒸解装置は任意の温度プロファイルを設定で
きるエアーバス内で天地転倒回転をする2.5L容量の
オートクレーブを用いた。また、この装置はオートクレ
ーブ内の液を抽出できるバルブおよびオートクレーブ内
に外部から液を注入できるバルブを有する。蒸解の温度
プロファイルを説明すると、室温から蒸解を開始し、3
0分で140℃まで昇温し、さらに60分かけて160
℃まで昇温し、その後、250分、160℃に保持し、
H−ファクター1400まで蒸解を行った。
【0104】蒸解開始時に、室温で、チップとともに、
第1の蒸解液として、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウ
ムを主成分とするアルカリ性溶液を前記電解槽に導入
し、前記アルカリ性溶液中の硫化ナトリウムを電気化学
的に酸化して得たポリサルファイドサルファ濃度10g
/L(硫黄換算)、水酸化ナトリウム濃度70g/L
(Na2O換算)および硫化ナトリウム濃度11g/L
(Na2O換算)が主成分のアルカリ性蒸解液を、蒸解
系に導入される全量に対し55重量%の硫黄分および5
0重量%の有効アルカリになるように添加し、昇温を開
始した。その際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾
チップに対して2.5L/kgとした。
【0105】昇温開始後、30分で140℃に到達した
時点でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽
出した。抽出後、予め90℃に加温しておいた硫化度3
0%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対し
て31.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の液比が
2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸解開始か
ら240分に達した時点で、予め90℃に加温しておい
た硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解
系に導入される全量に対して18.4重量%の有効アル
カリになるよう添加した。キノン化合物としてはテトラ
ヒドロアントラキノンを絶乾チップに対して0.05重
量%を第2の蒸解液に混合させた。蒸解の結果は表10
に示す。本実施例によれば、比較例16〜19に比べ、
同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少さ
せ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0106】≪実施例24≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
蒸解の温度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物
の添加は実施例19と同様にし、第1の蒸解液の製法、
組成は実施例23と同様にして行った。蒸解開始時に、
室温で、チップとともに、第1の蒸解液を蒸解系に導入
される全量に対し74重量%の硫黄分および70重量%
の有効アルカリになるように添加し、昇温を開始した。
その際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾チップに
対して2.5L/kgとした。昇温開始後、30分で1
40℃に到達した時点でオートクレーブから全蒸解黒液
の45容量%を抽出した。抽出後、予め90℃に加温し
ておいた硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入
される全量に対して21.6重量%の有効アルカリを蒸
解釜内の液比が2.5L/kgになるよう添加した。さ
らに蒸解開始から240分に達した時点で、予め90℃
に加温しておいた硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組
成の液を、蒸解系に導入される全量に対して8.4重量
%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表
10に示す。本実施例によれば、比較例16〜19に比
べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少
させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させ
た。
【0107】≪実施例25≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
蒸解の温度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物
の添加は実施例19と同様にし、第1の蒸解液の製法、
組成は実施例23と同様にして行った。蒸解開始時に、
室温で、チップとともに、第1の蒸解液を蒸解系に導入
される全量に対し100重量%の硫黄分および50重量
%の有効アルカリになるように添加し、昇温を開始し
た。その際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾チッ
プに対して2.5L/kgとした。昇温開始後、30分
で140℃に到達した時点でオートクレーブから全蒸解
黒液の45容量%を抽出した。抽出後、予め90℃に加
温しておいた水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液
を、蒸解系に導入される全量に対して31.6重量%の
有効アルカリを蒸解釜内の液比が2.5L/kgになる
よう添加した。さらに蒸解開始から240分に達した時
点で、予め90℃に加温しておいた硫化度30%の第2
の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に
対して18.4重量%の有効アルカリになるよう添加し
た。上部蒸解ゾーン底部で添加する第2の蒸解液および
蒸解洗浄ゾーン底部で添加する蒸解液は電解で陰極に生
じた水酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性溶液を利用
した。蒸解の結果は表10に示す。本実施例によれば、
比較例16〜19に比べ、同一有効アルカリ添加率にお
けるカッパー価を減少させ、同一カッパー価におけるパ
ルプ収率を増加させた。
【0108】≪実施例26≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
蒸解の温度、時間、H−ファクターおよびキノン化合物
の添加は実施例19と同様にし、第1の蒸解液の製法、
組成は実施例23と同様にして行った。蒸解開始時に、
室温で、チップとともに、第1の蒸解液を蒸解系に導入
される全量に対し100重量%の硫黄分および70重量
%の有効アルカリになるように添加し、昇温を開始し
た。その際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾チッ
プに対して2.5L/kgとした。昇温開始後、30分
で140℃に到達した時点でオートクレーブから全蒸解
黒液の45容量%を抽出した。抽出後、予め90℃に加
温しておいた水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液
を、蒸解系に導入される全量に対して21.6重量%の
有効アルカリを蒸解釜内の液比が2.5L/kgになる
よう添加した。さらに蒸解開始から240分に達した時
点で、予め90℃に加温しておいた硫化度30%の第2
の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に
対して8.4重量%の有効アルカリになるよう添加し
た。上部蒸解ゾーン底部で添加する第2の蒸解液および
蒸解洗浄ゾーン底部で添加する蒸解液は電解で陰極に生
じた水酸化ナトリウムが主成分のアルカリ性溶液を利用
した。蒸解の結果は表10に示す。本実施例によれば、
比較例12〜15に比べ、同一有効アルカリ添加率にお
けるカッパー価を減少させ、同一カッパー価におけるパ
ルプ収率を増加させた。
【0109】≪実施例27≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクター
およびキノン化合物の添加は実施例1と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液としては、予め水
酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカ
リ性溶液に70℃で硫黄を溶解させることにより得たポ
リサルファイドサルファ濃度4g/L(硫黄換算)、水
酸化ナトリウム濃度70g/L(Na2O換算)および
硫化ナトリウム濃度30g/L(Na2O換算)のアル
カリ性蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対し56重
量%の硫黄分および50重量%の有効アルカリになるよ
うに添加した。その際、液比はチップ持込水分と合わ
せ、絶乾チップに対して約3.5L/kgとなった。上
部抽出ストレーナからは前記の全蒸解黒液の45容量%
を抽出した。上部蒸解ゾーンでは硫化度30%の第2の
蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して31.6重
量%の有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾー
ン底部では硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して18.4重量%の
有効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表12
に示す。本実施例によれば、比較例16〜19に比べ、
同一有効アルカリ添加率におけるカッパー価を減少さ
せ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増加させた。
【0110】≪実施例28≫蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、上部抽出ストレーナからの
蒸解黒液抽出量、蒸解釜の温度、時間、H−ファクター
およびキノン化合物の添加は実施例1と同様にして行っ
た。釜の頂部で添加する第1の蒸解液としては、予め水
酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカ
リ性溶液に70℃で硫黄を溶解させることにより得たポ
リサルファイド濃度10g/L(硫黄換算)、水酸化ナ
トリウム濃度70g/L(Na2O換算)および硫化ナ
トリウム濃度30g/L(Na2O換算)が主成分のポ
リサルファイドを含むアルカリ性蒸解液を、蒸解系に導
入される全量に対し100重量%の硫黄分および50重
量%の有効アルカリになるように添加した。上部蒸解ゾ
ーンでは、水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液
を、蒸解系に導入される全量に対して31.6重量%の
有効アルカリ分になるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底
部では、水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸解液と同
じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対して18.
4重量%の有効アルカリになるよう添加した。上部蒸解
ゾーン底部で添加する第2の蒸解液および蒸解洗浄ゾー
ン底部で添加する蒸解液は電解で陰極に生じた水酸化ナ
トリウムが主成分のアルカリ性溶液を利用した。蒸解の
結果は表12に示す。本実施例によれば、比較例16〜
19に比べ、同一有効アルカリ添加率におけるカッパー
価を減少させ、同一カッパー価におけるパルプ収率を増
加させた。
【0111】<比較例12>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し53
重量%の硫黄分および50重量%の有効アルカリになる
ように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチップ
持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/kg
とした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時点
でオートクレーブから全蒸解黒液の45容量%を抽出し
た。抽出後、予め90℃に加温しておいた硫化度30%
の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対して3
1.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の液比が2.5
L/kgになるよう添加した。さらに蒸解開始から24
0分に達した時点で、予め90℃に加温しておいた硫化
度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導
入される全量に対して18.4重量%の有効アルカリに
なるよう添加した。蒸解の結果は表11に示す。
【0112】<比較例13>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間およびH
−ファクターは実施例19と同様にして行った。蒸解開
始時に、室温で、チップとともに、第1の蒸解液を蒸解
系に導入される全量に対し53重量%の硫黄分および5
0重量%の有効アルカリになるように添加し、昇温を開
始した。その際、液比はチップ持込水分と合わせ、絶乾
チップに対して2.5L/kgとした。昇温開始後、3
0分で140℃に到達した時点でオートクレーブから全
蒸解黒液の45容量%を抽出した。抽出後、予め90℃
に加温しておいた水酸化ナトリウムが主成分の第2の蒸
解液を蒸解系に導入される全量に対して31.6重量%
の有効アルカリを、蒸解釜内の液比が2.5L/kgに
なるよう添加した。さらに蒸解開始から240分に達し
た時点で、予め90℃に加温しておいた硫化度30%の
第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全
量に対して18.4重量%の有効アルカリになるよう添
加した。キノン化合物は無添加で行った。蒸解の結果は
表11に示す。
【0113】<比較例14>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し82
重量%の硫黄分および80重量%の有効アルカリになる
ように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチップ
持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/kg
とした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時点
でオートクレーブから全蒸解黒液の15容量%を抽出し
た。抽出後、予め90℃に加温しておいた水酸化ナトリ
ウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全
量に対して16.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の
液比が2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸解
開始から240分に達した時点で、予め90℃に加温し
ておいた硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して3.4重量%の有
効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表11に
示す。
【0114】<比較例15>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率は実施例1と同様にし、蒸解装置、
第1の蒸解液の製法、組成、蒸解の温度、時間、H−フ
ァクターおよびキノン化合物の添加は実施例19と同様
にして行った。蒸解開始時に、室温で、チップととも
に、第1の蒸解液を蒸解系に導入される全量に対し32
重量%の硫黄分および30重量%の有効アルカリになる
ように添加し、昇温を開始した。その際、液比はチップ
持込水分と合わせ、絶乾チップに対して2.5L/kg
とした。昇温開始後、30分で140℃に到達した時点
でオートクレーブから全蒸解黒液の15容量%を抽出し
た。抽出後、予め90℃に加温しておいた水酸化ナトリ
ウムが主成分の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全
量に対して41.6重量%の有効アルカリを蒸解釜内の
液比が2.5L/kgになるよう添加した。さらに蒸解
開始から240分に達した時点で、予め90℃に加温し
ておいた硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液
を、蒸解系に導入される全量に対して28.4重量%の
有効アルカリになるよう添加した。蒸解の結果は表11
に示す。
【0115】<比較例16>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間、H−
ファクターおよびキノン化合物の添加は実施例1と同様
にし、第1の蒸解液の製法、組成は実施例27と同様に
して行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解
系に導入される全量に対し56重量%の硫黄分および5
0重量%の有効アルカリになるようにした。上部抽出ス
トレーナからは前記の全蒸解黒液の15容量%を抽出し
た。上部蒸解ゾーンでは硫化度30%の第2の蒸解液
を、蒸解系に導入される全量に対して21.6重量%の
有効アルカリになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部
では硫化度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸
解系に導入される全量に対して8.4重量%の有効アル
カリになるよう添加した。蒸解の結果は表13に示す。
【0116】<比較例17>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間および
H−ファクターは実施例1と同様にし、第1の蒸解液の
製法、組成は実施例27と同様にして行った。釜の頂部
で添加する第1の蒸解液は、蒸解系に導入される全量に
対し56重量%の硫黄分および50重量%の有効アルカ
リになるように添加した。上部蒸解ゾーンでは、硫化度
30%の第2の蒸解液を、蒸解系に導入される全量に対
して11.6重量%の有効アルカリになるよう添加し
た。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化度30%の第2の蒸
解液と同じ組成の液を、蒸解系に導入される全量に対し
て8.4重量%の有効アルカリ分になるよう添加した。
キノン化合物は無添加で行った。蒸解の結果は表13に
示す。
【0117】<比較例18>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間、H−
ファクターおよびキノン化合物の添加は実施例1と同様
にし、第1の蒸解液の製法、組成は実施例27と同様に
して行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解
系に導入される全量に対し83重量%の硫黄分および8
0重量%の有効アルカリになるように添加した。上部蒸
解ゾーンでは、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系
に導入される全量に対して16.6重量%の有効アルカ
リになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化
度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導
入される全量に対して3.4重量%の有効アルカリ分に
なるよう添加した。蒸解の結果は表13に示す。
【0118】<比較例19>蒸解に使用したチップ、全
有効アルカリ添加率、液比、蒸解釜の温度、時間、H−
ファクターおよびキノン化合物の添加は実施例1と同様
にし、第1の蒸解液の製法、組成は実施例27と同様に
して行った。釜の頂部で添加する第1の蒸解液は、蒸解
系に導入される全量に対し46重量%の硫黄分および3
0重量%の有効アルカリになるように添加した。上部蒸
解ゾーンでは、硫化度30%の第2の蒸解液を、蒸解系
に導入される全量に対して41.6重量%の有効アルカ
リになるよう添加した。蒸解洗浄ゾーン底部では、硫化
度30%の第2の蒸解液と同じ組成の液を、蒸解系に導
入される全量に対して28.4重量%の有効アルカリ分
になるよう添加した。蒸解の結果は表13に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
【表9】
【0128】
【表10】
【0129】
【表11】
【0130】
【表12】
【0131】
【表13】
【0132】
【発明の効果】本発明によれば、パルプ収率を一層向上
させ、カッパー価とパルプ収率との関係をさらに改善さ
せることができる。すなわち、本発明によれば同一有効
アルカリ添加率におけるカッパー価を減少させ、かつ同
一カッパー価におけるパルプ収率を向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において好適に使用される1ベッセル型
連続蒸解装置の態様例を示す図。
【符号の説明】
A 塔頂ゾーン B 上部蒸解ゾーン C 下部蒸解ゾーン D 蒸解洗浄ゾーン 1 木材チップ 2 蒸解釜 3 ポリサルファイドを含むアルカリ性蒸解液供給管 4 上部抽出ストレーナ 5、7 ストレーナ 6 下部抽出ストレーナ 8 上部アルカリ性蒸解液供給管 9 下部アルカリ性蒸解液供給管 10、11 黒液排出導管 12 蒸解パルプ排出管 13 洗浄液導入管 14、15 ヒータ 16、16' キノン化合物導入管 17、18 抽出導管 19 上部蒸解循環液導管 20 下部蒸解循環液導管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 正裕 山口県岩国市飯田町2丁目8番1号 日本 製紙株式会社岩国技術研究所内 (72)発明者 渡部 啓吾 山口県岩国市飯田町2丁目8番1号 日本 製紙株式会社岩国技術研究所内 (72)発明者 安藤 達也 神奈川県川崎市川崎区千鳥町1番2号 川 崎化成工業株式会社内 (72)発明者 中尾 真 東京都千代田区丸の内二丁目1番2号 旭 硝子株式会社内 Fターム(参考) 4L055 AB02 AB16 BA20 BA24 BA25 BA27 BA28 BA34 EA25 EA32 EA40 FA02 FA05

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蒸解釜の内部に頂部から底部に向けて、塔
    頂ゾーン、上部蒸解ゾーン、下部蒸解ゾーンを備えると
    ともに、各ゾーン底部にストレーナが設けられ、かつ、
    各ストレーナのうち少なくとも1つのストレーナから抽
    出された蒸解黒液が蒸解系外に排出される1ベッセル蒸
    解釜を使用する連続蒸解法において、広葉樹または針葉
    樹のチップを用い、硫黄として3〜20g/Lの濃度の
    ポリサルファイドサルファを含み、かつ蒸解系へ導入さ
    れるアルカリ性蒸解液に含まれる全蒸解活性な硫黄分お
    よび全アルカリに対し45〜100重量%の硫黄分と4
    5〜79重量%の有効アルカリとを含むアルカリ性蒸解
    液が前記蒸解釜の頂部で添加され、さらに絶乾チップ当
    り0.01〜1.5重量%のキノン化合物を含むアルカ
    リ性蒸解液を前記蒸解釜に供給することを特徴とするリ
    グノセルロース材料の蒸解法。
  2. 【請求項2】上記アルカリ性蒸解液が水酸化ナトリウム
    と硫化ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムと硫化ナトリ
    ウムを主成分とするアルカリ性溶液中の硫化ナトリウム
    を電気化学的に酸化して得られる硫黄として3〜20g
    /Lのポリサルファイドサルファを含んだアルカリ性蒸
    解液である請求項1に記載のリグノセルロース材料の蒸
    解法。
  3. 【請求項3】上記1ベッセル蒸解釜を使用する連続蒸解
    法において、少なくとも蒸解系外に排出される蒸解黒液
    が塔頂ゾーン底部のストレーナから抽出され、蒸解釜か
    ら直接に回収工程に送られる全蒸解黒液の20〜60容
    量%が塔頂ゾーン底部のストレーナで抽出されることを
    特徴とする請求項1または2に記載のリグノセルロース
    材料の蒸解法。
  4. 【請求項4】上記下部蒸解ゾーンの下部にさらに蒸解洗
    浄ゾーンが設けられていることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれか1項に記載のリグノセルロース材料の蒸解
    法。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグ
    ノセルロース材料の蒸解法において、絶乾チップ当り
    0.01〜0.15重量%のキノン化合物を含むアルカ
    リ性蒸解液を浸透ベッセルの頂部または上部蒸解ゾーン
    底部に供給することを特徴とするリグノセルロース材料
    の蒸解法。
  6. 【請求項6】浸透ベッセルの頂部で添加されるアルカリ
    性蒸解液中のポリサルファイドサルファ濃度が硫黄とし
    て8〜18g/Lであることを特徴とする請求項1〜5
    のいずれか1項に記載のリグノセルロース材料の蒸解
    法。
  7. 【請求項7】前記の頂部で添加されるアルカリ性蒸解液
    が、蒸解系へ導入されるアルカリ性蒸解液に含まれる全
    蒸解活性な硫黄分および全アルカリに対し50〜100
    重量%の蒸解活性な硫黄分と50〜60重量%の有効ア
    ルカリとを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれ
    か1項に記載のリグノセルロース材料の蒸解法。
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